特許拒絶査定不服審判
2016-001157
静電誘導式発電デバイスのための誘電体薄膜デバイス
- 審判番号
- 2016-001157
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-215512外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月27日
- 審決日
- 2017年04月17日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-215512「静電誘導式発電デバイスのための誘電体薄膜デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月25日出願公開、特開2013- 77646〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月29日を出願日とする出願であって、平成26年9月26日付で審査請求がなされ、平成27年7月14日付で拒絶理由が通知され、同年9月25日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年10月20日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年1月27日付で拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされ、当審において同年11月7日付で補正却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶理由が通知され、平成29年1月6日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年1月6日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「板状金属基板の上に堆積した圧電体薄膜と、前記圧電体薄膜の上に堆積した電極と、前記板状金属基板及び電極に取り付けた導線と、錘と、を備え、振動すると前記圧電体薄膜が歪み前記板状金属基板と電極の間に電圧を生じる圧電発電装置であって、
前記圧電体薄膜が、電子サイクロトロン共鳴スパッタにより堆積された窒化アルミニウム(AlN)からなり、
前記圧電体薄膜、前記板状金属基板及び前記錘から成る振動部の機械的共振周波数を200 Hz以下としたことを特徴とする圧電発電装置。」
第3 当審の判断
1 引用例について
(1)引用例1
ア 引用例1の記載について
当審の拒絶の理由に引用された、W.T.CHANG(他5名),Wind-power generators based on ZnO piezoelectric thin films on stainless steel substrates,Current Applied Physics,NL,Elsevier,2011年 1月,Volume 11, Issue 1,pp.S333-S338(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(ア)「This report develops wind generators based on ZnO transducers that are integrated with stainless steel substrate (SUS304).」(S334頁左欄6行乃至8行)
(当審訳:この報告は、ステンレス鋼(SUS304)を基板に統合されたZnO変換器に基づいた風力発電機を詳説します。)
(イ)「2. Experimental details
In this study, the reactive radio-frequency (RF)magnetron sputtering method was employed to deposit ZnO piezoelectric thin films. The sputtering system was evacuated to a base pressure of 2×105 Torr using a diffusion pump to achieve the required deposition conditions. The SUS304 substrates with 50 μm thickness were adopted as flexible substrates and bottom electrodes in wind generators. Table 1 presents the properties of stainless steel substrates (SUS304). After the cleaning of substrates by standard spotless process, the ZnO piezoelectric thin film was deposited by RF sputtering with heating. Tabie 2 shows in detail the sputtering conditions of preparing c-axis-oriented piezoelectric ZnO thin films. After the ZnO/SUS304 structure was formed, a copper(Cu) layer was attached to the ZnO/SUS3O4 substrate as the top electrode in a piezoelectric transducer, because it has a low resistivity and is inexpensive.Finally, the electrical properties of the transducers (Cu/ZnO/SUS304) were measured using a vibration testing system. To increase the amplitude of vibration of the transducers to facilitate measurement an additional mass loading of 0.57g on the cantilever was attached to the transducer. Fig. 1 displays the fabrication of the device.」(S335頁左欄4行乃至S336頁左欄10行)
(当審訳:2.実験の詳細
この研究では、高周波(RF)マグネトロンスパッタリング反応法が、ZnOの圧電薄膜を作製するために使われた。スパッタリングシステムは、必要とされる堆積条件を達成するために、真空ポンプを使って2×105Toorに圧力を引き下げました。50μmのSUS304基板は、弾力性がある基板で且つ下部電極として風力発電機に採用されました。表1は、ステンレス鋼(SUS304)基板の特性を示しています。標準的な洗浄プロセスにより基板を洗浄した後、熱を加えた状態で、RFスパッタリングによりZnO圧電薄膜を堆積させます。表2は、c軸配向されたZnO圧電薄膜を作るための、スパッタリングの詳細な条件を示しています。ZnO/SUS304構造が構成された後、低抵抗で高価でないために、圧電変換器の上部電極として、銅(Cu)層をZnO/SUS304基板に取り付けます。最後に、変換器(Cu/ZnO/SUS304)の電気特性を振動テストシステムを使って測られました。測定を容易にするために変換器の振幅を増やすように、変換器の片側に0.57gの錘を付加します。図1が装置の構成を示します。)
(ウ)「3.3. Electrical properties of generators
According to the Investigation, the excitation frequency and the amplitude of vibration critically influence the output voltage of a generator. Fig. 10 plots the variation of open circuit voltage(VDC) with excitation frequencies, in which a maximum VDC of 7.52V was achieved at an excitation frequency of 75 Hz. Clearly, the ZnO-based generator in this study is suitable for low frequecy application.Fig. 11 plots the variations in VDC with the amplitude of vibration.
