審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700083

ビニルアルコール系重合体及びその用途

審判番号
2024-700083
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-542871
登録番号
7323718
請求日
2024年02月01日
審決日
2025年08月08日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社クラレ
  • 【権利者代理人】弁理士法人青藍国際特許事務所
  • 【権利者代理人】鎌田 耕一
  • 【権利者代理人】田村 康晃
  • 【異議申立人】西郷 新
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 藤井 勲
  • 審判官 小出 直也
分類
P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7323718号発明「ビニルアルコール系重合体及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7323718号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-26〕、〔27-29〕について訂正することを認める。 特許第7323718号の請求項1-25、27-29に係る特許を維持する。 特許第7323718号の請求項26に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7323718号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~29に係る特許についての出願は、令和3年8月11日(優先権主張 令和2年8月12日 日本国(JP)(8件)、令和3年5月12日 日本国(JP))を国際出願日とする特許出願であって、令和5年7月31日にその特許権の設定登録(請求項の数29)がされ、同年8月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年2月1日に特許異議申立人 西郷 新(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~29に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 その後の経緯は、以下のとおりである。 令和6年 4月26日付け: 取消理由通知 同年 7月 8日 : 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 7月18日付け: 手続補正指令書(方式) 同年 8月 5日 : 訂正請求書を補正する手続補正書の提出(特許権者) 同年 8月 9日付け: 訂正請求があった旨の通知(申立人宛) 同年 9月13日 : 意見書の提出(申立人) 同年11月11日付け: 取消理由通知(決定の予告) 令和7年 1月14日 : 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 1月23日付け: 訂正請求があった旨の通知(申立人宛) 同年 2月26日 : 意見書の提出(申立人) 同年 4月14日付け: 訂正拒絶理由通知 同年 6月 6日 : 訂正請求書を補正する手続補正書及び意見書の提出 なお、令和6年7月8日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正請求書を補正する手続補正について 令和7年6月6日にされた、訂正請求書を補正する手続補正は、請求項26についての訂正事項5を、請求項26を削除する訂正に改めるものであり、審理の対象がなくなるだけのものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 よって、上記補正を認める。 2 訂正の内容 上記のとおり、令和7年6月6日の手続補正は認められたので、当該補正によって補正された、令和7年1月14日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)一群の請求項1~26に係る訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、(A)/(B)のモル比が5/95~100/0であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000であり、 さらに必要に応じてビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含み、 他の不飽和単量体(C)が、α-オレフィン、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ビニルアルコール系重合体(X)。」を、 「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体(X)、又は 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)におけるビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)が、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ビニルアルコール系重合体(X)。」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~26も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項2において、「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含み、 ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)がエチレンであり、 PVA(X)の全構造単位におけるエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満である、請求項1に記載のビニルアルコール系重合体(X)。」を、独立形式に改め、 「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000であり、 ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)がエチレンであり、 PVA(X)の全構造単位におけるエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満である、ビニルアルコール系重合体(X)。」に訂正する。 請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3~26も同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 請求項8において、「請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 けん化度が、90モル%以上である、 地下処理用目止め剤。」を、 「請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 (A)/(B)のモル比が5/95~80/20であり、 けん化度が、90モル%以上である、 地下処理用目止め剤。」に訂正する。 請求項8を直接又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する。 エ 訂正事項4 請求項24において、「請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 けん化度が、65モル%以上99.5モル%以下である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤。」を、 「けん化度が、65モル%以上99.5モル%以下である、請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)のみからなる、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤(ただし、けん化度が60モル%以上の、下記一般式(I)で表される基を末端に有するビニルアルコール系重合体を含有するビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤を除く)。 【化1】 [図:0001428984000001.jpg] (式中、Rは水素原子またはOM基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基を表す。)」 に訂正する。 請求項24を直接又は間接的に引用する請求項25も同様に訂正する。 オ 訂正事項5 請求項26を削除する。 (2)一群の請求項27~29に係る訂正 ア 訂正事項1 請求項27において、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを、さらに必要に応じて連鎖移動剤を共存させて重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)を含み、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 粘度平均重合度が、100~700であり、 前記連鎖移動剤が、アルデヒド、ケトン、メルカプタン、チオカルボン酸、及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、 前記ビニルアルコール系重合体(X)のけん化度が、20モル%以上60モル%未満である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定助剤。」を、 「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とのみを、連鎖移動剤を共存させずに重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)、又は 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とのみを、連鎖移動剤を共存させて重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)を含み、 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 粘度平均重合度が、100~700であり、 前記連鎖移動剤が、アルデヒド、ケトン、メルカプタン、チオカルボン酸、及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、 前記ビニルアルコール系重合体(X)のけん化度が、20モル%以上60モル%未満である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定助剤。」 に訂正する。 請求項27を直接又は間接的に引用する請求項28及び29も同様に訂正する。 3 一群の請求項について (1)訂正前の請求項1~26について、請求項2~26は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、上記2(1)アの訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~26に対応する訂正後の請求項1~26は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正前の請求項27~29について、請求項28、29は、それぞれ請求項27を直接又は間接的に引用しているものであって、上記2(2)アの訂正事項1によって記載が訂正される請求項27に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項27~29に対応する訂正後の請求項27~29は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項1~26に係る訂正について ア 訂正事項1 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」について、「さらに必要に応じてビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含み」とされていたのを、(C)を含むものと含まないものに分けた上で、(C)を含むものについて「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」に限定するとともに、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値を「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」に、また、ビニルアルコール系重合体(X)の(A)/(B)のモル比を「5/95~90/10」に限定し、(C)の選択肢から「α-オレフィン」を削除してその内容を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、訂正事項1による訂正のうち、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値を「1.0×10-13以上」に限定する部分は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0092】の「本発明で用いるビニルエステル単量体(A)は14C/Cが1.0×10-14以上であることが好ましく、1.0×10-13以上であることがより好ましく、」の記載を根拠とするものであり、「(1.0×10-12以上を除く)」部分は、特許請求の範囲から特定の態様を除くものであって、そのことによって新たな技術的事項が導入されるものではない。 また、(A)/(B)のモル比の上限を限定する部分は、本件明細書の【0088】の「また、植物由来のビニルエステル単量体(A)の比率の上限値としては、環境負荷と原料コストのバランスから、好適にはモル比(A)/(B)で90/10であり」の記載を根拠とするものであり、訂正事項1よる訂正のうち、その他の部分は訂正前の請求項1の記載を根拠とするものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、新規事項を追加するものではない。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めた上で、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値を「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とし、(A)/(B)のモル比について、「5/95~100/0」を「5/95~90/10」に限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、上記アで述べたのと同様の理由により、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値を限定した点、及び(A)/(B)のモル比を限定した点は、本件明細書の【0088】、【0092】の記載を根拠とするものであるから、訂正事項2による訂正は新規事項を追加するものではない。