特許異議申立
2026-700185
蓄電装置用端子フィルム及び蓄電装置
- 審判番号
- 2026-700185
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-006976
- 登録番号
- 7732528
- 請求日
- 2026年03月02日
- 審決日
- 2026年05月11日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】中村 絵美
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲高▼橋 真之
- 審判官 涌井 智則
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7732528号発明「蓄電装置用端子フィルム及び蓄電装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7732528号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7732528号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和2年4月27日を出願日とする特願2020-78399号の一部を令和6年1月19日に新たな特許出願としたものであって、令和7年8月25日にその特許権が設定登録され、令和7年9月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年3月2日に特許異議申立人中村絵美(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7732528号の請求項1ないし8の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電装置用端子フィルムであって、
前記端子フィルムが硫化水素と反応して色が変化する硫化水素顕色材を含み、
当該蓄電装置用端子フィルムが単層構造であり、
前記硫化水素顕色材の含有量が当該蓄電装置用端子フィルムの質量基準で、0.01質量%以上30質量%以下であり、
前記蓄電装置が硫化物系固体電解質を含む全固体電池である、蓄電装置用端子フィルム。
【請求項2】
蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電装置用端子フィルムであって、
前記端子フィルムが硫化水素と反応して色が変化する硫化水素顕色材を含み、
当該蓄電装置用端子フィルムが多層構造であり且つ前記硫化水素顕色材を含む層を有し、
当該層における前記硫化水素顕色材の含有量が当該層の質量基準で、0.01質量%以上30質量%以下であり、
前記蓄電装置が硫化物系固体電解質を含む全固体電池である、蓄電装置用端子フィルム。
【請求項3】
当該蓄電装置用端子フィルムを構成する複数の層のうち、前記金属端子に接する層が前記硫化水素顕色材を含有していない、請求項2に記載の蓄電装置用端子フィルム。
【請求項4】
当該蓄電装置用端子フィルムを構成する複数の層のうち、前記蓄電装置本体とともに前記蓄電装置を構成する外装材に接する層が前記硫化水素顕色材を含有している、請求項2又は3に記載の蓄電装置用端子フィルム。
【請求項5】
当該蓄電装置用端子フィルムが、前記蓄電装置本体とともに前記蓄電装置を構成する外装材に接する層と、中間層と、前記金属端子に接する層とからなる三層構造であり、
前記中間層が前記硫化水素顕色材を含有している、請求項2~4のいずれか一項に記載の蓄電装置用端子フィルム。
【請求項6】
硫化水素を分解もしくは吸着する材料をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用端子フィルム。
【請求項7】
前記硫化水素を分解もしくは吸着する材料が、酸化亜鉛、非晶質金属ケイ酸塩、ジルコニウム・ランタノイド元素の水酸化物、4価金属リン酸塩、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、水酸化鉄、硫酸銀、酢酸銀、イソシアネート化合物、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、ゼオライト、活性炭、アミン系化合物及びアイオノマーからなる群から選ばれる、請求項6に記載の蓄電装置用端子フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電装置用端子フィルムと、
充放電する前記蓄電装置本体と、
前記蓄電装置本体と電気的に接続され、一部が前記蓄電装置用端子フィルムで覆われる一対の前記金属端子と、
前記蓄電装置本体の表面を覆うとともに、前記蓄電装置用端子フィルムの一部と接触するように配置された外装材と、
を備え、
硫化物系固体電解質を含む全固体電池である、蓄電装置。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1又は6号証に記載された発明、及び甲第2ないし5号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。このため、本件請求項1ないし8に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
[証拠]
甲第1号証:特開2015-232945号公報
甲第2号証:特開2016-112510号公報
甲第3号証:特開2017-139121号公報
甲第4号証:国際公開第2011/055429号
甲第5号証:特開2017-199667号公報
甲第6号証:国際公開第2020/004412号
第4 各甲号証の記載等
1 甲第1号証について
(1)記載事項
甲第1号証には、「蓄電デバイス用端子フィルム」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、金属端子に高温で加熱融着した場合及び低温で加熱融着した場合のいずれも良好な密着性を示し、且つ、包装材及び金属端子の両方に対する密着性を高温環境下で長期間維持することが可能な蓄電デバイス用端子フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。」