The maximum VDC of 10.5V is reached at the vibration amplitude of 1.19mm and vibration frequency of 75 Hz.」(S337頁左欄7行乃至S338左欄7行)
(当審訳:3.3.発電機の電気特性
研究によると、加えられる周波数と振幅は、甚だしく発電機の出力電圧に影響を与えます。図10は、加えられる周波数における開回路の電圧の変化(VDC)を描いたもので、75Hzの周波数を加えることで7.52Vの最大VDCが得られます。明らかにこの研究のZnOを元とした発電機は、低周波の用途に適しています。図11は、振幅におけるVDCの変化を描いたものです。10.5Vの最大VDCは1.19mmの振幅と75Hzの周波数を加えることで達成されます。 )
イ 引用例1発明について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「下部電極であるステンレス鋼(SUS304)基板の上に高周波(RF)マグネトロンスパッタリング反応法により堆積したZnO圧電薄膜と、
前記ZnO圧電薄膜上に上部電極として取り付けられた銅(Cu)層と、
錘とを備え、
75Hzの周波数を加えることで最大の電圧が得られる、
風力発電機。」
(2)引用例2
ア 引用例2の記載について
当審の拒絶の理由に引用された、特開2011-192736号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0022】
図1に示すように、圧電体薄膜素子1は、基板2上に下部電極3、圧電体薄膜4、上部電極5を順次形成したものである。
・・・ 中 略 ・・・
【0028】
上部電極5としては、W、Pt、Ta、Au、Ag、Al、Ti3Al、Ti、Cu、Ta、Co、In、Mgを用いることができる。また、上部電極5としては、Ptを含む合金、Ru、または、SrRuO3、LaNiO3などの金属酸化物電極を用いることもできる。上部電極5の膜厚は、例えば200nmである。上部電極5は、例えば、RFマグネトロンスパッタリング法により成膜される。」
イ 引用例2記載事項について
上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「圧電体薄膜上に形成された上部電極であるCuは、RFマグネトロンスパッタリング法により成膜されること。」
(3)引用例3
ア 引用例3の記載について
当審の拒絶の理由に引用された特開2011-152004号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0030】
なお、各圧電素子E1、E2、E3の出力は、筐体C4の外側に設けられた出力端子へ導かれている。この出力端子の一方には、各圧電素子E1、E2、E3の一方の電極が接合された各振動板P1、P2、P3の各端部に結線されている。出力端子の他方は、各圧電素子E1、E2、E3の他方の電極にそれぞれ結線されている。以降の形態例でも結線方法は基本的に同様であり、その限りにおいて結線に関する説明を省略する。」
イ 引用例3記載事項について
上記アの記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「圧電素子の出力を得るために、出力端子と圧電素子の一方の電極が接合された振動板とは結線し、他方の出力端子と圧電素子の他方の電極は結線すること。」
(4)引用例4
ア 引用例4の記載について
当審の拒絶の理由に引用された特開2007-280368号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0040】
圧電膜には、例えば水晶(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、メタニオブ酸鉛(PbNb2O6)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化タンタル(Ta2O5)等の圧電材料を用いることができる。圧電材料は、結晶中心を持たない絶縁体のうち、応力を加えると圧電膜表面に正負の電荷が生じ、分極が発生する材料であれば良い。また、圧電素子に、支持体705を用いて固定された端部と反対側の端部に錘704を設けてもよい。また、図8では圧電素子の一端を固定した構成を記載したが、中央部を固定した構成や両端を固定した構成でも良い。なお、圧電素子より得られた起電力は交流電圧となるため、図2に示すように整流回路107を介してバッテリーに供給する必要がある。圧電素子への振動は、RFID自体の振動の他、整流回路105を介して得られる電力を用いて初期振動を起こさせ、持続される振動を用いて起電力を得ることも可能である。」
イ 引用例4記載事項について
上記アの記載から、引用例4には、実質的に次の事項(以下、「引用例4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「圧電素子より起電力を得るために、圧電膜には、酸化亜鉛(ZnO)や窒化アルミニウム(AlN)等の圧電材料を用いること。」
(5)周知技術
ア 引用例5の記載について
本願の出願日前に公開された特開2005-150990号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0029】
