特許異議申立
2016-700492
光半導体リフレクタ用エポキシ樹脂組成物、光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて得られる光半導体装置用リードフレーム、封止型光半導体素子ならびに光半導体装置
- 審判番号
- 2016-700492
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-520092外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月31日
- 審決日
- 2018年05月31日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5825650号発明「光半導体リフレクタ用エポキシ樹脂組成物、光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて得られる光半導体装置用リードフレーム、封止型光半導体素子ならびに光半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5825650号の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~13]について訂正することを認める。
特許第5825650号の請求項1~13に係る特許を取り消す。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5825650号の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成27年10月23日付けでその特許権の設定登録がされ、同年12月2に特許掲載公報が発行されたところ、特許掲載公報の発行の日から6月以内である平成28年5月31日(同年6月1日特許庁受理)に特許異議申立人木平ゆう子(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1~13に対して特許異議の申立てがされた。
その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年10月 3日付け:取消理由通知書
平成28年11月28日付け:訂正請求書
平成28年11月28日付け:意見書(特許権者)
平成29年 3月 1日付け:意見書(特許異議申立人)
平成29年 8月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成29年10月18日付け:訂正請求書
平成29年10月18日付け:意見書(特許権者)
平成29年11月30日付け:意見書(特許異議申立人)
平成30年 1月 9日付け:審尋(特許権者に対して)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年10月18日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。なお、特許法120条の5第7項の規定により、平成28年11月28日にされた先の訂正請求は取り下げられたものとみなす。)は、明細書、特許請求の範囲を訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項(a)~(i)からなる(以下、訂正事項(a)~(i)をまとめて「本件訂正」という。)。
(当審注:下線は、請求人が付したものである。)
(1)訂正事項(a)
特許請求の範囲の請求項1に、「下記の(A)~(C)を含有することを特徴とする光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。」とあるのを、
「下記の(A)成分とともに白色顔料および無機質充填剤を含有する光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物であって、上記白色顔料が下記の(B)成分のみからなり、上記無機質充填剤が下記の(C)成分のみからなり、かつ上記(B)成分と(C)成分との混合割合が、体積比で、(C)/(B)=2~30であることを特徴とする光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。」に訂正する。
(2)訂正事項(b)
特許請求の範囲の請求項1に、「(C)無機質充填剤。」とあるのを、
「(C)溶融シリカ粉末。」に訂正する。
(3)訂正事項(c)
願書に添付した明細書の段落【0007】に、「上記目的を達成するために、本発明は、下記の(A)~(C)を含有する光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)バンドギャップ(禁制帯)が3.3~5.5eVで、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下である、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび硫化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つの白色顔料。
(C)無機質充填剤。」とあるのを、
「上記目的を達成するために、本発明は、下記の(A)成分とともに白色顔料および無機質充填剤を含有する光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物であって、上記白色顔料が下記の(B)成分のみからなり、上記無機質充填剤が下記の(C)成分のみからなり、かつ上記(B)成分と(C)成分との混合割合が、体積比で、(C)/(B)=2~30である光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)バンドギャップ(禁制帯)が3.3~5.5eVで、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下である、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび硫化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つの白色顔料。
(C)溶融シリカ粉末。」に訂正する。
(4)訂正事項(d)
