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特許異議申立

2025-700332

吸着フィルター

審判番号
2025-700332
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-511872
登録番号
7555521
請求日
2025年03月24日
審決日
2025年11月04日
公報発行日
2026年02月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社クラレ
  • 【権利者代理人】弁理士法人三協国際特許事務所
  • 【異議申立人】横山 由佳
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 深草 祐一
  • 審判官 田口 裕健
分類
P1651.537-YAA(B01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7555521号発明「吸着フィルター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7555521号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2について訂正することを認める。 特許第7555521号の請求項1、3に係る特許を維持する。 特許第7555521号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7555521号の請求項1~3に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)3月20日(優先権主張 令和4年3月29日)を国際出願日とする出願であり、令和6年9月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年3月24日に、その請求項1~3に係る特許を対象として特許異議申立人 横山由佳(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。その後の主な経緯は以下のとおりである。 令和7年 6月23日付け 取消理由通知 同年 8月19日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 9月 2日 特許権者による訂正請求書の手続補正 同年10月 6日 申立人による意見書の提出 (以下、「申立人意見書」という。) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積が0.12cm3/cc以上である、吸着フィルター。」とあるのを、 「水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積が0.12cm3/cc以上であり、 水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での全細孔容積が0.50cm3/cc~0.73cm3/ccであり、 水道水中に含まれる有害物質を除去するためのものである、吸着フィルター。」 に訂正する。請求項1を引用する請求項3ついても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件明細書【0027】の「本実施形態における吸着フィルターは、・・・水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での全細孔容積・・・が0.50cm3/cc~0.73cm3/ccであることが好ましい。」との記載や、同【0140】の「本発明における吸着フィルターは、例えば水道水中に含まれる・・・有害物質等を除去するため、・・・利用される。」との記載等に基づき、請求項1に記載された「吸着フィルター」の構成をさらに限定するものといえる。 そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1、3〕と請求項2について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1、3〕、2について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認容できるから、本件特許異議申立てに係る本件訂正後の請求項1~3に係る発明は、次のとおり特定されるものである。 「【請求項1】 活性炭とバインダーとを含む成型体からなる吸着フィルターであって、 水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccであり、かつ、水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積が0.12cm3/cc以上であり、 水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での全細孔容積が0.50cm3/cc~0.73cm3/ccであり、 水道水中に含まれる有害物質を除去するためのものである、吸着フィルター。