特許異議申立
2016-700525
熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物
- 審判番号
- 2016-700525
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-509476外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月08日
- 審決日
- 2017年04月25日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5828835号発明「熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5828835号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第5828835号の請求項1-15に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
特許第5828835号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、平成23年3月29日(優先日 平成22年4月8日)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年10月30日にその特許権の設定登録がされ、同年12月9日に特許公報が発行され、平成28年6月8日付け(受理日:同月9日)で特許異議申立人坂田純子(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において同年8月12日付けで取消理由が通知され、同年10月14日付け(受理日:同月17日)で意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年11月30日に意見書が提出され、同年12月15日付けで取消理由(以下、単に「取消理由2」という。)が通知され、平成29年2月17日付け(受理日:同月20日)で意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年4月5日に意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成29年2月17日付けでされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。 (なお、平成28年10月14日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものと見なされる。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(A-1)平均粒径0.1~2μmのフィラー成分、(A-2)平均粒径2~20μmのフィラー成分、(A-3)平均粒径20~100μmのフィラー成分を含有してなり、」
とあるのを
「(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径3.5μm以上8μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分」
と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は5~25質量%、(A-2)は25~40質量%、(A-3)は50~65質量%である」
とあるのを
「混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は10~20質量%、(A-2)は25~35質量%、(A-3)は50~60質量%である」
と訂正する
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書(以下、「明細書」という。)の【0043】に
「実施例18」
とあるのを
「参考例18」
と訂正する。
また、明細書の【0060】の【表3】に
「実施例18」
とあるのを
「参考例18」
と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0045】に
「実施例20」
とあるのを
「参考例20」
と訂正する。
また、明細書の【0061】の【表4】に
「実施例20」
とあるのを
「参考例20」
と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項ごとか否か、明細書又は図面の訂正に係る請求項の全てについて訂正の請求を行っているか
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1に(A-1)として、「平均粒径0.1~2μmのフィラー成分」とあったのを「平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分」とするものであり、平均粒径が0.1μm、2μmのフィラー成分が(A-1)に含まれるのかを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、同じく(A-2)として、「平均粒径2~20μmのフィラー成分」とあったのを「平均粒径3.5μm以上8μm未満のフィラー成分」とするものであり、平均粒径の下限値及び上限値を特定すると共に、その間の範囲を限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的し、また、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
また、同じく(A-3)として、「平均粒径20~100μmのフィラー成分」とあったのを「平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分」とするものであるから、(A-2)の訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的し、また、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
また、訂正事項1は、明細書の段落【0013】に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項1に(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は「5~25質量%」とあったのを「10~20質量%」とするものであり、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
