特許異議申立
2024-700410
金属粒子、それを用いた磁性体ペースト、圧粉磁心及びインダクタ、並びに金属粒子の製造方法
- 審判番号
- 2024-700410
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-569575
- 登録番号
- 7374932
- 請求日
- 2024年04月30日
- 審決日
- 2024年08月30日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三井金属鉱業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 【異議申立人】井手 奉之
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 池渕 立
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.113-Y (B22F) / P1651.121-Y (B22F) / P1651.536-Y (B22F) / P1651.537-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7374932号発明「金属粒子、それを用いた磁性体ペースト、圧粉磁心及びインダクタ、並びに金属粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7374932号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7374932号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願(特願2020-569575号。以下、「本願」という。)は、2020年(令和 2年) 1月24日(優先権主張 平成31年 1月28日)を国際出願日とする出願であって、令和 5年10月27日に特許権の設定登録がされ、同年11月 7日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、令和 6年 4月30日に、請求項1~13(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である井手奉之(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~13に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。また、これら発明を総称して「本件特許発明」という。)は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~13(以下、「本件請求項1」等という。)に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
磁性金属元素を含有してなる金属粒子であって、
円形度係数が0.85以上である球状であり、
前記金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下であり、
DSEM50が0.2μm以上1.5μm以下である金属粒子。
【請求項2】
D50が3.0μm以下である請求項1に記載の金属粒子。
【請求項3】
前記金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積90容量%における体積累積粒径DSEM90に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D90の比D90/DSEM90が10以下である請求項1又は2に記載の金属粒子。
【請求項4】
結晶子サイズが50nm以上150nm以下である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の金属粒子。
【請求項5】
球状である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の金属粒子。
【請求項6】
前記磁性金属元素は、Fe、Co及びNiの少なくとも1種を含む請求項1ないし5のいずれか一項に記載の金属粒子。
【請求項7】
非磁性金属元素を更に含んでなり、
前記非磁性金属元素は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、希土類元素(ただし磁性を有するものを除く。)、Ba及びSrの少なくとも1種である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の金属粒子。
【請求項8】
磁性金属元素を含有するコア部と、
前記コア部の表面に配置され且つ非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部とを具備する請求項7に記載の金属粒子。
【請求項9】
金属粒子におけるシェル部の占める割合が、1.0質量%以上5.0質量%以下である請求項8に記載の金属粒子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の金属粒子を含んでなる磁性体ペースト。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の金属粒子を含んでなる圧粉磁心。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の金属粒子を含んでなるインダクタ。
【請求項13】
チャンバー内に発生させた層流状態のプラズマフレーム内に、磁性金属元素を含む母粉を供給して該プラズマフレーム内で該母粉をガス化し、ガス化した該母粉を冷却して金属粒子を生成させる工程を有し、
前記チャンバー外であって且つプラズマトーチの直下に、該プラズマトーチと異なる部位であり且つ前記プラズマフレームを包囲する環状壁部を配置し、
前記環状壁部が円筒からなり、該円筒における横断面の中心の位置と、プラズマフレームの発生位置とが一致した状態下に前記プラズマフレームを発生させ、
前記プラズマフレームのフレーム長さに対する前記環状壁部の長さの比が0.05以上0.90以下となるように該プラズマフレームを発生させる金属粒子の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、いずれも本件特許の優先日前に公知となった下記5の甲第1~11号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲11」という。)を提出し、以下の申立理由1~4により、本件特許の請求項1~13に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(新規性)
本件特許発明1~12は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(進歩性)
本件特許発明1~13は、甲1に記載された発明と甲2~10に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
(1)本件請求項1には「円形度係数が0.85以上である球状であり」と記載されているが、本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)には、円形度係数が0.91の実施例が記載されているのみであって、0.85以上とする技術的意義が不明であり、正五角形の円形度係数が0.865であることを考慮すると、本件特許発明1は正五角形のような「球状」であるとはいえないような範囲まで含むものである。
したがって、本件請求項1の記載は、本件特許発明が課題を解決できると当業者が認識できる範囲であるとはいえず、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2)本件請求項1には「磁性金属元素を含有してなる金属粒子であって」と記載されているが、本件明細書には、金属粒子がコア部(FeCo合金及びFeNi合金粉末)とシェル部(SiO2のみ)との組み合わせの実施例が記載されているのみである。
したがって、コア部の磁性金属元素とシェル部の非磁性金属元素の記載がない本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(3)本件請求項1~9に係る発明の「金属粒子」は、本件請求項13に係る発明の「金属粒子の製造方法」(DCプラズマ法)によってのみ製造することができるものであり、本件特許発明の課題を解決できる手段であると認められる。
したがって、DCプラズマ法により製造された金属粒子であることの記載がない本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(4)以上の理由により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件請求項1~9に係る金属粒子は、本件請求項13の製造方法(DCプラズマ法)によって得られるが、DCプラズマ法以外の方法について具体的な記載や説明がなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、本件請求項1~9の金属粒子をどのように製造するのか理解できない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~9に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
5 証拠方法
甲第1号証:特開2013-89929号公報
甲第2号証:特開2010-184840号公報
甲第3号証:特開2016-28176号公報
甲第4号証:特開2009-70885号公報
甲第5号証:特開2004-256821号公報
甲第6号証:特開2001-316701号公報
甲第7号証:特許第5099480号
甲第8号証:小枝真仁、他5名、高周波対応パワーインダクタ開発のためのカルボニル鉄粉についての研究、電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)、Vol.131、No.11、2011年、pp.949~954
甲第9号証:三谷宏幸、次世代磁性材料「磁性鉄粉」への期待、神戸製鋼技報、Vol.65、No.2、2015年9月、pp.12~15
甲第10号証:簑島裕典、外5名、粒子形状による粉体物性の変化、北海道立工業試験場報告No.295、1996年、pp.129~136
甲第11号証:地方独立行政法人北海道立総合研究機構のホームページ内の「北海道立工業試験場報告No.295(1996年)」の頁、(甲第10号証が1996年の発行であることを示す証拠資料)
第4 当審の判断
上記申立理由1~4はいずれも採用できない。その理由は以下に記載のとおりである。
1 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
(1)甲1の記載、及び甲1に記載された発明
ア 甲1には、「軟磁性粉末、圧粉磁芯、及び磁気デバイス」(発明の名称)に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付したものであり、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。
(1ア)「【請求項1】
FeまたはFe-Ni系合金の軟磁性粉末であって、
該軟磁性粉末の一次粒子径が0.01~5μmであり、一次粒子のアスペクト比と面積比の積の平均値が1.0~4.0であることを特徴とする軟磁性粉末。
…
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の軟磁性粉末であって、表面の少なくとも一部が絶縁層により被覆される、軟磁性粉末。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載の軟磁性粉末と、樹脂、及び/又は、潤滑剤を混合し、加圧成形して得られる、圧粉磁芯。
【請求項7】
請求項1~5いずれか記載の軟磁性粉末を用いて得られる、磁気デバイス。」
(1イ)「【0004】
一方、電源回路を高周波で駆動することによりインダクタ等の小型化が図れることから、高周波で磁芯損失(コアロス)の小さな磁性材料の開発が求められている。コアロスにはヒステリシス損失と、渦電流損失とがあり、コアロスの小さな磁性材料の作製には、ヒステリシス損失と渦電流損失の低減が必須である。また、渦電流損失の低減には、粒子間の渦電流の低減(粒子間の絶縁性の向上)と、粒子内の渦電流の低減(粒子の微細化)が必要となる。とりわけ、渦電流損失は駆動周波数の2乗に比例して大きくなる傾向にあるため、高周波域で使用する圧粉磁芯においては、渦電流損失が小さいことが必要とされる。そのため、駆動周波数の高周波化、例えば、数MHzに対応するためには、磁性材料の微細化が有効であると考えられる。」
(1ウ)「【0011】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、コアロス及びその周波数依存性が小さく、1MHz以上の高周波で駆動してもコアロスが小さい圧粉磁芯を作製し得る、軟磁性粉末、及びコアロス及びその周波数依存性が小さな圧粉磁芯、並びに、磁気デバイスを提供することにある。」
(1エ)「【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低周波領域から高周波領域に亘ってコアロスが十分に低減され、1MHz以上の高周波にも対応可能な圧粉磁芯、およびこれを容易に作製し得る軟磁性粉末が提供される。また、駆動周波数の高周波化に対応可能なので、インダクタ等の小型化が図られる。」
(1オ)「【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
