特許異議申立
2025-701028
情報処理方法、情報処理装置、及び、プログラム
- 審判番号
- 2025-701028
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-204435
- 登録番号
- 7717380
- 請求日
- 2025年10月28日
- 審決日
- 2026年04月27日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社東京カンテイ
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】末岡 義孝
- 【異議申立人代理人】杉尾 雄一
- 審判長/審判官
- 審判長 野崎 大進
- 審判官 田川 泰宏
- 審判官 岩橋 龍太郎
- 分類
- P1651.121-Y (G06Q) / P1651.537-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7717380号発明「情報処理方法、情報処理装置、及び、プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7717380号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7717380号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年12月16日の出願であって、令和7年7月25日にその特許権の設定登録がされ、同年8月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年10月28日に異議申立人 末岡 義孝(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7717380号の請求項1~7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明7」という。)
「【請求項1】
コンピュータが、
評価の対象の画地の位置情報を受け付けることと、
登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データと、道路を示す道路データと、を取得することと、
前記筆界データから、前記対象の画地の複数の辺をなす複数の線分を特定することと、
前記対象の画地について、前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて、道路に接面する辺を特定することと、
を含む情報処理方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと前記1又は複数の道路それぞれとの距離のうち、前記距離が所定の閾値未満である線分を含む1又は複数の辺を、接面する辺として特定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記線分上の代表点から前記道路を代表する線分へ垂線を引いた場合の前記垂線の長さを前記距離として取得する、
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記対象の画地について、前記道路に接面する辺が複数ある場合には、優先度が最も高い辺を前記対象の画地の正面と判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、
方位、接面する道路の路線価、前記接面する道路の幅員、及び、前記接面する道路と接面する辺の長さ、のうちの少なくとも一つに基づいて、前記優先度を決定する、
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
評価の対象の画地の位置情報を受け付けることと、
登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データと、道路を示す道路データと、を取得することと、
前記筆界データから、前記対象の画地の複数の辺をなす複数の線分を特定することと、
前記対象の画地について、前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて、道路に接面する辺を特定することと、
を実行する制御部、
を備える情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
評価の対象の画地の位置情報を受け付けることと、
登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データと、道路を示す道路データと、を取得することと、
前記筆界データから、前記対象の画地の複数の辺をなす複数の線分を特定することと、
前記対象の画地について、前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は
複数の道路それぞれと、の距離に基づいて、道路に接面する辺を特定することと、
を実行させるためのプログラム。」
第3 申立理由の概要
1 申立人の提出した証拠
申立人は、主たる証拠として甲第1号証(特開2002-236734号公報。以下「甲1」という。)及び従たる証拠として甲第2号証(特開2003-108707号公報。以下、「甲2」という。)を提出している。
2 申立人の主張
