特許拒絶査定不服審判
2016-012442
非連続受信モードにおける無線デバイスのための電力節減方法
- 審判番号
- 2016-012442
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-560144外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月18日
- 審決日
- 2018年01月30日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-560144「非連続受信モードにおける無線デバイスのための電力節減方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日国際公開、WO2013/148570、平成27年 4月23日国内公表、特表2015-512226〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年3月28日 米国、2012年7月5日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月7日付けで拒絶理由が通知され、同年11月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月15日付けで拒絶査定されたところ、同年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、平成29年6月20日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成29年9月14日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 無線モバイルデバイスによって実行された測定を指示する1つ以上の信号を生成することと、
非連続受信(DRX)モードで動作しているときに、前記無線モバイルデバイスによって実行された前記測定の結果に依存する周期性で隣接セル探索を実行することと、
を含み、
前記周期性は前記DRXモードのY回のページングサイクル毎に一回隣接セル探索を実行することを含み、Yは2以上の整数値であり、前記測定は、前記無線モバイルデバイスの速度及び前記無線モバイルデバイスの無線ユニットによって測定された少なくとも1つのメトリックを含み、前記隣接セル探索の周期性は(N+1)×(M+1)行列の値から得られ、前記行列は前記無線ユニットから受信された前記少なくとも1つのメトリックからの1つ以上の閾値及び1つ以上の速度閾値に基づいて生成され、N及びMは少なくとも1つの整数値であり、
前記行列における値は、前記速度を前記1つ以上の速度閾値の少なくとも1つと比較すること、及び、前記無線ユニットから得られた前記少なくとも1つのメトリックを前記無線ユニットから得られた前記少なくとも1つのメトリックの前記1つ以上の閾値と比較することにより得られる、方法。 」
第3 引用発明及び周知技術
1 引用発明
当審拒絶理由で引用された特開2009-49486号公報(平成21年3月5日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には図面とともに、以下の記載がある。(下線は、強調のために当審が付与した。)
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は一般に移動通信の技術分野に関連し、特にセル再選択を行うユーザ装置及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
セルラ方式の移動通信システムでは、セルからセルへハンドオーバを行うことでサービスエリア全域で移動通信を行うことができる。ハンドオーバはセルの再選択(reselection)とも言及される。(通信中のセル移行をハンドオーバ、待受け中のセル移行をセル再選択と呼ぶ場合もあるが、ここでは両者を区別せず、セル再選択と呼ぶ。)ユーザ装置の接続・待受けするセルを切り替えるべき時点又は地点は、理論的には、移行元基地局(ソースeNB)から送信された信号の受信信号強度と、移行先基地局(ターゲットeNB)から送信された信号の受信信号強度との大小関係が変わるポイントである。一方、セル再選択はシステム及びユーザ装置双方に多くの信号処理負担を強いるので、過剰に行われるべきではない。例えば、通信中ハンドオーバの場合は、パス切換えやユーザ装置のネットワークノード間のコンテクスト転送などの処理負荷が生じる。また、待受け中セル再選択の場合は、移行先セルで報知情報を受信するユーザ装置の負荷が生じ、バッテリ消耗に影響する。このため、或る程度のヒステリシスを加味した上でセル再選択を開始するのが通常的である。」
(2)「【0004】
ところで、移動通信システムにおけるセル配置及びユーザの移動方向は様々である。例えば、図2のケース1に示される例では比較的大きなサイズの複数のセルをユーザが或る速度vで通過する様子を示す。ケース2に示される例では比較的小さな複数のセルをユーザが同じ速度vで通過する様子を示す。ケース2の場合、セル再選択を頻繁に実行すべきであるので、再選択待機期間を短く設定することが好ましい。一方、ケース1の場合、セル再選択が頻繁になされることは要求されない。むしろケース1の場合に再選択待機期間を短くしたとすると、不要なセル再選択が生じてしまうことが懸念される。(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように移動通信システムにおけるセル配置及びユーザの移動方向は様々である。従って図2に示されるような状況だけでなく、図3に示されるようにユーザの進路自体が蛇行している場合(上図)や、セル境界が複雑に入り組んでいる場合(下図)等もあり得る。このような状況は将来益々増える可能性がある。図3に示されるような場合、セルの再選択回数は比較的多くなる。従ってUMTSの上記の手法によれば再選択待機期間は短く設定される。しかしながら図3に示されるような場合は、図2のケース2のように高速に移動しながら多数のセルを通過するわけではないので、むしろ不要なセル再選択が抑制されるべきである。にもかかわらず、再選択待機期間が短く設定されることで、セル再選択が却って促され、不要なセル再選択が頻繁に生じてしまうことが懸念される。」
(3)「【0013】
