特許異議申立
2025-701052
水中油型乳化化粧料
- 審判番号
- 2025-701052
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-204035
- 登録番号
- 7671952
- 請求日
- 2025年11月07日
- 審決日
- 2026年02月16日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社トキワ
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】柳 康樹
- 【権利者代理人】湯本 譲司
- 【異議申立人】中嶋 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 小石 真弓
- 審判官 野田 定文
- 分類
- P1651.121-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7671952号発明「水中油型乳化化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7671952号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7671952号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和2年12月9日の出願であって、令和7年4月24日にその特許権の設定登録がされ、同年5月7日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の全請求項に係る特許に対し、同年11月7日に、特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号順に「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」いうことがある。)。
「【請求項1】
(A)粉体と、(B)水溶性増粘剤と、(C)界面活性剤と、を含む水中油型乳化化粧料であって、
前記(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として1~30質量%であり、
前記(A)成分が、(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体を含有し、
前記(C)成分が、(C1)HLBが7未満の固体の非イオン界面活性剤と、(C2)HLBが7以上の界面活性剤と、を含有し、
前記(C1)成分と前記(C2)成分との質量比[(C1):(C2)]が1.5:1~30:1であり、
前記(B)成分が粘土鉱物及び/又はアクリル酸アミド共重合体を含み、
PEG基を有する成分の含有量が、化粧料全量基準で0.1質量%以下である、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(A1)成分における粉体の処理剤のIOB値が2~5である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記(C2)成分として、(C2-1)HLBが7以上の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記(C2)成分として、(C2-2)水添レシチンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、1.0~5質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。」
第3 申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要及び添付した証拠方法は、以下に示すとおりである(以下、下記(2)に示す甲号証を、それぞれ番号順に「甲1」等という。)。
(1) 申立理由(特許法第29条第2項:進歩性)
本件発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、又は甲1に記載された発明及び甲10に記載された事項に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 甲号証等一覧
以下、文献名の表記中の「○R」は「○」の中に「R」を表す。
甲第1号証:特開2012-241004号公報
甲第2号証:DAITO KASEI, 【粉体】のスペシャリスト Surface Treated Pigment, No. 2, 2025年5月
甲第3号証:松本油脂製薬株式会社, マツモトマイクロスフェアー○RM、Sシリーズ, 2025年11月2日印刷, インターネット
<URL : https://www.mtmtys.co.jp/product/general/data03.html >
甲第4号証:Cosmetic-Info.jp, アミホープ○R LL, 2025年11月2日印刷, インターネット
<URL : https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=9295 >
甲第5号証:Cosmetic-Info.jp, SEPIMAX ZEN, 2025年11月2日印刷, インターネット
<URL : https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=12129 >
甲第6号証:Cosmetic-Info.jp, ポリアクリレートクロスポリマー-6, 2025年11月2日印刷, インターネット
