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特許異議申立

2016-700262

音響低減ポリマー中間層

審判番号
2016-700262
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-113886外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年03月30日
審決日
2017年06月30日
公報発行日
2017年09月29日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5785307号発明「音響低減ポリマー中間層」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5785307号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第5785307号の請求項1、3~7に係る特許を維持する。 特許第5785307号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5785307号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成18年3月16日(パリ条約による優先権主張 2005年3月17日 米国)を国際出願日とする出願である特願2008-502082号出願の一部を新たに平成26年6月2日に特許出願したものであって、平成27年7月31日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1~7に係る特許について、特許異議申立人株式会社クラレ(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年5月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年8月22日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成28年9月30日に申立人から意見書が提出された。 その後、平成28年12月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、本件訂正請求に対して平成29年4月21日に申立人から意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア.~ス.のとおりである。 なお、訂正事項13に関して、本件訂正請求書の「7.イ(ス)」では、明細書段落【0069】の【表2】中「シート1および2の3GEH含有量の測定された量(phr)*」の列の右に「シート1および2の3GEH含有量の差(phr)」を追加し、「中間層番号7」の「シート1および2の3GEH含有量の差(phr)」の計算結果を「32.9」と訂正するとなっているが、本件訂正請求書に添付された訂正明細書の段落【0069】の【表2】では、当該箇所は「34.9」となっているので、「34.9」として判断する。 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「当該第2層における可塑剤の量は、当該第1層及び当該第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも12部多く」とあるのを 「当該第2層における可塑剤の量は、当該第1層及び当該第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも35.7部多く」に訂正する。(下線部が訂正箇所を示す。以下、同じ) イ.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを 「共押出ポリマー中間層」に訂正する。 ウ.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを 「共押出ポリマー中間層」に訂正し、引用する請求項を「請求項1に記載の」に訂正する。 エ.訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを 「共押出ポリマー中間層」に訂正し、引用する請求項を「請求項1に記載の」に訂正する。 オ.訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを 「共押出ポリマー中間層」に訂正し、引用する請求項を「請求項1、3~4のいずれか1に記載の」に訂正する。 カ.訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを 「共押出ポリマー中間層」に訂正し、引用する請求項を「請求項1、3~5のいずれか1に記載の」に訂正する。 キ.訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを 「共押出ポリマー中間層」に訂正し、引用する請求項を「請求項1、3~5のいずれか1に記載の」に訂正する。 ク.訂正事項8 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ケ.訂正事項9 明細書段落【0069】の【表2】中「中間層番号7」の「多重シートにおいて配合された3GEH含有量」の欄に「75」とあるのを「72.9」と訂正する。 コ.訂正事項10 明細書段落【0069】の【表2】中「中間層番号7」の「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に「37.6」とあるのを「37.8」と訂正する。 サ.訂正事項11 明細書段落【0069】の【表2】中「中間層番号8」の「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に「37.8」とあるのを「37.6」と訂正する。 シ.訂正事項12 明細書段落【0069】の【表2】中「中間層番号9」の「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に「36.0」とあるのを「38.0」と訂正する。 ス.訂正事項13 明細書段落【0069】の【表2】中「シート1および2の3GEH含有量の測定された量(phr)*」の列の右に「シート1および2の3GEH含有量の差(phr)」を追加し、「中間層番号」の「1」~「9」の「シート1および2の3GEH含有量の差(phr)」の計算結果「-」 「-」 「16.0」 「14.0」 「13.0」 「35.7」 「34.9」 「37.9」 「37.9」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 事案に鑑み、明細書段落【0069】の【表2】に関する訂正事項9~13について、まず検討する。 また、本件特許に係る出願は、外国語書面出願であるので、必要に応じて、外国語書面(以下、「本件外国語書面」という。)の対応する表を括弧内に示す。 ア.訂正事項9について 訂正前の明細書段落【0069】の表2(本件外国語書面Table2)中「中間層番号7」の「多重シートを有する中間層の構成」の「シート2」には、「PVB10」と記載されている。表1(本件外国語書面Table1)によれば、「PVB10」の「3GEH含有量(phr)」は「72.9」で、表1中「3GEH含有量(phr)」の欄に「75」なる値は記載されていないから、表2中「多重シートにおいて配合された3GEH含有量」の欄に「75」とあるのは誤記と認める。訂正事項9は、誤記の訂正を目的とするものである。 訂正事項9は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ.訂正事項10について 訂正前の明細書段落【0069】の表2(本件外国語書面Table2)中「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」は、「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」の「シート1」と「シート2」との値の差であるから、「中間層番号7」については、75.6(シート2)-37.8(シート1)=37.8が正しく、明細書段落【0069】の表2中「中間層番号7」の「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に「37.6」とあるのは誤記と認める。訂正事項10は、誤記の訂正を目的とするものである。 訂正事項10は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ.訂正事項11について 訂正前の明細書段落【0069】の表2(本件外国語書面Table2)中「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」は、「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」の「シート1」と「シート2」との値の差であるから、「中間層番号8」については、72.7(シート2)-35.1(シート1)=37.6が正しく、明細書段落【0069】の表2中「中間層番号8」の「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に「37.8」とあるのは誤記と認める。訂正事項11は、誤記の訂正を目的とするものである。 訂正事項11は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ.訂正事項12について 訂正前の明細書段落【0069】の表2(本件外国語書面Table2)中「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」は、「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」の「シート1」と「シート2」との値の差であるから、「中間層番号9」については、73.0(シート2)-35.0(シート1)=38.0が正しく、明細書段落【0069】の表2中「中間層番号9」の「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に「36.0」とあるのは誤記と認める。訂正事項12は、誤記の訂正を目的とするものである。 訂正事項12は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 オ.訂正事項13について 訂正前の請求項1の第1層(第3層)と第2層との「可塑剤の量」の差の求め方に関連して、明細書段落【0010】に「本明細書全体を通して、ポリマーシートの可塑剤含有量が与えられた場合、この特定のシートの可塑剤含有量は、この特定のシートを製造するために使用された溶融物中の可塑剤のphrを参照して規定される。」と記載されているが、訂正前の明細書段落【0069】の表2の場合は、「ポリマーシートの可塑剤含有量が与えられた場合」(表1参照)に該当するが、訂正前の表2に、段落【0010】の記載に基づく第1層(第3層)と第2層との「可塑剤の量」の差が記載されていなかった。訂正事項13は、段落【0010】の記載と表2との整合をとるためにされたもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項13は、明細書段落【0010】の記載、表1及び表2に基づき、シート1とシート2の配合された3GEH含有量を、単純に減算して求めたもので、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 カ.訂正事項1について 訂正事項1は、「当該第2層における可塑剤の量」について、訂正前の請求項1の「当該第1層及び当該第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも12部多く」を、「当該第1層及び当該第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも35.7部多く」と限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、明細書段落【0010】の記載、【0068】の表1及び【0069】の表2(中間層番号6、8、9)に基づくもので、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 キ.訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを「共押出ポリマー中間層」に訂正するもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ク.訂正事項3~7について 訂正事項3~7のうち、特許請求の範囲の請求項3~7に 「共押し出しされたポリマー中間層」とあるのを「共押出ポリマー中間層」に訂正する訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項3~7のうち、特許請求の範囲の請求項3~7で、引用する請求項から請求項2を削除する訂正は、訂正事項8により請求項2を削除することに伴い、整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項3~7は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ケ.訂正事項8について 訂正事項8は、請求項2を削除するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)一群の請求項について 本件訂正は、訂正前の請求項1と、請求項1を直接あるいは間接に引用する請求項2~7とを対象とするものであるから、本件訂正は、請求項1~7について、一群の請求項ごとに請求されたものである。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するから、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正を認める。 3.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~7に係る発明(以下、「本件訂正発明1~7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 「【請求項1】 可塑化されたポリ(ビニルブチラール)を含む第1層; 当該第1層に直接接触して配置されており、可塑化されたポリ(ビニルブチラール)を含む第2層;及び 当該第2層に直接接触して配置されており、可塑化されたポリ(ビニルブチラール)を含む第3層を含み、 当該第2層における可塑剤の量は、当該第1層及び当該第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも35.7部多く、 当該第2層が、当該第1層及び当該第3層の重量%当たりの残留ヒドロキシル含有量より少なくとも2%少ない残留ヒドロキシル含有量を有し、 当該第1層および当該第2層は、それぞれ5mol%未満の残留アセテート含有量を有する; 共押出ポリマー中間層。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記第2層は、前記第1層及び前記第3層の重量%当たりの残留ヒドロキシル含有量より少なくとも4%少ない残留ヒドロキシル含有量を有する、請求項1に記載の共押出ポリマー中間層。 