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特許異議申立

2018-700207

調芯装置

審判番号
2018-700207
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-098856
登録番号
特許第6191537号(P6191537)
請求日
2018年03月06日
審決日
2018年10月11日
公報発行日
2019年02月22日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】SMC株式会社
  • 【権利者代理人】林 宏
  • 【権利者代理人】林 直生樹
  • 【異議申立人】鈴木 宏和
審判長/審判官
  • 審判長 深沢 正志
  • 審判官 小田 浩
  • 審判官 梶尾 誠哉
分類
P1651.121-ZC (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6191537号発明「調芯装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6191537号の請求項1ないし3及び5に係る特許を取り消す。 特許第6191537号の請求項4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6191537号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は,平成26年5月12日に出願され,平成29年8月18日にその特許権の設定登録がされ,平成29年9月6日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は,次のとおりである。 平成30年3月6日  : 特許異議申立人 鈴木宏和 による特許異議 の申立て 平成30年6月7日付け: 取消理由通知書(以下,「取消理由」という 。) 第2 本件発明 「【請求項1】 凹球面を有する装置本体と、前記凹球面に嵌合する凸球面を有する調芯部材とを備え、前記凹球面と凸球面との間にエアを供給することにより該凹球面と凸球面とを非接触状態にし、その状態で前記調芯部材を揺動させてワークを対象部位に平行に押し付けるようにした調芯装置において、 前記調芯装置が、前記凹球面の中心を通るZ軸の回りの前記調芯部材の回転を規制する回転規制機構を有し、 前記回転規制機構は、前記調芯部材の回りを取り囲むジョイントフレームと、該ジョイントフレームに、前記Z軸を挟んで該Z軸と直交するX軸方向の相対する位置を占めるように形成された孔状又は溝状をなす一対の第1嵌合部と、前記ジョイントフレームに、前記Z軸を挟んで該Z軸及び前記X軸と直交するY軸方向の相対する位置を占めるように形成された孔状又は溝状をなす一対の第2嵌合部と、前記装置本体の前記Z軸を挟んで相対する位置に前記X軸方向に形成され、前記一対の第1嵌合部に個別に嵌合する一対のX軸ピンと、前記調芯部材の前記Z軸を挟んで相対する位置に前記Y軸方向に形成され、前記一対の第2嵌合部に個別に嵌合する一対のY軸ピンとを有し、 前記X軸ピン及びY軸ピンは、均一直径を有する円柱状のピンであり、 前記第1嵌合部及び第2嵌合部の内壁は、前記X軸ピン及びY軸ピンの先端部側に向けて次第に横幅が拡大する方向に傾斜する傾斜面を有すると共に、該傾斜面の端部に、前記X軸ピン及びY軸ピンが当接する当接部を有する、 ことを特徴とする調芯装置。 【請求項2】 前記X軸ピンは、前記第1嵌合部に前記ジョイントフレームの外側から嵌合し、前記Y軸ピンは、前記第2嵌合部に前記ジョイントフレームの内側から嵌合し、前記第1嵌合部の前記傾斜面は、前記ジョイントフレームの外側から内側に向けて該第1嵌合部の横幅が次第に拡大する方向に傾斜し、前記第2嵌合部の前記傾斜面は、前記ジョイントフレームの内側から外側に向けて該第2嵌合部の横幅が次第に拡大する方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の調芯装置。 【請求項3】 前記X軸ピンは、前記第1嵌合部のZ軸方向の端部に接触することによって前記ジョイントフレームを支持しており、前記Y軸ピンは、前記第2嵌合部のZ軸方向の端部と非接触であることを特徴する請求項1又は2に記載の調芯装置。 【請求項4】 前記第1嵌合部及び第2嵌合部の前記傾斜面は、前記横幅が拡大する方向に直線状に傾斜していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の調芯装置。 【請求項5】 前記第1嵌合部及び第2嵌合部はZ軸方向に延びる溝であり、前記第2嵌合部は、前記ジョイントフレームの前記装置本体側を向く後端面に開口し、前記第1嵌合部は、前記ジョイントフレームの前記後端面と反対側の前端面に開口していることを特徴する請求項1から4の何れかに記載の調芯装置。」 (以下,請求項1ないし5に係る発明を,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。) 第3 取消理由の概要 請求項1ないし3及び5に係る特許に対して,当審が平成30年6月7日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。 本件発明1及び2は,甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1及び2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 本件発明3及び5は,甲第1号証に記載された発明及び甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから請求項3及び5に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって,請求項1ないし3及び5に係る特許は,取り消されるべきものである。 第4 甲号証の記載 1 甲第1号証 (1)甲第1号証の記載 取消理由で通知した特開2007-27516号公報(以下,「甲第1号証」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付与した。