<URL : https://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=11289 >
甲第7号証:Cosmetic-Info.jp, ヒアルロン酸ナトリウム MW110/160〈1%水溶液〉, 2025年11月2日印刷, インターネット
<URL : https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=16826 >
甲第8号証:化粧品成分オンライン, ステアロイルグルタミン酸Naの基本情報・配合目的・安全性, 2023年2月9日更新, インターネット
<URL : https://cosmetic-ingredients.org/surfactants-emulsifying-agents/6277/ >
甲第9号証:三好化成, 表面処理粉体 SA/NAI処理, 2025年11月7日印刷, インターネット
<URL : https://www.miyoshikaseigroup.com/surfacetreatment/surfacetreatment-type/silicone-type-treatment/sa-nai-treatment/ >
甲第10号証:特開2015-189762号公報
甲2~9の文献又は電子的技術情報は、各種商品名に対応する材料又は物質名を参照するための証拠として提示されているが、本件特許に係る出願の出願日前に公開されたことは確認されていない。
第4 甲号証の記載事項
以下、「・・・」は記載の省略を表し、下線の一部は当審合議体が付したものである。
1 甲1の記載事項
摘記(1a) 「【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を含み、(A)成分は水相に、(B)成分は油相に含まれることを特徴とする水中油型メイクアップ化粧料。
(A)2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマー
(B)疎水性粉体」
摘記(1b) 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、多糖類は、前記カルボキシビニルポリマー等と比較して、増粘性が若干弱く、増粘効果を発揮させるためには、比較的多量に配合する必要があり、べたつきが生じることがあった。さらに、多糖類を配合した水中油型乳化化粧料は、皮膚に塗布後、乾き際によれが生じることがあった。特に疎水化処理粉体を含む場合、多糖類と疎水化処理粉体との相互作用により、よれが増長される。したがって、顔料の分散安定性が良く、よれ、べたつきのない高使用感の水中油型乳化化粧料の開発が望まれていた。」
摘記(1c) 「【0015】
本発明に用いられる(B)疎水性粉体は、水との相互作用が小さく、水との親和性が小さい粉体であり、通常は、親油性の粉体である。疎水性粉体は、本質的に疎水性の素材の粉体、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛等の金属石鹸末;ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー等の樹脂粉末であってもよい。また、この疎水性の粉体を基素材として、さらに疎水化処理を施した粉体であってもよい。
【0016】
本発明において、疎水化処理される基粉体としては、化粧品一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず用いることができる。具体的には、酸化チタン、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類;オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類;ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース等の有機粉体類;シリカ、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0017】
前記粉体を疎水化処理する処理剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高粘度シリコーン、架橋型シリコーン、フッ素変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、シリコーン樹脂等のシリコーン化合物;アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等の界面活性剤;N-アシルグルタミン酸、N-アシルアスパラギン酸、N-アシルリジン等のアミノ酸;レシチン;金属石鹸;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;ポリイソブチレン、ワックス、油脂等の油剤;パーフルオロアルキルリン酸、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸等のフッ素化合物;PVP-ヘキサデセンのコポリマー等のPVP変性ポリマー;トリイソステアリン酸イソプロピルチタン等の有機チタネート等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。前記処理剤を粉体に処理する方法は通常公知の方法が用いられ、例えば、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等が挙げられる。
【0018】
