特許異議申立
2019-700714
概日のフレンドリーなLED光源
- 審判番号
- 2019-700714
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-174472
- 登録番号
- 6480126
- 請求日
- 2019年09月06日
- 審決日
- 2022年03月30日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ソラア インコーポレーテッド
- 【権利者代理人】舛谷 威志
- 【権利者代理人】中尾 洋之
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 島田 信一
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 審判官 出口 昌哉
- 分類
- P1651.113-YAA(F21S) / P1651.121-YAA(F21S) / P1651.536-YAA(F21S) / P1651.537-YAA(F21S)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6480126号発明「概日のフレンドリーなLED光源」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6480126号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕、〔15-21〕、〔22-23〕、〔24-26〕について訂正することを認める。
特許第6480126号の請求項1ないし11、14、24ないし26に係る特許を維持する。
特許第6480126号の請求項12、13、15ないし23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6480126号の請求項1~26に係る特許についての出願は、平成26年8月28日(パリ条約による優先権主張 2013年8月29日(US)米国 2014年6月26日(US)米国)に出願され、平成31年2月15日に特許の設定登録がされ、同年3月6日に特許掲載公報が発行された。その後、令和1年9月6日に特許異議申立人山崎浩一郎(以下「申立人」という。なお、「崎」の右上は「立」。)により特許異議の申立てがされ、同年11月27日付けで取消理由の通知がされ、令和2年3月2日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年4月6日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月10日に申立人から意見書が提出され、同年9月10日付けで訂正拒絶理由が通知されたが、その指定期間内に特許権者から意見書等の提出はなく、令和3年1月28日付けで取消理由(決定の予告)の通知がされ、同年5月1日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年6月17日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月11日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
令和3年5月1日にされた訂正請求の趣旨は、本件特許第6480126号の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりに訂正をすることを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。なお、訂正特許請求の範囲及び訂正請求書には、一部訂正箇所に対して下線が付与されていない箇所があったので、当審で付与した。)。
なお、令和2年3月2日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され」を「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路と」へ訂正し、
「Fv1はFv2より高く」を追加し、
「Fc1/Fv1は0.5よりも低い」を追加して、
特許請求の範囲の請求項1の
「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源と、
第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源と、
を含み、
前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され、
前記第1の複合発光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し、
Fv1は少なくとも0.05であり、
Fc2は少なくとも0.1であり、
Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低い、
光源。」
という記載を、
「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源と、
第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源と、
前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路と、
を含み、
前記第1の複合発光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し、
Fv1は少なくとも0.05であり、
Fv1はFv2より高く、
Fc2は少なくとも0.1であり、
Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低く、
Fc1/Fv1は0.5よりも低い、
光源。」
へと訂正する(請求項1を引用する請求項2~11及び14についても同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、概日刺激の定義式を追加して、
特許請求の範囲の請求項2の
「前記第1の複合発光は、第1の概日刺激によって特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2の概日刺激によって特徴付けられ、
前記第2の概日刺激は、前記第1の概日刺激の少なくとも2倍である、
請求項1の光源。」
という記載を、
「前記第1の複合発光は、第1の概日刺激によって特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2の概日刺激によって特徴付けられ、
前記第2の概日刺激は、前記第1の概日刺激の少なくとも2倍であり、概日刺激が下記式により定義される、
【数1】
[図:0001387451000001.jpg]
式中、c(λ)は概日刺激スペクトルであり、SPD(λ)は概日刺激スペクトル出力分布である、
請求項1の光源。」
へと訂正する(請求項1を引用する請求項2~11及び14についても同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4において、「前記第1の発光および前記第2の発光は、第3の複合発光を提供するように構成され」を「前記ドライバ回路は、前記複合の第3の状態である第3の複合発光を提供し」へと訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5において、「波長下方変換材料」を「波長を長くするための波長変換材料」へと訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6において、「LEDからの」を「前記第2のLED発光源からの」へと訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7において、「誘導する」を「有する」へと訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8において、「誘導する」を「有する」へと訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9において、「混合された物理的配置において構成される」を削除し、「第1の一連に配置されたLEDを備え、・・・第2のLED発光源は第2の一連に配置されたLEDを備え、前記第1の一連に配置されたLEDは、前記第2の一連に配置されたLEDの一部を含む」へと訂正して、
特許請求の範囲の請求項9の
「前記少なくとも1つの第1のLED発光源および前記少なくとも1つの第2のLED発光源は、混合された物理的配置において構成される、請求項1の光源。」
という記載を、
「前記少なくとも1つの第1のLED発光源は第1の一連に配置されたLEDを備え、および前記少なくとも1つの第2のLED発光源は第2の一連に配置されたLEDを備え、前記第1の一連に配置されたLEDは、前記第2の一連に配置されたLEDの一部を含む、請求項1の光源。」
に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10において、「CIE色度図における」を「CIE色度図において」と表現を改めて、記載箇所を変更して、
特許請求の範囲の請求項10の
「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、色度がプランク軌跡の±0.005によって境界付けられ、かつCIE色度図における最小色相シフト曲線の±0.005によって境界付けられる色度によって特徴付けられる、請求項1の光源。」
という記載を、
「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、CIE色度図において、プランク軌跡の±0.005によって境界付けられ、かつ最小色相シフト曲線の±0.005によって境界付けられる、色度によって特徴付けられる、請求項1の光源。」
に訂正する。
(10)訂正事項10、11
それぞれ、特許請求の範囲の請求項12、13を削除する。
(11)訂正事項12~18
それぞれ、特許請求の範囲の請求項15~21を削除する。
(12)訂正事項19、20
それぞれ、特許請求の範囲の請求項22、23を削除する。
(13)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項24において、「一次電子放出」を「一次放出」へと訂正し、また、「照明システム」が第1及び第2のSPDを放出する旨を明記し、「第1の出力レベルから第2の出力レベルへと」及び「前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」を追加して、
特許請求の範囲の請求項24の
「一次SPDによって特徴付けられた一次電子放出を放射するように構成されたLEDデバイスと、
前記一次電子放出へ光学的に結合された少なくとも1つの蛍光体であって、青色-シアン波長領域内における可飽和吸収によって特徴付けられる少なくとも1つの蛍光体と、を含み、
前記LEDデバイスは、前記一次電子放出を調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低い、
照明システム。」
という記載を、
「一次SPDによって特徴付けられた一次放出を放射するように構成されたLEDデバイスと、
前記一次放出へ光学的に結合された少なくとも1つの蛍光体であって、青色-シアン波長領域内における可飽和吸収によって特徴付けられる少なくとも1つの蛍光体と、を含む照明システムであって、
前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、
前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない、
照明システム。」
に訂正する(請求項24を引用する請求項25、26についても同様に訂正する。)。
(14)訂正事項22
願書に添付された明細書の段落【0011】、【0012】、【0064】、【0176】、【0178】~【0181】及び【0221】~【0223】に記載された「一次電子放出」を「一次放出」へと訂正する。
(15)訂正事項23
願書に添付された明細書の段落【0011】及び【0221】に記載された「二次電子放出」を「二次放出」へと訂正する。