願書に添付した明細書の段落【0012】に、「このように、本発明は、前記熱硬化性樹脂(A)と、特定のバンドギャップ(禁制帯)を有し、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下の特定の白色顔料(B)と、無機質充填剤(C)を含有する光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物である。」とあるのを、
「このように、本発明は、前記熱硬化性樹脂(A)とともに白色顔料および無機質充填剤を含有する光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物であって、上記白色顔料が、特定のバンドギャップ(禁制帯)を有し、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下の特定の白色顔料(B)のみからなり、上記無機質充填剤が溶融シリカ粉末(C)成分のみからなり、かつ上記(B)成分と(C)成分との混合割合が、体積比で、(C)/(B)=2~30である光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物である。」に訂正する。
(5)訂正事項(e)
願書に添付した明細書の段落【0013】に、「そして、上記白色顔料(B)と無機質充填剤(C)の合計含有割合が特定範囲であり、」とあるのを、
「そして、上記白色顔料(B)と溶融シリカ粉末(C)の合計含有割合が特定範囲であり、」に訂正する。
(6)訂正事項(f)
願書に添付した明細書の段落【0015】に、「本発明の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物(以下、「熱硬化性樹脂組成物」ともいう)は、例えば、先に述べたように、図1に示す光半導体装置あるいは後述の図2および図3に示す光半導体装置、図4に示す封止型光半導体素子の、リフレクタ4、11、15形成材料として用いられるものであって、熱硬化性樹脂(A成分)と、特定の白色顔料(B成分)と、無機質充填剤(C成分)とを用いて得られるものであり、通常、液状、あるいはシート状、粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状にしてリフレクタ4、11、15形成材料に供される。」とあるのを、
「本発明の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物(以下、「熱硬化性樹脂組成物」ともいう)は、例えば、先に述べたように、図1に示す光半導体装置あるいは後述の図2および図3に示す光半導体装置、図4に示す封止型光半導体素子の、リフレクタ4、11、15形成材料として用いられるものであって、熱硬化性樹脂(A成分)と、特定の白色顔料(B
成分)と、溶融シリカ粉末(C成分)とを特定の割合で用いて得られるものであり、通常、液状、あるいはシート状、粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状にしてリフレクタ4、11、15形成材料に供される。」に訂正する。
(7)訂正事項(g)
願書に添付した明細書の段落【0035】に、「〈C:無機質充填剤〉
上記A~B成分にとともに用いられる無機質充填剤(C成分)としては、例えば、石英ガラス粉末、タルク、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等のシリカ粉末、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ケイ素粉末等があげられる。中でも、線膨張係数の低減等の観点から、溶融シリカ粉末を用いることが好ましく、特に高充填性および高流動性という観点から、溶融球状シリカ粉末を用いることが好ましい。なお、無機質充填剤(C成分)は、上記特定の白色顔料(B成分)を除く。上記無機質充填剤(C成分)の粒径およびその分布に関しては、上記特定の白色顔料(B成分)の粒径およびその分布との組み合わせを、熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形等により成形する際のバリ等が最も低減するように配慮することが好ましい。具体的には、無機質充填剤(C成分)の平均粒径は、5~100μmであることが好ましく、特に好ましくは10~80μmである。なお、上記平均粒径は、前述と同様、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。」とあるのを、
「〈C:溶融シリカ粉末〉
上記A~B成分にとともに用いられる無機質充填剤としては、線膨張係数の低減等の観点から、溶融シリカ粉末(C成分)が用いられ、特に高充填性および高流動性という観点から、溶融球状シリカ粉末を用いることが好ましい。上記溶融シリカ粉末(C成分)の粒径およびその分布に関しては、上記特定の白色顔料(B成分)の粒径およびその分布との組み合わせを、熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形等により成形する際のバリ等が最も低減するように配慮することが好ましい。具体的には、溶融シリカ粉末(C成分)の平均粒径は、5~100μmであることが好ましく、特に好ましくは10~80μmである。なお、上記平均粒径は、前述と同様、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。」に訂正する。
(8)訂正事項(h)
願書に添付した明細書の段落【0036】に、「そして、上記無機質充填剤(C成分)の含有割合においては、上記特定の白色顔料(B成分)と無機質充填剤(C成分)の合計の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体の10~90体積%となるように設定することが好ましい。」とあるのを、
「そして、上記溶融シリカ粉末(C成分)の含有割合においては、上記特定の白色顔料(B成分)と溶融シリカ粉末(C成分)の合計の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体の10~90体積%となるように設定することが好ましい」に訂正する。
(9)訂正事項(i)
願書に添付した明細書の段落【0037】に、「さらに、上記特定の白色顔料(B成分)と無機質充填剤(C成分)の混合割合は、初期光反射率の観点から、体積比で、(C成分)/(B成分)=1~36であることが好ましく、特に好ましくは2~30である。」とあるのを、
