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特許異議申立

2024-700853

乾燥機及び乾燥機の運転方法

審判番号
2024-700853
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-005430
登録番号
7479001
請求日
2024年09月06日
審決日
2026年01月09日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
  • 【権利者代理人】岡部 博史
  • 【権利者代理人】山田 裕三
  • 【異議申立人】藤江 桂子
審判長/審判官
  • 審判長 窪田 治彦
  • 審判官 関口 哲生
  • 審判官 芝井 隆
分類
P1652.851-ZDA(D06F) / P1652.857-ZDA(D06F) / P1652.55 -ZDA(D06F) / P1652.537-ZDA(D06F) / P1652.121-ZDA(D06F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法36条6項1号特許法113条1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第1号、特許法第113条第4号
データ出所
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事件の表示

特許第7479001号発明「乾燥機及び乾燥機の運転方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7479001号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5、9、10について訂正することを認める。 特許第7479001号の請求項1、4、8に係る特許を取り消す。 特許第7479001号の請求項5、9、10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7479001号の請求項1、4、5、8~10に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。 令和5年 1月17日 :出願 令和5年 7月27日付け:拒絶査定 令和5年11月 7日提出:審判請求書 令和5年12月13日付け:拒絶理由通知書 令和6年 2月16日提出:出願人による意見書及び手続補正書 令和6年 4月25日 :特許権の設定登録 令和6年 5月 8日 :特許掲載公報の発行 令和6年 9月 6日提出:特許異議申立人藤江桂子(以下、「申立人」という。)による請求項1、4、5、8~10に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年10月24日提出:申立人による手続補正書(方式) 令和7年 1月20日付け:取消理由通知書 令和7年 3月24日提出:特許権者による意見書及び訂正請求書 令和7年 5月19日提出:特許権者による手続補正書(方式) 令和7年 6月13日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第120条の5第5項) 令和7年 7月14日提出:申立人による意見書 令和7年 9月 3日付け:取消理由通知書(決定の予告) なお、令和7年9月3日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 以下、令和7年3月24日付け訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の請求は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5、9、10について訂正を求めるものであって、その訂正内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記目標温度は、45℃以上60℃以下である、請求項1に記載の乾燥機。」と記載されているのを 「外槽と、 前記外槽内に設けられたドラムと、 前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、 前記循環流路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、45℃以上60℃以下である、乾燥機。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9に 「前記加熱手段は、ヒートポンプ装置を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の乾燥機。」と記載されているのを、 「外槽と、 前記外槽内に設けられたドラムと、 前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、 前記循環流路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下であって、 前記加熱手段は、ヒートポンプ装置を有する、乾燥機。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項10に 「または、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられたドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させる」と記載されているのを、 「または、前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられた前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する」に訂正する。 (4)一群の請求項について 訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項5及び9について、請求項9は、請求項5を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項5及び9に対応する訂正後の請求項5及び9は、一群の請求項であって、本件訂正は、一群の請求項に請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、訂正後の請求項9に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに、一群の請求項の他の請求項である請求項5とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 2 本件訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項5が、請求項1を引用するものであったのを、独立請求項として、請求項間の引用関係の解消をしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、また、択一的記載の要素である「または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、」という事項を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 