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特許異議申立

2022-701046

車両用整流装置

審判番号
2022-701046
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-222792
登録番号
7060783
請求日
2022年10月21日
審決日
2023年12月26日
公報発行日
2024年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社アイシン
  • 【権利者代理人】弁理士法人アイテック国際特許事務所
  • 【異議申立人】古川 慎二
審判長/審判官
  • 審判長 河端 賢
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 山本 信平
分類
P1652.121-YAA(B62D) / P1652.537-YAA(B62D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7060783号発明「車両用整流装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7060783号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6、〔7、8〕及び9について訂正することを認める。 特許第7060783号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7060783号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成29年11月20日に出願され、令和4年4月19日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月27日に特許掲載公報が発行された。 そして、令和4年10月21日に特許異議申立人古川慎二(以下「申立人」という。)より請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、令和5年2月1日付けで取消理由通知書が通知され、令和5年4月6日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、令和5年4月27日に特許権者より当該訂正請求書についての手続補正書が提出され、令和5年11月7日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知書(特許法第120条の5第5項)を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは意見書の提出がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年4月27日に特許権者より提出された手続補正書により補正された令和5年4月6日に特許権者より提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すために当審にて付与したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み」 と記載されているのを 「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記駆動装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含み、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み」 に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6に 「請求項1から5の何れか一項に記載の車両用整流装置において、 前記係合部は、前記整流部材に回転不能に固定されるカラー部材に形成されている車両用整流装置。」 とあるうち、訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除され、 前記係合部は、前記整流部材に回転不能に固定されるカラー部材に形成されている車両用整流装置。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に 「請求項1から6の何れか一項に記載の車両用整流装置において、 前記駆動装置は、 アクチュエータと、 前記アクチュエータにより回動させられる原動節、前記回転軸に固定される従動節、および前記原動節と前記従動節とを連結する中間節を含むリンク機構を含み、 前記整流部材が前記格納位置から前記整流位置に向けて回動するように前記原動節が前記アクチュエータにより回動させられる際に該原動節に対する前記中間節の回転方向が変化した位置で前記原動節の回動を規制するストッパを更に備える車両用整流装置。」 とあるうち、訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除され、 前記駆動装置は、 アクチュエータと、 前記アクチュエータにより回動させられる原動節、前記回転軸に固定される従動節、および前記原動節と前記従動節とを連結する中間節を含むリンク機構を含み、 前記整流部材が前記格納位置から前記整流位置に向けて回動するように前記原動節が前記アクチュエータにより回動させられる際に該原動節に対する前記中間節の回転方向が変化した位置で前記原動節の回動を規制するストッパを更に備える車両用整流装置。」 に訂正する。請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に 「請求項1から8の何れか一項に記載の車両用整流装置において、 前記車両の車速が予め定められた整流開始速度に達してから予め定められた整流終了速度以下になるまでの間、前記整流部材が前記整流位置に位置するように前記駆動装置を制御する制御装置を更に備える車両用整流装置。」 とあるうち、訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除され、 前記車両の車速が予め定められた整流開始速度に達してから予め定められた整流終了速度以下になるまでの間、前記整流部材が前記整流位置に位置するように前記駆動装置を制御する制御装置を更に備える車両用整流装置。」 に訂正する。 2 一群の請求項についての説明 訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1に記載されている「前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置」を、さらに「アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含」む構成に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の【0021】には、以下のように記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。 