「さらに、上記特定の白色顔料(B成分)と溶融シリカ粉末(C成分)の混合割合は、初期光反射率の観点から、体積比で、(C成分)/(B成分)=2~30に設定される。」に訂正する。
2 当審の判断
(1)訂正事項(a)及び(b)について
ア 訂正の目的の適否
請求項1に係る訂正事項(a)は、白色顔料を(B)成分に限定し、無機質充填剤を(C)成分に限定し、かつ(B)成分と(C)成分の混合割合を体積比で(C)/(B)=2~30の範囲に限定するものであり、請求項1に係る訂正事項(b)は、無機質充填剤を(C)溶融シリカ粉末に限定するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、
「【0033】
〈B:特定の白色顔料〉
上記A成分とともに用いられる特定の白色顔料(B成分)としては、バンドギャップ(禁制帯)が3.3~5.5eVである特定の白色顔料が用いられる。このバンドギャップとは、その結晶のバンド構造における価電子帯の上端から、伝導帯の下端までの間のエネルギー差をいい、各単体、化合物およびそれらの結晶系に固有の値である。上記特定範囲のバンドギャップを有する特定の白色顔料(B成分)としては、具体的には、酸化亜鉛(バンドギャップ3.3eV、屈折率2.0)、酸化ジルコニウム(ZrO2)(バンドギャップ4~5eV、屈折率2.1)があげられる。さらに、硫化物としては、硫化亜鉛(ウルツ)(バンドギャップ3.9eV、屈折率2.4)があげられる。そして、長期耐光性のみならず初期光反射率の観点から、屈折率が2.0~3.0のものが好ましい。さらに、着色が少なく、化学的安定性、安全性、価格を含む入手容易性、および生産性の観点から、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ZrO2)が好ましく用いられ、酸化ジルコニウム、特に単斜晶の酸化ジルコニウムが好ましく用いられる。さらに、その中でも、流動性という観点から、平均粒径が0.01~50μmのものを用いることが好ましく、0.01~30μmのものを用いることがより好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。また、光反射率の観点から、白色顔料に含まれる不純物の中でもFe2O3の含有量が0.01質量%以下でなければならない。」
「【0035】
〈C:無機質充填剤〉
上記A~B成分にとともに用いられる無機質充填剤(C成分)としては、例えば、石英ガラス粉末、タルク、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等のシリカ粉末、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ケイ素粉末等があげられる。中でも、線膨張係数の低減等の観点から、溶融シリカ粉末を用いることが好ましく、特に高充填性および高流動性という観点から、溶融球状シリカ粉末を用いることが好ましい。なお、無機質充填剤(C成分)は、上記特定の白色顔料(B成分)を除く。上記無機質充填剤(C成分)の粒径およびその分布に関しては、上記特定の白色顔料(B成分)の粒径およびその分布との組み合わせを、熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形等により成形する際のバリ等が最も低減するように配慮することが好ましい。具体的には、無機質充填剤(C成分)の平均粒径は、5~100μmであることが好ましく、特に好ましくは10~80μmである。なお、上記平均粒径は、前述と同様、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。」
「【0037】
さらに、上記特定の白色顔料(B成分)と無機質充填剤(C成分)の混合割合は、初期光反射率の観点から、体積比で、(C成分)/(B成分)=1~36であることが好ましく、特に好ましくは2~30である。すなわち、B成分とC成分の混合割合が、上記範囲を外れ、体積比が小さすぎると、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が上昇して混練が困難になる傾向がみられ、体積比が大きすぎると、熱硬化性樹脂組成物の初期光反射率が低下する傾向がみられる。
【0038】
〈他の添加剤〉
そして、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記A~C成分以外に、必要に応じて、硬化促進剤、離型剤、シラン化合物を配合することができる。さらには、変性剤(可塑剤)、酸化防止剤、難燃剤、脱泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。」
との記載があり、当該記載によれば、本件明細書には、白色顔料(B成分)として酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び硫化亜鉛(ウルツ)が用いられることが記載され、無機質充填剤として石英ガラス粉末、タルク、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等のシリカ粉末、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ケイ素粉末等が用いられることが記載され、その中に溶融シリカ粉末が含まれる。また、「特定の白色顔料(B成分)と無機質充填剤(C成分)の混合割合は、初期光反射率の観点から、体積比で、(C成分)/(B成分)=1~36であることが好ましく、特に好ましくは2~30である。」との記載がある。よって、訂正事項(a)及び(b)は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項(a)及び(b)は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、この訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。