以下同じ。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、凹状半球面と凸状半球面を有する固定部材と可動部材を有し、当該可動部材を対象物(例えば、基板)に押し付けて平行に倣わせるようにした倣い装置に関する。 【0002】 例えば、ダイシングされた半導体チップをダイ・ボンディング装置のリードフレーム上に搬送するチップマウンタなどに用いられる倣い装置がある。この倣い装置は、凹状半球面を有する基台に、凸状半球面を有する揺動体が回動可能に支持されている。そして、半導体チップの特定面に、凸状及び凹状半球面の曲率中心にある揺動体のワーク倣い面を当接させると、揺動体が同一平面において互いに直交するX軸及びY軸を中心に回動する。この回動により、揺動体のワーク倣い面が半導体チップの特定面に合わせて傾動する。これにより、揺動体のワーク倣い面が半導体チップの特定面に対し平行になる。」 「【0013】 図1~図3に示すように、本実施形態の倣い装置10は、その主要構成部材として、基台(固定部材)11と、球面ベース(可動部材)12と、一対のサイドプレート(支持部材)13と、回り止めリング(回り止め部材)14と、押さえ部材15とを備えている。そして、基台11には、球面ベース12と、回り止めリング14と、押さえ部材15とが順に積まれて装着され、基台11の対向する側面に一対のサイドプレート13が装着されている。 【0014】 基台11は、平面視(Z軸方向から見た場合)正方形をなすブロック状に形成されている。基台11の一面には、凹状半球面16が形成されている。凹状半球面16の中央には、磁石(永久磁石)Mが設けられている。また、基台11の対向する側面には、サイドプレート13を装着するための複数(本実施形態では各2つ)のねじ孔17が形成されている。また、基台11には、図示しないエアポートが形成されている。エアポートは、図示しない圧力供給源に接続され、その圧力供給源から加圧流体としての加圧エアが基台11に形成された図示しないエア通路を介して凹状半球面16に供給されるようになっている。 【0015】 球面ベース12は、球面部18とベース部19とから構成される。球面部18には、凸状半球面20が形成されている。凸状半球面20は、基台11の凹状半球面16と同一の曲率半径で形成されている。このため、球面ベース12は、基台11に対して装着されると、凸状半球面20が凹状半球面16に係合される。 【0016】 また、球面ベース12には、凸状半球面20の反対面にベース部19が形成されている。ベース部19は、球面部18の基端側よりも小さい直径を有する円柱状に形成されている。そして、ベース部19の外周には、平坦状に切り欠かれた平坦面21が形成されている。平坦面21は、対向する2ヶ所に形成されている。 【0017】 各平坦面21には、ピン挿入孔22が形成されている。そして、ベース部19の各ピン挿入孔22には、各1本の回動規制ピン(第1突部(突部))23が装着されている。本実施形態において回動規制ピン23は、ピン挿入孔22に接着固定されている。また、回動規制ピン23は、その先端がベース部19の外方に突出するように装着されている。一対の回動規制ピン23は、ベース部19の径方向に沿って、同一軸線上に配置される。本実施形態において一対の回動規制ピン(第2突部(突部))23は、X軸方向に沿って直線的に配置される。また、ベース部19には、押さえ部材15を装着するための複数(本実施形態では4つ)のねじ孔24が形成されている。 【0018】 サイドプレート13は、平面視(Y軸方向から見た場合)長方形の平板状に形成されている。サイドプレート13には、複数(本実施形態では2つ)のねじ孔25が形成されている。サイドプレート13は、基台11に対して図示しないボルトなどの締結具により締結固定されている。 【0019】 また、各サイドプレート13には、ピン挿入孔26が形成されている。そして、各サイドプレート13のピン挿入孔26には、各1本の回動規制ピン27が装着されている。本実施形態において回動規制ピン27は、ピン挿入孔26に圧入固定されている。また、回動規制ピン27は、その先端がサイドプレート13の外方に突出するように装着されている。一対の回動規制ピン27は、サイドプレート13が基台11に装着されると、その先端が対向し、同一軸線上に配置される。本実施形態において一対の回動規制ピン27は、Y軸方向に沿って直線的に配置される。 【0020】 本実施形態の倣い装置10では、基台11に対して球面ベース12と一対のサイドプレート13が装着されると、各回動規制ピン23,27は、図1に示すように、Z軸方向に同一高さ位置で配置される。すなわち、各回動規制ピン23,27の中心軸線は、同一高さ位置に配置される。また、球面ベース12の回動規制ピン23とサイドプレート13の回動規制ピン27は、図2に示すように、直交配置される。本実施形態では、X軸とY軸によって形成されるXY平面において直交配置される。そして、回動規制ピン23と回動規制ピン27は、Z軸周りに90度間隔で、かつ交互に配置される。 【0021】 回り止めリング14は、球面ベース12の球面部18と同一径をなす外周面及びベース部19よりも大きい径をなす内周面を有するリング状に形成されている。回り止めリング14は、その内周面で球面ベース12のベース部19を包囲するように球面ベース12に対して装着されている。回り止めリング14の外周には、平坦状に切り欠かれた平坦面28が形成されている。平坦面28は、4ヶ所に形成されている。各平坦面28には、ピン挿入溝29が形成されている。ピン挿入溝29は、断面凹状(矩形溝)に形成されているとともに回り止めリング14の外周面と内周面とを貫通して形成されている。また、ピン挿入溝29は、回り止めリング14の径方向に沿って同一深さで、かつ、直線的に形成されている。 【0022】 各ピン挿入溝29には、回り止めリング14が球面ベース12に装着されると、図1及び図2に示すように、球面ベース12の回動規制ピン23とサイドプレート13の回動規制ピン27が摺動可能に係合される。各ピン挿入溝29は、回動規制ピン23,27の直径よりも若干大きい溝幅と溝深で形成されている。すなわち、各ピン挿入溝29は、回動規制ピン23,27が挿入された際、ピン挿入溝29と回動規制ピン23,27の外周面との間に若干の隙間(10μm)が設けられるように形成されている。 