「駆動装置12は、何れも図示しないモータ(DCモータ)やギヤ機構等を含むと共にフレームF(あるいは車体2)に固定されるアクチュエータ13と、整流部材11とアクチュエータ13とを連結するリンク機構14とを含む。リンク機構14は、図4に示すように、アクチュエータ13により回動させられる原動節141、一端が原動節141の遊端に回動自在に連結(ピン結合)された中間節142、および中間節142の他端に回動自在に連結(ピン結合)された従動節143を含む。本実施形態のリンク機構14では、原動節141のリンク長さが最も短く定められている。また、従動節143の中間節142側とは反対側の端部には、回転軸15が固定されている。本実施形態において、回転軸15は、略正方形状の断面形状を有する四角テーパーシャフトであり、その一端部は、従動節143の端部に形成された断面略正方形状の孔部に嵌合(固定)される。」 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0021】の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1から5の何れか一項の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用するものについて独立形式に改め、請求項1から5の何れか一項の記載を引用しないものとすることである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり、訂正事項2は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1から6の何れか一項の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用するものについて独立形式に改め、請求項1から6の何れか一項の記載を引用しないものとすることである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり、訂正事項3は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1から8の何れか一項の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1を引用するものについて独立形式に改め、請求項1から8の何れか一項の記載を引用しないものとすることである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり、訂正事項4は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 4 小括 本件訂正による訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定に適合すると共に、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、訂正後の請求項6、7、8及び9に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 よって、訂正後の請求項〔1~5〕、6、〔7、8〕及び9について訂正を認める。 第3 本件発明 上記のとおり、請求項1~9についての訂正は認められるから、本件の請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記駆動装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含み、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除される車両用整流装置。 【請求項2】 請求項1に記載の車両用整流装置において、 前記連結部材は、前記回転軸と一体に回転するように前記回転軸により支持され、 前記係合部は、前記整流部材と一体になって前記回転軸の周りに回転する車両用整流装置。 【請求項3】 請求項1または2に記載の車両用整流装置において、 前記連結部材および前記係合部の一方は、該係合部の回転方向に沿って延在する斜面を含み、前記連結部材および前記係合部の他方は、前記斜面に当接する当接部を含み、 前記付勢部材は、前記斜面と前記当接部とが当接するように前記連結部材を前記係合部に対して付勢する車両用整流装置。 【請求項4】 請求項3に記載の車両用整流装置において、 前記連結部材は、前記整流部材が前記整流位置側から前記格納位置側に回動する際の前記係合部の回転方向における前側から後側に向かうにつれて該係合部に近接するように前記連結部材の軸心の周りで螺旋状に延在する螺旋面を含み、 前記係合部は、前記整流部材が前記整流位置側から前記格納位置側に回動する際の該係合部の回転方向における前側から後側に向かうにつれて前記連結部材から離間するように前記係合部の軸心の周りで前記連結部材の前記螺旋面に沿って螺旋状に延在する螺旋面を含み、 前記付勢部材は、前記連結部材の前記螺旋面が前記係合部の前記螺旋面に当接するように前記連結部材を前記係合部に対して付勢する車両用整流装置。 【請求項5】 請求項4に記載の車両用整流装置において、 前記連結部材の前記螺旋面と、前記係合部の前記螺旋面とは、それぞれ周方向に間隔をおいて複数形成され、 前記連結部材は、前記螺旋面の頂部から前記軸方向における前記係合部側とは反対側かつ前記回転軸の径方向に延在するトルク伝達面を含み、 前記係合部は、前記螺旋面の底部から前記軸方向における前記連結部材側かつ前記回転軸の径方向に延在するトルク伝達面を含む車両用整流装置。 【請求項6】 車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除され、 前記係合部は、前記整流部材に回転不能に固定されるカラー部材に形成されている車両用整流装置。 【請求項7】 車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除され、 前記駆動装置は、 アクチュエータと、 前記アクチュエータにより回動させられる原動節、前記回転軸に固定される従動節、および前記原動節と前記従動節とを連結する中間節を含むリンク機構を含み、 前記整流部材が前記格納位置から前記整流位置に向けて回動するように前記原動節が前記アクチュエータにより回動させられる際に該原動節に対する前記中間節の回転方向が変化した位置で前記原動節の回動を規制するストッパを更に備える車両用整流装置。 【請求項8】 請求項7に記載の車両用整流装置において、 前記整流部材が前記整流位置から前記格納位置に向けて回動するように前記原動節が前記アクチュエータにより回動させられる際に該原動節に対する前記中間節の回転方向が変化した位置で前記原動節の回動を規制する第2のストッパを更に備える車両用整流装置。 