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項8における(A)/(B)のモル比の上限を、本件明細書の【0088】の「また、植物由来のビニルエステル単量体(A)の比率の上限値としては、環境負荷と原料コストのバランスから、好適にはモル比(A)/(B)で90/10であり、より好適には80/20であり」の記載を根拠に、「90/10」から「80/20」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項24が「請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み」とされていたのを、実質的に「請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)のみからなる」ものに限定した上で、そこから、けん化度が60モル%以上の、一般式(I)で表される基を末端に有するビニルアルコール系重合体をを含有するビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特定の分散安定剤を除くことによって、新たな技術的事項が導入されるものでもないため、新規事項を導入するものでもなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 オ 訂正事項5について 訂正事項5は請求項26を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を導入するものでもなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)一群の請求項27~29に係る訂正について ア 訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項27において、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを、さらに必要に応じて連鎖移動剤を共存させて重合し」とされていたのを、(A)と(B)とのみを重合するものに限定し、さらに、連鎖移動剤を共存させたものとさせないものに分けた上で、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値を「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値を限定した点は(1)アと同様であるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 5 本件訂正後の独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~29に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 6 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-26〕、〔27-29〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~29に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明29」のようにいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~29に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体(X)、又は 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)におけるビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)が、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ビニルアルコール系重合体(X)。 【請求項2】 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000であり、 ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)がエチレンであり、 PVA(X)の全構造単位におけるエチレン単位の含有率が1モル%以上20モル%未満である、ビニルアルコール系重合体(X)。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 けん化度が、99モル%以上であり、 粘度平均重合度が、1500以上4500以下である、 スラリー用添加剤。 【請求項4】 請求項3に記載のスラリー用添加剤を含有する、掘削泥水。 【請求項5】 さらに、水及びベントナイトを含有する、請求項4に記載の掘削泥水。 【請求項6】 請求項3に記載のスラリー用添加剤を含有する、セメントスラリー。 【請求項7】 さらに、液剤及び硬化性粉末を含有する、請求項6に記載のセメントスラリー。 【請求項8】 請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 (A)/(B)のモル比が5/95~80/20であり、 けん化度が、90モル%以上である、 地下処理用目止め剤。 【請求項9】 前記ビニルアルコール系重合体(X)が、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含む、請求項8に記載の地下処理用目止め剤。 【請求項10】 さらに、可塑剤を含む、請求項8又は9に記載の地下処理用目止め剤。 【請求項11】 請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含有する層(C)、及び、樹脂を含有する層(D)を有し、 前記樹脂がポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ABS樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂、ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)樹脂、スターチ及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であり、 けん化度が、80~99.99モル%である、多層構造体。 【請求項12】 請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含有する水溶液を調製してコーティング剤を得る工程、及び該コーティング剤を、樹脂を含有する基材の表面に塗工する工程を有し、 前記樹脂がポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ABS樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂、ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)樹脂、スターチ及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であり、 けん化度が、80~99.99モル%である、請求項11に記載の多層構造体の製造方法。 【請求項13】 請求項11に記載の多層構造体を備える、包装材料。 【請求項14】 請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 けん化度が、90モル%以上である、紙コーティング剤。 【請求項15】 請求項14に記載の紙コーティング剤が紙に塗工されてなる、塗工紙。 【請求項16】 剥離紙原紙である、請求項15に記載の塗工紙。 【請求項17】 耐油紙である、請求項15に記載の塗工紙。 【請求項18】 請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含む、種子コーティング組成物。 【請求項19】 さらに、1種以上の疎水性農薬を含む、請求項18に記載の種子コーティング組成物。 【請求項20】 分散剤と分散質とを含む水性エマルジョンであって、 前記分散質が、エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(Y1)を含み、 前記分散剤が、請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)を含み、 けん化度が、80~99.99モル%である、水性エマルジョン。 【請求項21】 エチレン性不飽和単量体単位を含む重合体(Y1)が、ビニルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体及びジエン系単量体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する特定単位を有する重合体であり、該重合体の全単量体単位に対する前記単位の含有率が70質量%以上である、請求項20に記載の水性エマルジョン。 【請求項22】 さらに多価イソシアネート化合物を含有する、請求項20又は21に記載の水性エマルジョン。 【請求項23】 請求項20~22のいずれか1項に記載の水性エマルジョンを含有する、接着剤。 【請求項24】 けん化度が、65モル%以上99.5モル%以下である、請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体(X)のみからなる、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤(ただし、けん化度が60モル%以上の、下記一般式(I)で表される基を末端に有するビニルアルコール系重合体を含有するビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤を除く)。 【化1】 [図:0001428984000002.jpg] (式中、Rは水素原子またはOM基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、1/2アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基を表す。) 【請求項25】 請求項24に記載の懸濁重合用分散安定剤の存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行う工程を含む、ビニル系樹脂の製造方法。 【請求項26】 (削除) 【請求項27】 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とのみを、連鎖移動剤を共存させずに重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)、又は 植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とのみを、連鎖移動剤を共存させて重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)を含み、 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)、 (A)/(B)のモル比が5/95~90/10であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルであり、 粘度平均重合度が、100~700であり、 前記連鎖移動剤が、アルデヒド、ケトン、メルカプタン、チオカルボン酸、及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、 前記ビニルアルコール系重合体(X)のけん化度が、20モル%以上60モル%未満である、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定助剤。 【請求項28】 請求項27に記載の懸濁重合用分散安定助剤と懸濁重合用分散安定剤の存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行う工程を含み、 前記懸濁重合用分散安定剤が、けん化度が65モル%以上、かつ粘度平均重合度が600以上のビニルアルコール系重合体(Y3)を含有する、ビニル系樹脂の製造方法。 【請求項29】 前記分散安定剤と前記分散安定助剤の質量比(分散安定剤/分散安定助剤)が95/5~20/80である、請求項28に記載のビニル系樹脂の製造方法。」 第4 特許異議申立ての理由、証拠方法、当審が通知した取消理由通知(決定の予告)の概要 1 特許異議申立理由の概要 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は以下のとおりである。なお、新規性、進歩性欠如の理由については、証拠毎に分けて示す。 申立理由1(甲第1号証による新規性欠如) 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~26に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~26に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由3(甲第2号証による新規性欠如) 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由4(甲第2号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~26に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~26に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由5(甲第3号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、2、20~23に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、20~23に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由6(甲第4号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、20~23に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、20~23に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由7(甲第5号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由8(甲第6号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、8~10に係る発明は、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、8~10に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由9(甲第7号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、2、11~13に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、11~13に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由10(甲第8号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、2、14~17に係る発明は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、14~17に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由11(甲第9号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、18、19に係る発明は、甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、18、19に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由12(甲第10号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、24~29に係る発明は、甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、24~29に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由13(サポート要件違反) 