これらの疎水性粉体のうち、疎水化処理粉体を用いるのが分散安定性の点で好ましく、さらに疎水化処理酸化チタン及び/又は疎水化処理酸化亜鉛を含有するのがより好ましい。さらにまた、分散安定性の点から、シリコーン化合物、アミノ酸、アルキルシラン、有機チタネート、フッ素化合物等で疎水化処理した酸化チタン又は酸化亜鉛を用いるのが好ましい。」
摘記(1d) 「【0024】
本発明の水中油型メイクアップ化粧料の形態としては、ファンデーション、メイクアップベース、化粧下地等のベースメイクアップ化粧料、アイシャドウ、ハイライト、チーク、マスカラ等のポイントメイクアップ化粧料、BBクリーム等のスキンケア化粧料にベースメイクの機能を付与したもの等が挙げられる。」
摘記(1e) 「【実施例】
【0025】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、配合量はすべて質量%である。
【0026】
下記表1記載の水中油型メイクアップ化粧料を調製し、べたつき、ずるつき(よれ)、粉体凝集性及び化粧もちを下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0027】
(1)使用特性(べたつき、ずるつき、化粧持ち)の評価基準
女性パネル20名に、実施例、比較例の各試料を塗布してもらい、「べたつかない」、「ずるつかない」、「2時間以上くずれない」と回答した人数に従って使用特性を評価した。評価基準は下記の通りである。
【0028】
○:15人以上
△:7~14人
×:6人以下
【0029】
(2)粉体凝集の評価基準
各試料をアクリル板上に伸ばし、状態を観察し凝集の度合いを評価する。
粉体が凝集している場合は、凝集物が観察される。
○:凝集した粉体は認められない。
△:わずかに白い凝集物が認められる。
×:白い凝集物が多数認められる。
【0030】
【表1】
[図:0001433132000001.jpg]
【0031】
表1に示す結果から明らかなように、(A)水溶性増粘剤を使用しない場合、べたつき、ずるつきといった感触の面で問題があり、さらに疎水化されていない粉末成分を配合した場合、顔料分散が悪く、化粧持ちの面で問題があり、本発明の効果を得ることができなかった(比較例1,2)。
【0032】
以下に、さらに本発明の処方例を示す。
・・・
【0035】
実施例5
(BBクリーム)
(質量%)
1. ステアリン酸 0.5
2. モノステアリン酸グリセリル 1.5
3. ベヘニルアルコール 0.5
4. α-オレフィンオリゴマー 14.0
5. ジメチコン*10 1.0
6. SepiMAX ZEN*3 1.0
7. ベントナイト*11 0.1
8. ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.3
9. グリセリン 10.0
10.メチルパラベン 0.2
11.ソルビン酸 0.05
12.ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
13.フェノキシエタノール 0.4
14.精製水 残 量
15.アミノ酸処理酸化チタン*12 5.0
16.アミノ酸処理酸化鉄*12 0.8
17.アミノ酸処理タルク*12 1.2
18.アクリレーツコポリマー*13 1.0
19.ナイロン*14 0.5
20.ラウロイルリシン*15 0.5
*10 SH200-2CS:東レ・ダウコーニング社製
*11 クニピアG4:クニミネ工業社製
*12 LLシリーズ:大東化成工業社製
*13 マイクロスフェアーS-102:松本油脂製薬社製
*14 ナイロンSP-500:東洋レーヨン社製
*15 アミホープLL:味の素社製
・・・
【0039】
実施例9
(ファンデーション)
(質量%)
1. SepiMAX ZEN*3 0.5
2. フェニルトリメチコン*1 10.0
3. イソノナン酸イソノニル 16.5
4. シクロペンタシロキサン*19 1.0
5. ジメチコン*5 1.0
6. パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル 3.0
7. 自己乳化型ステアリン酸グリセリン 0.5
8. ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル 1.0
9. セトステアリルアルコール 0.5
10.ポリオキシエチレン(5.5)セチルエーテル 1.5
11.フィトステロール 0.5
12.ステアリン酸 1.0
13.ジプロピレングリコール 3.0
14.グリセリン 1.0
15.メチルパラベン 0.2
16.フェノキシエタノール 0.3
17.精製水 46.5
18.オクチルシリル化酸化チタン 1.0
19.シリコーン/アミノ酸処理酸化チタン*4 8.0
20.シリコーン/アミノ酸処理酸化鉄*4 1.5
21.シリコーン/アミノ酸処理マイカ*4 1.0」
2 甲2の記載事項
摘記(2a) 「
[図:0001433132000002.jpg]
」
3 甲3の記載事項
摘記(3a) 「
[図:0001433132000003.jpg]
・・・
[図:0001433132000004.jpg]
・・・
[図:0001433132000005.jpg]
」
4 甲4の記載事項
摘記(4a) 「
[図:0001433132000006.jpg]
」
5 甲5の記載事項
摘記(5a) 「
[図:0001433132000007.jpg]
・・・
製造元 SEPPIC(セピック)S.A.」
6 甲6の記載事項
摘記(6a) 「
[図:0001433132000008.jpg]
」
7 甲7の記載事項
摘記(7a) 「