また、本発明の一形態では、ユーザ装置で第1条件及び第2条件双方が満たされたか否かによって、周辺セルサーチの頻度または周辺基地局の受信信号強度の測定実施頻度を修正して使用するか否かが決定される。ユーザ装置はより適した基地局で待受け/通信を行うために、周期的に周辺セルサーチを行い、周辺基地局の受信信号強度の測定を行っている。ここで、バッテリセービングの観点から、現在のサービング基地局(待受け中或いは通信中の基地局)の受信信号強度がある閾値Ssearchを上回る期間は、セル再選択の必要性(より適した基地局が見つかる可能性)が低いことから、周辺セルサーチや周辺基地局の受信信号強度の測定頻度を減らしてもよい。本発明の一形態では、前記第1条件及び第2条件を満たした場合に、閾値Ssearchを修正する。前記第1条件及び第2条件双方が満たされた場合の閾値Ssearchは、満たされない場合の閾値Ssearchよりも高くなるように設定されてよい。同様に、前記第3条件及び第4条件双方が満たされた場合の閾値Ssearchは、満たされない場合のSsearchよりも高くなるように設定されてよい。
【0014】
ユーザ装置のバッテリセービングの観点からは、閾値Ssearchを変えるだけでなく、周辺セルサーチの頻度または周辺基地局の受信信号強度の測定実施頻度を修正してもよい。」
(4)「【実施例1】
【0016】
図4は第1実施例による動作例を示すフローチャートである。図示のフローは移動通信システムで使用されるユーザ装置内で実行される。フローはステップS1から始まり、状態の初期化が行われる。後続のフローに進む前に、少なくともユーザ装置は在圏セルの基地局装置(サービング基地局又は移行元基地局)から報知情報BCHを受信し、セル再選択の実施条件を決めるためのパラメータを取得する。パラメータは具体的には、ヒステリシス閾値Qhyst、再選択待機期間Treselection、セル選択回数監視期間TCRmax、セル選択回数閾値NCR、移動度監視期間TFD、ドップラ周波数閾値FDthresh及びその他のパラメータが含まれてよい。
【0017】
ステップS2では、現時点から遡ってセル選択回数監視期間TCRmaxの間にセル再選択が何回行われたかが確認される。即ち、ユーザ装置が過去TCRmaxの間にセル再選択を何回行ったかが確認される。セル選択回数監視期間TCRmaxは、例えば30,60,120,180,240(秒)のような値をとってもよいが、これらに限定されず、適切な如何なる値が使用されてもよい。確認されたセル選択回数は、セル選択回数閾値NCRと比較され、大小判定が行われる。セル選択回数閾値NCRは、例えば1乃至16の整数値のような値をとってもよいが、これらに限定されず、適切な如何なる値が使用されてもよい。確認されたセル選択回数が、セル選択回数閾値NCRより大きかった場合、フローはステップS3に進む。
【0018】
ステップS3では、現時点から遡って移動度監視期間TFDの間、最大ドップラ周波数がドップラ周波数閾値FDthreshを越えていたか否かが確認される。移動度監視期間TFDはセル選択回数監視期間TCRmaxと同じ期間でもよいし、異なる期間でもよい。また、TFDは0でもよい。また、ステップS2及びS3は図示の通りに順に行われてもよいし、逆順に行われてもよいし、全部又は一部のステップが同時に行われてもよい。ドップラ周波数閾値FDthreshと比較される最大ドップラ周波数は、瞬時的な値でもよいし、複数の瞬時値の平均値でもよい。過去TFDにわたって最大ドップラ周波数が閾値FDthresh以上であった場合、フローはステップS4に進む。
【0019】
ステップS4に至る場合は、セルの再選択回数が閾値NCR以上であり且つ最大ドップラ周波数が閾値FDthresh以上であった場合である。従ってユーザ装置は高速に移動しながら多数のセル再選択を経験してきている。これは図2のケース2のような状況にあることを示す。このユーザは高速移動状態にある。そこでステップS4では、報知情報により示されるデフォルトの再選択待機期間Treselectionをα倍し(0<α<1)、デフォルト値より小さな再選択待機期間(α×Treselection)が導出され、それがユーザ装置で実際に使用される。以後フローはステップS2に戻る。
【0020】
一方、ステップS2で再選択回数が閾値NCRより少なかった場合又はステップS3で最大ドップラ周波数が閾値FDthreshを下回っていた場合、フローはステップS5に進む。
【0021】
ステップS5では、過去ある一定期間TCRmaxHysの間に高速移動状態と判定されていないことが確認される。高速移動状態と判定されていなかったならば、フローはステップS6に進む。
【0022】
ステップS6では、自装置UEは低速移動状態であることが確認される。この場合、典型的には図2のケース1のような状況なので、再選択待機期間は修正されず、そのまま使用される。以後フローはステップS2に戻り、説明済みのプロセスが行われる。」
(5)「【0027】
図6はユーザ装置の機能ブロック図を示す。図6にはRF部61、L1/L2処理部62、RRC処理部63、ドップラ周波数測定部64、再選択回数測定部65及び速度判定部66が描かれている。
(中略)
【0031】
ドップラ周波数測定部64は、自装置に関する最大ドップラ周波数を測定する。測定されたドップラ周波数fDは速度判定部66に報告される。この測定値は図4のステップS3で使用されるものに相当する。
(中略)
【0033】
速度判定部66は、自装置が高速で移動している状態(高速移動状態)であるか、静止又は低速でしか移動していない状態(低速移動状態)であるかを判定する。判定手法は図4及び後述の図7の手順でなされてよい。判定の結果に応じて、未修正の又は修正後のセル選択の実施条件で、そのユーザ装置に関するセル再選択手順がRRC処理部63により実行される。」
(6)「【実施例2】
【0034】
図7は第2実施例による動作例を示すフローチャートである。第1実施例ではユーザ装置の移動状態は2種類に区別され、それぞれに適したセル選択の実施条件が設定された。第2実施例では、ユーザ装置の移動状態は3種類に区別され、それぞれに適したセル選択の実施条件が設定される。例えば100km/h程度は高速移動状態に対応させてもよい。例えば50km/h程度は中間状態に対応させてもよい。同様な手法で移動状態を4以上に区別してもよい。
【0035】
フローはステップS1から始まり、状態の初期化が行われる。ユーザ装置は在圏セルの基地局装置から報知情報BCHを受信し、セル再選択の実施条件を決めるためのパラメータを取得する。
【0036】
ステップS2では、現時点から遡ってセル選択回数監視期間TCRmaxの間にセル再選択が何回行われたかが確認される。即ち、ユーザ装置が過去TCRmaxの間にセル再選択を何回行ったかが確認される。(中略)フローはステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、現時点から遡って移動度監視期間TFDの間、最大ドップラ周波数が第1のドップラ周波数閾値FDthresh(1)を越えていたか否かが確認される。(中略)過去TFDにわたって最大ドップラ周波数が閾値FDthresh(1)以上であった場合、フローはステップS4に進む。
【0038】