申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1、4~7は、甲1記載の発明と同一であるから、本件発明1、4~7についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1~7は、甲1記載の発明と、甲2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第4 甲号証
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。以下同じ。)。
「【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。図1は本発明の実施の形態による画地評価装置の概略構成図である。同図において、画地評価装置1は、中央処理装置(CPU)2と、画地情報とその画地に面する道路の情報(以下、隣接道路地図情報と称する)とを格納する画地情報情報ベース3と、路線価に関係付けられた路線情報を格納する路線情報データベース4と、GIS(地図情報システム)エンジン5と、画地条件に対応した補正率を表として記憶しておく補正率表記憶部6と、前回の画地評価の際に決定された補正率と比較するために、前回の補正率を格納しておくと共に、今回評価しようとする画地について決定された補正率を格納する補正率記憶部7と、表示部8と、評価対象領域記憶部9と、これらを接続するバス10とを備えている。この画地評価装置1は市販のパーソナルコンピュータとその周辺機器を用いて、本発明による画地評価方法を実現するプログラムであるGISエンジン5を搭載することにより構成することができる。画地情報データベース3、路線情報データベース4、補正率表記憶部6、補正率記憶部7、表示部8及び評価対象領域9は画地評価装置1の外部に設けてもよい。
【0020】
図2は画地評価装置1内のGISエンジン5の機能を示すブロック図である。同図において、GISエンジン5は、選択部21と、計測部22と、評価部23とを備えている。選択部21は、画地評価をする担当者により与えられる選択命令に応答して、路線情報データベース4内の路線地図情報から評価しようとする領域(以下、評価対象領域と称する)を選択する。評価対象領域は、評価する画地を1つだけ含む領域でもよいし、路線に囲まれた1つの街区あるいは完全に路線に囲まれていなくても路線によりほぼ囲まれている街区であってもよい。1つの街区が評価対象領域である場合は、1つの評価対象領域に複数の画地が含まれる。
【0021】
評価対象領域記憶部9は、路線情報データベース4(図1参照)から、選択部21により選択された評価対象領域内の路線の路線番号と路線価格を読み出して格納するとともに、同じ評価対象領域内の画地地図情報と隣接道路地図情報とを画地地図情報データベース4(図1参照)から読み出して格納する。計測部22は、評価対象領域内の画地情報に、該画地に近接する路線の路線情報を関係付ける。路線情報は、後述する実施の形態では路線番号であるが、番号に限定されず他の記号または符号等であってもよい。以下の説明では、路線情報が路線番号であるとする。各路線番号には路線価が予め関係付けられている。画地情報に路線番号を関係付けることにより、後に詳述するようにして評価対象領域内の画地の各々の間口に関する画地条件(すなわち、間口長及び間口位置)を含む画地条件が導出される。画地情報に路線番号を関係付ける手法は、後に詳述する。
【0022】
評価部23は、導出された画地条件に対応する補正率を、補正率表記憶部6(図1参照)に格納されている補正率表から決定する。評価部23はまた、計測部22により算出された画地条件と補正率と路線価とを用いて、例えば自治省の定める固定資産評価基準に基づいて評価対象領域内の画地の各々の評点数を算出する。評価対象領域が1つの画地のみに対応している場合はその1つの画地の評点数が自動算出され、複数の画地に対応している場合はその複数の画地の評点数が順次自動算出される。
【0023】
計測部22は、路線特定手段24と、間口特定手段25と、条件算出手段26とを備えている。路線特定手段24は、評価対象領域内の画地の各々が面している路線の路線番号を該画地の境界線であって路線に面しているものに割り当てるものであって、隣接路線割り当て手段241と路線価抽出手段242とを備えている。隣接路線割り当て手段241は、画地の各々に隣接している道路に対応する路線の路線番号を路線情報データベース4(図1参照)から抽出して、図4を参照して後に詳述するようにして画地の境界線に割り当てる。路線価抽出手段242は、抽出された路線の路線番号のそれぞれに関係付けられている路線価を路線情報データベース4から抽出する。」
「【0028】
図3から図6は、図1に示した画地評価装置を利用した画地評価方法を説明するフローチャートである。また、図7はこの方法による画地の評点数の計算の処理の流れを示す説明図である。以下、図2から図7を用いて本発明の実施の形態による画地評価方法を説明する。図3はGISエンジンの動作の概略を説明するフローチャートである。図示のように、ステップS31で路線情報データベース4から図7の(b)に示すような路線地図情報を読み出す。
【0029】