[図:0001433132000009.jpg]
」
8 甲8の記載事項
摘記(8a) 「
[図:0001433132000010.jpg]
・・・
[図:0001433132000011.jpg]
」
9 甲9の記載事項
摘記(9a) 「
[図:0001433132000012.jpg]
」
10 甲10の記載事項
摘記(10a) 「【請求項1】
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル、(B)アニオン性界面活性剤、(C-1)ステアリルアルコール、(C-2)ベヘニルアルコール、及び(D)レシチンを含有し、且つ(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.5~1.2重量%、(B)アニオン性界面活性剤の含有量が0.1~0.8重量%であり、(C-1)ステアリルアルコールの含有量が(C-2)ベヘニルアルコールに比べて多いことを特徴とする、水中油型乳化組成物。
・・・
【請求項3】
前記(D)レシチンとして、少なくとも水素添加レシチンを含む、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。」
摘記(10b) 「【0025】
(D)レシチン
本発明の水中油型乳化組成物は、レシチンを含有する。本発明で使用されるレシチンとして、具体的には、天然レシチン、水素添加レシチン等が挙げられる。これらのレシチンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合せて使用してもよい。これらのレシチンの中でも、こっくりとした使用感、べたつきのなさ、及び安定性をより一層向上させるという観点から、少なくとも水素添加レシチンを含むことが好ましい。
・・・
【0067】
(I)その他の添加剤
本発明の水中油型乳化組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、皮膚外用組成物に配合される添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール;ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸塩等の酸化防止剤;フェノキエタノール、オクトキシグリセリン、パラベン等の防腐剤;リン脂質重合体、顔料、パール化剤、増粘剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤以外)、安定化剤、キレート剤、着色料、香料、緩衝剤、pH調整剤等が挙げられる。」
第5 当審における判断
1 甲1に記載された発明
甲1には、「多糖類を配合した水中油型乳化化粧料」について、「疎水化処理粉体を含む場合」であっても、「顔料の分散安定性が良く、よれ、べたつきのない高使用感の水中油型乳化化粧料」として(摘記(1b))、
「 次の成分(A)及び(B)を含み、(A)成分は水相に、(B)成分は油相に含まれることを特徴とする水中油型メイクアップ化粧料。
(A)2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドを構成単位として含むクロスポリマー
(B)疎水性粉体」
が記載され(摘記(1a)の【請求項1】)、当該「水中油型メイクアップ化粧料」の具体的な処方例として、「BBクリーム」(摘記(1d))が実施例5に記載されている(摘記(1e))。
そうすると、甲1には、以下に示す実施例5の処方例に係る甲1発明が記載されているといえる。
なお、上記処方例中、「精製水」の含有量は「残量」であるところ、「精製水」以外の材料の質量%の和を求めると38.56質量%であるから、「精製水」の含有量は、61.44質量%である。
<甲1発明>
ステアリン酸0.5質量%、モノステアリン酸グリセリル1.5質量%、ベヘニルアルコール0.5質量%、α-オレフィンオリゴマー14.0質量%、ジメチコン(*10 SH200-2CS:東レ・ダウコーニング社製)1.0質量%、SepiMAX ZEN(*3 SepiMAX ZEN:SEPPIC社製)1.0質量%、ベントナイト(*11 クニピアG4:クニミネ工業社製)0.1質量%、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム0.3質量%、グリセリン10.0質量%、メチルパラベン0.2質量%、ソルビン酸0.05質量%、ヒアルロン酸ナトリウム0.01質量%、フェノキシエタノール0.4質量%、精製水61.44質量%、アミノ酸処理酸化チタン(*12 LLシリーズ:大東化成工業社製)5.0質量%、アミノ酸処理酸化鉄(*12 LLシリーズ:大東化成工業社製)0.8質量%、アミノ酸処理タルク(*12 LLシリーズ:大東化成工業社製)1.2質量%、アクリレーツコポリマー(*13 マイクロスフェアーS-102:松本油脂製薬社製)1.0質量%、ナイロン(*14 ナイロンSP-500:東洋レーヨン社製)0.5質量%、及び、ラウロイルリシン(*15 アミホープLL:味の素社製)0.5質量%からなる、水中油型メイクアップ化粧料であるBBクリーム。
2 本件発明と甲1に記載された発明との対比・判断
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1には、「疎水化処理される基粉体」として、酸化チタン、酸化鉄及びタルクが例示され(摘記(1c)の【0016】)、「粉体を処理する処理剤」として、アミノ酸が例示されているから(摘記(1c)の【0017】)、甲1発明の「アミノ酸処理酸化チタン(*12 LLシリーズ:大東化成工業社製)」、「アミノ酸処理酸化鉄(*12 LLシリーズ:大東化成工業社製)」及び「アミノ酸処理タルク(*12 LLシリーズ:大東化成工業社製)」は、いずれも、アミノ酸を処理剤として疎水化された疎水化処理粉体といえるから、本件発明1の「(A)粉体」に相当するものであって、さらに、「アミノ酸処理粉体」であるといえる。