ステップS4に至る場合は、セルの再選択回数が閾値NCR1以上であり且つ最大ドップラ周波数が閾値FDthresh(1)以上であった場合である。従ってユーザ装置は高速に移動しながら多数のセル再選択を経験してきている。このユーザは高速移動状態にある。(中略)
【0039】
一方、ステップS2で再選択回数が閾値NCR1より少なかった場合又はステップS3で最大ドップラ周波数が閾値FDthresh(1)を下回っていた場合、フローはステップS5に進む。
【0040】
ステップS5では、過去ある一定期間TCRmaxHys1の間に高速移動状態と判定されていないことが確認される。高速移動状態と判定されていなかったならば、フローはステップS6に進む。
【0041】
ステップS6では、現時点から遡ってセル選択回数監視期間TCRmaxの間に行われたセル再選択回数が、第2のセル選択回数閾値NCR2と比較され、大小判定が行われる。第2のセル選択回数閾値NCR2も例えば1乃至16の整数値のような適切な如何なる値をとってもよいが、典型的には、第1のセル選択回数閾値NCR1より小さな値である。セル選択回数が、第2のセル選択回数閾値NCR2より大きかった場合、フローはステップS7に進む。
【0042】
ステップS7では、現時点から遡って移動度監視期間TFDの間、最大ドップラ周波数が第2のドップラ周波数閾値FDthresh(2)を越えていたか否かが確認される。(中略)過去TFDにわたって最大ドップラ周波数が閾値FDthresh(2)以上であった場合、フローはステップS8に進む。
【0043】
ステップS8に至る場合、ユーザ装置は高速移動状態ではないにしても、セルの再選択回数が閾値NCR2以上であり且つ最大ドップラ周波数が閾値FDthresh(2)以上なので、比較的移動度が大きい。すなわちこのユーザは中間状態にある。ステップS8では、デフォルトの再選択待機期間Treselectionをβ倍し(0<α<β<1)、デフォルト値より小さな再選択待機期間(β×Treselection)が導出され、それがユーザ装置で実際に使用される。以後フローはステップS2に戻る。
(中略)
【0046】
ステップS10では、自装置UEは低速移動状態であることが確認される。この場合、典型的には図2のケース1のような状況なので、再選択待機期間は修正されず、そのまま使用される。以後フローはステップS2に戻り、説明済みのプロセスが行われる。」
(7)「【実施例3】
【0051】
本発明の第3実施例では、ユーザ装置で第1条件及び第2条件双方が満たされたか否かによって、周辺セルサーチの頻度または周辺基地局の受信信号強度の測定実施頻度を修正して使用するか否かが決定される。第1及び2条件とは、図4のステップS2,S3で判断された条件である。ユーザ装置は、より適した基地局で待受け/通信を行うために、周期的に周辺セルサーチを行い、周辺基地局の受信信号強度の測定を行っている。ここで、バッテリセービングの観点から、現在のサービング基地局(待受け中或いは通信中の基地局)の受信信号強度がある閾値Ssearchを上回る期間では、セル再選択の必要性(より適した基地局が見つかる可能性)は低い。従って現在のサービング基地局の受信信号強度がある閾値Ssearchを上回る期間では、周辺セルサーチや周辺基地局の受信信号強度の測定頻度は少なくてもよい。図8はサービングセルでの受信信号品質の良否に応じてセルサーチ頻度等が変わる様子を示す。
【0052】
図9に示されるように、本発明の第3実施例では、第1条件及び第2条件を満たした場合に、閾値Ssearchが修正される。第1条件及び第2条件双方が満たされた場合の閾値Ssearchは、満たされない場合の閾値Ssearchよりも高くなるように設定されてよい。これにより、第1及び第2条件が満たされた場合に、セルサーチ等の頻度が増え、セル再選択・ハンドオーバイベントを速やかに検出することができる。同様に、前記第3条件及び第4条件双方が満たされた場合の閾値Ssearchは、満たされない場合のSsearchよりも高くなるように設定されてよい。第3,第4条件とは図7のステップS2,S3で判定された条件である。 ユーザ装置のバッテリセービングの観点からは、閾値Ssearchを変えるだけでなく、周辺セルサーチの頻度または周辺基地局の受信信号強度の測定実施頻度を修正してもよい。
【0053】
図10はセルサーチ頻度又は信号強度測定頻度が、ユーザ装置の移動速度(高、中、低)に応じてどのように異なるかを示す。図示の例では、図9で説明されたようにサービングセルでの受信信号強度が或る閾値Ssearch以上であるか否かに応じて、セルサーチ等の頻度が異なっている。図示の例では、最小の頻度N1から最大の頻度N6にわたって頻度を変えることができる。これにより、ユーザ装置の移動速度及び受信信号品質の良否に応じて適切な頻度でセルサーチ等を行うことができる。
【0054】
なお、N1からN6を指定するパラメータ、高中低の各速度域で用いるSsearchの値は、報知されるか、又は通信中のユーザ装置であれば個別制御チャネルで基地局装置から通知される。同様に、実施例1、実施例2におけるTCRmax, TCRmaxHyst, NCR, TFD, FDthresh, Treselection, Qhyst, α, βといったパラメータも報知されるか、又は通信中のユーザ装置であれば個別制御チャネルで基地局装置から通知される。図11は基地局装置からユーザ装置に通知されるパラメータの内、本発明に特に関連するパラメータの一例を示す。ネットワークがこれらユーザ装置で用いるパラメータを制御可能とすることで、システム内のユーザ装置の挙動を揃えることができる。特に、オペレータがセル半径、周辺セル数、エリア内に高速道路があるかなどの状況に応じて、ユーザ装置の挙動を的確に制御することができる。」
(8)「【図2】
」
(9)「【図4】
」
(10)「【図10】
」
(11)「【図11】
」
上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。
ア 上記摘記事項(1)及び(3)によれば、セルラ方式の移動通信システムにおいて、バッテリセービングの観点から、セル再選択の必要性が低い場合には、より適した基地局で待受け/通信を行うための周期的な周辺セルサーチや周辺基地局の受信信号強度の測定頻度を減らすことを課題とするものといえる。
イ 上記摘記事項(7)の記載によれば、実施例3のユーザ装置は、現時点から遡ってセル選択回数監視期間の間のセル選択回数がセル選択回数閾値より大きいか否か(上記摘記事項(9)の図4のステップS2)、及び、現時点から遡って移動度監視期間TFDの間、最大ドップラ周波数がドップラ周波数閾値を越えていたか否か(同図4のステップS3)によって、周辺セルサーチの頻度または周辺基地局の受信信号強度の測定実施頻度を修正して使用するか否かを決定する。そして、上記摘記事項(5)によれば、上記最大ドップラ周波数は、ユーザ装置のドップラ周波数測定部64で「測定」されたものである。
