特許異議申立
2023-700862
産卵鶏用配合飼料
- 審判番号
- 2023-700862
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-117490
- 登録番号
- 7229973
- 請求日
- 2023年08月21日
- 審決日
- 2025年07月01日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日本農産工業株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 洋
- 【権利者代理人】めぶき弁理士法人
- 【異議申立人】中嶋 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 居島 一仁
- 審判官 藤脇 沙絵
- 分類
- P1651.121-ZAA(A23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条、特許法第126条第5項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7229973号発明「産卵鶏用配合飼料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7229973号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7229973号の請求項2~5に係る特許を取り消す。
特許第7229973号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7229973号の請求項1~5に係る特許についての出願は令和2年7月8日に出願され、令和5年2月17日にその特許権の設定登録がされ、同月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~5に係る特許に対し、令和5年8月21日付けで特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。その後、その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和5年12月22日付け:取消理由通知書
令和6年 2月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月 6日 :特許権者による訂正請求書の手続補正書の提
出
同年10月21日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年12月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 4月14日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年12月19日に訂正請求書が提出されたことにより、令和6年2月22日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年12月19日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第7229973号の特許請求の範囲を、本件訂正請求の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その内容は、次の訂正事項1~5からなるものである(下線は訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に「穀類、大豆粕及び油脂を含み」と記載されているのを、「穀類、大豆粕、油脂及びフィターゼを含み」に訂正する。
(3) 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2に「リジン含量が0.75質量%以上」と記載されているのを、「リジン含量が0.83質量%以上」に訂正する。
(4) 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項2に「メチオニン及びシスチンの合計含量が0.65質量%以上」と記載されているのを、「メチオニン及びシスチンの合計含量が0.74質量%以上」に訂正する。
(5) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の」と記載されているのを、「請求項2に記載の」に訂正する。
(6) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「糞量低減のための請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を、対照飼料に対して乾燥糞重量比72%以下に低減し得る請求項2又は3」に訂正するとともに、「ここで、対照飼料とは、CP18又はCP17である。」という記載を追加する。
(7) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「汚卵発生率低減のための請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で9.7%以下に低減し得る、請求項2又は3」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」といい、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
(2) 訂正事項2-1~訂正事項2-3
訂正事項2-1は、訂正前の請求項2に記載されていた配合飼料の配合成分に、「フィターゼ」を追加することにより、産卵鶏用配合飼料を限定するものであり、訂正事項2-2は、訂正前の請求項2に記載されていた「リジン含量が0.75質量%以上」を、「リジン含量が0.83質量%以上」と配合率の下限値を引き上げることにより、産卵鶏用配合飼料の成分を限定するものであり、訂正事項2-3は、訂正前の請求項2に記載されていた「メチオニン及びシスチンの合計含量が0.65質量%以上」を、「メチオニン及びシスチンの合計含量が0.74質量%以上」と配合率の下限値を引き上げることにより、産卵鶏用配合飼料の成分を限定するものである。
よって、訂正事項2-1~訂正事項2-3に係る訂正のそれぞれは、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】~【0030】には、次の表が記載されている。
「【0027】
<材料および方法>
供試鶏としてジュリアライトを用い、1試験区あたり100羽にて、以下のような試験区設定及び飼料設計を行った。試験区は表1の通り計3試験区を設けた。大雛導入した17週から39週齢までをフェーズ1、40週から51週までをフェーズ2とした。対照区には、一般的な採卵鶏飼料である対照CP18(フェーズ1)および対照CP17(フェーズ2)(共に株式会社ジャパンフィード製)を用いた。試験区には、MEを3000kcal/kgとし、食下量の5%低減が期待される実施例1区、MEを3,050kcal/kgとし、食下量の7%低減が期待される実施例2区を設けた。試験飼料の配合率および栄養設計値は表2-1及び表2-2の通りとした。試験区の原料は、消化性の低いそうこう類(米ぬか、コーングルテンフィード、DDGS)は不使用とし、とうもろこし、大豆粕および動物性油脂(YG)を主体に構成した。なお、飼料の流動性を考慮してYGの添加量は5.2%を上限とした。アミノ酸設計は、日本飼料標準家禽(2011年版)および過去の試験からマニュアル程度の卵重を満たすことが可能と想定されるアミノ酸設計とした。飼養管理は、ジュリアライトマニュアル第3版((株)ゲン・コーポレーション)に準じた。給餌は、自由摂取とした。
【0028】
【表1】
[図:0001428978000001.jpg]
【0029】
【表2-1】
[図:0001428978000002.jpg]
【0030】
【表2-2】
[図:0001428978000003.jpg]
」
