特許異議申立
2016-700542
離型フィルム
- 審判番号
- 2016-700542
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-552723外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月14日
- 審決日
- 2017年05月19日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三井化学東セロ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人鈴木国際特許事務所
- 【異議申立人】リンテック 株式会社
- 【異議申立人代理人】江森 健二
- 【異議申立人代理人】吉田 雅一
- 分類
- P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5832452号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5832452号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第5832452号の請求項1、3ないし6に係る特許を維持する。
特許第5832452号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5832452号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成27年11月6日にその特許権の設定登録がされた。
その後、特許異議申立人リンテック株式会社より請求項1~6に対して特許異議の申立てがされ、平成28年7月27日付けで取消理由が通知され、平成28年9月30日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成28年11月18日に特許異議申立人から意見書が提出され、平成29年1月17日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成29年3月21日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年5月11日に特許権者から上申書の提出がされたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成28年9月30日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
以下、平成29年3月21日の訂正請求について検討する。
ア 訂正事項1
請求項1を以下のとおり訂正する。
「熱可塑性樹脂からなる基材層に、アクリル系樹脂層を介して離型層が設けられている離型フィルムであって、
前記アクリル系樹脂層が(メタ)アクリル酸エステル類である多官能(メタ)アクリレートからなり、そのうちの
アルコキシ化イソシアヌル酸多官能(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート、
トリペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート
よりなる群から選ばれ、
かつ、
3~6個の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合型の
多官能(メタ)アクリレートの割合が用いられる多官能(メタ)アクリレートの中の70質量%以上であり、
下記の求め方により得られる前記アクリル系樹脂層のアクリル当量が200以下であることを特徴とする離型フィルム。
アクリル当量の求め方
前記アクリル系樹脂層のアクリル当量は、次のように計算する。
〔(メタ)アクリル酸エステル類の分子量〕÷〔(メタ)アクリロイル基数 〕をMxとし、ただし、(メタ)アクリロイル基数とは、アクリル酸エステル類に含まれているアクリロイル基の数の場合と、メタクリル酸エステル類に含まれているメタクリルロイル基の数の場合のそれぞれを共に表記したものである。
〔(メタ)アクリル酸エステル類の重量の合計量総和〕をA(重量部)、
〔(メタ)アクリル酸エステル類の重量〕をAx(重量部)
として、前記アクリル系樹脂層のアクリル当量は、
(メタ)アクリル酸エステル類の中のそれぞれの(メタ)アクリル酸エステル類についてMx×Ax÷Aの値を求め、用いるアクリル酸エステル類が1種類の場合はその値がアクリル当量である。なお、2種以上の化合物を用いる場合は、個々に上記の式により数値を求め、それらの総和として求めることができる。」
イ 訂正事項2
請求項2を削除する。
請求項4の「請求項1~3のいずれか」を「請求項1又は3のいずれか」に訂正する。
請求項5の「請求項1~4のいずれか」を「請求項1、3又は4のいずれか」に訂正する。
請求項6の「請求項1~5のいずれか」を「請求項1、3、4又は5のいずれか」に訂正する。
ウ 訂正事項3
訂正事項1で訂正される請求項1と、発明の詳細な説明との整合を図るため、発明の詳細な説明を以下のとおり訂正する。
段落0011を以下のとおり訂正する。
「本発明は、熱可塑性樹脂からなる基材層に、アクリル系樹脂層を介して離型層が設けられている離型フィルムであって、前記アクリル系樹脂層が(メタ)アクリル酸エステル類である多官能(メタ)アクリレートからなり、そのうちのアルコキシ化イソシアヌル酸多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれ、かつ、3~6個の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合型の多官能(メタ)アクリレートの割合が用いられる多官能(メタ)アクリレートの中の70質量%以上であり、下記の求め方により得られる前記アクリル系樹脂層のアクリル当量が200以下であることを特徴とする離型フィルムである。」
段落0012を削除する。