さらに、訂正事項1は、独立請求項として、請求項間の引用関係の解消をしたものであり、また、択一的記載の内の1つの発明特定事項を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項9が、請求項1を引用するものであったのを、独立請求項として、請求項間の引用関係の解消をしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、択一的記載の要素である「または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、」という事項を削除したものであり、更に、本件訂正前の請求項9が請求項1から8のいずれか一項を引用するものであったところ、請求項2から8との引用関係を解消するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 さらに、訂正事項2は、独立請求項として、請求項間の引用関係の解消をしたものであり、また、択一的記載の内の1つの発明特定事項を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正事項3は、本件訂正前の請求項10に記載された乾燥機の運転方法について、「または、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられたドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させる、」という事項に、「前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、」及び「取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する」という限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ また、願書に添付した明細書の段落0116~0121(下線は当審で付した。)には、 「【0116】 (変形例2) 図11は、変形例2に係る乾燥機111の模式断面図である。図11に示すように、乾燥機111は、温度検知手段15の代わりに、温度検知手段18を備える点において、実施の形態1に係る乾燥機1と異なる。 【0117】 温度検知手段18は、撥水回復コース実行前におけるドラム4内の空気の初期温度t0に加えて、撥水回復コース実行中におけるドラム4内の空気の温度を測定する。 【0118】 変形例2における乾燥機111の動作は、特段記載のない限り、実施の形態1における乾燥機1の動作と共通である。以下では、実施の形態1と異なる点について説明する。 【0119】 ドラム4が空の状態で、即ち、衣類を収容していない状態で、ステップS10は実行される。また、扉21の開放を抑制するようにロックがかかる。ステップS11、S12は省略される。 【0120】 ステップS13、S14を実行した後、ステップS15の代わりに、制御部16は、温度検知手段18が測定したドラム4内の温度を取得し、取得した温度が目標温度th以上か否かを判定する。温度検知手段18は、ドラム4内の温度を一定間隔で、または連続的に測定してもよい。取得した温度が目標温度th以上である場合、制御部16は、扉21のロックを解除し、扉21を開放可能とする。取得した温度が目標温度th未満である場合、制御部16は、扉21のロックを維持し、加熱を継続する。 【0121】 扉21が開放可能になると、ユーザはドラム4に衣類を投入し、扉21を閉鎖する。制御部16は、扉21の閉鎖後、所定時間が経過すると、ステップS16~S18を実行する。所定時間は、例えば、1分である。その後、ユーザはドラム4から衣類を取り出せる。」 と記載されている。 以上によれば、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ さらに、訂正事項3は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 エ ところで、申立人は令和7年7月14日提出の意見書で、「そもそも、コース対象物がドラムに収容される前の状態において、加熱手段及び送風機を作動させてドラム内の空気を加熱しても、未だドラムに収容される前の(つまりドラム外にある)コース対象物がそれによって加熱され目標温度に到達する道理がない。すなわち、訂正事項3の「または、前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられた前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する」という制御(以下、便宜上「制御C」という。)は実現不可能な制御であるから、制御Cを行うことについて、願書に添付した明細書、特許請求項の範囲又は図面に何らの記載も示唆もないのは当然ではある。」(6頁5~17行)と主張する。 しかし、請求項10に係る発明は、「乾燥機の運転方法」であるところ、本件特許明細書等の記載や技術常識に鑑みると、衣類(コース対象物)がドラムに収容された際に、衣類(コース対象物)が目標温度になる、乾燥機の運転方法を特定していると解するのが妥当である。 したがって、上記申立人の主張は採用できない。 3 独立特許要件について 訂正事項1~3により訂正された請求項5、9、10は特許異議の申立てがなされているので、訂正後における特許請求の範囲の請求項5、9、10に記載されている事項により特定される発明に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件は課されない。 4 まとめ 上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 なお、本件において、本件訂正の請求に係る請求項5、9、10は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項5、9、10について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記「第2」のとおり、本件訂正は認められた。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4、5、8~10に係る発明は、次の事項により特定されるとおりのものである(請求項5、9、10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項5、9、10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。)。 「【請求項1】 外槽と、 前記外槽内に設けられたドラムと、 前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、 前記循環流路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、 前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下である、乾燥機。 【請求項4】 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記ドラム内の空気温度が45℃以上60℃以下となるように前記加熱手段及び前記送風部を作動させる、請求項1に記載の乾燥機。 【請求項5】 外槽と、 前記外槽内に設けられたドラムと、 前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、 前記循環流路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、45℃以上60℃以下である、乾燥機。 【請求項8】 前記循環流路の流出口は、前記外槽の底部に接続され、 前記外槽は、前記流出口から前記外槽に流入する空気を、前記ドラムの回転軸から離れる方向に偏向させるガイド手段を有する、請求項1に記載の乾燥機。 