次にステップS32で,図7の(a)に示すような、図7の(b)に示した路線地図情報と同じ範囲にある画地地図情報と隣接道路地図情報を画地情報データベース3から読み出す。読み出された路線地図情報と画地地図情報と隣接道路地図情報とは、図7の(c)に示すように重ね合わされて表示部8に表示される。次にステップS33で担当者は表示部8に表示された情報から評価対象領域を選択部21を用いて選択する。図7の(b)に示すような地図上の路線72、73、74及び75で囲まれた1街区の領域71を選択することもできるし、その街区の中の一つ又は複数の画地を選択することもできる。路線で完全に囲まれていない領域であっても、路線の一部に接している画地及び道路を選択してもよい。選択は画面上に表示された選択しようとする領域をマウスでクリックすることにより、あるいはその領域内の任意の座標をキーボードから入力することにより行われる。これにより、そもそも評価対象領域内の画地とは無関係な路線を排除すると共に、自動計算処理の高速化が図れる。
【0030】
次にステップS34で、計測部22内の路線特定手段24と間口特定手段25により、評価対象領域内の各画地についてその境界線に、その画地に近接する路線の路線番号を関係付ける。この関係付けの仕方は図4により後に詳述する。選択された評価対象領域内の路線に関係付けられた路線番号及び路線価は評価対象領域記憶部9(図1)に格納される。図7の(b)において、03501、03502、0501、0502はそれぞれ路線番号である。
【0031】
次にステップS35で、評価対象領域の全画地について評点数が算出されたかを判定する。その判定結果が否であれば、ステップS34にて路線番号の関係付けられているが未だ評点数が算出されていない一つの画地について、ステップS36にてその画地の境界線を間口候補とし、これに基づいた画地条件に対応する補正率を補正率表記憶部6(図1参照)を参照して決定し、最適な評点数となる間口を特定する。評点数の算出は、特定間口における画地条件と補正率と路線価とを用いて、例えば自治省で定めた固定資産評価基準により行う。最適な評点数を今回評価された画地の評価結果とする。間口候補に基づく画地条件には、間口に関する画地条件とその他の画地条件がある。間口に関する画地条件とは間口長と間口の位置である。間口長は図2の間口補正手段252と間口長算出手段261により算出する。ステップS36における間口の特定動作は後に図5により詳述する。その他の画地条件は図2の蔭地割合算出手段262と路線位置特定手段263により導出する。
【0032】
次いでステップS37で、該特定間口における評点数の補正率を前回の画地評価の際に得られる補正率と比較するために、補正率記憶部7に格納しておく。尚、今回格納された補正率は、次回の画地評価の際には、前回画地評価時の補正率として利用される。前々回以前の画地評価の際に決定された補正率は、必要に応じて保存しておいてもよいし、不要であれば破棄してもよい。
【0033】
ステップS36及びS37は評価対象領域内のすべての画地について繰り返す。ステップS35の判定結果ですべての画地について評点数が算出されたと判定されると、評価対象領域の全画地の評価処理は終了する。図4は図3のステップS34の動作を詳細に説明するフローチャートである。同図において、ステップS41で、評価対象領域内の隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせる。隣接道路地図情報は図7の(a)に示すような画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である。路線地図情報は図7の(b)に示されている。これらの情報を重ね合わせた状態は図7の(c)に示されている。
【0034】
次にステップS42で評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成する。これを図7の(d)により説明すると、例えば路線番号0501の路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合う画地79の境界線76と重なる線分を他の一辺とした多角形77を隣接道路地図情報及び路線地図情報とは別のレイヤの情報として作成する。この多角形を作成するために、画地のコーナと交差する路線の交点とを結ぶ補助線771及び772を引く。上記2つの向かい合う辺に重なる線分とこれらの補助線に重なる線分とで多角形が形成される。このような多角形を評価対象領域内の全ての画地の各辺に対応して作成する。尚、画地79の隅切り部分の境界線762と重なる線分も路線番号0501の路線と重なる線分と向き合っている。このように、路線と重なる線分に向き合う画地の境界線が非直線の場合も含めて、一つの路線とその路線に向き合う画地の境界線とを互いに向き合う辺とする多角形が形成される。また、画地の境界線に向き合う路線が非直線の場合は、その非直線の路線は情報処理上は多数の小直線線分を接続したものとされるので、その小直線部分の路線と、その路線と向き合う画地の境界線とで多角形が形成される。
【0035】
次いで、図4のステップS43で夫々の多角形について路線に重なる辺を持つ多角形にその路線の路線番号を割り当てる。これを図7により説明すると、図7の(d)で、例えば多角形77は路線72に重なる辺を持っており、その多角形77にその路線72の路線番号0501を割り当てる。他の多角形についても同様にして対応する路線番号を割り当てる。
【0036】
最後に図4のステップS44で、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当てる。これを図7により説明すると、例えば多角形77の一辺と重なる画地78及び79の境界線76に、多角形77にステップS43で割り当てた路線番号0501を割り当てる。他の画地の境界線に対しても同様にして対応する路線番号を割り当てる。」