本件訂正請求のうち、訂正事項1~11は、一群の請求項〔1~14〕に対して、訂正事項12~18は、一群の請求項〔15~21〕に対して、訂正事項19、20は、一群の請求項〔22~23〕に対して、訂正事項21は、一群の請求項〔24~26〕に対して、それぞれ請求されたものである。また、明細書に係る訂正事項20、21は、一群の請求項〔24~26〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1のうち、「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路と、」という事項は、訂正前の「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され、」との記載において、「第1の発光」、「第2の発光」、「第1のLED発光源」、「第2のLED発光源」、「第1の複合発光」、「第2の複合発光」の関係が明確でなかったのを、願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。また、願書に添付された図面を「本件図面」という。)の段落【0085】の「これら2つの源を概日周期全体にわたって混合して、概日のフレンドリーなLED白色光源を形成することができる。このような光ストリップは、例えば、線形反射板照明器具のための光エンジンとして用いることができる。」(下線は当審で付与。以下同じ。)、同【0104】の「図4Hは、いくつかの実施形態により、異なる2組のLEDベースのエミッタと、クロック/タイマーと、制御回路4H01と、異なる2組のLEDベースのエミッタの発光比を制御して、概日のフレンドリーなLED白色光源を実行するドライバとを含む光ストリップを示す。」との記載に基いて、それら発光の関係を明確とし、かつ、その制御がドライバ回路により提供されることを限定するものであるので、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項1のうち「Fv1はFv2より高く、」という事項は、訂正前の請求項1において、Fv1とFv2の大小関係の特定がなかったのを、本件図面の【図4D】の右側の表、及び当該表を説明する本件明細書の段落【0088】の「5000Kから3300Kへの調整の場合、VB範囲中の合計SPD出力の割合が若干(0.19から0.23へ)増加する」との記載に基いて、Fv1とFv2の大小関係を限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項1のうち「Fc1/Fv1は0.5よりも低い、」という事項は、訂正前の請求項1において、Fc/Fvの範囲の特定がなかったのを、本件明細書の段落【0098】の「Fc/Fvは、0.1未満であり、0.2未満であり、0.3未満であり、0.4未満であり、0.5未満であり」との記載に基いて、Fc/Fvの範囲を限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2において、「概日刺激」の定義が特定されていなかったのを、本件明細書の段落【0059】の「スペクトル出力分布SPDを用いた光源のためのipRGCsを介した概日刺激(CS)は、波長λの関数として、以下のようにモデル化することができる。
【数1】
[図:0001387451000002.jpg]
式中、c(λ)は概日刺激スペクトルである。」との記載に基いて、概日刺激の定義を明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4において、「第1の発光」、「第2の発光」及び「第3の複合発光」の関係が明確でなかったのを、訂正事項1と同様の記載ぶりとして、それら発光の関係を明確とし、かつ、その制御がドライバ回路により提供されることを限定するものであるので、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5において、「波長下方変換材料」の「下方」とは、どのような意味であるのか明確でなかったのを、本件明細書の段落【0160】の「例えば、青色光を吸収し、緑色または赤色光への下方変換を行う蛍光体を設けることができる」との記載に基づき、「波長を長くする」と明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項6において、「LED」がどのようなものであるのか明確でなかったのを、訂正後の請求項1の記載に基づき、「第2のLED発光源」と明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項7において、「誘導する」がどのようなことであるのか明確でなかったのを、「有する」と明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、表現を適切なものに改めたにすぎないことから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項8において、「誘導する」がどのようなことであるのか明確でなかったのを、「有する」と明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、表現を適切なものに改めたにすぎないことから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項9において、「混合された物理的配置において構成される」ということがどのようなことであるのか明確でなかったのを、本件図面の【図8】(特に配線とLEDの関係を参照。)及びそれを説明する本件明細書の段落【0144】の「図8は、LEDランプにおいて用いられるような2チャネルの概日のフレンドリーな配置800を形成する、混合された物理的配置802における2つのLEDストリングを示す。図示のように、制御回路は、任意の当該分野において公知の技術を用いて、図示のLED群(例えば、群1LED706、群2LED708)のうちのいずれかへ流れる電流を個々に調節することができる。」との記載に基づき、「第1の一連に配置されたLED」と「第2の一連に配置されたLED」を備え、「第1の一連に配置されたLED」は、「第2の一連に配置されたLEDの一部を含む」と明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項10において、「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、色度がプランク軌跡の±0.005によって境界付けられ、かつCIE色度図における最小色相シフト曲線の±0.005によって境界付けられる色度によって特徴付けられる」ということがどのようなことであるのか明確でなかったのを、「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、CIE色度図において、プランク軌跡の±0.005によって境界付けられ、かつ最小色相シフト曲線の±0.005によって境界付けられる、色度によって特徴付けられる」と明確にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、CIE色度図の記載順を入れ替えて文意を明確にしたにすぎないものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(10)訂正事項10、11について
訂正事項10、11は、訂正前の請求項12、13を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(11)訂正事項12~18について
訂正事項12~18は、訂正前の請求項15~21を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(12)訂正事項19、20について
訂正事項17、18は、訂正前の請求項22、23を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(13)訂正事項21について
訂正事項21のうち訂正前の請求項24における「一次電子放出」を「一次放出」とする訂正は、「一次電子放出」がどのようなことであるのか明確でなかったのを、本件特許の外国語書面の「primary emission」という記載に基づき、正しい訳にするものであって、誤訳の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項21のうち訂正前の請求項24における「調光」がどのようなことであるのか明確でなかったのを、段落【0168】の「低駆動電流においては、可飽和蛍光体は飽和せず、その吸収範囲内の光(例えば、青色-シアン光)のほとんどを吸収するため、結果スペクトル1401が発生する。より高い駆動電流において、蛍光体吸収は部分的に飽和し、青色-シアン光の一部が透過され、結果スペクトル1402が発生する。さらに高い駆動電流において、蛍光体吸収は完全に飽和し、概日蛍光体からの摂動をほとんど伴わずに白色LED1403の元のスペクトルが放射される。」との記載に基づき、「第1の出力レベルから第2の出力レベルへと」調光すること明確にし、「蛍光体」について訂正前はどのようなことであるのか明確でなかったのを、「前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない、」と明確にし、かつ、特許請求の範囲を限定し、及び、「含む照明システムであって」、「前記照明システムは、」を付加することは、文章構成を整理して明確とするものであって、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(14)訂正事項22、23について
訂正事項22、23は、訂正前の明細書の段落【0011】、【0012】、【0064】、【0176】、【0178】~【0181】及び【0221】~【0223】における「一次電子放出」、「二次電子放出」がどのようなことであるのか明確でなかったのを、本件特許の外国語書面の「primary emission」、「secondary emission」という記載に基づき、「一次放出」、「二次放出」と正しい訳にするものであって、誤訳の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 申立人の主張について
申立人は、令和3年8月11日付けの意見書の11頁の「<請求項24>について」において、「本請求項では、誤訳の訂正を目的として。一次電子放出を一次放出に訂正していますが、一次放出に訂正することにより放出される対象が電子以外も含むことになったので実質的に特許請求の範囲が拡張又は変更されていると思量致します。」と主張する。
本件特許に係る出願は、特許法第36条の2に規定される外国語書面出願であるところ、訂正前の「一次電子放出」に対応する本件の外国語書面の用語は「primary emission」であり、本来「一次放出」と訳されるべき誤訳であったことは明らかであるので、上記2(13)のとおり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、上記主張は採用できない。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1~23に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮、同第2号の誤記又は誤訳の訂正、同第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~26のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕、〔15~21〕、〔22~23〕、〔24~26〕について訂正することを認め、明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の段落【0011】、【0012】、【0064】、【0176】、【0178】~【0181】、【0221】~【0223】のとおり訂正することを認める。
第3 本件訂正後の各請求項に係る発明について
上記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~11、14、24~26に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~11、14、24~26ということもある。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源と、
第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源と、
前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路と、
を含み、
前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され、
前記第1の複合発光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し、
Fv1は少なくとも0.05であり、
Fv1はFv2より高く、
Fc2は少なくとも0.1であり、
Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低く、
Fc1/Fv1は0.5よりも低い、
光源。
【請求項2】
前記第1の複合発光は、第1の概日刺激によって特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2の概日刺激によって特徴付けられ、
前記第2の概日刺激は、前記第1の概日刺激の少なくとも2倍であり、概日刺激が下記式により定義される、
【数1】
[図:0001387451000003.jpg]
式中、c(λ)は概日刺激スペクトルであり、SPD(λ)は概日刺激スペクトル出力分布である、
請求項1の光源。
【請求項3】
前記第1のLED発光源は、範囲405nm~430nmにおけるピーク発光によって特徴付けられる少なくとも1つのLEDを含む、請求項1の光源。
【請求項4】
前記ドライバ回路は、前記複合の第3の状態である第3の複合発光を提供し、
前記第3の複合発光は、第3のSPD、割合Fv3、割合Fc3および第3の概日刺激によって特徴付けられ、
Fv3は、400nm~440nmの波長範囲における前記第3のSPDの出力の割合を示し、
Fc3は、440nm~500nmの波長範囲における前記第3のSPDの出力の割合を示し、