【請求項4】 前記第2層は、前記第1層及び前記第3層の重量%当たりの残留ヒドロキシル含有量より少なくとも8%少ない残留ヒドロキシル含有量を有する、請求項1に記載の共押出ポリマー中間層。 【請求項5】 前記第2層は17%未満の残留ヒドロキシル含有量を有し、前記第1層は20%未満の残留ヒドロキシル含有量を有する、請求項1、3~4のいずれか1に記載の共押出ポリマー中間層。 【請求項6】 前記第1層及び前記第2層はそれぞれ3mol%未満の残留アセテート含有量を有する、請求項1、3~5のいずれか1に記載の共押出ポリマー中間層。 【請求項7】 前記第1層及び前記第2層はそれぞれ1mol%未満の残留アセテート含有量を有する、請求項1、3~5のいずれか1に記載の共押出ポリマー中間層。」 4.取消理由の概要 訂正前の請求項1~7に係る特許に対して平成28年5月20日付け及び平成28年12月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由は、すべて通知した。 [理由1].本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 [理由2].本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [理由3].本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 [理由1](36条第4項第1号) (1)段落【0069】の【表2】の右端の欄「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の、中間層7~9についての値(中間層7は37.6、中間層8は37.8、中間層9は36.0)の算出根拠が不明である。(誤記であれば、算出の根拠を説明されたい。)(中間層3~6の値についても同様。) (2)ポリマーシートの可塑剤含有量について、段落【0010】に「・・・本明細書全体を通して、ポリマーシートの可塑剤含有量が与えられた場合、この特定のシートの可塑剤含有量は、この特定のシートを製造するために使用された溶融物中の可塑剤のphrを参照して規定される。」と記載されているが、表2の段落【0069】の【表2】の右端の欄「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」は、この定義に反するのではないか。 (3)段落【0069】の【表2】の「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」の欄及び「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の欄に関して、「*中間層は、低温、通常10℃、または室温、通常20から23℃において貯蔵される。」とあるが、中間層の貯蔵を「低温、通常10℃」と「室温、通常20から23℃」とのいずれの条件で行ったのかが不明である。(中間層の貯蔵条件が、「低温、通常10℃」と「室温、通常20から23℃」とでは、「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」が異なるのではないか。) [理由2](29条第2項) 甲第1号証:特開2001-48600号公報 甲第2号証:特開平6-115980号公報 甲第3号証:国際公開第97/24230号 請求項1~4、6~7に係る発明は、甲第1号証に記載の発明および甲第2号証に記載のものに基づき、この発明の属する分野において通常の知識を有する者が容易に想到し得た程度のものである。 請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載の発明および甲第2号証、甲第3号証に記載のものに基づき、この発明の属する分野において通常の知識を有する者が容易に想到し得た程度のものである。 [理由3](36条第6項第2号) 請求項1~7は、「ポリマー中間層」という物の発明であるが、請求項1~7の「共押し出しされた」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。 しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。 したがって、請求項1~7に係る発明は明確でない。 5.甲号証の記載 (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)(特開2001-48600号公報) 甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている(特に、【請求項1】、【0001】、【0021】、【0063】、【0065】、【0074】、【0078】、【0082】、【0083】、【0091】、【0093】の【表1】の実施例3参照)。 「可塑化されたポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂層A; 当該樹脂層Aに直接接触して配置されており、可塑化されたポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂層B;及び 当該樹脂層Bに直接接触して配置されており、可塑化されたポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂層Aを含み、 当該樹脂層Aにおける可塑剤の量は、ポリビニルブチラール樹脂100部に対し39部であり、当該樹脂層Bにおける可塑剤の量は、ポリビニルブチラール樹脂100部に対し60部であり、 当該樹脂層Aがブチラール化度68.9モル%、アセチル基量0.9モル%であり、当該樹脂層Bが、ブチラール化度64.5モル%、アセチル基量13.0モル%であり、 多層成形機を用いて一体成形された三層中間膜」 (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)(特開平6-115980号公報 ) 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0027】他方、ポリビニルアセタール樹脂(B) において、アセタール基が結合しているエチレン基とアセチル基が結合しているエチレン基との和の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率は、樹脂(A) の対応する値より5モル%以上低い値に限定される。その理由は、この値が樹脂(A) の対応する値より5モル%以上低くないと、ポリビニルアセタール樹脂(A) と樹脂(B) の各動的粘弾性的特性が近似しているため、広い温度領域において良好な遮音性能を得ることができないからである。・・・」 「【0028】ポリビニルアセタール樹脂(A) および樹脂(B) において、アセチル基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率は4モル%以下に限定される。その理由は、この量が4モル%以上では耐熱性、耐候性等が十分に発揮されないからである。ポリビニルアセタール樹脂において、アセチル基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率の特に好ましい値は、0~2モル%である。」 「【0095】 【表1】 」 (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)(国際公開第97/24230号) 甲3には、以下の事項が記載されている(訳文は、申立人の提出したとおり。)。 