特許拒絶査定不服審判
2016-001305
ナノ複合材バリア被膜を有する採取容器組立品
- 審判番号
- 2016-001305
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-213400外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月29日
- 審決日
- 2017年04月04日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-213400「ナノ複合材バリア被膜を有する採取容器組立品」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日出願公開、特開2014- 55961〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成21年3月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年3月20日,米国(US))を国際出願日とする特願2011-500810号の一部を平成25年10月11日に新たな特許出願とした出願であって,平成26年9月18日付けで拒絶理由が通知され,平成27年3月5日付けで手続補正がなされ,同年9月25日付けで拒絶査定がなされ,平成28年1月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
第一のポリマー材料で形成され,空洞を内表面によって明確に画定する側壁及び開口端を有する容器部材(a),
該容器部材表面に設けられ,30ミクロンまでの厚さを有し,分散したバリア用マトリックスポリマー(i),及びアスペクト比が50を超える実質的に剥離したケイ酸塩充填材(ii)を含む水性分散液から得られるナノ複合材のバリア被膜(b),ここで,該実質的に剥離したケイ酸塩充填材は,該ナノ複合材のバリア被膜の全固形物の20~50重量%存在する,及び
該空洞を密閉するように容器部材の開口に設けられた密閉部材(c),を有し,
該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも10倍低い吸込み体積損失を示す,生体試料採取に際して好適に用いられ,
脱気容器組立品。」
と補正された。
本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも1.5倍低い吸込み体積損失を示す」について,「該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも10倍低い吸込み体積損失を示す」として,「吸込み体積損失」の程度を限定した補正を含むものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-253077号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「採血管アセンブリ」について図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,容器,特にプラスチック製採血管に対する気体および水の透過性に有効な障壁を提供する多層障壁被膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術および解決課題】プラスチック製医療用製品の需要が増大するのに伴って,ポリマー製品の障壁特性を改善するという格別な必要性が存在する。
【0003】障壁特性を改善することによって顕著な利益が与えられるであろう医療用製品として,採取管,特に採血に用いられる採血管が挙げられるが,それに限定されるものではない。
【0004】医療用途で用いる場合,ある種の性能基準が採血管に求められる。そのような性能基準としては,例えば1年以上にわたって当初の吸引容量の約90%以上が保持されること,放射線によって滅菌されること,試験および分析の際に干渉がないことが挙げられる。
【0005】したがって,ポリマーからなる製品の障壁特性を改善する必要性が存在する。特に,プラスチック製真空採血管は医療用途に適合するある種の性能基準を有し,さらに効果的かつ有用であることからそのような特性の改善が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は,多重の有機および無機被膜材料を持つプラスチック製複合容器である。この多重被膜は,事前に形成された複合容器の外または内面に被覆された少なくとも2種類の障壁物質を有する。好ましくは,上記障壁被膜材料は,事前に形成された複合容器の外面に塗布されたポリマー物質からなる第1の層と,該第1の層上に塗布され,かつ有機および無機材料を含む一連の被膜からなる第2の層と,該第2の層上に塗布された有機材料からなる第3の層とを備える。」
(1-イ)
「【0038】図面を参照しながら説明する。この際,同一の参照符号は同一の構成要素を表わす。まず,図1および図2は,典型的な採血管10を示すもので,この採血管10は,開口端部16から閉端部18に達する側壁11と,下位円環状部またはスカート15が設けられた栓部14とを備える。また,上記円環状部15は側壁11の内面12に向けて伸び,かつ該内面12を圧することによって上記栓部14をその場に保持する。」