前記第3のSPDは、80を超える演色評価数を有し、
前記第1の概日刺激と前記第3の概日刺激は異なる、
請求項2の光源。
【請求項5】
前記第2の発光は、波長を長くするための波長変換材料からの青色発光を含む、請求項1の光源。
【請求項6】
前記第2の発光は、前記第2のLED発光源からの直接の青色発光を含む、請求項1の光源。
【請求項7】
前記複合発光のうち1つは、D65基準光源の概日刺激に類似する概日刺激を有する、請求項1の光源。
【請求項8】
前記複合発光のうち1つは、CIE A基準光源の概日刺激を下回る概日刺激を有する、請求項1の光源。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1のLED発光源および前記少なくとも1つの第2のLED発光源は、混合された物理的配置において構成される、請求項1の光源。
【請求項10】
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、色度がプランク軌跡の±0.005によって境界付けられ、かつCIE色度図における最小色相シフト曲線の±0.005によって境界付けられる色度によって特徴付けられる、請求項1の光源。
【請求項11】
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、色度がプランク軌跡の+/-5個のDu’v’点内の色度によって特徴付けられる、請求項1の光源。
【請求項14】
Fc1は最大で0.06である、請求項1の光源。
【請求項24】
一次SPDによって特徴付けられた一次放出を放射するように構成されたLEDデバイスと、
前記一次放出へ光学的に結合された少なくとも1つの蛍光体であって、青色-シアン波長領域内における可飽和吸収によって特徴付けられる少なくとも1つの蛍光体と、を含む照明システムであって、
前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、
前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない、
照明システム。
【請求項25】
前記第2のCCTは、前記第1のCCTよりも少なくとも500K低い、請求項24の照明システム。
【請求項26】
前記一次SPDの少なくとも5%は、400nm~435nmの波長範囲内にある、請求項24の照明システム。」
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1~14、24~26に係る特許に対して、令和3年1月28日付けで当審が通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)令和2年3月2日付けの訂正請求書による訂正について
特許請求の範囲を、令和2年3月2日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~14のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認めない。
また、同訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項15~26のとおり、訂正後の請求項〔15~21〕、〔22~23〕、〔24~26〕について訂正することを認め、明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の段落【0011】、【0012】、【0064】、【0176】、【0178】~【0181】、【0221】~【0223】のとおり訂正することを認める。
(2)取消理由について
以下の理由1~4により、請求項1~14、24~26に係る特許は取り消されるべきものである。
理由1.(サポート要件)本件の特許請求の範囲の下記の請求項の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、下記の請求項に係る特許は、同法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
理由2.(明確性)本件の特許請求の範囲の記載の下記の請求項の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、下記の請求項に係る特許は、同法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
理由3.(実施可能要件)本件の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、下記の請求項に係る特許は、同法第36条第4項の規定に違反してされたものである。
理由4.(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記(刊行物については刊行物一覧参照)
理由1.サポート要件
・請求項1~14
理由2.明確性
・請求項1~14
理由3.実施可能要件
・請求項1~14
理由4.進歩性
・請求項1~14、24~26
刊行物1
<刊行物一覧>
1.特表2009-532856号公報(申立人が提出した甲第1号証)
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)で指摘した取消理由について
1-1 理由1(サポート要件)について
請求項1に係る発明が解決しようとする課題は、本件訂正により訂正された特許明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0008】に記載の「・・・高概日刺激光から低概日刺激光までの範囲内において周期に合わせて調整することが可能な白色光源」を提供することと理解できる。
ここで、訂正前の請求項1には、Fv1とFv2との関係の特定がなかったが、訂正後の請求項1には、「Fv1はFv2より高く」との事項が特定され、「Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低く」との事項と併せて、Fvが増すとFcが減じる関係が明らかとなった。
また、訂正前の請求項1には、Fc1とFv1との関係の特定がなかったが、訂正後の請求項1には「Fc1/Fv1は0.5よりも低い」との事項が特定され、上記のFv1、Fv2との関係、及び、「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し」との事項と併せて、Fc1、Fv2、Fv2、Fc2の範囲が限定されることとなった。
そうすると、訂正後の請求項1の記載は、課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものとはいえない。
請求項1を引用する請求項2~11、14についても同様である。
したがって、請求項1~11、14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
1-2 理由2(明確性)について
(1)訂正前の請求項1において「第1の発光」、「第2の発光」、「第1のLED発光源」、「第2のLED発光源」、「第1の複合発光」、「第2の複合発光」の関係が明確でなく、また、「第1の複合発光」、「第2の複合発光」がどのように特徴付けられているのか明確でなかったこと、訂正前の請求項2、4、7、8において、「概日刺激」が明確でなかったこと、訂正前の請求項4において、「第1の発光」、「第2の発光」及び「第3の複合発光」の関係が明確でなかったこと、訂正前の請求項5において、「波長下方変換材料」の「下方」とは、どのような意味であるのか明確でなかったこと、訂正前の請求項6において、「LED」がどのようなものであるのか明確でなかったこと、訂正前の請求項7、8において、「誘導する」がどのようなことであるのか明確でなかったこと、訂正前の請求項9において、「混合された物理的配置において構成される」ということがどのようなことであるのか明確でなかったこと、訂正前の請求項10において、「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDはそれぞれ、色度がプランク軌跡の±0.005によって境界付けられ、かつCIE色度図における最小色相シフト曲線の±0.005によって境界付けられる色度によって特徴付けられる」ということがどのようなことであるのか明確でなかったこと、訂正前の請求項24の「一次電子放出」がどのようなものであるのか明確でなかったことについては、上記「第2 2(1)~(9)、(13)」のとおり明確となった。また、訂正前の請求項11の「色度がプランク軌跡の+/-5個のDu’v’点内の色度によって特徴付けられる」という記載については、本件図面の【図5B】を参照すれば、その意味は明確である。
したがって、請求項1~11、14の記載は明確である。
(2)訂正前の請求項12、13の「20%の前記被験者の血液メラトニン濃度の抑制」との記載が明確でないことについては、請求項12、13が削除されたことにより解消した。
1-3 理由3(実施可能要件)について
上記1-1と同様の理由により、発明の詳細な説明は、訂正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~11、14に係る発明が、上記発明の課題を解決することができると、当業者が理解できる程度に記載されているといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1~11、14に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
1-4 理由4(進歩性)について
1-4-1 本件発明1について
(1)刊行物1
(1-1)記載事項
本件特許出願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物1には、発光素子及びそれを有する照明システムに関して、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付与。)
・「【請求項1】
6000K以上の高い色温度の昼光色を発する第1の発光部と、
3000K以下の色温度の温白色を発する第2の発光部と、を備え、
前記第1の発光部及び前記第2の発光部は発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含み、前記第1の発光部及び前記第2の発光部は独立して駆動されることを特徴とする発光素子。」
・「【請求項21】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの上に配置される複数の発光素子と、を備え、
前記発光素子のそれぞれは、
6000K以上の高い色温度の昼白色を発する第1の発光部と、
3000K以下の低い色温度の温白色を発する第2の発光部と、を備え、
前記第1の発光部及び前記第2の発光部のそれぞれは発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含み、前記第1の発光部及び前記第2の発光部は独立して駆動されることを特徴とする照明システム。」
・「【0005】
光は波長または色温度に応じて種々の感じを与え、人間の生理的リズムに大きく影響する。生理的リズムが正常に適応しない場合に消化機能の障害、慢性疲労など多くの疾病を引き起こすことがある。このため、24時間周期リズムを考慮した照明装置についての研究が進められているのである。・・・ 」
・「【0008】
本発明の他の目的は、人間の生理的リズムによって光のスペクトルまたは色温度を調節する同様の能力を有する発光素子及び照明システムを提供することにある。」
・「【0063】
図1を参照すると、発光素子は、色温度が6000K以上の白色光を発する第1の発光部と、色温度が3000K以下の白色光を発する第2の発光部とを備え、前記第1の発光部と第2の発光部は互いに独立して駆動可能であることを特徴とする。この種の発光素子は、一つのパッケージ(A)における複数の発光部が独自の電気接続を取ることが可能であることから、前記第1の発光部と第2の発光部は独立して駆動することができる。例えば、第1の発光部のみが電源を投入された場合、色温度が6000K以上の白色光(昼光色)を実現することができ、第2の発光部のみが電源を投入された場合、色温度が3000K以下の白色光(温白色)を実現することができる。更に、第1の発光部と第2の発光部が同時に電源を投入された場合、第1の発光部の白色光と第2の発光部の白色光との混合により色温度が3000~6000Kの範囲を有する白色光を実現することができる。このため、発光素子は、第1の発光部と第2の発光部を選択的に駆動させることにより、高演色指数、可変スペクトル及び色温度を有しする白色光を実現することができる。本発明に係る発光素子は、可変スペクトル及び色温度を有する白色光を実現することができることから、一つのパッケージ(A)によって所望の雰囲気及び用途に様々に適用することができるという利点がある。例えば、昼間には、6000K以上の色温度(昼白色)を有する白色光を発する第1の発光部を駆動することで、人間の脳の活動性と集中力を高めることができ、夜間には、3000K以下の色温度(温白色)を有する白色光を発する第2の発光部を駆動して人々がより安らかで心地よい休息を取る手助けとなる。特に、人間の24時間周期機能によって光の波長または色温度を適切に調節することにより、健康を増進させることができるという効果がある。」