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記活性炭の体積基準の累計粒度分布において、D50が30μm以上110μm以下であり、D90が110μm以上であり、かつ、 前記活性炭の粒子径が10μm以下である粒子含有率が、1.2体積%以上8.9体積%以下である、請求項1に記載の吸着フィルター。」 以下、上記請求項に係る発明及び特許を、項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、「本件発明」、「本件特許」と総称することがある。 第4 令和7年6月23日付けで通知した取消理由の概要 令和7年6月23日付けで通知した取消理由は、以下のとおりのものである。なお、本件訂正で削除された請求項2について言及した箇所は省略している。 設定登録時の請求項1、3に係る特許は、特許請求の範囲が下記の点で不備であるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由」という。)。 記 1 サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 2 本件発明の課題 本件の発明の詳細な説明の【0002】~【0004】、【0006】によれば、「水道水中に含まれる遊離残留塩素、トリハロメタン類等のVOC(揮発性有機化合物)、農薬、カビ臭等の有害物質を除去する」ため、「活性炭成型体からなる吸着フィルター」が用いられており、当該吸着フィルターは、「水道水中に含まれる濁り成分(粒子状物質)の除去性能も有すること」が望まれ、「微粒子(一般には粒径1μm~20μm)だけでなく、粒径1μm以下の超微粒子の除去性能を有する」ことが求められ始めているものの、【0013】~【0015】によれば、「微粒子除去性能、特に超微粒子除去性能を向上させた吸着フィルター」は、「一般的に、原料の活性炭の粒度を細かくすることで、吸着フィルターの空隙を小さくする必要がある」ため、「吸着フィルターの通水抵抗が高くなってしまう」との問題、「約1μm~20μm程度の濁り物質によって、早期に目詰まりを起こしてしまう」との問題、「逆洗作業を行った場合であっても、濁り物質が放出され難い」との問題があることが理解できる。 そして、上述の問題と【0008】の記載を踏まえると、本件発明の課題は、水道水中に含まれる遊離残留塩素、トリハロメタン類等のVOC(揮発性有機化合物)、農薬、カビ臭等の有害物質を除去するための、活性炭成型体からなる吸着フィルターについて、上述の問題を解決できるような、「低通水抵抗による優れた通水性と超微粒子除去性能とを両立可能であり、かつ、長期間にわたり使用できる吸着フィルターを提供すること」であるといえる。 3 本件発明の課題に対応する発明の詳細な説明の記載 (1)発明の詳細な説明の記載事項 ア 上記2の課題に対し、発明の詳細な説明の【0023】には、「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積」を「0.06cm3/cc以上にすることによって、濁り物質による目詰まりを抑制し、優れた通水性を有し、長期間にわたり良好に使用可能な吸着フィルター」とすることができ、「さらに、逆洗作業を行うことによって、吸着フィルターの流量を効率よく再生することができ、当該吸着フィルターのライフをより長くすることができ」、「また、細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積を0.30cm3/cc以下にすることによって、吸着フィルターの超微粒子除去性能を良好にすることができる」旨記載されている。 また、【0025】には、「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積」を「0.10cm3/cc以上にすることによって」、「顕著に優れた超微粒子除去性能を得ることができる」旨記載されている。 さらに、【0027】には、「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での全細孔容積」を「0.50cm3/cc以上とすることによって、吸着フィルターはより優れた通水性を得ることができ、例えば浄水フィルター等の用途に好適に用いることができ」、「全細孔容積を0.73cm3/cc以下とすることによって、十分量の活性炭を保持することができ、一般的なフィルターとしての吸着性能を良好にすることができる」旨記載されている。 イ また、上記アの細孔容積以外の吸着フィルターの物性として、【0031】には、「フィルター密度が0.59g/cm3以下であることによって、通水抵抗をより良好に保つことができ、例えば浄水フィルター等に好適に用いることができ」、「フィルターの目詰まりも抑えることができ」、また、「フィルター密度が0.35g/cm3以上であることによって、活性炭の総量が好適な量となり、超微粒子および他の通常の有害物質の除去性能を良好に保つことができる」旨記載されており、また、【0035】には、「ベンゼン飽和吸着量が18%以上であることによって、特に有機物についての十分な除去性能を得ることができ」、「ベンゼン飽和吸着量が35%以下であることによって、過賦活状態で細孔直径が増大することを防止することができ、有害物質の吸着保持能力が低下するおそれを抑制することができる」旨記載されている。 