【請求項9】 外槽と、 前記外槽内に設けられたドラムと、 前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、 前記循環流路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下であって、 前記加熱手段は、ヒートポンプ装置を有する、乾燥機。 【請求項10】 乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる乾燥機の運転方法であって、 送風部を作動させて、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるとともに、前記加熱手段を作動させて、前記コース対象物の目標温度を42.5℃より高く60℃以下として、前記外槽における空気を加熱するステップ、 を含み、 制御部は、前記加熱するステップにおいて、 前記コース対象物が前記目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 または、前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられた前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する、乾燥機の運転方法。」 第4 取消理由の概要 本件の請求項1、4、5、8~10に係る特許に対して、当審が令和7年9月3日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 理由1(新規事項)令和6年2月16日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由2(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 当審の判断 1 理由1(新規事項)について (1)令和6年2月16日付け手続補正書でした補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された(下線は当審で付した。以下同様。)。 「【請求項1】 外槽と、 前記外槽内に設けられたドラムと、 前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、 前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、 前記循環流路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、 前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下である、乾燥機。」 (2)そして、本件補正後の請求項1には、「または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて」という事項(以下、「特定事項1」という。)が記載されているところ、特定事項1には、撥水回復コースの実行中、又は、運転中、ドラム内の空気温度が目標温度に到達する前から乾いた状態のコース対象物がドラム内に収容されている場合も含まれていると理解される。 (3)一方、当初明細書等には、上記特定事項1に関して、以下のような記載がされている。 「【0116】 (変形例2) 図11は、変形例2に係る乾燥機111の模式断面図である。図11に示すように、乾燥機111は、温度検知手段15の代わりに、温度検知手段18を備える点において、実施の形態1に係る乾燥機1と異なる。 【0117】 温度検知手段18は、撥水回復コース実行前におけるドラム4内の空気の初期温度t0に加えて、撥水回復コース実行中におけるドラム4内の空気の温度を測定する。 【0118】 変形例2における乾燥機111の動作は、特段記載のない限り、実施の形態1における乾燥機1の動作と共通である。以下では、実施の形態1と異なる点について説明する。 【0119】 ドラム4が空の状態で、即ち、衣類を収容していない状態で、ステップS10は実行される。また、扉21の開放を抑制するようにロックがかかる。ステップS11、S12は省略される。 【0120】 ステップS13、S14を実行した後、ステップS15の代わりに、制御部16は、温度検知手段18が測定したドラム4内の温度を取得し、取得した温度が目標温度th以上か否かを判定する。温度検知手段18は、ドラム4内の温度を一定間隔で、または連続的に測定してもよい。取得した温度が目標温度th以上である場合、制御部16は、扉21のロックを解除し、扉21を開放可能とする。取得した温度が目標温度th未満である場合、制御部16は、扉21のロックを維持し、加熱を継続する。 【0121】 扉21が開放可能になると、ユーザはドラム4に衣類を投入し、扉21を閉鎖する。制御部16は、扉21の閉鎖後、所定時間が経過すると、ステップS16~S18を実行する。所定時間は、例えば、1分である。その後、ユーザはドラム4から衣類を取り出せる。 【0122】 このような構成によって、衣類がドラム4内で拘束される時間を短縮できる。例えば、ドラム4内の空気を加熱する工程を予約運転し、衣類がドラム4内で拘束される時間を短縮できる。また、衣類を加熱している時間が短縮されるため、衣類へのダメージを低減できる。」 (4)上記(3)に示したように、当初明細書等の記載によれば、コースの運転中における外槽内に設けられたドラム内の空気温度を取得する場合については、ドラム内の空気温度が目標温度以上になるまで、すなわち、目標温度に到達するまで、衣類(乾いた状態のコース対象物)が、ドラム内に収容されていないことを前提としたものが示されるのみであり、ドラム内の空気温度が目標温度に到達する前から衣類(乾いた状態のコース対象物)がドラム内に収容されたものについては、当初明細書等に、何ら記載も示唆もされていない。 また、衣類へのダメージを低減できるという効果も勘案すると、撥水回復コースの実行中、又は、運転中におけるドラム内の空気温度を取得する場合について、ドラム内の空気温度が目標温度に到達する前から衣類(乾いた状態のコース対象物)がドラム内に収容されたものは、当初明細書等の記載から自明な事項ということもできない。 したがって、本件特許の請求項1、4、8に係る上記「特定事項1」に関する補正は、新規事項の追加にあたる。 (5)以上によれば、本件補正は、本件出願の当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 理由2(サポート要件)について 上記1(1)で示したように、請求項1には「または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて」という特定事項1が記載されているところ、上記1(3)~(4)に示したとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、コースの運転中における外槽内に設けられたドラム内の空気温度を取得する場合については、ドラム内の空気温度が目標温度以上になるまで、すなわち、目標温度に到達するまで、衣類(乾いた状態のコース対象物)が、ドラム内に収容されていないことを前提としたものが示されるのみであり、上記特定事項1に係る、ドラム内の空気温度が目標温度に到達する前から衣類(乾いた状態のコース対象物)がドラム内に収容されたものについては何ら記載も示唆もされていない。 そうすると、本件特許の請求項1に記載された発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 以上によれば、本件特許の請求項1に係る発明並びに請求項1を引用する請求項4又は請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 3 特許権者の主張に対して 特許権者は、令和7年3月24日提出の意見書で、特定事項1について、本件明細書に記載の「実施の形態1」または「変形例1」と、「変形例2」との組み合わせによって自明である旨、具体的には、「例えば、「実施の形態1」に「変形例2」の温度検知手段を適用した場合において、「実施の形態1」に基づいて「目標温度に対応する時間」を予め決定して、「目標温度に対応する時間」において温度検知手段の温度が目標温度に到達していないときは、目標温度をより確実に達成するために、加熱を継続すること、さらに目標温度に到達するまで温度検知手段を監視することは当業者にとって自明である。」