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特許拒絶査定不服審判

2015-006370

電流密度操作を用いた電力発光ダイオード及び方法

審判番号
2015-006370
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-529969外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年04月04日
審決日
2016年10月27日
公報発行日
2017年05月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-529969「電流密度操作を用いた電力発光ダイオード及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日国際公開、WO2011/035265、平成25年 2月14日国内公表、特表2013-505588〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 平成22年 9月20日 国際特許出願(パリ条約による優先権主張外国 庁受理平成21年9月18日、米国) 平成24年 5月16日 手続補正書 平成25年 9月19日 拒絶理由通知(同年10月15日発送) 平成26年 1月15日 意見書・手続補正書 平成26年 6月25日 拒絶理由通知(同年7月4日発送) 平成26年11月26日 拒絶査定(同年12月5日送達) 平成27年 4月 4日 拒絶査定不服審判の請求・手続補正書 平成28年 1月26日 平成27年4月4日付け手続補正の却下の決定             ・拒絶理由通知(同年1月28日発送。以下「             当審拒絶理由通知」という。) 平成28年 7月28日 意見書・手続補正書 2 本願発明 本願の請求項1-18に係る発明は、平成28年7月28日に補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。 「表面領域を有するバルクガリウム及び窒素含有基板であって、 108cm-2未満の貫通転位密度、104cm-1未満の積層欠陥密度及び1017cm-3を超えるドーピングで特徴付けられ、前記表面領域は、極性配向、半極性配向及び非極性配向から選択される表面配向により特徴付けられる、バルクガリウム及び窒素含有基板と、 厚さが1nm~10μmで、ドーパント濃度が1X1016cm-3~5X1020cm-3のn型(Al)(In)GaNエピタキシャル層を含むn型領域と、 前記n型領域上に形成された少なくとも1つの活性領域であって、 複数の(Al)(In)GaN層と、0.5nmを超える厚さで特徴付けられる1つ以上の量子井戸を有し、活性領域面積で特徴付けられる、少なくとも1つの活性領域と、 前記少なくとも1つの活性領域上に形成され、厚さが10nm~500nmで、ドーパント濃度が1X1016cm-3~1X1021cm-3のp型(Al)(In)GaNエピタキシャル層を含むp型領域と、 を含む発光ダイオードデバイスであって、 前記少なくとも1つの活性領域は、40nm~500nmの総厚みを有し、 175Amps/cm2を超える電流密度で、少なくとも1つの活性領域にパルスモードで印加したときに40%以上の外部量子効率(EQE)を有することを特徴とする発光ダイオードデバイス。」(以下「本願発明」という。) 3 引用発明 (1)刊行物 当審拒絶理由に引用された 「Kwang-Choong Kim etc.、"Improved electroluminescence on nonpolar m-plane InGaN/GaN quantum wells LEDs"、physica status solidi (RRL)、Volume 1、Issue 3、pages 125-127、2007年7月10日(科学技術振興機構受入日)」(以下「刊行物」という。) には、図面とともに以下の記載がある。 ア 要約(125頁中段) 当審訳(下線は、当審が付加した。以下同様。) 厚いInGaN多重量子井戸(MQW)構造を有する改良された非極性のm面発光ダイオード(LED)は、有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いて低い拡張欠陥を有するバルクのm面GaN基板上に製造されている。パッケージ化されたLEDからのエレクトロルミネセンス発光のピーク波長は、青紫色領域である402nmでした。