圧電膜103の材料としては、上述の通り、ZnO、AlN、GaN等のウルツァイト型結晶構造を有する圧電材料を用いることができる。圧電膜103の材料として、AlNやZnOなどのウルツァイト型結晶構造を持つ圧電材料を用いる場合、その形成方法としては、RFマグネトロンスパッタリングやDCスパッタリング、ECRスパッタリングなどのスパッタリング法や、CVD(化学気相成長)法、MBE(分子線エピタキシー)法又は真空蒸着法を用いることが好ましく、中でもスパッタリング法、特にRFマグネトロンスパッタリング法を用いることがより好ましい。これは、RFマグネトロンスパッタリング法を用いることにより、AlNやZnOからなるc軸単一配向の高結晶性薄膜を容易に形成できるからである。AlNを用いる場合には、反応性RFマグネトロンスパッタリング法を用いることが好ましい。この場合、カソードにはAl金属を用い、Arと窒素のガスを導入して、200℃程度の基板温度で反応性RFマグネトロンスパッタリングを行うことで、優れたAlN膜を形成することができる。ECRスパッタリング法を用いた場合でも不純物の極めて少ない高結晶性薄膜が作製できる。」
イ 引用例6の記載について
本願の出願日前に公開された特開2005-197983号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0031】
圧電膜103は、下部電極102と上部電極104との間に印加される電気信号をバルク波に変換する役割を果たし、その材料としては、上述の通り、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)等のウルツァイト型結晶構造を有する圧電材料やPZT等の強誘電体材料を用いることができる。特に限定されるものではないが、より良好な共振特性を得るためには、圧電膜103のX線ロッキングカーブの半値幅は5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0032】
圧電膜103の材料として、ウルツァイト型結晶構造を持つ圧電材料を用いる場合、その形成方法としては、RFマグネトロンスパッタリングやDCスパッタリング、ECRスパッタリングなどのスパッタリング法や、CVD(化学気相成長)法、MBE(分子線エピタキシー)法又は真空蒸着法を用いることが好ましく、中でもスパッタリング法、特にRFマグネトロンスパッタリング法を用いることがより好ましい。これは、RFマグネトロンスパッタリング法を用いることにより、窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)等からなるc軸単一配向の高結晶性薄膜を容易に形成できるからである。窒化アルミニウム(AlN)を用いる場合には、反応性RFマグネトロンスパッタリング法を用いることが好ましい。この場合、カソードにはAl金属を用い、Arと窒素のガスを導入して、200℃程度の基板温度で反応性RFマグネトロンスパッタリングを行うことで、優れたAlN膜を形成することができる。ECRスパッタリング法を用いた場合でも不純物の極めて少ない高結晶性薄膜が作製できる。」
ウ 引用例7の記載について
本願の出願日前に公開された特開2005-252069号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0034】
機能膜13の材料として、AlNやZnOなどのウルツァイト型結晶構造を持つ圧電材料を用いる場合、その形成方法としては、RFマグネトロンスパッタリングやDCスパッタリング、ECRスパッタリングなどのスパッタリング法や、CVD(化学気相成長)法又は真空蒸着法を用いることが好ましく、中でもスパッタリング法、特にRFマグネトロンスパッタリング法を用いることがより好ましい。これは、RFマグネトロンスパッタリング法を用いることにより、AlNやZnOからなるc軸単一配向の高結晶性薄膜を容易に形成できるからである。AlNを用いる場合には、反応性RFマグネトロンスパッタリング法を用いることが好ましい。この場合、カソードにはAl金属を用い、Arと窒素のガスを導入して、200℃程度の基板温度で反応性RFマグネトロンスパッタリングを行うことで、優れたAlN膜を形成することができる。ECRスパッタリング法を用いた場合でも不純物の極めて少ない高結晶性薄膜が作製できる。」
エ 周知技術
上記アないしウの記載から、次の事項は、本願出願前周知技術であると認められる。
「AlNやZnOなどのウルツァイト型結晶構造を持つ圧電材料を用いる場合、不純物の極めて少ない高結晶性薄膜を作製するために、ECRスパッタリング法をもちいること。」
2 対比・判断
(1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明の「ステンレス鋼(SUS304)基板」,「ZnO圧電薄膜」,「銅(Cu)層」および「錘」は、それぞれ、本願発明の「板状金属板」,「圧電体薄膜」,「電極」および「錘」に相当する。