よって、訂正事項(a)及び(b)は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項(c)ないし(i)について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項(c)ないし(i)は、本件明細書の段落0007、0012、0013、0015、0035、0036、及び0037の記載を、訂正事項(a)及び(b)に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるものであるから、該訂正は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項(c)ないし(i)は、本件明細書の段落0007、0012、0013、0015、0035、0036、及び0037の記載を、訂正事項(a)及び(b)に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるものであるから、上記(1)で検討したとおり、該訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項(c)ないし(i)は、本件明細書の段落0007、0012、0013、0015、0035、0036、及び0037の記載を、訂正事項(a)及び(b)に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるものであるから、該訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。よって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
エ 願書に添付した明細書の訂正にかかる請求項について
訂正事項(c)ないし(i)は、本件明細書の段落0007、0012、0013、0015、0035、0036、及び0037の記載を、訂正事項(a)及び(b)に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるものであるから、訂正事項(c)ないし(i)による明細書の訂正にかかる請求項は請求項1~13である。すなわち、訂正事項(c)ないし(i)は、訂正前の一群の請求項1~13の全ての請求項を対象とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
(3)一群の請求項について
本件の請求項2~13に係る発明は、本件の請求項1に係る発明に従属するものである。
したがって、本件の請求項2~13は、上記訂正事項(a)及び(b)によって記載が訂正される本件の請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項[1~13]について訂正を認める。
第3 訂正発明
上記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の訂正後の請求項1~13に係る発明は、請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
下記の(A)成分とともに白色顔料および無機質充填剤を含有する光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物であって、上記白色顔料が下記の(B)成分のみからなり、上記無機質充填剤が下記の(C)成分のみからなり、かつ上記(B)成分と(C)成分との混合割合が、体積比で、(C)/(B)=2~30であることを特徴とする光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)バンドギャップ(禁制帯)が3.3~5.5eVで、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下である、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび硫化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つの白色顔料。
(C)溶融シリカ粉末。
【請求項2】
上記(B)の屈折率が2.0~3.0である請求項1記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
上記(B)が、酸化ジルコニウムである請求項1または2記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
上記(B)および(C)の合計の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体の10~90体積%であり、かつ(B)の含有割合が熱硬化性樹脂組成物全体の3~50体積%である請求項1~3のいずれか一項に記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
厚み方向の片面のみに光半導体素子を搭載するための板状の光半導体装置用リードフレームであって、互いに隙間を隔てて配置される複数のプレート部を備えるとともに、上記隙間に、請求項1~4のいずれか一項に記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物を用いて充填し、硬化してなるリフレクタが形成されてなることを特徴とする光半導体装置用リードフレーム。
【請求項6】
光半導体素子搭載領域を備え、それ自体の少なくとも一部で素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる立体状の光半導体装置用リードフレームであって、上記リフレクタが、請求項1~4のいずれか一項に記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする光半導体装置用リードフレーム。
【請求項7】
上記リフレクタが、リードフレームの片面にのみ形成されている請求項6記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項8】
上記リフレクタがトランスファー成形または射出成形により光半導体装置用リードフレームに形成されてなる請求項5~7のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項9】
その片面に光半導体素子を搭載するための素子搭載領域を有するプレート部が、互いに隙間を隔てて配置され、上記素子搭載領域の所定位置に光半導体素子が搭載されてなる光半導体装置であって、上記隙間に、請求項1~4のいずれか一項に記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物を用いて充填し、硬化してなるリフレクタが形成されてなることを特徴とする光半導体装置。