そして、同じく(A-2)は「25~40質量%」、(A-3)は「50~65質量%」とあったのを(A-2)は「25~35質量%」、(A-3)は「50~60質量%」とするものであり、これらは同様に、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
また、訂正事項2は、明細書の段落【0014】に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3及び訂正事項4
訂正事項3及び訂正事項4は、訂正事項2によって、特許請求の範囲の(A-1)~(A-3)の各成分の割合が訂正され、特許請求の範囲での各成分の割合を満たしていた「例」が特許請求の範囲での各成分の割合を満たさないこととなったことに伴い、そのような「例」を「実施例」から「参考例」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3及び訂正事項4は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項3及び訂正事項4は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、明細書の訂正に係る全ての請求項について行うものである。
(4)一群の請求項
訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の請求項1に係るものであり、訂正前の請求項2ないし15は請求項1を直接的に又は間接的に引用するものである。そして、訂正事項3及び訂正事項4は発明の詳細な説明の記載に係るものである。
よって、訂正事項1ないし4は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3及び4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし15について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明15」という。)は、本件訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記(A)~(D)成分を含有してなる組成物。
(A)(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径3.5μm以上8μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は10~20質量%、(A-2)は25~35質量%、(A-3)は50~60質量%であるフィラー成分
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C)硬化触媒
(D)シランカップリング剤
【請求項2】
前記混合割合が、(A-1)が10~20質量%、(A-2)が25~35質量%、(A-3)が50~60質量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)成分が絶縁性を有する熱伝導性フィラーである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)成分が、粘度300~3,000mPa・s、重量平均分子量3,000~25,000の加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(B)成分が、(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール及び(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを含有してなる請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
(A)成分は前記組成物全体に対して60~95質量%の量で、(C)成分は(B)成分に対して0.01~10質量%の量で、(D)成分は(B)成分に対して0.01~10質量%の量で含まれる請求項1から7いずれかに記載の組成物。
【請求項9】
(C)成分が、ビスマス系硬化触媒である請求項1から8いずれかに記載の組成物。
【請求項10】
(C)成分が、チタン系硬化触媒である請求項1から8いずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の硬化体が、デュロメーターアスカー硬度計による硬度が90以下である請求項1から10いずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる熱伝導性組成物。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる放熱材。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させる放熱方法。」
第4 取消理由2の概要
取消理由2の概要は以下の通りである。
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~5に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の請求項6~15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲1及び甲11に記載された事項及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1、甲12に記載された公知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項6~15に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲1:特開2001-302936号公報
甲2:特開2010-6923号公報
甲3:特開2009-138036号公報
甲4:特開2001-348488号公報
甲5:特開2008-260855号公報
甲6:特開2009-179771号公報
甲7:特開2007-246861号公報
甲8:特開2007-277406号公報
甲9:特開2007-204510号公報
甲11:特開2010-242006号公報
甲12:特開2010-53331号公報
なお、甲1ないし9、11及び12は、何れも、異議申立人が提出した特許異議申立書に添付されたものである。
第5 取消理由2についての判断
1.甲1に記載された事項及び記載された発明
(1)甲1には、以下の事項が記載されている。
ア
