特許拒絶査定不服審判
2016-008952
半導体チップ
- 審判番号
- 2016-008952
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-187812外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月15日
- 審決日
- 2017年03月31日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ラピスセミコンダクタ株式会社
- 【請求人代理人】中島 淳
- 【請求人代理人】加藤 和詳
- 【請求人代理人】福田 浩志
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-187812「半導体チップ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日出願公開、特開2015- 43434〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は,平成22年11月30日に出願した特願2010-266297号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年9月16日に新たな特許出願としたものであって,平成26年9月16日付けで審査請求がなされ,平成27年11月10日付けで拒絶理由の通知がなされ,平成28年1月18日付けで意見書の提出がなされ,同年3月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年6月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成28年6月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「四辺に縁取られて矩形に形成された半導体チップであって、
前記四辺のうちの一辺に沿って形成されて太陽電池と電気的に接続される第1の端子と、
前記一辺に沿って形成されて二次電池と電気的に接続される第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続する配線と、
を有することを特徴とする半導体チップ。」
3 引用文献
(1)引用文献について
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2007-221872号公報(以下,「引用文献」という。)には,下記の事項が記載されている。
ア 「【0037】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
第1の実施の形態.
図1は、本発明の第1の実施の形態における二次電池の充電回路を有する電源装置の構成例を示したブロック図である。
図1において、電源装置1は、発電した第1電圧V1を出力する燃料電池や太陽電池からなる第1直流電源2と、ACアダプタ等のように外部から供給された電源を基にして所定の第2電圧V2を生成し出力する第2直流電源3と、リチウムイオン電池からなる二次電池4と、第1直流電源2からの第1電圧V1を昇圧した電圧で二次電池4の充電を行う充電回路5とを備えている。」
イ 「【0040】
次に、図2は、図1の充電回路部11及び電源切換回路部12の内部構成例を示した図である。
図2において、充電回路部11は、インダクタL1、コンデンサC1、抵抗R1,R2及び充電制御回路13で構成され、充電制御回路13は、燃料電池2からの第1電圧V1の出力制御を行うためのスイッチング動作を行うNMOSトランジスタからなるスイッチング素子M1と、PMOSトランジスタからなる同期整流用スイッチング素子M2とを備えている。更に、充電制御回路13は、充電電流検出用の抵抗R1の両端電圧からリチウムイオン電池4への充電電流の検出を行い、該検出した電流値を示す信号Siを生成して出力する電流検出回路21と、該電流検出回路21からの信号Si及び二次電池電圧Vbに応じてスイッチング素子M1及び同期整流用スイッチング素子M2のスイッチング制御を行う制御回路22とを備えている。
【0041】
また、電源切換回路部12は、燃料電池2からの第1電圧V1の電圧検出を行い該検出結果を示した信号S1を生成して出力する第1電圧検出回路31と、リチウムイオン電池4の電圧検出を行い該検出結果を示した信号Sbを生成して出力する二次電池電圧検出回路33と、入力された制御信号に応じて第1電圧V1、第2電圧V2又は二次電池電圧Vbのいずれか1つを排他的に出力する切換スイッチ34と、該切換スイッチ34に対して、第1電圧検出回路31、第2電圧検出回路32及び二次電池電圧検出回路33から入力された各信号から、第1電圧V1、第2電圧V2及び二次電池電圧Vbの内、最も電圧値の大きい電圧を、制御回路22を含む充電回路部11を構成する素子の一部又はすべてに出力させる電源切換制御回路35とを備えている。電源切換回路部12及び充電制御回路13は1つのICに集積され、該ICは端子T1~T6を備えている。」
ウ 「【0044】
このような構成において、制御回路22は、リチウムイオン電池4に対して定電流充電又は定電圧充電のいずれかを行い、定電流充電を行う場合は、電流検出回路21から入力された信号Siからリチウムイオン電池4への充電電流を検出し、該検出した充電電流が所定値で一定になるように、スイッチング素子M1に対してPWM制御又はPFM制御を行ってスイッチングさせる。同時に、制御回路22は、同期整流用スイッチング素子M2に対してスイッチング素子M1と相反するスイッチング動作を行わせる。スイッチング素子M1がオンして導通状態になると共に同期整流用スイッチング素子M2がオフして遮断状態になると、インダクタL1にエネルギーが蓄えられる。