出力パワーおよびEQEは、20mAのパルス状の駆動電流で、それぞれ、28mW及び45.4%でした。電流の増加と共に、出力パワーが直線的に増加し、駆動電流の増加にもかかわらずかなり平坦なEQEが観察されました。200mAで、パワーとEQEは、それぞれ、250mWと41%でした。 イ 序論(125頁下段左欄~126頁左欄5行) 当審訳 1 序論 III族窒化物半導体1-3の著しい進歩は、高出力、高効率の光電子デバイスの広範な開発を可能にしました。極性c軸は、これらのデバイスの性能が成長方向に沿った強い分極関連の電界の不利を招くにもかかわらず、エピタキシャル成長時の安定性の理由から、III属窒化物膜とヘテロ構造の成膜のための一般的な方向である。この分極場は、電子と正孔の波動関数の分離だけでなく、活性領域の放射性再結合率の減少をもたらした4。このような状況を回避するために、有機金属化学気相成長(MOCVD)5、ハイドライド気相エピタキシー(HVPE)6、分子線エピタキシー(MBE)7,8を用いて、r面サファイア,m面SiC基板上の非極性のa、m面窒化ガリウム(GaN)の上に成長して製造した発光ダイオード(LED)のいくつかの報告がある。しかし、異種基板を使用するヘテロエピタキシーは、貫通転位(TDs)と基底の積層欠陥(SFs)のような高密度の拡張欠陥9を引き起こします。これらの欠陥は、内部量子効率を低下させる非発光再結合中心のもとになり、その上、キャリア移動度を小さくするキャリア散乱中心として作用する。その結果、欠陥密度を低減するために、いくつかの成長技術が提案されている。 選択横方向成長(LEO)法は、MOCVD法12を使用してGaNの極性c面10、11を非極性a面に変換するために試みられ、そして、TDの減少を示した。更なるTDの減少のため、窓領域であっても、側壁横方向エピタキシャル成長(SLEO)13もまた、拡張欠陥密度を低減するためにGaNのa面上で使用された。ヘテロエピタキシャル法のほかに、HVPEによって成長させた自立m面GaN基板上にm面GaNのホモエピタキシを使用することにより、最初のm面LEDがチャクラボルティー等14によって報告された。この自立基板は依然として4×109cm-2の貫通転位密度と、1×105cm-1の積層欠陥密度を有し、このデバイスは20mAの駆動電流で、240μWの出力電力と0.43%の外部量子効率(EQE)をもたらした。 最近、HVPEを用いた低拡張欠陥バルクm面GaN基板が、商業的に利用可能になっている。岡本らは、これらの自立バルク基板15を用い、無転位のm面LEDを報告した。しかしながら、このデバイスの出力は、従来のC面LED 16より、約1桁小さかった。この論文では、我々は、現在のC面LEDと同等の性能を持つ以前の我々の成果17に基づいて、バルクm面GaN基板上に成長した、高出力高効率の無極性m面LEDを作成した。 ウ 実験手順(126頁左欄6行~同欄38行) 当審訳 2 実験手順 非極性のm面GaNLEDは、MOCVDにより、m面(1100)GaN基板の上に成長させました。m面GaN基板は、三菱化学株式会社でHVPEで成長させたc面バルクGaN結晶からスライスされた。鏡のような、そして光学的に透明な、m面基板の表面は、機械的に、化学的に研磨され、3×(15-25)mm2のサイズで提供された。m面LEDは、低温バッファー層を有しない、厚いSiドープのn型GaN層、それに続く、18nmのGaN障壁と16nmのInGaN井戸を有する、6周期の多重量子井戸活性層、厚さ10nmのアンドープAlGaN電子ブロック層、P-GaN層(160nm)からなった。すべてのMOCVD成長の最適化は、典型的な温度範囲とV/III比(NH3モル分率とトリメチルガリウムのモル分率の比)の大気圧(AP)で達成された。非極性LEDは次のプロセスで製造された。電子ビーム蒸着に続く高速熱処理装置(RTA)により、pコンタクトとしてITOが積層されたあと、LEDメサ(300×300μm2)は、従来のフォトリソ技術を用いる反応性イオンエッチング(RIE)により形成された。Ti/Al/Auのnコンタクトは電子ビーム蒸着により積層され、そして、ウエハーはダイスされた。従来のダイボンディングとワイヤボンディング工程が使用され、このLEDは、進化したレンズと一緒にパッケージされた。レンズコーンとリードフレームは、光出射を最大にするよう設計され、小さい熱伝導を示し、その詳細はどこか他で公表されるだろう。 パッケージされた電気的・光学的特性は、室温、パルス動作下で行われた。