図1は、本実施形態の軟磁性粉末の二次粒子及び一次粒子の凝集状態を概念的に示す模式図である。
軟磁性粉末100は、Fe粉、又はFe-Ni系合金粉であって、一次粒子径が0.01~5μm、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.01~2μmの一次粒子11が凝集又は連結することにより形成された平均粒子径が1~15μm、好ましくは1~10μm、より好ましくは1~5μmの二次粒子12を有する。また、軟磁性粉末100は、湿式メディアレスの微粒化装置で解砕して得られることが好ましい。さらに、軟磁性粉末100は、還元法により製造された還元粉であることが好ましい。一次粒子11は、その表面の少なくとも一部が絶縁層13により被覆されていることが好ましい。二次粒子12は、図示の如く、複数の一次粒子11が凝集又は連結することにより、海綿状の構造を有するものとなっている。以下、本実施形態の軟磁性粉末100の製造方法及び圧粉磁芯の製造方法を挙げて、本実施形態の軟磁性粉末100につき、詳述する。」
(1カ)「【0049】
本実施形態の圧粉磁芯は、本実施形態の軟磁性粉末を、加圧成形した後、熱処理することにより製造することができる(S4-S5)。本実施形態の圧粉磁芯は、コア材料として本実施形態の軟磁性粉末を用いることにより公知の製造方法によって製造することができる。
【0050】
加圧成形工程では、プレス機械の成形金型内に上記表面処理粉を充填し、その後、表面処理粉を加圧して圧縮成形を施すことにより、成形体を得る。この圧縮成形における成形条件は特に限定されず、表面処理粉の嵩密度や粘性、所望する圧粉磁芯の形状、寸法及び密度などに応じて適宜設定される。例えば、通常、成形圧力は392~1177MPa程度、好ましくは588~785MPa程度であり、最大圧力に保持する時間は0.1秒間~1分間程度である。」
(1キ)「【0057】
<一次粒子径>
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、樹脂埋めした軟磁性粉末の断面を観察し、無作為に選択した200点の粒子についてヘイウッド径を測定し、その個数平均粒子径を一次粒子径とした。
【0058】
<二次粒子径>
レーザー回折式乾式粒度測定装置(HELOSシステム、Sympatec社製)を用いて、軟磁性粉末の二次粒子径(D50%粒子径)を測定した。」
(1ク)「【0062】
(比較例1)
まず、原料粉としてヘマタイト(CSR-900、ケミライト社製)を使用し、これをステンレス容器内に充填した後、ステンレス容器を箱型バッチ炉中に装入した。次に、系内の空気を真空ポンプにて排出した後、1L/分の流量で水素ガスを導入して炉内を正圧(1atm以上)の水素雰囲気に置換し、500℃の温度で5時間の熱処理を行った。冷却後、100℃以下で炉内の水素ガスを排気し、次にアルゴンガスと空気とを導入して、炉内を酸素分圧が2%の雰囲気に置換した状態で、60~80℃の温度で15分間保持し、穏やかな表面酸化を行った。その後、炉内のステンレス容器を取り出し、還元鉄Fe粉を得た。
この還元Fe粉5gを250mlのポリビン(ポリプロピレン製ビン)に投入し、鋼球(Φ3.2mm、0.16g/pc)50gと有機溶剤20gとを加えた後、Air雰囲気下にて一軸ボールミルにて6時間の解砕処理を行った。その後、解砕処理後の還元Fe粉を取り出し、目開き2mmの篩にて鋼球を分離し、さらに加熱して有機溶剤を気化し乾燥させて、比較例1の還元Fe粉(解砕処理済み)を得た。
…
【0067】
(実施例1)
比較例1と同様の還元処理を行い、還元Fe粉を得た。この還元Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、公知の方法を用いて高圧ホモジナイザーで解砕処理を行った。その後、得られたスラリーを窒素雰囲気で加熱し、有機溶剤を蒸発、乾燥させることで、実施例1の還元Fe粉(解砕処理済み)を得た。」
(1ケ)「【0072】
表1に、実施例1~5並びに比較例1~5の軟磁性粉末の粉体評価及び磁気特性を示す。
【表1】
[図:0001415323000001.jpg]
」
(1コ)「【符号の説明】
【0080】
11…一次粒子、12…二次粒子、13…絶縁層、100…軟磁性粉末。」
(1サ)「【図1】
[図:0001415323000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
(ア)上記ア(1イ)、(1ウ)によれば、甲1の発明が解決しようとする課題の一つは、コアロス(ヒステリシス損失と渦電流損失)及びその周波数依存性が小さく、1MHz以上の高周波で駆動してもコアロスが小さい圧粉磁芯を作製し得る、軟磁性粉末を提供することである(以下、単に「課題」という。)。
(イ)上記ア(1オ)によれば、図1は、甲1の発明の実施形態である軟磁性粉末100の二次粒子12及び一次粒子11の凝集状態を概念的に示す模式図であり、上記軟磁性粉末100は、Fe粉又はFe-Ni系合金粉であって、一次粒子径がより好ましくは0.01~2μmの一次粒子11が凝集又は連結することにより形成された、平均粒子径がより好ましくは1~5μmの二次粒子12を有するものである。また、上記ア(1サ)の図1から、上記一次粒子11は五角形の形状を有していることが見て取れる。
(ウ)上記ア(1ク)、(1ケ)によれば、実施例1の軟磁性粉末は、比較例1と同様の還元処理によって還元Fe粉を得た後、高圧ホモジナイザーで解砕処理を行うことによって得られた、解砕処理済みの還元Fe粉であり、その一次粒子径は0.9μm、二次粒子径は3.2μmである。ここで、上記ア(1キ)によれば、上記一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて軟磁性粉末の断面を観察し、無作為に選択した200点の粒子についてヘイウッド径を測定し、その個数平均粒子径としたものであり、上記二次粒子径とは、レーザー回折式乾式粒度測定装置を用いて測定したD50%粒子径である。
(エ)以上の検討に基づいて、実施例1の軟磁性粉末とその製造方法について注目すると、甲1には、次の軟磁性粉末の発明と軟磁性粉末の製造方法の発明が記載されているものと認められる。
「解砕処理済みの還元Fe粉からなる軟磁性粉末であり、
一次粒子径は0.9μm、二次粒子径は3.2μmからなる軟磁性粉末。
ここで、一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて軟磁性粉末の断面を観察し、無作為に選択した200点の粒子についてヘイウッド径を測定し、その個数平均粒子径としたものであり、二次粒子径とは、レーザー回折式乾式粒度測定装置を用いて測定したD50%粒子径である。」
(以下「甲1発明」という。)
「甲1発明の軟磁性粉末の製造方法であって、
原料粉であるヘマタイトを、水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行い、
冷却後、100℃以下で水素ガスを排気し、酸素分圧が2%の雰囲気に置換した状態で60~80℃の温度で15分間保持し、穏やかな表面酸化を行うことにより、還元Fe粉とし、
上記還元Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、高圧ホモジナイザーで解砕処理を行った後、得られたスラリーを窒素雰囲気で加熱し、有機溶剤を蒸発、乾燥させる、軟磁性粉末の製造方法。」
(以下「甲1方法発明」という。)
(2)甲2の記載
ア 甲2には、「磁性粉末と磁性焼結体および製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(2ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分がマグネタイトまたはフェライトであり、タップ密度/真比重の値が0.65以上である磁性粉末。
…
【請求項5】
粒子の球形度が0.9以上である請求項1から4のいずれかに記載の磁性粉末。」
(2イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等に利用される磁性焼結体およびその原料となる磁性粉末とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性材料、特に各種フェライト磁性材料の焼結体は、磁芯材料や電磁シールド材など電子部品等には不可欠な要素となっている。
【0003】
フェライト焼結体は、一般的に仮焼・粉砕後の磁性微粉末をスプレードライなどにより造粒した磁性粉末を圧粉成型した後、900℃以上の高温で焼成することにより製造される。また、このスプレードライなどの造粒の際にはバインダーとしてポリビニルアルコール等を添加することが一般的である。
【0004】
上記の焼結体には透磁率や周波数特性などの電磁気的な特性の最適化が求められる一方で、部品を小型化、薄型化、軽量化した際にも外部からの衝撃に耐えうるよう機械的強度が強いことが要求される。」
(2ウ)「【発明が解決しようとする課題】
…
【0014】
本発明は、従来機械的強度の高い磁性焼結体を低温で焼成するための原材料を得ることができなかったという課題を解決するためのものである。」
(2エ)「【0032】
[密度]
本発明に関する磁性粉末は、タップ密度/真比重の値が0.65以上であることが好ましい。粉体としての密度が上記の関係を満たすとき、圧粉成型した際に粒子が密に詰まるため、焼結体の組織が緻密となり、優れた機械的強度をもつ。
…
【0036】
[球形度]
本発明に関する磁性粉末の球形度は、0.9以上であることが好ましい。球形度が1に近づくほど粒子の形状は真球に近くなり、高い流動性と良好なパッキングにより、充填性が向上する。真球度が0.9以下であると粒子表面の凹凸により粒子間に隙間が発生するため、高い充填性を得ることができない。」
(2オ)「【0042】
<磁性粉末の製造方法>
次に、磁性粉末の製造方法について説明する。
【0043】
[原料]
本発明に関する磁性粉末の原料としては、例えば主成分がマグネタイトである磁性粉末を得る場合には化学式Fe2O3で表されるヘマタイトが好適に使用される。また、例えば主成分がフェライトである磁性粉末を得る場合には、ヘマタイトのほかに酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化銅などの金属酸化物を、所望の電磁気的特性を満たすよう、混合して使用することができる。
【0044】
本発明の磁性粉末の製造方法では、原料の粒子サイズが、最終的な磁性粉末の粒径に影響を及ぼす。そのため、原料の平均粒径は0.1μmから10μm、より好ましくは0.1μmから1.0μmの範囲にあることが好ましい。原料サイズが小さすぎると粒子の浮遊などによりハンドリング性が悪化し、逆に原料サイズが上記範囲よりも大きいと最終的に得られる磁性粉末の粒子のサイズが粗大となり好ましくない。
【0045】
上記の原料粉末の粒子表面に一次粒径10~100nmのカーボン粉末を均一に付着させ、次に示す合成工程により磁性粉末化させる。なお、原料とカーボン粉末の混合比に関しては、原料100重量部に対してカーボン粉末0.1重量部から10重量部が適当である。混合には、ボールミルなどの公知の方法が用いられる。なお、このとき原料粒子に付着させたカーボン粒子は、後の合成工程で焼却されるため、最終的な磁性粉末中にはほとんど残留しない。カーボンを付着させた原料粉末を処理済原料粉末と呼ぶ。
【0046】
[合成]
上記の処理済の原料粉末を、プロパン等の可燃性のガスと酸素との混合ガスをキャリアガスとして、燃焼中のバーナーノズルに供給する。そして、燃焼炎中で処理済原料粉末の原料とカーボンとの反応により処理済原料粉末を磁性粉末化させる。
【0047】
バーナー処理装置に関しては一般的な燃焼バーナーを使用しても良いが、たとえば特開昭62-050839号に開示されている構成が用いられる。本発明ではこの構成に準じた方法で合成を行った。
【0048】
この構成を簡単に説明するとバーナー処理装置は、原料を投入する原料ホッパーと、原料ホッパーの出口でホッパーからの落下量を調整する給鉱量調整バルブと、給鉱量調整バルブの下で、やや斜め下向きに設定されたバーナーを含む構成である。原料は原料ホッパーから給鉱量調整バルブを通じて一定速度で落下する。そして、落下の際に、バーナーの作る火炎の中を通過する。
【0049】
このとき、燃焼炎の温度を1000℃以上2000℃以下となるようガス混合比およびガスの流速を調整することが好ましい。燃焼炎が上記温度範囲にあるとき、溶融・凝固反応が比較的緩やかに進行し、球形度が高く、緻密な内部組織をもった磁性粒子を得ることが可能である。
…
【0052】
得られた磁性粉末は、粒子同士の二次凝集が発生せず、合成直後の段階で分散性が良好であるため、その後の解砕工程を必要としない。また、スプレードライなどで造粒した粉末と異なり、粒子内部で原料粒子の溶融凝固・焼結が生じることにより内部構造が緻密で高い強度を持つため、バインダーなどの結合剤を要しなくても球形を保つことが可能である。これらの特長により、下記の実施例に示すとおり、その後の圧粉成型・焼成後でも優れた機械的強度をもつ焼結体を得ることができる。」
(2カ)「【0053】
(実施例1)
α-Fe2O3粉末(平均粒径:0.6μm)10kgにカーボン粉末(平均粒径:30nm、三菱化学製、MA-11)を100g加え、振動ボールミル中で1時間混合処理を行い、処理済原料粉末を得た。処理済原料粉末をLPGガスと酸素ガスを1:4の割合で混合したガス(流量20m3/h)中に分散させ、燃焼中のバーナーへ供給した。燃焼炎を通過した粉末をサイクロンにて回収し、実施例1に関する磁性粉末(マグネタイト粉末)を得た。得られた磁性粉末は真球状で粒子内部まで十分溶融凝固しており、緻密な内部構造を有していた。