上記(1-ア)~(1-イ)の記載事項を参照し,整理すると,上記刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「ポリマー製品のプラスチック製採血管10であって,開口端部16から閉端部18に達する側壁11と,栓部14とを備え,1年以上にわたって当初の吸引容量の約90%以上が保持される性能基準が求められる採血管10」(以下,「引用発明」という。)
(2)本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2002-537148号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「ポリマーフィルムおよびポリマー剛性容器用のガスバリヤ塗装系」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア)
「【0005】
(発明の概要)
本発明は,容器またはフィルムの少なくとも1面に他に類のない水性組成物を塗布して第1の塗膜層を形成することによって,従来の剛性プラスチック容器すなわち成形プラスチック容器およびフィルムのガスバリヤ性能を大幅に,例えば20倍または30倍,あるいはそれ以上に向上させることができることの発見に基づく。この水性組成物は,水溶性または水分散性有機結合剤および任意選択で架橋剤を含み,この有機結合剤は,モンモリロナイト,ラポナイト,有機修飾モンモリロナイトおよびこれらの混合物から選択された,第1の塗膜層の乾燥重量を基準として10重量%から90重量%未満の無機層状鉱物とを含む。この第1の塗膜層は,非架橋層,部分架橋層または完全架橋層とすることができる。」
(2-イ)
「 【0013】
(詳細な説明)
本発明は,従来のポリマー材料から生産されたポリマーフィルムおよび剛性容器すなわち成形容器用の独特な塗装系であって,水性組成物に基づき任意選択で架橋される第1の塗膜層,および溶剤/結合剤2成分組成物に基づく実質的に透明な任意選択の第2の塗膜層を含む塗装系である。酸素および二酸化炭素の透過に対して大幅に向上した非透過性,例えば,この塗装系のないポリマーフィルムまたは容器の20から30倍,あるいはそれ以上の非透過性を達成するため,本発明の好ましい実施形態は,ポリマーフィルムまたは剛性容器,特に射出ストレッチブロー成形された2軸配向ポリエステル容器の外表面に塗布された2重塗装系を含む。さらに,この塗料組成物は,都合のよい任意の吹付け塗装法によってフィルムまたは容器に経済的に塗布することができる。第1のバリヤ塗膜層を有するポリマーフィルムおよび容器は,一般に,容器の側壁から切り取った試験サンプルに基づく所与のポリマーフィルム厚に対して,約0.7ccミル/100in2/日/気圧以下の酸素透過性値を示す。酸素透過性値は,ガスバリヤ性能を決定し比較する一手段である。応用分野によっては,酸素透過性値が0.07ccミル/100in2/日/気圧にもなり,さらに低く,例えば0.03ccミル/100in2/日/気圧以下にもなる。実質的に透明な上塗り塗膜は,第1のバリヤ塗膜層を使用中の変質,劣化などから保護する働きをする。
・・・
【0016】
第1の塗膜層
第1の塗膜層,すなわちガスバリヤ塗膜層は,少なくとも2重量%の固体を含む水性組成物から形成される。バリヤ組成物の固体成分の主たる担体または溶剤は水はであるが,組成物は任意選択で,適当な助溶剤を小量,例えば溶剤の総量を基準として約10重量%未満の助溶剤を含むことができる。水性バリヤ組成物の固体部分は,フィロシリケート,特にモンモリロナイト,ラポナイト,有機修飾モンモリロナイトおよびこれらの混合物から選択された無機層状鉱物を,乾燥/硬化後の第1の塗膜層の重量のほぼ10%から90重量%未満含む。用語「有機修飾モンモリロナイト」は,本明細書において,粘土中に存在するラメラ間無機カチオンを有機カチオンで置換するイオン交換プロセスにかける処理によって有機部分を粘土小板に強く付着させた粘土材料を記述するのに使用される。有機カチオンは,4価アンモニウム,ホスホニウム,ピリジニウムなどの陽性塩原子団に結合された有機原子団,または陽性アミン塩原子団を含む有機化合物を含む。ただし,これらに限定されるわけではない。
【0017】
これらの層状鉱物は市販されており,厚さ10から60オングストローム,アスペクト比すなわち小板の最大幅と厚さの比が一般に150超の小板を含む。フィロシリケート層状鉱物の組成および構造についての詳細は,1983年11月9~10日のロンドンにおけるRoyal Society Discussionの予稿集「Clay Minerals:Their Structure,Behaviour & Use」,英国学士院(1984)に出ている。」
(2-ウ)
「 【0042】
本発明の好ましい実施形態では,水性バリヤ塗料組成物が,アスペクト比20から500,平均粒径5ミクロン未満の小板の形態の無機層状鉱物としてモンモリロナイト(例えば,米テキサス州のSouthern Clay Products社のモンモリロナイトミネラルコロイドMO)を含む。観察されたバリヤ性能に基づく第1の塗膜層用の好ましい有機結合剤は,(i)メラミンホルムアルデヒド樹脂(イミノ官能基性,メチロール官能基性および部分的または高いアルコキシメチル官能基性を有するメラミンホルムアルデヒドを含む)と,(ii)結合剤の重量の5%から25重量%のアクリルラテックスとのブレンドである。バリヤ組成物の好ましい第1の塗膜層は,10から75%(w/w)の無機鉱物小板および25から90%(w/w)の有機結合剤を含む(乾燥重量ベース)。」
(2-エ)
「【0077】
実施例
バリヤ塗料組成物 1