「図1
[図:0001435206000001.jpg]
」
「図2
[図:0001435206000002.jpg]
」
「図4
[図:0001435206000003.jpg]
」
「図7
[図:0001435206000004.jpg]
」
(2)甲1に記載されているといえる事項
ア 甲1の段落【0019】及び【0028】の記載を踏まえると、甲1には「中央処理装置2と、画地情報とその画地に面する道路の情報である隣接道路地図情報とを格納する画地情報データベース3と、路線価に関係付けられた路線情報を格納する路線情報データベース4と、GIS(地図情報システム)エンジン5を備えたパーソナルコンピュータである画地評価装置1を用いて実現した画地評価方法」との事項が記載されているといえる。(なお、甲1の段落【0019】には、「画地情報情報ベース3」と「画地情報データベース3」との記載が混在しているが、段落【0019】で参照している図1及び段落【0029】等の記載を踏まえると、「画地情報情報ベース3」は「画地情報データベース3」の誤記と認められる。)
イ 甲1の段落【0020】 には「GISエンジン5は、選択部21と、計測部22と、評価部23とを備えている。」とあるから、「GISエンジン5は、選択部21と、計測部22と、評価部23とを備える。」ことが記載されているといえる。
ウ 甲1の段落【0020】の「選択部21は、画地評価をする担当者により与えられる選択命令に応答して、路線情報データベース4内の路線地図情報から評価しようとする領域(以下、評価対象領域と称する)を選択する。評価対象領域は、評価する画地を1つだけ含む領域でもよい」との記載、及び、【0029】 の「担当者は表示部8に表示された情報から評価対象領域を選択部21を用いて選択する。・・・選択は画面上に表示された選択しようとする領域をマウスでクリックすることにより、あるいはその領域内の任意の座標をキーボードから入力することにより行われる。」との記載を踏まえると、「担当者は、選択部21を用いて、評価する画地を含む評価対象領域をマウスでクリックすることにより、あるいはその領域内の任意の座標をキーボードから入力することにより選択する」ことが記載されているといえる。
エ 甲1の段落【0028】、【0029】の記載事項を踏まえると、甲1には「GISエンジン5は、路線情報データベース4から路線地図情報を読み出し、画地情報データベース3から路線地図情報と同じ範囲にある画地地図情報と隣接道路地図情報を読み出す」ことが記載されているといえる。
オ 段落【0033】には「ステップS41で、評価対象領域内の隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせる。隣接道路地図情報は図7の(a)に示すような画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である。路線地図情報は図7の(b)に示されている。これらの情報を重ね合わせた状態は図7の(c)に示されている。」とあり、段落【0034】には、「ステップS42で評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成する。」とあり、段落【0036】には「ステップS44で、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当てる。」、これらの記載によれば、「GISエンジン5は、画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ、評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当てる」ことが記載されているといえる。
カ 段落【0031】には、「路線番号の関係付けられているが未だ評点数が算出されていない一つの画地について、・・・その画地の境界線を間口候補とし、・・・最適な評点数となる間口を特定する。評点数の算出は、特定間口における画地条件と補正率と路線価とを用いて、例えば自治省で定めた固定資産評価基準により行う。・・・間口に関する画地条件とは間口長と間口の位置である。」と記載されており、ここで、「路線番号の関係付けられているが未だ評点数が算出されていない一つの画地」は、上記オで「画地の境界線」に「路線番号を割り当て」られた「画地」であって、「その画地の境界線」は、上記オで「多角形の一辺と重なる画地の境界線」であるといえる。したがって、「路線番号を割り当てられた境界線を間口候補とし、間口長と間口の位置である画地条件と補正率と路線価とを用いて算出される評点数が最適となる間口候補を間口として特定する」ことが記載されているといえる。
(3)甲1に記載されている発明
上記(1)及び(2)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「中央処理装置2と、画地情報とその画地に面する道路の情報である隣接道路地図情報とを格納する画地情報データベース3と、路線価に関係付けられた路線情報を格納する路線情報データベース4と、GIS(地図情報システム)エンジン5を備えたパーソナルコンピュータである画地評価装置1を用いて実現した画地評価方法であって、(上記(2)ア)
前記GISエンジン5は、選択部21と、計測部22と、評価部23とを備え、(上記(2)イ)