「可塑剤と樹脂の相溶性は、安全積層品および中間層が使用に付され得る様々なあらゆる条件に曝された際に、安全積層品においてガラス層の間の中間層として適用されているシートの一体性を維持する上で重要である。」(2頁24行~29行) 「重量に基づいて、PVBは典型的には、19.5%未満、好ましくは約17~19%の、ポリビニルアルコール(PVOH)として計算されたヒドロキシル基、0~10%、好ましくは0~3%の、ポリビニルエステル(例えばアセテート)として計算された残留エステル基を有する。」(3頁3行~8行) 6.当審の判断 事案に鑑み、36条の理由1及び理由3をまず判断する。 (1)理由1(36条第4項第1号) ア.「訂正前の段落【0069】の【表2】の右端の欄「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」の、中間層7~9についての値(中間層7は37.6、中間層8は37.8、中間層9は36.0)の算出根拠が不明である。(誤記であれば、算出の根拠を説明されたい。)(中間層3~6の値についても同様。)」については、訂正事項10~12で、訂正されており、算出根拠は、明確になっている。 イ.「ポリマーシートの可塑剤含有量について、段落【0010】に「・・・本明細書全体を通して、ポリマーシートの可塑剤含有量が与えられた場合、この特定のシートの可塑剤含有量は、この特定のシートを製造するために使用された溶融物中の可塑剤のphrを参照して規定される。」と記載されているが、表2の段落【0069】の【表2】の右端の欄「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)*」は、この定義に反するのではないか。」については、訂正事項13で訂正されており、段落【0010】の記載と表2とは整合するものとなっている。 ウ.訂正された表2から、配合量から求めた「シート1および2の3GEH含有量の差(phr)」と、「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」から求めた「シート1および2の3GEH含有量の測定された差(phr)」とは、差が小さく(中間層番号6、8、9参照)、中間層の貯蔵条件が、「低温、通常10℃」と「室温、通常20から23℃」とでは、「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」が影響を受けることがあっても、その影響は小さいことがわかる。 そうすると、中間層の貯蔵条件は、当業者は「低温、通常10℃」と「室温、通常20から23℃」とのいずれかを選ぶことにより「4週間後の各シートにおける測定された3GEH含有量(phr)*」を求められることは容易に理解できる。 エ.小括 以上のとおりであるから、理由1については理由がない。 (2)理由3(36条第6項第2号) 本件訂正請求により、請求項1、3~7の「共押し出しされたポリマー中間層」との記載は、「共押出ポリマー中間層」と訂正された。「共押出ポリマー中間層」の記載は、ポリマー中間層の状態を表すものであり、また、「共押出」の用語は、フィルムの技術分野で通常使われている技術用語である。 したがって、請求項1、3~7に係る発明は明確でないとはいえない。 (3)理由2(29条第2項) ア.本件訂正発明1 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「多層成形機を用いて一体成形された三層中間膜」、「樹脂層A」、「樹脂層B」は、それぞれ、本件訂正発明1の「共押出ポリマー中間層」、「第1層」又は「第3層」、「第2層」に相当する。 両者は、少なくとも以下の相違点1及び2で相違する。 〈相違点1〉本件訂正発明1では、第2層における可塑剤の量は、第1層及び第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも35.7部多いのに対して、甲1発明では、樹脂層Bにおける可塑剤の量は、ポリビニルブチラール樹脂100部に対し60部であり、樹脂層Aにおける可塑剤の量は、ポリビニルブチラール樹脂100部に対し39部であり、その差が21部である点。 〈相違点2〉本件訂正発明1では、第2層は、5mol%未満の残留アセテート含有量を有しているのに対して、甲1発明では、樹脂層Bのアセチル基量が13.0モル%である点。 相違点1を検討する。 甲1の【0093】の【表1】の実施例3において、樹脂層Bにおける可塑剤の量は、ポリビニルブチラール樹脂100部に対し60部であり、樹脂層Aにおける可塑剤の量は、ポリビニルブチラール樹脂100部に対し39部であり、その差が21部であり、本件訂正発明1の、「第2層における可塑剤の量は、第1層及び第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも35.7部多い」とは、「第2層における可塑剤の量」の範囲が、明確に相違する。 また、甲2の【0095】の【表1】の実施例1~7及び比較例1~3にも、相違点1に係る事項である「第2層における可塑剤の量は、第1層及び第3層における可塑剤の量より、100部当たり少なくとも35.7部多い」ものは記載されていない。 本件訂正発明1は、相違点1に係る事項を有することにより、「音響透過を減少させ、容易に取り扱われ、フロントガラスおよび建築用窓ガラスのための合せガラスパネルなどの、多層構造体中にすぐに組み込まれる、多層中間層を提供する」(本件特許明細書段落【0072】、【0070】の【表3】)との作用効果を奏するものである。 そうすると、相違点1に係る事項が、当業者が容易になし得たものではない。 よって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基づき、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 イ.本件訂正発明3~4、6~7 本件訂正発明3~4、6~7は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含むので、上記6.(3)ア.で述べた理由と同一の理由により、本件訂正発明3~4、6~7は、甲1発明及び甲2記載事項に基づき、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 ウ.本件訂正発明5 本件訂正発明5は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、甲3にも、相違点1に係る事項は記載されていないから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲3記載事項に基づき、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 7.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び取消理由の理由によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1、3~7に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1、3~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件訂正請求による訂正後の請求項2に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除されたため、申立人の請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700262

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