【請求項10】
光半導体素子搭載領域を備え、それ自体の少なくとも一部で素子搭載領域の周囲を囲んだ状態でリフレクタが形成されてなる光半導体装置用リードフレームの所定位置に光半導体素子が搭載されてなる光半導体装置であって、上記リフレクタが、請求項1~4のいずれか一項に記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする光半導体装置。
【請求項11】
リフレクタで囲まれた光半導体素子を含む領域をシリコーン樹脂にて樹脂封止されてなる請求項10載の光半導体装置。
【請求項12】
裏面に複数の接続用電極が形成されてなる光半導体素子の側面に請求項1~4のいずれか一項に記載の光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物からなるリフレクタが形成され、上記光半導体素子上部の発光面あるいは受光面が封止層にて被覆されてなることを特徴とする封止型光半導体素子。
【請求項13】
配線回路基板の所定位置に、請求項12記載の封止型光半導体素子が、その接続用電極を介して搭載されてなる光半導体装置。」
(以下、順に「訂正発明1」~「訂正発明13」といい、「訂正発明1」~「訂正発明13」を合わせて「訂正発明」という。)
第4 取消理由(決定の予告)の概要
請求項1~13に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した平成29年8月22日付け取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
本件発明1ないし本件発明13は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
[引用文献等一覧]
甲4:特開2013-40343号公報(平成25年2月28日)
(以下、周知例として)
甲1:特開2013-1776号公報(平成25年1月7日)
甲2:特開2008-270709号公報
甲5:特開2005-170719号公報
甲6:特開2012-227470号公報
特開2010-160471号公報
特開2013-79331号公報(平成25年5月2日)
特開2008-227166号公報
特開2011-225828号公報
第5 当審の判断
1 訂正発明1について
(1)甲4の記載
甲4には以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。以下、同様。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形して、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクターを形成する工程を備え、
前記熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有し、前記(A)エポキシ樹脂及び前記(B)硬化剤の少なくとも一方が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含む、リフレクターの製造方法。
・・・(中略)・・・
【請求項4】
前記(D)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
・・・(中略)・・・
【請求項6】
前記(D)白色顔料の配合量が、前記熱硬化性樹脂組成物全体に対して10~85体積%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射用熱硬化性樹脂組成物、光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置に関する。」
「【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トランスファー成形時の離型性が十分に高く連続成形性に優れ、光半導体素子搭載用基板に必要とされる光学特性に優れる硬化物を形成可能である光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような樹脂組成物を用いることによって、信頼性の高い光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を製造することが可能となる。」
「【0079】
<(D)白色顔料>
本実施形態に係る(D)白色顔料は、公知のものを使用することができ、特に限定されない。白色顔料として、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上併用することができる。無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス(白砂)が挙げられる。中でも、熱伝導性及び光反射特性の観点からは、白色顔料として、アルミナを用いることが好ましい。
【0080】
白色顔料の中心粒径は、0.1~50μmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が低下する傾向があり、50μmを超えると硬化物の光反射特性が十分に得られ難くなる。
【0081】
(D)白色顔料の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10~85体積%であることが好ましく、20~75体積%であることがより好ましい。この配合量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が十分に得られ難い傾向があり、85体積%を超えると熱硬化性樹脂組成物の成型性が低下する傾向がある。
【0082】
また、熱硬化性樹脂組成物が(D)白色顔料と共に後述する無機充填剤を含有する場合、(D)白色顔料と無機充填材との合計配合量が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10~85体積%であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性をより一層向上することができる。
【0083】
<その他の成分>
(無機充填材)