「【0024】
図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14(「タブリード」と呼ばれることもある)と、蓄電デバイス用端子フィルム16(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する。」
「【0042】
図3に示すように、蓄電デバイス用端子フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置されている。蓄電デバイス用端子フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされている。」
「【0059】
第1の最外層31と第2の最外層32とは、測定角度60°での光沢度の差が10以上であることが好ましい。第1の最外層31と第2の最外層32との間で光沢度に差をつけることで、蓄電デバイス用端子フィルム16の表裏判定が容易となり、蓄電デバイス用端子フィルム16を金属端子14に融着する際に、表裏を間違えることなく確実に第1の最外層31側を金属端子14に融着することができる。蓄電デバイス用端子フィルム16の表裏判定をより容易にする観点から、光沢度の差は15以上であることがより好ましく、20以上であることが更に好ましく、25以上であることが特に好ましい。
【0060】
第1の最外層31及び第2の最外層32の光沢度Gs(60°)は、JIS Z8741-1997 鏡面光沢度-測定方法に基づいて測定することができる。
【0061】
第1の最外層31と第2の最外層32との間で光沢度に差をつける方法は特に限定されないが、例えば、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方の表面に、エンボス加工及び/又は粗面化加工を施す方法、或いは、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方に、フィラー及び/又はエラストマーを添加する方法が挙げられる。
・・・中略・・・
【0064】
フィラーを添加する場合、添加するフィラーとしては、例えば、金属酸化物(例えば、アルミナやシリカ等)よりなるフィラー、有機材料(例えば、ポリカーボネートやエポキシ樹脂)よりなるフィラー等を用いることができる。蓄電デバイス用端子フィルム16のコストの観点から、フィラーとしては、シリカフィラーが好ましい。フィラーの形状としては、例えば、球形や不定形等を用いることができる。
【0065】
フィラーの平均粒径は、例えば、0.1~20μmの範囲内にするとよい。フィラーの添加量は、例えば、0.1~20質量%の範囲内で適宜設定することができる。」
「【0080】
第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層は、着色されていることが好ましい。着色は、例えば各層に顔料を添加することで行うことができる。このように、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の1層以上を着色することで、いずれの層にも顔料が添加されていない蓄電デバイス用端子フィルムと比較して、蓄電デバイス用端子フィルム16の視認性を向上させることが可能となる。これにより、蓄電デバイス用端子フィルム16の検査(具体的には、例えば、蓄電デバイス用端子フィルム16が金属端子14に付いているか否かの検査、金属端子14に対する蓄電デバイス用端子フィルム16の取り付け位置の検査等)の精度を向上させることができる。
・・・中略・・・
【0083】
無機顔料の具体例としては、例えば、以下の顔料を用いることができる。白色に着色可能な無機顔料としては、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉等を用いることができる。赤色に着色可能な無機顔料としては、例えば、鉛丹、酸化鉄赤等を用いることができる。黄色に着色可能な無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)等を用いることができる。青色に着色可能な無機顔料としては、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリウム)等を用いることができる。黒色に着色可能な無機顔料としては、例えば、カーボンブラック等を用いることができる。
【0084】
第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層に含まれる上記有機顔料及び無機顔料の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下の範囲内で適宜設定することができる。
【0085】
また、顔料としては、例えば、カーボンブラックを用いることが好ましい。このように、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層にカーボンブラックを添加することで、濃い色合い(具体的には、黒色)で着色することが可能となる。
・・・中略・・・
【0087】
顔料となるカーボンブラックの粒径は、例えば、1nm~1μmの範囲内で適宜選択することができる。第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層に含まれるカーボンブラックの添加量は、例えば、0.01質量%以上3.00質量%以下にするとよい。カーボンブラックの添加量が0.01質量%以上未満であると、各層を濃い色合いで着色することが困難になってしまう。また、カーボンブラックの含有量が3.00質量%よりも多いと、各層の導電性が高くなりすぎるため、各層と金属端子14との間の電気的な絶縁性を十分に確保することが困難となってしまう。」
「【図1】
[図:0001436230000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001436230000002.jpg]