【0023】 押さえ部材15は、平面視(Z軸方向から見た場合)円形の平板状に形成されている。押さえ部材15の外径は、回り止めリング14の外径と同一径で形成されている。押さえ部材15には、複数(本実施形態では4つ)のねじ孔30が形成されている。押さえ部材15は、球面ベース12に対して図示しないボルトなどの締結具により締結固定されている。また、押さえ部材15において球面ベース12に装着される装着面と反対の面には、例えば、基板などの対象物の上面(特定面)に半導体チップを圧着するための図示しないツールが装着される。本実施形態の倣い装置10では、その曲率中心がツールの先端面(基板などの対象物の表面)にある。したがって、本実施形態の倣い装置10では、ツールの先端面がワークに当接する面、すなわち、倣い面となる。そして、本実施形態では、球面ベース12においてベース部19側の面が前記対象物と平行に倣う面となる。 【0024】 次に、本実施形態の倣い装置10で用いられる回動規制ピン23,27についてその構成を詳しく説明する。 本実施形態の回動規制ピン23,27は、図4(a),(b)に示すように、先端部(係合部位)31と挿入部32とからなる。本実施形態において、球面ベース12に装着される回動規制ピン23とサイドプレート13に装着される回動規制ピン27は、同一構成(形状、大きさ)とされている。挿入部32は、球面ベース12のピン挿入孔22及びサイドプレート13のピン挿入孔26に挿入される部位である。一方、先端部31は、球面ベース12及びサイドプレート13のそれぞれの外方に突出される部位である。回動規制ピン23,27は、その径方向断面が円形となる軸状に形成されている。そして、回動規制ピン23,27の先端部31は、軸方向中央が膨出し、その中央両側が縮径され、その全体が樽形となるように形成されている。すなわち、先端部31は、その全体が曲面をなすように形成されている。一方、挿入部32は、軸方向全体に亘って同一径をなす円柱状に形成されている。回動規制ピン23,27は、径方向断面が円形をなす平行ピンの先端が樽形となるように旋削などにより削り出すことで作製される。 【0025】 このように構成された本実施形態の倣い装置10では、基台11に対して球面ベース12と一対のサイドプレート13が装着される。そして、この状態で回り止めリング14が球面ベース12に装着されると、図1及び図2に示すように、各ピン挿入溝29に各回動規制ピン23,27が挿入され、係合される。これにより、球面ベース12は、基台11に対してX軸周り及びY軸周りへの回動(揺動)が許容される。一方で、球面ベース12は、各回動規制ピン23,27が回り止めリング14の各ピン挿入溝29に係合されることにより、Z軸周りへの回動が規制される。本実施形態では、回り止めリング14、ピン挿入溝29、及び回動規制ピン23,27によって回り止め装置が構成される。 【0026】 以下、本実施形態の倣い装置10の作用を説明する。 倣い装置10は、エアポートから加圧エアが供給されると、凹状半球面16に加圧エアが噴出される。これにより、基台11(凹状半球面16)と球面ベース12(凸状半球面20)との界面に静圧がもたらされ、球面ベース12は基台11から離間する。それと同時に、球面ベース12は、磁石Mの磁力によって基台11に引き寄せられる。したがって、球面ベース12は、基台11から離れる力と基台11に引き寄せられる力とが釣り合うことにより、凹状半球面16と凸状半球面20とが非接触な状態で回動可能に支持される。 【0027】 この状態において、倣い装置10が対象物(基板など)に押し付けられる。このとき、対象物がY軸方向に沿って傾斜していれば、その傾斜角度に追従するように球面ベース12はX軸周りに回動する。これにより、対象物がY軸方向に傾斜してもいても、ツールの先端面(倣い面)は対象物に対して平行に倣う。一方、対象物がX軸方向に沿って傾斜していれば、その傾斜角度に追従するように球面ベース12はY軸周りに回動する。これにより、対象物がX軸方向に傾斜していても、ツールの先端面(倣い面)は対象物に対して平行に倣う。 【0028】 また、倣い装置10では、球面ベース12のX軸周り及びY軸周りの回動(揺動)を許容するために、回動規制ピン23,27の外周とピン挿入溝29の内周との間に寸法差(本実施形態では10μm)が設けられている。この寸法差は、球面ベース12のZ軸周りの回動量、すなわち、回り止め精度に影響するため、その量は僅かな値に設定される。そして、本実施形態の倣い装置10では、回動規制ピン23,27が曲面を有するように形成されているので、組み付け時には回動規制ピン23,27とピン挿入溝29との相対的な位置関係(位置、角度)の調整が不要となる。すなわち、角部を有するピンの場合(例えば、矩形ピン)には、前記ピンを挿入するピン挿入溝に対する前記ピンの位置や角度を考慮して組み付けないと、球面ベース12の回動(揺動)により前記ピンがピン挿入溝にこじれることとなる。このように前記ピンがピン挿入溝にこじれると、球面ベース12のX軸周り及びY軸周りへの回動(揺動)が規制される。 【0029】 これに対して、本実施形態の回動規制ピン23,27は、曲面を有しているので、ピン挿入溝29に対してこじれず、当該曲面が逃げの役割を担う。このため、組み付け精度を厳しく設定することなく(ピン挿入溝29に対する回動規制ピン23,27の位置や角度を高精度に調整することなく)、組み付けられる。したがって、組み付け工数の削減を図りつつ、球面ベース12のX軸周り及びY軸周りの回動量(揺動量)も確保され、位置決め精度を向上し得る。図5(a)は、回り止めリング14のピン挿入溝29に回動規制ピン23,27が真っ直ぐに挿入された状態を示し、図5(b)は、ピン挿入溝29に回動規制ピン23,27が傾いて挿入された状態を示す。図5(b)に示すように回動規制ピン23,27が挿入されても、回動規制ピン23,27の先端部31が曲面を有することでピン挿入溝29に対してこじれない。本実施形態では、先端部31が曲面を有することにより、当該先端部31の先端がピン挿入溝29の内面に当接せず逃がされ、接触を回避する接触回避部となる。 【0030】 したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。 (1)球面ベース12の回り止めとなる回動規制ピン23,27を、その係合部31が曲面を有するように形成した。倣い装置10では、回動規制ピン23,27がピン挿入溝29に挿入されることにより、球面ベース12のZ軸周りの回動が規制される。そして、倣い装置10では、球面ベース12がX軸周り又はY軸周りに回動した際、回動規制ピン23,27がピン挿入溝29の内面にてこじれない。このため、倣い装置10の高精度化(位置決め精度の高精度化)を図ることができる。また、回動規制ピン23,27が曲面を有することにより、ピン挿入溝29の内面でこじないので、倣い装置10の組み付け時には回動規制ピン23,27とピン挿入溝29との相対的な位置関係(位置や角度)を精度良く調整する必要がない。したがって、製造コスト増を抑制できる。 【0031】 (2)回動規制ピン23,27は、球面ベース12及びサイドプレート13に対して圧入固定又は接着固定した。このため、回動規制ピン23,27の組み付けを簡素化することができる。すなわち、回動規制ピン23,27がピン挿入溝29の内面でこじないので、回動規制ピン23,27の組み付け精度を厳しく設定する必要がなく、圧入固定や接着固定で対応することができる。したがって、倣い装置10の製造工程を簡素化でき、製造コスト増を抑制できる。 【0032】 (3)回動規制ピン23,27を樽形に形成した。このため、回動規制ピン23,27を平行ピンなどの丸棒材から旋削などにより簡単に作製することができる。したがって、倣い装置10の製造コスト増を抑制できる。 【0033】 (4)サイドプレート13を、基台11に対してボルトなどにより締結固定した。このため、回動規制ピン23,27の組み付けを簡素化することができる。すなわち、回動規制ピン23,27がピン挿入溝29の内面でこじないので、回動規制ピン23,27の組み付け精度を厳しく設定する必要がなく、締結固定で対応することができる。したがって、倣い装置10の製造工程を簡素化でき、製造コスト増を抑制できる。」 「【0035】 ○ 実施形態において、回動規制ピン23,27やピン挿入溝29の形状を、図7及び図8に示すように変更しても良い。図7の別例では、まわりどめリング40と当該回り止めリング40に形成されたピン挿入溝41の形状が前期実施形態の回り止めリング14とピン挿入溝29の形状と同一であり、回動規制ピン42の形状が異なっている。回動規制ピン42は、円筒状の挿入部43(球面ベース12やサイドプレート13に挿入される部位)と、該挿入部43よりも小径の先端部(筒部)44とからなる。先端部44には、回動規制ピン42をピン挿入溝41に挿入した際に係合される円板部(係合部位)45が形成されている。また、図8の別例では、回り止めリング46の形状が前記実施形態の回り止めリング14の形状と同一であり、回り止めリング46に形成されたピン挿入溝47の形状が前記実施形態と異なっている。また、図8の別例では、回動規制ピン48が円筒型(径方向断面が円形)の平行ピンとされている。図8の別例において、ピン挿入溝47は、断面凹状に形成され、その延設方向の中央であって両溝側面には溝内に突出する突条部(係合部位)49が形成されている。突条部49は、溝の深さ方向に向かって同一突出幅で延設されている。これらの別例において、円板部45と突条部49は、厚みX(ピンの軸方向(ピン挿入溝の延設方向)に沿う厚み)が、1mm又はそれ以下となるように形成されていることが好ましい。この構成により、回動規制ピン42,48は、ピン挿入溝41,47内でこじれず、倣い装置10の組み付け時には回動規制ピン42,48とピン挿入溝41,47との相対的な位置関係(位置や角度)を精度良く調整する必要がない。図7の別例では、先端部44に当該先端部44よりも大径の円板部45を形成することにより、先端部44の角部(先端)がピン挿入溝41の内面に当接せず逃がされ、円板部45が接触を回避する接触回避部となる。図8の別例では、ピン挿入溝47内に突出する突条部49を形成することにより、回動規制ピン48の角部(先端)がピン挿入溝41の内面に当接せず逃がされ、突条部49が接触を回避する接触回避部となる。」 (2)甲第1号証発明について 上記(1)によれば,甲第1号証には,以下の発明(以下,「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。 「凹状半球面16を形成する基台(固定部材)11と,凸状半球面20を形成する球面部18とベース部19とから構成される球面ベース12と,一対のサイドプレート13と,回り止めリング14と,球面ベースに装着し装着面と反対の面にツールを装着する押さえ部材15とを備え, エアポートから加圧エアが供給されると,凹状半球面16に加圧エアが噴出され,凹状半球面16と凸状半球面20とを非接触な状態で回動可能に支持し,ツールの先端面(ワークに当接する面)が対象物に対して平行に倣う,倣い装置10において, 球面ベース12のベース部19を包囲するように球面ベース12に対して装着されることにより,球面ベース12が,基台11に対してX軸周り及びY軸周りへの回動(揺動)が許容され,Z軸周りへの回動を規制する,回り止めリング14を有し, 回り止めリング14の外周には,平坦状に切り欠かれた平坦面28を4ヶ所形成し,各平坦面28にピン挿入溝29が形成され,ピン挿入溝29は,断面凹状(矩形溝)に形成し,回り止めリング14の外周面と内周面とを貫通して形成するとともに,回り止めリング14の径方向に沿って同一深さで,かつ,直線的に形成し, ベース部19の外周には,X軸方向に沿って直線的に対向する2ヶ所に平坦状に切り欠かれた平坦面21を形成し,各平坦面21には,ピン挿入孔22が形成され,ピン挿入孔22に,その先端がベース部19の外方に突出するように,一対の回動規制ピン23をX軸方向に沿って直線的に配置し, 各サイドプレート13には,ピン挿入孔26を形成し,各1本の回動規制ピン27を装着し,一対の回動規制ピン27は,サイドプレート13が基台11に装着されると,その先端が対向するよう,Y軸方向に沿って直線的に配置し, 各回動規制ピン23,27は,径方向断面が円形をなす平行ピンの先端部31は軸方向中央が膨出し,その中央両側が縮径され,その全体が樽形となるようにし, 各回動規制ピン23,27が回り止めリング14の各ピン挿入溝29に係合されることにより,Z軸周りへの回動が規制されるとともに,回動規制ピン23,27の先端部31が曲面を有することでピン挿入溝29に対してこじれない 倣い装置10。」 