(イ)甲1には、「(B)疎水性粉体」として、ナイロンパウダーが例示されているから(摘記(1c)の【0015】)、甲1発明の「ナイロン(*14 ナイロンSP-500:東洋レーヨン社製)」は、本件発明1の「(A)粉体」に相当する。
また、甲3及び甲4によれば、甲1発明の「アクリレーツコポリマー(*13 マイクロスフェアーS-102:松本油脂製薬社製)」及び「ラウロイルリシン(*15 アミホープLL:味の素社製)」は、それぞれ、「ビーズ」及び「パウダー状」であるから(摘記(3a)及び(4a))、いずれも本件発明1の「(A)粉体」に相当する。
なお、甲3及び甲4は、本件特許に係る出願の出願日前に公開されたことが確認されていない文献又は電子的技術情報であるものの、これらは、各種商品名に対応する材料又は物質名を単に参照するための証拠であって、かつ、化粧品業界における慣習等を考慮すると、甲1発明の各商品の成分を明らかにするものとして参照し得るといえる。甲5~甲9についても同様である。
(ウ)甲1発明の「ベントナイト(*11 クニピアG4:クニミネ工業社製)」は、本件明細書【0033】において「(B)水溶性増粘剤」である「粘土鉱物」として例示されている成分であるから、本件発明1の「(B)水溶性増粘剤」である「粘土鉱物」に相当する。
また、甲1発明の「SepiMAX ZEN(*3 SepiMAX ZEN:SEPPIC社製)」は、甲5の「製造元SEPPIC(セピック)S.A.」の「SEPIMAX ZEN」である「ポリアクリレートクロスポリマー-6」といえ(摘記(5a))、さらに、当該「ポリアクリレートクロスポリマー-6」は、甲6によれば、「アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ラウリルとメタクリル酸ラウレス-4の共重合体をトリアクリル酸トリメチロールプロバンで架橋したもの」であり、「親水性増粘剤」として配合されるものであるから(摘記(6a))、本件発明1の「(B)水溶性増粘剤」である「アクリル酸アミド共重合体」に相当する。
さらに、甲1発明の「ヒアルロン酸ナトリウム」は、多糖類である「ヒアルロン酸Na」であるところ、甲7の記載によれば増粘作用を有するから(摘記(7a))、本件発明1の「(B)水溶性増粘剤」に相当する。
(エ)甲1発明の「モノステアリン酸グリセリル」は「ステアリン酸グリセリル」であって、本件明細書【0042】において「HLB3」の「(C1)成分」として例示されている化合物であるから、本件発明1の「(C)界面活性剤」である「(C1)HLBが7未満の固体の非イオン界面活性剤」に相当する。
(オ)甲1発明の「ステアロイルグルタミン酸ナトリウム」は、「ステアロイルグルタミン酸Na」であるところ、甲8の記載によれば、「HLB23.0」の「親水性乳化剤」であるから(摘記(8a))、本件発明1の「(C)界面活性剤」である「(C2)HLBが7以上の界面活性剤」に相当する。
(カ)そして、甲1発明の「ステアリン酸」、「ベヘニルアルコール」、「α-オレフィンオリゴマー」、「ジメチコン(*10 SH200-2CS:東レ・ダウコーニング社製)」、「グリセリン」、「メチルパラベン」、「ソルビン酸」、「フェノキシエタノール」及び「精製水」は、いずれも本件発明1の「(A)成分」及び「(C)成分」に該当しないことを考慮すると、甲1発明の「(A)成分の含有量」は、上記(ア)及び(イ)の成分の含有量の合算より、「化粧料全量を基準として」9.0(=5.0+0.8+1.2+1.0+0.5+0.5)質量%であるから、本件発明1の「(A)成分」の含有量である「1~30質量%」の範囲に含まれるものである。
また、本件発明1の(C1)及び(C2)にそれぞれ相当する、甲1発明の「モノステアリン酸グリセリル」及び「ステアロイルグルタミン酸ナトリウム」の質量比は、「5:1(=1.5:0.3)」であって、本件発明1の「(C1):(C2)」の「1.5:1~30:1」の範囲に含まれるものである。
(キ)さらに、甲1発明の「水中油型メイクアップ化粧料であるBBクリーム」が、本件発明1の「水中油型乳化化粧料」であることは明らかである。
また、甲1発明は、「PEG基を有する成分」を含有するものではなく、本件発明1は、「(A)粉体と、(B)水溶性増粘剤と、(C)界面活性剤と、を含む水中油型乳化化粧料」であるから、「(A)」~「(C)」以外の成分を含むことも許容する発明である。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは
「(A)粉体と、(B)水溶性増粘剤と、(C)界面活性剤と、を含む水中油型乳化化粧料であって、
前記(A)成分の含有量が、化粧料全量を基準として1~30質量%であり、
前記(A)成分が、(A1’)アミノ酸処理粉体を含有し、
前記(C)成分が、(C1)HLBが7未満の固体の非イオン界面活性剤と、(C2)HLBが7以上の界面活性剤と、を含有し、
前記(C1)成分と前記(C2)成分との質量比[(C1):(C2)]が1.5:1~30:1であり、
前記(B)成分が粘土鉱物及び/又はアクリル酸アミド共重合体を含み、
PEG基を有する成分の含有量が、化粧料全量基準で0.1質量%以下である、水中油型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