(3頁26行~4頁2行)と主張する。 しかし、当初明細書等には、「「目標温度に対応する時間」を予め決定して、「目標温度に対応する時間」において温度検知手段の温度が目標温度に到達していないときは、目標温度をより確実に達成するために、加熱を継続すること、さらに目標温度に到達するまで温度検知手段を監視すること」について、何ら記載も示唆もされていない。 また、「実施の形態1」または「変形例1」は、ドラム内の衣類を加熱する際に、逐次、ドラム内の温度を監視しなくてもよいように制御するものである一方、「変形例2」は、衣類がドラム4内で拘束される時間を短縮し、衣類へのダメージを低減するため、ドラム内の温度測定時に衣類がドラム内にないことを前提とするものであり、通常、両者を組み合わせようという発想には至らない。また、仮に、「実施の形態1」または「変形例1」と、「変形例2」との両者を、組み合わせ得たとしても、どの例も、衣類がドラム内にある場合に逐次、ドラム内の温度を監視するものではないため、特許権者が主張するような構成には至らない。 したがって、上記特許権者の主張は採用できない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、概ね、次のとおりである。 (1)申立理由1(進歩性) 本件特許の請求項1、4~5、10に係る発明(以下、請求項に係る発明を請求項の番号に従い「本件発明1」等という。)は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証~甲第7号証及び甲第10号証~甲第12号証の記載事項に基いて、また、本件発明8~9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第12号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、4~5、8~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(明確性) 請求項1、4~5、8~10は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件発明1、4~5、8~10に係る特許は、特許法36条6項2号の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法 申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。証拠番号に従い、「甲第1号証」~「甲第12号証」を、「甲1」~「甲12」などという。 甲1:韓国公開特許第10-2018-0083827号公報 甲2:平有哉編,「ゴアテックスウェアのメンテナンス方法-洗濯とアイロンで撥水性回復」,https://yamatabitabi.com/archives/123334 甲3:「レインウエアのお手入れ方法(洗濯・はっ水処理とリペアについて)」,https://support.montbell.jp/common/system/infomation/disp.php?c=7&id=5 甲4:特開2019-187484号公報 甲5:櫻田一郎著,「繊維の化学」,初版 甲6:「ヤマレコ質問箱 カテゴリ:装備レインウエアのお手入れ(撥水性能が回復する温度)」,https://www.yamareco.com/modules/plzXoo/index.php?action=detail&qid=lO68 甲7:林拓郎編,「道具【やってみた】アイロンでウェアの撥水性が復活するってホント?」,https://www.a-kimama.com/dougu/2016/06/48612/ 甲8:特開2007-268158号公報 甲9:特開2007-301283号公報 甲10:「GORE-TEX ウェアのお手入れ方法-全編」,https://www.youtube.com/watch?v=cLcBevvSxhY&t=1s 甲11:「【ゴアテックス】を乾燥機にかける際の注意点は?撥水効果復活のコツ」,https://www.olive-hitomawashi.com/living/2020/08/post-3377.html 甲12:「ワイシャツは乾燥機にかけると縮む?乾燥機が使えるワイシャツの見分け方を解説!」,https://haruyama.jp/announcement/detail/0000000000000245 3 申立理由1(進歩性)について (1)甲1について ア 甲1には、以下の事項が開示されている。 (ア)甲1の段落0034~0037、0040~0046及び図1~2の開示内容から、衣類乾燥機1は、本体10と、前記本体10内に設けられた乾燥筒20と、外部から流入される空気を加熱する加熱部80と、前記加熱部80と乾燥筒吸気口24aとを連結する熱風供給部40と、乾燥筒20内部の空気が外部に排出されるように案内する、前方排気ダクト51と後方排気ダクト53とを含む排気ダクト50と、前記前方排気ダクト51と前記後方排気ダクト53の間に設けた送風装置60と、を備える点が示されているといえる。 (イ)また、甲1の段落0050及び図3の開示内容から、衣類乾燥機1は、制御部120を備える点が示されているといえる。 さらに、甲1の段落0051~0053、0059~0065、0072~0086、図4~5の開示内容から、制御部120は、前記乾燥筒20に収容された機能性衣類である被乾燥物の撥水性能を回復させる特殊素材乾燥コースを実行可能であり、前記制御部120は、前記特殊素材乾燥コースにおいて、加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させる点が示されているといえる。 (ウ)加えて、甲1の段落0069の開示内容から、第1基準乾燥温度T1は61~62℃であり、第2乾燥温度T2は67℃である点が示されているといえる。 イ 甲1に記載された発明 前記「ア」の開示内容を総合して、本件発明の表現に倣って整理すると甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 (甲1発明1) 「本体10と、 前記本体10内に設けられた乾燥筒20と、 外部から流入される空気を加熱する加熱部80と、 前記加熱部80と乾燥筒吸気口24aとを連結する熱風供給部40と、乾燥筒20内部の空気が外部に排出されるように案内する、前方排気ダクト51と後方排気ダクト53とを含む排気ダクト50と、 前記前方排気ダクト51と前記後方排気ダクト53の間に設けた送風装置60と、 制御部120と、 を備え、 前記制御部120は、前記乾燥筒20に収容された機能性衣類である被乾燥物の撥水性能を回復させる特殊素材乾燥コースを実行可能であり、 前記制御部120は、前記特殊素材乾燥コースにおいて、 加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて前記被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ、 前記第1基準乾燥温度T1は61~62℃であり、前記第2乾燥温度T2は67℃である、衣類乾燥機1。」 (甲1発明2) 「機能性衣類である被乾燥物の撥水性能を回復させる衣類乾燥機1の運転方法であって、 送風装置60を作動させて、外部から流入される空気を、加熱部80と乾燥筒吸気口24aとを連結する熱風供給部40によって乾燥筒20に案内し、前方排気ダクト51と後方排気ダクト53とを含む排気ダクト50により、前記乾燥筒20内部の空気が外部に排出されるように案内するとともに、前記加熱部80を作動させて、外部から流入される空気を加熱する工程を含み、 制御部120は、前記加熱する工程において、 加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて前記被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ、 前記第1基準乾燥温度T1は61~62℃であり、前記第2乾燥温度T2は67℃である、衣類乾燥機1の運転方法」 (2)対比及び判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明1とを、その有する機能に照らして対比する。 a 甲1発明1の「乾燥筒20」は本件発明1の「ドラム」に相当し、同様に、「加熱部80」は「加熱手段」に、「送風装置60」は「送風部」に、「制御部120」は「制御部」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明1の「前記加熱部80と乾燥筒吸気口24aとを連結する熱風供給部40と、乾燥筒20内部の空気が外部に排出されるように案内する、前方排気ダクト51と後方排気ダクト53とを含む排気ダクト50と」と、本件発明1の「前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路」とは、「ドラム内に空気を流入し、ドラム外に空気を流出させるための空気通路」の点で共通する。 そして、甲1発明1の「前記前方排気ダクト51と前記後方排気ダクト53の間に設けた送風装置60と、」と本件発明1の「前記循環流路に設けられた送風部」とは、「該空気通路に設けられた送風部」の点で共通する。 b 甲1発明1の「機能性衣類である被乾燥物」及び「被乾燥物」は、本件発明1の「コース対象物」に相当し、同様に、「衣類乾燥機1」は「乾燥機」に、相当する。 また、甲1発明1の「機能性衣類である被乾燥物の撥水性能を回復させる特殊素材乾燥コース」と本件発明1の「乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コース」とは、「コース対象物の撥水性を回復させる撥水回復のためのコース」である点で共通する。 さらに、本件発明1の「前記コース対象物が目標温度となるように」したものは、コース対象物が撥水回復するようにしたものに含まれるから、甲1発明1の 「加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ、 前記第1基準乾燥温度T1は61~62℃であり、前記第2乾燥温度T2は67℃である、」と本件発明1の 「前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下である、」とは、「前記コース対象物が撥水回復するように、前記加熱手段及び前記送風部を作動させる」点で共通する。 c そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、以下の「一致点1」で一致し、「相違点1」~「相違点3」で相違する。 (一致点1) 「ドラムと、 空気を加熱する加熱手段と、 前記ドラム内に空気を流入し、前記ドラム外に空気を流出させるための空気通路と、 前記空気通路に設けられた送風部と、 制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記ドラムに収容されたコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復のためのコースを実行可能であり、 前記制御部は、前記撥水回復のためのコースにおいて、 前記コース対象物が撥水回復するように、前記加熱手段及び前記送風部を作動させる、乾燥機。」 (相違点1) 本件発明1は、「外槽と、前記外槽内に設けられたドラムと、前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、前記循環流路に設けられた送風部と、」を備えたものであるのに対し、 甲1発明1は、「外槽」を備えたものではなく、そのため、乾燥筒20は外槽内に設けられたものではなく、また、加熱部80は外槽における空気を加熱するものではなく、更に、熱風供給部40及び排気ダクト50は、加熱手段と外槽とを接続する循環流路でなく、加えて、送風装置60は、循環流路に設けられたものではない点。 (相違点2) 撥水回復のためのコースに関し、本件発明1は、ドラムに収容された「乾いた状態のコース対象物」の撥水性を回復させる「撥水回復コース」であり、また、制御部は、「前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、」制御するものであり、「前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下である、」のに対し、 甲1発明1は、特殊素材乾燥コースが、乾いた状態の被乾燥物であるか明らかでなく、また、制御部120は、前記特殊素材乾燥コースにおいて、乾燥筒20内の温度を測定し、第1基準乾燥温度T1(61~62℃)又は第2乾燥温度T2(67℃)に制御するものであるものの、被乾燥物の温度が42.5℃より高く60℃以下である目標温度になるように制御するものとはいえない点。 (相違点3) 撥水回復のためのコースの具体的な制御に関し、本件発明1は、前記コース対象物が目標温度となるように、「前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させ」るもの、または、「前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させ」るものであるのに対し、 甲1発明1は、「加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ」るものである点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 甲1の開示内容によれば、「特殊素材乾燥コース」は、第1乾燥工程、第2乾燥工程、冷却工程の3つの工程からなるものであるところ、第1乾燥工程から第2乾燥工程に移る際に、乾き度センサ90を用いて被乾燥物の乾き度を測定していること、また、目標乾き度に達していても、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完全に完了することを待っていることから、被乾燥物は、乾き度が低いこと、すなわち、湿った状態であることが前提とされていると理解することが合理的である。 そうすると、甲1に示される「特殊素材乾燥コース」における、被乾燥物は、「乾いた状態」にあるものではないから、甲1に示される「特殊素材乾燥コース」は、「乾いた状態のコース対象物」を選択してその撥水性を回復させるものではない。 b また、甲1に示される「特殊素材乾燥コース」では、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度を制御するものであり、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御することについて、甲1には何ら開示されていない。 c 以上によれば、甲1に示される「特殊素材乾燥コース」は、そもそも、湿った状態のコース対象物を前提としたものであって、「乾いた状態」ものを対象としたものではなく、また、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御したものでもないから、そのようなものにおいて、コース対象物を、「乾いた状態のコース対象物」に変更する動機はなく、また、「特殊素材乾燥コース」について、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御するようなコースとする動機もない。 