また、上記摘記事項(7)の記載によれば、実施例3のユーザ装置は、現在のサービング基地局の受信信号強度がある閾値Ssearchを上回る期間では、周辺セルサーチや周辺基地局の受信信号強度の測定頻度は少なくてもよいとしており、上記摘記事項(10)の図10に示される設定例によれば、行方向に移動速度を高、中、低の3段階、列方向にサービング基地局の受信信号強度を閾値Ssearch以上か否かの2段階で配列した3×2行列の各成分として、セルサーチ頻度又は信号強度測定頻度N1~N6を設定している。
ここで、上記現在のサービング基地局の受信信号強度とは、ユーザ装置の無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度ということができ、上記最大ドップラ周波数及びユーザ装置の無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度は、いずれもユーザ装置によって実行された測定を指示する信号といえる。
そうすると、「ユーザ装置によって実行された測定を指示する信号を生成することと」、「前記ユーザ装置によって実行された前記測定の結果に依存する頻度で周期的な周辺セルサーチを実行することと」が記載されているといえる。
また、「前記測定は、前記ユーザ装置の最大ドップラ周波数及び前記ユーザ装置の無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度を含み」、「前記周期的な周辺セルサーチの頻度は、行方向に移動速度を3段階、列方向にサービングセルでの受信信号強度を2段階で配列した行列の値から得られ」るといえる。
ウ 上記摘記事項(10)の記載によれば、図10に示される設定例は、ユーザ装置の移動速度及び受信信号品質の良否に応じて適切な頻度で周期的な周辺セルサーチを行うものであるところ、ユーザ装置の移動速度が行方向のどの区分にあるかは、セル選択回数及び最大ドップラ周波数を、それぞれ基地局装置からユーザ装置に通知された1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値(上記摘記事項(11)の図11の項目2及び項目3)の1つと比較することによって判断していると解することができる。また、受信信号品質が列方向のどの区分にあるかは、ユーザ装置の無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度と、基地局装置からユーザ装置に通知された閾値Ssearch(同図11の項目8)の値とを比較することによって判断していると解することができる。
そして、報知されるか基地局装置から通知され、図10に行列の形式で示されたセルサーチ頻度又は信号強度測定頻度N1~N6のうち、行方向及び列方向の該当する区分にある値が、セルサーチ頻度又は信号強度測定頻度として選択される。
そうすると、「前記行列の列方向は、サービングセルでの受信信号強度に係る1つ以上の閾値Ssearchに基づいて生成され、行方向は、1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値を用いて区分される1つ以上の移動速度に基づいて生成され」、「前記行列における値は、セル選択回数及び最大ドップラ周波数をそれぞれ1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値の1つと比較すること、及び、無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度をサービングセルでの受信信号強度に係る1つ以上の閾値Ssearchと比較することによって得られる」といえる。
上記アからウを総合すると、引用文献1には、セルラ方式の移動通信システムにおいて、バッテリセービングの観点から、セル再選択の必要性が低い場合には、より適した基地局で待受け/通信を行うための周期的な周辺セルサーチや周辺基地局の受信信号強度の測定頻度を減らすことを課題とする以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているとものと認められる。
(引用発明)
「 ユーザ装置によって実行された測定を指示する信号を生成することと、
前記ユーザ装置によって実行された前記測定の結果に依存する頻度で周期的な周辺セルサーチを実行することと、
を含み、
前記測定は、前記ユーザ装置の最大ドップラ周波数及び前記ユーザ装置の無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度を含み、
前記周期的な周辺セルサーチの頻度は、行方向に移動速度を3段階、列方向にサービングセルでの受信信号強度を2段階で配列した行列の値から得られ、前記行列の列方向は、サービングセルでの受信信号強度に係る1つ以上の閾値Ssearchに基づいて生成され、行方向は、1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値を用いて区分される1つ以上の移動速度に基づいて生成され、
前記行列における値は、セル選択回数及び最大ドップラ周波数をそれぞれ1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値の1つと比較すること、及び、無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度をサービングセルでの受信信号強度に係る1つ以上の閾値Ssearchと比較することによって得られる、方法。 」
2 周知技術
(1)国際公開第2011/123744号公報(2011年10月6日国際公開。以下、「周知文献1」という。)には図面とともに、次の記載がある。 (下線は、強調のために当審が付与した。)