「【請求項1】 一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)、前記加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋させるための架橋性化合物(B)、及び、熱伝導性充填材(C)からなることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】 加水分解性シリル基含有化合物(A)は、アルコキシシリル基が、ポリアルキレングリコール、又はポリイソブチレン中に置換して存在する加水分解性シリル基含有ポリマーである請求項1記載の熱伝導性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
イ
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記現状に鑑み、本発明は、優れた熱伝導性と共に、優れた強度と密着性をも併せ持つ高熱伝導性の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の熱伝導性樹脂組成物は、一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)、上記加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋させるための架橋性化合物(B)、及び、熱伝導性充填材(C)からなるものである。以下に本発明の詳細を説明する。
【0008】上記加水分解性シリル基としては特に限定されず、例えば、ケイ素原子にアルコキシル基を結合させたもの、ケイ素原子にオキシム基を結合させたもの、ケイ素原子にアルケニルオキシ基を結合させたもの、ケイ素原子にアセトキシ基を結合させたもの、ケイ素原子にハロゲン基を結合させたもの等が挙げられるが、中でも、得られる樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から、ケイ素原子にアルコキシル基を結合させたアルコキシシリル基が好ましい。
【0009】さらに、上記加水分解性シリル基含有化合物(A)は、得られる熱伝導性樹脂組成物の粘度設計のし易さ、硬化後の凝集力と被着物への粘着性のバランスを両立出来る点等から、加水分解性シリル基含有ポリマーであることが好ましい。」(段落【0006】~【0009】)
ウ
「【0012】上記加水分解性シリル基含有ポリマーの分子量としては特に限定されず、例えば、4千~3万のものが好ましく、特に1万~3万で分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下のものが扱いやすく好ましい。
【0013】上記アルコキシシリル基としては、例えば、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基等が挙げられ、また、アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0014】上記アルコキシシリル基が、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基である場合、同じアルコキシル基を用いても良いし、異なるアルコキシル基を組み合わせて用いても良い。上記アルコキシシリル基の上記ポリマーへの置換位置は、ポリマー末端に位置していても良いし、ポリマーの側鎖に位置していても良い。また、ポリマー末端と側鎖の両方に位置していても良い。
【0015】上記加水分解性シリル基含有化合物(A)としては、例えば、商品名「MSポリマー」(ポリプロピレングリコール系)で、MSポリマーS-203、S-303、S-903;商品名「サイリルポリマー」で、サイリルSAT-200、MA-403、MA-447;商品名「エピオンポリマー」(ポリイソブチレン系)で、EP103S、EP303S、EP505S等が鐘淵化学工業から市販されている。また、商品名「エクセスター」(ポリプロピレングリコール系)で、ESS-2410、ESS-2420、ESS-3630等が旭硝子工業から市販されている。
【0016】上記加水分解性シリル基含有化合物(A)の粘度は特に限定されないが、10cps~10000cpsの範囲が好ましい。粘度が10cps未満では、充填材を混練・混合させる際に剪断が伝わらず、充填材粒子同士が凝集したり、ベース樹脂中に均一に分散せず混ざりにくくなり、10000cpsを超えると粘度が高くなり過ぎて、充填量が分散せず混ざりにくくなる。
【0017】本発明に用いられる架橋性化合物(B)は、加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋するために用いられるものであり、加水分解性シリル基含有化合物(A)の架橋を空気中の湿気で促進させ又は触媒作用を示すものであれば、特に限定されず例えば、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ-n-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物、ジブチルアミン-2-エチルヘキソエート等のアミン塩や、他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用出来る。
【0018】上記加水分解性シリル基含有化合物(A)と上記架橋性化合物(B)との配合割合は特に限定されないが、例えば、加水分解性シリル基含有化合物(A)100重量部に対して、架橋性化合物(B)0.01~20重量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0019】上記架橋性化合物(B)が、0.01重量部より少ない場合、加水分解性シリル基含有化合物(A)の硬化速度が著しく低下し、実用に適さなくなり、20重量部を超えると、硬化速度は充分早くなるが、硬化後のバルクへの影響が著しく現れるようになり、充分な接着力を得ることが困難になる。
【0020】本発明で使用される熱伝導性充填材(C)としては、通常、熱伝導性樹脂組成物中に配合されるものが挙げられ、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類;窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類;炭化ケイ素等の炭化物類;銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル等の金属充填材;チタン等の金属合金充填材;ダイヤモンド、炭素繊維、カーボンブラック等の炭素系充填材;石英、石英ガラス等のシリカ粉類等が用いられる。また、無機充填材粒子に銀や銅等や炭素材料を表面被覆したもの、金属充填材粒子に無機材料や炭素材料を表面被覆したものを使用しても良い。これらは単独又は2種類以上を併用出来る。