【請求項9】 車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除され、 前記車両の車速が予め定められた整流開始速度に達してから予め定められた整流終了速度以下になるまでの間、前記整流部材が前記整流位置に位置するように前記駆動装置を制御する制御装置を更に備える車両用整流装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要 1 取消理由の概要 当審が令和5年2月1日付けで通知した取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(進歩性) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項1~4 引用文献1、又は、1~2 ・請求項4 引用文献1及び3、又は、1~3 <引用文献等一覧> 引用文献1:米国特許出願公開第2017/0120968号明細書(甲 第2号証) 引用文献2:特開平3-42381号公報(甲第1号証) 引用文献3:特開2002-274268号公報(甲第7号証) (2)取消理由2(明確性) 本件特許出願は、特許請求の範囲の記載が、請求項4に係る発明に関して特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 第5 取消理由に対する判断 1 引用文献について (1)引用文献1に記載された発明 引用文献1(特に、[0024]~[0026]、[0029]、[0031]~[0032]、[0035]、[0040]~[0045]、[0048]、[0050]~[0051]、図3~10参照。)には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「車体9に対して昇降自在に配置される、デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316と、前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316を、前記車体9側の格納位置と、該デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316が前記車体9から下方に突出する展開位置と、の間で前記車体9に対して昇降させるモータ346、ウォームギア352及びメインギア354とを含む車両用のアクティブフロントデフレクタアセンブリ10において、 前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316と前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354とを連結すると共に、前記展開位置にある前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316に外力が作用した際に該デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316と前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354との連結を解除するクラッチシステム310を備え、 前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316のうちの出力シャフト316は、前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316のうちの前記デフレクタパネル1、2の車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354によって回転駆動される出力ギア330の内側に回動自在に支持され、 前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354は、モータ346と、モータ346によって回転されるウォームギア352及び前記出力ギア330を回転させるメインギア354を有するギア機構とを含み、 前記クラッチシステム310は、前記出力シャフト316に対して軸方向に移動可能な移動デテントリング320と、前記移動デテントリング320と回転方向に係合可能な出力デテントリング318と、前記移動デテントリング320を前記出力デテントリング318と係合するように前記軸方向に付勢する波形ばね340とを含み、 前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316が外力により前記展開位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記出力デテントリング318が前記波形ばね340からの負荷に打ち勝って前記移動デテントリング320を該出力デテントリング318から離間するように押圧することで、前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316と前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354との連結が解除される車両用のアクティブフロントデフレクタアセンブリ10。」 (2)引用文献2に記載された事項 ア 「車幅方向に伸びるスポイラ1は、車体に固定された軸2に枢支された略L字状の可動アーム3にねじ止めされている。また軸2には係合アーム4の一端が枢支されている。可動アーム3は、軸2に係合された捩りばね5により係合アーム4に対して時計方向に付勢されている。係合アーム4の他端にはリンク6の一端が連結されている。リンク6の他端は、モータ8の減速部7の出力軸7aに止着されたクランクアーム9に連結されている。これら係合アーム4、捩りばね5、リンク6、およびクランクアームリ9により駆動機構30が構成される。」(第2頁右上欄第15行~左下欄第6行) イ 「第1図 [図:0001409077000001.jpg] 」 (3)引用文献3に記載された事項 ア 「【0032】図7に詳細に示す如く、ギアプレート38の上面には、所定数(本実施の形態では4つ)の挿入谷40が形成されており、各挿入谷40は周方向に沿って等間隔で配置されている。各挿入谷40の両端部は、上方(後記クラッチプレート42側)へ突出すると共に、支持軸16を中心軸とした凹状螺旋面とされている。 【0033】ギアプレート38の上方には、略円筒状のクラッチプレート42が配置されており、クラッチプレート42は支持軸16に回転不能に挿通されている。図8に詳細に示す如く、クラッチプレート42の下面には、所定数(本実施の形態では4つ)の挿入山44が形成されており、各挿入山44は周方向に沿って等間隔で配置されている。各挿入山44は下方へ(後記ギアプレート38側)突出すると共に、各挿入山44の両端部は支持軸16を中心軸とした凸状螺旋面とされている。ここで、各挿入山44は各挿入谷40に両端部が嵌合した状態で挿入されており、これにより、クラッチプレート42がギアプレート38に係合されている。 【0034】クラッチプレート42の上方には圧縮コイルスプリング46が配置されており、圧縮コイルスプリング46は支持軸16に貫通されている。圧縮コイルスプリング46の上方にはプッシュナット48が配置されており、プッシュナット48は支持軸16に固定されている。これにより、圧縮コイルスプリング46がプッシュナット48に係止されてギアプレート38を付勢(押圧)している。 【0035】また、上記フレーム、保持部材及び格納機構12は、ドアミラーバイザー(図示省略)に収納されており、ドアミラーバイザーはフレームに固定されている。 【0036】ここで、モータ30の駆動によりギアプレート38に回転力が付与されると、クラッチプレート42がギアプレート38の回転を阻止することで、ギアプレート38に付与される回転力の反力でケース部材22が格納方向または起立方向へ回動される。