2 甲第5号証 (1)甲第5号証の記載 取消理由で通知した特開2002-76030号公報(以下,「甲第5号証」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、回り止め装置及び倣い装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】例えば、ダイシングされた半導体チップをダイ・ボンディング装置のリードフレーム上に搬送するチップマウンタ等に用いられる倣い装置がある。この倣い装置は、凹状半球面を有する基台に、凸状半球面を有する揺動体が回動可能に支持されている。そして、半導体チップの特定面に、凸状及び凹状半球面の曲率中心にある揺動体のワーク当接面(倣い面)を当接させると、揺動体が同一平面において互いに直交するX軸及びY軸を中心に回動する。この回動により、揺動体のワーク当接面が半導体チップの特定面に合わせて傾動する。これにより、揺動体のワーク当接面が半導体チップの特定面に対し平行になる。 【0003】かかる倣い装置においては、基台と揺動体との摩擦抵抗が極めて低いため、揺動体はX軸及びY軸周りのみならず、X軸及びY軸を含む平面に対して直交するZ軸周りにも回動してしまう。この結果、倣い精度に悪影響を及ぼす。」 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の回り止め装置においては、各揺動ブロック同士を組み付けるために、それらを連結する多くの連結部材が必要となり部品点数が多い。しかも、各ブロックと支持部材とを組み付けるのに多くのネジを用いるため、組付けに手間がかかる。従って、構造が複雑化するとともに製造コストが高くなるという問題がある。 【0006】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工や組み付けを簡単にすることにより、製造コストの低減を図ることが可能な回り止め装置及びこれを用いた倣い装置を提供することにある。」 「【0048】(第2実施形態)次に、この発明の第2の実施形態を、前記第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。 【0049】さて、この第2の実施形態では、図6,図7,図9,図10に示すように、揺動体20の下面には、直方体状をなす第1の部材としての支持部材51がネジ52によって取付固定されている。支持部材51は、揺動体20の中心を通りかつX軸方向に沿って延設されている。本実施形態では、この支持部材51の先端部が第1突部51aとなっており、その第1突部51aは揺動体20の下端周縁よりも外方に突出されている。 【0050】揺動体20の下部周縁は切り欠かれており、その切欠き部分20bには第2の部材としてのリング状部材53が設けられている。このリング状部材53には、揺動体20の中心を通りかつX軸方向に沿って延びる第1溝部53aが形成されている。この第1溝部53a内には、前記支持部材51の先端部にある第1突部51aが摺動可能に係合されている。第1突部51aの両側面と、第1溝部53aの両側面とは互いに接触している。そして、揺動体20がX軸周りに回動することにより、両部材51,53は揺動体20と一体的に回動する。 【0051】Z軸方向において、第1突部51aと第1溝部53aとの間には、隙間S1が形成されている。又、揺動体20とリング状部材53との間には隙間S3が形成されている。この隙間S1,S3は、揺動体20がY軸周りに回動すると、隙間S1,S3の存在によって、両部材51,53同士及び部材20,53同士がそれぞれ当たらないように「逃げ」の役割を果たすためである。特に、本実施形態では第1突部51aと第1溝部53aとが対向する面には、バネ収容穴54が形成され、その内部には第1圧縮バネ55が収容されている。この第1圧縮バネ55の存在により隙間S1,S3が適度な間隔に保持される。なお、第1圧縮バネ55のバネ定数は、1~10gf/mmの範囲に設定されている。 【0052】図6,図7,図8,図10に示すように、基台11の両側部には第3の部材としてのL状支持部材60がネジ61によって取付固定されている。L状支持部材60の先端部は、揺動体20の中心を通りかつY軸方向に沿って延設されている。本実施形態では、このL状支持部材60の先端部が第2突部60aとなっており、その第2突部60aは揺動体20の切欠き部分20bに配置されている。 【0053】前記リング状部材53には、揺動体20の中心を通りかつY軸方向に沿って延びる第2溝部53bが形成されている。この第2溝部53b内には、前記L状支持部材60の先端部にある第2突部60aが摺動可能に係合されている。第2突部60aの両側面と、第2溝部53bの両側面とは互いに接触している。そして、揺動体20がY軸周りに回動することにより、支持部材51が揺動体20と一体的に回動する。 【0054】Z軸方向において、第2突部60aと第2溝部53bとの間には、隙間S2が形成されている。この隙間は、揺動体20がX軸周りに回動すると、隙間S2の存在によって両部材53,60同士が当たらないように「逃げ」の役割を果たすためである。特に、本実施形態では第2突部60aと第2溝部53bとが対向する面には、バネ収容穴62が形成され、その内部には第2圧縮バネ63が収容されている。この第2圧縮バネ63の存在により前記隙間S2が適度な間隔に保持される。要するに、リング状部材53は両圧縮バネ55,63を介して支持部材51及びL状支持部材60に支持されている。なお、第2圧縮バネ63のバネ定数は、前記第1圧縮バネ55と同じ1~10gf/mmの範囲に設定されている。 【0055】なお、支持部材51及びL状支持部材60は金属から形成され、リング状部材53はカーボンを含浸した合成樹脂から形成されている。つまり、リング状部材53は、軽量であって摩擦係数が小さい材料となっている。そのため、各部材51,53,60が相対移動する際に働く摩擦抵抗が低減されるようになっている。 【0056】次に、第2実施形態における倣い装置10の作用について説明する。第1実施形態で既に説明したように、揺動体20は環状多孔質材12に対して非接触な状態で回動可能に支持された状態で、倣い装置10全体が下降して基板Kに接近すると、ツール21の先端面が基板Kに当接する。