【0054】
得られた磁性粉末を2.0t/cm2の圧力で直径10mm、厚み10mmの円柱形状に加圧成型し、900℃、1000℃、1100℃でそれぞれの温度で5時間、窒素ガスフロー中にて焼成し磁性焼結体を得た。得られた焼結体の焼結密度を測定した。
【0055】
実施例1に関する磁性粉末およびその焼結体の特性を表1および表2に示す。」
(2キ)「【0069】
【表1】
[図:0001415323000003.jpg]
」(当審注:表1は一部分のみ抜粋したもの。)
(2ク)「【0089】
(球形度)
磁性粉末の球形度の算出は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された画像をコンピュータ上で画像解析ソフト(Soft Imaging System GmbH社、「analysis」)を使用して行った。測定は倍率1000倍のSEM写真を使用し、50個の粒子の円形度から、平均円形度を算出した。本発明では、この平均円形度を磁性粉末の球形度とした。
【0090】
尚、円形度は、画像解析により算出される粒子の面積および周長より、(円形度)=(4π×面積)/(周長×周長)により算出される。」
(3)甲3の記載
ア 甲3には、「銅粉の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(3ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流熱プラズマ装置を使用して原料粉を加熱噴射する工程を備えた金属粉の製造方法において、
プラズマガスとして、アルゴンと窒素の混合ガスを使用すると共に、当該プラズマガスにおけるアルゴンと窒素の混合割合を、流量比でアルゴン:窒素=99:1~10:90とすることを特徴とする金属粉の製造方法。
…
【請求項5】
金属粉は、Cu、又は、Cuと、Si、P、Ni、Ti、Fe、Co、Cr、Mg、Mn、Mo、W、Ta、In、Zr、Nb、B、Ge、Sn、Zn、Bi等のうちの少なくとも一種以上の元素成分とを含有する銅粉であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の金属粉の製造方法。」
(3イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、各種用途の導電材として使用可能な銅粉、例えば、電気回路の形成や、セラミックコンデンサの外部電極の形成などに用いられる導電性ペーストに導電フィラーとして用いることができる銅粉に関する。」
(3ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、電気回路などの分野において、近年ファインピッチ化が進むのに伴い、前述したように導電性ペースト用の銅粉にも微粉化が要求されてきている。
しかし、銅粉は、数十nmスケールに微粒化するほど、表面酸化が著しくなり圧粉抵抗が高くなる傾向があるため、ペースト印刷・キュアリングして回路形成した際に導電性が劣るようになり、導通信頼性が要求される部品には回路材料として採用できないという課題を抱えていた。
【0013】
そこで本発明は、微粒銅粉であっても、圧粉抵抗が低く優れた導電性を確保することができる、新たな銅粉を提供せんとするものである。」
(3エ)「【発明の効果】
【0015】
本発明が提案する銅粉は、D50が0.20μm~0.70μmであるという微粒銅粉であるにもかかわらず、当該D50に対する結晶子径の比率(結晶子径/D50)が0.15~0.60(μm/μm)というように結晶子径が大きいという特徴を有している。これにより、本発明が提案する銅粉は、微粒銅粉であっても、圧粉抵抗が低く優れた導電性を有し、この銅粉を用いた導電ペーストで形成された塗膜も同様に優れた導電性を得ることができる。…」
(3オ)「【0029】
(粒子形状)
本銅粉に関しては、粒子形状を特に限定するものではない。但し、分散性の観点から、球形状或いは略球形状であるのが好ましい。例えば、本銅粉を電子顕微鏡(例えば85000倍)で観察した際に、多くの銅粉粒子が真球状又は略真球状を呈しているのが好ましい。より具体的には、銅粉を構成する銅粉粒子の50個数%以上、中でも80個数%以上、その中でも90個数%以上、さらにその中でも95個数%以上(100個数%含む)が球状若しくは略球状であるのが好ましい。
このように、球状又は略球状の銅粉粒子を含有する銅粉であれば、特に優れた分散性を得ることができ、例えばフレーク粉と混合することにより、緻密性をより一層高めることができる。
ここで、「略球状」とは、完全な球状ではないが、球として認識可能な形状を意味するものである。
【0030】
本銅粉の粒子形状を上記のように調整するには、上述のように、DCプラズマ装置を使用して原料銅粉を加熱噴射する際、プラズマガスとして、アルゴンと窒素の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整する方法を採用すればよい。但し、このような製法に限定するものではない。」
(3カ)「【0035】
<製法>
次に、本銅粉の好ましい製造方法について説明する。
【0036】
本銅粉は、DCプラズマ装置を使用して原料銅粉を加熱噴射する際、プラズマガスとして、アルゴンと窒素の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整することで、製造することができる。但し、このような製法に限定するものではない。
【0037】
ここで、プラズマフレームが層流状態であるか否かは、プラズマフレームを、フレーム幅が最も太く観察される側面から観察した際に、フレーム幅に対するフレーム長さの縦横比(以下、フレームアスペクト比)が3以上であるか否かによって判断することができ、フレームアスペクト比が3以上であれば層流状態、3未満であれば乱流状態と判断することができる。
…
【0039】
DCプラズマ装置としては、例えば図1に示すように、粉末供給装置2、チャンバー3、DCプラズマトーチ4、回収ポット5、粉末供給ノズル6、ガス供給装置7及び圧力調整装置8を備えたプラズマ装置1を挙げることができる。
この装置においては、原料粉末は、粉末供給装置2から粉末供給ノズル6を通してDCプラズマトーチ4内部を通ることになる。プラズマトーチ4には、ガス供給装置7よりアルゴンと窒素の混合ガスが供給されプラズマフレームが発生することになる。
また、DCプラズマトーチ4で発生させたプラズマフレーム内で、原料粉末はガス化され、チャンバー3に放出された後、冷却され微粉末となって回収ポット5内に蓄積回収される。
チャンバー3の内部は、圧力調整装置8によって粉末供給ノズル6よりも相対的に陰圧が保持されるように制御され、プラズマフレームを安定して発生する構造をとっている。
但し、これはDCプラズマ装置の一例であって、このような装置に限定するものではない。
【0040】
原料銅粉は、特に限定するものではない。但し、プラズマ噴射性の観点から、原料銅粉の粒度(D50)は3.0μm?30μmであるのが好ましく、中でも5.0μm以上或いは15μm以下であるのがさらに好ましい。
また、原料銅粉の形状は、樹枝状、棒状、フレーク状、キュービック状、もしくは、球状乃至略球状など特に制限されるものではない。但し、プラズマトーチへの供給効率を安定化する観点からは、球状乃至略球状であるのが好ましい。
【0041】
DCプラズマ装置を使用して原料銅粉を加熱噴射する際、プラズマガスとして、アルゴンと窒素の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整するのが好ましい。このように調整すれば、投入した原料銅粉は、プラズマ炎中で瞬時に蒸発気化し、プラズマフレーム内で十分なエネルギーを供給することができるため、プラズマ尾炎部に向って核形成、凝集及び凝縮が生じて微粒子、中でもサブミクロンオーダーの微粒子を形成することができる。」
(3キ)「【図1】
[図:0001415323000004.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
甲3の発明が解決しようとする課題は、上記ア(3イ)、(3ウ)によれば、導電性ペーストに導電フィラーとして用いることができる銅粉に関して、微粒銅粉であっても、圧粉抵抗が低く優れた導電性を確保することができる、新たな銅粉を提供することである。
上記課題を解決し得る銅粉の製造方法は、上記ア(3カ)に記載されているところ、当該製造方法に注目すると、甲3には次の発明が記載されているものと認められる。
「DCプラズマトーチ4で発生させた層流状態のプラズマフレーム内に、原料銅粉を供給して該プラズマフレーム内で該原料銅粉をガス化しチャンバー3内に放出した後、ガス化した該原料銅粉を冷却して微粉末を生成させる工程を有する、銅粒子の製造方法。」
(以下「甲3発明」という。)
(4)甲4の記載
ア 甲4には、「リアクトル用コアとその製造方法およびリアクトル」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(4ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被膜で覆った金属磁性粒子を加圧成形してなるリアクトル用コアであって、
前記金属磁性粒子は、
平均粒径が1μm以上70μm以下で、
粒径の標準偏差(σ)と平均粒径(μ)との比である変動係数Cv(σ/μ)が0.40以下で、
円形度が0.8以上1.0以下であることを特徴とするリアクトル用コア。
ただし、円形度は、無作為に抽出した1000個以上の金属磁性粒子について断面を顕微鏡で観察し、各金属磁性粒子の面積および外周長さを算出し、以下の式により求めた値の平均値である。
円形度=4π×金属磁性粒子の面積/金属磁性粒子の外周長さの2乗
…
【請求項3】
前記金属磁性粒子が実質的に鉄からなることを特徴とする請求項1または2に記載のリアクトル用コア。」
(4イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のリアクトル用コアでは、渦電流損の低減や直流重畳特性のさらなる改善が求められていた。
【0007】
通常、圧粉成形体は、数百MPaという高圧で成形されている。そのため、複合磁性粒子同士が圧接されて絶縁被膜が損傷されることがある。絶縁被膜が損傷すれば、金属磁性粒子同士の電気的接続により、成形体の渦電流損が増大することになる。特許文献1の技術では、軟磁性粉末の円相当径に対する最大径の比を特定することで、上記絶縁被膜の損傷を抑制しているが、この比率限定だけでは、なお十分とはいえない。
【0008】
また、特許文献2では、軟質磁性粉末の粒径を限定しているのみなので、この限定範囲内で粉末の粒径にばらつきが生じる。そのため、このような粉末を成形すると、成形体の内部の均一性が低下するため、直流重畳特性に改善の余地が残る。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、直流重畳特性の改善を実現できるリアクトル用コアとその製造方法およびリアクトルを提供することにある。」
(4ウ)「【0032】
<コア>
上述したようなコアを構成する複合磁性粒子は、金属磁性粒子の表面に絶縁被膜が形成された粉末である。
【0033】
(金属磁性粒子)
金属磁性粒子としては、鉄を50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、純鉄(Fe)が挙げられる。その他、鉄合金、例えば、鉄(Fe)-シリコン(Si)系合金、鉄(Fe)-アルミニウム(Al)系合金、鉄(Fe)-窒素(N)系合金、鉄(Fe)-ニッケル(Ni)系合金、鉄(Fe)-炭素(C)系合金、鉄(Fe)-ホウ素(B)系合金、鉄(Fe)-コバルト(Co)系合金、鉄(Fe)-リン(P)系合金、鉄(Fe)-ニッケル(Ni)-コバルト(Co)系合金、及び鉄(Fe)-アルミニウム(Al)-シリコン(Si)から選択される1種からなるものが利用できる。特に、透磁率及び磁束密度の点から、
99質量%以上がFeである純鉄が好ましい。また、純鉄は、鉄合金と比較して安価であり、経済性にも優れる。
…
【0036】
金属磁性粒子の形状は、円形度が0.80以上1以下となるような形状とする。円形度を0.80以上とすることで、複合磁性粒子の加圧成形時に金属磁性粒子の表面に生じる歪みを低減できるので、直流重畳特性を向上できる。また、円形度が0.80以上であれば、先鋭な突起が少なく球形に近い形状であるため、複合磁性粒子の加圧成形時に、この粉末同士が圧接されて絶縁被膜が損傷することを抑制できる。特に、円形度は0.91以上が好ましい。なお、金属磁性粒子の外形が真球状である場合には、金属磁性粒子の円形度は1.0となる。」
(4エ)「【実施例1】
【0051】
(コアの作製)
金属磁性粒子の準備→絶縁被膜の形成→複合磁性粒子と添加剤の混合→混合材料の成形→成形品の熱処理からなる工程によりリアクトル用コアの試料を作製した。
【0052】
まず、各試料における金属磁性粒子として、鉄粉を水アトマイズ法により鉄が99.6質量%以上含有され、残部が0.3質量%以下のOおよび0.1重量%以下のC、N、P、またはMnなどの不可避的不純物からなる金属磁性粒子を準備した。この金属磁性粒子は、ふるいによる分級により、粒径のばらつきが異なる複数種を用意した。各資料の金属磁性粒子の平均粒径、変動係数Cvおよび円形度Sfは、それぞれ表1に記載の通りであった。
【0053】
金属磁性粒子の平均粒径および変動係数Cvは、レーザ散乱回折粒度分布測定法を用いて対象粉末の粒度分布を測定することにより算出した。円形度Sfは、次のようにして求めた。まず、多数の金属磁性粒子を樹脂で固め、その固化物を研磨して断面を形成する。次に、この断面を光学顕微鏡で観察して、無作為に抽出した1000個以上の金属磁性粒子を含む観察画像を取得する。そして、この観察画像を画像処理して金属磁性粒子の断面形状を特定し、各金属磁性粒子の面積および外周長さを算出して、以下の式により求めた値の平均値とした。