ウ さらに、上記アの細孔容積を得るための活性炭について、【0038】~【0040】、【0043】には、「体積基準の累計粒度分布において、D50が30μm以上110μm以下であり、かつ、D90が110μm以上であ」り、「粒子径が10μm以下である粒子含有率が、1.2体積%以上8.9体積%以下である」ような「粒度の活性炭を用いることによって、細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccの範囲内となる吸着フィルターを得ることができ」、「その結果、濁り物質による目詰まりを抑制し、優れた通水性を有し、長期間にわたり良好に使用可能な吸着フィルターを得ることができ」、「さらに、逆洗作業を行うことによって、流量を効率よく再生することができ、当該吸着フィルターのライフをより長くすることができ」、「優れた超微粒子除去性能を有する吸着フィルターを得ることができ」、「低通水抵抗による優れた通水性を有する吸着フィルターを得ることができる」旨記載されている。 エ また、本件発明の吸着フィルターに使用されるバインダーについて、【0056】、【0058】、【0060】には、「吸着フィルターを成型した際に通水性に優れるとの観点から、繊維状バインダーを含むと好まし」く、「アクリル系繊維状バインダーおよびセルロース系繊維状バインダーの両方を組み合わせて使用すると」、「吸着フィルターからの微粉の流出を低減することができ」、「繊維状バインダーのCSF値が1mL以上であることによって、十分な通水性を維持し、成型体の強度の低下を抑制し、圧力損失のおそれを防止することができ」、「さらに、CSF値が200mL以下であることによって、粉末状の活性炭を十分に保持することができ、成型体の強度の低下も抑制し、吸着性能が低下するおそれを防止することができる」旨記載されている。 加えて、活性炭とバインダーとの配合比率について、【0062】には、「活性炭100質量部に対して」、「バインダーの量を2質量部以上にすることによって、十分な強度を有する吸着フィルターの成型体を得ることができ」、「バインダーの量を8質量部以下にすることによって、吸着フィルター中の活性炭の吸着性能が低下することを抑制することができる」旨記載されている。 オ そして、【0085】以降の【実施例】(特に【表3】、【表4】)には、「実施例1」~「実施例6」のとおり、上記アの「細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積」が0.06cm3/cc以上0.30cm3/cc以下の範囲内であり、「細孔直径7μm以下の細孔容積」が0.12cm3/cc以上の範囲内であると、濁り物質のろ過能力(「濁り除去率ライフ」、「濁り目詰まりライフ」、逆洗作業有りも含む)、超微粒子の除去性能(「超微粒子除去率ライフ」)、通水性(「初期通水抵抗」)、VOC除去性能(「VOC除去率ライフ」)、鉛除去性能(「鉛除去率ライフ」)が高いことが示される一方で、「比較例1」~「比較例5」のとおり、上記2つの細孔容積の一方又は両方が上記アの範囲外であると、上記性能のいずれかが低いことが示されている。 また、「実施例1」~「実施例6」及び「比較例1」~「比較例5」は、特に【表1】~【表4】や【0100】に示されるとおり、上記アの「全細孔容積」、上記イの「フィルター密度」、上記エのバインダーの種類及び配合比率についても、上述の範囲内となるものである。 (2)本件発明の課題を解決するための事項 ア まず、上記2に示した「吸着フィルターの通水抵抗が高くなってしまう」との問題、「約1μm~20μm程度の濁り物質によって、早期に目詰まりを起こしてしまう」との問題、「逆洗作業を行った場合であっても、濁り物質が放出され難い」との問題は、「水道水中に含まれる・・・有害物質を除去する」ための活性炭成型体からなる吸着フィルターでなければ、そもそも生じない問題といえる。 そして、上記(1)アの全細孔容積、同イのフィルター密度等の物性、同エのバインダーの種類や配合比率は、それらの作用効果(「通水性」、「有害物質の除去性能」、「成型体の強度」等)の説明からみて、水道水中に含まれる上記有害物質を除去するという用途を念頭において調整されるものであり、同オの「実施例1」~「実施例6」及び「比較例1」~「比較例5」の全てにおいて、上記全細孔容積等が所定範囲内とされているのは、上記有害物質の除去に用いることが前提となっているためであるといえる。 そうすると、活性炭成型体からなる吸着フィルターが、水道水中に含まれる有害物質を除去するためのものであることは、本件発明の課題を解決する上での前提として備えるべき事項であるといえる。 