・「【0089】
[実施例3]
・・・
【0091】
図11は、第1の発光部の発光スペクトルを示し、図12は、第2の発光部の発光スペクトルを示す。図11及び図12に示すように、第1の発光部の色温度は相対的に高く、第2の発光部の色温度は相対的に低い。
【0092】
本実施形態の第1の発光部は、演色評価数88という優れた評価数の8800Kの色温度を有する。更に、第2の発光部は、演色評価数95という優れた評価数の2600Kの色温度を有する。
【0093】
第1の発光部と第2の発光部を選択的に駆動することにより、優れた演色評価数、種々の光スペクトル及び色温度を有する白色光を実現することができる。例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する。」
・【図11】は次のとおりである。
【図11】
[図:0001387451000004.jpg]
・【図12】は次のとおりである。
【図12】
[図:0001387451000005.jpg]
」
(1-2)認定事項
第1、第2の発光部は、段落【0091】の「図11は、第1の発光部の発光スペクトルを示し、図12は、第2の発光部の発光スペクトルを示す。図11及び図12に示すように、第1の発光部の色温度は相対的に高く、第2の発光部の色温度は相対的に低い。」ものであり、【図11】及び【図12】より、第1、2の発光部は、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有するものであるので、
「第1の発光部は、図11の発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル分出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
第2の発光部は、図12の発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し」ていることが認定できる。
(1-3)引用発明1
上記(1-1)、(1-2)より、刊行物1には、特に実施例3に係る以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「昼間には、6000K以上の色温度(昼白色)を有する白色光を発する第1の発光部を駆動することで、人間の脳の活動性と集中力を高めることができ、夜間には、3000K以下の色温度(温白色)を有する白色光を発する第2の発光部を駆動して人々がより安らかで心地よい休息を取る手助けとなるものであって、
6000K以上の高い色温度の昼光色を発する第1の発光部と、
3000K以下の色温度の温白色を発する第2の発光部と、
を備え、
前記第1の発光部及び前記第2の発光部は独立して駆動されるものであり、
前記第1の発光部及び前記第2の発光部は発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含み、
第1の発光部は、図11の発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル分出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
第2の発光部は、図12の発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
第1の発光部は、演色評価数88という優れた評価数の8800Kの色温度を有し、第2の発光部は、演色評価数95という優れた評価数の2600Kの色温度を有し、
第1の発光部と第2の発光部を選択的に駆動することにより、優れた演色評価数、種々の光スペクトル及び色温度を有する白色光を実現することができ、
例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する、発光素子。
【図11】
[図:0001387451000006.jpg]
【図12】
[図:0001387451000007.jpg]
」
(2)対比
ア 引用発明1の「発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含」む「第1の発光部」及び「第2の発光部」は、本件発明1の「第1のLED発光源」及び「第2のLED発光源」に相当する。
また、引用発明1の「例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」ということにおける「8800Kの色温度を有する白色光」及び「2600Kの色温度を有する白色光」は、本件発明1の「第1の発光」及び「第2の発光」に相当する。
そして、引用発明1の「発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含」む「第1の発光部」は、「8800Kの色温度を有する白色光」の発光によって特徴付けられることは自明であるので、本件発明1の「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源」に相当し、引用発明1の「発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含」む「第2の発光部」も同様に、本件発明1の「第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源」に相当する。
また、引用発明1の「発光素子」は、本件発明1の「光源」に相当する。
イ 引用発明1の「例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」ということにおける「8800Kの色温度を有する白色光」と「2600Kの色温度を有する白色光」と、本件発明1の「第1の複合発光」及び「第2の複合発光」とは、「第1の光」及び「第2の光」である点で共通するといえる。
そうすると、引用発明1の「第1の発光部」と「第2の発光部」を備えた、「例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」「発光素子」と、本件発明1の「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され」る「光源」とは、「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の光および第2の光を提供するように構成され」る「光源」である点で共通する。
そして、引用発明1の「8800Kの色温度を有する白色光」の、「所定の発光スペクトル出力分布」は、本件発明1の「第1のSPD」に相当(ただし、「第1の光」が「第1の複合発光」である点は除く)し、以下同様に「400nm~440nmの波長範囲」においての「発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fv1」に、「440nm~500nmの波長範囲」においての「所定の発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fc1」に相当する。
また、引用発明1の「2600Kの色温度を有する白色光」の、「所定の発光スペクトル出力分布」は、本件発明1の「第2のSPD」に相当(ただし、「第2の光」が「第2の複合発光」である点は除く)し、以下同様に「400nm~440nmの波長範囲」においての「発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fv2」に、「440nm~500nmの波長範囲」においての「所定の発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fc2」に相当する
そうすると、引用発明1の
「第1の発光部は、図11の発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル分出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
第2の発光部は、図12の発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し」、
「例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」構成と、本件発明1の
「前記第1の複合発光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し」た構成とは、
「前記第1の光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し」た点で共通する。
ウ 上記イを踏まえると、引用発明1の「第1の発光部は、演色評価数88という優れた評価数の8800Kの色温度を有し、第2の発光部は、演色評価数95という優れた評価数の2600Kの色温度を有し」ていることは、本件発明1の「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し」ていることに相当する。
エ 発光ダイオードチップを用いた発光部をドライバ回路で駆動することは、技術常識であるから、引用発明1もドライバ回路を実質的に有していることは自明のことである。
そうすると、上記イの第1、2の複合発光の相当関係も踏まえると、引用発明1の「前記第1の発光部及び前記第2の発光部は独立して駆動されるものであ」ることと、本件発明1の「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路」とは、「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源から、第1の光と第2の光を、提供するドライバ回路」である点で共通する。
オ したがって、本件発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源と、
第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源と、
を含み、
前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源から、第1の光と第2の光を、提供するドライバ回路と、
前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の光および第2の光を提供するように構成され、
前記第1の光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有した光源。」
〔相違点1〕
第1の光、第2の光、ドライバ回路について、本件発明1は、「第1の複合発光」、「第2の複合発光」であり、ドライバ回路は、第1のLED発光源と第2のLED発光源「との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光」を提供するものであるのに対し、引用発明1は、第1の光及び第2の光やドライバ回路において、複合発光の特定がなく、第1の光及び第2の光の発光スペクトルは、Fv1、Fv2、Fc1、Fc2の個々の値や大小関係や割合の特定もない点。
(3)判断
上記相違点1について検討する。
ア 刊行物1の段落【0063】に、【図1】に係る実施形態の説明として「例えば、第1の発光部のみが電源を投入された場合、色温度が6000K以上の白色光(昼光色)を実現することができ、第2の発光部のみが電源を投入された場合、色温度が3000K以下の白色光(温白色)を実現することができる。更に、第1の発光部と第2の発光部が同時に電源を投入された場合、第1の発光部の白色光と第2の発光部の白色光との混合により色温度が3000~6000Kの範囲を有する白色光を実現することができる。」との記載があり、第1の発光部と第2の発光部のいずれか一方のみを発光させることに加えて、両方の発光部を発光させて、その白色光を混合させることにより、中間領域の色温度とすることが示唆されている。
そうすると、上記示唆に基づき、引用発明1においても、「例えば」との記載により例示される「第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」ことに加え、第1発光部と第2発光部の両方を駆動させて2600Kと8800Kとの間の中間領域においても白色光を表現するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、少なくとも、第1発光部と第2発光部の両方を駆動させる発光は、それぞれの発光を複合するといえるものであるから、本件発明1の「複合発光」に相当するといえる。
イ ここで、本件図面の【図4D】や【図4F】の右の表の一番上の「比 2nd:1ST」の欄に、「0%」、「50%」、「100%」と記載されており、「第1のLED発光源」あるいは「第2のLED発光源」のみを点灯する場合も含まれていることから、本件発明1における「複合発光」とは、両方のLED発光源を点灯させる状態に限らず、いずれか一方のLED発光源のみを点灯させる状態も含んでいるものと認められる。
そうすると、引用発明1の「第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」ことにおいて、「8800Kの色温度を有する白色光を表現」する状態も「2600Kの色温度を有する白色光を表現する」状態も複合発光を行っているといえるものである。