」
(2)記載された技術事項
上記記載事項より、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。
ア 図1及び【0024】の記載によれば、「蓄電デバイス10」は「蓄電デバイス本体11」と「一対の金属端子14」と「蓄電デバイス用端子フィルム16」とを有するものである。そして、「蓄電デバイス本体11」が「蓄電デバイス10」を構成するものであり、「金属端子14」が「蓄電デバイス本体11」と電気的に接続されるものであることは明らかである。
また、【0042】に記載されるように、「蓄電デバイス用端子フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置される」ものである。
してみると、甲第1号証には、蓄電デバイス10を構成する蓄電デバイス本体11と電気的に接続される金属端子14の一部の外周面を覆うように配置される蓄電デバイス用端子フィルム16が記載されている。
イ 【0042】の記載によれば、「蓄電デバイス用端子フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされ」ている。
ウ 【0061】の「第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方に、フィラー及び/又はエラストマーを添加する方法が挙げられ」との記載、及び、【0064】の「添加するフィラーとしては、例えば、金属酸化物(例えば、アルミナやシリカ等)よりなるフィラー・・・を用いることができる」との記載より、甲第1号証には、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方に、金属酸化物のフィラーを添加することが記載されているといえる。
エ 【0065】の記載によれば、「フィラーの添加量は、」「0.1~20質量の%範囲内」である。
オ 【0080】の「第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層は、・・・顔料を添加する」との記載、【0083】の「無機顔料としては、例えば、カーボンブラック等を用いることができる」との記載によれば、甲第1号証には、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層には、無機顔料としてカーボンブラックを添加することが記載されているといえる。
カ 【0084】の記載によれば、「無機顔料の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下の範囲内」である。
キ 【0024】の記載によれば、「蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池」である。
(3)記載された発明
上記「(2)ア」ないし「(2)キ」の技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、蓄電デバイス用端子フィルムとして次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電デバイス用端子フィルムであって、
蓄電デバイス用端子フィルムは、金属端子の外周側面と接触する第1の最外層と、包装材と接触する第2の最外層と、第1の最外層と第2の最外層との間に配置された中間層と、が積層された構成とされ、
第1の最外層及び第2の最外層のいずれか一方に、金属酸化物のフィラーを添加し、
フィラーの添加量は、0.1~20質量の%範囲内であり、
第1の最外層、第2の最外層及び中間層の少なくとも1層には、無機顔料としてカーボンブラックを添加し、
無機顔料の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下の範囲内であり、
蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池である、蓄電デバイス用端子フィルム。」
2 甲第6号証について
(1)記載事項
甲第6号証には、「端子用樹脂フィルム」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「[0007]
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れる端子用樹脂フィルム及びこれを用いた蓄電装置を提供する。」
「[0021]
<蓄電装置>
図1は、本実施形態に係る蓄電装置の概略構成を示す斜視図である。図1では、蓄電装置100の一例として、全固体電池を例に挙げて図示し、以下の説明を行う。なお、図1に示す構成の蓄電装置は、電池パック又は電池セルと呼ばれることがある。
[0022]
蓄電装置100は、全固体電池であり、蓄電装置本体10と、外装材20と、一対の金属端子30(電流取出し端子)と、端子用樹脂フィルム40(タブシーラント)とを備える。蓄電装置本体10は、充放電を行う電池本体である。外装材20は、蓄電装置本体10の表面を覆うとともに、端子用樹脂フィルム40の一部と接触するように配置されている。」
「[0041]
(金属端子)
図4は、図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のIV-IV線方向の断面図である。一対(図1の場合、2つ)の金属端子30,30のうち、一方の金属端子30は、蓄電装置本体10の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子30は、蓄電装置本体10の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子30,30は、蓄電装置本体10から外装材20の外部まで延びている。一対の金属端子30,30の形状は、例えば、平板形状とすることができる。」
「[0044]
(端子用樹脂フィルム)