【0021】上記熱伝導性充填材(C)としては、これらの充填材とベースとなる樹脂との親和性を向上させるためにシラン処理等の各種表面処理を行った充填材を用いても良い。また、粒子形状についても特に限定されるものではなく、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状、不定形等が用いられる。
【0022】上記熱伝導性充填材(C)の配合量は、通常は、5~90体積%が好ましく、より好ましくは20~80体積%である。熱伝導性充填材の含有量が20体積%未満であると効率的な熱伝導性を得ることが出来ず、80体積%を超えると組成物の硬度が高くなってしまい、放熱部材の表面の凹凸への密着追従性が悪く接触熱抵抗が増大し効率的な熱伝導性が得られなくなる。
【0023】本発明の熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じて物性調整剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等が添加されても良い。上記物性調整剤として、各種シランカップリング剤が挙げられ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用出来る。」(段落【0012】~【0023】)
エ
「【0029】(実施例1)加水分解性シリル基含有化合物(A)として、MSポリマーS303(鐘淵化学工業社製)100重量部、架橋性化合物(B)として、錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)1重量部、及び熱伝導性充填材(C)として、窒化ホウ素SGP(電気化学工業社製)150重量部を、脱泡攪拌機を用いて均一混合行い、熱伝導性樹脂組成物を調製後、型に流し込み室温で40時間以上放置硬化させ、シート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0030】(実施例2)熱伝導性充填材(C)を、230重量部にしたこと以外は、実施例1と同様の配合及び方法でシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0031】(実施例3)熱伝導性充填材(C)を、酸化アルミニウムAL-33(住友化学工業社製)390重量部にしたこと以外は、実施例1と同様の配合及び方法でシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0032】(実施例4)加水分解性シリル基含有化合物(A)を、エピオンポリマーEP505S(鐘淵化学工業社製)100重量部、架橋性化合物(B)を錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)2重量部にしたこと以外は実施例2と同様の配合、方法で組成物を調製した後、200℃にて硬化させる共に、プレスしてシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0033】(実施例5)加水分解性シリル基含有化合物(A)を、MSポリマーS303(鐘淵化学工業社製)50重量部、架橋性化合物(B)を錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)1重量部、熱伝導性充填材(C)として、窒化ホウ素SGP(電気化学工業社製)150重量部、さらに可塑剤として、D2000(日本油脂社製;ポリプロピレングリコール)50重量部を組成物として、実施例1と同様の方法にてシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0034】(実施例6)加水分解性シリル基含有化合物(A)を、エピオンポリマーEP505S(鐘淵化学工業社製)50重量部、架橋性化合物(B)を錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)1重量部、及び熱伝導性充填材(C)として、窒化ホウ素SGP(電気化学工業社製)230重量部、可塑剤として、D2000(日本油脂社製;ポリプロピレングリコール)50重量部としたこと以外は実施例4と同様の方法でシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。」(段落【0029】~【0034】)
(2)上記(1)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)、前記加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋させるための架橋性化合物(B)、熱伝導性充填材(C)を含む熱伝導性樹脂組成物であって、前記加水分解性シリル基含有化合物(A)はアルコキシシリル基がポリアルキレングリコール中に置換して存在する加水分解性シリル基含有ポリマーである熱伝導性樹脂組成物。」
2.本件特許発明1
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「熱伝導性充填材(C)」は、本件特許発明1の「(A)(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は5~25質量%、(A-2)は25~40質量%、(A-3)は50~65質量%であるフィラー成分」のフィラー成分であるという範囲に限り一致する。
甲1発明の「一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)」は、アルコキシシリル基がポリアルキレングリコール中に置換して存在する加水分解性シリル基含有ポリマーであるから、本件特許発明1の「(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール」に相当する。
甲1発明の「架橋性化合物(B)」は、加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋するものであるから、本件特許発明1の「硬化触媒」に相当する。
そうしてみると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「(A)フィラー成分
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C)硬化触媒
を含有してなる組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)(A)フィラー成分について、本件特許発明1では「(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は5~25質量%、(A-2)は25~40質量%、(A-3)は50~65質量%である」のに対して、甲1発明ではそのような特定がされていない点。