ウ しかしながら、上記ア、イのとおりであっても、引用発明1は、400nm~440nmの波長範囲における出力Fvと、440nm~500nmの波長範囲における出力Fcとの割合に着目して、Fv1、Fv2、Fc1、Fc2の個々の値や大小関係や割合を規定するものではなく、そのような引用発明1において、本件発明1の「Fv1は少なくとも0.05であり、Fv1はFv2より高く、Fc2は少なくとも0.1であり、Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低く、Fc1/Fv1は0.5よりも低い」という具体的な相関関係まで想起することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
エ したがって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
1-4-2 本件発明2~11、14について
本件発明2~11、14は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2~11、14において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記1-4-1と同様の理由により、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
1-4-3 小括
以上検討したとおりであるから、本件発明1~11、14は、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないものではない。
2 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由について
2-1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、同法第29条第2項(進歩性)について
申立人は、
(1)本件発明1~6、8~11は、甲第1号証(上記刊行物1)を主たる証拠として新規性を有さない旨、及び、本件発明7は、甲第1号証を主たる証拠とし、甲第2号証(特開2009-238729号公報)を従たる証拠としてとして、進歩性を有さない旨、
(2)本件発明1~11、14は、甲第2号証を主たる証拠として新規性、進歩性を有さない旨、
(3)本件発明1~11、14は、甲第3号証(特開2011-176300号公報)を主たる証拠として新規性、進歩性を有さない旨、
(4)本件発明24~26は、甲第1~3号証それぞれを主たる証拠として進歩性を有さない旨、
の主張をするので、以下検討する。
なお、甲第4号証(特開2006-119295号公報)は、訂正前の請求項15~21に係る発明に対して提出された証拠であるが、当該請求項は、本件訂正により削除された。
2-1-1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証について
上記「1 1-4 1-4-1(1)」で述べたとおりである。
(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
本件特許出願の優先日前に日本国内で頒布された甲第2号証には以下の記載がある。
・「【請求項1】
半導体発光素子、及び蛍光体を備え、該半導体発光素子からの発光及び該発光で励起し蛍光する該蛍光体からの発光により、もしくは該半導体発光素子からの発光で励起し蛍光する該蛍光体からの発光により、外部に対して光を出射する半導体発光装置を、発光色が異なる複数種、集積配置した発光部を有する照明装置であって、
前記各半導体発光装置の発光色は、UCS(u、v)表色系(CIE1960)のuv色度図において、黒体輻射軌跡からの偏差duvが、-0.02≦duv≦0.02の範囲内に収まり、複数種の半導体発光装置が集積配置された発光部からのそれぞれの出力光が混合して外部に出射される、
照明装置。」
・・・
「【請求項4】
前記複数種の半導体発光装置への供給電力をそれぞれ制御することで、前記発光部からの出力光の発光色を制御する発光強度制御部を備える、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の照明装置。」
・「【0187】
[2-2]固体発光装置の組み合せ
本発明の照明装置は、固体発光装置を複数備える。複数の固体発光装置は、発光色の異なる2種以上の光(一次光)を発する。これら発光色の異なる2種以上の一次光を混色することによって、合成光とすることができる。
【0188】
固体発光装置が発する一次光の発光色は、適宜設定し組み合わせることができるが、発光色ごとに相関色温度が異なっていることが好ましい。これにより、昼光色~昼白色~白色~温白色~電球色などの照明光源、CIE標準光源(A、B、CおよびD65)、太陽光(自然光)スペクトルなど、近紫外光から近赤外光まで広範囲のスペクトルを有するターゲットカラーが再現可能となる。
【0189】
固体発光装置が発する一次光の相関色温度は、好ましくは2000K以上、より好ましくは2200K以上であり、また、好ましくは50000K以下、より好ましくは10000以下である。照明装置に用いられる複数種の固体発光装置のうち、最も相関色温度が高い固体発光装置と最も相関色温度が低い固体発光装置との間での、相関色温度の範囲が広いほど、合成光の相関色温度の設定範囲を広くできる。ただし、この相関色温度の範囲を広くしすぎると、照明装置の発光部を直接見たときや物体を照明することによって生じた影を見たときに、発光色の違いが認識されやすくなるため、照明装置の用途等に応じて適切な範囲とすることが好ましい。」
・「【0288】
図26に示す照明モジュールにおいて、全光束、演色性(Ra)、色温度等のデータを取得した。当該照明モジュールの測定には、モジュール全体に大型の積分球を用いた。発光スペクトルはマルチチャンネル分光器で分光解析し、全光束、演色性(Ra)、色温度等のデータを取得した。LED光源の通電は全体で電流値を一定とし、2分割領域のそれぞれに電流を振り分けることにより、低色温度領域と高色温度領域の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整した。
【0289】
測定結果を下記表2および図27、図28に示す。代表的な色温度、3000K、4500K、6500Kの各色温度での全光束はそれぞれ、136lm、131lm、128lmと全ての色温度範囲で全光束が一定である。また、3000K、4500K、6500Kの各色温度での平均演色評価数Raはそれぞれ、94、98、97と全ての色温度範囲で演色性が高く維持されている。このように近紫外LEDとRGB蛍光体を組み合わせて構成されたLED光源を用いた上記照明モジュールにおいては、3000K~6500Kの色温度範囲で、全光束(発光効率)の変化が少なく、平均演色評価数Raも高く維持されており、照明装置として優れていることがわかった。
【表2】
[図:0001387451000008.jpg]
」
・【図26】は次のとおりである。
[図:0001387451000009.jpg]
・【図27】は次のとおりである。
[図:0001387451000010.jpg]
イ 認定事項
・段落【0288】及び【図26】より、「低色温度領域」は3000Kの色温度であり、「高色温度領域」は6500Kの色温度であることが認定できる。
・【表2】から、平均演色評価数Raは、3000Kにおいて94、6500Kにおいて98であることが認定できる。
・【図27】の3000K、6500Kのグラフをみると、低色温度領域、高色温度領域は、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有するものであるので、
「低色温度領域は、図27の3000Kの発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
高色温度領域は、図27の6500K発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し」ていることが認定できる。
ウ 引用発明2
上記ア、イより、甲第2号証には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。
「複数種の半導体発光装置が集積配置された発光部からのそれぞれの出力光が混合して外部に出射され、低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整するLED光源を用いた照明モジュールであって、
低色温度領域は、図27の3000Kの発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
高色温度領域は、図27の6500K発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
平均演色評価数Raは、3000Kにおいて94、6500Kにおいて98である、照明モジュール。
【図27】
[図:0001387451000011.jpg]
」
(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証の記載事項
本件特許出願の優先日前に日本国内で頒布された甲第3号証には以下の記載がある。
・「【0032】
図1Aに示す分割領域部12A、12Bには、LEDチップ3A、3Bがそれぞれ4個ずつ設けられている。このLEDチップ3A、3B(これらのLEDチップを包括的に参照する場合はLEDチップ3と称する。)は、対となる配線20A、20B(包括的に配線20と称する場合もある。)にそれぞれ接続され、電力供給を受けることで発光を行う。なお、各分割領域部での配線20へのLEDチップ3の接続は、図1Bに示すように、配線20Aの上に4個のLEDチップ3Aが実装され、配線20Bの上に4個のLEDチップ3Bが実装される。そして、各分割領域における4個のLEDチップ3は、対応する配線に対して順方向に並列接続されている。」
・「【0051】
このように、白色LED8(半導体発光装置)は、白色光Aを発する分割領域部12A、すなわち、発光ダイオードを含む第1の白色光源と、白色光Bを発する分割領域部12B、すなわち、発光ダイオードを含む第2の白色光源であって、第1の白色光源から発せられる白色光とスペクトルの異なる白色光を発する第2の白色光源とを備え、第1及び第2の白色光源からの白色光が合成された合成白色光を発するものである。そして、白色LED8は、第1及び第2の白色光源に対する駆動電力が供給される時間(駆動電圧の印加時間,駆動電流の通電時間,或いは白色光源の発光時間)が所定比となるように制御されることで、合成白色光の色温度を変更可能とするものである。」
・「【0059】
このように、単位時間(1周期T)当たりにおけるLEDチップ3A側とLEDチップ3B側とに対する電力供給時間の比(T1/T2)を変化させる。これによって、発光モジュール30の出力光の相関色温度を2600Kから9000Kの間の任意の値に調整することができる。・・・」
・「【0097】
図20(A)は、実験用のパッケージ1を用いた実験装置を模式的に示す図であり、図20(B)は、実験に用いたパッケージ1の駆動条件を示す表である。図20(A)に示すように、作製された実験用のパッケージ1(白色光ランプ)を積分球(例えばLabsphere社製)71内に配置し、2500K側(分割領域部12A)側のLEDチップ3Aと、5900K側(分割領域部12B)側のLEDチップ3Bとの夫々に電圧/電流発生器72(72A,72B)を接続した。電圧/電流発生器72として、ADC社製の電圧/電流発生器R6243を用いた。
・・・
【0099】
各電圧/電流発生器62A及び62BによるPWM制御時のパルス周期は、100msに設定した。そして、分割領域12A(2500K)側のパルス幅を100(CW:Continuous Wave)[ms],90,80,・・・,0(電源OFF)の順番で変化させる(10msずつ印加時間を短くする)一方で、分割領域部12B(5900K)側のパルス幅を0(電源OFF),10[ms],・・・90,100(CW)の順番で変化させた(印加時間を10msずつ長くした)。そして、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),・・・,1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるときの光束を積分球(例えばLabsphere社製)71で測定した。
【0100】
図21は、今回の実験に使用したパッケージ1(白色光ランプ)の発光スペクトルの変化を示す。どのパルス幅比(Scan1~12:パルス幅条件1~12と称する)においても、640nm付近に最大ピークが表れ、470nm付近に第2のピークが現れる結果となった。もっとも、パッケージ1に適用される蛍光体の種類によってスペクトルの傾向は異なると考えられる。
・・・
【0104】
図25は、今回の実験結果をまとめた表である。今回の実験では、上述したように分割領域部12A側(LEDチップ3A)の駆動電圧Vopを3.185Vとし、分割領域部12B側(LEDチップ3B)側の駆動電圧Vopを3.23Vとした。電流値は、32~35mA程度とした。今回の実験結果では、光束の変動は約2.8%程度に収まっている。平均演色評価数(Color Rend Index: Ra)の悪化も見られなかった。」
・【図21】は次のとおりである。
【図21】
[図:0001387451000012.jpg]