円形度=4π×金属磁性粒子の面積/金属磁性粒子の外周長さの2乗
【0054】
次に、各金属磁性粒子にリン酸塩化成処理を実施して、リン酸鉄からなる絶縁被膜を形成して複合磁性粒子とした。この絶縁被膜の平均厚みは、50nmであった。
【0055】
次に、試料No.1~3では複合磁性粒子に金属石鹸として、平均粒径が1μmのステアリン酸亜鉛をそれぞれ0.1質量%添加した。また、試料No.4は潤滑剤を用いずに成形した。さらに、各試料No.1~4には、0.3質量%のメチル系シリコーン樹脂も添加した。そして、これら複合磁性粒子と添加剤を混合し、実施例となる試料No.1~4の混合材料を得た。
【0056】
次に、この混合材料を金型に充填し、1000MPaの圧力を印加して、成形体を作製した。続いて、得られた成形体を窒素気流雰囲気において、500℃で1時間熱処理してリアクトル用コアとした。このうち、成形前の円形度が0.92の試料No.2について、成形後の円形度も断面を顕微鏡観察して調べたところ0.85であった。」
(4オ)「【0061】
【表1】
[図:0001415323000005.jpg]
」
(5)甲5の記載
ア 甲5には、「電子部品」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(5ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体または誘電体からなる酸化物球状粉末と、
前記酸化物球状粉末を分散、保持する樹脂と、を含む複合材料を備える電子部品であって、
前記酸化物球状粉末は、平均粒径が1~10μm、0.9以上の球形度を備え、30~80wt%の範囲で含有されることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記酸化物球状粉末が、チタン酸バリウム粉末であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記酸化物球状粉末が、磁性フェライト粉末であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。」
(5イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粉末と樹脂材料とを含む複合材料からなる電子部品に関する。」
(5ウ)「【発明が解決しようとする課題】
…
【0006】
以上の通りであり、従来は樹脂材料との複合化に適切な粒径をもつ球状粉末を得ることが困難であった。特に、複合酸化物のような多成分系のセラミックスを得るための手法は見出されていない。
そこで本発明は、樹脂材料への分散に適する粒径を有し、しかも樹脂に対する分散性、充填性に優れた球状セラミックス粉末と樹脂材料との複合材料からなる電子部品の提供を課題とする。」
(5エ)「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、噴霧乾燥法によって顆粒粉を形成し、この顆粒粉を焼結することにより樹脂材料との複合化に適した粉末を得るための検討を行った。そして、噴霧乾燥法の中で、スプレー・ノズルを用いると粒径の小さい顆粒粉を得ることができるため、その後の焼結によって球形度が高くかつ樹脂材料への分散に適した粒径の粉末を製造できることを知見した。そして、この噴霧乾燥法によれば、多成分系のセラミックス粉末を容易に得ることができる。さらに、本発明による球形度の高い微細な粉末を用いることにより、樹脂材料との複合材中への充填性が向上して粉末の有する特性を有効に発揮することができる。また、充填性の向上は複合材の機械的強度の確保にとっても有効である。さらに、噴霧乾燥法を用いているため、粉砕粉末のように巨大な粉末が混入することがほとんどないため、製品の信頼性を確保することができるのである。
本発明は以上の知見に基づきなされたものであり、磁性体または誘電体からなる酸化物球状粉末と、酸化物球状粉末を分散、保持する樹脂と、を含む複合材料を備えた電子部品であって、酸化物球状粉末は、平均粒径が1~10μm、0.9以上の球形度を備え、30~80wt%の範囲で含有されることを特徴としている。」
(5オ)「【0014】
本発明におけるセラミックス成分とは、セラミックスとして認識される酸化物、窒化物、炭化物等の化合物を包含している。また、単一のセラミックスのみならず、複数のセラミックスの混合体、複合酸化物、複合窒化物等の複合化合物をも包含している。セラミックス成分の具体例として、誘電体材料がある。具体的には、チタン酸バリウム-ネオジウム系セラミックス、チタン酸バリウム-錫系セラミックス、鉛-カルシウム系セラミックス、二酸化チタン系セラミックス、チタン酸バリウム系セラミックス、チタン酸鉛系セラミックス、チタン酸ストロンチウム系セラミックス、チタン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸ビスマス系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックス等が挙げられる。さらに、CaWO4系セラミックス、Ba(Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Mg,Ta)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Ta)O3系セラミックスも挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種類以上混合しても良い。なお、二酸化チタン系セラミックスとは、組成的に二酸化チタン(TiO2)のみからなる系、または二酸化チタン(TiO2)に他の少量の添加物を含む系のいずれかであって二酸化チタン(TiO2)の結晶構造が保持されているものをいう。他の系のセラミックスについても同様のことが言える。二酸化チタンはTiO2で示される物質であって、種々の結晶構造を示すが、誘電体セラミックスとして使用されるのはその中のルチル構造のものである。
磁性材料としては、磁性を持つ複合酸化物を使用する。例えば、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Mn-Mg-Zn系フェライト、Ni-Cu-Zn系フェライト等を挙げることができる。また、Fe2O3やFe3O4等の酸化鉄であってもよい。」
(5カ)「【0020】
本発明に用いる球状セラミックス粉末は、0.9以上、望ましくは0.95以上の球形度を有している。つまり、本発明における球状とは、表面が平滑な真球のみならず、真球に近い多面体を含む概念である。ここで「球形度」とは、R:粒子の投影面積に等しい円の直径、r:粒子の投影像に外接する最小円の直径、とすると、R/rとして定義される。球形度が0.9以上であると、セラミックス粉末を樹脂材料へ分散した複合材料として利用するとき、セラミックス粉末が樹脂材料に対して均一に分散しやすくなり、さらに成形時において不均一性に起因したクラックが発生しづらい。」
(5キ)「【0026】
本発明電子部品の具体的用途の一例を図3に示す。図3において、球状フェライト粉末を樹脂中に分散、混合した磁性体層1の表裏両面に、比較的低い誘電率の第1誘電体層2を積層し、さらにこの第1誘電体層2のいずれか一方に比較的高い誘電率の第2誘電体層3を積層することにより基板を構成している。この基板の表裏面の少なくても一方にグランド・パターン、配線パターンからなる導体パターンを形成することにより積層基板を得ることができるが、この第1、第2誘電体層2,3を本発明の複合材料で構成することができる。また、本発明による複合材料は、プリプレグを用いる基板材料、チップ状のインダクタ素子材料、フィルタ等の積層電子部品材料として使用することもできる。」
(5ク)「【0037】
(実施例3)
モル比換算で、酸化鉄(Fe2O3):酸化ニッケル(NiO):酸化亜鉛(ZnO)=49:23:28となる原料粉末に水を加えてボールミルにて12時間混合することにより、スラリー(以下、第1のスラリー)を得た。
なお、混合に先立って、分散剤(東亞合成社製A-30SL)を粉末の重量に対して1%の割合で添加した。以後、実施例1と同様の工程により平均粒径10.3μmの顆粒粉を得た。得られた顆粒粉を1150℃で1時間焼結することにより球状の焼結粉末を得た。この粉末の平均粒径は8.5μm、球形度は0.95であった。この粉末は、磁性フェライト粉末(球状セラミックス粉末)である。
【0038】
得られた磁性フェライト粉末を40vol%(75wt%)になるようにエポキシ樹脂と混合した。エポキシ樹脂としては、多官能エポキシ樹脂としてエピビス型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製エピコート1001およびエピコート1007)を各々26.9wt%ずつ含有させ、またビスフェノールA型高分子エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製エピコート1225)23.1wt%、特殊骨格を持つエポキシ樹脂としてテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製エピコート1031S)23.1wt%を含むものを主成分とし、硬化剤としてビスフェノールA型ノボラック樹脂(油化シェルエポキシ社製YLH129B65)と硬化促進剤としてイミタゾール化合物(四国化成工業社製2E4MZ)とを混合したものを用いた。
【0039】
磁性フェライト粉末とエポキシ樹脂との混合物にトルエンとメチルエチルケトンの混合溶液を加えた後にボールミルで5時間混合、分散することにより、磁性フェライト粉末が分散した溶液を得た。この分散溶液をドクターブレード法にて、厚さ100μmのシートに成形した。このシートと厚さ60μmのガラス・クロスとを交互に積層した後に、加熱、加圧により約0.4mmの厚さの複合磁性基板を得た。この複合磁性基板について、透磁率および品質係数(Q)を測定した結果を表3に示す。表3には、粉砕法により得られた平均粒径5.2μmの同一組成の磁性フェライト粉末(不定形)を用いて得た複合磁性基板(比較例)の測定結果を併せて示す。比較例による複合磁性基板に比べて本実施例による複合磁性基板の透磁率が高くかつ品質係数(Q)も向上していることがわかる。
なお、本実施の形態ではガラス・クロスを交互に積層した複合磁性基板について説明したが、本発明の複合磁性基板はこの形態に限定されない。」
(6)甲6の記載
ア 甲6には、「ニッケル粉及び導電ペースト」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(6ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】SEM観察による平均粒子径が0.1~1μmであり、且つレーザ回折散乱式粒度分布測定によるD50値及びSEM観察による平均粒子径が下記式(1)の条件を満たしていることを特徴とするニッケル粉:
1≦{(レーザ回折散乱式粒度分布測定によるD50値)/(SEM観察に
よる平均粒子径)}≦1.8‥‥‥(1)」
(6イ)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ニッケル粉粒子同士の凝集が抑制されて単分散状態に近い状態になっており、そのことにより導電ペーストの調製において有機ビヒクル中での分散性が優れており、更に、優れたシャープな粒度分布特性を有していることから、ニッケル粉の平均粒子径を無用に小さくする必要なしで積層セラミックコンデンサの薄くて突起のない内部電極層を形成することができるニッケル粉、並びにそのようなニッケル粉を含有している導電ペーストを提供することを課題としている。」
(6ウ)「【0034】
【実施例】以下に実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
硫酸ニッケル・六水和物(品位22.2重量%)44.8Kgを純水80Lに溶解して得た水溶液を、水酸化ナトリウム濃度200g/Lの水溶液100Lにその液温を60℃に維持しながらゆっくりと滴下して、ニッケルの水酸化物を析出させた。
【0035】この懸濁液にその液温を60℃に維持しながらヒドラジン・一水和物30Kgを30分間にわたって添加してニッケルの水酸化物をニッケルに還元した。この生成ニッケル粒子含有スラリーを濾過した後、洗浄液のpHが9以下になるまで純水で洗浄し、その後、乾燥してニッケル粉を得た。
【0036】このニッケル粉をエアセパレータであるSFシャープカットセパレータKSC-02型(栗本鐡工所製)を用いて、ロータ回転数6000rpm、空気量7.2m3 /分で処理し、粗粉を除去した。この粗粉を除去したニッケル粉を、ナイフ型ハンマを装備したパルペライザAP-1SH型(ホソカワミクロン製)に投入して2500rpmで処理した後、その得られたニッケル粉に純水80Lを加え、ハレルホモジナイザKH-2型(国産精工製)を用いて5000rpm、スラリー処理速度27.5L/分で2時間処理し、その後、濾過し、乾燥してニッケル粉を得た。
【0037】このニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノブコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製US-300T)で5分間分散させた後、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置 Micro TracHRA 9320-X100 型(Leeds + Northrup 製)を用いてD50値を測定したところ、0.50μmであり、また0.75μm(0.50×1.5=0.750)を越える粒子径を有する粒子比率は全体の4.2%に相当し、0.25μm(0.50×0.5=0.250)を下回る粒子径を有する粒子比率は全体の1.0%に相当していた。