ア 「[0003] Typical wireless data and voice networks cover large geographical regions. A user may travel through the geographical region of the network. However, the network may need to stay informed of the user equipment (UE) at any given time. Additionally, in order to permit a UE to quickly connect to a network resource, mobility procedures such as cell reselection, tracking area updates, and the like were developed to provide support for UE mobility. A UE is designed to implement the mobility procedures to allow it to quickly connect to the network and to keep the network informed of it current location. 」(当審訳「典型的な無線データおよび音声ネットワークは、大きな地理的領域をカバーする。ユーザはネットワークの地理的領域の至る所を巡回する場合がある。しかしながら、ネットワークはいつでもユーザ機器(UE)から情報を提供される必要がある。さらに、UEが速やかにネットワークリソースに接続することを可能にするために、セルの再選択および位置登録エリア更新(tracking area update)などのモビリティプロシージャを発展させ、UEの移動度(mobility)に対するサポートを提供してきた。モビリティプロシージャを実装するようUEが設計され、それによりUEがネットワークへ速やかに接続でき、ネットワークは現在位置の情報提供がされることの維持が可能となった。」)
イ 「[0020] More specifically, as noted above, the communications system 100 may be a multiple access system and may employ one or more channel access schemes, such as CDMA, TDMA, FDMA, OFDMA, SC-FDMA, and the like. For example, the base station 114a in the RAN 104 and the WTRUs 102a, 102b, 102c may implement a radio technology such as Universal Mobile Telecommunications System (UMTS) Terrestrial Radio Access (UTRA), which may establish the air interface 116 using wideband CDMA (WCDMA). WCDMA may include communication protocols such as High-Speed Packet Access (HSPA) and/or Evolved HSPA (HSPA+). HSPA may include High-Speed Downlink Packet Access (HSDPA) and/or High-Speed Uplink Packet Access (HSUPA). 」(当審訳「【0020】上述したように、特に通信システム100は多元接続システムであってもよく、CDMA、TDMA、FDMA、OFDMA、およびSC-FDMAなどのような1または複数のチャネルアクセススキームを採用してもよい。例えば、RAN104における基地局114a、ならびにWTRU102a、102b、102c、および102dは、UTRA(Universal Mobile Telecommunications System (UMTS) Terrestrial Radio Access)のような無線技術を実装してもよい。UTRAは、広帯域CDMA(WCDMA)を使用してエアインターフェース116を確立することができる。WCDMAは、HSPA(High-Speed Packet Access)および/またはHSPA+(Evolved HSPA)のような通信プロトコルを含むことができる。HSPAは、HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)および/またはHSUPA(High-Speed Uplink Packet Access)を含むことができる。」)
ウ 「[0042] For low mobility or no mobility devices, some of the mobility procedures defined for normal mobile devices may be unnecessary and may waste resources. Thus, when low or no mobility types of devices perform all the mobility procedures, the results may be a waste of unnecessary network resources and an unnecessary consumption of the device's power. This can be of significant consequence if the M2M devices are power constrained, e.g., if the device runs on limited battery power and/or are deployed in locations that may not be easily accessible or not accessible at all. Disclosed are various methods of optimization for such no/low mobility devices, including but not limited to: defining new UE mobility states, optimization of the mobility procedures in these states, configuration of the devices in these states, and transitioning triggers between mobility states. 」(当審訳「【0042】低移動度または移動度無しの装置にとって、通常の移動度の装置に対して定義されたモビリティプロシージャの一部は不要であり、リソースの無駄になる場合がある。したがって、低移動度または移動度無しのタイプの装置が全てのモビリティプロシージャを実行するときは、不必要にネットワークリソースを無駄にし、かつ装置電力を不必要に消費する結果となる。もしM2Mデバイスに電力的な制約がある場合は(例えば、限られたバッテリ電力で装置が稼動する、および/または容易にアクセスできないか、またはまったくアクセスできない場所に装置が配置される場合)、このことは重大な結果となる場合がある。このような低移動度または移動度無しの装置を最適化するための開示された様々な方法は、新規のUEの移動度状態を定義するステップと、当該状態におけるモビリティプロシージャを最適化するステップと、当該状態において装置を構成するステップと、移動度状態の間をトリガが遷移するステップと、を含むがこれらに限定されない」)