この後、スイッチング素子M1がオフして遮断状態になると共に同期整流用スイッチング素子M2がオンして導通状態になると、インダクタL1に蓄えられた該エネルギーが第1電圧V1に加算されて端子T3に出力され、更に抵抗R2及びコンデンサC1で平滑されて第1電圧V1を昇圧しリチウムイオン電池4に供給される。」
エ 図2には,第1直流電源2がインダクタL1を介してICの端子T2に接続され,二次電池4が抵抗R1を介してICの端子T3に接続され,IC内で端子T2と端子4が同期整流用スイッチング素子M2を介して接続された構成が記載されている。
(2)引用発明
上記(1)アには,「太陽電池からなる第1直流電源2」と記載され,上記(1)イには,「電源切換回路部12及び充電制御回路13は1つのICに集積され、該ICは端子T1~T6を備えている」と記載され,上記(1)エから図2には,ICの端子T2が第1直流電源2とインダクタL1を介して接続され,ICの端子T3が二次電池4と抵抗R1を介して接続され,IC内の端子T2と端子4が同期整流用スイッチング素子M2を介して接続された構成が記載されているので,引用文献には,下記の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ICであって、
太陽電池とインダクタL1を介して接続される端子T2と、
二次電池と抵抗R2を介して接続される端子T3と、
を有し,前記端子T2と前記端子T3は,同期整流用スイッチング素子M2を介して接続されたIC。」
4 対比
(1)本願発明と引用発明との対応関係について
ア ICは,半導体集積回路が設けられたチップであり,ICを矩形状の形状とすることは技術常識であることを踏まえると,本願発明と引用発明は,「四辺に縁取られて矩形に形成された半導体チップ」である点で共通している。
イ 引用発明の端子T2は,「太陽電池とインダクタL1を介して接続される」ものであるから,端子T2と太陽電池とは電気的に接続されているといえる。
よって,本願発明と引用発明は,「太陽電池と電気的に接続される第1の端子」を有する点で共通している。
ウ 引用発明の端子T3は,「二次電池と抵抗R2を介して接続される」ものであるから,端子T3と二次電池とは電気的に接続されている。
よって,本願発明と引用発明は,「二次電池と電気的に接続される第2の端子」を有する点で共通している。
エ 引用発明の端子T2と端子T3は,「同期整流用スイッチング素子M2を介して接続され」るものであり,その接続では何らかの配線が用いられることは自明であるから,端子T2と端子T3とは配線により電気的に接続されているものと認められる。
よって,本願発明と引用発明は,「前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続する配線」を有する点で共通しているものと認められる。
(2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点
上記の対応関係から,本願発明と引用発明は,下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「四辺に縁取られて矩形に形成された半導体チップであって、
太陽電池と電気的に接続される第1の端子と、
二次電池と電気的に接続される第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続する配線と、
を有することを特徴とする半導体チップ。」
イ 相違点
本願発明は,「第1の端子」が「前記四辺のうちの一辺に沿って形成され」,「第2の端子」が「前記一辺に沿って形成され」ているのに対し,引用発明ではそのように構成されているか不明である点。
5 当審の判断
(1)相違点について
引用発明の端子T2と端子T3は,同期整流用スイッチング素子M2を介して接続されているものであるが,引用文献の段落【0044】には,同期整流用スイッチング素子M2をスイッチング動作させることにより,インダクタL1に蓄えられたエネルギーを端子T3に出力して抵抗R2及びコンデンサC1で平滑されて第1電圧V1を昇圧することが記載されていることから,引用発明の同期整流用スイッチング素子M2は,DCDCコンバータのスイッチング素子として利用されていることがわかる。
そして,DCDCコンバータに用いられる半導体チップの端子は,該DCDCコンバータが利用される製品等に応じて適宜配置されるものであると認められるところ,引用発明の端子T2と端子T3の間には,太陽電池から比較的大きな充電電流が単一の同期整流用スイッチング素子M2に流されるものであるから,端子T2と端子T3を半導体チップの同じ辺に配置することで,単一の同期整流用スイッチング素子M2と端子T2及び端子T3との距離を短くし比較的大きな電流が流れやすくすることは,当業者が適宜設定する設計的事項に過ぎないものと認められる。
(2)本願発明の作用効果について
本願明細書の段落【0007】には,「本発明では、太陽電池と二次電池とを電気的に接続する配線の長さが他の内部回路の影響を受けにくく、太陽電池から二次電池への充電を行う場合の電気的損失を低減することができる半導体チップを提供する。」ことが記載されている。
しかしながら,本願発明では,第1の端子が前記四辺のうちの一辺に沿って形成され,第2の端子が前記一辺に沿って形成されることは特定されているものの,第1の端子と第2の端子とを電気的に接続する「配線」については,半導体チップ内においてどのようにレイアウトされるかは特定されておらず,また,第1の端子及び第2の端子を同じ一辺に沿って形成したとしても,両端子が半導体チップの両端に離れて形成される場合も含まれるため,本願発明の構成が「配線の長さが他の内部回路の影響を受けにくく」し,「電気的損失を低減する」という効果を奏するものとはいえない。