図4に示すように、端子用樹脂フィルム40は、金属端子30の一部の外周面を覆うように配置されている。金属端子30と外装材20との間に端子用樹脂フィルム40を配置されることで、蓄電装置100の密封性及び絶縁性をより一層高度に達成することができる。端子用樹脂フィルム40は、上述の内層18及び基材層11と同等又はこれを越える耐熱性を有する。
[0045]
端子用樹脂フィルム40は、金属端子30に対する密着性を有する樹脂組成物からなり、当該樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び融解ピーク温度(融点)が160℃以上の熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含み、且つ、融解ピーク温度が160℃未満の熱可塑性樹脂を含まないものである。かかる構成の端子用樹脂フィルム40によれば、蓄電装置が例えば100~150℃の温度条件下で使用されるものであっても、金属端子30の温度が例えば100~150℃に達するものであっても、蓄電装置100の密封性を十分に維持できる。当該樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び融解ピーク温度(融点)が200℃以上の熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含み、且つ、融解ピーク温度が200℃未満の熱可塑性樹脂を含まないものであってもよい。」
「[0048]
端子用樹脂フィルム40は、単層構造であっても多層構造であってもよい。端子用樹脂フィルム40が単層構造である場合(図5(a)参照)、端子用樹脂フィルム40を構成する樹脂組成物はPET、上記PET系樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる一種の熱可塑性樹脂、及び/又は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる一種の熱硬化性樹脂であることが好ましい。これらの樹脂からなるフィルムを端子用樹脂フィルム40として使用することで、金属端子30に対する密着性(ヒートシール時に樹脂組成物が適度に流動すること)と、金属端子30の絶縁性(ヒートシール時に樹脂組成物が流動し過ぎないこと)とを両立しやすいという効果が奏される。」
「[図1]
[図:0001436230000003.jpg]
」
「[図4]
[図:0001436230000004.jpg]
」
「[図5]
[図:0001436230000005.jpg]
」
(2)記載された技術事項
上記記載事項より、甲第6号証には次の技術事項が記載されているといえる。
ア 図1及び[0022]の記載によれば、「蓄電装置100は、全固体電池であり、蓄電装置本体10と、」「一対の金属端子30」「と、端子用樹脂フィルム40」「とを備える」。そして、[0041]の記載によれば、「金属端子30,30のうち、一方の金属端子30は、蓄電装置本体10の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子30は、蓄電装置本体10の負極と電気的に接続されている」。
してみると、「蓄電装置本体10」は全固体電池である「蓄電装置100」を構成するものといえ、また、「一対の金属端子30」は「蓄電装置本体10」の正極又は負極と電気的に接続されているといえる。
また、図4及び[0044]の記載によれば、「端子用樹脂フィルム40は、金属端子30の一部の外周面を覆うように配置されている」。
以上のことより、甲第6号証には、全固体電池である蓄電装置100を構成する蓄電装置本体10の正極又は負極と電気的に接続されている一対の金属端子30の一部の外周面を覆うように配置されている端子用樹脂フィルム40が記載されているといえる。
イ 図5(a)及び[0048]の記載によれば、「端子用樹脂フィルム40は、単層構造」である。
(3)記載された発明
上記「(2)ア」ないし「(2)イ」の技術事項を総合勘案すると、甲第6号証には、端子用樹脂フィルムとして次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「全固体電池である蓄電装置を構成する蓄電装置本体の正極又は負極と電気的に接続されている一対の金属端子の一部の外周面を覆うように配置されている端子用樹脂フィルムであって、
端子用樹脂フィルムは、単層構造である、端子用樹脂フィルム。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
ア 甲6発明の「全固体電池である蓄電装置」は、本件発明1の「蓄電装置」に相当し、甲6発明の「全固体電池である蓄電装置を構成する蓄電装置本体」は、本件発明1の「蓄電装置を構成する蓄電装置本体」に相当する。
そして、甲6発明の「一対の金属端子」は、「蓄電装置本体の正極又は負極と電気的に接続されている」からみて蓄電装置本体と電気的に接続されるといえる。よって、甲6発明の「一対の金属端子」は、本件発明1の「蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子」に相当する。
以上のことから、甲6発明の「一対の金属端子の一部の外周面を覆うように配置されている端子用樹脂フィルム」は、本件発明1の「蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電装置用端子フィルム」に相当する。
イ 本件発明1は、端子フィルムが「硫化水素と反応して色が変化する硫化水素顕色材を含」むのに対して、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。
ウ 甲6発明の「端子用樹脂フィルムは、単層構造である」ことは、本件発明1の「当該蓄電装置用端子フィルムが単層構造であ」ることに相当する。
エ 本件発明1は「前記硫化水素顕色材の含有量が当該蓄電装置用端子フィルムの質量基準で、0.01質量%以上30質量%以下であ」るのに対して、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。
オ 甲6発明の「蓄電装置」が「全固体電池」であることは、本件発明1の「前記蓄電装置が硫化物系固体電解質を含む全固体電池である」ことと、「前記蓄電装置が」「全固体電池である」点で一致する。