本件特許の請求項1~26に係る特許は、下記第5の12(3)の点で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 申立理由14(明確性要件違反) 本件特許の請求項1~29に係る特許は、下記第5の13(1)の点で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 (1)申立書に添付して提示した証拠方法 甲第1号証:米国特許出願公開第2011/0287204号明細書及びその抄訳文 甲第2号証:「砂糖の多目的利用について~発酵で得られる中間化学原料への利用」、独立行政法人農畜産業振興機構、最終更新日2010年3月6日、[online]、インターネット<URL:https://sugar.alic.go.jp/japan/example_03/example0808a.htm> 甲第3号証:特開2016-20435号公報 甲第4号証:特開2016-20436号公報 甲第5号証:特開2015-196733号公報 甲第6号証:国際公開第2019/131952号 甲第7号証:特開2000-119585号公報 甲第8号証:特開2017-43872号公報 甲第9号証:特開2016-202177号公報 甲第10号証:特開平9-77807号公報 甲第11号証:DENKA POVALデンカポバール カタログ、電気化学工業株式会社、2011年 甲第12号証:特開2007-256931号公報 甲第13号証:特表2015-524501号公報 甲第14号証:特表2015-535501号公報 (以下、それぞれ「甲1」~「甲14」という。) (2)申立人が令和6年9月13日提出の意見書に添付して提示した証拠方法 甲第15号証:特開2012-36327号公報 甲第16号証:特開2012-1653号公報 (以下、それぞれ「甲15」、「甲16」という。) (3)特許権者が令和7年1月14日に提出した意見書に添付して提示した証拠方法 参考資料1:「放射性炭素14の超高感度測定法」、Natureダイジェスト、シュプリンガーネイチャー発行、2012年5月、Vol.9、No.5、DOI:10.1038/ndigest.2012.120512 参考資料2:「放射性炭素(炭素14)で年代を測る」、東京大学総合研究博物館、2006年9月28日、インターネット<URL:https://web.archive.org/web.20060928085816/http://www.um.u-tokyo.ac.jp/academics/radiocarbon.html> 参考資料3:プラスチック読本、大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会共編、プラスチックス・エージ、1971年5月10日、改訂第8版 (以下、それぞれ「参1」~「参3」という。) (4)申立人が令和7年2月26日に提出した意見書に添付して提示した証拠方法 甲第17号証:「バイオマス度」はどうやって測るの?、一般社団法人日本有機資源協会、2021年4月21日、インターネット<URL:https://www.jora.jp/faq/7074/> 甲第18号証:船橋正弘、国岡正雄、AMSを用いた炭素14測定によるバイオマスプラスチックのバイオマス由来度の評価、Netsu Sokutei、39(4)、143-150頁、2012年、インターネット<URL:https://www.netsu.org/JSCTANetsuSokutei/pdfs/39/39-4-143.pdf> 甲第19号証:木村俊範・田代裕統、加藤俊明、酒井正裕、C14法などによるバイオマス製品中のバイオマス含量測定、化学工学会第39会秋季大会研究発表講演要旨集、2007年、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2007f/0/2007f_0_778/_pdf> 甲第20号証:特開昭51-45189号公報 甲第21号証:特開証51-109986号公報 甲第22号証:特開平8-259609号公報 (以下、それぞれ「甲17」~「甲22」という。) (5)審判合議体が職権調査により発見した証拠方法 引用文献1:特開2003-301399号公報 (以下、「引1」という。) 3 令和6年11月11日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要 取消理由1(甲2を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由2(甲3を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項2、20~23に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由3(甲4を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1、20~23に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由4(甲5を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由5(甲6を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1、8~10に係る発明は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由6(甲7を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項2、11~13に係る発明は、甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由7(甲8を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項2、14~17に係る発明は、甲8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由8(甲9を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1、18、19に係る発明は、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由9(甲10を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1、24~26に係る発明は、甲10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 取消理由10(甲15を主引用文献とする進歩性欠如)本件特許の請求項1、2、24~29に係る発明は、甲15に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1~25、27~29に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件特許の請求項26は、上記のとおり、本件訂正の請求により削除され、これらの請求項に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 1 取消理由1(甲2を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由3(甲2による新規性欠如)、申立理由4(甲2を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由1、申立理由3、申立理由4は、いずれも甲2を主引用文献とするものであるため、まとめて検討する。 (1)甲2に記載された発明 甲2には、「砂糖の多目的利用について~発酵で得られる中間化学原料への利用~」という表題の記事であり、甲2の項目「1.バイオエタノールの生産とその利用」には次の記載がある。 「 [図:0001428984000003.jpg] [図:0001428984000004.jpg] 」 上記の記載から、さとうきびに含まれる砂糖を発酵してバイオエタノールを生産する技術が知られており、バイオエタノールは燃料だけではなく、色々な化学原料としても使い途のある物質であり、図2に記載されるようにエタノール発酵から「エチレン」や「酢酸ビニル」等の各種化学製品が製造されることが知られており、エチレンについては、化石資源由来のナフサからではなく、再生可能な植物資源を利用して得たエタノールからエチレンを生産する技術が開発され、実用化されれば、化石資源の枯渇問題も解消されるし、二酸化炭素排出量の削減にも貢献できる可能性を秘めた技術であることが理解できる。 また、「酢酸ビニル」は、エチレンと酢酸から合成されること、酢酸ビニルは合成樹脂の原料として重要であり、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、もしくはエチレンとの共重合体の製造に使用されることが理解できる。 これらのことからみて、甲2には、次の2つの発明が記載されているといえる。 「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニルを用いて合成された、ポリビニルアルコール」(以下「甲2発明1」という。) 「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニルを用いて合成された、エチレン・酢酸ビニル共重合体」(以下「甲2発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明1を対比する。 甲2発明1の「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールから製造された酢酸ビニル」は、本件発明1の「植物由来のビニルエステル単量体(A)」である「酢酸ビニル」に相当する。 甲2発明1の「酢酸ビニルを用いて合成された、ポリビニルアルコール」は、ポリビニルアルコールが、酢酸ビニルを単独重合して得られるポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られることが技術常識であるから、本件発明1の「ビニルエステル単量体・・・を重合し、けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体(X)」に相当する。 そうすると、両者は 「植物由来のビニルエステル単量体(A)を重合し、けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体(X)であって、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルである、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1では、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」に加えて「石油由来のビニルエステル単量体(B)」を重合し、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲2発明1ではそのような特定がない点 <相違点1-2> 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、本件発明1では「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」であるのに対し、甲2発明1ではその値が不明な点 <相違点1-3> ビニルアルコール系重合体の「けん化度」が、本件発明1は「60モル%以上」であるのに対し、甲2発明1はその値が不明である点 <相違点1-4> ビニルアルコール系重合体の「粘度平均重合度」が、本件発明1は「150~5000」であるのに対し、甲2発明1はその値が不明である点 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。 甲2には、甲2発明1の「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」の「14C(放射性炭素)/C(炭素)」の値は記載されていない。 この点について検討すると、参1に「地球上には、自然界に存在する炭素同位体は3種類ある。最も豊富で99%を占めるのが炭素12(12C)で、残りのほとんどは炭素13(13C)だ。炭素14(14C)もわずかに存在しているが、その割合は地球大気中の全炭素の1兆分の1(0.0000000001%)にすぎない。」と記載されるように、自然界に存在する炭素同位体のうち、炭素14の割合は1兆分の1であることが知られている。 そして、参1に「炭素14は、主に地球大気中の窒素分子が宇宙線に照射されて生成する。植物は光合成の際に大気中の二酸化炭素を取り込む(固定する)ので、植物、そしてその植物を食べた動物が死んだときの炭素14濃度は、その当時の大気中の炭素14濃度とほぼ等しいことになる。」と記載されるように、植物の炭素14濃度は、その当時の大気中の炭素14濃度とほぼ等しいから、植物由来のビニルエステル単量体の炭素14濃度は、現在の大気中の炭素14濃度とほぼ等しくなる。そうすると、植物由来のビニルエステル単量体の炭素が、全て植物由来であるとすると、その14C(放射性炭素)/C(炭素)は、1.0×10-12になるものと認められる。 また、参1に「死んだ生物の炭素14量は放射性崩壊によって減少するため、炭素が固定された年代(つまり、生物が死んだ年代)は、化石の中の炭素14量を測定すれば推定することができる。」と記載されるように、炭素14量は放射線崩壊によって減少するため、大昔に製造された石油に含まれる炭素14量は、現在の大気中の濃度(1.0×10-12)よりも大幅に少ないことが理解される。 そして、本件明細書の合成例1-1(【0252】、【0253】)では、植物由来の酢酸ビニルを「エチレン」と「酢酸」を用いて合成しているところ、「エチレン」は「サトウキビ由来のバイオエチレン」を用いたことが明記されているが、「酢酸」については特に植物由来であることが明記されていないことから、通常の石油由来であると認められる。 そうすると、合成例1-1で得られた植物由来の「酢酸ビニル」は、植物由来のエチレン(炭素数2)と石油由来の酢酸(炭素数2)を用いて製造されたもので、酢酸ビニルを構成する4つの炭素のうち2つ(50%)が植物由来であるところ、【0253】によれば、そのような酢酸ビニルの14C(放射性炭素)/C(炭素)は、5.0×10-13程度になることが理解される。 