熱硬化性樹脂組成物は成形性を調整するために、無機充填材を含むことが好ましい。なお、無機充填剤として、上記白色顔料と同様のものを用いてもよい。無機充填材として、例えば、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、アルミナ、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素が挙げられる。熱伝導性、光反射特性、成形性及び難燃性の点から、無機充填剤は、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる2種以上の混合物であることが好ましい。無機充填材の平均粒径は、白色顔料とのパッキング性を向上させる観点から、1~100μmであることが好ましく、1~40μmであることがより好ましい。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物における無機充填剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1~1000質量部であることが好ましく、1~800質量部であることがより好ましい。」
「【0126】
」
「【0129】
表1から明らかなように、実施例1~6の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を硬化剤として含有することにより、トラスファー成形時の離型性が十分に高く連続成形性に優れることが確認された。これに対し、比較例1~5の光反射用熱硬化性樹脂組成物では離型性が悪く連続成形できなかった。また、比較例6~7の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、初期の離型性は比較的良好であるものの、連続成形数が30ショット未満となり、連続成形が困難であった。これは離型剤の分散性が十分ではなく、離型性を低下させる金型汚れがショット毎に蓄積されて、少ないショット数で離型不可能となったためと考えられる。」
(2)甲4発明
上記(1)から、甲4には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「光半導体装置用の光反射用熱硬化性樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化触媒及び(D)白色顔料を含有し、前記(A)エポキシ樹脂及び前記(B)硬化剤の少なくとも一方が、オルガノシロキサン骨格を有する化合物を含み、
前記(D)白色顔料が、酸化ジルコニウムである組成物。」
(3)対比
訂正発明1と甲4発明を対比すると、両者は
「下記の(A)、(B)を含有することを特徴とする光半導体装置用熱硬化性樹脂組成物。
(A)熱硬化性樹脂
(B)酸化ジルコニウムである白色顔料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
白色顔料について、訂正発明1では「バンドギャップ(禁制帯)が3.3~5.5eVで、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下」と特定されているのに対し、甲4発明はそのような特定がされていない点。
[相違点2]
訂正発明1は「下記の(A)成分とともに白色顔料および無機質充填剤を含有」し、「上記白色顔料が(B)成分のみからなり、上記無機質充填剤が溶融シリカ粉末である(C)成分のみからなり、かつ上記(B)成分と(C)成分との混合割合が、体積比で、(C)/(B)=2~30である」のに対し、甲4発明はそのような特定がされていない点。
(4)検討
ア 相違点1について
(ア)酸化ジルコニウムのバンドギャップが3.3~5.5eVの範囲内であることは、技術常識から明らかであり(例えば、特開2010-160471号公報【0118】表1の「酸化ジルコニウム」の欄参照)、相違点1のうち訂正発明1において「バンドギャップ(禁制帯)が3.3~5.5eV」と特定されている点は、実質的な相違点ではない。(イ)酸化ジルコニウム等の白色顔料について、Fe2O3の含有量が少ないもの、例えば当該含有量が0.01%以下のものを用いることは周知の技術である(例えば、甲2(【0068】、【0072】)に、光に対する反射特性の観点から白色系物質であることが好ましい熱伝導性フィラーについて、酸化鉄の含有量は好ましくは0.01質量%以下であることが記載され、甲5(【0002】、【0003】)に、白色度が極めて高いことが求められる酸化ジルコニウムの製造の際に、着色の原因となるFeを除去、低減する手段がとられることが記載されている。また、甲1(【0091】)に、白色顔料のジルコニアとして「第一希元素化学工業株式会社製UEP-100」が例示され、前記「UEP-100」は、Fe2O3の含有量が0.01質量%以下であると認められる。)。
甲4発明は、光反射用熱硬化性樹脂組成物であるから、反射特性が良好な白色度の高い白色顔料を用いることは当業者が容易に普通に想到し得ることであり、上記周知の技術のように、酸化鉄の含有量が少ない酸化ジルコニウムを採用することは、当業者が容易になし得ることである。
(ウ)したがって、相違点1に係る訂正発明1の構成とすることは、周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
(ア)白色顔料が(B)成分(酸化ジルコニウム)のみからなる点について
甲4の段落【0079】に「白色顔料として、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び無機中空粒子が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上併用することができる。」(下線は、当審で付与した。)とあるように、白色顔料として酸化ジルコニウムを単独で用いることが記載されている。
(イ)無機質充填剤を含有すること、及び無機質充填剤が(C)成分(溶融シリカ粉末)のみからなる点について
甲4(【0083】)には、成形性を調整するために無機充填材を含むことが好ましいことが記載されている。ここで、「無機充填材」は訂正発明1の「無機質充填剤」に相当する。
そして、甲4には、「無機充填材」として「溶融球状シリカ」のみが用いられた実施例が記載されている(段落0126の表1参照。)。ここで、「溶融球状シリカ」は訂正発明1の「溶融シリカ粉末」に相当する。