(相違点2)本件特許発明1ではシランカップリング剤を含有するのに対して、甲1発明ではそのような特定がされていない点。
(2)判断
ア まず、相違点1について検討する。
甲2ないし甲9には、以下の記載がある。
(ア)甲2
「【請求項1】
(A)23℃における粘度が10~100mPa・sであり、下記一般式で表されるアルケニル基含有シロキサンオリゴマー100重量部と、
【化1】(合議体注:化学式は省略)
(式中、Zはアルケニル基、mは0~20の整数、nは10~40の整数であり、m+nは10~40である。)
(B)(B1)平均粒径が10μm以上、50μm未満のアルミニウム粉末または酸化アルミニウム、(B2)平均粒径が1μm以上、10μm未満のアルミニウム粉末または酸化アルミニウムおよび(B3)平均粒径が0.1μm以上、1μm未満の酸化アルミニウムをそれぞれ含む熱伝導性充填剤1000~3000重量部(但し、(B1)は(B)成分全体の50~70容量%(vol%)となる量、(B2)は(B)成分全体の10~30vol%となる量、(B3)は(B)成分全体の10~30vol%となる量である。)と、
(C)白金系触媒の触媒量と、
(D)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、(A)成分のアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子が0.5~2.0個となる量、および
(E)接着性付与剤1.0~10重量部
を含有することを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。」
「【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、低粘度で作業性(塗布作業性)が良好であり、接着性に優れ高い熱伝導性を有する硬化物を形成するシリコーン組成物を提供することを目的とする。」
(イ)甲3
「【請求項1】
(A)23℃における粘度が10~100mPa・sであり、下記一般式で表されるアルケニル基含有シロキサンオリゴマー 100重量部、
【化1】(合議体注:化学式は省略)
(式中、R1は独立に炭素原子数1~6のアルキル基、R2は独立に炭素原子数2~10のアルキレン基、R3は-COOR2-で表される基、Xは炭素原子数1~4のアルコキシ基、a,bは1以上の整数、cは0以上の整数、a+b+cは4以上である。Aは下記一般式:
【化2】(合議体注:化学式は省略)
(式中、R1は前記規定の通り、Zはアルケニル基、dは10~40の整数、eは0~20の整数、d+eは10~40である。)で表される基である。)
(B)下記(B1)、(B2)及び(B3)を含む熱伝導性充填剤 1000~3000重量部(但し、(B1)は(B)成分中、50~70vol%となる量、(B2)は10~30vol%となる量、(B3)は10~30vol%となる量)、
(B1)平均粒径が10μm以上、50μm未満の酸化アルミニウムもしくはアルミニウム、
(B2)平均粒径が1μm以上、10μm未満の酸化アルミニウムもしくはアルミニウム、
(B3)平均粒径が0.1μm以上、1μm未満の酸化アルミニウム
(C)白金系触媒、
(D)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)成分のアルケニル基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子が0.12~0.18個となる量、ならびに
(E)イソパラフィン系溶剤 20~40重量部
を含有することを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物。」
「【0006】
本発明の目的は、オイルブリードを抑制するとともに作業性に優れ、良好な熱伝導性を有する熱伝導性シリコーングリース組成物を提供することにある。」
(ウ)甲4
「【請求項1】 平均粒径が50~100μmの粒子が30~60質量部、平均粒径が5~30μmの粒子が30~60質量部、平均粒径0.1~3μmの粒子が5~15質量部含まれた無機フィラーを80~95重量%配合して、硬化物の熱伝導率を3~10W/mKとして成ることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。」
「【0011】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、無機充填材が高充填されて、熱伝導性に優れた成形物を得ることができる熱伝導性樹脂組成物、この熱伝導性樹脂組成物を用いて形成され、熱伝導性に優れた成形物を得ることができるプリプレグ、このプリプレグを絶縁層の形成のために用いることにより、優れた熱伝導性を有する絶縁層を容易に形成することができて低コスト化が可能であり、かつ優れた放熱性が付与されると共に大電流化が容易な放熱性回路基板、及び上記のプリプレグにて形成される接着層を介して金属放熱体が取り付けられることにより、優れた熱伝導性を有する接着層を容易に形成することができて低コスト化が可能であり、かつ優れた放熱性が付与さた放熱性発熱部品を提供する事を目的とする。」
(エ)甲5
「【請求項1】
硬化性ベース樹脂100重量部に対し、酸化アルミ粒子と窒化アルミ粒子の混合粒子が1000から1300重量部の範囲で充填され、かつ、前記混合粒子のうち窒化アルミ粒子が500から700重量部の範囲であることを特徴とする熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項2】
前記酸化アルミ粒子は、平均粒径が略0.5μmの粒子と平均粒径が略10μmの粒子とを混合した粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項3】
前記酸化アルミ粒子において、平均粒径が略0.5μmの粒子と平均粒径が略10μmの粒子との重量比は、略1:5であることを特徴とする請求項2に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」
「【請求項8】
前記窒化アルミ粒子は、平均粒径が略40μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」
「【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、熱伝導率が高く、硬化重合後も所定の柔軟性を持ち、硬化前の粘度が低い熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。」