イ そして、上記(1)アの細孔容積に関する作用効果及び同オの【実施例】からすると、上記アの前提のもと、「低通水抵抗による優れた通水性と超微粒子除去性能とを両立可能であり、かつ、長期間にわたり使用できる」という本件発明の課題を解決するためには、通水性や超微粒子除去性能に影響を与える「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積」を0.06cm3/cc以上0.30cm3/cc以下とするとともに、「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積」を0.10cm3/cc以上とすることが肝要であるといえる。 さらに、上記2つの「細孔容積」は、吸着フィルターに存在する細孔のうち一部の細孔直径についての容積であるが、通水性や水中物質の除去性又は吸着性は、他の直径の細孔にも当然に影響を受けるものであり、例えば、直径30μm以上の大きな細孔の容積が大きくなれば、当該細孔での粒子の通過量も多くなり、粒子の除去又は吸着が十分にできなくなることが想定される。そうすると、本件発明の課題を解決するためには、上記2つの「細孔容積」以外の直径の細孔を含む「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での全細孔容積」についても、上記(1)アのとおり、0.50cm3/cc以上0.73cm3/cc以下とすることが肝要であるといえる。 ウ また、上記(1)ウによれば、「体積基準の累計粒度分布において、D50が30μm以上110μm以下であり、かつ、D90が110μm以上であ」り、「粒子径が10μm以下である粒子含有率が、1.2体積%以上8.9体積%以下である」活性炭を用いることによって、「細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccの範囲内となる吸着フィルター」を製造し得ることが理解できる。 しかしながら、活性炭とバインダーとを含む成型体からなる吸着フィルターの細孔構造は、原料の活性炭の粒度だけでなく、バインダーの構成や成型条件等にも当然に影響を受けることが想定されるところ、上述のように「体積基準の累計粒度分布」及び「粒子径が10μm以下である粒子含有率」を所定範囲に調整するだけで、バインダーの構成や成型条件等がどのようなものであっても、必ず「細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccの範囲内となる」とはいえない。 そのため、上記2の本件発明の課題を解決するために必要な構成は、あくまでも「細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積」という細孔構造それ自体であって、上記「体積基準の累計粒度分布」及び「粒子径が10μm以下である粒子含有率」は、当該細孔構造の吸着フィルターを製造する際に採用し得る原料条件ではあるものの、そのような原料条件だけで本件発明の課題が解決できるとはいえない。 エ 以上からすると、上記2の本件発明の課題を解決するためには、活性炭とバインダーとを含む成型体からなる吸着フィルターが、以下の事項を備えることが求められるといえる。 (ア)水道水中に含まれる有害物質を除去するためのものであること (イ)水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc以上0.30cm3/cc以下であること (ウ)水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積が0.10cm3/cc以上であること (エ)水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での全細孔容積が0.50cm3/cc以上0.73cm3/cc以下であること 4 発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲の記載の対比 設定登録時の請求項1には、 「水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccであり、かつ、水銀圧入法により測定される前記吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積が0.12cm3/cc以上である」 と記載されているところ、当該請求項1に係る発明には、本件発明の課題を解決するために必要な事項のうち、上記3(2)エ(イ)及び(ウ)の事項は規定されているものの、同(ア)及び(エ)の事項は規定されていない。 また、当該請求項1を引用する設定登録時の請求項3にも、上記(ア)及び(エ)の事項は規定されていない。 したがって、設定登録時の請求項1、3に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものとはいえず、サポート要件を満たすものでない。 第5 申立人による特許異議の申立理由の概要 本件特許異議申立書に記載された申立理由は、以下のとおりのものである。なお、本件訂正で削除された請求項2について言及された箇所は省略している。 1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由1」という。) 