(ウ)(B)成分と(C)成分との混合割合について
甲4には、「【0081】(D)白色顔料の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10~85体積%であることが好ましく、20~75体積%であることがより好ましい。この配合量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が十分に得られ難い傾向があり、85体積%を超えると熱硬化性樹脂組成物の成型性が低下する傾向がある。」との記載がある。
甲1には、「【0054】アルミナは、近紫外線の光反射効果が高く、近紫外線による変質が小さい観点からも、白色顔料として特に好ましい。また、アルミナを白色顔料の主成分として用いることにより、後述する樹脂成形体用材料の熱伝導率を0.4以上3.0以下の範囲に制御することができる。アルミナの含有量を上記範囲とすることによって、反射率が十分に高く、かつ成形性のよい樹脂成形体用材料を得ることができる。アルミナの含有量が、樹脂成形体用材料全体量に対して40質量%未満であると十分な光反射効果が得られず、90質量%を超えると、材料の粘度が高くなるため成形が困難となる場合がある。」との記載がある。
特開2011-225828号公報には、以下の記載がある。
「【0029】
無機質充填剤として上記希土類元素酸化物以外に他の無機質充填剤を併用する場合、かかる他の無機質充填剤としては、通常樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機質充填剤の平均粒径や形状は特に限定されないが、平均粒径は通常4~40μm、特には7~35μmが好ましい。
これらの中では、ケイ素、マグネシウム、チタン、亜鉛及びアルミニウムから選ばれる元素の酸化物が好ましい。特に、溶融シリカ、溶融球状シリカが成形性、流動性等の点で好適に用いられる。」
「【0036】
上記他の無機質充填剤の配合量は、全無機質充填剤量から希土類元素酸化物量を除いた残部量であり、全無機質充填剤の0~90質量%、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%である。この場合、白色顔料としての二酸化チタンを全無機質充填剤の1~30質量%、特に5~30質量%を含有することが好ましく、また溶融シリカ、溶融球状シリカを5~79質量%、特に10~65質量%含有することが好ましい。
【0037】
上記無機質充填剤の配合量は、有機樹脂100質量部に対し50~1000質量部、好ましくは100~900質量部、特に好ましくは200~850質量部である。
無機質充填剤配合量が少なすぎると、リフレクターの光反射率が低下し、発光半導体装置が十分な輝度を発揮できない場合がある。一方、無機質充填剤配合量が多すぎると、樹脂組成物の溶融粘度が増大により流動性が悪化し、リフレクターを成形する際に未充填等の不具合が発生する場合がある。」
これら甲4、甲1及び特開2011-225828号公報に記載されているように、リフレクターの樹脂材料に含有される白色顔料を含む無機質充填剤の含有量は、成形の観点及び光反射特性の観点から当業者が適宜決定し得るものであるといえる。
一方、本件発明4に関連して、本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
「【0036】
そして、上記無機質充填剤(C成分)の含有割合においては、上記特定の白色顔料(B成分)と無機質充填剤(C成分)の合計の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体の10~90体積%となるように設定することが好ましい。より好ましくは60~90体積%であり、特に好ましくは65~85体積%である。すなわち、上記合計の含有割合が少なすぎると、成形時に反りが発生する等の問題が生じる傾向がみられる。また、合計の含有割合が多すぎると、配合成分を混練する際、混練機に多大な負荷がかかり、混練が不可能となる傾向がみられ、結果、成形材料である熱硬化性樹脂組成物を作製することが困難となる傾向がみられる。
【0037】
さらに、上記特定の白色顔料(B成分)と無機質充填剤(C成分)の混合割合は、初期光反射率の観点から、体積比で、(C成分)/(B成分)=1~36であることが好ましく、特に好ましくは2~30である。すなわち、B成分とC成分の混合割合が、上記範囲を外れ、体積比が小さすぎると、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が上昇して混練が困難になる傾向がみられ、体積比が大きすぎると、熱硬化性樹脂組成物の初期光反射率が低下する傾向がみられる。」
よって、訂正発明1におけるB成分とC成分の含有割合は、成形の観点及び初期光反射率の観点から決められるものであり、甲4、甲1及び特開2011-225828号公報に記載されているのと同様に、成形の観点及び光反射特性の観点から当業者が適宜決定し得るものである。そして、訂正発明1の数値範囲とすることにより、当業者が予測し得ない格別の効果を奏するともいえない。
なお、特許権者は、平成29年10月18日付け意見書において、体積比(C/B)の臨界的意義は認められるものであると主張しているので、さらに検討する。
本件特許明細書の段落【0036】には、合計の含有割合が少なすぎると、成形時に反りが発生し、多すぎると混練が不可能となる傾向がみられると記載されており、段落【0037】には、体積比が小さすぎると混練が困難になる傾向がみられ、体積比が大きすぎると初期光反射率が低下する傾向がみられると記載されている。
これらの記載から、混練の困難性の観点については、体積比(C)/(B)だけでなく「合計の含有割合」あるいは白色顔料(B)又は無機質充填剤(C)の含有量も関係しているものといえる。
してみると、体積比(C)/(B)だけで混練の困難性の観点についての臨界的意義を論じることはできない。
また、本件特許明細書の段落【0034】には、熱硬化性樹脂組成物全体に対するB成分の含有割合が少なすぎると優れた初期光反射率が得られ難くなる傾向があると記載されており、段落【0037】には、体積比が大きすぎると初期光反射率が低下する傾向がみられると記載されている。
これらの記載から、初期光反射率の観点については、体積比(C)/(B)だけでなく熱硬化性樹脂組成物全体に対するB成分の含有割合も関係しているものといえる。