・【図25】は次のとおりである。
【図25】
[図:0001387451000013.jpg]
イ 認定事項
・白色光Aと白色光Bの合成白色光を示す【図21】をみると、Scan1(分割領域部12Aのみ発光)、Scan11(分割領域部12Bのみ発光)から、分割領域部12A、分割領域部12Bは、所定の発光スペクトル分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有するものであるのが理解でき、段落【0099】、【0100】の記載と併せて、
「白色光Aと白色光Bの合成白色光は、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),7:3(Scan4),6:4(Scan5),5:5(Scan6),4:6(Scan7),3:7(Scan8),2:8(Scan9),1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるとき、図21の発光スペクトルの変化を示し、
分割領域部12Aの発光スペクトルは、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
分割領域部12Bの発光スペクトルは、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し」ているものであることが認定できる。
・【図25】、段落【0104】から、「平均演色評価数(Color Rend Index: Ra)は、Scan1において92.4、Scan11において93.4である」ことが認定できる。
ウ 引用発明3
上記ア、イより、甲第3号証には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認める。
「白色光Aを発する分割領域部12A、すなわち、発光ダイオードを含む第1の白色光源と、白色光Bを発する分割領域部12B、すなわち、発光ダイオードを含む第2の白色光源を有するパッケージ1(白色光ランプ)であって、
第1の白色光源から発せられる白色光Aとスペクトルの異なる白色光Bを発する第2の白色光源とを備え、第1及び第2の白色光源からの白色光A、Bが合成された合成白色光を発するものであり、
第1及び第2の白色光源に対する駆動電力が供給される時間(駆動電圧の印加時間,駆動電流の通電時間,或いは白色光源の発光時間)が所定比となるように制御されることで、合成白色光の色温度を変更可能とするものであり、
白色光Aと白色光Bの合成白色光は、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),7:3(Scan4),6:4(Scan5),5:5(Scan6),4:6(Scan7),3:7(Scan8),2:8(Scan9),1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるとき、図21の発光スペクトルの変化を示し、
分割領域部12Aの発光スペクトルは、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
分割領域部12Bの発光スペクトルは、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
平均演色評価数(Color Rend Index: Ra)は、Scan1において92.4、Scan11において93.4である、パッケージ1(白色光ランプ)。
【図21】
[図:0001387451000014.jpg]
」
2-1-2 甲第1号証を主たる証拠とした場合の本件発明1~11について
(1)本件発明1について
申立人は、甲第1号証により、本件発明1は新規性を有さない旨主張する。
しかしながら、上記「1 1-4 1-4-1(3)」のとおり、本件発明1と引用発明との相違点1は、実質的な相違点であるので、本件発明1は甲第1号証に記載された発明とはいえない。
(2)本件発明2~6、8~11について
本件発明2~6、8~11は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2~6、8~11において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明1ではない。
(3)本件発明7について
本件発明7と引用発明1とは、少なくとも上記「1 1-4 1-4-1(3)」で示した相違点1が存在するが、上記「2-1-1」のとおり、甲第2号証に上記相違点1を容易想到とする事項の開示はなく、甲第3号証についても同様である。
したがって、本件発明1は、引用発明1ないし甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-1-3 甲第2号証を主たる証拠とした場合
(1)本件発明1について
申立人は、甲第2号証により、本件発明1は新規性、進歩性を有さない旨主張するので以下検討する。
ア 対比
(ア)引用発明2の「6500K」の「出力光」、「3000K」の「出力光」は、本件発明1の「第1の光」、「第2の光」に相当する。
そして、引用発明2の「照明モジュール」の「高色温度領域(6500K)」は、LEDを用いるものであり、「第1の光」の発光によって特徴付けられることは自明であるので、本件発明1の「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源」に相当し、引用発明2の「照明モジュール」の「低色温度領域(3000K)」も同様に、本件発明1の「第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源」に相当する。
また、引用発明2の「照明モジュール」は、本件発明1の「光源」に相当する。
(イ)引用発明2の「照明モジュール」は、「低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整する」ことは、少なくとも「3000K」と「6500K」の2種類の発光を行っていることは自明のことである。そして、引用発明2の「6500K」の発光及び「3000K」の発光と、本件発明1の「第1の複合発光」及び「第2の複合発光」とは、「第1の光」及び「第2の光」で共通する。
そうすると、引用発明2の「複数種の半導体発光装置が集積配置された発光部からのそれぞれの出力光が混合して外部に出射され、低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整するLED光源を用いた照明モジュール」と、本件発明1の「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され」る「光源」とは、「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の光および第2の光を提供するように構成され」る「光源」である点で共通する。
そして、引用発明2の「6500K」の第1の光の、「所定のスペクトル出力分布」は、本件発明1の「第1のSPD」に相当(ただし、「第1の光」が「第1の複合発光」である点は除く)し、以下同様に「400nm~440nmの波長範囲」においての「所定の発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fv1」に、「440nm~500nmの波長範囲」においての「所定の発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fc1」に相当する。
また、引用発明2の「3000K」の第2の光の、「所定のスペクトル出力分布」は、本件発明1の「第2のSPD」に相当(ただし、「第2の光」が「第2の複合発光」である点は除く)し、以下同様に「400nm~440nmの波長範囲」においての「所定の発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fv2」に、「440nm~500nmの波長範囲」においての「所定の発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fc2」に相当する。
そうすると、引用発明2の
「低色温度領域は、図27の3000Kの発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
高色温度領域は、図27の6500K発光スペクトルを出力するものであり、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し」た構成と、本件発明1の
「前記第1の複合発光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し」た構成とは、
「前記第1の光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し」た点で共通する。
(ウ)引用発明2の照明モジュールは、「低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)」を備え、「平均演色評価数Raは、3000Kにおいて94、6500Kにおいて98である」から、「6500K」の第1の光、及び「300K」の第2の光は、本件発明1の「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し」ていることに相当する。
(エ)LED光源をドライバ回路で駆動することは、技術常識であるから、引用発明2もドライバ回路を実質的に有していることは自明のことである。
そうすると、上記(イ)の第1、2の複合発光の相当関係も踏まえると、引用発明2の「低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させ」ることと、本件発明1の「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路」とは、「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源から、第1の光と第2の光を、提供するドライバ回路」である点で共通するといえる。
(オ)したがって、本件発明1と引用発明2との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源と、
第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源と、
を含み、
前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源から、第1の光と第2の光を、提供するドライバ回路と、
前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の光および第2の光を提供するように構成され、
前記第1の光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有した光源。」
〔相違点2〕
第1の光、第2の光、ドライバ回路について、本件発明1は、「第1の複合発光」、「第2の複合発光」であり、ドライバ回路は、第1のLED発光源と第2のLED発光源「との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光」を提供するものであるのに対し、引用発明2は、第1の光及び第2の光やドライバ回路において、複合発光の特定がなく、第1の光及び第2の光の発光スペクトルは、Fv1、Fv2、Fc1、Fc2の個々の値や大小関係や割合の特定もない点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
(ア)新規性について
上記相違点2は、実質的な相違点であるので、本件発明1は引用発明2であるとはいえない。
(イ)進歩性について
a 引用発明2の「低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整する」ことにおいて、少なくとも、低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の両方を発光させた状態は、発光を複合させているので、複合発光といえるものである。
ここで、上記「1 1-4 1-4-1(3)ア」で述べたとおり、本件発明1における「複合発光」とは、両方の「LED発光源」を点灯させる場合に限らず、いずれか一方の「LED発光源」を点灯させる場合も含んでいるものと認められる。
そうすると、引用発明2の「3000K」、「6500K」の色温度の、それぞれの状態においても複合発光を行っているといえるものである。
b しかしながら、上記aのとおりであっても、引用発明2は、400nm~440nmの波長範囲における出力Fvと、440nm~500nmの波長範囲における出力Fcとの割合に着目して、Fv1、Fv2、Fc1、Fc2の個々の値や大小関係や割合を規定するものではなく、そのような引用発明2において、本件発明1の「Fv1は少なくとも0.05であり、Fv1はFv2より高く、Fc2は少なくとも0.1であり、Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低く、Fc1/Fv1は0.5よりも低い」という具体的な相関関係まで想起することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