脱イオン水355.2グラムおよびモンモリロナイト粘土(Southern Clay社のミネラルコロイドMO)14.8グラムを高速ミキサに入れ,混ざり合うまで低速(2000rpm)で混合した。ミキサの速度を5000rpmまで上げ,30分維持した。その後,脱イオン水89.0グラム,メラミンホルムアルデヒド樹脂(Cytec Industries社のCymel(登録商標)385)13.5グラム,および1%p-トルエンスルホン酸脱イオン水溶液35.0グラムを先の混合物にこの順番で加え,さらに15分,2000rpmで混合した。」
(2-オ)
「 【0090】
バリヤ組成物(水性層状鉱物塗料)を試験体,すなわち(i)厚さ10ミル(約0.25mm)の基材PETフィルムの片面および(ii)厚さ1ミル(約0.03mm)の2軸配向ポリエステルフィルムの片面に吹付け塗布して,厚さ約0.3ミル(約8ミクロン)のほぼ均一な乾燥塗膜を得た。コーティングした基材は室温に10から15分放置,すなわち,フラッシングし,その後,基材をさらに15分間70℃に保ち,硬化させた。次いで,コーティングした基材を室温まで冷却して約5分間置き,その後,吹付け塗布によって第2のクリヤコート層でコーティングした。この2成分組成物のクリヤコート成分は吹付け塗布の直前に混合した。Zahn粘度カップを使用して測定したクリヤコートの粘度は14~18秒であった。次いで,コーティングした基材を室温に10から15分放置,すなわち,フラッシングし,次いで,基材をさらに15分間70℃に保った。クリヤコートの乾燥塗膜の厚さは0.4から0.6ミル(約10から15ミクロン)であった。次いで,得られたコート基材を測定して,前述の手順に基づいてそれらのそれぞれの酸素透過性値を求め,その他のそれぞれの特性,例えば,耐湿性を60℃で20分水に浸すことによって求めた。試験パネルの外観(ホワイトニングおよびブリスタリング)を評価し,耐屈曲性,ガードナー耐衝撃性を耐屈曲性リムパネル上のPETについて試験し(試験用PETパネルをリムパネルの上に置いた),耐引っかき性を爪で引っかいて試験した。」
(2-カ)上記(2-オ)には,水性組成物の固体として,モンモリロナイト粘土14.8グラム,メラミンホルムアルデヒド樹脂13.5グラムが記載されており,水性組成物中の固体部分におけるモンモリロナイト粘土の割合は,52.3重量%となっている。
上記(2-ア)~(2-カ)の記載事項を参照し,整理すると,上記刊行物2には,次の発明が記載されていると認められる。
「容器の少なくとも1面に水性バリヤ塗料組成物を塗布して形成することによって,従来の剛性プラスチック容器すなわち成形プラスチック容器のガスバリヤ性能を大幅に,例えば20倍または30倍,あるいはそれ以上に向上させることができる厚さ約8ミクロンのガスバリヤ塗膜層であって,その水性バリヤ塗料組成物の固体部分はメラミンホルムアルデヒド樹脂とアスペクト比20から500のモンモリロナイトを含むガスバリヤ塗膜層。」(以下,「引用発明2」という。)
3 対比・判断
ア
アー1 引用発明の「開口端部16から閉端部18に達する側壁11」は,「ポリマー製品のプラスチック製採血管10」の血液が貯まる部分であるから,補正発明の「第一のポリマー材料で形成され,空洞を内表面によって明確に画定する側壁及び開口端を有する容器部材(a)」に相当する。
アー2 また,引用発明の「栓部14」は,「1年以上にわたって当初の吸引容量の約90%以上が保持される性能基準が求められる」「ポリマー製品のプラスチック製採血管10」のものであるから,血液が貯まる部分への外気の流入が強力に阻止されることは自明であるので補正発明の「該空洞を密閉するように容器部材の開口に設けられた密閉部材(c)」に相当する。
アー3 そうすると,引用発明の「採血管10」は「開口端部16から閉端部18に達する側壁11」と,「栓部14」とを備えているので,補正発明の「脱気容器組立品」に相当する。
イ 引用発明の「採血管10」は,生体から血液を採取するものであるから血液採取に際して好適に用いられるものといえる。
また,引用発明の「採血管10」は,「1年以上にわたって当初の吸引容量の約90%以上が保持される性能基準が求められる」のであるから,その内部の血液が貯まる部分は,脱気されており,大気圧より気圧が低い状態が1年以上にわたって維持されるといえる。
そうすると,引用発明の「1年以上にわたって当初の吸引容量の約90%以上が保持される性能基準が求められる採血管10」と,
補正発明の「該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも10倍低い吸込み体積損失を示す,生体試料採取に際して好適に用いられ,脱気容器組立品」とは,
「該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,生体試料採取に際して好適に用いられる脱気容器組立品」の点で共通する。
そうすると,両者は,
(一致点)
「第一のポリマー材料で形成され,空洞を内表面によって明確に画定する側壁及び開口端を有する容器部材(a),
及び
該空洞を密閉するように容器部材の開口に設けられた密閉部材(c),を有し,
該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,生体試料採取に際して好適に用いられる脱気容器組立品。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。
(相違点)