本件明細書に記載された実施例の吸着フィルターは、その全てが、「吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccであり、かつ、・・・細孔直径7μm以下の細孔容積が0.12cm3/cc以上である」という「吸着フィルターの物性」に加えて、「活性炭の体積基準の累計粒度分布において、D50が30μm以上110μm以下であり、D90が110μm以上であり、前記活性炭の粒子径が10μm以下である粒子含有率が、1.2体積%以上8.9体積%以下である」という「原料の活性炭の物性」に係る規定を満足するものである。 そして、上記「吸着フィルターの物性」と上記「原料の活性炭の物性」とは、「互いに独立したパラメータで、技術的に相関が強いものではない」ところ、上記「吸着フィルターの物性」の要件を満たすだけで、本件「発明の課題を解決し得るとする技術的根拠は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、そのような技術常識も存在しない。」 よって、上記「原料の活性炭の物性」を規定しない本件請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)(以下、「申立理由2」という。) 本件請求項3には、「活性炭の体積基準の累計粒度分布において、D50が30μm以上110μm以下であり、D90が110μm以上である」と記載されている。 ここで、上記D50は「110μm」を含み、上記D90も「110μm」を含んでいるが、「粒子径が一定の範囲でばらつくものであるとの技術常識」を踏まえると、D50とD90がともに「110μm」であるような「累計粒度分布を持つことが技術的に不可能なことは明らかである。」 よって、上記累計粒度分布が記載された本件請求項3に係る発明は、明確ではない。 第6 当審の判断 当審は、以下に述べるとおり、上記第4の取消理由及び上記第5の申立理由1、2のいずれの理由によっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由及び申立理由1(サポート要件違反)について (1)本件発明1、3についてのサポート要件の判断 サポート要件の適否は、上記第4の1に記載した手法に従って判断すべきものであるところ、当該手法に従って判断すると、同2に記載した本件発明の課題を解決するためには、同3(2)エのとおり、活性炭とバインダーとを含む成型体からなる吸着フィルターが、以下の事項を備えることが求められるといえる。 (ア)水道水中に含まれる有害物質を除去するためのものであること (イ)水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc以上0.30cm3/cc以下であること (ウ)水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積が0.10cm3/cc以上であること (エ)水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での全細孔容積が0.50cm3/cc以上0.73cm3/cc以下であること そして、本件訂正によって、本件発明1は、上記(ア)~(エ)の全てを備えるものとなった。 そうすると、本件発明1と、当該本件発明1を引用する本件発明3は、サポート要件を満たすものといえる。 (2)申立理由1及び申立人意見書の内容について 上記(1)のとおり、本件発明1、3はサポート要件を満たしているといえるが、念のため、本件特許異議申立書に記載された申立理由1の内容と、申立人意見書における主張の内容についても検討する。 ア 申立理由1の概要 上記第5の1に示した申立理由1での申立人の主張は、要するに、以下のとおりのものである。 本件明細書中の実施例は、「吸着フィルターの物性」と「原料の活性炭の物性」の両方を満たすものしかなく、両特性は、「互いに独立したパラメータで、技術的に相関が強いものではない」ところ、前者の「吸着フィルターの物性」の要件を満たすだけで、本件発明の課題を解決し得るとする技術的根拠は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、そのような技術常識も存在しないから、「原料の活性炭の物性」の要件を規定しない設定登録時の請求項1に係る発明は、サポート要件を満たさない。 イ 申立人意見書における申立人の主張の概要 申立人意見書に記載された申立人の主張は、要するに、以下のとおりのものである。 (ア)「吸着フィルターの物性(パラメータ)」と「原料の活性炭の物性(パラメータ)」の関係について(申立人意見書3(1)(1-1)) a 上記第4の3(2)ウに示した取消理由通知書の「本件発明の課題を解決するために必要な構成は、あくまでも「細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積」という細孔構造それ自体であって、上記「体積基準の累計粒度分布」及び「粒子径が10μm以下である粒子含有率」は、当該細孔構造の吸着フィルターを製造する際に採用し得る原料条件ではあるものの、そのような原料条件だけで本件発明の課題が解決できるとはいえない。」との記載からすると、合議体は、「活性炭に係るパラメータが・・・吸着フィルターのパラメータに、実質的に内包されている」と認定している。 