エ 「[0048] For example, the UE mobility states may be characterized by different functional aspects such as a frequency of a set of measurements, a length of extended discontinued reception (DRX) with corresponding monitoring of paging occasions, a frequency of location updates and/or a frequency of acquisition of system information. For example, a UE in a no mobility state may perform no measurements at all. A UE may perform fewer measurements in the low mobility state than it would in a normal state. Similarly, some timers, DRX cycle length and other configuration parameters may be scaled down, tailoring the parameters to the mobility state. These characteristics and the behavior of a UE in these states are discussed in detail in the following subsections. 」(当審訳「【0050】例えばUEの移動度状態は、異なる機能的側面により特徴付けてもよい。当該機能的側面は、測定の設定の頻度、対応するページング(呼び出し)発生のモニタリングに伴う拡張不連続受信(DRX)の長さ、位置更新の頻度、および/またはSIの取得頻度などである。例えば、移動度無し状態にあるUEは、測定を全く実行しなくてもよい。低移動度状態にあるUEは、通常移動度状態にあるときよりも測定が少なくてよい。同様に、一部のタイマ、DRXサイクル長、およびその他の構成パラメータがスケールダウン(scaled down)されてもよく、移動度状態へのパラメータを調整する。これらの状態にあるUEの特徴および振る舞いは、以下の細部で詳細に説明する。」)
オ 「[0050] To optimize a UE device, for example an MTC device, in its various mobility states, techniques are disclosed herein that allow a UE to perform a reduced set of measurements in each respective mobility state. Reference to the term measurement(s) or channel quality herein may include reference to received signal code power (RSCP), carrier to noise ratio (Ec/NO), common pilot channel (CPICH), reference signal received power (RSRP) and/or reference signal received quality (RSRQ). As described below, the UE may perform actions in the no or low mobility state. These actions may be performed independent of each other or in any combination. 」(当審訳「【0050】様々な移動度状態にあるUEデバイス(例えば、MTCデバイス)を最適化するのに、本明細書で技術が開示され、UEはそれぞれの移動度状態における軽減した測定のセットを実行することができる。本明細書における測定またはチャネル品質の用語への言及は、受信信号コード電力(RSCP)、搬送波対雑音比(Ec/NO)、共通パイロットチャネル(CPICH)、基準信号受信電力(RSRP)、および/または基準信号受信品質(RSRQ)を含むことができる。以下で説明するように、UEは移動度無し状態または低移動度状態において動作を実行してもよい。これらの動作は互いに独立して、または任意の組み合わせで実行されてもよい。」)
カ 「[0051] In an embodiment for reduced measurement, a UE may perform serving cell and/or neighbor cell measurements less frequently than in other states. The frequency of measurements may be determined in various manners. For example, serving cell measurements may be performed once every 'N' DRX cycles, and the neighbor cell measurements may be performed once every 'M' DRX cycles. The values of 'M' and 'N' may be provided to or pre- configured in the UE. 'M' and 'N' may be equal to each other or may have different values. These values may be absolute numbers specific to the mobility states. The UE may derive these values from a single predefined number using mobility state specific scaling factors. 」(当審訳「【0051】軽減した測定についての実施例では、UEはその他の状態よりもサービングセルおよび/または隣接セルの測定の実行頻度を少なくすることができる。当該測定頻度を様々な形式で判定してもよい。例えば、サービングセルの測定は、N回のDRXサイクルごとに実行され、隣接セルの測定は、M回のDRXサイクルごとに実行されてもよい。「M」および「N」の値は、UEに提供してもよく、またはUEで予め構成されてもよい。「M」および「N」は、互いに等しいか、または異なる値を有していてもよい。これらの値は、移動度状態に固有の絶対数であってもよい。UEは、移動度状態固有のスケーリングファクタを使用して、単一の所定の数からこれらの値を導いてもよい。」)