ここで、基板Kの上面がY軸方向に沿って傾斜していれば、その傾斜角度に追従するように、揺動体20はX軸周りに回動する。 【0057】このとき、支持部材51及びリング状部材53は、揺動体20と一体的にX軸周りに回動する。これはリング状部材53とL状支持部材60との間に形成された隙間S2によって、リング状部材53の移動が許容されているからである。以上のように、基板KがY軸方向に傾斜していても、ツール21のワーク当接面21aは基板Kの表面に対して平行に倣う。 【0058】これに対して、基板Kの上面がX軸方向に沿って傾斜していれば、その傾斜角度に追従するように、揺動体20はY軸周りに回動する。このとき、支持部材51は、揺動体20と一体的にY軸周りに回動する。これはリング状部材53と支持部材51との間に形成された隙間S1、及びリング状部材53と揺動体20との間に形成された隙間S3によって、支持部材51と揺動体20の移動が許容されているからである。以上のように、基板KがX軸方向に傾斜していても、ツール21のワーク当接面21aは基板Kの表面に対して平行に倣う。 【0059】ツール21が基板Kに当接される際において、揺動体20及びツール21はZ軸周りに回動することがなく、ツール21のワーク当接面21aは、基板Kの表面に対し平行となるように倣う。これは、Y軸方向において、第1突部51aの両側面と、第1溝部53aの両側面とが接しており、更にX軸方向において、第2突部60aの両側面と、第2溝部53bの両側面とが互いに接しているからである。」 (2)甲第5号証記載事項について 上記(1)によれば,甲第5号証には,以下の事項(以下,「甲第5号証記載事項」という。)が記載されていると認められる。 甲第5号証記載事項 「倣い装置において, 加工や組み付けを簡単にすることにより,製造コストの低減を図るために, 揺動体20の下部周縁が切り欠かれ,その切欠き部分20bに第2の部材としてのリング状部材53が設けられ, 基台11の両側部にL状支持部材60がネジ61によって取付固定され,L状支持部材60の先端部が第2突部60aとなり,その第2突部60aは揺動体20の切欠き部分20bに配置され, 前記リング状部材53には,揺動体20の中心を通りかつY軸方向に沿って延びる第2溝部53bが形成され, 第2突部60aの両側面と,第2溝部53bの両側面とは互いに接触し,摺動可能に係合されている こと。」 第5 対比・判断 1 本件発明1について (1)本件発明1と甲第1号証発明との対比 ア 甲第1号証発明の「倣い装置10」は,「ツールの先端面(ワークに当接する面)が対象物に対して平行に倣う」装置であるから,本件発明1の「ワークを対象部位に平行に押し付けるように」することと同じ動作をしている認められる。そうすると,甲第1号証の発明の「倣い装置10」は,本件発明1の「調芯装置」に相当する。 イ 甲第1号証発明の「凹状半球面16を形成する基台(固定部材)11」は,本件発明1の「凹球面を有する装置本体」に相当する。 ウ 甲第1号証発明の「凸状半球面20を形成する球面部18とベース部19とから構成される球面ベース12」の「凸状半球面20」は,「凹状半球面16と凸状半球面20とを非接触な状態で回動可能に支持し」ているから,このことは,本件発明1の「前記凹球面に嵌合する凸球面」に相当する。 そうすると,甲第1号証発明の「凸状半球面20を形成する球面部18とベース部19とから構成される球面ベース12」は,本件発明1の「前記凹球面に嵌合する凸球面を有する調芯部材」に相当する。 エ 甲第1号証発明の「エアポートから加圧エアが供給されると,凹状半球面16に加圧エアが噴出され,凹状半球面16と凸状半球面20とを非接触な状態」とすることは,本件発明1の「前記凹球面と凸球面との間にエアを供給することにより該凹球面と凸球面とを非接触状態」にすることに相当し,また,甲第1号証発明の「凹状半球面16と凸状半球面20とを非接触な状態で回動可能」にすることは,本件発明1の「該凹球面と凸球面とを非接触状態にし、その状態で前記調芯部材を揺動させ」ることに相当する。 オ 甲第1号証発明の「回り止めリング14」は「球面ベース12のベース部19を包囲するように球面ベース12に対して装着され」ているから,本件発明1の「前記調芯部材の回りを取り囲むジョイントフレーム」に相当する。 カ 甲第1号証発明の「回り止めリング14」は,「外周には,平坦状に切り欠かれた平坦面28を4ヶ所形成し,各平坦面28にピン挿入溝29が形成され」ている。そして,この4ヶ所に形成された「ピン挿入溝29」は,「X軸方向に沿って直線的に配置」された「一対の回動規制ピン23」及び「Y軸方向に沿って直線的に配置」された「一対の回動規制ピン27」と係合される。 そうすると,甲第1号証発明の4ヶ所に形成された「ピン挿入溝29」のうち,「X軸方向に沿って直線的に配置」された「一対の回動規制ピン23」に係合する「ピン挿入溝29」は,本件発明1の「前記Z軸を挟んで該Z軸と直交するX軸方向の相対する位置を占めるように形成された孔状又は溝状をなす一対の第1嵌合部」に相当する。 また,甲第1号証発明の4ヶ所に形成された「ピン挿入溝29」のうち,「Y軸方向に沿って直線的に配置」された「一対の回動規制ピン27」に係合する「ピン挿入溝29」は,本件発明1の「前記Z軸を挟んで該Z軸及び前記X軸と直交するY軸方向の相対する位置を占めるように形成された孔状又は溝状をなす一対の第2嵌合部」に相当する。 さらに,甲第1号証発明の「一対の回動規制ピン23」及び「一対の回動規制ピン27」は,それぞれ,本件発明1の「前記装置本体の前記Z軸を挟んで相対する位置に前記X軸方向に形成され、前記一対の第1嵌合部に個別に嵌合する一対のX軸ピン」及び「前記調芯部材の前記Z軸を挟んで相対する位置に前記Y軸方向に形成され、前記一対の第2嵌合部に個別に嵌合する一対のY軸ピン」に相当する。 キ 甲第1号証発明の「径方向断面が円形をなす平行ピンの先端部31は軸方向中央が膨出し,その中央両側が縮径され,その全体が樽形となる」「回動規制ピン23,27」と,本件発明1の「前記X軸ピン及びY軸ピン」が「均一直径を有する円柱状のピン」であることとは,「前記X軸ピン及びY軸ピンは,径方向断面が円形をなすピン」である点で共通する。 