d そして、甲2~3、10~11に示されるように、ゴアテックスウェアを乾燥機で熱処理して撥水回復させることが周知の技術事項であり、そのゴアテックスウェアには「乾いた」ものも含まれる(例えば、甲2、甲10~甲11)としても、前記「a」で示したように、甲1発明1の「特殊素材乾燥コース」のコース対象物は、「湿った状態」のコース対象物を前提としたものであるから、甲1発明1の「特殊素材乾燥コース」のコース対象物として、前記甲2~3、10~11に示される技術事項を採用して、「湿った状態」のものを「乾いた状態」のものに代える動機はない。 また、甲2~5に示されることから、ゴアテックスウェア等の撥水回復処理時に加熱温度の上限を60℃以下とすることは周知の技術事項であり、また、甲6~7に示されることから、ゴアテックスウェア等の撥水回復処理時にゴアテックスウェアの温度が40℃より高くなるように加熱する必要があることは公知の技術事項であり、更に、甲11~12に示されることから、コアテックスがコインランドリーの乾燥機で熱処理して撥水機能を回復させることができ、その場合、50~60℃(低温)の熱風で加熱すべきであることが自明の事項であるといえたとしても、甲1発明1の「特殊素材乾燥コース」について、前記「c」で示したように、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御するようなコースに代える動機はないから、これら甲2~7、10~12に示される事項を採用する動機はない。 さらに、甲2~7、10~12に示される事項を総合して勘案しても、衣類乾燥機において、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的な42.5℃より高く60℃以下である目標温度となるように制御するようなコースを設けることについて、開示されているとはいえない。 e そうすると、甲1発明1において、甲2~7、10~12に示される事項を勘案しても、本件発明1の相違点2に係る構成とすることはできない。 なお、甲8~9には、撥水性処理が施された衣類の撥水回復に関することについて何ら開示されておらず、甲1発明1において、甲8~9に示される事項を勘案しても、本件発明1の相違点2に係る構成とすることはできない。 f 以上によれば、相違点1、3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、甲1発明1及び甲2~7、10~12の記載事項に基いて容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明4について 本件発明4は請求項1を引用する請求項4に係る発明であるところ、本件発明4は、本件発明1を特定するための事項を全て含み、本件発明1をさらに減縮したものである。 したがって、その余の事項を検討するまでもなく、前記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明4は、甲1発明1及び甲2~7、10~12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明5について (ア)対比 本件発明5と甲1発明1とを対比すると、前記「ア(ア)」で示した、「一致点1」で一致し、「相違点1」(但し、「本件発明1」とあるのを「本件発明5」と読み替える)で相違し、更に、以下の「相違点2a」、「相違点3a」で相違する。 (相違点2a) 撥水回復のためのコースに関し、本件発明5は、ドラムに収容された「乾いた状態のコース対象物」の撥水性を回復させる「撥水回復コース」であり、また、制御部は、「前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、」制御するものであり、「前記目標温度は、45℃以上60℃以下である、」のに対し、 甲1発明1は、特殊素材乾燥コースが、乾いた状態の被乾燥物であるか明らかでなく、また、制御部120は、前記特殊素材乾燥コースにおいて、乾燥筒20内の温度を測定し、第1基準乾燥温度T1(61~62℃)又は第2乾燥温度T2(67℃)に制御するものであるものの、被乾燥物の温度が45℃以上60℃以下である目標温度になるように制御するものとはいえない点。 (相違点3a) 撥水回復のためのコースの具体的な制御に関し、本件発明5は、前記コース対象物が目標温度となるように、「前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させ」るものであるのに対し、 甲1発明1は、「加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ」るものである点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず、相違点2aについて検討する。 本件発明5の「相違点2a」に係る構成は、本件発明1の「相違点2」に係る構成の「目標温度」について、「42.5℃より高く60℃以下である、」とあるのを更に限定して「45℃以上60℃以下である、」とされたものである。 そうすると、相違点2について検討した理由(前記「ア(イ)a~e」参照)と同様の理由により、甲1発明1において、甲2~7、10~12に示される事項を勘案しても、本件発明5の相違点2aに係る構成とすることはできない。 b 以上によれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、当業者であっても、甲1発明1及び甲2~7、10~12の記載事項に基いて容易に発明することができたものではない。 エ 本件発明8について 本件発明8は請求項1を引用する請求項8に係る発明であるところ、本件発明8は、本件発明1を特定するための事項を全て含み、本件発明1をさらに減縮したものである。 したがって、その余の事項を検討するまでもなく、前記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明8は、甲1発明1及び甲2~12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件発明9について (ア)対比 本件発明9と甲1発明1とを対比すると、前記「ア(ア)」で示した、「一致点1」で一致し、「相違点1」、「相違点2」(但し、「本件発明1」とあるのを「本件発明9」と読み替える)で相違し、また、前記「ウ(ア)」で示した「相違点3a」(但し、「本件発明5」とあるのを「本件発明9」と読み替える)で相違し、更に、以下の「相違点4」で相違する。 (相違点4) 加熱手段について、本件発明9は、「ヒートポンプ装置を有する」のに対し、甲1発明1は、ヒータを有する点。 (イ)判断 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 そして、相違点2については、前記「ア(イ)a~e」で判断したとおりである。 したがって、甲1発明1において、甲2~12に示される事項を勘案しても、本件発明9の相違点2に係る構成とすることはできない。 以上によれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、当業者であっても、甲1発明1及び甲2~12の記載事項に基いて容易に発明することができたものではない。 カ 本件発明10について (ア)対比 本件発明10と甲1発明2とを、その有する機能に照らして対比する。 