すなわち、相違点1-2における、植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」という要件を満たすためには、ビニルエステル単量体を製造するための原料の全てを植物由来とするのではなく、その一部が石油由来であることが必要であると認められる。 上記の理解をもとに甲2発明1について検討すると、甲2の図2によれば、「エタノール発酵」から「エチレン」と「アセトアルデヒド」が得られ、「アセトアルデヒド」から「酢酸」が製造され、「エチレン」と「酢酸」から「酢酸ビニル」が得られることが理解されるから、甲2発明1における「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」というのは、酢酸ビニルの原料である「エチレン」及び「酢酸」の両方を「エタノール発酵」から製造したもの、すなわち、酢酸ビニルを構成する全ての炭素が植物由来のものと認められるから、その14C(放射性炭素)/C(炭素)は、1.0×10-12となり、相違点1-2に係る要件を満たさないものである。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。 次に進歩性欠如について検討すると、甲2には、その酢酸ビニルの14C(放射性炭素)/C(炭素)を、「1.0×10-13以上」であり、かつ「1.0×10-12以上を除く」という範囲に限定することも、また、酢酸ビニルを製造するための「エチレン」及び「酢酸」の一部を石油由来とすることの、いずれについても記載がない。 そして、甲2に「ところが最近になり、化石資源由来のナフサからではなく、再生可能な植物資源を利用して得たエタノールからエチレンを生産する技術が開発された。実用化されれば、化石資源の枯渇問題も解消されるし、二酸化炭素排出量の削減にも貢献できる可能性を秘めた技術である。」と記載されるように、再生可能な植物資源を利用することで化石資源の枯渇問題や二酸化炭素排出量の削減に貢献できることが記載されているから、図2の記載をもとに「酢酸ビニル」を合成するのであれば、その原料となる「エチレン」と「酢酸」の両方をエタノール発酵から製造することは当然であり、手間をかけて植物資源由来の酢酸ビニルを製造する際に、石油由来の原料を混ぜて再生可能な植物資源の割合を減らすことは、図2の記載から当業者が通常想定することとは言えない。 また、本件特許の優先日において、「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」として、その合成原料である「エチレン」及び「酢酸ビニル」の一部を石油由来とし、残りを植物由来とした結果、14C(放射性炭素)/C(炭素)が、「1.0×10-13以上」であり、かつ「1.0×10-12以上を除く」となったものが、市販品として当業者が容易に入手可能であるとか、そのようなもの製造例が当業者に周知であった等の事情も認められない。 そうすると、甲2発明1において、相違点1-2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、令和7年2月26日提出の意見書(なお、意見書に記載された「令和6年2月26日」は「令和7年2月26日」の誤記であることは明らかである。)において、主に以下の点を主張する。 (ア)「甲2等で公知であるように、再生可能な植物資源を利用して得たエタノールを原料とすることで、化石資源の枯渇問題が解消され、二酸化炭素排出量の削減にも貢献できることは公知であり、甲2において、ポリビニルアルコールの原料となる酢酸ビニルについて、原料の全てを「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」とすることに代えて、原料の一部を「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」とし、残りを通常の石油由来のものとしてみることは、当業者が容易に想到することであり、当業者が適宜なし得ることである。 そうすると、上記植物由来の原料を含む酢酸ビニルの原料として、原料のすべてを植物資源由来のものとはせず、原料の一部を植物資源由来のものとしてみる程度のことは、上記と同様に当業者が容易に想到することであり、当業者が適宜なし得ることである。」(意見書7頁9~18行) (イ)「本件特許明細書に記載の合成例1-1に係る実施形態について付言すると、甲2に記載されるように、バイオエタノールからエチレンを生成することは公知であり、かつ、バイオエタノール由来のエチレンは、バイオマス材料として最も入手が用意(当審注:「容易」の誤記と認められる。)で一般的な材料の一つである。そうすると、本件特許明細書に記載の合成例1-1のように、エチレンとしてバイオエタノール由来のエチレンを用い、残りを通常の石油由来のものとしてみることは、当業者が材料の一部にバイオマス材料を適用した酢酸ビニルを製造するにあたり容易に想到することであり、むしろ、最初に試みる実施形態の1つと言え、14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」という要件は、このような原料の一部を植物資源由来のものとした酢酸ビニルが当然に満たす要件に過ぎない。」(意見書7頁34行~8頁7行) そこで、上記主張について検討する。 申立人が主張するように、酢酸ビニルを用いてポリビニルアルコールを製造するにあたり、原料の全てを「バイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」とすることに代えて、ポリビニルアルコールの原料の一部を石油由来のものとすることを当業者が試みたとして、最も合理的かつ現実的と考えられるのは、「バイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」と「石油由来の酢酸ビニル」を併用することであると考えられ、「バイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」の製造原料である「エチレン」又は「酢酸」のうち、その一部を石油由来から得たものとすることは、図2の記載を考慮しても、当業者が通常行う行為であるとはいえない。 また、上記イで述べたとおり、本件特許の優先日において、「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」として、その合成原料である「エチレン」及び「酢酸ビニル」の一部を石油由来とし、残りを植物由来としたものが、市販品として当業者が容易に入手可能であったとか、その製造例が当業者に周知であった等の事情も認められない。 そうすると、「エチレンとしてバイオエタノール由来のエチレンを用い、残りを通常の石油由来のものとしてみることは、当業者が材料の一部にバイオマス材料を適用した酢酸ビニルを製造するにあたり容易に想到することであり、むしろ、最初に試みる実施形態の1つ」であるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 エ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2について ア 本件発明2と甲2発明2との対比 上記(2)アで検討した点をふまえて、本件発明2を甲2発明2と対比すると、甲2発明2の「エチレン」は、本件発明2の「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」である「エチレン」に相当するから、両者は 「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合してなる重合体であり、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、 ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)がエチレンである、 重合体。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-5> 「重合体」が、本件発明2では「けん化してなるビニルアルコール系重合体」であって、「けん化度が、60モル%以上」であるのに対し、甲2発明2はけん化していない「エチレン-酢酸ビニル共重合体」である点 <相違点1-6> 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、本件発明2では「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」であるのに対し、甲2発明2ではその値が不明な点 <相違点1-7> 本件発明2では、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」に加えて「石油由来のビニルエステル単量体(B)」を重合し、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲2発明2ではそのような特定がない点 <相違点1-8> 重合体の「粘度平均重合度」が、本件発明2は「150~5000」であるのに対し、甲2発明2はその値が不明である点 <相違点1-9> 重合体の全構成単位におけるエチレン単位の含有率が、本件発明2では「1モル%以上20モル%未満」であるのに対し、甲2発明2ではその値が不明な点 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-6について検討すると、相違点1-6は上記(2)アにおける相違点1-2と同じであるから、上記(2)イで述べたのと同様の理由により、甲2発明2において相違点1-6の構成を採用することは当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 申立人の主張について 本件発明2について、申立人は上記(2)ウに示したのと同様のことを主張するが、その主張についても上記(2)ウで述べたとおり、採用することはできない。 (4)本件発明3~25について 本件発明3~25は本件発明1又は2を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1、2が甲2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明3~25についても同様に判断される。 (5)取消理由1、申立理由3、申立理由4についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとも、また甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、本件発明2~25は甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、取消理由1、申立理由3、申立理由4によっては、本件発明1~25に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲3を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由5(甲3を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由2、申立理由5は、いずれも甲3を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲3に記載された発明 甲3には、その請求項1の記載及び【0023】の「本発明のエチレン変性PVAは、例えば、エチレンとビニルエステル系単量体とを共重合する工程、及び、前記工程で得られたエチレン変性ポリビニルエステルをけん化する工程を有し、・・・する製造方法により製造することができる。」との記載、及び【0024】の「重合に用いることができるビニルエステル系単量体としては、・・・等を挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。」との記載からみて、次の発明が記載されている。 「エチレンと酢酸ビニルを共重合し、けん化して得られる、エチレン単位の含有率が1~15モル%であり、けん化度が80~99.5モル%であり、粘度平均重合度が200~5000であり、水-1-プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が下記式(1)を満たすエチレン変性ポリビニルアルコール。 0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1) (式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)」 (以下、「甲3発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「エチレン」、「酢酸ビニル」、「エチレン変性ポリビニルアルコール」、「けん化度が80~99.5モル%」、「粘度平均重合度が200~5000」は、それぞれ、本件発明1の「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」、「ビニルエステル単量体」、「ビニルアルコール系重合体」、「けん化度が、60モル%以上」、「粘度平均重合度が、150~5000」に相当する。 そうすると、両者は 「ビニルエステル単量体と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 ビニルエステル単量体が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 「ビニルエステル単量体」が、本件発明1では、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)」であり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲3発明ではそのような特定がない点 <相違点2-2> 「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」が、本件発明1では「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種」であるのに対し、甲3発明では「エチレン」である点 イ 相違点についての判断 相違点2-1について検討する。 甲3には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 この点について、甲2には「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」についての記載はあるものの、上記1(2)イで述べたのと同様の理由により、「サトウキビに含まれる砂糖を発酵して得られるバイオエタノールを出発原料として製造された酢酸ビニル」として、「14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」というものを採用することは、当業者が容易に想到することではない。 また、甲1には、「エチレンと少なくとも1種のカルボン酸ビニルエステルとのコポリマーであって、前記エチレンが少なくとも一部が再生可能な出発原料から得られるコポリマー」(請求項1)、「請求項1に記載のコポリマーであって、前記カルボン酸ビニルエステルの炭素原子の少なくとも一部は再生可能起源のものである、コポリマー」(請求項2)、「請求項1のコポリマーであって、部分的または完全にケン化されている、コポリマー」(請求項6)が記載されている(なお、甲1は英語で記載されているため、翻訳文の記載を示す。)。 