しかしながら、本件発明1は、全固体電池が「硫化物系固体電解質を含む」のに対して、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。
カ 上記アないしオより、本件発明1と甲6発明とは、
「蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電装置用端子フィルムであって、
当該蓄電装置用端子フィルムが単層構造であり、
前記蓄電装置が全固体電池である、蓄電装置用端子フィルム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
本件発明1は端子フィルムが「硫化水素と反応して色が変化する硫化水素顕色材を含」み、「前記硫化水素顕色材の含有量が当該蓄電装置用端子フィルムの質量基準で、0.01質量%以上30質量%以下であ」るのに対して、甲6発明はその旨特定されていない点。
〈相違点2〉
本件発明1は全固体電池が「硫化物系固体電解質を含む」のに対して、甲6発明はその旨特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
本件が解決しようとする課題は、「全固体電池等の蓄電装置の異常を早期に発見できる電流取り出し端子を覆う端子フィルム及びそれを用いた蓄電装置を提供すること」(【0009】)であり、そのために「上記顕色材を含有することにより、硫化物系固体電解質を含む全固体電池において硫化水素が発生した場合に、顕色材を含有する端子フィルムが変色するため、硫化水素の発生を視覚的に検知する」(【0011】)というものである。
これに対して、甲第6号証は、「耐熱性に優れる端子用樹脂フィルム及びこれを用いた蓄電装置を提供する」([0007])ことを発明が解決しようとする課題とするものであるから、甲6発明の課題は、本件発明1の課題とは異なるものである。
そして、甲第4号証には、全固体リチウム二次電池の外装体内に硫化水素と化学反応することで変色する識別部を備え、識別部が外装体の外部から視認可能とされていることが記載され、甲第5号証には、電池セルの第1ケースが、硫化水素との化学反応により電気抵抗が変化する第1抵抗変化材料を含む第1抵抗変化部材を内包することが記載されており、硫化水素の発生を検知すること自体は広く認識されていた技術思想と認められるものの、甲第4号証、甲第5号証のいずれにも、端子フィルムが硫化水素顕色材を含有することにより硫化水素の発生を視覚的に検知することは記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証には、第1のスキン層並びに硫化物を吸着する無機吸着剤及びバインダーを含む吸着層を有する硫化物系ガス吸着用積層体において、無機吸着剤はバインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下とすることが記載され、甲第3号証には、金属端子用樹脂フィルムは第1ポリオレフィン層と接着層と第2ポリオレフィン層とを順次備えており、第1及び第2ポリオレフィン層は充填剤を含み、充填剤としては炭素、シリカ、酸化アルミニウム、珪酸ジルコニウム等無機充填剤を用いることが記載されているものの、甲第2号証、甲第3号証のいずれにも、端子フィルムが硫化水素顕色材を含有することにより硫化水素の発生を視覚的に検知することは記載も示唆もされていない。
さらに、甲第1号証にも、端子フィルムが硫化水素顕色材を含有することにより硫化水素の発生を視覚的に検知することは記載も示唆もされていない。
そうしてみると、甲第1ないし5号証の記載を考慮しても、甲6発明において、端子フィルムに硫化水素顕色材を含むようにする動機付けがあるとはいえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)まとめ
よって、本件の請求項1に係る発明は甲第6号証及び甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められず、本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「蓄電デバイス」は、本件発明2の「蓄電装置」に相当する。また、甲1発明の「蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体」は、本件発明2の「蓄電装置を構成する蓄電装置本体」に、甲1発明の「蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子」は、本件発明2の「蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電デバイス用端子フィルム」は、本件発明2の「蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電装置用端子フィルム」に相当する。
イ 甲1発明は「蓄電デバイス用端子フィルムは、金属端子の外周側面と接触する第1の最外層と、包装材と接触する第2の最外層と、第1の最外層と第2の最外層との間に配置された中間層と、が積層された構成とされ、第1の最外層及び第2の最外層のいずれか一方に、金属酸化物のフィラーを添加し、」「第1の最外層、第2の最外層及び中間層の少なくとも1層には、無機顔料としてカーボンブラックを添加」するものであるから、甲1発明の「蓄電デバイス用端子フィルム」は金属酸化物のフィラーと無機顔料としてカーボンブラックが添加されたものである。
ここで、甲1発明の無機顔料であるカーボンブラックは、硫化水素顕色材であるとはいえない。
してみると、端子フィルムについて、本件発明2は「硫化水素と反応して色が変化する硫化水素顕色材を含」むのに対して、甲1発明は金属酸化物のフィラーと無機顔料としてカーボンブラックが添加されたものであるものの硫化水素顕色材を含むとは特定されていない点で相違する。