また、上記「2-1-1」のとおり、甲第1、3号証にも相違点2を容易想到とする事項の開示はない。
したがって、本件発明1は、引用発明2ないし甲第1、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明2ではなく、また、引用発明2ないし甲第1、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2~11、14について
本件発明2~11、14は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2~11、14において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明2ではなく、また、引用発明2ないし甲第1、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-1-4 甲第3号証を主たる証拠とした場合の本件発明1~11、14について
(1)本件発明1について
申立人は、甲第3号証により、本件発明1は新規性、進歩性を有さない旨主張するので以下検討する。
ア 対比
(ア)引用発明3の「白色光A」、「白色光B」は、本件発明1の「第1の光」、「第2の光」に相当する。また、引用発明3の「発光ダイオード」は、本件発明1の「LED」に相当する。
そして、引用発明3の「白色光Aを発する分割領域部12A、すなわち、発光ダイオードを含む第1の白色光源」は、「白色光A」によって特徴付けられることは自明であるので、本件発明1の「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源」に相当し、引用発明3の「白色光Bを発する分割領域部12B、すなわち、発光ダイオードを含む第2の白色光源」も同様に、本件発明1の「第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源」に相当する。
また、引用発明3の「パッケージ1(白色光ランプ)」は、本件発明1の「光源」に相当する。
(イ)引用発明3の「パッケージ1(白色光ランプ)」は、少なくとも「Scan1」と「Scan11」の2種類の発光を行っているものである。そして、引用発明3の「Scan1」の発光及び「Scan11」の発光と、本件発明1の「第1の複合発光」及び「第2の複合発光」とは、「第1の光」及び「第2の光」で共通する。
そうすると、引用発明3の「白色光Aと白色光Bの合成白色光は、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),7:3(Scan4),6:4(Scan5),5:5(Scan6),4:6(Scan7),3:7(Scan8),2:8(Scan9),1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるとき、図21の発光スペクトルの変化を示し、
Scan1の発光スペクトルは、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を備え、
Scan11の発光スペクトルは、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を備えた、パッケージ1(白色光ランプ)」と、本件発明1の「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の複合発光および第2の複合発光を提供するように構成され」る「光源」とは、「前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の光および第2の光を提供するように構成され」る「光源」である点で共通する。
さらに、引用発明3の「白色光A」及び「白色光B」が、それぞれ、所定のスペクトル出力分布を有することは自明のことである。
そして、引用発明3の「白色光A」の、所定のスペクトル出力分布は、本件発明1の「第1のSPD」に相当(ただし、「第1の光」が「第1の複合発光」である点は除く)し、以下同様に「400nm~440nmの波長範囲」においての「発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fv1」に、「440nm~500nmの波長範囲」においての「発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fc1」に相当する。
また、引用発明3の「白色光B」の、所定のスペクトル出力分布は、本件発明1の「第2のSPD」に相当(ただし、「第2の光」が「第2の複合発光」である点は除く)し、以下同様に「400nm~440nmの波長範囲」においての「発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fv2」に、「440nm~500nmの波長範囲」においての「発光スペクトルの出力分布割合」は、「Fc2」に相当する。
そうすると、引用発明3の
「白色光Aと白色光Bの合成白色光は、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),7:3(Scan4),6:4(Scan5),5:5(Scan6),4:6(Scan7),3:7(Scan8),2:8(Scan9),1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるとき、図21の発光スペクトルの変化を示し、
分割領域部12Aの発光スペクトルは、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し、
分割領域部12Bの発光スペクトルは、所定の発光スペクトル出力分布を有し、400nm~440nmの波長範囲、及び440nm~500nmの波長範囲それぞれにおいて、所定の発光スペクトルの出力分布割合を有し」た構成と、本件発明1の
「前記第1の複合発光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の複合発光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し」た構成とは、
「前記第1の光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し」た点で共通する。
(ウ)引用発明3のパッケージ1(白色光ランプ)は、「低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)」を備え、「平均演色評価数(Color Rend Index: Ra)は、Scan1において92.4、Scan11において93.4である」から、「白色光A」、及び「白色光B」は、本件発明1の「前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有し」ていることに相当する。
(エ)発光ダイオードを含む光源をドライバ回路で駆動することは、技術常識であるから、引用発明3もドライバ回路を実質的に有していることは自明のことである。
そうすると、上記(イ)の第1、2の複合発光の相当関係も踏まえると、引用発明3の「白色光Aを発する分割領域部12A、すなわち、発光ダイオードを含む第1の白色光源と、白色光Bを発する分割領域部12B、すなわち、発光ダイオードを含む第2の白色光源を有するパッケージ1(白色光ランプ)であって、
第1の白色光源から発せられる白色光とスペクトルの異なる白色光を発する第2の白色光源とを備え、第1及び第2の白色光源からの白色光が合成された合成白色光を発するものであり、
第1及び第2の白色光源に対する駆動電力が供給される時間(駆動電圧の印加時間,駆動電流の通電時間,或いは白色光源の発光時間)が所定比となるように制御されることで、合成白色光の色温度を変更可能とするものであ」ることと、本件発明1の「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光を、提供するドライバ回路」とは、「前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源から、第1の光と第2の光を、提供するドライバ回路」である点で共通するといえる。
(オ)したがって、本件発明1と引用発明3との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点3〕
「第1の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第1のLED発光源と、
第2の発光によって特徴付けられた少なくとも1つの第2のLED発光源と、
を含み、
前記第1のLED発光源と前記第2のLED発光源から、第1の光と第2の光を、提供するドライバ回路と、
前記第1の発光および前記第2の発光は、第1の光および第2の光を提供するように構成され、
前記第1の光は、第1のSPDと割合Fv1およびFc1とにより特徴付けられ、
前記第2の光は、第2のSPDと割合Fv2およびFc2とにより特徴付けられ、
Fv1は、400nm~440nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fc1は、440nm~500nmの波長範囲における前記第1のSPDの出力の割合を示し、
Fv2は、400nm~440nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
Fc2は、440nm~500nmの波長範囲における前記第2のSPDの出力の割合を示し、
前記第1のSPDおよび前記第2のSPDは、80を超える演色評価数を有した光源。」
〔相違点3〕
第1の光、第2の光、ドライバ回路について、本件発明1は、「第1の複合発光」、「第2の複合発光」であり、ドライバ回路は、第1のLED発光源と第2のLED発光源「との発光比を制御し、第1の発光と第2の発光を複合し、少なくとも、前記複合の第1の状態である第1の複合発光と前記複合の第2の状態である第2の複合発光」を提供するものであるのに対し、引用発明3は、第1の光及び第2の光やドライバ回路において、複合発光の特定がなく、第1の光及び第2の光の発光スペクトルは、Fv1、Fv2、Fc1、Fc2の個々の値や大小関係や割合の特定もない点。
イ 判断
上記相違点3について検討する。
(ア)新規性について
上記相違点3は、実質的な相違点であるので、本件発明1は引用発明3であるとはいえない。
(イ)進歩性について
a 引用発明3の「白色光Aと白色光Bの合成白色光は、分割領域部12Aと分割領域部12Bとのパルス幅比(印加時間(通電時間)の比)が、1:0(Scan1),9:1(Scan2),8:2(Scan3),7:3(Scan4),6:4(Scan5),5:5(Scan6),4:6(Scan7),3:7(Scan8),2:8(Scan9),1:9(Scan10),0:1(Scan11)であるとき、図21の発光スペクトルの変化を示し」ていることにおいて、少なくともScan2~10は、分割領域部12Aの白色光Aと分割領域部12Bの白色光Bを複合させているので、複合発光といえるものである。
ここで、上記「1 1-4 1-4-1(3)ア」で述べたとおり、本件発明1における「複合発光」とは、両方の「LED発光源」を点灯させる場合に限らず、いずれか一方の「LED発光源」を点灯させる場合も含んでいるものと認められる。
そうすると、引用発明3の「Scan1」、「Scan11」においても複合発光を行っているといえるものである。
b しかしながら、上記aのとおりであっても、引用発明3は、400nm~440nmの波長範囲における出力Fvと、440nm~500nmの波長範囲における出力Fcとの割合に着目して、Fv1、Fv2、Fc1、Fc2の個々の値や大小関係や割合を規定するものではなく、そのような引用発明1において、本件発明1の「Fv1は少なくとも0.05であり、Fv1はFv2より高く、Fc2は少なくとも0.1であり、Fc1は、Fc2よりも少なくとも0.02だけ低く、Fc1/Fv1は0.5よりも低い」という具体的な相関関係まで想起することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
また、上記「2-1-1」のとおり、甲第1、2号証にも相違点2を容易想到とする事項の開示はない。
したがって、本件発明1は、引用発明3ないし甲第1、2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明3ではなく、また、引用発明3ないし甲第1、2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明2~11、14について
本件発明2~11、14は、本件発明1の事項を全て含み、さらに請求項2~11、14において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明3ではなく、また、引用発明3ないし甲第1、2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-1-5 甲第1号証を主たる証拠とした場合の本件発明24~26について
(1)本件発明24について
申立人は、甲第1号証により、本件発明24は進歩性を有さない旨主張するので以下検討する。
ア 対比
(ア)引用発明1の「前記第1の発光部及び前記第2の発光部は発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含み」ということと、本件発明24の「LEDデバイス」とは「LED」を含むことで共通するといえる。