【0038】また、このニッケル粉を1万倍のSEMによって観察し、無作為に選んだ5視野の合計で1500個の粒子の粒子径をそれぞれ測定した。その結果、平均粒子径は0.43μmであり、0.51μm(0.43×1.2=0.516)を越える粒子径を有する粒子個数は29個で全体の1.9%に相当し、0.35μm(0.43×0.8=0.344)を下回る粒子径を有する粒子個数は68個で全体の4.5%に相当していた。上記の測定結果より、{(レーザ回折散乱式粒度分布測定によるD50値)/(SEM観察による平均粒子径)}は0.50/0.43=1.16であった。」
(7)甲7の記載
ア 甲7には、「軟磁性金属粉末、圧粉体、および軟磁性金属粉末の製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(7ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式でFe100-a-bSiaCrb(重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表される軟磁性金属粉末の表面の一部もしくは全体がSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種の絶縁性酸化物により被覆されており、前記軟磁性金属粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高いことを特徴とする軟磁性金属粉末。」
(7イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように圧粉磁心のコア鉄損低減にはヒステリシス損失と渦電流損失双方の低減が必要であり、そのために低保磁力な磁性粉末と高温熱処理に耐える絶縁被覆技術が要求されている。しかしながら未だ必要十分な、低コア損失を実現する低ヒステリシス損失で高温熱処理に耐える表面高抵抗の軟磁性金属粉末は得られていない。
【0009】
本発明の目的は上記問題を解決するため、高温熱処理が可能で低ヒステリシス損失、かつ、高電気抵抗の軟磁性金属粉末、圧粉体およびその製造方法を提供することである。」
(7ウ)「【0019】
表面の一部もしくは全体を被覆する絶縁性酸化物の酸素量により、電気抵抗率、圧粉体の強度、ヒステリシス損失が変わる。特に、残留磁束密度などの軟磁気特性とヒステリシス損失の低減を両立させるためには、絶縁性酸化物を含む軟磁性金属粉末全体の酸素量が、粉末全体の質量に比べて10重量%以下となることが好ましい。
球状(アスペクト比が2以下)のFe6.5%Si粉末を用いた場合には、酸素量が0.1~1.0質量%の範囲の時に、高電気抵抗率、高強度、および低いヒステリシス損失の圧粉体を得ることが可能である。酸素量が0.15~0.3質量%であると、なお好ましい圧粉体を得ることができる。
偏平形状(アスペクト比が2超)の軟磁性金属粉末を用いた場合、酸素量が1質量%以上であると、高い電気抵抗を持つ圧粉体を得ることができる。2質量%以上がなお好ましい。
この酸素量は、He気流中、黒鉛るつぼ内で絶縁性酸化物が被覆された軟磁性金属粉末を溶解し、発生したCOガスを赤外線吸収法により測定することで求められる。
【0020】
本発明の軟磁性金属粉末は、不可避不純物として(C、N、P、S、Ni、Mo、Mn、Cu、Al等)が1重量%以下含まれていてもよい。
【0021】
図5に本発明により製造される軟磁性金属粉末の模式図を示す。
図中1は原料となるFe-Si-Cr系の軟磁性金属粉末である。製造方法としてはガスアトマイズ法、水アトマイズ法、その他の方法などいずれの方法でも構わない。
なお、この模式図中においては粉末形状は球形に模されているが、実際にはその粉末形状や大きさに寄るものではない。球形、扁平形、異形状などいずれの形状においても、本発明の効果は有効である。
図中2は絶縁性酸化物であり、粉末表面全体を覆っている。但し、原料粉末の形状、組成、表面状態やこの製造の条件等により部分的に絶縁性酸化物がなくても絶縁の効果は十分である。逆に、絶縁物酸化物の層の厚みが薄く、金属粉末成分の占める割合が高い方が、圧粉磁心とした場合に高密度となる。したがって高磁束密度のコアが得られるうえに、処理条件も平易で有益である。」
(7エ)「【0027】
(実施例1)
Fe-6.5%Si-1%Crからなる組成で、平均粒径が40μmの軟磁性原料粉末500gを、テトラアルコキシシラン(関東化学)/IPA溶液100mLと混合し、プロペラ攪拌機を用いて、3時間攪拌した。その後、軟磁性粉末とテトラアルコキシシラン/IPA溶液を分離し、100℃で1時間乾燥させた。得られた軟磁性粉末に、バインダーとして3%PVA水溶液を0.5wt%、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合した。こうして得られた軟磁性粉末を室温下で1200MPaで圧縮成形し、外径14mm、内径8mm、高さ4.5mmのリング試料を作製し、これを窒素ガス中、1000℃で2時間の熱処理を行った。
また、比較として、実施例1と同じ原料粉末を製造し、テトラアルコキシシラン/IPA溶液を用いた絶縁処理の代わりに、水ガラス1.4wt%、カオリン1.3wt%、及び、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合したもの(比較例1)、および、アモルファスシリカ1.5wt%、カオリン0.5wt%、及び、潤滑剤ステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合したもの(比較例2)を用意した。こうして得られた軟磁性粉末を、実施例1と同様に圧縮成形および熱処理を行った。こうして得られた圧粉磁心のコア損失を測定した。コア損失の測定には岩崎通信機社製BHアナライザー(製品名SY8232)を用い、励起磁束密度50mT、周波数50kHzにおける値を測定した。表1に記す。
【0028】
【表1】
[図:0001415323000006.jpg]
…
【0030】
表1に示したように、同じ1000℃で熱処理をしたにもかかわらず、比較例1に比べて実施例1はコア鉄損が低く、高密度である。これは、本発明の軟磁性金属粉末およびその製造方法によるものである。高温熱処理による成形歪みの除去と粉末内部のCr濃度減少によるヒステリシス損失の減少、および、アルコキシド溶液により付着させた絶縁性酸化物(実施例1ではシリカ)と粉末表面のCr濃度が増加し酸化物を形成することによる渦電流損失の減少の効果であると考えられる。」
(8)甲8の記載
ア 甲8には、「高周波対応パワーインダクタ開発のためのカルボニル鉄粉についての研究」(論文の標題)に関して、次の記載がある。
(8ア)「
[図:0001415323000007.jpg]
」
(950頁左欄12~17行)
(8イ)「
[図:0001415323000008.jpg]
」
(950頁右欄4~11行)
(8ウ)「
[図:0001415323000009.jpg]
」
(950頁右欄12行~最下行)
(8エ)「
[図:0001415323000010.jpg]
[図:0001415323000011.jpg]
[図:0001415323000012.jpg]
」
(951頁左欄1行~952頁左欄5行)
(8オ)「
[図:0001415323000013.jpg]
」
(951頁上部)
(9)甲9の記載
ア 甲9には、「次世代磁性材料「磁性鉄粉」への期待」(論文の標題)に関して、次の記載がある。
(9ア)「
[図:0001415323000014.jpg]
」(12頁左欄9~14行)
(9イ)「
[図:0001415323000015.jpg]
[図:0001415323000016.jpg]
」(12頁右欄12行~13頁左欄16行)
(10)甲10の記載
ア 甲10には、「粒子形状による粉体物性の変化」(論文の標題)に関して、次の記載がある。
(10ア)「
[図:0001415323000017.jpg]
」(129頁中央上部)
(10イ)「
[図:0001415323000018.jpg]
…
[図:0001415323000019.jpg]
…
[図:0001415323000020.jpg]
」(130頁右欄1行~131頁左欄8行)
(10ウ)「
[図:0001415323000021.jpg]
」(131頁右欄6~18行)
(10エ)「
[図:0001415323000022.jpg]
」(130頁左中央)
(10オ)「
[図:0001415323000023.jpg]
」(134頁左中央)
2 申立理由1、2(甲1を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア 本件特許発明1を引用する本件特許発明6には、磁性金属元素がFeを含むことが特定されていることから理解されるように、甲1発明の「Fe」は、本件特許発明1の「磁性金属元素」に相当する。
イ 本件特許発明1の「体積累積粒径D50」は「複数個の一次粒子の凝集体である二次粒子の粒径を表す」(本件明細書の段落【0010】)から、本件特許発明1の「金属粒子」は単一の金属粒子のみならず複数の金属粒子からなる粉末を含む概念であると認められる。したがって、上記アの検討も踏まえると、甲1発明の「還元Fe粉からなる軟磁性粉末」は、本件特許発明1の「磁性金属元素を含有してなる金属粒子」に相当する。
ウ 本件特許発明1の「体積累積粒径DSEM50」について、本件明細書の段落【0010】には一次粒子の粒径を表すと記載されており、同【0017】には、「金属粒子の走査型電子顕微鏡像から、粒子どうしが重なり合っていないものを無作為に1000個選んで粒径(ヘイウッド径)を測定し、次いで、得られた粒径から、粒子が球であると仮定したときの体積を算出し、該体積の累積体積50容量%」「における体積累積粒径」であると記載されている。
一方、甲1発明の「一次粒子径」は「走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて軟磁性粉末の断面を観察し、無作為に選択した200点の粒子についてヘイウッド径を測定し、その個数平均粒子径としたもの」である。
したがって、本件特許発明1の「体積累積粒径DSEM50」と甲1発明の「一次粒子径」は、複数の一次粒子の粒径(ヘイウッド径)測定後の算出方法が、それぞれ、体積基準の累積50%径と個数平均径である点、及び、測定する一次粒子の個数が1000個と200個である点で異なるが、いずれも走査型電子顕微鏡観察に基づいて算出された一次粒子の粒径(以下、「一次粒子の粒径φ」もしくは簡単に「φ」ともいう。)である限りにおいて共通する。そして、甲1発明の「一次粒子径は0.9μm」であることは、本件特許発明1の「DSEM50が0.2μm以上1.5μm以下である」ことと、「走査型電子顕微鏡観察に基づいて算出された一次粒子の粒径φが0.2μm以上1.5μm以下である」限りにおいて共通する。
エ 甲1発明の「レーザー回折式乾式粒度測定装置を用いて測定したD50%粒子径である」「二次粒子径」は、本件特許発明1の「レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50」に相当する。
オ 甲1発明において、「一次粒子径は0.9μm、二次粒子径は3.2μm」であることは、二次粒子径/一次粒子径=3.2/0.9≒3.56と計算できることを踏まえ、また、上記ウ、エの検討も参照すると、本件特許発明1の「走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下」であることと、「走査型電子顕微鏡観察に基づいて算出された一次粒子の粒径φに対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/φが4以下」である限りにおいて共通する。
カ 以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「磁性金属元素を含有してなる金属粒子であって、
前記金属粒子の走査型電子顕微鏡観察に基づいて算出された一次粒子の粒径φに対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/φが4以下であり、
走査型電子顕微鏡観察に基づいて算出された一次粒子の粒子径φが0.2μm以上1.5μm以下である金属粒子。」の点。
(相違点1)
本件特許発明1では「円形度係数が0.85以上である球状」であるのに対して、甲1発明では円形度係数が特定されていない点。
(相違点2)
「走査型電子顕微鏡観察に基づいて算出された一次粒子の粒子径φ」が、本件特許発明1では「走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径」であるのに対して、甲1発明では「走査型電子顕微鏡を用いて軟磁性粉末の断面を観察し、無作為に選択した200点の粒子についてヘイウッド径を測定し、その個数平均粒子径としたもの」である点。
(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点1について検討する。
ア 甲1には、実施例1の軟磁性粉末の粒子の形状がどの程度球状に近いものであるかについて記載されておらず、「円形度係数」がどの程度であるか不明であるので、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