ク 上記「ア」ないし「キ」から,本件発明1と甲第1号証発明とは以下の点で一致し,また,相違する。 [一致点] 「凹球面を有する装置本体と,前記凹球面に嵌合する凸球面を有する調芯部材とを備え,前記凹球面と凸球面との間にエアを供給することにより該凹球面と凸球面とを非接触状態にし,その状態で前記調芯部材を揺動させてワークを対象部位に平行に押し付けるようにした調芯装置において, 前記調芯装置が,前記凹球面の中心を通るZ軸の回りの前記調芯部材の回転を規制する回転規制機構を有し, 前記回転規制機構は,前記調芯部材の回りを取り囲むジョイントフレームと,該ジョイントフレームに,前記Z軸を挟んで該Z軸と直交するX軸方向の相対する位置を占めるように形成された孔状又は溝状をなす一対の第1嵌合部と,前記ジョイントフレームに,前記Z軸を挟んで該Z軸及び前記X軸と直交するY軸方向の相対する位置を占めるように形成された孔状又は溝状をなす一対の第2嵌合部と,前記装置本体の前記Z軸を挟んで相対する位置に前記X軸方向に形成され,前記一対の第1嵌合部に個別に嵌合する一対のX軸ピンと,前記調芯部材の前記Z軸を挟んで相対する位置に前記Y軸方向に形成され,前記一対の第2嵌合部に個別に嵌合する一対のY軸ピンとを有し, 前記X軸ピン及びY軸ピンは,径方向断面が円形をなすピンである, ことを特徴とする調芯装置。」 [相違点1] 本件発明1は「前記X軸ピン及びY軸ピンは、均一直径を有する円柱状のピンであり、前記第1嵌合部及び第2嵌合部の内壁は、前記X軸ピン及びY軸ピンの先端部側に向けて次第に横幅が拡大する方向に傾斜する傾斜面を有すると共に、該傾斜面の端部に、前記X軸ピン及びY軸ピンが当接する当接部を有する」のに対して,甲第1号証発明はそのようになっていない点。 (2)相違点に関する当審判断 ア [相違点1]について (ア)上記[相違点1]について検討すると,甲第1号証段落【0035】に「実施形態において、回動規制ピン23,27やピン挿入溝29の形状を、図7及び図8に示すように変更しても良い。」と記載されているように,「回動規制ピン23,27」が「ピン挿入溝29」の内面でこじないようにするために,甲第1号証発明の「回動規制ピン23,27」や「ピン挿入溝29」の形状を変更することは,当業者が容易に為し得る事項である。 (イ)その際に,「回動規制ピン23,27」と「ピン挿入溝29」の形状の関係を逆とし,すなわち,「回動規制ピン23,27」を「径方向断面が円形をなす平行ピンの先端部31は軸方向中央が膨出し,その中央両側が縮径され,その全体が樽形」とし,「ピン挿入溝29」を「回り止めリング14の径方向に沿って同一深さで,かつ,直線的に形成」することに換えて,「回動規制ピン23,27」を軸方向に沿って同一の形状とし,かつ,直線的に形成し,「ピン挿入溝29」を回り止めリング14の径方向に沿って「回動規制ピン23,27」の先端に対応する部分について,中央が膨出する形状とすることは,均等物を置換するものであるから,当業者が適宜為し得る設計変更に過ぎない。 (ウ)そして,本件発明1の効果は,「X軸ピン及びY軸ピンと第1嵌合部及び第2嵌合部の加工及び製造が容易になって低コスト化を図ることができる。」(本件特許明細書段落【0012】)とされているところ,本件発明4のように「直線上に傾斜している」との限定がないから,本件発明1は,第1嵌合部及び第2嵌合部の先端部側の内壁が,先端部側に向けて次第に横幅が拡大する方向に傾斜する曲面であるものを含むものである。 してみると,甲第1号証発明において,先端が「樽形」となる「回動規制ピン23,27」と,「径方向に沿って同一深さで,かつ,直線的に形成」された「ピン挿入溝29」の組合せが開示されているところ,これに換えて,「均一直径を有する円柱状のピン」と,「回動規制ピン23,27」の先端に対応する「内壁」が「傾斜面を有する」「第1嵌合部及び第2嵌合部」の組合せを採用すると,確かにピン自体は加工及び製造が容易になるが,これに反してピン挿入溝の方は曲面を含む複雑な形状になるのであるから,組合せ全体を見れば「加工及び製造が容易になって低コスト化を図ることができる」とは認められず,甲第1号証発明と比して,本件発明1が格別の有利な効果を有するとはいえない。 (エ)したがって,本件発明1は,甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 本件発明2について (1)本件発明2と甲第1号証発明との対比 ア 本件発明2と甲第1号証発明とを対比すると,上記[相違点1]に加え,以下の点で相違し,その余の点で一致する。 [相違点2] 本件発明2は「前記第1嵌合部の前記傾斜面は、前記ジョイントフレームの外側から内側に向けて該第1嵌合部の横幅が次第に拡大する方向に傾斜し、前記第2嵌合部の前記傾斜面は、前記ジョイントフレームの内側から外側に向けて該第2嵌合部の横幅が次第に拡大する方向に傾斜している」のに対して,甲第1号証発明はそのようになっていない点。 (2)相違点に関する当審判断 ア [相違点1]について 上記[相違点1]に係る構成は,上記「1(2)ア」で検討したように,甲第1号証の記載から,当業者が容易に為し得たものである。 イ [相違点2]について 甲第1号証発明に,上記「1(2)ア」の設計変更をすれば,甲第1号証発明は,[相違点2]に係る構成と同様の構成を有することは明らかである。 ウ そして,上記「1(2)ア(ウ)」で検討したように,甲第1号証発明に比して,本件発明2が格別の有利な効果を有するとはいえない。 エ したがって,本件発明2は,甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項2に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 本件発明3について (1)本件発明3と甲第1号証発明との対比 ア 本件発明3と甲第1号証発明とを対比すると,上記[相違点1]及び[相違点2]に加え,以下の点で相違し,その余の点で一致する。 [相違点3] 本件発明3は「前記X軸ピンは、前記第1嵌合部のZ軸方向の端部に接触することによって前記ジョイントフレームを支持して」いるのに対して,甲第1号証発明はそのようになっていない点。 (2)相違点に関する当審判断 ア [相違点1]及び[相違点2]について [相違点1]及び[相違点2]に係る構成は,上記「1(2)ア」及び「2(2)イ」で検討したように,甲第1号証の記載から,当業者が容易に為し得たものである。 イ [相違点3]について (ア)甲第5号証記載事項にあるように,甲第5号証には,「前記リング状部材53には,揺動体20の中心を通りかつY軸方向に沿って延びる第2溝部53bが形成され,第2突部60aの両側面と,第2溝部53bの両側面とは互いに接触し,摺動可能に係合されている」構成が示されており,甲第5号証記載事項の「リング状部材53」,「第2溝部53b」及び「第2突部60a」は,それぞれ,本件発明3の「ジョイントフレーム」,「第1嵌合部」及び「X軸ピン」に相当し,甲第5号証には,[相違点3]に係る「ジョイントフレーム」,「第1嵌合部」及び「X軸ピン」と同様の関係が示されているから,[相違点3]に係る構成は,本件特許の出願日前に公知の構成であったといえる。 (イ)そして,甲第1号証発明において,「加工や組み付けを簡単にすることにより,製造コストの低減を図るために」,「回り止めリング14」を支持する「押さえ部材15」に換えて,上記公知の構成を採用し,[相違点3]に係る構成とすることに,格別の困難性は認められない。 ウ そうすると,本件発明3の効果は,甲第1号証及び甲第5号証の記載に基づいて,当業者が予測しうるものであり,格別のものではない。 エ したがって,本件発明3は,甲第1号証発明及び甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 4 本件発明4について (1)特許異議申立人は,本件特許発明4は,甲第1号証発明から容易想到であり,「前記第1嵌合部及び第2嵌合部の前記傾斜面は、前記横幅が拡大する方向に直線状に傾斜している」点(以下,「[相違点4]」という。)は,甲第2号証を参照すれば設計的事項であると主張する。 (2)しかし,甲第1号証発明の「回動規制ピン23,27」は,「径方向断面が円形をなす平行ピンの先端部31は軸方向中央が膨出し,その中央両側が縮径され,その全体が樽形」であるから,上記「1(2)ア」で検討した,「回動規制ピン23,27」と「ピン挿入溝29」の形状の関係を逆としても,「回動規制ピン23,27」の先端に対応する「内壁」の「傾斜面を有する」「第1嵌合部及び第2嵌合部」は,曲面を有するものとなるから,[相違点4]に係る構成とはならない。 (3)また,甲第1号証の【図8】にも[相違点4]に係る構成は記載されていない。 さらに,甲第2号証にも,「調芯装置」において,「ジョイントフレーム」に形成された「第1嵌合部」及び「第2嵌合部」の内壁について,「前記X軸ピン及びY軸ピンの先端部側に向けて次第に横幅が拡大する方向に傾斜する傾斜面」を,「前記横幅が拡大する方向に直線状に傾斜」することは記載されていない。 (4)そうすると,甲第1号証及び甲第2号証の記載から,[相違点4]に係る構成が,設計的事項であるとする根拠は見出せず,[相違点4]に係る構成を,当業者が容易に想到し得るとは,言えない。 (5)そして,甲第1号証発明において,「回動規制ピン23,27」と「ピン挿入溝29」の形状の関係を逆とした場合,ピン挿入溝は曲面を含む複雑な形状になるのであるから,[相違点4]に係る構成,即ち,「前記第1嵌合部及び第2嵌合部の前記傾斜面は、前記横幅が拡大する方向に直線状に傾斜している」構成を有する本件発明4は,甲第1号証発明に比べ,「X軸ピン及びY軸ピンと第1嵌合部及び第2嵌合部の加工及び製造が容易になって低コスト化を図ることができる。」(本件特許明細書段落【0012】)という格別の効果を有している。 (6)したがって,[相違点4]に係る構成を有する,本件発明4は,甲第1号証及び甲第2号証の記載から当業者が容易に想到し得るものではないから,特許異議申立人の主張する理由によっては,請求項4に係る特許を取り消すことはできない。 5 本件発明5について (1)本件発明5と甲第1号証発明との対比 ア 本件発明5と甲第1号証発明とを対比すると,上記[相違点1]ないし「相違点3」に加え,以下の点で相違し,その余の点で一致する。 [相違点5] 本件発明5は「前記第1嵌合部は、前記ジョイントフレームの前記後端面と反対側の前端面に開口している」のに対して,甲第1号証発明はそのようになっていない点。 (2)相違点に関する当審判断 ア [相違点1]ないし[相違点3]について [相違点1]ないし[相違点3]に係る構成は,上記「1(2)ア」,「2(2)イ」,「3(2)イ」で検討したように,甲第1号証及び甲第5号証の記載から,当業者が容易に為し得たものある。 イ [相違点5]について 甲第1号証発明に,上記「3(2)イ」で検討した公知の構成を採用すれば,甲第1号証発明は,[相違点5]に係る構成と同様の構成を有することとなることは明らかである。 ウ そして,本件発明5の効果は,甲第1号証及び甲第5号証の記載に基づいて,当業者が予測しうるものであり,格別のものではない。 エ したがって,本件発明5は,甲第1号証発明及び甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項5に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 むすび 以上のとおり,本件発明1及び2は,甲第1号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,本件発明3及び5は,甲第1号証発明及び甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そうすると,請求項1ないし3及び5に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって,請求項1ないし3及び5に係る特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 また,請求項4に係る特許は,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに,他に請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2018-700207

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