a 甲1発明2の「機能性衣類である被乾燥物」及び「被乾燥物」は、本件発明10の「コース対象物」に相当し、同様に、「衣類乾燥機1」は「乾燥機」に、「送風装置60」は「送風部」に、「加熱部80」は「加熱手段」に、「制御部120」は「制御部」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明2の「外部から流入される空気を、加熱部80と乾燥筒吸気口24aとを連結する熱風供給部40によって乾燥筒20に案内し、前方排気ダクト51と後方排気ダクト53とを含む排気ダクト50により、前記乾燥筒20内部の空気が外部に排出されるように案内する」と、本件発明1の「前記加熱手段と前記外槽との間で空気を循環させる」とは、「空気を案内する」点で共通する。 b また、甲1発明2の「加熱部80を作動させて、外部から流入される空気を加熱する」ことと本件発明10の「前記加熱手段を作動させて、」「前記外槽における空気を加熱する」こととは、「前記加熱手段を作動させて、空気を加熱する」点で共通する。 そして、甲1発明2の「送風装置60を作動させて、外部から流入される空気を、加熱部80と乾燥筒吸気口24aとを連結する熱風供給部40によって乾燥筒20に案内し、前方排気ダクト51と後方排気ダクト53とを含む排気ダクト50により、前記乾燥筒20内部の空気が外部に排出されるように案内するとともに、前記加熱部80を作動させて、外部から流入される空気を加熱する工程」と本件発明10の「送風部を作動させて、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるとともに、前記加熱手段を作動させて、前記コース対象物の目標温度を42.5℃より高く60℃以下として、前記外槽における空気を加熱するステップ」とは、「送風部を作動させて、空気を案内するとともに、前記加熱手段を作動させて、空気を加熱するステップ」の点で共通する。 c さらに、本件発明10の「前記コース対象物が目標温度となるように」したものは、コース対象物が撥水回復するようにしたものに含まれるから、甲1発明2の 「加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて前記被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ、 前記第1基準乾燥温度T1は61~62℃であり、前記第2乾燥温度T2は67℃である、」と、本件発明10の 「前記コース対象物の目標温度を42.5℃より高く60℃以下として、」「前記コース対象物が前記目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、 または、前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられた前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する、」とは、「前記コース対象物が撥水回復するように、前記加熱手段及び前記送風部を作動させる」点で共通する。 d そうすると、本件発明10と甲1発明2とは、以下の「一致点2」で一致し、「相違点5」~「相違点7」で相違する。 (一致点2) 「コース対象物の撥水性を回復させる乾燥機の運転方法であって、 送風部を作動させて、空気を案内するとともに、前記加熱手段を作動させて、空気を加熱するステップ、 を含み、 制御部は、前記加熱するステップにおいて、 前記コース対象物が撥水回復するように、前記加熱手段及び前記送風部を作動させる、乾燥機の運転方法。」 (相違点5) 本件発明10は、「送風部を作動させて、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるとともに、前記加熱手段を作動させて、」「前記外槽における空気を加熱する」のに対し、 甲1発明1は、「外槽」を備えたものではなく、そのため、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるものではなく、また、加熱部80は外槽における空気を加熱するものではない点。 (相違点6) 本件発明10は、コース対象物が「乾いた状態の」コース対象物であり、また、制御部は、加熱するステップにおいて、「前記コース対象物の目標温度を42.5℃より高く60℃以下として、」「前記コース対象物が目標温度となるように、」前記加熱手段及び前記送風部を作動させるのに対し、 甲1発明2は、被乾燥物が乾いた状態の被乾燥物であるか明らかでなく、また、制御部120は、加熱する工程において、乾燥筒20内の温度を測定し、第1基準乾燥温度T1(61~62℃)又は第2基準乾燥温度T2(67℃)に制御するものであるものの、被乾燥物の温度が42.5℃より高く60℃以下である目標温度になるように、前記加熱部80及び前記送風装置60を作動させるものとはいえない点。 (相違点7) 加熱するステップの具体的な制御に関し、本件発明10は、前記コース対象物が目標温度となるように、「前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させ」る、または、「前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、」前記コース対象物が前記目標温度となるように、「運転中における前記外槽内に設けられた前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する、」のに対し、 甲1発明2は、「加熱部80のヒータをオンして第1乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20内の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第1基準乾燥温度T1に達すると、ヒータをオンオフして第1基準乾燥温度T1が維持されるように制御し、その後、乾き度センサ90を用いて前記被乾燥物の乾き度を測定し、乾き度が目標乾き度に達すると、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完了した後に、ヒータをオンして第2乾燥工程が開始され、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度が第2基準乾燥温度T2に達すると、ヒータをオンオフして第2基準乾燥温度T2を維持し、第2乾燥工程に割り当てられた第2基準乾燥時間t2に達すると、冷却工程を実行し、冷却工程では、ヒータをオフし、送風装置60の送風ファン61を、冷却工程に割り当てられた時間t3、動作させ、」る点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、まず、相違点6について検討する。 甲1の開示内容によれば、「特殊素材乾燥コース」に示される加熱する工程では、第1乾燥工程、第2乾燥工程、冷却工程の3つの工程からなるものであるところ、第1乾燥工程から第2乾燥工程に移る際に、乾き度センサ90を用いて被乾燥物の乾き度を測定していること、また、目標乾き度に達していても、第1乾燥工程に割り当てられた第1基準乾燥時間t1が完全に完了することを待っていることから、被乾燥物は、乾き度が低いこと、すなわち、湿った状態であることが前提とされていると理解することが合理的である。 b また、甲1の「特殊素材乾燥コース」に示される加熱する工程では、温度センサ95を用いて乾燥筒20の温度を測定し、乾燥筒20内の温度を制御するものであり、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御することについて、甲1には何ら開示されていない。 c 以上によれば、甲1に示される加熱する工程は、そもそも、湿った状態のコース対象物を前提としたものであって、「乾いた状態」ものを対象としたものではなく、また、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御したものでもないから、そのようなものにおいて、コース対象物を、「乾いた状態」のコース対象物に変更する動機はなく、また、加熱する工程について、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるように制御するものとする動機もない。 