担当者は、選択部21を用いて、評価する画地を含む評価対象領域をマウスでクリックすることにより、あるいはその領域内の任意の座標をキーボードから入力することにより選択し、(上記(2)ウ)
前記GISエンジン5は、路線情報データベース4から路線地図情報を読み出し、画地情報データベース3から路線地図情報と同じ範囲にある画地地図情報と隣接道路地図情報を読み出し、(上記(2)エ)
前記GISエンジン5は、画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ、評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当て、(上記(2)オ)
路線番号を割り当てられた境界線を間口候補とし、間口長と間口の位置である画地条件と補正率と路線価とを用いて算出される評点数が最適となる間口候補を間口として特定する(上記(2)カ)
画地評価方法。」
2 甲2について
(1)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「【0057】
画地ABCDが無道路地であるか否かの判定は、次の手順で行われる。即ち、無道路地である所定の画地ABCDに2メートルの間口線を設定し、間口線の中央から道路の中心線に向かって垂線を立て、垂線が幅員の半分(この例の場合、3メートル(=6メートル/2))以上となったら無道路地として処理する。無道路地の場合、通路開設補正率を適用し、単位面積(1平方メートル)当たりの評価ポイントは、路線価×奥行価格補正率×通路開設補正率×無道路地補正率より計算される。これと画地の地積とを乗算することにより、画地ABCDの評価ポイントが得られる。」
(2)甲2に記載されているといえる事項
甲2の段落【0057】の「画地ABCDが無道路地であるか否かの判定は、次の手順で行われる。即ち、無道路地である所定の画地ABCDに2メートルの間口線を設定し、間口線の中央から道路の中心線に向かって垂線を立て、垂線が幅員の半分(この例の場合、3メートル(=6メートル/2))以上となったら無道路地として処理する。」との記載から、「所定の画地に対して、間口線を設定し、間口線の中央から道路の中心線に向かって垂線を立て、垂線が幅員の半分以上となったら無道路地として判定する判定方法。」(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
ア 「コンピュータが、」について
本件発明1における「コンピュータ」と、甲1発明における「パーソナルコンピュータである画地評価装置1」は、後述する相違はあるものの、「コンピュータ」である点で共通する。
イ 「評価の対象の画地の位置情報を受け付けることと、」について
甲1発明では、「担当者は、選択部21を用いて、評価する画地を含む評価対象領域をマウスでクリックすることにより、あるいはその領域内の任意の座標をキーボードから入力することにより選択」しており、ここで甲1発明の「評価する画地を含む評価対象領域」は、本件発明1における「評価の対象の画地の位置情報」に相当し、甲1発明の「選択しようとする領域をマウスでクリックすることにより、あるいはその領域内の任意の座標をキーボードから入力することにより選択」することは、本件発明1における「評価の対象の画地の位置情報を受け付ける」ことに相当するといえる。
ウ 「登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データと、道路を示す道路データと、を取得することと、」について
甲1の段落【0002】に「画地評価は、自治省の定める固定資産評価基準に基づき、その画地が面している路線価を基礎とする宅地の立地条件によって決定される」と記載されているように、甲1発明における「画地評価」も、固定資産評価に用いられるものであり、固定資産評価において「画地」は、登記された土地の範囲を示す境界線で区切られた土地であると解される。
してみると、甲1発明における「画地地図情報」、「路線地図情報」とは、それぞれ、本件発明1における「登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データ」、「道路を示す道路データ」に相当するから、甲1発明の「GISエンジン5」が「路線情報データベース4から路線地図情報を読み出し、画地情報データベース3から路線地図情報と同じ範囲にある画地地図情報と隣接道路地図情報を読み出」すことは、本件発明1における「登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データと、道路を示す道路データと、を取得すること」に相当する。
エ 「前記筆界データから、前記対象の画地の複数の辺をなす複数の線分を特定することと、」について
甲1発明では、「前記GISエンジン5は、画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ、評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し」ており、対象の画地が角地である場合に、当該画地は複数の路線と接しており、「画地の境界線と重なる線分」も複数となるから、甲1発明と、本件発明1とは、「前記筆界データから、前記対象の画地の複数の辺をなす複数の線分を特定する」点で共通しているといえる。
オ 「前記対象の画地について、前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて、道路に接面する辺を特定することと、」について