ウ 甲1発明の「蓄電デバイス用端子フィルムは、金属端子の外周側面と接触する第1の最外層と、包装材と接触する第2の最外層と、第1の最外層と第2の最外層との間に配置された中間層と、が積層された構成とされ」ることは、本件発明2の「当該蓄電装置用端子フィルムが多層構造であ」ることに相当する。
エ 上記イの対比を考慮すれば、端子フィルムについて、本件発明2は「前記硫化水素顕色材を含む層を有し」ているのに対して、甲1発明は金属酸化物のフィラーと無機顔料としてカーボンブラックが添加された層を有するものの硫化水素顕色材を含む層を有するとは特定されていない点で相違する。
オ 本件発明2は「当該層における前記硫化水素顕色材の含有量が当該層の質量基準で、0.01質量%以上30質量%以下であ」るのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
カ 蓄電装置について、本件発明2は「硫化物系固体電解質を含む全固体電池」のに対して、甲1発明はリチウムイオン二次電池と特定されるのみである点で相違する。
キ 上記アないしカより、本件発明2と甲1発明とは、
「蓄電装置を構成する蓄電装置本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される蓄電装置用端子フィルムであって、
当該蓄電装置用端子フィルムが多層構造である、蓄電装置用端子フィルム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点3〉
本件発明2は端子フィルムが「硫化水素と反応して色が変化する硫化水素顕色材を含」み、「前記硫化水素顕色材を含む層を有し」、「当該層における前記硫化水素顕色材の含有量が当該層の質量基準で、0.01質量%以上30質量%以下であ」るのに対して、甲1発明は金属酸化物のフィラーと無機顔料としてカーボンブラックが添加されたものであるものの硫化水素顕色材を含むとは特定されていない点。
〈相違点4〉
蓄電装置が、本件発明2は「硫化物系固体電解質を含む全固体電池」のに対して、甲1発明はリチウムイオン二次電池と特定されるのみである点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
本件が解決しようとする課題は、「全固体電池等の蓄電装置の異常を早期に発見できる電流取り出し端子を覆う端子フィルム及びそれを用いた蓄電装置を提供すること」(【0009】)であり、そのために「上記顕色材を含有することにより、硫化物系固体電解質を含む全固体電池において硫化水素が発生した場合に、顕色材を含有する端子フィルムが変色するため、硫化水素の発生を視覚的に検知する」(【0011】)というものである。
これに対して、甲第1号証は、「金属端子に高温で加熱融着した場合及び低温で加熱融着した場合のいずれも良好な密着性を示し、且つ、包装材及び金属端子の両方に対する密着性を高温環境下で長期間維持することが可能な蓄電デバイス用端子フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスを提供すること」(【0008】)ことを発明が解決しようとする課題とするものであるから、甲1発明の課題は、本件発明2の課題とは異なるものである。
そして、甲第4号証には、全固体リチウム二次電池の外装体内に硫化水素と化学反応することで変色する識別部を備え、識別部が外装体の外部から視認可能とされていることが記載され、甲第5号証には、電池セルの第1ケースが、硫化水素との化学反応により電気抵抗が変化する第1抵抗変化材料を含む第1抵抗変化部材を内包することが記載されており、硫化水素の発生を検知すること自体は広く認識されていた技術思想と認められるものの、甲第4号証、甲第5号証のいずれにも、端子フィルムが硫化水素顕色材を含む層を有することにより硫化水素の発生を視覚的に検知することは記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証には、第1のスキン層並びに硫化物を吸着する無機吸着剤及びバインダーを含む吸着層を有する硫化物系ガス吸着用積層体において、無機吸着剤はバインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下とすることが記載され、甲第3号証には、金属端子用樹脂フィルムは第1ポリオレフィン層と接着層と第2ポリオレフィン層とを順次備えており、第1及び第2ポリオレフィン層は充填剤を含み、充填剤としては炭素、シリカ、酸化アルミニウム、珪酸ジルコニウム等無機充填剤を用いることが記載されているものの、甲第2号証、甲第3号証のいずれにも、端子フィルムが硫化水素顕色材を含む層を有することにより硫化水素の発生を視覚的に検知することは記載も示唆もされていない。
さらに、甲第6号証にも、端子フィルムが硫化水素顕色材を含む層を有することにより硫化水素の発生を視覚的に検知することは記載も示唆もされていない。
そうしてみると、甲第2ないし6号証の記載を考慮しても、甲1発明において、端子フィルムを硫化水素顕色材を含む層を有するものとする動機付けがあるとはいえない。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)まとめ
よって、本件の請求項2に係る発明は甲第1号証及び甲第2ないし6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められず、本件の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 本件発明3ないし8について
本件の請求項3ないし8は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明3ないし8は、本件発明1又は2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1又は2についての判断と同様の理由により、本件の請求項3ないし8に係る発明は、甲第1ないし6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
したがって、本件の請求項3ないし8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700185