また、各ケース山26の他端部が各スタンド谷18の他端部に係合することでケース部材22の回動が係止されてミラーが格納位置に停止される一方、各ケース山26の一端部が各スタンド谷18の一端部に係合することでケース部材22の回動が係止されてミラーが起立位置に停止される。 【0037】さらに、ドアミラーバイザーが外力を受けてケース部材22に所定値以上の外力が作用した際には、圧縮コイルスプリング46の付勢力に抗して各挿入谷40への各挿入山44の挿入が解除されて、クラッチプレート42のギアプレート38への係合が解除されることで、ギアプレート38がケース部材22と共にクラッチプレート42に対し回転する構成である。」 2 取消理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 (ア)本件発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「展開位置」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、前者の「整流位置」に相当し、以下同様に、「車両用のアクティブフロントデフレクタアセンブリ10」は「車両用整流装置」に、「クラッチシステム310」は「連結機構」に、「モータ346」は「アクチュエータ」に、「移動デテントリング320」は「連結部材」に、「出力デテントリング318」は「係合部」に、「波形ばね340」は「付勢部材」に、「前記波形ばね340からの負荷に打ち勝って」は「前記付勢部材の付勢力に抗して」に、それぞれ相当する。 (イ)後者のデフレクタパネル1は空気流を遮断して車両の空気力学を改善するものであるし、フレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316は、一体的に連動するものであるから、後者の「デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316」は、前者の「整流部材」に相当するといえる。 (ウ)後者の「モータ346、ウォームギア352及びメインギア354」と前者の「駆動装置」とは、「駆動力装置」という点に限り一致し、同様に「前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316のうちの出力シャフト316は、前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28及び出力シャフト316のうちの前記デフレクタパネル1、2の車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354によって回転駆動される出力ギア330の内側に回動自在に支持され」と「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され」とは、「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動力装置によって回転駆動される回転部材に対して回動自在に支持され」という点に限り一致する。 (エ)後者の「前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354は、モータ346と、モータ346によって回転されるウォームギア352及び前記出力ギア330を回転させるメインギア354を有するギア機構とを含み」と前者の「前記駆動装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含み」とは、「前記駆動力装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータの回転を回転部材に伝達する伝達機構とを含み」という点に限り一致する。 (オ)後者の「前記クラッチシステム310は、出力シャフト316に対して軸方向に移動可能な移動デテントリング320と、前記移動デテントリング320と回転方向に係合可能な出力デテントリング318と、前記移動デテントリング320を前記出力デテントリング318と係合するように前記軸方向に付勢する波形ばね340とを含み」と、前者の「前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み」とは、「前記連結機構は、前記回転部材に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み」という点に限り一致する。 (カ)そうすると、両者は、以下の点で一致する。 [一致点] 「車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動力装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動力装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動力装置によって回転駆動される回転部材に対して回動自在に支持され、 前記駆動力装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータの回転を回転部材に伝達する伝達機構とを含み、 前記連結機構は、回転部材に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除される車両用整流装置。」 (キ)そして、両者は、以下の点で相違する。 [相違点1] 本件発明1は、整流部材が「車両の前輪の前方に」配置されるのに対し、引用発明1は、デフレクタパネル1、2が車両16の前輪の前方に配置されることが特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1は、 「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記駆動装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含み、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含」むのに対し、 引用発明1は、 「前記デフレクタパネル1、2、リンケージアセンブリ12、14、駆動シャフト28、及び、出力シャフト316のうちの出力シャフト316は、前記デフレクタパネル1、2の車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記モータ346によって回転駆動される出力ギア330の内側に回動自在に支持され、 前記モータ346、ウォームギア352及びメインギア354は、モータ346と、モータ346によって回転されるウォームギア352及び前記出力ギア330を回転させるメインギア354を有するギア機構とを含み、 前記クラッチシステム310は、前記出力シャフト316に対して軸方向に移動可能な移動デテントリング320と、前記移動デテントリング320と回転方向に係合可能な出力デテントリング318と、前記移動デテントリング320を前記出力デテントリング318と係合するように前記軸方向に付勢する波形ばね340とを含」むものの、 出力シャフト316の配置が出力ギア330の「周り」ではなく「内側」であり、モータ346から前記出力ギア330への伝達機構がリンク機構ではなくギア機構であり、移動デテントリング320が軸方向に移動可能に接続されるものが、前記出力ギア330ではなく出力シャフト316である点。 