甲1発明では、「前記GISエンジン5は、画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ、評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当て、」「路線番号を割り当てられた境界線が間口候補とされ、間口長と間口の位置である画地条件と補正率と路線価とを用いて算出される評点数が最適となる間口を特定」しており、ここで、甲1発明における「画地地図情報」、「路線地図情報」、「間口候補」は、それぞれ、本件発明1の「筆界データ」、「道路データ」、「道路に接面する辺」に相当し、甲1発明も、本件発明1と同様に、「対象の画地について、」「道路に接面する辺を特定」しているといえる。
したがって、甲1発明と、本件発明1とは、「対象の画地について、」「道路に接面する辺を特定する」点で共通しているといえる。
他方、本件発明1では、対象の画地について、道路に接面する辺を特定する際に、「前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて」いるのに対して、甲1発明では、画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ、評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当て、路線番号を割り当てられた境界線を間口候補として特定している点で相違している。
カ 「を含む情報処理方法。」について
甲1発明における「画地評価方法」は、コンピュータ(情報処理装置)である「画地評価装置1」を利用するものであるから情報処理方法であるといえる。
してみると、本件発明1における「情報処理方法」と甲1発明における「画地評価方法」は、上述した相違点はあるものの、「情報処理方法」である点で共通する。
(2)一致点及び相違点
上記(1)で対比した事項を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、
「コンピュータが、
評価の対象の画地の位置情報を受け付けることと、
登記されている土地の範囲を示す境界線に関する情報を含む筆界データと、道路を示す道路データと、を取得することと、
前記筆界データから、前記対象の画地の複数の辺をなす複数の線分を特定することと、
前記対象の画地について、道路に接面する辺を特定することと、
を含む情報処理方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
本件発明1では、前記対象の画地について、道路に接面する辺を特定する際に、「前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて」いるのに対して、甲1発明では、画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ、評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線にその多角形に割り当てた路線番号を割り当て、路線番号を割り当てられた境界線を間口候補として特定している点。
(3)相違点についての判断
ア 申立理由1(新規性)について
甲1発明では、「画地地図情報のなかの画地を除いた道路部分の地図情報である隣接道路地図情報に路線地図情報を重ね合わせ」ており、「隣接道路地図情報」は「画地地図情報」から、「画地」が除かれた「道路部分の地図情報」であるから、本件発明1のように「記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて」ているとはいえず、また、「評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線」を求める際には、「路線と重なる線分」「に向かい合い画地の境界線と重なる線分」と「多角形の一辺と重なる画地の境界線」とは、同一の線分(境界線)であるから、両者の距離を測定する必要が無い。したがって、上記相違点は、実質的なものであるから、本件発明1は、甲1記載の発明と同一であるとはいえない。
イ 申立理由2(進歩性)について
上記第4の2(2)で述べたように、甲2には、「所定の画地に対して、間口線を設定し、間口線の中央から道路の中心線に向かって垂線を立て、垂線が幅員の半分以上となったら無道路地として判定する判定方法。」という甲2記載事項が記載されており、すでに、間口線が設定されていることを前提とするものであるから、甲1発明に甲2記載事項を適用しても、道路に接面する辺を特定する際に、「前記対象の画地について、前記筆界データと前記道路データとを重ね合わせて、前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づくという相違点に係る構成には至らない。
また、本件特許出願日前に、上記相違点に係る構成が周知であったともいえない。
さらに、本件発明1は、上記相違点の構成によって、甲1の段落【0009】にあるように「筆界データと道路データとは、異なる独立したデータであるので、座標合わせを行って重ね合わせた場合でも、誤差が生じることがある。本発明の態様の一つによれば、対象の画地の線分と道路との距離が所定の閾値未満である場合に、当該線分を含む辺を道路に接面する辺として特定することができ、筆界データと道路データとの間に誤差がある場合でも、精度良く対象の画地の道路に接面する辺を特定することができる。」という格別な効果を有するものであるから、上記相違点に係る構成は設計的事項であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1記載の発明と、甲2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張