イ 引用例1発明は、振動により「ZnO圧電薄膜」が歪み、「下部電極であるステンレス鋼(SUS304)基板」と「上部電極として取り付けられた銅(Cu)層」との間で生じる電圧差により発電するものであることは、当業者にとって明らかであるから、引用例1発明も本願発明の「振動すると前記圧電体薄膜が歪み前記板状金属基板と電極の間に電圧を生じる」と同様の動作を行っていると認められる。してみれば、引用例1発明の「風力発電機」は、本願発明の「振動すると前記圧電体薄膜が歪み前記板状金属基板と電極の間に電圧を生じる圧電発電装置」に相当する。
そうすると、本願発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「板状金属基板の上に堆積した圧電体薄膜と、前記圧電体薄膜の上の電極と、錘と、を備え、振動すると前記圧電体薄膜が歪み前記板状金属基板と電極の間に電圧を生じる圧電発電装置。」
[相違点1]
本願発明の「電極」は、「前記圧電体薄膜の上に堆積」することにより構成されているが、引用例1発明の「銅(Cu)層」は、どのようにして構成されたか不明である点。
[相違点2]
本願発明は「前記板状金属基板及び電極に取り付けた導線」を備えているのに対して、引用例1発明は対応する構成の明記がない点。
[相違点3]
本願発明は「前記圧電体薄膜が、電子サイクロトロン共鳴スパッタにより堆積された窒化アルミニウム(AlN)からな」っているのに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。
[相違点4]
本願発明は「前記圧電体薄膜、前記板状金属基板及び前記錘から成る振動部の機械的共振周波数を200 Hz以下とし」ているのに対して、引用例1発明は機械的共振周波数について記載されていない点。
(2)以下、上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例2に記載されているように、上部電極として銅(Cu)層を用いる際に、RFマグネトロンスパッタリング法等の堆積をもちいることは公知の技術である。そして、引用例1に記載された、「前記ZnO圧電薄膜上に上部電極として」「銅(Cu)層」を取り付ける際に、上記公知技術をもちい、「電極」を「前記圧電体薄膜の上に堆積」することにより構成し、本願発明と同様の手法を採用することは、当業者が適宜為し得る事項である。
[相違点2]について
引用例3に記載されているように、「圧電素子の出力を得るために、出力端子と圧電素子の一方の電極が接合された振動板とは結線し、他方の出力端子と圧電素子の他方の電極は結線すること」は公知の構成であり、引用例1発明のおいても「ZnO圧電薄膜」の出力を得るために、「ステンレス鋼(SUS304)基板」と出力端子の間、および、「銅(Cu)層」と出力端子の間を結線することは当業者が当然行うことである。そしてその際に、本願発明の「前記板状金属基板及び電極に取り付けた導線」と同様の「導線」を採用することは、当業者が容易に想到した事項である。
[相違点3]について
引用例4に記載されているように、「圧電素子より起電力を得るために、圧電膜には、酸化亜鉛(ZnO)や窒化アルミニウム(AlN)等の圧電材料を用いること」は、公知の技術である。
そして、引用例1発明の圧電薄膜を構成する際に、「ZnO圧電薄膜」を、AlNを用いた薄膜とすることは、当業者が設計時に適宜選択する事項である。
また、前記1(5)のとおり、ZnO膜やAlN膜を形成する際に、不純物の極めて少ない高結晶性薄膜を得るためにECRスパッタリング法(本願発明の「電子サイクロトロン共鳴スパッタ」に相当する。)を採用することは、周知技術であるから、引用例1発明の圧電薄膜としてAlNを用いた薄膜を採用した際に、不純物の極めて少ない高結晶性薄膜を得るために、本願発明と同様に「前記圧電体薄膜が、電子サイクロトロン共鳴スパッタにより堆積された窒化アルミニウム(AlN)からな」るようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。
[相違点4]について
引用例1発明は「75Hzの周波数を加えることで最大の電圧が得られる」ものであり、共振周波数を75Hzとすれば、最も効率よく発電が行われることは、当業者にとって自明である。
そして、引用例1発明において、効率よく発電を行うために、共振周波数を75Hzとし、より大きな出力電圧を得るようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。
そうすると、引用例1発明において本願発明と同様に、「前記圧電体薄膜、前記板状金属基板及び前記錘から成る振動部の機械的共振周波数を200 Hz以下」とすることは、当業者が容易に想到した事項である。
3 小括
そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用例1発明及び引用例2ないし4に記載された技術、並びに、引用例5ないし7に記載された周知技術の構成から当業者にとって予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明は、引用例1発明および引用例2ないし4に記載された技術、並びに、引用例5ないし7に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし7記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-001157