上記摘記事項アからカ、及び、この分野における技術常識を考慮すると、周知文献1には、セルラ方式の無線通信において、UEが移動度無し状態または低移動状態の場合、通常状態に対して定義された動作を全て実行すると、不必要に電力を消費するという課題に対処するために、セル再選択のための隣接セルの測定の実行頻度をM回の不連続受信(DRX)サイクルごとに実行する技術が記載されているといえる。そして、不連続受信(DRX)サイクルは、UEがセルからページングを受信するために無線回路を起動する周期であり、さらに、電力の消費を少なくする観点から隣接セルの測定をページングを受信するために無線回路を起動する際に合わせて行うことは自明といえ、また、一般的にMやNが、関数の中で整数値を表す変数として用いられることも考慮すると、上記M回という表記のMは整数と解するのが自然である。よって、周知文献1には、セル再選択のための隣接セルの測定の実行頻度をM回(整数値)のDRXモードのページングサイクルごとに実行する技術が記載されているといえる。
(2)特開2003-61158号公報(平成15年2月28日出願公開。以下、「周知文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、強調のために当審が付与した。)
ア 「【0003】セルラシステムにおいて、CDMA方式では移動局がセル間をわたる移動を行った場合、ハンドオーバとして、移動元のセルの基地局からの信号と移動先のセルの基地局からの信号とを合成するソフトハンドオーバを実行する。このハンドオーバを実行するために、移動局は移動先のセルの基地局を探し出すセルサーチ、つまり接続セルを検出するセルサーチを行う。」
イ 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来のセルラ電話装置のセルサーチ動作では、ページングチャネルの受信タイミング毎に「以前のセルサーチにおいて検出することができたセル」及び「周辺に存在する候補のセル」の2つをまとめてサーチしているので、サーチ能力は高いが、サーチ時間がかかってしまうこととなり、消費電流が大きくなるという問題がある。」
ウ 「【0032】移動機1では待ち受け中にある場合、ページングチャネルを間欠受信しており、ページングチャネルの受信タイミングでセルのサーチを行う。移動機1はその受信タイミングで、アクティブセルを毎回サーチし、受信レベルの測定を行う。
【0033】モニタセルについてはセル数が複数あることから、移動機1によってページングチャネルの受信タイミングが複数回訪れる毎に1回の頻度でサーチを行い、受信レベルの測定、無線フレームタイミングの更新を行う。サーチに時間のかかる未検出セルについては、さらに低い頻度で移動機1によってサーチを行うようにする。」
エ 「【0052】着信待ち受け中の状態にある移動機1において、プロセッサ15はページングチャネルを受信するタイミングで、セルサーチ動作を行う。本実施例では、ページングチャネルを受信しているセルであるアクティブセル(セルA)と、ハンドオーバ先の候補セルであるモニタセル(セルB~G)と、周辺に存在する候補セルである未検出セル(セルH)との3つのサーチ頻度を、ページングチャネルを受信するタイミングで、アクティブセルは毎回サーチを行い、モニタセルは2回に1回サーチを行い、未検出セルは8回に1回サーチを行うようにしている。また、ページングチャネルを受信するタイミングでモニタセルをサーチする最大数を2セルとし、未検出セルのサーチを行う回数を4回とする。」
上記摘記事項アからエ、及び、この分野における技術常識を考慮すると、周知文献2には、従来のセルラ電話方式の待ち受け中のハンドオーバ(セル再選択)のためのセルサーチの消費電力が大きくなるという課題に対処するために、ページングチャネルを間欠受信(不連続受信)しており、ハンドオーバの候補セルを、ページングチャネルの受信タイミングの2回に1回サーチを行う技術が記載されているといえる。そして、ページングチャネルの受信タイミングは、ページングチャネルを受信するタイミングであるから、不連続受信モードのページングサイクルといえる。
(3)上記(1)、(2)より、セル再選択のための動作の消費電力が大きくなるという課題に対処するための以下の事項は、本願の優先日前に周知であったといえる(以下、「周知技術」という。)。
(周知技術)
「 UEが、不連続受信モードで動作しているときに、セル再選択のための動作を、不連続受信モードのページングサイクルの複数回(整数値)に1回実行する技術。」
第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「ユーザ装置」は、セルラ方式の移動通信システムのユーザ装置であるから「無線モバイルデバイス」といえ、引用発明の「ユーザ装置の最大ドップラ周波数」は、ユーザ装置の速度を表す量であるから、本願発明の「無線モバイルデバイスの速度」に相当する。また、引用発明の「ユーザ装置の無線ユニットによって測定されたサービングセルでの受信信号強度」は、セル再選択の必要性を判断するために、ユーザ装置の無線ユニットによって測定されたメトリックといえるので、本願発明の「無線モバイルデバイスの無線ユニットによって測定された少なくとも1つのメトリック」に相当する。そうすると、引用発明の「ユーザ装置によって実行された測定を指示する信号を生成すること」は、本願発明の「無線モバイルデバイスによって実行された測定を指示する1つ以上の信号を生成すること」に相当し、本願発明と同様に、「前記測定は、前記無線モバイルデバイスの速度及び前記無線モバイルデバイスの無線ユニットによって測定された少なくとも1つのメトリックを含」むといえる。
2 引用発明において、より適した基地局で待受け/通信を行うための「周期的な周辺セルサーチ」は、本願発明にいう「隣接セル探索」に対応し、「ユーザ装置によって実行された前記測定の結果に依存する頻度」で「周期的な周辺セルサーチ」を実行することは、本願発明にいう「無線モバイルデバイスによって実行された前記測定の結果に依存する周期性で隣接セル探索を実行すること」に対応するといえる。
もっとも、本願発明では、前記隣接セル探索は、「非連続受信(DRX)モードで動作しているときに」実行され、その周期性は、「前記DRXモードのY回のページングサイクル毎に一回」「実行することを含み、Yは2以上の整数値」である点で、引用発明と相違する。