そうすると,本願発明の作用効果は,引用発明のものと比較して,格別に有利なものとはいえない。
(3)審判請求人の主張について
平成28年6月15日付け審判請求書において,審判請求人は,
「(d)本願発明と引用発明との対比
補正後の請求項1に係る半導体チップは、四辺に縁取られて矩形に形成された半導体チップであって、前記四辺のうちの一辺に沿って形成されて太陽電池と電気的に接続される第1の端子と、前記一辺に沿って形成されて二次電池と電気的に接続される第2の端子と、前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続する配線と、を有することを特徴としています。
したがって、補正後の請求項1に係る半導体チップは、矩形の半導体チップの一辺に沿ってそれぞれ形成された第1の端子と第2の端子とを配線で接続することで、配線の経路が半導体チップの内部回路の配置による影響を受けにくくなることから、配線をできるだけ短くすることができ、第1の端子に接続された太陽電池から、第2の端子に接続された二次電池への充電に伴う配線での電気的損失を低減させることができるという、固有の効果を奏します。
ここで、引用文献1の図1には、二次電池4を充電する充電回路部11と、第1直流電源2、第2直流電源3、及び二次電池4が接続され、これら3つの電圧供給源のうち、電圧が最も高いものを電源として充電回路部11に接続する電源切換回路部12と、を含む充電回路5の構成例を示したブロック図が記載されています。
また、引用文献1の図2には、段落「0040」にも記載されているように、図1の充電回路部11及び電源切換回路部12の内部構成例が記載されています。
ここで、充電回路5の構成図とは、充電回路5を構成する部品の論理的な接続状況を示すものであり、配置図、或いは配線図とは異なり、部品の配置及び部品間の接続経路を実際の製品の物理的な配置通りに示すものではありません。更に言えば、引用文献1には、図2に示す充電回路5の構成図が、充電回路5を構成する部品等の物理的な配置を示しているとの記載はおろか示唆すらありません。
ICチップが四辺に縁取られて矩形に形成される点は技術常識であるとしても、図2において、矩形に形成された破線部分がICであると示されていることのみをもって、当該破線がそのままICチップの形状を示していると捉えることには無理があるものと思料致します。
引用文献1の段落「0041」にも記載があるように、図2における破線部分は、電源切換回路部12及び充電制御回路部13が1つのICに集積されていることを示しているに過ぎません。
すなわち、引用文献では、半導体チップにおける部品位置についてなんら開示されていないと言わざるを得ません。したがって、図2のICの範囲を示す破線内に図示された端子の位置が、そのままICにおける物理的な端子の位置であるとみなすことはできません。
このように、引用文献1では、ICを構成する部品の物理的な位置が明確に示されていない以上、引用文献1の図2を参照して、二次電池4と接続される端子T3が、第1直流電源2と接続される端子T2が形成される半導体チップの一辺と同じ辺に沿って形成され、スイッチング素子M2を介して端子T2と端子T3が接続されていることから、補正後の請求項1に係る発明は引用文献1に記載された発明と差異が認められず、また、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明でもあるとの拒絶査定理由について承服致しかねます。
したがって、補正後の請求項1に係る半導体チップの発明には新規性及び進歩性が認められるものと思料致します。」
と主張している。
しかしながら,上記(2)に記載したように,補正後の請求項1に係る発明(本願発明)では,第1の端子が四辺のうちの一辺に沿って形成され,第2の端子が前記一辺に沿って形成されることは特定されているものの,第1の端子と第2の端子とを電気的に接続する「配線」については,半導体チップ内においてどのようにレイアウトされるか特定されておらず,第1の端子と第2の端子とが一辺において離れて形成される場合も含まれる。そのため,補正後の請求項1に係る発明(本願発明)が,配線の経路が半導体チップの内部回路の配置による影響を受けにくくなるものではなく,配線をできるだけ短くしたものでもないことから,「第1の端子に接続された太陽電池から、第2の端子に接続された二次電池への充電に伴う配線での電気的損失を低減させることができるという、固有の効果」を認めることはできない。
また,上記(1)に記載したように,引用発明のICは,DCDCコンバータに用いられるものであり,DCDCコンバータでは利用される製品等に応じて端子が適宜配置されるものと認められ,引用発明の端子T2と端子T3の間には,太陽電池から比較的大きな充電電流が単一の同期整流用スイッチング素子M2に流されるものであるから,端子T2と端子T3を半導体チップの同じ辺に配置することで,単一の同期整流用スイッチング素子M2と端子T2及び端子T3との距離を短くし比較的大きな電流が流れやすくすることは,当業者が適宜設定する設計的事項に過ぎないものと認められる。
よって,上記審判請求人の主張を採用することはできない。
6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献の記載事項,技術常識に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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