出力パワーと放出スペクトルの測定は、積分球で行った。 エ 結果と考察(126頁左欄39行~127頁左欄23行) 当審訳 3 結果と考察 図1は、200キロボルトの動作電圧でFEI Tecnia G2 Sphera顕微鏡を用いて、m面GaN基板上の非極性m面InGaN/GaNの量子井戸構造の代表的な断面TEM画像の1つを示す。TEM試験品の8nmの井戸と16nmの障壁の6周期は、[1120]方位で準備された。貫通転位や積層欠陥を含む任意の拡張欠陥は、表面に平行な行方向の非常に低い転位密度を除いて、これらのフィルムには観察されませんでした。一般に、急峻な界面と滑らかな自由表面を有する概ね平坦な量子井戸は、数百μmの長さのスケールで観察されました。各層の測定された厚さは、プログラムされたInGaN / GaNの多重量子井戸の成長条件および成長速度に正確に従いました。 図2は、1-300mAの範囲内の様々な駆動電流における代表的な非極性m面LEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルから、発光ピーク波長と半値全幅(FWHM)の依存性を示します。1~90mAの無視できる程度のブルーシフトは、分極に関連する内部電界がないことと、従来のC面LEDに比べてデバイスの活性領域における厚い量子井戸に起因します。駆動電流が90から300mAに上昇した場合に観察される401.3から403.9nmの赤色シフトは、デバイスの発熱に起因するものでした。フラットな量子井戸、少ないインジウムの変動、および広い井戸幅は、狭いELピーク幅(~10-14nmのFWHM)と、電流の増加に対応するQWピークの無視できる程度の広がりに関係するだろう。 非極性m面QW上のインジウムの取り込みは、同じ成長温度でのC面QWのそれよりも低かったです。C面に450から460nmのピーク波長のためのInGaN QWの成長温度は約890℃であり、そして400nmは、900℃で成長される。しかし、m面上の400-410nmのピーク波長は875℃で達成され、450nmにはもっと低い成長温度が必要でした。 m面InGaN QWのインジウムのより低い取り込みが、結晶方位、表面モフォロジー、あるいは成長条件に関連しているかどうかは不明です。さらなる研究が進行中です。 室温でパルス動作(デューティサイクル= 1%)下で測定されたパッケージ化LEDのパワーとEQEの両者の依存性を図3に示す。20mAで、光出力パワーは28.0mWであり、45.4%のEQEに相当した。 EQEは10mAで46%であり、熱生成のためと考えられる、駆動電流が200mAでの41%まで、単調減少を示した。我々のm面デバイスの場合には、出力パワーは、駆動電流160 mAでの210ミリワットまで、ほぼ直線的に増加し、従来の極性C面LEDとは対照的に、飽和の傾向を示しませんでした。 オ 図1(126頁右上) 当審訳 図1 断面の透過電子顕微鏡(TEM)画像、LED構造に、貫通転位がなく、積層欠陥がないことを示している。g=2200。(a)p型GaN、(b)AlGaN電子ブロック層、(C)InGaN 量子井戸、(d)GaN障壁、および(e)n型GaN。 カ 図2(126頁右下) 当審訳 図2 非極性m面LEDの駆動電流に関するELスペクトルのピーク波長シフトと半値全幅(FWHM)の依存性 キ 図3(127頁左上) 当審訳 図3 m面LEDの駆動電流に関する出力パワー(積分球で測定)と402nmの外部量子効率の依存性 (2)引用発明 ア 上記(1)ウによれば、以下の事項が開示されている。 (ア)非極性m面GaNLEDは、m面GaN基板の上にMOCVDにより成長させたものである。 (イ)上記m面GaN基板は、HVPEで成長させたc面バルクGaN結晶をスライスし、機械的、化学的に研磨されたものである。 (ウ)上記非極性m面GaNLEDは、厚いSiドープのn型GaN層、多重量子井戸活性層、アンドープAlGaN電子ブロック層、P-GaN層(160nm)からなる。そして、多重量子井戸活性層は、18nmのGaN障壁と16nmのInGaN井戸を有する、6周期の多重量子井戸活性層である。 (エ)上記非極性m面GaNLEDは、pコンタクトが積層され、LEDメサ(300×300μm2)が形成され、nコンタクトが積層され、ウェハーがダイスされ、ダイボンディングとワイヤボンディング工程が使用され、レンズと一緒にパッケージされるプロセスで製造される。 イ 上記エによれば、以下の事項が開示されている。 