(オ)甲6
「【請求項1】
硬化性ベース樹脂100重量部に対し、150W/m・K以上の熱伝導率を有する粒子がX重量部、20W/m・K以上の熱伝導率を有し、少なくとも粒子表面が金属酸化物である粒子がY重量部配合されたとき、1.0X+0.4Y≧700を満たす粒子が配合されたことを特徴とする熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項2】
前記150W/m・K以上の熱伝導率を有する粒子は、窒化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項3】
前記窒化アルミニウム粒子は、平均粒径が40~100μmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項4】
前記窒化アルミニウム粒子は、小粒径の窒化アルミニウムを造粒し、焼結することにより略球状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至3に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項5】
前記窒化アルミニウム粒子は、多糖類または酸化ケイ素により表面処理がなされることを特徴とする請求項2乃至4に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項6】
前記20W/m・K以上の熱伝導率を有し、少なくとも粒子表面が金属酸化物である粒子は、酸化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項7】
前記酸化アルミニウム粒子は、平均粒径が略0.7μmの粒子と、平均粒径が略10μmの粒子とを混合した粒子であることを特徴とする請求項6に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」
「【請求項13】
窒化アルミニウム粒子と酸化アルミニウム粒子の混合比が、重量比で略4:6~6:4であることを特徴とする請求項12に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」
「【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、硬化性で熱伝導率が高い熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。」
(カ)甲7
「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)アルミナ粉末を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物の固形分当たりの(D)アルミナ粉末の含有率が86~95重量%、(D)アルミナ粉末の最大粒子径が120μm以下、及び(D)アルミナ粉末中での結晶性の球状アルミナの割合が90重量%以上であり、
上記結晶性の球状アルミナの粒子径分布が、平均粒子径D50が35~50μmであると共に[体積平均粒子径]/[個数平均粒子径]が1.2~2.0の範囲のものが30~50重量%、平均粒子径D50が5~15μmであると共に[体積平均粒子径]/[個数平均粒子径]が2.0~3.5の範囲のものが30~50重量%、及び平均粒子径D50が0.1~2μmのものが10~30重量%であり、かつ、
樹脂組成物の固形分当たりの煮沸抽出水ナトリウムイオンが20ppm以下であると共にICP発光分光分析法で検出される鉄分が100ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物。」
「【0006】
本発明の目的は、金属基板に絶縁接着層を介して回路が形成される金属ベース回路基板において、熱伝導性に優れると共に、耐電圧特性及び接着性に優れた絶縁接着層を形成することができる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、熱伝導性に優れると共に、耐電圧特性及び接着性に優れたワニス、フィルム状接着剤、及びフィルム状接着剤付き銅箔を提供することにある。」
(キ)甲8
「【請求項1】
平均粒径50~100μmの球状アルミナ粒子が60~80vol%、平均粒径0.5~7μmの球状アルミナ粒子が5~30vol%、平均粒径0.5~7μmの非球状アルミナ粒子が10~35vol%の配合で含まれることを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド用配合粒子。」
「【0007】
従来の技術である球状の大径粒子と球状の小径粒子の組合せでは、高い熱伝導率が得られない。また、球状の大径粒子と非球状の小径粒子の組合せでは、高い熱伝導率は得られるが、放熱シートが硬くなり、シートの柔軟性を低下させるという問題があり、高熱伝導率と低シート硬度を両立することは困難であった。
そこで本発明は、高熱伝導率と柔軟性に優れた低シート硬度を両立した放熱シートを製造することができる高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート用配合粒子、高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート、および、その製造方法を提供することを課題とする。」
(ク)甲9
「【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び無機充填材(D)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化促進剤(C)が一般式(1)で表されるホスホベタイン化合物(c1)を含むものであり、前記無機充填材(D)が平均粒径10μm以上40μm以下、比表面積1m2/g以上3.5m2/g以下の球状溶融シリカ(d1)を含むものであり、かつ該球状溶融シリカ(d1)が平均粒径20μm以上60μm以下、比表面積0.1m2/g以上0.5m2/g以下の球状溶融シリカ(d11)と、平均粒径0.1μm以上10μm以下、比表面積1m2/g以上50m2/g以下の球状溶融シリカ(d12)とを含んでなるものであることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】(合議体注:化学式は省略)
(ただし、上記一般式(1)において、Xは水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1以上3以下の整数。)」