3 引用発明の「周期的な周辺セルサーチの頻度」は、(N+1)×(M+1)行列(N及びMは少なくとも1つの整数値)の値から得られるかどうかは別として、「行列の値から得られ」る点で本願発明と共通する。
4 引用発明では、「前記行列の列方向は、サービングセルでの受信信号強度に係る1つ以上の閾値Ssearchに基づいて生成され」るから、引用発明の「サービングセルでの受信信号強度に係る1つ以上の閾値Ssearch」は、本願発明の「無線ユニットから受信された少なくとも1つのメトリックからの1つ以上の閾値」に相当し、本願発明と同様、前記行列の一方は「前記無線ユニットから受信された前記少なくとも1つのメトリックからの1つ以上の閾値に基づいて生成され」るといえる。
また、引用発明では、前記行列の他方が、1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値を用いて区分される1つ以上の移動速度に基づいて生成されるものの、本願発明と引用発明とは、「1つ以上の速度に基づいて生成され」る点で共通するといえる。
そして、本願発明と引用発明とは、「前記行列における値は、前記速度と、及び、前記無線ユニットから得られた前記少なくとも1つのメトリックを前記無線ユニットから得られた前記少なくとも1つのメトリックの前記1つ以上の閾値と比較すること」によって得られるといえる点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「 無線モバイルデバイスによって実行された測定を指示する1つ以上の信号を生成することと、
前記無線モバイルデバイスによって実行された前記測定の結果に依存する周期性で隣接セル探索を実行することと、
を含み、
前記測定は、前記無線モバイルデバイスの速度及び前記無線モバイルデバイスの無線ユニットによって測定された少なくとも1つのメトリックを含み、前記隣接セル探索の周期性は行列の値から得られ、前記行列は前記無線ユニットから受信された前記少なくとも1つのメトリックからの1つ以上の閾値及び1つ以上の速度に基づいて生成され、
前記行列における値は、前記速度と、及び、前記無線ユニットから得られた前記少なくとも1つのメトリックを前記無線ユニットから得られた前記少なくとも1つのメトリックの前記1つ以上の閾値と比較することにより得られる、方法。」
(相違点1)
測定の結果に依存する周期性で実行される隣接セル探索に関し、本願発明では、隣接セル探索は、「非連続受信(DRX)モードで動作しているときに」実行され、その周期性は「DRXモードのY回のページングサイクル毎に一回」「実行することを含み、Yは2以上の整数値」であるのに対し、引用発明では、DRXモードで動作しているときに実行されるかどうか不明であり、その周期性が、DRXモードのページングサイクルと関係するかも不明な点。
(相違点2)
隣接セル探索の周期性が、本願発明では、(N+1)×(M+1)行列(M、Nは整数)の値から得られるのに対して、引用発明では行列の値から得られる点。
(相違点3)
本願発明では、行列の1つの方向が、「1つ以上の速度閾値に基づいて生成され」、前記行列における当該方向の値は、「前記速度を前記1つ以上の速度閾値の少なくとも1つと比較すること」によって得られるのに対し、引用発明では、行列の1つの方向が、「1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値を用いて区分される1つ以上の移動速度に基づいて生成され」、前記行列における当該方向の値は、「セル選択回数及び最大ドップラ周波数をそれぞれ1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値の1つと比較することによって区分される移動速度によって得られる点。
第5 当審の判断
上記相違点1について検討する。
引用発明のユーザ装置は、セルラ方式の移動無線通信システムのユーザ装置であるから、基地局がユーザ装置を一定の周期で呼び出すページングを受信することは自明であり、引用発明と上記周知技術は、セルラ方式の移動無線通信システムにおいて、セル再選択のための動作の消費電力が大きくなるという課題に対処するという点で共通していることから、引用発明に上記周知技術を適用しようとする動機があるといえる。
また、DRXモードのページングサイクルの何回に1回実行するかは、ページングサイクルの長さやセル再選択のための動作の1回の実行時間等を考慮して適宜決定し得る設計的事項であって、その複数回(整数値)を特に「2以上の整数値」と限定することに格別の困難があるともいえない。
よって、上記相違点1に係る構成は、引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易になし得ることである。
上記相違点2について検討する。
引用発明においては、行列の構成が、行方向に移動速度を3段階、列方向にサービングセルでの受信信号強度を2段階で配列した、3×2行列で表記されているが、行方向、列方向を各々何段階とするかは当業者が適宜決定しうることであるから、引用発明の行列を、一般化して、(N+1)×(M+1)行列(M、Nは整数)と表記し、相違点2に係る構成とすることに格別の困難性はない。
上記相違点3について検討する。
第3 1の、摘記事項(4)の段落0019、摘記事項(8)の図2のケース2、摘記事項(2)、及び、摘記事項(7)の段落0051、0053、0054によれば、引用発明は、セル半径、周辺セル数といったセル配置及びユーザの移動方向も考慮したユーザ装置の移動速度に基づいて周期的な周辺セルサーチの頻度を決定するものである。そして、高速に移動しながら多数のセル再選択を経験したものを高速移動状態として判定するべく、引用発明の行列の行方向を「1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値を用いて移動速度を区分される1つ以上の移動速度に基づいて生成」し、「セル選択回数及び最大ドップラ周波数をそれぞれ1つ以上のセル選択回数閾値及びドップラ周波数閾値の1つと比較」している。しかしながら、単にユーザ装置の移動速度のみに基づいて前記頻度を決定することとし、引用発明からセル選択回数閾値による比較を省き、引用発明の行列の行方向を、「1つ以上のドップラ周波数閾値に基づいて生成」し、前記行列における行方向の値は、「最大ドップラ周波数をドップラ周波数閾値の1つと比較すること」によって得られるようにして、相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の奏する効果は、技術常識を踏まえれば、引用発明及び周知技術から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項6に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-012442