「(A)成分」の「(A1’)アミノ酸処理粉体」について、本件発明1は、「(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」であるのに対して、甲1発明は、「アミノ酸処理酸化チタン」、「アミノ酸処理酸化鉄」及び「アミノ酸処理タルク」がいずれも「LLシリーズ:大東化成工業社製」である点
イ 相違点についての検討
(ア) 甲1発明の「LLシリーズ:大東化成工業社製」について、甲1には、どのようなアミノ酸で処理したものであるか記載されておらず、甲1発明の「(A1’)アミノ酸処理粉体」が「N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」であるとはいえない。
ここで、甲2には、「LL処理」が、「ラウロイルリジン」による粉体の表面処理であることが記載されているが(摘記(2a))、「LLシリーズ」が「LL処理」をした粉体を意味することは明らかでない。そもそも、甲2は、本件特許に係る出願の出願日前に公開したことが確認されておらず、また、粉体の表面処理技術の普遍的な技術常識を示すものではないから、出願後に公知になった甲2を、甲1発明の「LLシリーズ」がどのようなアミノ酸処理をしたものであるかを理解するために参照することはできない。
(イ) そこで、甲1発明において、「(A1’)アミノ酸処理粉体」について、「(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」にすることが当業者にとって容易であるかどうかについて検討する。
甲1には、「(B)疎水性粉体」における「粉体を疎水化処理する処理剤」として、多種類の処理剤があげられ(摘記(1c)の【0017】)、その中に、「N-アシル塩基性アミノ酸」である「N-アシルリジン等のアミノ酸」だけでなく、「N-アシル酸性アミノ酸」である「N-アシルグルタミン酸、N-アシルアスパラギン酸」も記載されているが、そもそも甲1では、「疎水性の素材の粉体」であれば「疎水化処理」自体が必須の処理ではないし、「粉体を疎水化処理する処理剤」についても「ジメチルポリシロキサン」などの「シリコーン化合物」で「疎水化処理した」酸化チタン又は酸化亜鉛も好ましいこと(摘記(1c)の【0018】)が記載されている。
また、甲1に記載の実施例2(メイクアップ化粧料)及び実施例9(ファンデーション)では、「SA/NAIシリーズ:三好化成社製」の「(B)疎水性粉体」を用いた例が記載され、当該粉体は、本件明細書【0021】及び甲9の記載(摘記(9a))によれば、本件発明1の「(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」であるといえるものの、「BBクリーム」の形態ではない「化粧品」例の一成分のみに特に着目し、実施例5(BBクリーム)である甲1発明を変更することについて、特段の記載や示唆があるとはいえない。
そうすると、甲1には、粉体を疎水化する際に、特に「N-アシル酸性アミノ酸処理」を選択する動機付けとなる記載はなく、甲1発明において、「(A1’)アミノ酸処理粉体」を、特に「(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」とし、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到するものではない。
また、甲10には、「(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」だけでなく、「疎水性粉体」について、記載も示唆もないから(摘記(10a)及び(10b))、甲10を参照しても同様に、甲1発明において、「(A1’)アミノ酸処理粉体」を「(A1)N-アシル酸性アミノ酸処理粉体」にすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
(ウ) さらに、本件発明1の粉体として「N-アシル酸性アミノ酸処理」したものを用いた効果は、製品外観色と肌上で得られる塗布色との色差の減少や保存安定性の向上であると解されるところ、甲1及び甲10の記載からはそのような効果は予測できない。
(エ) したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明、又は甲1に記載された発明及び甲10に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、甲1発明の「LLシリーズ:大東化成工業社製」が甲2に記載の「LL処理」を意味し、甲1発明において、ラウロイルリジン処理粉体に加えて更にステアロイルグルタミン酸2Na処理粉体を配合することや、ラウロイルリジン処理粉体の代わりにステアロイルグルタミン酸2Na処理粉体を配合することは容易である旨の主張をしている。
しかしながら、仮に、甲1発明の「LLシリーズ:大東化成工業社製」が、ラウロイルリジン処理したものであっても、「ラウロイルリジン」は「N-アシル塩基性アミノ酸」であって、「N-アシル酸性アミノ酸」ではない。そして、上述したように、甲1発明において、疎水化処理を「N-アシル酸性アミノ酸」処理とすることの動機付けがないから、申立人の主張は採用できない。
(2) 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~5は、上記(1)と同様の理由により、甲1に記載された発明、又は甲1に記載された発明及び甲10に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-701052