補正発明は,「容器部材表面に30ミクロンまでの厚さを有し,分散したバリア用マトリックスポリマー(i),及びアスペクト比が50を超える実質的に剥離したケイ酸塩充填材(ii)を含む水性分散液から得られるナノ複合材のバリア被膜(b)」が設けらたものであって,「該実質的に剥離したケイ酸塩充填材は,そのバリア被膜の全固形物の20~50重量%存在する」ものであり,「ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも10倍低い吸込み体積損失を示す」のに対して,
引用発明は,そのような特定がされていない点。
(1)相違点についての検討
刊行物1には,「【0005】ポリマーからなる製品の障壁特性を改善する必要性が存在する。特に,プラスチック製真空採血管は医療用途に適合するある種の性能基準を有し,さらに効果的かつ有用であることからそのような特性の改善が求められている。」と引用発明において,「障壁特性を改善する必要性が存在する」との技術課題の存在が明記されている。
一方,引用発明2は,引用発明の上記技術課題と共通する技術課題を解決することを明示した発明であり,「容器の少なくとも1面に水性バリヤ塗料組成物を塗布して形成することによって,従来の剛性プラスチック容器すなわち成形プラスチック容器のガスバリヤ性能を大幅に,例えば20倍または30倍,あるいはそれ以上に向上させることができる厚さ約8ミクロンのガスバリヤ塗膜層であって,その水性バリヤ塗料組成物の固体部分はメラミンホルムアルデヒド樹脂とアスペクト比20から500のモンモリロナイトを含むガスバリヤ塗膜層。」の発明である。
ここで,引用発明2の「アスペクト比20から500のモンモリロナイトを含む」ものは,アスペクト比50を超えて500までのモンモリロナイトを含むものであるから,補正発明の「アスペクト比が50を超える実質的に剥離したケイ酸塩充填材(ii)」を含んでいるといえ,また,引用発明2の「成形プラスチック容器のガスバリヤ性能を大幅に,例えば20倍または30倍,あるいはそれ以上に向上させることができる」「ガスバリヤ塗膜層」は,ポリマー製品のプラスチック製採血管10である引用発明の側壁11に塗布した場合にも,吸込み体積損失を20倍または30倍,あるいはそれ以上に低いものに向上させることができるといえるので,補正発明の「ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも10倍低い吸込み体積損失を示す」「ナノ複合材のバリア被膜(b)」に相当する。
さらに,引用発明2は水性層状鉱物であるモンモリロナイトを用いたガスバリヤ塗装膜の発明であり,固体部分におけるモンモリロナイトの割合は,ガスバリア性能や膜の強度等を考慮して適宜設定されるものであることは明らかであり,補正発明の20~50重量%という値も刊行物2の記載からみて格別の値であるともいえないので,ガスバリヤ塗膜中のモンモリロナイトの比率としてバリア被膜の全固形物の20~50重量%とすることは,最適な範囲を示したにすぎない。
以上より,引用発明の上記技術課題を解決するために,引用発明に引用発明2を付加し,補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到しうるものといえる。
(2)そして,補正発明の作用効果は,刊行物1,2記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものともいえない。
(3)したがって,補正発明は,引用発明,刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1~80に係る発明は,平成27年3月5日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1~80に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりであると認める。
「【請求項1】
第一のポリマー材料で形成され,空洞を内表面によって明確に画定する側壁及び開口端を有する容器部材(a),
該容器部材表面に設けられ,30ミクロンまでの厚さを有し,分散したバリア用マトリックスポリマー(i),及びアスペクト比が50を超える実質的に剥離したケイ酸塩充填材(ii)を含む水性分散液から得られるナノ複合材のバリア被膜(b),ここで,該実質的に剥離したケイ酸塩充填材は,該ナノ複合材のバリア被膜の全固形物の20~50重量%存在する,及び
該空洞を密閉するように容器部材の開口に設けられた密閉部材(c),を有し,
該空洞は脱気され,大気圧より低い気圧を維持し,ナノ複合材フイルムを除いた場合の同じ組立品に対して少なくとも1.5倍低い吸込み体積損失を示す,生体試料採取に際して好適に用いられる脱気容器組立品。」(以下,「本願発明」という。)
2 引用刊行物およびその記載事項
本願優先権主張日前に頒布された刊行物1,2およびその記載事項は,上記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。
3 当審の判断
補正発明は,本願発明を限定した構成を含むものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2[理由] 3」において検討したとおり,引用発明,刊行物2記載の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。
第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-001305