「【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、金線変形が発生し難く、流動性、成形性、硬化性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び耐半田性に優れた半導体装置を提供することにある。」
イ 上記ア(ア)ないし(ク)によれば、甲2ないし甲9から、熱硬化性樹脂を含む熱伝導性樹脂組成物にフィラー成分を含ませる技術において、熱伝導性樹脂組成物の粘度や熱伝導性などの制御を意図して、平均粒径が異なる3種のものを併用することが知られていたことを理解することができる。
ここで、平均粒径が異なる3種類のフィラーの配合割合は、特許請求の範囲の記載だけみても、例えば甲2、甲3では、最も大きい平均粒子径の配合割合は、中程度の平均粒子径の配合割合よりも多いが、中程度の平均粒子径と最も小さい平均粒子径の配合割合とはほぼ同等であるのに対して、甲4、甲7では、最も大きい平均粒子径の配合割合は、中程度の平均粒子径の配合割合とほぼ同等で、最も小さい平均粒子径の配合割合よりも多くなっていて、一様ではないし、さらに実施例まで含めて検討すると、様々な配合割合のパターンがあることが示されている。(以下、イに記載の事項を、「甲2ないし甲9に記載された公知技術1」あるいは「公知技術1」という。)
ウ そうしてみると、甲1発明と公知技術1とを併せて考えると、甲1発明において使用されているフィラー成分として、平均粒径が異なる3種類のフィラーを使用することまでは容易に行い得ても、平均粒径が最も大きいフィラー成分の配合割合を一番多くし、次に、中程度の平均粒径のものの配合割合を多くし、最も小さな平均粒径のものの配合割合を最小にするようにそれぞれの配合割合を調整することまで容易に行えるものとはすることができない。
加えて、本件発明1では、平均粒径が最も大きいフィラー成分の平均粒径として「30μm以上80μm以下」を、中程度のものの平均粒径として「3.5μm以上8μm未満」を、最も小さなものの平均粒径として「0.1μm以上2μm未満」をそれぞれ選択し、それぞれの配合割合も、順に「50~60質量%」、「25~35質量%」、「10~20質量%」としているが、大きさの範囲や配合割合には多くの選択肢がある中で、どのような範囲、割合とするのかは一義的に決定されることではないと認められる。
したがって、相違点1は、当業者が適宜なし得たことであるとすることができない。
エ そうしてみると、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び公知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
3.本件特許発明2ないし本件特許発明5
本件特許発明2は、本件特許発明1の混合割合をさらに特定するものである。
上記2.(2)エのとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、本件特許発明2についても同様に、甲1発明及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件特許発明3ないし本件特許発明5も同様である。
4.本件特許発明6
(1)新規性及び進歩性の判断の基準日
本件出願は、以下の先の出願に基づく優先権を主張するものである。
先の出願:特願2010-89116号(出願日:平成22年4月8日、特許異議申立書に添付された甲第14号証(以下、「甲14」という。))
しかしながら、以下の理由により、本件特許発明6に対して、先の出願に基づく優先権の効果は認められず、本件特許発明6についての新規性及び進歩性の判断の基準日は、本件出願の実際の出願日である平成23年3月29日である。
<理由>
本件特許発明6における「(B)成分が、(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである」という発明特定事項は、甲14に記載がなく、自明な事項でもない。
よって、本件特許発明6は、先の出願には記載されていないので、先の出願に基づく優先権の効果は認められない。
本件特許発明6についての新規性及び進歩性の判断の基準日は、平成23年3月29日であるから、公知日が平成22年10月28日である甲11は、本件特許発明6に関しては、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。なお、請求項6を引用する本件特許発明8ないし15についても同様である。
(2)判断
本件特許発明6は、本件特許発明1ないし3の(B)成分をさらに特定するものである。
上記2.(2)エのとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、本件特許発明6についても同様に、甲1発明、甲11に記載された事項及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
5.本件特許発明7ないし本件特許発明15
(1)本件特許発明7
上記4.と同様の理由により、本件特許発明7に対して、先の出願に基づく優先権の効果は認められず、本件特許発明7についての新規性及び進歩性の判断の基準日は、本件特許の出願日である平成23年3月29日である。
したがって、公知日が平成22年10月28日である甲11は、本件特許発明7に関しては、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。
しかしながら、上記4.(2)と同様に、本件特許発明7についても同様に、甲1発明、甲11に記載された事項及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件特許発明8ないし本件特許発明15
上記4.及び5.と同様に、本件特許発明8ないし本件特許発明15は、甲1発明、甲11に記載された事項及び公知技術1、甲12に記載された公知技術2から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
6.小括
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件特許の請求項6~15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲1及び甲11に記載された事項及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1、甲12に記載された公知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
第6 結語
上記第5のとおり、取消理由2によっては、本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700525