しかし、甲1にも、「炭素原子の少なくとも一部は再生可能起源のもの」である「カルボン酸ビニルエステル」のうち、「炭素原子の一部が再生可能起源である酢酸ビニル」について、その具体的な製造例、使用例や入手先の記載がなく、上記1(2)イで述べたように、本件特許の優先日において、原料である「エチレン」及び「酢酸ビニル」の一部を石油由来とし、残りを植物由来として製造された酢酸ビニルであって、「14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」という要件を満たすものが、市販品として当業者が容易に入手可能であったとか、その製造例が当業者に周知であった等の事情があるとも認められない。 そうすると、甲3発明において、相違点2-1に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、令和7年2月26日提出の意見書において、上記1(2)ウに示したのと同様のことを主張するが、その主張についても上記1(2)ウで述べたとおり、採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、20~23について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲3発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点2-1において相違する。 そして、上記(2)イで示したのと同様の理由により、甲3発明において、相違点2-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明20~23は本件発明1又は2を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1、2が甲3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明20~23についても同様に判断される。 (5)取消理由2、申立理由5についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2、申立理由5によっては、本件発明1、2、20~23に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由3(甲4を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由6(甲4を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由3、申立理由6は、いずれも甲4を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲4に記載された発明 甲4は、甲3と同じ出願人の関連出願であり、その請求項1、3~5、【0021】、【0022】の記載、及び上記3(1)で検討した点もふまえると、次の発明が記載されている。 「酢酸ビニルを重合し、けん化して得られる、けん化度が80~99.5モル%であり、粘度平均重合度が200~5000であり、水-アセトン溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が下記式(1)を満たすポリビニルアルコール。 0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1) (式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点から、ピーク開始点を含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点までの距離を表す。)」 (以下、「甲4発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 甲4発明を本件発明1と対比すると、両者は 「ビニルエステル単量体を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 ビニルエステル単量体が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> 「酢酸ビニル」である「ビニルエステル単量体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)」であり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点 <相違点3-2> 「ビニルアルコール系重合体(X)」が、本件発明1では「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まない」か、又は「ビニルエステル単量体」と「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」「とのみを重合し、けん化してなる」ものであって、(C)が、「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」ものであるのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点 イ 相違点についての判断 相違点3-1について検討すると、甲4には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、相違点3-1は、上記2(2)アで示した相違点2-1と同様のものであり、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲4発明において、相違点3-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明20~23について 本件発明20~23は本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1が甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明20~23についても同様に判断される。 (4)取消理由3、申立理由6についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、20~23は甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由3、申立理由6によっては、本件発明1、20~23に係る特許を取り消すことはできない。 4 取消理由4(甲5を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由7(甲5を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由4、申立理由7は、いずれも甲5を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲5に記載された発明 甲5には、その請求項1、2及び【0028】の「PVAは、ビニルエステル単量体を重合させて得られるビニルエステル重合体をけん化することにより合成されるものである。」との記載、【0030】の「ビニルエステル単量体としては、・・・が挙げられ、これらの中でも、工業的観点から酢酸ビニルが好ましい。」との記載、【0037】、【0038】の重合度に関する記載からみて、次の発明が記載されている。 「酢酸ビニルを重合させて得られる酢酸ビニル重合体をけん化して得られるビニルアルコール系重合体であって、 60℃の熱水に3時間浸漬したときの溶解度が25%以下、 けん化度が99.5モル%以上、 JIS K6725:1994に準じて測定した重合度が1,500以上4,500以下、かつ 1,2-グリコール結合量が1.8モル%以下であり、 上記ビニルアルコール系重合体の全構造単位のうちのエチレン単位の割合が10モル%未満である、 ビニルアルコール系重合体」 (以下「甲5発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1を甲5発明と対比すると、甲5発明の「JIS K6725:1994に準じて測定した重合度」は、本件明細書の【0087】の記載からみて、本件発明1の「粘度平均重合度」に相当する。 そうすると、両者は、 「ビニルエステル単量体を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 ビニルエステル単量体が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-1> 「酢酸ビニル」である「ビニルエステル単量体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)」であり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲5発明ではそのような特定がない点 <相違点4-2> 「ビニルアルコール系重合体(X)」が、本件発明1では「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まない」か、又は「ビニルエステル単量体」と「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」「とのみを重合し、けん化してなる」ものであって、(C)が、「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」ものであるのに対し、甲5発明ではそのような特定がない点 イ 相違点についての判断 相違点4-1について検討すると、甲5には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、相違点4-1は、上記2(2)アで示した相違点2-1と同様のものであり、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲5発明において、相違点4-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~7について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲5発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点4-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲5発明において、相違点4-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明3~7は本件発明1又は2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1、2が甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明3~7についても同様に判断される。 (4)取消理由4、申立理由7についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~7は甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由4、申立理由7によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 5 取消理由5(甲6を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由8(甲6を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由5、申立理由8はいずれも甲6を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲6に記載された発明 甲6には、その請求項1,2,[0028]の「未変性PVAは、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを重合して得られた重合体をケン化することによって得られる。」との記載、[0028]、[0029]のケン化度、平均重合度の記載、[0032]の「変性PVA樹脂は、未変性PVAに任意の官能基を導入したものである。導入される官能基としては、・・・この中でも、架橋性の観点からカルボキシル基・・・を有する変性PVA樹脂が好ましい。」との記載、[0033]の「カルボキシル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(A)・・・は、カルボキシル基を有する化合物(モノマー)とビニルエステル系化合物(モノマー)とを共重合させて、その共重合体をケン化して得られる樹脂であり」との記載、[0035]、[0036]のカルボキシル基含有PVA樹脂のケン化度、平均重合度の記載からみて、次の発明が記載されている。 「カルボキシル基を有するモノマーとビニルエステル系モノマーを共重合させ、ケン化して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂、及びビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化して得られる未変性ポリビニルアルコールのうちの少なくとも1種のポリビニルアルコール系樹脂であって、 前記ビニルエステル系モノマーが酢酸ビニルであり、 前記ポリビニルアルコール系樹脂が、温度80℃の水中に30分間浸漬した後の膨潤率が250~900%であり、 前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が75~100モル%であり、 前記ポリビニルアルコール樹脂のJIS K 6726:1994に準拠して測定される平均重合度が300~4000である、 ポリビニルアルコール系樹脂」 (以下「甲6発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と、甲6発明を対比する。 甲6発明の「JIS K 6726:1994に準拠して測定される平均重合度」は、本件明細書の【0087】の記載からみて、本件発明1の「粘度平均重合度」に相当する。 甲6発明の「ポリビニルアルコール系樹脂」は、本件発明1の「ビニルアルコール系重合体」に相当する。 甲6発明の「カルボキシル基を有するモノマー」は、本件発明1の「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」に相当する。また、甲6発明の「未変性ポリビニルアルコール」は、「ビニルエステル系モノマーを重合し、けん化して得られる」ものであり、本件発明1の「ビニルエステル系単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体」に相当する。 