d そして、甲2~3、10~11に示されるように、ゴアテックスウェアを乾燥機で熱処理して撥水回復させることが周知の技術事項であり、そのゴアテックスウェアには「乾いた」ものも含まれる(例えば、甲2、甲10~甲11)としても、前記「a」で示したように、甲1発明2のコース対象物は、「湿った状態」のコース対象物を前提としたものであるから、甲1発明2のコース対象物として、前記甲2~3、10~11に示される技術事項を採用して、「湿った状態」のものを「乾いた状態」のものに代える動機はない。 また、甲2~5に示されることから、ゴアテックスウェア等の撥水回復処理時に加熱温度の上限を60℃以下とすることは周知の技術事項であり、また、甲6~7に示されることから、ゴアテックスウェア等の撥水回復処理時にゴアテックスウェアの温度が40℃より高くなるように加熱する必要があることは公知の技術事項であり、更に、甲11~12に示されることから、コアテックスがコインランドリーの乾燥機で熱処理して撥水機能を回復させることができ、その場合、50~60℃(低温)の熱風で加熱すべきであることが自明の事項であるといえたとしても、甲1発明2の加熱する工程について、前記「c」で示したように、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的に「42.5℃より高く60℃以下である」目標温度となるような制御に代えるような動機はないから、これら甲2~7、10~12に示される事項を採用する動機はない。 さらに、甲2~7、10~12に示される事項を総合して勘案しても、衣類乾燥機において、コース対象物が「乾いた状態」であることに着目し、乾いた状態のコース対象物が、具体的な42.5℃より高く60℃以下である目標温度となるように制御することについて、開示されているとはいえない。 e そうすると、甲1発明2において、甲2~7、10~12に示される事項を勘案しても、本件発明10の相違点6に係る構成とすることはできない。 なお、甲8~9には、撥水性処理が施された衣類の撥水回復に関することについて何ら開示されておらず、甲1発明2において、甲8~9に示される事項を勘案しても、本件発明10の相違点6に係る構成とすることはできない。 f 以上によれば、相違点5、7について検討するまでもなく、本件発明10は、当業者であっても、甲1発明2及び甲2~7、10~12の記載事項に基いて容易に発明することができたものではない。 4 申立理由2(明確性)について (1)申立人が主張する申立理由2(明確性)の具体的内容は、特許異議申立書の71~73頁に示されるとおりであるところ、その概要は以下のとおりである。 請求項1に「前記コース対象物が目標温度となるように、」とあるが、「前記制御部」が実際に行っている制御は、「設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて」いるだけであって、コース対象物の温度情報は用いていない。そうすると、上記の制御内容のみで如何にして「前記コース対象物が目標温度となる」ことを担保しているのかが不明といわざるを得ない。 また、「前記制御部」が実際に行っている制御は、「前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて」いるだけであって、コース対象物の温度は取得しておらず、上記の制御内容のみで如何にして「前記コース対象物が目標温度となる」ことを担保しているのかが不明であるといわざるを得ない。 同様に、請求項10にも「前記コース対象物が目標温度となるように、」とあるが、コース対象物の温度情報は用いていない。そうすると、如何にして「前記コース対象物が目標温度となる」ことを担保しているのかが不明といわざるを得ない。 (2)明確性の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (3)請求項1、5、9に「前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記コース対象物が目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、」という事項が、また、請求項10に、「制御部は、前記加熱するステップにおいて、前記コース対象物が前記目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、」という事項が、記載されているところ、これら事項について、最終的にコース対象物が目標温度になるように、撥水回復コース、あるいは、加熱するステップにより制御する点で、明確である。 そして、前記事項の制御内容については、本件明細書の段落0043~0065並びに本件図面の図8B及び図9の記載から、例えば、撥水回復コース、あるいは、加熱するステップにおいて、図8Bのようなテーブルを設けるなどして、前記事項に係る制御を行い得ることを理解することができる。 したがって、請求項1、5、9~10の記載及び請求項1の記載を引用する請求項4、8の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)また、請求項1に「前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、」「前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、」という事項が、また、請求項10に「前記コース対象物がドラムに収容される前の状態において、前記ドラムの開口を覆う扉にロックをかけて、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられた前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達すると、前記扉の前記ロックを解除する、」という事項が記載されているところ、これら事項について、最終的に、コース対象物が目標温度になるように、撥水回復コース、あるいは、加熱するステップにより制御する点で、明確である。 そして、前記事項の制御内容については、本件明細書の段落0116~0122及び本件図面の図9の記載から、例えば、撥水回復コース、あるいは、加熱するステップにおいて、前記事項に係る制御を行い得ることを理解することができる。 したがって、請求項1、10の記載及び請求項1の記載を引用する請求項4、8の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (5)以上によれば、本件特許の請求項1、4~5、8~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号により取り消すことができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1、4、8に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件の請求項1、4、8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、本件の請求項5、9、10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。 加えて、他に本件の請求項5、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700853

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