段落0021を削除し、小見出しの「アクリル系樹脂層」を段落0022の最初に追加する。
段落0024の「3個以上、特に3~10個、中でも3~6個」を「3~6個」に訂正する。
段落0025については、最初に「アクリル系樹脂層に」を追加する。「3個以上」を「3~6個である上記の特定」に訂正し、「50質量%以上、中でも70質量%以上」を「用いられる多官能(メタ)アクリレート70質量%以上」に訂正する。
段落0027の以下の記載を削除する。5~8行の「ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、」、13~15行の「ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、」。16行の「好ましく挙げられ、」。18~19行の「、特に好ましくは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが」。
段落0028の「ジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート、」を削除する。
段落0029を以下のとおり訂正する。
「このうち、アルコキシ化イソシアヌル酸多官能(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化イソシアヌル酸多官能(メタ)アクリレートが好適であり、さらにエトキシ化イソシアヌル酸多官能アクリレートが好適である。」
段落0030、0031を削除する。
段落0034を以下のとおり訂正する。
「そして、離型層としてシリコーン樹脂、特に付加反応型のシリコーン樹脂を用いた場合に、その付加反応型のシリコーン樹脂の付加反応を阻害するという問題が生じることがある。その結果、離型層の表面の所望の表面粗さ(SRa)が得られず、被着体の破損等の原因となったり、さらには巻き出し帯電圧の低減効果が得られないことがある。
前記アクリル系樹脂層のアクリル当量は、次のように計算する。
〔(メタ)アクリル酸エステル類の分子量 〕÷〔(メタ)アクリロイル基数 〕をMxとし、ただし、(メタ)アクリロイル基数とは、アクリル酸エステル類に含まれているアクリロイル基の数の場合と、メタクリル酸エステル類に含まれているメタクリロイル基の数の場合のそれぞれを共に表記したものである。
〔 (メタ)アクリル酸エステル類の重量の合計量総和 〕をA(重量部)、
〔 (メタ)アクリル酸エステル類の重量 〕をAx(重量部)
として、前記アクリル系樹脂層のアクリル当量は、
(メタ)アクリル酸エステル類の中のそれぞれの(メタ)アクリル酸エステルについてMx×Ax÷Aの値を求め、用いるアクリル酸エステル類が1種類の場合はその値がアクリル当量である。なお、2種以上の化合物を用いる場合は、個々に上記の式により数値を求め、それらの総和として求めることができる。」
段落0035の「アクリル当量」を「アクリル系樹脂層のアクリル当量」に訂正する。
段落0045の
「離型フィルム
本発明の離型フィルムは、・・・、さらにアクリル系樹脂層の表面に離型層を形成したものである。」を
「離型フィルム
本発明の離型フィルムは、アクリル系樹脂層を介して離型層及び熱可塑性樹脂からなる基材層が設けられている離型フィルムであって、前記アクリル系樹脂層が3~6個の(メタ)アクリロイル基を有し、ラジカル重合型の上記の特定の多官能(メタ)アクリレートの割合が、用いられる多官能(メタ)アクリレートの70質量%以上からなるアクリル系樹脂層を有し、上記の求め方で得られるアクリル当量が200以下である離型フィルムである。本発明の離型フィルムは、好ましくは熱可塑性樹脂からなる基材層の表面にラジカル重合型の多官能(メタ)アクリレートからなるアクリル系樹脂層を設け、さらにアクリル系樹脂層の表面に離型層を形成したものである。」に訂正する。
段落0046の
「本発明の離型フィルムにおいては、・・・、巻き出し帯電圧を低減させることができる。」を
「本発明の離型フィルムにおいては、3~6個の(メタ)アクリロイル基を有し、ラジカル重合型の上記の特定の多官能(メタ)アクリレートの割合が、用いられる多官能(メタ)アクリレートの70質量%以上であり、上記の求め方で得られるアクリル当量が200以下であるアクリル系樹脂層を設けることにより、表面平滑性を向上させることができ、かつ、巻き出し帯電圧を低減させることができる。」に訂正する。
段落0050の
「離型フィルムの製造方法
本発明の離型フィルムの好適な製造方法は以下の通りである。・・・、活性エネルギー線により硬化させてアクリル系樹脂層を形成する。」を
「離型フィルムの製造方法
本発明の離型フィルムの好適な製造方法は以下の通りである。すなわち、基材層となるフィルムの片面に、3~6個の(メタ)アクリロイル基を有し、ラジカル重合型の上記の特定の多官能(メタ)アクリレートの割合が、用いられる多官能(メタ)アクリレートの70質量%以上であり、上記の求め方で得られるアクリル当量が200以下となる多官能(メタ)アクリレートの有機溶剤溶液を塗布した後、活性エネルギー線により硬化させてアクリル系樹脂層を形成する。」に訂正する。
段落0051、0052、0053、0054の「多官能アクリレート」を「多官能(メタ)アクリレート」に訂正する。
段落0059の、実施例3、実施例4についての記載を削除する。
段落0067、0068を削除する。
段落0059の「アクリル酸エステル」(6か所)を「アクリル酸エステル類」に訂正する。
段落0062の、実施例3、実施例4についての記載を削除する。実施例2の「アクリル当量」の値「141~184」を「191」に訂正する。
段落0059、0061、0064の「実施例1~4」、段落0059、0064の「実施例1~3」を、いずれも「実施例1又は2」に訂正する。
段落0064の「表面粗さ(SRa)は2.8~4.1nm」を「表面粗さ(SRa)は3.4~4.1nm」に訂正する。
エ 訂正事項4
段落0059中の「アクリル当量」という語句、及びその具体的数値を削除する。
オ 訂正事項5