イ 判断 (ア)相違点2について 引用文献1の全文、全図をみても、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用文献1に記載されている事項ではなく、また、引用文献1に記載されている事項から本件特許の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項でもない。 また、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用文献2及び3のいずれにも記載されておらず、当業者が適宜なし得る設計的事項であるとも、周知技術であるともいえない。 よって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項が容易に想到し得るという理由は見いだせないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、引用発明1並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いても容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~4について 本件発明2~4は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~4は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、引用発明1並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いても容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記取消理由1(進歩性)によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない 3 取消理由2(明確性)について 本件発明4の「前記連結部材は、前記整流部材が前記整流位置側から前記格納位置側に回動する際の前記係合部の回転方向における前側から後側に向かうにつれて該係合部に近接するように前記連結部材の軸心の周りで螺旋状に延在する螺旋面を含み、前記係合部は、前記整流部材が前記整流位置側から前記格納位置側に回動する際の該係合部の回転方向における前側から後側に向かうにつれて前記連結部材から離間するように前記係合部の軸心の周りで前記連結部材の前記螺旋面に沿って螺旋状に延在する螺旋面を含み」なる事項における連結部材と係合部との関係について、令和5年4月6日に特許権者より提出された意見書の説明により明確となった。 よって、本件発明4は明確であるから、本件特許出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号を満たしており、上記取消理由2(明確性)によっては、本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)理由(進歩性) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (以下、「甲第1号証」~「甲第7号証」を、「甲1」~「甲7」という。) ・請求項1 甲1及び2、甲1~4、甲1及び5又は甲1及び6 ・請求項2 甲1及び2、甲1~4、甲1及び5又は甲1及び6 ・請求項3 甲1及び2、甲1~4、甲1及び5又は甲1及び6 ・請求項4 甲1、2及び7、甲1~4及び7、甲1、5及び7又は甲1、6及び7 <甲号証一覧> 甲1:特開平3-42381号公報 甲2:米国特許出願公開第2017/0120968号明細書 甲3:特開昭62-273169号公報 甲4:特開昭63-145180号公報 甲5:国際公開第2015/143267号 甲6:特開2005-170368号公報 甲7:特開2002-274268号公報 2 甲1に記載された発明 甲1(特に、第2頁右上欄第15行~第3頁左下欄第1行、第1図参照。)には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「自動車の前端部の車体に対して昇降自在に配置されるスポイラ1及び可動アーム3と、前記スポイラ1及び可動アーム3を前記車体側の収納位置と該スポイラ1及び可動アーム3が前記車体から下方に突出する使用位置との間で前記車体に対して昇降させるモータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4とを含む自動車用スポイラ装置において、 前記スポイラ1及び可動アーム3と前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4とを連結すると共に、前記使用位置にある前記スポイラ1及び可動アーム3に外力が作用した際に該スポイラ1及び可動アーム3と前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4との連結を解除する捩りばね5を備え、 前記スポイラ1及び可動アーム3は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように軸2に枢支され、 前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4は、モータ8と、前記モータ8により回動させられるクランクアーム9および前記軸2に枢支される係合アーム4を有すると共に前記モータ8と前記スポイラ1及び可動アーム3とを連結するリンク構造とを含み、 前記捩りばね5によって、前記可動アーム3は前記係合アーム4に対して付勢されており、 前記スポイラ1及び可動アーム3が外力により前記使用位置側から前記収納位置側に回動した際に、前記捩りばね5の付勢力に抗して前記スポイラ1及び可動アーム3と前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4との連結が解除される自動車用スポイラ装置。」 3 本件発明1について (1)対比 ア 本件発明1と引用発明2とを対比すると、後者の「自動車」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、前者の「車両」に相当し、以下同様に、「スポイラ1及び可動アーム3」は「整流部材」に、「収納位置」は「格納位置」に、「使用位置」は「整流位置」に、「モータ8」は「アクチュエータ」に、「クランクアーム9」は「原動節」に、「自動車用スポイラ装置」は「車両用整流装置」に、それぞれ相当する。 イ 後者の「自動車の前端部の車体に対して昇降自在に配置される」と前者の「車両の前輪の前方に車体に対して昇降自在に配置される」とは、「車両の前方の車体に対して昇降自在に配置される」という点に限り一致する。 ウ 後者の「前記スポイラ1及び可動アーム3は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように軸2に枢支され」と前者の「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、」とは、「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように軸の周りに回動自在に支持され」という点に限り一致する。 