室温でパルス動作(デューティサイクル= 1%)下で測定されたパッケージ化LEDは、駆動電流が200mAでEQEが41%である。 ウ 上記アによれば、バルクm面GaN基板は低い拡張欠陥を有し、発光のピーク波長は402nmである。 エ 以上によれば、刊行物には、以下の発明が記載されている。 「m面GaN基板の上に、厚いSiドープのn型GaN層、多重量子井戸活性層、アンドープAlGaN電子ブロック層、P-GaN層(160nm)を、MOCVDにより成長させ、pコンタクトが積層され、LEDメサ(300×300μm2)が形成され、nコンタクトが積層され、ウェハーがダイスされ、ダイボンディングとワイヤボンディング工程が使用され、レンズと一緒にパッケージされた、パッケージ化非極性m面GaNLEDであって、 上記m面GaN基板は、HVPEで成長させたc面バルクGaN結晶をスライスし、機械的、化学的に研磨されたものであり、低い拡張欠陥を有し、 上記多重量子井戸活性層は、18nmのGaN障壁と16nmのInGaN井戸を有する、6周期の多重量子井戸活性層であり、 室温でパルス動作(デューティサイクル=1%)下で測定したEQEは、駆動電流が200mAで41%であり、 発光のピーク波長は402nmである、 パッケージ化非極性m面GaNLED。」(以下「引用発明」という。) 4 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)本願発明の「表面領域を有するバルクガリウム及び窒素含有基板であって、108cm-2未満の貫通転位密度、104cm-1未満の積層欠陥密度及び1017cm-3を超えるドーピングで特徴付けられ、前記表面領域は、極性配向、半極性配向及び非極性配向から選択される表面配向により特徴付けられる、バルクガリウム及び窒素含有基板」と、引用発明の「m面GaN基板」を対比する。 引用発明の「GaN基板」は、本願発明の「表面領域を有するバルクガリウム及び窒素含有基板」に相当する。 また、引用発明の「m面GaN基板」の「m面」は非極性面であるから、「m面GaN基板」の表面配向は非極性配向である。 してみると、両者は、 「表面領域を有するバルクガリウム及び窒素含有基板であって、前記表面領域は、非極性配向により特徴付けられる、バルクガリウム及び窒素含有基板」 の点で一致する。 (2)本願発明の「厚さが1nm~10μmで、ドーパント濃度が1X1016cm-3~5X1020cm-3のn型(Al)(In)GaNエピタキシャル層を含むn型領域」と、引用発明の「厚いSiドープのn型GaN層」を対比する。 GaNLEDの技術分野において、GaNLEDを構成する各半導体層がエピタキシャル成長された層であることは、当業者にとって技術常識である。してみると、両者は、「n型GaNエピタキシャル層を含むn型領域」の点で一致する。 (3)本願発明の「前記n型領域上に形成された少なくとも1つの活性領域であって、複数の(Al)(In)GaN層と、0.5nmを超える厚さで特徴付けられる1つ以上の量子井戸を有し、活性領域面積で特徴付けられる、少なくとも1つの活性領域」と、引用発明の「厚いSiドープのn型GaN層」の上に成長させた「多重量子井戸活性層」であって、「18nmのGaN障壁と16nmのInGaN井戸を有する、6周期の多重量子井戸活性層」を対比する。 引用発明の「厚いSiドープのn型GaN層」の上に成長させた「多重量子井戸活性層」は、本願発明の「前記n型領域上に形成された…活性領域」に相当する。 GaNLEDの技術分野において、量子井戸構造は井戸層を障壁層で挟んだ構造であるから、障壁層の数が2以上であることは、当業者にとって技術常識である。してみると、本願発明の「複数の(Al)(In)GaN層」と引用発明の「18nmのGaN障壁」とは「複数のGaN層」の点で一致する。 また、引用発明の「16nmのInGaN井戸」は本願発明の「0.5nmを超える厚さで特徴付けられる1つ以上の量子井戸」に相当する。 以上によれば、両者は、 「前記n型領域上に形成された少なくとも1つの活性領域であって、複数のGaN層と、0.5nmを超える厚さで特徴付けられる1つ以上の量子井戸を有する、少なくとも1つの活性領域」 の点で一致する。 (4)本願発明の「前記少なくとも1つの活性領域上に形成され、厚さが10nm~500nmで、ドーパント濃度が1X1016cm-3~1X1021cm-3のp型(Al)(In)GaNエピタキシャル層を含むp型領域」と、引用発明の「P-GaN層(160nm)」を対比する。 