(イ)引用発明1の「例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」ということと、本件発明24の「前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され」るということとは、「調光するように構成された」ことにおいて共通するといえる。
(ウ)引用発明1の「発光素子」も照明に用いられることは明らかであるので、本件発明24の「照明システム」とは、「照明手段」である点で共通するといえる。
(エ)そうすると、本件発明24と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1’〕
「LED含み、調光するように構成された照明手段。」
〔相違点1’-1〕
照明手段について、本件発明24が「照明システム」であるのに対し、引用発明1は、「発光素子」である点。
〔相違点1’-2〕
LED、調光について、本件発明24が、
「一次SPDによって特徴付けられた一次放出を放射するように構成されたLEDデバイスと、
前記一次放出へ光学的に結合された少なくとも1つの蛍光体であって、青色-シアン波長領域内における可飽和吸収によって特徴付けられる少なくとも1つの蛍光体と、を含む照明システムであって、
前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、
前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」という事項を有するのに対し、引用発明1は、当該事項を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点1’-2について検討する。
引用発明1は、LED、調光について、「6000K以上の高い色温度の昼光色を発する第1の発光部と、3000K以下の色温度の温白色を発する第2の発光部と、を備え、前記第1の発光部及び前記第2の発光部は独立して駆動されるものであり、前記第1の発光部及び前記第2の発光部は発光ダイオードチップ及び蛍光物質を含」み、「例えば、第1の発光部のみを駆動することで、日中は相対的に高い8800Kの色温度を有する白色光を表現し、第2の発光部のみを駆動することで、夜間には相対的に低い2600Kの色温度を有する白色光を表現する」というものであって、本件発明24の、
「前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」ことにより調光を行うものとは、根本的な手段が異なるものである。
また、上記「2-1-1」のとおり、甲第2、3号証にも上記相違点1’-2を容易想到とする事項の開示はない。
したがって、引用発明1において、上記相違点1’-2に係る本件発明24の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明24は、引用発明1ないし甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明25、26について
本件発明25、26は、本件発明24の事項を全て含み、さらに請求項25、26において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明1ないし甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-1-6 甲第2号証を主たる証拠とした場合の本件発明24~26について
(1)本件発明24について
申立人は、甲第2号証により、本件発明24は進歩性を有さない旨主張するので以下検討する。
ア 対比
(ア)引用発明2の「LED光源」と、本件発明24の「LEDデバイス」とは「LED」を含むことで共通するといえる。
(イ)引用発明2の「低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整する」ということと、本件発明24の「前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され」るということとは、「調光するように構成された」ことにおいて共通するといえる。
(ウ)引用発明2の「照明モジュール」も照明に用いられることは明らかであるので、本件発明24の「照明システム」とは、「照明手段」である点で共通するといえる。
(エ)そうすると、本件発明24と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2’〕
「LED含み、調光するように構成された照明手段。」
〔相違点2’-1〕
照明手段について、本件発明24が、「照明システム」であるのに対し、引用発明2は、「照明モジュール」である点。
〔相違点2’-2〕
LED、調光について、本件発明24が、
「一次SPDによって特徴付けられた一次放出を放射するように構成されたLEDデバイスと、
前記一次放出へ光学的に結合された少なくとも1つの蛍光体であって、青色-シアン波長領域内における可飽和吸収によって特徴付けられる少なくとも1つの蛍光体と、を含む照明システムであって、
前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、
前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」という事項を有するのに対し、引用発明2は、当該事項を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2’-2について検討する。
引用発明2は、LED、調光について、「LED光源を用い」、「複数種の半導体発光装置が集積配置された発光部からのそれぞれの出力光が混合して外部に出射され、低色温度領域(3000K)と高色温度領域(6500K)の発光出力を変化させて、照明モジュールとして3000Kから6500Kの範囲の色温度になるように調整する」るというものであって、本件発明24が、
「前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」ことにより調光を行うものとは、根本的な手段が異なるものである。
また、上記「2-1-1」のとおり、甲第1、3号証にも上記相違点1’-2を容易想到とする事項の開示はない。
したがって、引用発明2において、上記相違点2’-2に係る本件発明24の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明24は、引用発明2ないし甲第1、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明25、26について
本件発明25、26は、本件発明24の事項を全て含み、さらに請求項25、26において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明2ないし甲第1、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-1-7 甲第3号証を主たる証拠とした場合の本件発明24~26について
(1)本件発明24について
申立人は、甲第3号証により、本件発明24は進歩性を有さない旨主張するので以下検討する。
ア 対比
(ア)引用発明3の「発光ダイオードを含む」と、本件発明24の「LEDデバイス」とは「LEDを含む」ことで共通するといえる。
(イ)引用発明3の「第1及び第2の白色光源に対する駆動電力が供給される時間(駆動電圧の印加時間,駆動電流の通電時間,或いは白色光源の発光時間)が所定比となるように制御されることで、合成白色光の色温度を変更可能とする」ことと、本件発明24の「前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され」るということとは、「調光するように構成された」ことにおいて共通するといえる。
(ウ)引用発明3の「パッケージ1(白色光ランプ)」も照明に用いられることは明らかであるので、本件発明24の「照明システム」とは、「照明手段」である点で共通するといえる。
(エ)そうすると、本件発明24と引用発明3との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点3’〕
「LED含み、調光するように構成された照明手段。」
〔相違点3’-1〕
照明手段について、本件発明24が、「照明システム」であるのに対し、引用発明1は、「パッケージ1(白色光ランプ)」である点。
〔相違点3’-2〕
LED、調光について、本件発明24が、
「一次SPDによって特徴付けられた一次放出を放射するように構成されたLEDデバイスと、
前記一次放出へ光学的に結合された少なくとも1つの蛍光体であって、青色-シアン波長領域内における可飽和吸収によって特徴付けられる少なくとも1つの蛍光体と、を含む照明システムであって、
前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、
前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」という事項を有するのに対し、引用発明3は、当該事項を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点3’-2について検討する。
引用発明3は、LED、調光について、「白色光Aを発する分割領域部12A、すなわち、発光ダイオードを含む第1の白色光源と、白色光Bを発する分割領域部12B、すなわち、発光ダイオードを含む第2の白色光源を有」し、「第1及び第2の白色光源に対する駆動電力が供給される時間(駆動電圧の印加時間,駆動電流の通電時間,或いは白色光源の発光時間)が所定比となるように制御されることで、合成白色光の色温度を変更可能とする」るというものであって、本件発明24が、
「前記LEDデバイスは、前記一次放出を第1の出力レベルから第2の出力レベルへと調光するように構成された出力信号によって制御されるように構成され、
前記照明システムは、第1の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第1の割合fc1と第1のCCTとによって特徴付けられる第1のSPDを放射し、
前記照明システムは、第2の出力レベルにおいて、440nm~500nmの波長範囲におけるスペクトル出力の第2の割合fc2と第2のCCTとによって特徴付けられる第2のSPDを放射し、
前記第2の出力レベルは前記第1の出力レベルよりも低く、前記第2の割合fc2は、前記第1の割合fc1の80%よりも低く、前記少なくとも1つの蛍光体は前記第1の出力レベルにおいて飽和しており、且つ第2の出力レベルにおいて飽和していない」ことにより調光を行うものとは、根本的な手段が異なるものである。
また、上記「2-1-1」のとおり、甲第1、2号証にも上記相違点1’-2を容易想到とする事項の開示はない。
したがって、引用発明3において、上記相違点3’-2に係る本件発明24の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明24は、引用発明3ないし甲第1、2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明25、26について
本件発明25、26は、本件発明24の事項を全て含み、さらに請求項25、26において特定した事項によりさらに限定をするものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明3ないし甲第1、2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-2 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
申立人は、請求項7の「類似」という記載が不明確である旨主張するが、本件特許明細書の段落【0002】の「ヒトの眼中における、概日システムに関連する非視覚的光受容器(いわゆる天然の感光性網膜神経節細胞または「ipRGC」)の同定は、ヒトの健康および快適性に対する多様な光スペクトルによる影響についての高い関心を引き起こしている。大きな概日刺激は、睡眠パターンの修復、気分高揚、敏捷性や認知能力の向上、および季節的情動鬱病の軽減など、良い効果をもたらす可能性がある」という概日刺激がヒトに与える影響の記載や、段落【0081】の「さらに、この発光スペクトルは、D65基準光源(日光)によって達成されるものと同様の、(上記で定義したような)高い相対的な概日刺激を持ち得る。」という記載からその意味が理解でき、発明の範囲が不明確とまではいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~11、14、24~26に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11、14、24~26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項12、13、15~23に係る特許は、本件訂正により削除されたので、申立人による特許異議の申立てについて、請求項12、13、15~23に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700714