初期光反射率の観点について、平成29年10月18日付け意見書の 実験例の評価結果をみても、「体積比(C)/(B)=2~30」であれば、「合計の含有割合」あるいは白色顔料(B)又は無機質充填剤(C)の含有量にかかわらず初期光反射率85%以上であるとする評価結果は示されていない。
してみると、体積比(C)/(B)だけで初期光反射率の観点についての臨界的意義を論じることはできない。
さらに、当審は、体積比(C/B)の臨界的意義を明確に説明するよう、特許権者に対し平成30年1月9日に審尋をしたが、応答期間を経過しても回答がなかった。
したがって、体積比(C/B)の臨界的意義は認められるものではない。
(エ)以上のとおり、「白色顔料」である「酸化ジルコニウム」を単独で用い、「無機充填材」として「溶融球状シリカ」のみを用いることが甲4に記載されており、白色顔料を含む無機質充填剤の含有量は、成形の観点及び光反射特性の観点から当業者が適宜決定し得る事項といえるから、甲4発明において、相違点2に係る訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、訂正発明1は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 訂正発明2について
酸化ジルコニウムの屈折率が2.0~3.3の範囲内であることは技術常識から明らかである(例えば、上記の特開2010-160471号公報【0118】表1の「酸化ジルコニウム」の欄参照)。
したがって、訂正発明2は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 訂正発明3について
甲4発明における白色顔料は、酸化ジルコニウムである。
したがって、訂正発明3は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 訂正発明4について
甲4には、以下の記載がある。
「【0081】(D)白色顔料の配合量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10~85体積%であることが好ましく、20~75体積%であることがより好ましい。この配合量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が十分に得られ難い傾向があり、85体積%を超えると熱硬化性樹脂組成物の成型性が低下する傾向がある。
【0082】
また、熱硬化性樹脂組成物が(D)白色顔料と共に後述する無機充填剤を含有する場合、(D)白色顔料と無機充填材との合計配合量が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10~85体積%であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性をより一層向上することができる。」
ここで、甲4の数値範囲は、訂正発明4において、特定されている「上記(B)および(C)の合計の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体の10~90体積%であり、かつ(B)の含有割合が熱硬化性樹脂組成物全体の3~50体積%である」との数値範囲と共通する範囲があり、成形性や光反射特性の観点から当業者が適宜選択し得るものである。
訂正発明4におけるB成分とC成分の含有割合や(B)成分の含有割合についても、成形の観点及び初期光反射率の観点から決められるものであり、甲4、甲1及び特開2011-225828号公報に記載されているのと同様に、当業者が適宜決定し得るものであるといえる。そして、訂正発明4の数値範囲とすることにより、当業者が予測し得ない格別の効果を奏するともいえない。
したがって、訂正発明4は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 訂正発明5、6、7、9、10
リフレクタが形成された光半導体装置用リードフレームであって、板状のもの又は立体状のものは、いずれも周知である(例えば、板状のものについては、特開2008-227166号公報(【0024】~【0034】、図1、図2)及び特開2011-225828号公報(【0043】、【0046】、図2、図5)、立体状のものについては、甲4(【0101】、図1、図2)及び甲1(【0173】、図1)参照)。
甲4発明の組成物をこれら周知の光半導体装置用リードフレームのリフレクタの材料として用いることに困難性は認められない。
したがって、訂正発明5、6、7、9、10は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 訂正発明8について
リフレクタの形成方法として、トランスファー成形や射出成形は周知である(例えば、甲4(【請求項1】、甲1(【0164】、【0175】)参照)。
したがって、訂正発明8は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 訂正発明11について
リフレクタで囲まれた光半導体素子を含む領域をシリコーン樹脂で樹脂封止することは、周知の技術である(例えば、甲1(【0181】)、甲2(【0110】、【0111】)参照)
したがって、訂正発明11は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 訂正発明12、13について
裏面に複数の接続用電極が形成されてなる光半導体素子の側面にリフレクタが形成され、上記光半導体素子上部の発光面あるいは受光面が封止層にて被覆されてなる光半導体装置は周知である(例えば、甲6の【0024】、図1参照)。
甲4発明の組成物を、当該周知の光半導体装置のリフレクタの材料として用いることに困難性は認められない。
したがって、訂正発明12、13は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、訂正発明1~13は、甲4発明、周知の技術及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正発明1~13に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、訂正発明1~13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700492