ア はじめに、本願発明のp型領域が「活性領域上に形成され」ることについて、その意味を発明の詳細な説明を参酌して検討する。 本願の発明の詳細な説明には、 「【0050】 図5は、本発明の実施形態による高電流密度エピタキシャル成長LED構造の簡略化された図である。…1つ以上の実施形態において、前記LED構造は、少なくとも以下を含む。…4.厚さが約10nm~約500nmであり、ドーパント濃度が約1x1016cm-3~約1x1021cm-3のp型(Al)(In)GaNエピタキシャル層(単数又は複数)であって、以下の詳細を更に含むもの。…電子ブロッキング層として機能する少なくとも1つの層…」、 「【0056】特定の実施形態において、前記成長シーケンスは、少なくとも(1)n型エピタキシャル材料と、(2)活性領域と、(3)電子ブロッキング領域と、(4)p型エピタキシャル材料とを含む。」 等の記載がある。上記記載によれば、p型領域は、活性領域の上に電子ブロッキング層を介して成長させてもよいものである。してみると、本願発明のp型領域が「活性領域上に形成され」ることは、p型領域が「活性領域上に」電子ブロッキング層を介して「形成され」ることを含むものと解される。 イ 引用発明の「P-GaN層(160nm)」は、「多重量子井戸活性層」の上に成長させた「アンドープAlGaN電子ブロック層」の上に成長させたものである。 ウ してみると、両者は、「前記少なくとも1つの活性領域上に形成され、厚さが160nm」の「p型GaNエピタキシャル層を含むp型領域」の点で一致する。 (5)引用発明の「パッケージ化非極性m面GaNLED」は、本願発明の「発光ダイオードデバイス」に相当する。 (6)本願発明の「前記少なくとも1つの活性領域は、40nm~500nmの総厚みを有」することと、引用発明の「上記多重量子井戸活性層は、18nmのGaN障壁と16nmのInGaN井戸を有する、6周期の多重量子井戸活性層であ」ることを対比する。 引用発明は、「18nmのGaN障壁と16nmのInGaN井戸」を6周期有するから、少なくとも(18+16)×6=204nmの層厚みを有する。してみると、両者は相当関係にある。 (7)本願発明の「175Amps/cm2を超える電流密度で、少なくとも1つの活性領域にパルスモードで印加したときに40%以上の外部量子効率(EQE)を有する」ことと引用発明の「LEDメサ(300×300μm2)が形成され」、「室温でパルス動作(デューティサイクル=1%)下で測定したEQEは、駆動電流が200mAで41%であ」ることを対比する。 引用発明は、「LEDメサ(300×300μm2)」を形成しているところ、引用発明の多重量子井戸活性層の面積は、LEDメサの面積(300×300μm2)にほぼ等しいと解される。そうすると、引用発明において「駆動電流が200mA」であることは、電流密度が 200×10-3/(300×10-4)2=222A/cm2 である。 してみると、両者は相当関係にある。 (8)以上によれば、本願発明と引用発明は、 「表面領域を有するバルクガリウム及び窒素含有基板であって、 前記表面領域は、非極性配向により特徴付けられる、バルクガリウム及び窒素含有基板と、 n型GaNエピタキシャル層を含むn型領域と、 前記n型領域上に形成された少なくとも1つの活性領域であって、 複数のGaN層と、0.5nmを超える厚さで特徴付けられる1つ以上の量子井戸を有する、少なくとも1つの活性領域と、 前記少なくとも1つの活性領域上に形成され、厚さが160nmのp型GaNエピタキシャル層を含むp型領域と、 を含む発光ダイオードデバイスであって、 前記少なくとも1つの活性領域は、40nm~500nmの総厚みを有し、 175Amps/cm2を超える電流密度で、少なくとも1つの活性領域にパルスモードで印加したときに40%以上の外部量子効率(EQE)を有することを特徴とする発光ダイオードデバイス。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)バルクガリウム及び窒素含有基板が、本願発明では「108cm-2未満の貫通転位密度、104cm-1未満の積層欠陥密度及び1017cm-3を超えるドーピングで特徴付けられ」るのに対し、引用発明では、低い拡張欠陥を有するものの、そのようなものなのか否か不明である点。 (相違点2)n型GaNエピタキシャル層が、本願発明では、「厚さが1nm~10μmで、ドーパント濃度が1X1016cm-3~5X1020cm-3」であるのに対し、引用発明では、そのようなものなのか否か不明である点。 (相違点3)活性領域が、本願発明では「活性領域面積で特徴付けられる」のに対し、引用発明では、そのようなものなのか否か明らかでない点。 (相違点4)厚さが160nmのp型GaNエピタキシャル層が、本願発明では「ドーパント濃度が1X1016cm-3~1X1021cm-3」であるのに対し、引用発明では、ドーパント濃度がそのようなものなのか否か不明である点。 5 判断 以下、上記相違点について検討する。 (1)相違点1について ア 引用発明の「m面GaN基板」は、「HVPEで成長させたc面バルクGaN結晶をスライスし、機械的、化学的に磨いたもの」である。ところで、当審拒絶理由で引用した引用文献7 「Mathew C. SCHMIDT etc.、 "High Power and High External Efficiency m-Plane InGaN Light Emitting Diodes"、 Japanese Journal of Applied Physics、Vol. 46、No. 7、pp. L126-L128、 2007年3月15日(科学技術振興機構受入日) 」 の126頁右欄3~12行には、HVPEにより成長され、スライスされ、化学的・機械的に表面処理されたバルクm面GaN基板の貫通転位密度が5×106cm-2より小さいこと、キャリア密度が約1×1017cm-3であることが記載されている。すなわち、引用発明の「m面GaN基板」と同様の製造方法で製造したバルクm面GaN基板の貫通転位密度として、5×106cm-2より小さいものは、周知である。 イ また、当審拒絶理由で引用した引用文献3(特開2009-44067号公報)には、 「【0027】まず、GaNの単結晶からなり、表面2aが非極性面のm面であり、約300μmの厚みの基板2を用意する。ここで、m面を表面2aとする基板2は、まず、c面を主面とするGaN単結晶から切り出した後、(0001)方向及び(11-20)方向の両方に対する方位誤差が±1°以内(好ましくは±0.3°以内)になるように化学的機械的研磨法(CMP法)により研磨されて作製される。これにより、m面を表面2aとし、転位や積層欠陥といった結晶欠陥が少なく、表面2aの凹凸が原子レベルまで抑制された基板2を得ることができる。」 との記載があり、特開2008-235804号公報には、 「【0028】たとえば、m面を主面とするGaN単結晶基板は、c面を主面としたGaN単結晶から切り出して作製することができる。切り出された基板のm面は、たとえば、化学的機械的研磨処理によって研磨され、(0001)方向および(11-20)方向の両方に関する方位誤差が、±1°以内(好ましくは±0.3°以内)とされる。こうして、m面を主面とし、かつ、転位や積層欠陥のないGaN単結晶基板が得られる。… 【0032】…実質的に転位のないGaN単結晶基板上にIII族窒化物半導体層2を成長させることにより、このIII族窒化物半導体層2は基板1の再成長面(m面)からの積層欠陥や貫通転位が生じていない良好な結晶とすることができる。これにより、積層欠陥(面欠陥)や転位(線欠陥)に起因する発光効率低下などの特性劣化を抑制することができる。」 との記載があり、さらに、特開2008-311533号公報には、 「【0030】ところで、図6の写真データから無転位、すなわち積層欠陥は無い状態であると言えるのであるが、厳密にどの程度の積層欠陥が実際に存在するかを図6の写真データから調べたところ、最大で10μmの間隔で1個の積層欠陥が見つからなかった。したがって、最低10μmの間隔で1個の欠陥があるとすると、1cmあたりの距離に換算すれば103個となるので、このことより、積層欠陥が103cm-1以下であれば、実質的に無転位であると言える。」 との記載がある。 以上の記載によれば、GaN単結晶から切り出し、化学的機械的研磨処理によって研磨したm面GaN単結晶基板は、積層欠陥が少ない、あるいは積層欠陥が無い(積層欠陥が103cm-1以下と解される。)ことが記載されている。すなわち、引用発明の「m面GaN基板」と同様の製造方法で製造したm面GaN単結晶基板の積層欠陥が少ないもの、あるいは、積層欠陥密度として103cm-1以下のものは、周知である。 ウ 発光効率等の特性の優れた発光ダイオードを得るには、貫通転位や積層欠陥の少ない「m面GaN基板」を用いることが望ましいことは、当業者に自明な事項であるところ、引用発明は、上記4(7)で検討したとおり、パルス動作(デューティサイクル=1%)下で、電流密度が222A/m、駆動電流が200mAでEQE41%という、本願発明の発光ダイオードデバイスと同様の特性を有している。