ア 申立人は、特許異議申立書で次のように主張する。
(ア)主張1(新規性)
「甲1発明の構成e2aの「画地の複数の境界線のうち多角形の一辺と重なるものが道路に接面していると特定することと、」において、画地の複数の境界線が多角形の一辺と重なるとは、画地の複数の境界線と多角形の一辺との距離が0であることを意味する。すなわち、甲1発明の構成e2aの「画地の複数の境界線のうち多角形の一辺と重なるものが道路に接面していると特定することと、」では、画地の複数の境界線と多角形の一辺との距離に基づいて、道路に接面している境界線を特定している。「多角形の一辺」は「道路」に相当する。したがって、甲1発明の構成e2aの「画地の複数の境界線のうち多角形の一辺と重なるものが道路に接面していると特定することと、」は、本件特許発明1の構成E2の「前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて、道路に接面する辺を特定することと、」に相当する。」(異議申立書第11頁)
(イ)主張2(進歩性)
「なお、甲1発明の構成e2aは、本件特許発明1の構成E2に相当すると考えているが、甲1発明の構成e2aは「画地の複数の境界線のうち多角形の一辺と重なるものが道路に接面していると特定することと、」であるのに対し、本件特許発明1の構成E2は「前記対象の画地の前記複数の線分それぞれと、前記対象の画地を含む所定範囲に含まれる1又は複数の道路それぞれと、の距離に基づいて、道路に接面する辺を特定することと、」であり、本件特許発明1と甲1発明とは、道路に接面する辺の特定方法において相違点を有すると考えることもできる。
しかしながら、甲2発明の構成e2bの「所定の画地ABCDの間口線の中央と道路の中心線との距離に基づいて、間口線が道路に接面するか判定すること、」において、「間口線」は対象画地の線分に相当し、「道路の中心線」が道路に相当する。そして、甲1発明と甲2発明とは、いずれも画地評価を行う点において共通し、両者の技術分野は関連している。さらに、甲1発明の課題は「自動的に画地評価を適正に行えること」であり、甲2発明の課題は「無道路地の評価ポイントを自動計算すること」であり、画地の評価を行う点に着目すると、両者の課題は共通している。さらに、甲1発明における構成e2aの作用・機能も甲2発明における構成e2bの作用・機能も、道路に接している画地の辺を特定することであり、これらの作用・機能は共通している。したがって、甲1発明に甲2発明を適用する動機付けが存在する。よって、甲1発明の構成e2aに甲2発明の構成e2bを適用して、「境界線と道路の中心線との距離に基づいて、道路に接面している境界線を特定することと、」とすることは、当業者が容易になし得たことである。」(異議申立書第12頁)
イ 申立人の主張についての検討
(ア)主張1(新規性)について
甲1発明は、上記(3)アで述べたように、「評価対象領域内の全路線について路線と重なる線分を一辺とし、これに向かい合い画地の境界線と重なる線分を他の一辺とした多角形(ポリゴン)を作成し、評価対象領域内の全多角形について、各多角形の一辺と重なる画地の境界線」を求める際には、「路線と重なる線分」「に向かい合い画地の境界線と重なる線分」と「多角形の一辺と重なる画地の境界線」とは、同一の線分(境界線)であるから、両者の距離を測定する必要が無いから、「路線」と「画地の境界線」の「距離」に基づくものではない。
したがって、申立人の上記主張1(新規性)は採用できない。
(イ)主張2(進歩性)について
上記(3)イで述べたように、「無道道路に対して、間口線を設定し、間口線の中央から道路の中心線に向かって垂線を立て、垂線が幅員の半分以上となったら無道路地として判定する判定方法。」が記載されているのみであり、甲1発明に甲2記載事項を適用しても、上記相違点の構成に至らない。
したがって、申立人の上記主張2(進歩性)は採用できない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明でないから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではなく、また、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明2乃至5について
本件発明2乃至5は、本件発明1を引用する発明であり、上記相違点に係る構成を備えるものであるから、上記1と同じ理由で、本件発明4及び5は、甲1発明でなく、また、本件発明2乃至5は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1に対応する「情報処理装置」の発明であるから、上記1と同様の理由で、本件発明6は、甲1発明でなく、また、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1に対応する「プログラム」の発明であるから、上記1と同様の理由で、本件発明7は、甲1発明でなく、また、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-701028