エ 後者の「モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4」と前者の「駆動装置」とは、「駆動力装置」という点に限り一致し、同様に、「前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4は、モータ8と、前記モータ8により回動させられるクランクアーム9および前記軸2に枢支される係合アーム4を有すると共に前記モータ8と前記スポイラ1及び可動アーム3とを連結するリンク構造とを含み」と「前記駆動装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含み」とは、「前記駆動力装置は、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記軸に連結される節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンクとを含み」という点に限り一致する。 オ 後者の「捩りばね5」と前者の「連結機構」とは、「連結する機構」という点に限り一致し、同様に、「前記スポイラ1及び可動アーム3が外力により前記使用位置側から前記収納位置側に回動した際に、前記捩りばね5の付勢力に抗して前記スポイラ1及び可動アーム3と前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4との連結が解除される」と「前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除される」とは、「前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記連結する機構の付勢力に抗して前記整流部材と前記駆動力装置との連結が解除される」という点に限り一致する。 カ そうすると、両者は、以下の点で一致する。 [一致点] 「車両の前方の車体に対して昇降自在に配置される整流部材と、前記整流部材を前記車体側の格納位置と該整流部材が前記車体から下方に突出する整流位置との間で前記車体に対して昇降させる駆動力装置とを含む車両用整流装置において、 前記整流部材と前記駆動力装置とを連結すると共に、前記整流位置にある前記整流部材に外力が作用した際に該整流部材と前記駆動装置との連結を解除する連結する機構を備え、 前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように軸の周りに回動自在に支持され、 前記駆動力装置は、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記軸に連結される節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンクとを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記連結する機構の付勢力に抗して前記整流部材と前記駆動力装置との連結が解除される車両用整流装置。」 キ そして、両者は、以下の点で相違する。 [相違点3] 本件発明1は、整流部材が「車両の前輪の前方に」配置されるのに対し、引用発明2は、スポイラ1及び可動アーム3が自動車の前輪の前方に配置されることが特定されていない点。 [相違点4] 本件発明1は、 「前記整流部材は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように前記駆動装置によって回転駆動される回転軸の周りに回動自在に支持され、 前記駆動装置は、アクチュエータと、前記アクチュエータにより回動させられる原動節および前記回転軸が固定される従動節を有すると共に前記アクチュエータと前記整流部材とを連結するリンク機構とを含み、 前記連結機構は、前記回転軸に対して軸方向に移動可能な連結部材と、前記連結部材と回転方向に係合可能な係合部と、前記連結部材を前記係合部と係合するように前記軸方向に付勢する付勢部材とを含み、 前記整流部材が外力により前記整流位置側から前記格納位置側に回動した際に、前記係合部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記連結部材を該係合部から離間するように押圧することで前記整流部材と前記駆動装置との連結が解除される」のに対し、 引用発明2は、 「前記スポイラ1及び可動アーム3は、車両後部側の端部が前記車体に対して昇降するように軸2に枢支され、 前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4は、モータ8と、前記モータ8により回動させられるクランクアーム9および前記軸2に枢支される係合アーム4を有すると共に前記モータ8と前記スポイラ1及び可動アーム3とを連結するリンク構造とを含み、 前記捩りばね5によって、前記可動アーム3は前記係合アーム4に対して付勢されており、 前記スポイラ1及び可動アーム3が外力により前記使用位置側から前記収納位置側に回動した際に、前記捩りばね5の付勢力に抗して前記スポイラ1及び可動アーム3と前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4との連結が解除される」むものの、 軸2は前記モータ8、クランクアーム9、リンク6及び係合アーム4によって回転駆動されるものではなく、係合アーム4は軸2に枢支されていて固定されるものではなく、連結部材と係合部と前記連結部材を前記係合部と係合するように付勢する付勢部材とを含むものではない点。 (2)判断 ア 相違点4について 相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2~6のいずれにも記載されておらず、当業者が適宜なし得る設計的事項であるとも、周知技術であるともいえない。また、甲7にも記載されていない。 よって、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項が容易に想到し得るという理由は見いだせないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が引用発明2及び甲2~6に記載された事項に基いても容易に発明をすることができたものではない。 4 本件発明2~4について 本件発明2~4は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、上記3に示した理由と同様の理由により、本件発明2~4は、当業者が引用発明2及び甲2~7に記載された事項に基いても容易に発明をすることができたものではない。 5 小括 したがって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由(進歩性)によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701046

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