イ 上記アの点に関して、申立人は、特許異議申立書の第26頁の第8~11行において、甲1の図1に示された軟磁性粉末100の一次粒子11の形状は五角形であり、正五角形の「円形度係数」は0.865と計算されるので、甲1発明の粒子形状は「円形度係数が0.85以上である球状」であるとの要件を満足するから、相違点1は実質的な相違点ではないと主張しているので、この主張について検討する。
ウ 甲1の上記1のア(1オ)には、「図1は、本実施形態の軟磁性粉末の二次粒子及び一次粒子の凝集状態を概念的に示す模式図である。」(段落【0029】)、「図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。」(段落【0028】)と記載されていることから、図1は本実施形態についての模式図ではあるが、必ずしも実施例1の軟磁性粉末の形状を表したものであるということはできない。仮に、図1が実施例1の軟磁性粉末の形状を表しているとしても、図1は「一次粒子の凝集状態を概念的に示す模式図」に過ぎず、実施例1の一次粒子の形状をSEM像と同様のレベルで正確に反映しているものということはできない。さらに、仮に、図1が実施例1の軟磁性粉末の一次粒子11の形状を正確に表しているとしても、その形状は正五角形ではなく歪んだ五角形である。申立人は、正五角形の場合に円形度係数が0.865であることを示しているが、歪んだ五角形の場合には、次のエに示すとおり、円形度係数が0.85以上になるとはいえない。
エ 五角形の面積をS、周囲長をLとしたとき、円形度係数は4πS/LLで求めることができる。五角形が、半径1の円に内接する正五角形の場合の面積をS0、周囲長をL0とすると、
[図:0001415323000024.jpg]
と算出できるところ、周囲長L=L0に維持したまま形状を歪める(例えば、各辺の長さを維持したまま隣接する辺の間の角度を変化させるように変形する)ことによって面積をX倍(X<1)にしたときの円形度係数を計算すると次の表のようになる。
[図:0001415323000025.jpg]
上記表によれば、X=0.99倍のとき4πS/LL=0.856≧0.85が成立するが、X=0.98倍のとき4πS/LL=0.848<0.85となる。つまり、正五角形の形状が歪んで面積がS0からわずかに2%変化しただけで、本件特許発明1に特定された「円形度係数が0.85以上である球状」であるとの要件を満たさないものとなる。
オ そうすると、仮に甲1の図1が実施例1の軟磁性粉末の一次粒子の形状を正確に表しているとしても、図1の一次粒子11の形状はいずれも正五角形ではなく歪んだ五角形であることが視認できるから、上記エの検討を参照すれば、実施例1の軟磁性粉末の一次粒子が「円形度係数が0.85以上である球状」であるとの要件を満たすとはいえない。
したがって、上記イの申立人の主張は採用できない。
カ 次に、甲1発明において、甲2~10の記載に基いて、「円形度係数が0.85以上である球状」とすること、すなわち、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を備えたものとすることが、当業者が容易になし得ることであるかについて検討する。
キ 甲1発明と甲2記載事項との組合わせについて
(ア)甲2に記載された発明が解決しようとする課題は、機械的強度の高い磁性焼結体を製造することができる磁性粉末を提供することであるところ(上記1(2)ア(2イ)、(2ウ))、上記磁性粉末はマグネタイトやフェライトであり(同(2オ))、磁性粉末の球形度を0.9以上とすることにより、粒子の形状は真球に近くなるので、高い流動性と良好なパッキングにより、充填性が向上するので、機械的強度を向上させることができる(同(2エ))。なお、上記球形度とは、倍率1000倍のSEM写真を使用し、50個の粒子の円形度から算出した平均円形度のことであり、「(円形度)=(4π×面積)/(周長×周長)」により算出されるものであるから(同(2ク))、本件特許発明の円形度係数と同様に算出されるものである。
(イ)そこで、甲1発明に甲2に記載された上記(ア)の事項を組合わせることが可能であるかについて検討する。甲1発明の軟磁性粉末は還元Fe粉であるのに対して、甲2の磁性粉末はマグネタイト(化学組成がFeFe3+2O4(四酸化三鉄)である鉄の酸化鉱物)やフェライト(酸化鉄を主成分とするセラミックス)の粉末であるから、両粉末はそもそも組成が異なる物質であるうえに、甲2に記載された発明が解決しようとする課題は、上述のとおり、機械的強度の高い磁性焼結体を製造することができる磁性粉末を提供することであるのに対して、甲1発明の軟磁性粉末は加圧成形して圧粉磁心を製造するためのものであって焼結しないものであり、したがって、焼結体の強度を高くするとの課題を有するものではないので、甲1発明に甲2に記載された事項を適用する動機は見い出せない。
(ウ)上記(イ)の検討にかかわらず、仮に、甲1発明の軟磁性粉末が、甲2に記載された磁性粉末と同様に、充填性を向上するために磁性粉末の球形度を0.9以上にすることが好ましいものであるとしても、甲1発明の軟磁性粉末において、球形度を甲2に記載されている0.9以上とすることは、以下の理由により、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
甲2の磁性粉末の製造方法は、化学式Fe2O3で表されるヘマタイトからなる原料粉末にカーボン粉末を均一に付着させた処理済原料粉末をホッパーから落下させ、プロパン等の可燃性のガスと酸素との混合ガスが燃焼しているバーナーノズルの作る1000℃以上2000℃以下の火炎の中を通過させることにより、溶融・凝固反応を比較的緩やかに進行させることによって、球形度が高い磁性粒子を得るというものである(同(2オ))。一方、甲1の軟磁性粉末の製造方法は、原料粉であるヘマタイトを水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行って還元処理した後、得られた還元Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、高圧ホモジナイザーで解砕処理するものであり(上記1(1)ア(1ク))、甲2の磁性粉末の製造方法とは大きく異なるものであるから、甲1の軟磁性粉末の製造方法において、具体的にどのようにすれば軟磁性粉末の球形度を0.9以上とすることができるか、当業者といえども理解できるとはいえない。仮に、甲1の軟磁性粉末の製造方法において、上記熱処理の条件を変更して1000℃以上2000℃以下の火炎の中を通過させるように変更すると、原料粉が火炎中で酸化してしまうため還元鉄が得られなくなる虞が極めて高く、そのため阻害要因が存在するといえる。
(エ)そうすると、仮に、甲2の記載を参照することにより、甲1発明の軟磁性粉末において、充填性を向上するために軟磁性粉末の球形度を0.9以上にすることが好ましいものであるとしても、還元Fe粉であることを維持したまま、球形度を0.9以上にするための具体的な方法が不明であるから、甲1発明において、軟磁性粉末の球形度を0.9以上にすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
ク 甲1発明と甲3記載事項との組合せについて
(ア)甲1発明に甲3に記載された事項を組合わせることが可能であるかについて検討する。
甲1発明の軟磁性粉末は、圧縮成形して圧粉磁心に使用する還元Fe粉であるのに対して(【0050】)、甲3の金属粉は、導電性ペースト中の導電フィラーとして用いられる銅粉であるから(上記1(3)ア(3イ))、両者はそもそも組成が異なる物質であって、適用される技術分野も異なるうえに、甲3に記載された発明が解決しようとする課題は、微粒であっても優れた導電性を確保することができる銅粉を提供することであるのに対して(同(3ウ))、甲1発明の軟磁性粉末は、渦電流損失を抑制する必要がある観点から、粒子間の絶縁性の向上は必要であるものの、粒子の導電性の向上は不要であり、導電性を向上するとの課題を有するものではないので、甲1発明に甲3に記載された事項を適用する動機は見い出せない。
(イ)もっとも、甲1発明の軟磁性粉末は、圧縮成形して圧粉磁心とするものであるから(上記1(1)ア(1カ))、上記(ア)の検討にかかわらず、仮に、甲3に記載された銅粉と同様に、緻密性を高めるために球状又は略球状にすることが好ましいものであるとしても(上記1(3)ア(3オ))、甲1発明の軟磁性粉末を甲3に記載された球状又は略球状とすることは、以下の理由により、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
甲3の銅粉の製造方法は、図1のDCプラズマ装置を用い、供給ノズル6から供給された原料粉末が、DCプラズマトーチ4で発生させたプラズマフレーム内を通るときにガス化され、チャンバー3内で冷却されて微粉末となり回収ポット5内に回収されるというものである(同(3カ))。一方、甲1の軟磁性粉末の製造方法は、原料粉であるヘマタイトを水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行って還元処理した後、得られた還元鉄Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、高圧ホモジナイザーで解砕処理するものであり(上記1(1)ア(1ク))、甲3の銅粉の製造方法とは大きく異なるものであるから、甲1の軟磁性粉末の製造方法において、具体的にどのようにすれば軟磁性粉末を球状又は略球状にすることができるか、当業者といえども理解できるとはいえない。例えば、甲1の軟磁性粉末の製造方法における上記熱処理及び解砕処理にどのように甲3のDCプラズマ装置を用いた製造方法を適用するか不明である。
仮に、甲1発明の製造方法として甲3記載のDCプラズマ装置を用いた製造方法を採用することにより、製造された粒子を球状又は略球状とすることが可能であるとしても、DCプラズマ装置を用いた製造方法により達成される銅粉の円形度係数は不明であるから、本件特許発明1のように「円形度係数が0.85以上である球状」とすることができるか不明であり、さらに仮に、円形度係数が0.85以上の球状とすることが可能であるとしても、甲1発明の製造方法とは全く異なる製法を採用することとなるために、製造後の一次粒子径及び二次粒子径が甲1発明から変化すると推定されるから、その際に本件特許発明1における「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件が維持されるか不明であり、この点が新たな相違点となってしまう。
(ウ)そうすると、仮に、甲3の記載を参照することにより、甲1発明の軟磁性粉末において、緻密性を高めるために球状又は略球状にすることが好ましいものであるとしても、甲1発明の軟磁性粉末の製造方法において、「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件を維持したうえで、球状又は略球状にするための具体的な方法が不明であり、また、略球状とはどの程度の円形度係数であるかも不明であるから、甲1発明において、軟磁性粉末を円形度係数が0.85以上である球状とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
ケ 甲1発明と甲4記載事項との組合せについて
(ア)甲1発明に甲4に記載された事項を組合わせることが可能であるかについて検討する。
甲4に記載された発明が解決しようとする課題の一つは、絶縁被膜で覆った金属磁性粒子(複合磁性粒子)を圧縮成形してリアクトル用コアを製造する際に絶縁被膜が損傷して渦電流損が増大することを抑制することであり(上記1(4)ア(4イ))、金属磁性粒子の円形度を0.80以上1.0以下とすることによって、複合磁性粒子の加圧成形時に粒子同士が圧接されて絶縁被膜が損傷することを抑制することができる(同(4ウ))。
そうすると、甲1発明と甲4の発明とは、圧粉磁心(コア)に使用する鉄粉という同じ技術分野に属しており、甲1発明の軟磁性粉末の一次粒子もコアロスを小さくするために絶縁層により被覆されていることが好ましいものであるから(上記1(1)ア(1イ)、(1オ))、甲1発明において、甲4の記載に基づいて、金属磁性粒子の円形度を0.8以上1.0以下とする動機が認められる。
(イ)しかしながら、甲1発明の軟磁性粉末を甲4の記載に基づいて円形度0.8以上1.0以下とすることは、以下の理由により、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
甲4の複合磁性粒子の製造方法は、水アトマイズ法により鉄及び不可避不純物からなる金属磁性粒子を準備し、当該金属磁性粒子にリン酸鉄からなる絶縁被膜を形成するというものであり(上記1(4)ア(4エ))、当該方法により製造された試料No.1~4の金属磁性粒子の円形度Sfは0.91~0.92である(同(4オ))。一方、甲1の軟磁性粉末の製造方法は、原料粉であるヘマタイトを水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行って還元処理した後、得られた還元Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、高圧ホモジナイザーで解砕処理するものであり(上記1(1)ア(1ク))、甲4の複合磁性粒子の製造方法とは大きく異なるものであるから、甲1の軟磁性粉末の製造方法において、具体的にどのようにすれば軟磁性粉末の円形度を0.8以上1.0以下とすることができるか、当業者といえども理解できるとはいえない。例えば、甲1発明の製造製法に甲4記載の水アトマイズ法をどのように適用するか不明である。
仮に、甲1発明の製造方法として甲4記載の水アトマイズ法を採用することにより、製造された粒子の円形度を0.80以上1.0以下とすることが可能であるとしても、甲1発明の製造方法とは全く異なる製法を採用することとなるために、製造後の一次粒子径及び二次粒子径が甲1発明から変化すると推定されるから、その際に本件特許発明1における「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件が維持されるか不明であり、この点が新たな相違点となってしまう。