そうすると、両者は 「ビニルエステル単量体を重合し、けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体(X)、又は ビニルエステル単量体と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 ビニルエステル単量体が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-1> 「酢酸ビニル」である「ビニルエステル単量体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)」であり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲6発明ではそのような特定がない点 <相違点5-2> 「ビニルエステル単量体と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」が、本件発明1では、ビニルエステル単量体と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)と「のみ」を重合し、けん化してなるものであるのに対し、甲6発明ではそのような特定がない点 <相違点5-3> 「ビニルエステル単量体と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」における「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」が、本件発明1では「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」のに対し、甲6発明ではそのような特定がない点 イ 相違点についての判断 相違点5-1について検討すると、甲6には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、相違点5-1は、上記2(2)アで示した相違点2-1と同様のものであり、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲6発明において、相違点5-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、8~10について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲6発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点5-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲6発明において、相違点5-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明8~10は本件発明1、2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1、2が甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明8~10についても同様に判断される。 (4)取消理由5、申立理由8についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、8~10は甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由5、申立理由8によっては、本件発明1、2、8~10に係る特許を取り消すことはできない。 6 取消理由6(甲7を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由9(甲7を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由6、申立理由9は、いずれも甲7を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲7に記載された発明 甲7には、その請求項1,2,【0009】、【0014】の記載からみて、また、【0007】に「α-オレフィンの種類としては、エチレン及びプロピレンが好ましい。」と記載され、全ての実施例においてα-オレフィンとしてエチレンが用いられていることからみて、次の発明が記載されている。 「エチレン単位を3~19モル%含有する水溶性ポリビニルアルコール系重合体であって、 けん化度が90~99.99モル%であり、JIS K6726に基づき測定した重合度が100~2000である、水溶性ポリビニルアルコール系重合体。」 (以下「甲7発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲7発明を対比する。 甲7発明の水溶性ポリビニルアルコール系重合体はけん化度が特定されているから、本件発明1の「けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」に相当する。 甲7発明の「JIS K6726に基づき測定した重合度」は、本件明細書の【0087】の記載からみて、本件発明1の「粘度平均重合度」に相当する。 甲7発明の「エチレン」は、本件発明1の「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」に相当し、甲7発明は「エチレン単位」を含むものであるから、「エチレンを重合」して得られるものであることは明らかである。 そうすると、両者は 「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 けん化度が、60モル%以上である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点6-1> 「ビニルアルコール系重合体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなる」ものであり、 「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であり、かつ、「植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニル」であるのに対し、甲7発明ではそのような特定がない点 <相違点6-2> 「ビニルアルコール系重合体」の粘度平均重合度が、本件発明1では「150~5000」であるのに対し、甲7発明では「100~2000」である点 <相違点6-3> 「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」における「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」が、本件発明1では「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」のに対し、甲7発明では「エチレン」である点 イ 相違点についての判断 相違点6-1について検討すると、甲6には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲7発明において、相違点6-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、11~13について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲7発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点6-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲7発明において、相違点6-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明11~13は本件発明1、2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1、2が甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明11~13についても同様に判断される。 (4)取消理由6、申立理由9についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、11~13は甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由6、申立理由9によっては、本件発明1、2、11~13に係る特許を取り消すことはできない。 7 取消理由7(甲8を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由10(甲8を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由7、申立理由10はいずれも甲8を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲8に記載された発明 甲8には、その請求項1及び【0011】の「本発明の紙用コーティング剤は、・・・例えば、剥離紙に用いられる。」との記載、【0018】の「本発明に用いるエチレン変性PVAのけん化度は・・・90モル%以上であることがより好ましい。」との記載からみて、次の発明が記載されている。 「エチレン単位の含有率が1~15モル%、けん化度が90~99.5モル%、粘度平均重合度が200~5000であり、水-1-プロパノール溶離液による逆相分配グラジエント高速液体クロマトグラフィーで測定されるJIS K 0124(2011年)に基づくシンメトリー係数が下記式(1)を満たすエチレン変性ポリビニルアルコール。 0.70≦W0.05h/2f≦1.10 (1) (式中、W0.05hはピーク5%高さ位置でのピーク幅を表し、fはピーク5%高さ位置でのピーク幅におけるピーク開始点aから、ピーク開始点aを含む水平線とピーク頂点を含む垂線との交点bまでの距離を表す。)」 (以下「甲8発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲8発明を対比する。 甲8発明のエチレン変性ポリビニルアルコールはけん化度が特定されているから、本件発明1の「けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」に相当する。 甲8発明の「エチレン」は、本件発明1の「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」に相当し、甲8発明は「エチレン単位」を含むものであるから、「エチレンを重合」して得られるものであることは明らかである。 そうすると、両者は 「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点7-1> 「ビニルアルコール系重合体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合」し、けん化してなるものであり、 「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であり、かつ、「植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニル」であるのに対し、甲8発明ではそのような特定がない点 <相違点7-2> 「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」が、本件発明1では「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」のに対し、甲8発明では「エチレン」である点 イ 相違点についての判断 相違点7-1について検討すると、甲8には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲8発明において、相違点7-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、14~17について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲8発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点7-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲8発明において、相違点7-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明14~17は本件発明1、2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1、2が甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明14~17についても同様に判断される。 (4)取消理由7、申立理由10についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、14~17は甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由7、申立理由10によっては、本件発明1、2、14~17に係る特許を取り消すことはできない。 8 取消理由8(甲9を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由11(甲9を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由8、申立理由11は、いずれも甲9を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲9に記載された発明 甲9には、その請求項1,【0011】の記載からみて、次の発明が記載されている。 「JIS K6726-1994に規定された試験方法に準じて算出された重合度が500~3000であり、且つけん化度が71.0~97.5mol%の範囲であるポリビニルアルコール」 (以下「甲9発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲9発明を対比する。 甲9発明のポリビニルアルコールはけん化度が特定されているから、本件発明1の「けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」に相当する。 また、甲9の【0011】に記載された式(1)の構造式からみて、甲9発明のポリビニルアルコールは、本件発明1における「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まない」ものに相当する。 甲9発明の「JIS K6726-1994に規定された試験方法に準じて算出された重合度」は、本件明細書の【0087】の記載からみて、本件発明1の「粘度平均重合度」に相当する。 そうすると、両者は 「けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まないビニルアルコール系重合体(X)であって、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-1> 「ビニルアルコール系重合体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合」し、けん化してなるものであり、 「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であり、かつ、「植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニル」であるのに対し、甲9発明ではそのような特定がない点 イ 相違点についての判断 相違点8-1について検討すると、甲9には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲9発明において、相違点8-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明18、19について 本件発明18、19は本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1が甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明18~19についても同様に判断される。 (4)取消理由8、申立理由11についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、18、19は、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由8、申立理由11によっては、本件発明1、18、19に係る特許を取り消すことはできない。 9 取消理由9(甲10を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由12(甲10を主引用文献とする進歩性欠如)について 取消理由9、申立理由12は、いずれも甲10を主引用文献とするものであるので、まとめて検討する。 (1)甲10に記載された発明 甲10には、その請求項3のポリビニルアルコール系重合体(B)に着目し、【0013】に記載されたけん化度及び重合度、【0021】に記載された重合度の定義の記載からみて、次の発明が記載されている。 「けん化度が65~95モル%で粘度平均重合度が650~3500のポリビニルアルコール系重合体(B)」(以下「甲10発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1を甲10発明と対比する。 甲10発明のポリビニルアルコール系重合体はけん化度が特定されているから、本件発明1の「けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」に相当する。 そうすると、両者は 「けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点9-1> 「ビニルアルコール系重合体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなり、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まない」ものであるか、又は「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなる」ものであって、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニル」であり、「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」が「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」 のに対し、甲10発明ではそのような特定がない点 イ 相違点についての判断 相違点9-1について検討すると、甲10には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲10発明において、相違点9-1の構成、特にビニルアルコール系重合体を製造するための原料として「14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」という「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明24、25、27~29について 本件発明24、25は本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1が甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明24、25についても同様に判断される。 本件発明27を上記(2)アで検討した点もふまえて甲10発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点9-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲10発明において、相違点9-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明27は甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明28、29は 本件発明27を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明27が甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明28、29についても同様に判断される。 (4)取消理由9、申立理由12についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、24、25、27~29は、甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由9、申立理由12によっては、本件発明1、24、25、27~29に係る特許を取り消すことはできない。 10 取消理由10(甲15を主引用文献とする進歩性欠如)について (1)甲15に記載された発明 甲15には、その請求項1のビニルアルコール系重合体(A)に着目し、【0017】、【0018】に記載されたけん化度及び粘度平均重合度、【0019】に記載された製造方法及び【0020】の「ビニルエステル系単量体としては・・・酢酸ビニルが最も好ましい。」との記載からみて、次の発明が記載されている。 「酢酸ビニルを、リンを含む化合物の存在下でラジカル重合する工程、および得られた重合体をけん化する工程を含む方法によって製造された、下記式(I)で表される基を末端に有し、けん化度が65~95モル%で粘度平均重合度が200~3000のビニルアルコール系重合体(A) 【化1】 [図:0001428984000005.jpg] 」(以下「甲15発明1」という。) また、甲15の請求項2に着目し、「ビニルアルコール系重合体(B)」についての【0033】、【0034】に記載されたけん化度及び(粘度平均)重合度の記載からみて、次の発明も記載されている。 「けん化度20モル%以上60モル%未満、粘度平均重合度が200~550のビニルアルコール系重合体(B)からなり、甲15発明1のビニルアルコール系重合体(A)と重量比(A)/(B)が40/60~95/5で混合されてビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤として使用される、ビニルアルコール系重合体(B)」(以下「甲15発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1を甲15発明1と対比すると、両者は 「ビニルエステル単量体を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 ビニルエステル単量体が酢酸ビニルであり、 けん化度が、60モル%以上であり、 粘度平均重合度が、150~5000である、 ビニルアルコール系重合体(X)」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点10-1> 「酢酸ビニル」である「ビニルエステル単量体」が、本件発明1では「植物由来のビニルエステル単量体(A)」と「石油由来のビニルエステル単量体(B)」であり、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」、「(A)/(B)のモル比が5/95~90/10」であるのに対し、甲15発明1ではそのような特定がない点 <相違点10-2> 「ビニルアルコール系重合体(X)」が、本件発明1では「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)を含まない」か、又は「ビニルエステル単量体」と「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」「とのみを重合し、けん化してなる」ものであって、(C)が、「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」ものであるのに対し、甲15発明1ではそのような特定がない点 イ 相違点についての判断 相違点10-1について検討すると、甲15には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」とすることが記載されていない。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲15発明1において、相違点10-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲15に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、24、25、27~29について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲15発明1と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点10-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲15発明1において、相違点10-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明24、25は本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1が甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明24、25についても同様に判断される。 本件発明27を上記(2)アで検討した点もふまえて甲15発明2と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点10-1において相違する。 そして、上記2(2)イで示したのと同様の理由により、甲15発明2において、相違点10-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明27は甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明28、29は 本件発明27を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明27が甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明28、29についても同様に判断される。 (4)取消理由10についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、24、25、27~29は、甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由10によっては、本件発明1、2、24、25、27~29に係る特許を取り消すことはできない。 以下、取消理由通知(決定の予告)で通知していない申立理由について検討する。 11 申立理由1(甲1による新規性欠如)、申立理由2(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)について 申立理由1、申立理由2は、いずれも甲1を主引用文献とするものであるから、まとめて検討する。 (1)甲1に記載された発明 甲1には、「エチレンと少なくとも1種のカルボン酸ビニルエステルとのコポリマーであって、前記エチレンの少なくとも一部が再生可能な出発原料から得られるコポリマー」が記載されており(請求項1)、そのコポリマーは「カルボン酸ビニルエステルの炭素原子の少なくとも一部は再生可能起源のものである」こと(請求項2,[0012])、そのコポリマーは「エチレンと酢酸ビニルとのランダムコポリマー」であること(請求項5,[0134])、そのコポリマーは「部分的または完全にケン化されている」こと(請求項6,[0143])、「再生可能な出発原料」が「サトウキビ及びテンサイ、カエデ、ナツメヤシ、シュガーパーム、ソルガム、アメリカリュウゼツラン、トウモロコシ、小麦、大麦、ソルガム、米、ジャガイモ、キャッサバ、サツマイモ、藻類、セルロースを含む原料、ヘミセルロース、木、わら、紙を含む材料、からなる群から選択される植物原料である」こと(請求項19)も記載されている。 「再生可能な出発原料」と「再生可能起源」とは同義であると認められるから、甲1には、次の発明が記載されているといえる。 「エチレンと酢酸ビニルとのランダムコポリマーであって、前記エチレンの少なくとも一部が再生可能な出発原料から得られ、前記酢酸ビニルの炭素原子の少なくとも一部は再生可能な出発原料から得られ、前記再生可能な出発原料がサトウキビ及びテンサイ、カエデ、ナツメヤシ、シュガーパーム、ソルガム、アメリカリュウゼツラン、トウモロコシ、小麦、大麦、ソルガム、米、ジャガイモ、キャッサバ、サツマイモ、藻類、セルロースを含む原料、ヘミセルロース、木、わら、紙を含む材料、からなる群から選択される植物原料であり、前記コポリマーは部分的または完全にけん化されている、エチレンと酢酸ビニルとのランダムコポリマー」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「酢酸ビニル」のうち、「炭素原子の少なくとも一部」が「再生可能な出発原料」、すなわちサトウキビ等の「植物原料」であるものは、本件発明1の「植物由来のビニルエステル単量体(A)」に相当する。 甲1発明の酢酸ビニルのうち「炭素原子の少なくとも一部」が「再生可能な出発原料」でないものは、甲1の[0002]に「石油起源の再生可能でない出発原料」との記載があることから、本件発明1の「石油由来のビニルエステル単量体(B)」に相当する。 甲1発明の「エチレン」は、本件発明1の「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」に相当する。 甲1発明の「部分的または完全にけん化されている」、「エチレンと酢酸ビニルとのランダムコポリマー」は、酢酸ビニル部分がけん化によりビニルアルコールになることから、本件発明1の「ビニルエステル単量体・・・を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)」に相当する。 したがって、両者は 「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)と、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)とのみを重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体(X)であって、 植物由来のビニルエステル単量体(A)が酢酸ビニルであり、石油由来のビニルエステル単量体(B)が酢酸ビニルである、 ビニルアルコール系重合体(X)。