b しかし、「吸着フィルターにおける細孔容積は、互いに隣り合う活性炭の粒子同士の間隙について示すパラメータ」であり、つまり、「活性炭における細孔容積とは、全く異なるパラメータ」であって、このことは、申立人意見書に添付した参考資料1及び2(本件特許権者による他の特許出願の再公表特許と、当該他の出願の審査過程で本件特許権者が提出した意見書)からも理解できる。よって、「吸着フィルターにおける細孔容積は、活性炭自身のパラメータに対して、独立するパラメータ」であり、「ましてや、吸着フィルターにおける細孔容積は、細孔容積(※当審注:「活性炭」の誤記と考えられる。)の粒度分布に依存するものではなく、また、特定の粒子径を有する活性炭の粒子含有率に依存するものでもない。」 c また、上記aの認定の根拠として引用される【0039】には、「原料としてこのような粒度の活性炭を用いることによって、細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccの範囲内となる吸着フィルターを得ることができ」と記載されているが、本件特許の比較例2においては、当該粒度の活性炭が使用されているにも関わらず、所定の細孔容積の吸着フィルターが得られていないので、当該「【0039】の記載には、根拠がない。」 d また、上記aの認定の根拠として引用される【0043】には、原料の活性炭の「粒子径10μm以下の粒子含有率」を所定範囲とすることによって、「優れた超微粒子除去性能を有する吸着フィルターを得ることができる」及び「低通水抵抗による優れた通水性を有する吸着フィルターを得ることができる」と記載されているものの、文言上、所定の細孔容積を有する吸着フィルターを得ることができるとは記載されていないし、それどころか、「本件特許の課題として認定された「低通水抵抗による優れた通水性と超微粒子除去性能とを両立可能であ・・・る吸着フィルターを提供すること」に必要な条件である旨、記載されている。」 e したがって、上記aの合議体の「認定は、妥当なものではなく、吸着フィルターにおける細孔容積は、活性炭自身のパラメータに対して、独立するパラメータである。」 (イ)本件発明の課題を解決する上での「原料の活性炭の物性」の必要性について(申立人意見書3(1)(1-2)) a 本件訂正後の本件発明1には、吸着フィルター内の活性炭の「体積基準の累計粒度分布」における「D50」及び「D90」と「粒子径が10μm以下である粒子含有率」が規定されていない。 b 本件明細書中の実施例は、吸着フィルターのパラメータに加えて、活性炭のパラメータも所定範囲内としたものしかなく、上述のとおり両パラメータは「互いに独立」しているものである。そして、吸着フィルターのパラメータの要件を満たすだけで、本件発明の課題を「解決し得るとする技術的根拠は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、そのような技術常識も存在しない。」 c したがって、活性炭のパラメータを規定しない本件発明1は、サポート要件を満たさない。 ウ 上記アの申立理由1及び上記イの主張に対する判断 上記アの申立理由1の内容は、上記イの主張の内容にも包含されているので、上記ア及びイについてまとめて検討する。 (ア)「吸着フィルターの物性(パラメータ)」と「原料の活性炭の物性(パラメータ)」の関係について 上記アや、上記イ(ア)a~eのとおり、申立人は、(取消理由通知書中の合議体の認定等に対して異論を述べつつ、)「吸着フィルターの物性(パラメータ)」と「原料の活性炭の物性(パラメータ)」が「互いに独立」している、「技術的に相関が強いものではない」、或いは、前者が後者に「依存するものではない」と主張している。 一方、発明の詳細な説明の記載を確認すると、まず、【0030】には、吸着フィルターの細孔容積は、「例えば、原料の活性炭の物性およびその配合量、異なる物性の2種以上の活性炭を使用する場合はそれらの配合比率、原料のバインダーの種類およびその配合量、原料の任意成分の配合量、吸着フィルターの製造の際における処理条件(吸引圧力、乾燥時間等)等を、適切に選択および/または調整することによって」制御でき、「特に、・・・原料の活性炭のD50およびD90、ならびに原料の活性炭の粒子径10μm以下の粒子含有率(体積%)を所定の範囲内に調整することによって」制御できると記載されている。 そして、【0038】に、上記活性炭の物性(D50、D90、粒子含有率)の数値範囲が記載された上で、【0039】に、「このような粒度の活性炭を用いることによって、細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積が0.06cm3/cc~0.30cm3/ccの範囲内となる吸着フィルターを得ることができ」る旨が記載されている。 さらに、本件明細書中の実施例及び比較例は、原料及び製造工程の条件のうち「原料の活性炭の物性」のみを変化させて吸着フィルターを製造した具体例であって、実施例1~6は、「活性炭の物性」を所定範囲内として「吸着フィルターの物性」が所定範囲内となった例である一方、比較例1、3~5は、「活性炭の物性」を所定範囲外として「吸着フィルターの物性」が所定範囲外となった例である。 