そして上記ア、イを踏まえると、引用発明において、m面GaN基板の貫通転位密度と積層欠陥密度の値を、貫通転位密度を5×106cm-2より小さい値とすること、積層欠陥密度を103cm-1以下の値とすることは、当業者が適宜採用しうる事項に過ぎないものと認められる。 エ さらに、GaN基板の裏面にn型接点(n側電極)を形成した発光素子は周知(例えば、特開2004-176708号公報【0059】参照。)であり、GaN基板にn型導電性が必要な際、引用発明の「m面GaN基板」をドーピングすることは当業者が適宜なし得ることである。そして、ドーピング濃度を1017cm-3を超える値とすることも、必要とする導電性に応じ、当業者が普通に採用する値に過ぎない。 オ 以上によれば、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことと認められる。 (2)相違点2、4について 上記相違点2、4に係る本願発明の発明特定事項は、通常の発光ダイオードが備える数値範囲に過ぎず(例えば、当審拒絶理由で引用した引用文献3(特開2009-44067号公報)の【0017】、【0021】参照。)、引用発明において、上記相違点2、4に係る本願発明の発明特定事項を採用することに困難性は無い。 (3)相違点3について ア はじめに、本願発明の「活性領域面積で特徴付けられる」との特定事項が有する技術的意味について、発明の詳細な説明を参酌して検討する。 本願の発明の詳細な説明には、 「【0008】 発明の概要 本発明によれば、主に照明に関する技術が提供される。詳細には、GaN系半導体材料の単位面積あたりの光出力をより高くする技術について記載する。より詳細には、本発明の実施形態は、高電流密度LEDデバイスを含む。前記高電流密度LEDデバイスは、高活性領域(即ち、活性領域の面積のダイシングピッチに対するの比)を用いており、バルクガリウムと、窒素含有極性、半極性又は非極性材料との上に作製される。」 との記載がある。 上記記載によれば、本願発明の「活性領域面積で特徴付けられる」との特定事項が有する技術的意味は、必ずしも明確ではないが、 (ア)高電流密度デバイスとなるような活性領域の面積であること、あるいは、 (イ)LEDチップの面積(ダイシングピッチ)に対する活性領域の面積の比が大きいこと を意味するものと解される。 イ 上記アを踏まえて、以下、検討する。 (ア)本願発明は「175Amps/cm2を超える電流密度」との特定事項を備えるところ、上記4(7)で検討したとおり、引用発明は、前記特定事項を備えている。してみると、引用発明の「多重量子井戸活性層」の面積は、高電流密度となる面積であるから、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。 (イ)本願の一実施形態の図面である図6、図7、特定の実施形態である図8を参酌すると、LEDチップの面積(ダイシングピッチ)に対する活性領域の面積の比を大きくすることの意味は必ずしも明確ではないが、n型領域上に活性領域とn型接点を配置する際に、無駄な面積が生じないように配置し、LEDチップの面積(ダイシングピッチ)に対する活性領域の面積の比を大きくすることは、当業者が適宜なし得る設計事項と認められる。 また、仮に、上記相違点が、n型接点を基板の裏面(n型領域を形成する面と反対側の面)に形成することを意味するものとしても、n型電極を基板の裏面に形成する素子構造は周知(例えば、当審拒絶理由で引用した特開2007-134507号公報の図1等参照。)であるから、前記周知の素子構造を採用して上記相違点3に係る本願発明の特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 ウ 以上のとおり、本願発明の「活性領域面積で特徴付けられる」との特定事項が有する技術的意味を何れの意味に解したとしても、上記相違点3は、実質的な相違点ではないか、あるいは、当業者が容易に想到し得たことと認められる (4)作用効果について 本願発明が奏する作用効果は、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。 (5)小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-006370

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