(ウ)そうすると、仮に、甲4の記載を参照することにより、甲1発明の軟磁性粉末において、圧粉磁心(コア)の渦電流損を抑制するために、粒子の円形度を0.8以上1.0以下とすることが好ましいものであるとしても、甲1発明の軟磁性粉末の製造方法において、「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件を維持しながら円形度を0.8以上1.0以下とするための具体的な方法が不明であるから、甲1発明において、軟磁性粉末の円形度を0.8以上1.0以下とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
コ 甲1発明と甲5記載事項との組合せについて
(ア)甲5に記載された発明が解決しようとする課題は、樹脂材料への分散に適する粒径を有し、しかも樹脂に対する分散性、充填性に優れた球状セラミックス粉末と樹脂材料との複合材料からなる電子部品を提供することであり(上記1(5)ア(5ウ))、上記セラミックス粉末として、球形度が0.9以上である微細な粉末を用いることにより、樹脂材料との複合材中への充填性が向上して粉末の有する特性を有効に発揮することができる(同(5エ))。なお、上記球形度とは、R:粒子の投影面積に等しい円の直径、r:粒子の投影像に外接する最小円の直径、とすると、R/rとして定義されるものであるから、本件特許発明の円形度係数とは算出方法が異なるものである(同(5カ))。
(イ)そこで、甲1発明に甲5に記載された上記(ア)の事項を組合わせることが可能であるかについて検討する。甲1発明の軟磁性粉末は、圧縮成形して圧粉磁心に使用する還元Fe粉であるのに対して(【0050】)、甲5の球状セラミック粉末は、樹脂材料とともに積層基板、チップ状のインダクタ素子、フィルタ等の積層電子部品(上記1(5)ア(5キ))に複合材料として使用される、フェライトや酸化鉄の粉末であるから(同(5オ))、両者はそもそも組成が異なる物質であって、適用される技術分野も異なるうえに、甲5に記載された発明が解決しようとする課題は、樹脂材料への分散に適する粒径を有し、しかも樹脂に対する分散性、充填性に優れた球状セラミックス粉末と樹脂材料との複合材料からなる電子部品を提供することであるのに対して(同(5ウ))、甲1発明の軟磁性粉末は加圧成形して圧粉磁心を製造するためのものであって樹脂に分散するものではなく、樹脂に対する分散性、充填性に優れた球状セラミック粉末を提供するとの課題を有するものではないので、甲1発明に甲5に記載された事項を適用する動機は見い出せない。
(ウ)上記(イ)の検討にかかわらず、仮に、甲1発明の軟磁性粉末が、甲5に記載された球状セラミック粉末と同様に、充填性を向上するために粉末の球形度を0.9以上にすることが好ましいものであるとしても、甲1発明の軟磁性粉末において、球形度を0.9以上とすることは、以下の理由により、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
甲5のセラミック粉末の製造方法は、原料粉末と水を混合してスラリーとし、このスラリーを噴霧乾燥機にて顆粒粉を形成し、この顆粒粉を1150度で1時間焼結することにより、球形度が0.95である焼結粉末を得るというものである(同(5ク))。一方、甲1の軟磁性粉末の製造方法は、原料粉であるヘマタイトを水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行って還元処理した後、得られた還元Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、高圧ホモジナイザーで解砕処理するものであり(上記1(1)ア(1ク))、甲5のセラミック粉末の製造方法とは大きく異なるものであるから、甲1の軟磁性粉末の製造方法において、具体的にどのようにすれば軟磁性粉末の球形度を0.9以上とすることができるか、当業者といえども理解できるとはいえない。例えば、甲1の軟磁性粉末の製造方法における上記熱処理及び解砕処理にどのように甲5の噴霧乾燥や焼結を用いた製造方法を適用するか不明である。
仮に、甲1発明の製造方法として甲5記載の噴霧乾燥や焼結を用いた製造方法を採用することにより、製造された粒子の球形度を0.9以上とすることが可能であるとしても、甲1発明の製造方法とは全く異なる製法を採用することとなるために、製造後の一次粒子径及び二次粒子径が甲1発明から変化すると推定されるから、その際に本件特許発明1における「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件が維持されるか不明であり、この点が新たな相違点となってしまう。
(エ)そうすると、仮に、甲5の記載を参照することにより、甲1発明の軟磁性粉末において、充填性を向上するために粉末の球形度を0.9以上にすることが好ましいものであるとしても、甲1発明の軟磁性粉末の製造方法において、「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件を維持したうえで、球形度を0.9以上にするための具体的な方法が不明であるから、甲1発明において、軟磁性粉末を球形度が0.9以上である球状とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
サ 甲1発明と甲6記載事項との組合せについて
甲6には、粒子形状を球状にすることについて記載されていないから、甲6の記載を参照したとしても、甲1発明において、「円形度係数が0.85以上である球状」とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
シ 甲1発明と甲7記載事項との組合せについて
甲7には、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法で製造したFe-Si-Cr系の軟磁性金属粉末について、その粉末形状が球形であることが記載されているに留まり、円形度係数については記載されていないから、甲7の記載を参照したとしても、甲1発明において、「円形度係数が0.85以上である球状」とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
ス 甲1発明と甲8記載事項との組合せについて
(ア)甲8には、チョークコイル用コアの原料となる金属軟磁性粉末として、アトマイズ法により製造される粉末に代えてカルボニル鉄粉を用いることが記載されており(上記1(8)ア(8ア)、(8イ))、カルボニル鉄粉はFe(CO)5を熱分解することで得られたものであり(同(8ウ))、SEMで観察すると、得られたカルボニル鉄粉(還元したものも非還元のものも)の粒子形状は球状である(同(8エ))。
(イ)甲8で得られた金属軟磁性粉末の製造方法は、Fe(CO)5を熱分解することであるのに対して、甲1発明の軟磁性粉末の製造方法は、原料粉であるヘマタイトを水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行って還元処理した後、得られた還元Fe粉に有機溶剤を加えてスラリーを作製し、高圧ホモジナイザーで解砕処理するものであり(上記1(1)ア(1ク))、甲8の製造方法とは大きく異なるものであるから、甲1の軟磁性粉末の製造方法において、具体的にどのようにすれば軟磁性粉末を球状にすることができるか、当業者といえども理解できるとはいえない。例えば、甲1発明の製造方法において、どのように甲8の上記製造方法を適用するか不明である。
仮に、甲1発明の製造方法として甲8記載の熱分解を用いた製造方法を採用することにより、製造された粉末の粒子形状を球状とすることが可能であるとしても、本件特許発明1のように「円形度係数が0.85以上である球状」とすることができるか不明であり、さらに仮に、円形度係数が0.85以上の球状とすることが可能であるとしても、甲1発明の製造方法とは全く異なる製法を採用することとなるために、製造後の一次粒子径及び二次粒子径が甲1発明のものから変化すると推定されるから、その際に本件特許発明1における「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件が維持されるか不明であり、この点が新たな相違点となってしまう。
(ウ)そうすると、甲8の記載を参照したとしても、甲1発明の軟磁性粉末の製造方法において、「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件を維持したうえで、球状にするための具体的な方法が不明であり、また、球状とはどの程度の円形度係数であるかも不明であるから、甲1発明において、軟磁性粉末を円形度係数が0.85以上である球状とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
セ 甲1発明と甲9記載事項との組合せについて
甲9には、圧縮成形して圧粉磁心を製造するための強磁性体粉末について、圧粉磁心において成形体密度を上げることが高飽和磁束密度化に有効であることが記載されている(上記1(9)ア(9イ))にとどまり、強磁性体粉の形状を球状にすることや、そのための製造法について何ら記載されていない。
したがって、甲1発明において、甲9の記載に基いて、円形度係数が0.85以上である球状とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
ソ 甲1発明と甲10記載事項との組合せについて
(ア)甲10には、図2のハイブリダイザーを用いてステンレス粉体の粒子形状調整を行うことで、球形化を進行させることが記載されている(上記1(10)ア(10ア)、(10ウ))。また、球形化の指標として、粒子形状を楕円形で近似し、その長軸半径a0と短軸半径b0としたときの形状指数k=b0/a0が採用されている(同(10イ))。図6によれば、ステンレス粉体及び銅粉体のいずれにおいても、ハイブリダイザーの処理時間の経過とともに形状指数kを0.92程度まで上昇させられること、すなわち球形化を進行させられることが見て取れる。
(イ)圧縮成形して圧粉磁心を製造するための強磁性体粉末において、圧粉磁心における成形体密度を上げることが高飽和磁束密度化に有効であること(上記1(9)ア(9ア)、(9イ))、成形体密度を上げるために粉体を球状にすることが好ましいこと(上記1(2)ア(2エ))、絶縁被膜で覆った金属磁性粒子を加圧成形する時に、粒子同士が圧接されて絶縁被膜が損傷することを抑制するために、金属磁性粒子の円形度を0.8以上1.0以下にすることが好ましいこと(上記1(2)ア(4ウ))が知られていることを踏まえると、圧粉磁芯を作製するための甲1発明の軟磁性粉末において、加圧成形時の成形体密度を上げるため、また加圧成形時の絶縁被膜の損傷を抑制するために、上記粉末の粒子形状を球状とする動機が内在しているといえる。
(ウ)そうすると、甲1発明の軟磁性粉末において、その粒子形状を球状とするために、さらに甲10に記載のハイブリダイザーによる処理を行うことにより、形状指数kが0.92程度になるまで球形化を進めること自体は、当業者が容易になし得たことであるといえる。
しかしながら、形状指数kと本件特許発明1の円形度係数の関係が不明であるから、形状指数k=0.92であることが、本件特許発明1の「円形度係数が0.85以上である球状」に相当するか不明である。
仮に、形状指数k=0.92であることが、本件特許発明1の「円形度係数が0.85以上である球状」に相当するとしても、甲1発明の軟磁性粉末を所定時間ハイブリダイザーによる処理を行うと、粒子の形状が球形化するのみならず、甲1の図1に模式図で示されている一次粒子及び二次粒子の粒径や凝集状体も変化すると推定されるから、その際に本件特許発明1における「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件が維持されるか不明であり、この点が新たな相違点となってしまう。
(エ)そうすると、甲10の記載を参照したとしても、甲1発明の軟磁性粉末において、「比D50/DSEM50が4以下」であるとの要件を維持したうえで、円形度係数が0.85以上である球状とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
タ 上記キ~ソのとおり、甲1発明において、甲2~10の記載に基いて、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
チ したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明と甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本件特許発明13と甲1方法発明との対比、判断
本件特許発明13の製造方法は、「プラズマフレーム内に、磁性金属元素を含む母粉を供給して該プラズマフレーム内で該母粉をガス化し、ガス化した該母粉を冷却して金属粒子を生成させる工程」を有するものであるのに対して、甲1方法発明は、「原料粉であるヘマタイトを、水素雰囲気中500℃の温度で5時間の熱処理を行」うことによって還元Fe粉を生成するものであるから、両者は少なくとも金属粒子を生成させる工程の点で相違するところ、両者で金属粒子を生成させる工程が全く異なっており、甲1のほか、甲2~10の記載を検討しても、甲1方法発明の熱処理に代えてプラズマフレームを用いた処理を採用する動機は見いだせない。
そうすると、甲1方法発明において、甲2~10の記載に基いて、上記相違点に係る本件特許発明13の特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明13は、甲1に記載された発明と甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明13と甲3発明との対比、判断