段落0045(2か所)、0046、0050、0051、0052、0053、0054の「多官能アクリレート」を「多官能(メタ)アクリレート」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1、2は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項3、4、5は、訂正事項1、2の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の整合を図るもので、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1ないし6は、請求項2ないし6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし6について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1ないし6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材層に、アクリル系樹脂層を介して離型層が設けられている離型フィルムであって、
前記アクリル系樹脂層が(メタ)アクリル酸エステル類である多官能(メタ)アクリレートからなり、そのうちの
アルコキシ化イソシアヌル酸多官能(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート、
トリペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート
よりなる群から選ばれ、
かつ、
3~6個の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合型の
多官能(メタ)アクリレートの割合が用いられる多官能(メク)アクリレートの中の70質量%以上であり、
下記の求め方により得られる前記アクリル系樹脂層のアクリル当量が200以下であることを特徴とする離型フィルム。
アクリル当量の求め方
前記アクリル系樹脂層のアクリル当量は、次のように計算する。
〔(メタ)アクリル酸エステル類の分子量〕÷〔(メタ)アクリロイル基数 〕をMxとし、ただし、(メタ)アクリロイル基数とは、アクリル酸エステル類に含まれているアクリロイル基の数の場合と、メタクリル酸エステル類に含まれているメタクリロイル基の数の場合のそれぞれを共に表記したものである。
〔(メタ)アクリル酸エステル類の重量の合計量総和〕をA(重量部)、
〔(メタ)アクリル酸エステル類の重量〕をAx(重量部)
として、前記アクリル系樹脂層のアクリル当量は、
(メタ)アクリル酸エステル類の中のそれぞれの(メタ)アクリル酸エステル類についてMx×Ax÷Aの値を求め、用いるアクリル酸エステル類が1種類の場合はその値がアクリル当量である。なお、2種以上の化合物を用いる場合は、個々に上記の式により数値を求め、それらの総和として求めることができる。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記ラジカル重合型の多官能(メタ)アクリレートがエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、又はエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレートの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記基材層がポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエステルよりなる群から選ばれる何れかを主成分とすることを特徴とする請求項1又は3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記基材層が少なくとも一方向に延伸されていることを特徴とする請求項1、3又は4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層が付加反応型シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項1、3、4又は5のいずれかに記載の離型フィルム。
また、平成29年5月11日の特許権者の上申書のとおり、訂正明細書の段落0025の「70質量%以上」は誤記であり、正しくは「の70質量%以上」である。
(2)取消理由の概要
平成29年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
本件特許は、明細書、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
ア.本件特許の「アクリル当量」の定義が不明確である。樹脂層全体のものか、個々の化合物のものか。段落0034との関係も含め、明確にされたい。また、段落0059の実施例2においては、どうなるのか。
特許権者は、「アクリル系樹脂層」に「ジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート」を含むものを除外する意図があると解されるが、段落0012、0027の記載からみて、明確でない。
イ.本件特許の「アクリル樹脂層」は、官能基1のものを含んでも良いように解されるがどうか。段落0021との関係はどうか。
(3)判断
2.の訂正の認容により、特許請求の範囲、明細書が訂正され、平成29年3月21日の意見書による釈明も踏まえると、上記ア.の「アクリル当量」の定義は明確であり、イ.の「アクリル樹脂層」が官能基1のものを含んでも良いことは明確である。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1、3ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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