そして、上記イ(ア)bにて申立人自身も言及しているように、吸着フィルターの細孔は、「互いに隣り合う活性炭の粒子同士の間隙」として形成されるのであるから、当該細孔の寸法は、当然、原料の活性炭の寸法に影響を受けるはずである。そうすると、上記【0030】や【0039】に記載された、粒度等の「原料の活性炭の物性」を適切に選択すれば、適切な「吸着フィルターの物性」、すなわち、適切な細孔容積を得られることになる旨の説明は、合理的なものとして理解することができ、上記実施例及び比較例の結果も、この説明を裏付けるものである。 そのため、「吸着フィルターの物性」と「原料の活性炭の物性」は、「互いに独立」している、「技術的に相関が強いものではない」、或いは、前者が後者に「依存するものではない」といえるものではなく、「原料の活性炭の物性」は、「吸着フィルターの物性」を決定する要因の1つであるというのが妥当である。 したがって、上記ア、上記イ(ア)b及びeにおける、「原料の活性炭の物性(パラメータ)」は、「吸着フィルターの物性(パラメータ)」が「互いに独立」、或いは、前者が後者に「依存するものではない」とする申立人の主張は、妥当ではない。 上述のとおり、上記イ(ア)b及びeにおける、両物性が「互いに独立」との主張は妥当ではないが、この主張に至る論拠として挙げられている、上記イ(ア)a、c、dの申立人の解釈や主張についても検討する。 まず、上記イ(ア)aのとおり、申立人は、取消理由通知書の記載から、合議体が「活性炭に係るパラメータが・・・吸着フィルターのパラメータに実質的に内包されている」と認定していると解釈した上で、主張を行っている。 しかしながら、上記第4の3(2)ウの「当該細孔構造の吸着フィルターを製造する際に採用し得る原料条件」等の記載のとおり、同項目では、所定の活性炭を用いると所定の吸着フィルターが製造できることがあると述べているに過ぎず、所定の細孔容積を有する吸着フィルターを製造できるのは、所定の粒度の活性炭のみであると述べているわけではないから、上記イ(ア)aの申立人の解釈は、妥当ではない。 また、上記イ(ア)cのとおり、申立人が指摘する比較例2は、確かに、「活性炭の物性」が所定範囲内であって「吸着フィルターの物性」が所定範囲外となる例である。 しかしながら、本件の実施例及び比較例においては、「活性炭の物性」の変化により「吸着フィルターの物性」が変化することが実際に確認されており、実施例1~6(比較例2とは異なる活性炭物性を選択した例)が、適切な吸着フィルター物性を有することも実際に確認されているのであるから、比較例2のような場合があるからといって、吸着フィルターの細孔の寸法が、活性炭の寸法に影響を受けるとの判断や、「活性炭の物性」を適切に選択することで、適切な「吸着フィルター」の物性が得られることがあるとの判断が覆るまでは至らない。そうすると、上記イ(ア)cのように、【0039】の記載に根拠がないとする申立人の主張も、妥当ではない。 さらに、上記イ(ア)dのとおり、本件明細書【0043】には、「粒子径10μm以下の粒子含有率」を所定範囲内とすることで、「優れた超微粒子除去性能を有する吸着フィルターを得ることができる」及び「低通水抵抗による優れた通水性を有する吸着フィルターを得ることができる」と記載されているところ、申立人は、文言上、同段落に「細孔容積」への直接的な言及がないという点を捉えて、同段落には、「粒子径10μm以下の粒子含有率」の規定が、「優れた超微粒子除去性能」及び「低通水抵抗による優れた通水性」を得るために必須の事項である旨が記載されていると解釈している。 しかしながら、【0043】は、上記【0030】の記載(吸着フィルターの細孔容積が「特に、・・・原料の活性炭のD50およびD90、ならびに原料の活性炭の粒子径10μm以下の粒子含有率(体積%)を所定の範囲内に調整することによって」制御できるとの記載)を受けて、原料となる活性炭の物性を説明している箇所である。そのため、【0043】は、【0039】と同じく、所定の活性炭を用いることによって、適切な吸着フィルターを製造できる旨を説明しているのであって、【0043】中の優れた超微粒子除去性能及び通水性を有する「吸着フィルター」とは、所定の細孔容積を有する吸着フィルターのことを指していると解するのが自然であるから、上記イ(ア)dの申立人の解釈も、妥当ではない。 (イ)本件発明の課題を解決する上での「原料の活性炭の物性」の必要性について 上記アや、上記イ(イ)a~cのとおり、申立人は、本件明細書中の実施例が「吸着フィルターの物性」と「原料の活性炭の物性」の両方を満たすものしかないことと、両物性が「互いに独立」であることから、本件発明の課題を解決するためには、「原料の活性炭の物性」を規定する必要があると主張している。 しかしながら、まず、上記(ア)で検討したとおり、両物性が「互いに独立」であるとはいえない。 