申立人は、特許異議申立書の第35頁の(サ)において、本件特許発明13は甲3に記載された発明に基いて進歩性を有しないと主張しているので、この主張についても検討する。
ア 本件特許発明13と甲3発明との対比
(ア)銅は非磁性金属元素であって磁性金属元素ではないので、甲3発明の「原料銅粉」と本件特許発明13の「磁性金属元素を含む母粉」とは、「金属元素を含む母粉」である限りにおいて共通する。
(イ)甲3発明の「銅粒子」は本件特許発明13の「金属粒子」に相当する。
(ウ)以上の検討によれば、本件特許発明13と甲3発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「層流状態のプラズマフレーム内に、金属元素を含む母粉を供給して該プラズマフレーム内で該母粉をガス化し、ガス化した該母粉を冷却して金属粒子を生成させる工程を有する、金属粒子の製造方法。」の点。
(相違点3)
「金属元素」が、本件特許発明13では「磁性金属元素」であるのに対して、甲3発明では「銅」である点。
(相違点4)
「層流状態のプラズマフレーム」が、本件特許発明13では「チャンバー内に発生させた」ものであるのに対して、甲3発明では「DCプラズマトーチ4」で発生させたものである点。
(相違点5)
本件特許発明13では「前記チャンバー外であって且つプラズマトーチの直下に、該プラズマトーチと異なる部位であり且つ前記プラズマフレームを包囲する環状壁部」が配置されており、「前記環状壁部」が「円筒からなり、該円筒における横断面の中心の位置と、プラズマフレームの発生位置とが一致した状態下に前記プラズマフレームを発生させ、前記プラズマフレームのフレーム長さに対する前記環状壁部の長さの比が0.05以上0.90以下となるように該プラズマフレームを発生させる」ものであるのに対して、甲3発明では上記のような「環状壁部」を備えることが特定されていない点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、相違点5について検討する。
甲3には、プラズマトーチの直下に環状壁部を設けることは記載も示唆もされておらず、そのようなことが当業者に周知の事項であるともいえない。
なお、申立人は、この点に関して、特許異議申立書の第36頁の3~5行において、「プラズマフレームの温度低下を抑制するために、プラズマフレームを包囲する部材を設けることは、技術常識」である旨の主張をしているが、この主張を裏付けるような文献は提出されていないため、この主張を採用することができない。
したがって、甲3発明において、プラズマトーチの直下に環状壁部を設けるようにすること、すなわち、相違点5に係る本件特許発明13の特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点3、4について検討するまでもなく、本件特許発明13は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明と甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、本件特許発明1を引用することにより本件特許発明1の全ての特定事項を備えた本件特許発明2~12についても、同様の理由によって、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明と甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
さらに、本件特許発明13は、甲1に記載された発明と甲2~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、申立理由1、2によっては、本件特許発明1~13に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1)本件明細書の段落【0002】~【0005】によれば、本件特許発明1~9が解決しようとする課題は、大電流を流すことのできるインダクタの原料となる磁性材料の飽和磁束密度を高めるために、充填性の高い磁性粒子を提供することであると認められる。
(2)本件明細書の段落【0006】、【0010】、【0013】によれば、本件特許発明1~9の金属粒子は、金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下であり、DSEM50が0.2μm以上1.5μm以下であるとの条件(以下、「粒度分布条件」という。)を満たすことによって、上記課題を解決することができると説明されている。
そして、段落【0052】の【表1】を参照すれば、金属粒子のコア部がFeCo合金からなる場合、上記粒度分布条件を満たす金属粒子である実施例1、2の金属粒子は、上記粒度分布条件を満たさない金属粒子である比較例1の金属粒子よりも、圧粉密度(充填性に対応)が高く、飽和磁化(飽和磁束密度に対応)が大きくなることが実証されている。また、段落【0057】の【表2】を参照すれば、金属粒子のコア部がFeNi合金からなる場合、上記粒度分布条件を満たす金属粒子である実施例3の金属粒子は、上記粒度分布条件を満たさない金属粒子である比較例2の金属粒子よりも、圧粉密度(充填性に対応)が高く、飽和磁化(飽和磁束密度に対応)が大きくなることが実証されている。
(3)そして、本件特許発明1~9の金属粒子は、上記粒度分布条件を満たすこと、すなわち、「金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下であり、DSEM50が0.2μm以上1.5μm以下である」ことが特定されているので、上記課題を解決することができるものであるということができる。
(4)申立人による上記第3の3の主張(1)~(3)について
ア 主張(1)について
(ア)本件明細書には、円形度係数が0.91の実施例が記載されているのみであり、円形度係数が0.865である正五角形のような「球状」であるとはいえないような範囲まで含む本件請求項1の記載は、本件特許発明が課題を解決できると当業者が認識できる範囲であるとはいえず、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないとの主張(1)について検討する。
(イ)本件明細書の段落【0022】には「本発明の金属粒子の形状に特に制限はなく、例えば球状、フレーク状、多面体状など種々の形状を採用することができる。金属粒子の充填性を高め、飽和磁束密度を高める観点から、金属粒子の形状は、球状であることが好ましい。球状であるとは、以下の方法で測定した円形度係数が好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上であることをいう。」と記載されている。
(ウ)上記記載によれば、上記課題を解決するために、金属粒子の形状に制限はないが、金属粒子の充填性を高め、飽和磁束密度を高める観点から、金属粒子の形状は、球状であることが好ましいと説示されており、球状であることは課題を解決するためにより好ましい態様であるにすぎず、また、円形度係数が0.85以上であることも球状の程度を示す目安にすぎず、円形度係数が0.85以上である球状であることは課題を解決するための必須の要件であるとの説明はなされていない。
(エ)そして、申立人は、粒子の形状が正五角形のときなど球状とはいえない場合に、実際に課題を解決することができないことを示すための、文献や実験結果等の具体的な根拠を示しているわけではない。
(オ)したがって、上記主張(1)を採用することはできない。
イ 主張(2)について
(ア)本件明細書には、金属粒子がコア部(FeCo合金及びFeNi合金粉末)とシェル部(SiO2のみ)との組み合わせの実施例が記載されているのみであるから、コア部の磁性金属元素とシェル部の非磁性金属元素について記載されていない本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないとの主張(2)について検討する。
(イ)本件明細書の段落【0023】には「本発明の金属粒子は、磁性金属材料を含むことに加えて、非磁性金属元素を更に含んでいてもよい。特に、非磁性金属元素は、磁性金属元素を含有するコア部の表面に配置されるシェル部に含有されていることが、渦電流損失の低減の観点から有利である。とりわけ、本発明の金属粒子は、磁性金属元素を含有するコア部と、該コア部の表面に配置され且つ非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部とを具備することが、渦電流損失の更に一層の低減の観点から好ましい。この非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部は、コア部の電気絶縁層として作用するので、そのことに起因して渦電流損失が一層低減する。シェル部は電気絶縁性を有する限りにおいて結晶質であってもよく、あるいは非晶質であってもよい。」と記載されている。
(ウ)上記記載によれば、金属粒子は、磁性金属元素を含有するコア部と、該コア部の表面に配置され且つ非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部とを具備することが、渦電流損失の更に一層の低減の観点から好ましいと説明されており、コア部の表面にシェル部が配置されない場合に上記課題を解決することができないとの記載はされていないし、金属粒子の内部構造(コアシェル構造)が当該金属粒子の充填性に関係があることが技術常識であるとも認められない。
(エ)そして、申立人は、金属粒子がコア部と該コア部の表面に配置されたシェル部を具備しない場合に実際に課題を解決することができないことを示すための、文献や実験結果等の具体的な根拠を示しているわけではない。
(オ)したがって、上記主張(2)を採用することはできない。
ウ 主張(3)について
(ア)本件特許発明の金属粒子は、DCプラズマ法によってのみ製造することができたものであり、課題解決手段であるから、DCプラズマ法によって製造されたことが特定されていない本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないとの主張(3)について検討する。
(イ)本件特許発明1~9は、金属粒子という物の発明であり、粒度分布条件を満たすことにより上記課題を解決することができることは、上記(1)~(3)で検討したとおりであり、DCプラズマ法によって製造することは課題解決手段とはいえない。そして、本件特許発明1~9の金属粒子について、DCプラズマ法で製造したことが特定されないと上記課題を解決することができないという具体的な理由は見いだせない。
(オ)したがって、上記主張(3)を採用することはできない。
(5)まとめ
以上の検討によれば、本件特許発明1と本件特許発明1を引用することにより本件特許発明1の特定事項を全て備えた本件特許発明2~9は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものである。
したがって、申立理由3によっては、本件特許発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(実施可能要件)について
(1)本件特許発明1~9は「金属粒子」という物の発明である。物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤をすることなく、その物を製造し、使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきであるところ、以下、上記観点に立って検討する(平成26年(行ケ)第10254号の第65頁、4(1)参照。)。
(2)本件明細書の段落【0029】~【0042】には、図1のDCプラズマ装置を用いた本件特許発明1~9の金属粒子の製造方法について記載されており、さらに、同段落【0046】、【0047】、【0054】には上記DCプラズマ装置を用いた実施例の製造方法についても記載されているから、当業者は、これら本件明細書の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤をすることなく、本件特許発明1~9の金属粒子を製造することができるといえる。そして、本件明細書の段落【0044】には、金属粒子の用途について記載されているから、当業者は、本件特許発明1~9の金属粒子を使用することができる。
これに対して、申立人は、上記第3の4で、本件明細書の発明の詳細な説明には、DCプラズマ法以外の方法について具体的な記載や説明がなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、本件請求項1~9の金属粒子をどのように製造するのか理解できないと主張する。
しかしながら、本件明細書には、物の発明である本件特許発明1~9を実施できる製造方法が少なくとも一つ記載されていれば十分であり、複数の製造方法が記載されていなければ本件特許発明を実施できないとはいえない。
したがって、申立人による上記主張は採用できない。
(3)まとめ
以上の検討によれば、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1~9について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
したがって、申立理由4によっては、本件特許発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
第5 結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700410