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 <相違点11-1> 植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が、本件発明1では「1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」であるのに対し、甲1発明ではその値が不明な点 <相違点11-2> 植物由来のビニルエステル単量体(A)と石油由来のビニルエステル単量体(B)のモル比が、本件発明1では「5/95~90/10」であるのに対し、甲1発明ではその値が不明である点 <相違点11-3> ビニルアルコール系重合体の「けん化度」が、本件発明1は「60モル%以上」であるのに対し、甲1発明は「部分的または完全にけん化されている」にすぎない点 <相違点11-4> ビニルアルコール系重合体の「粘度平均重合度」が、本件発明1は「150~5000」であるのに対し、甲1発明はその値が不明である点 <相違点11-5> 「ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体(C)」が、本件発明1では「アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」のに対し、甲1発明では「エチレン」である点 イ 相違点についての判断 相違点11-1について検討すると、上記2(2)イで述べたように、甲1には、「炭素原子の少なくとも一部は再生可能起源のもの」である「カルボン酸ビニルエステル」のうち、「炭素原子の一部が再生可能起源である酢酸ビニル」について、その具体的な製造例、使用例や入手先の記載がなく、「14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」という要件を満たすものが記載されているとはいえず、相違点11-1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 また、上記1(2)イで述べたように、甲2にも上記要件を満たす酢酸ビニルは記載されておらず、また、本件特許の優先日において、原料である「エチレン」及び「酢酸ビニル」の一部を石油由来とし、残りを植物由来として製造された酢酸ビニルであって、「14C(放射性炭素)/C(炭素)が、1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」という要件を満たすものが、市販品として当業者が容易に入手可能であったとか、その製造例が当業者に周知であった等の事情があるとも認められない。 そうすると、甲1発明において相違点11-1の構成を採用することは甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~25について 本件発明2を上記(2)アで検討した点をふまえて甲1発明と対比すると、両者は少なくとも上記(2)アで示した相違点11-1において相違する。 そして、上記(2)イで示したのと同様の理由により、甲1発明において、相違点11-1の構成を採用することは、甲1、甲2の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明3~25は本件発明1又は2を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1、2が甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明3~25についても同様に判断される。 (4)申立理由1、申立理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1は甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明1~25は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1、申立理由2によっては、本件発明1~25に係る特許を取り消すことはできない。 12 申立理由13(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 (2)本件発明1~25が解決しようとする課題 本件発明1~25が解決しようとする課題は、本件明細書の【0047】の記載からみて、「石油由来のみのビニルアルコール系重合体と比較して同等又はそれ以上の性質を有するビニルアルコール系重合体を提供し、ビニルアルコール系重合体(PVA)を使用する際に、石油資源を節約し、かつ製造過程における二酸化炭素の排出を抑制すること」であると認められる。 (3)申立理由13の具体的な理由の概要 申立理由13の具体的な理由の概要は、本件発明1ではビニルエステル単量体と共重合可能な不飽和単量体(C)として、「α-オレフィン、アクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アリル化合物、不飽和ジカルボン酸類及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル、ビニルシリル化合物、及び酢酸イソプロペニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である」ことが規定されているところ、本件明細書の実施例で合成されているのは、 ア ビニルエステル単量体と共重合可能な不飽和単量体(C)を含まない実験例 イ エチレンを共重合させた実験例 ウ アクリル酸メチルを共重合させた実験例 のみであり、上記3種以外の単量体を共重合させた場合にまで、発明の範囲を拡張ないし一般化できるとはいえない、というものである(申立書65頁項目エ)。 (4)サポート要件の検討 本件明細書の【0051】には「本発明によれば、PVAの一部を植物由来のものとすることで、石油由来のみのビニルアルコール系重合体と比較して同等又はそれ以上の性質を有するビニルアルコール系重合体を提供することができる。そのため、本発明によれば、石油資源を節約することができ、かつ製造過程における二酸化炭素の排出量を減らし地球温暖化を抑制することができる。」と記載されている。 そうすると、本件発明が解決しようとする課題のうち、「石油資源を節約し、かつ製造過程における二酸化炭素の排出を抑制する」部分は、「PVAの一部を植物由来のものとする」、すなわち「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体とすることによって解決されることが理解できる。 また、本件発明が解決しようとする課題のうち、「石油由来のみのビニルアルコール系重合体と比較して同等又はそれ以上の性質を有するビニルアルコール系重合体を提供」する部分は、「ビニルアルコール」は、その原料となるビニルエステルが植物由来か石油由来かにかかわらず、「ビニルアルコール」であることに変わりはないから、PVAの一部を植物由来のものとしても「石油由来のみのビニルアルコール系重合体と比較して同等の性質を有する」ことは当業者が理解できることであるし、本件明細書の実施例においても、【表1】~【表16】において、PVAの一部を植物由来のものとした本件発明のビニルアルコール系重合体が、石油由来のみのビニルアルコール系重合体と比較して同等の性質を有することが示されている。 そうすると、本件発明の課題を解決するためには「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体とすればよいことは当業者が理解できることである。 そして、本件明細書の【0061】に「また、PVA(X)は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルエステル単量体・・・と共重合可能な他の不飽和単量体とを共重合させたビニルエステル共重合体をけん化したものであってもよい。」と記載されるように、「ビニルエステル単量体と共重合可能な不飽和単量体(C)」は発明の趣旨を損なわない範囲で使用することができる成分にすぎず、実施例において具体的な使用例がなくても、「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を重合し、けん化してなるものであれば、上記のとおり本件発明の課題を解決できるものと認められる。 したがって、「植物由来のビニルエステル単量体(A)を重合し、けん化してなるビニルアルコール系重合体」という構成要件を含む本件発明1~25は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (5)申立理由13についてのまとめ よって、本件発明1~25に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由13によっては取り消すことができない。 13 申立理由14(明確性要件違反)について (1)申立理由14の具体的な理由の概要 申立理由14の具体的な理由の概要は、次のとおりである。 ア 本件発明1には「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなる」とした記載があり、本件発明27には、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを、さらに必要に応じて連鎖移動剤を共存させて重合し、けん化してなる」とした記載を含み、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合」に該当し、不明確である。(申立書66頁1~25行) イ 本件発明1に係るビニルアルコール系重合体(X)及び本件発明27に係るビニル系化合物の懸濁重合用分散安定助剤は、植物由来のビニルエステル系単量体(A)を原料の一部として含むことによって、その生産物であるビニルアルコール系重合体(X)及び懸濁重合用分散安定助剤の構造、性質がどのような構造、性質となるのか理解することができず、本件明細書を参照しても、石油由来のビニルエステル単量体(B)を原料としたものと比較して各性能において遜色なかったことが記載されるのみで、請求項に係る物の特徴(構造、性質等)を理解できない。(申立書67頁1~9行) (2)明確性要件についての検討 上記(1)アについて検討すると、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを重合し、けん化してなる」という記載は、単に植物由来のビニルエステル単量体(A)と石油由来のビニルエステル単量体(B)が重合されてポリビニルエステルとなり、それがケン化されてポリビニルアルコールになったことを示すにすぎないものであるから、その特定による物の構造を明確に理解することができるものである。 また、「植物由来のビニルエステル単量体(A)と、石油由来のビニルエステル単量体(B)とを、さらに必要に応じて連鎖移動剤を共存させて重合し、けん化してなる」という記載についても、上記に加えて、さらにポリビニルアルコールの末端に連鎖移動剤に由来する官能基が必要に応じて結合していることを示すにすぎないものであるから、その特定による物の構造を明確に理解することができるものである。 上記(1)イについて検討すると、植物由来のビニルエステル単量体(A)を重合して得られるビニルアルコール系重合体(A)は、上記1(2)イで述べたように、14C(放射性炭素)/C(炭素)の値が、石油由来のビニルエステル単量体(B)のみを重合して得られるビニルアルコール系単量体とは異なるから、本件発明1、2及び27の物の特徴(構造、性質等)を理解することができる。 したがって、申立理由14の具体的理由によっては、本件発明1、2、27及びそれらを引用する本件発明3~25、28、29の特許請求の範囲の記載が不明確であるとはいえない。 (3)申立理由14についてのまとめ よって、本件発明1~25、27~29に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由14によっては取り消すことができない。 14 申立人が令和7年2月26日に提出した意見書の主張(甲20~22を主引用文献とする進歩性欠如)について 申立人は、令和7年2月26日に提出した意見書において、訂正後の請求項1、24に係る発明は甲20又は21に記載された発明に基づいて、また、訂正後の請求項2、24に係る発明は甲22に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、何れも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件発明1、2、24に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべき旨を主張する。(意見書29~36頁) 上記主張について検討すると、甲20~22には、少なくとも本件発明1、2における「植物由来のビニルエステル単量体(A)」を用いることや、「植物由来のビニルエステル単量体(A)の14C(放射性炭素)/C(炭素)が1.0×10-13以上であり(1.0×10-12以上を除く)」ということが記載されておらず、また、上記2(2)イで述べたのと同様の理由により、甲1、甲2の記載を参酌しても、甲20~22において上記構成を採用することは当業者が容易に想到することではない。 したがって、その他の構成について検討するまでもなく、本件発明1、2及びそれを直接又は間接的に引用する本件発明24は、甲20~22に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立人の主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~25、27~29に係る特許は、申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。 また、請求項26に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700083

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決181件(株式会社クラレ、西郷 新)
  • 2023-700598異議申立 / 2024-05-20 / 訂正認容メタクリル樹脂組成物、成形体およびフィルム
    同じ当事者: 株式会社クラレ、西郷 新
  • 2025-700567異議申立 / 2026-07-01 / 訂正認容ゴム変性スチレン系樹脂組成物、シート、照明用カバーおよび成形品
    同じ当事者: 西郷 新
  • 2026-700183異議申立 / 2026-06-29 / 維持成膜装置、成膜方法、酸化ガリウム膜および積層体
    同じ当事者: 西郷 新
  • 2025-700321異議申立 / 2026-06-04 / 訂正認容樹脂組成物及び成形体
    同じ当事者: 株式会社クラレ
  • 2026-700158異議申立 / 2026-05-26 / 維持ニッケルチタン合金のワイヤ及びその形成方法
    同じ当事者: 西郷 新
同じ論点・分野の審決(審決分類)596件(113・C08F、121・C08F、537・C08F)
  • 2025-700567異議申立 / 2026-07-01 / 訂正認容ゴム変性スチレン系樹脂組成物、シート、照明用カバーおよび成形品
    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F、537・C08F
  • 2025-700874異議申立 / 2026-06-18 / 訂正認容アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置
    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F、537・C08F
  • 2025-701040異議申立 / 2026-06-16 / 訂正認容組成物、硬化体及び有機EL表示装置
    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F、537・C08F
  • 2025-700797異議申立 / 2026-04-30 / 訂正認容硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F、537・C08F
  • 2024-701215異議申立 / 2026-03-10 / 請求成立(取消)組成物、重合体、硬化物、成形体及びポリメタクリル酸メチルの製造方法
    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F、537・C08F

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存