また、発明の詳細な説明の記載を確認すると、上記第4の3(1)アのとおり、【0023】、【0025】には、「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径15μm以上30μm以下の細孔容積」、「水銀圧入法により測定される吸着フィルターの体積基準での細孔直径7μm以下の細孔容積」という「吸着フィルターの物性」を所定範囲内とすることで、上記第4の2に示す本件発明の課題「低通水抵抗による優れた通水性と超微粒子除去性能とを両立可能であり、かつ、長期間にわたり使用できる」ものとなる旨が説明されている。 そして、上記第4の3(1)オのとおり、本件明細書中の実施例及び比較例から、上記「吸着フィルターの物性」が所定範囲内であると、濁り物質のろ過能力(「濁り除去率ライフ」、「濁り目詰まりライフ」、逆洗作業有りも含む)、超微粒子の除去性能(「超微粒子除去率ライフ」)、通水性(「初期通水抵抗」)、VOC除去性能(「VOC除去率ライフ」)、鉛除去性能(「鉛除去率ライフ」)が高くなることが読み取れる。 ここで、例えば、特開2000-342918号公報の【0003】に、 「浄水器に供給された原水が濾過フィルタの外周壁側から中空部へと通過する間、原水中の微小物質等は、結合剤で結合された活性炭粒子間に形成された微細孔によって捕捉され、また、原水中の残留塩素等は、活性炭によって吸着され除去される。」 と記載されているように、活性炭とバインダー(結合剤)から形成されたフィルターにおいて、原水中の粒子捕捉を担うのは、フィルターの「細孔」であり、また、フィルターに供給された原水は、「細孔」を通過して排水されるのであるから、フィルターの「細孔」の構造は、粒子捕捉性能や通水性能を直接的に決定付けるものであるといえる。 そうすると、本件発明の課題を解決する上では、粒子捕捉性能や通水性能を決定付ける「吸着フィルターの物性」である「細孔容積」の構成を規定することが肝要であり、具体的には、上記第4の3(2)イのとおりの「細孔容積」とすることが肝要であるといえる。 一方で、「原料の活性炭の物性」は、既に述べたとおり、上記物性の吸着フィルターを製造するために採用し得る条件であるとはいえるものの、上記(ア)でも触れた本件明細書【0030】のとおり、「吸着フィルターの物性」を決定する要因が、「活性炭の物性」の他にも存在することは明らかであり、他の要因の選択/調整の状況によっては、粒度が所定範囲外の活性炭であっても、所定の細孔容積を得られる場合があることが当然に想定されるため、当該粒度の条件は、あくまで、適切な吸着フィルターを得るにあたって採用し得る条件の1つであって、当該粒度の条件が必須の条件であるとはいえず、粒子捕捉性能や通水性能を直接的に決定付けるような「吸着フィルターの物性」の規定に加えて、さらに「原料の活性炭の物性」を規定しなければ、所望の粒子捕捉性能や通水性能が得られないと判断できるほどの証拠はない。 したがって、上記アや、上記イ(イ)a~cにおける、「原料の活性炭の物性(パラメータ)」が課題解決に必須の要件であるとする申立人の主張は、妥当ではない。 (3)取消理由及び申立理由1に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、取消理由及び申立理由1には、理由がない。 2 申立理由2(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 以下、この観点に立って検討する。 (2)本件発明3についての明確性要件の判断 本件発明3では、「活性炭の体積基準の累計粒度分布において、D50が30μm以上110μm以下であり、D90が110μm以上」と規定されており、D50の上限値とD90の下限値は一致している。 ここで、上記第5の2の申立理由2において申立人自身も認めているように、「粒子径が一定の範囲でばらつくものである」ことは技術常識であり、D50とD90が一致するような粒度分布が通常あり得ないことは「明らか」である。このことを踏まえると、上記本件発明3の規定については、通常あり得ないような、D50とD90が一致する粒度分布を採用することまでを特定しているわけではなく、技術常識を踏まえて実現可能な粒度分布を前提としつつ、「D50が30μm以上110μm以下」かつ「D90が110μm以上」との規定に合致する粒度分布を特定していると当業者が理解できるものといえる。 したがって、上記本件発明3の規定は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立理由2に関するまとめ 以上のとおり、本件発明3が不明確であるとはいえないから、申立理由2には、理由がない。 第7 むすび 上記第6で検討したとおり、本件特許1、3は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記申立理由1、2では、本件特許1、3を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1、3を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許2に対する特許異議の申立ては、本件訂正により当該特許に係る請求項が削除され、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700332

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