表2には、実施例1区及び実施例2区の配合飼料に、「フィターゼ」が「0.100%」添加され、リジン含量が、「0.89%」、「0.91%」、「0.83%」及び「0.86%」であり、メチオニン及びシスチンの合計含量が、「0.80%」、「0.81%」、「0.74%」及び「0.76%」であることが記載されており、これらの記載のリジン含量の最小値とメチオニン及びシスチンの合計含量の最小値のそれぞれは、「0.83%」と「0.74%」である。
したがって、訂正事項2-1~訂正事項2-3のそれぞれは、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条5項に適合するものである。
そして、訂正事項2-1~訂正事項2-3のそれぞれは、発明特定事項を限定することによって特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条第6項に適合するものである。
(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2のいずれか一項の記載を引用する記載であったものを、請求項2の記載を引用する記載に限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記(2)に示したとおり、訂正事項2に記載した発明特定事項は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項3についても同様であり、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条5項に適合するものである。
そして、訂正事項3は、発明特定事項を限定することによって特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条第6項に適合するものである。
(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載されていた「糞量低減のため」を、「前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を、対照飼料に対して乾燥糞重量比72%以下に低減し得る」に訂正し、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか一項を引用する記載であったものを、請求項2又は3を引用する記載に限定するものであるとともに、「ここで、対照飼料とは、CP18又はCP17である。」という記載を追加することにより、産卵鶏用配合飼料の用途を限定するものである。したがって、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件特許明細書の段落【0027】には、「対照区には、一般的な採卵鶏飼料である対照CP18(フェーズ1)および対照CP17(フェーズ2)(共に株式会社ジャパンフィード製)を用いた。試験区には、MEを3000kcal/kgとし、食下量の5%低減が期待される実施例1区、MEを3,050kcal/kgとし、食下量の7%低減が期待される実施例2区を設けた。試験飼料の配合率および栄養設計値は表2-1及び表2-2の通りとした。」と記載され、段落【0039】には、「27週齢、34週齢および51週齢時の平均生糞重量(50羽、3日分)は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ15.5、12.5および12.0kgとなり、対照区に対して実施例1区および実施例2区はそれぞれ80%および77%となった。同様に、平均乾燥糞重量(50羽、3日分)は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ4.4、3.1および3.2kgとなり、対照区に対して実施例1区および実施例2区はそれぞれ70%および72%となった。」と記載されている。
したがって、訂正事項4は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4は、発明特定事項を限定することによって特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条第6項に適合するものである。
(5) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項5に記載されていた「汚卵発生率低減のため」を、「汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で9.7%以下に低減し得る」と特定し、産卵鶏用配合飼料の用途を限定するとともに、訂正前の請求項5が請求項1~3のいずれか一項を引用する記載であったものを、請求項2又は3を引用する記載に限定するものである。したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件特許明細書のの段落【0041】には、「汚卵の発生率を表6に示した。34週から51週齢までの平均汚卵発生率は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ12.1、9.7および8.9%となり、対照区に対して試験区の汚卵発生率が減少する結果となった。」と記載されている。
したがって、訂正事項5は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項5は、発明特定事項を限定することによって特許請求の範囲を減縮する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条第6項に適合するものである。
3 独立特許要件について
本件訂正により、本件訂正後の請求項1~5に係る発明は、特許請求の範囲の減縮が行われているところ、本件特許異議申立事件において、すべての請求項が申立の対象とされているため、本件訂正後の請求項1~5に係る発明について、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の独立特許要件は適用されない。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1~5による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり本件訂正は認めることができるので、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件訂正発明1」等といい、全体を「本件訂正発明」という。)は、令和6年12月19日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
穀類、大豆粕、油脂及びフィターゼを含み、
前記大豆粕の配合割合が18~25質量%であり、
前記油脂の配合割合が、3.5~6質量%(ただし、6質量%を除く)であり、
粗蛋白質含量が17質量%以下、リジン含量が0.83質量%以上、かつメチオニン及びシスチンの合計含量が0.74質量%以上であり、
粗繊維含量が、2.5%未満、かつ代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。
【請求項3】
前記大豆粕の少なくとも一部が、脱皮大豆粕である請求項2に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項4】
前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を、対照飼料に対して乾燥糞重量比で72%以下に低減し得る、請求項2又は3に記載の産卵鶏用配合飼料。ここで、対照飼料とは、CP18又はCP17である。
【請求項5】
汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で9.7%以下に低減し得る、請求項2又は3に記載の産卵鶏用配合飼料。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 証拠方法
(1) 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:”Effects of dietary metabolizable energy levels and beak trimming on the performance, egg quality, and economic viability of layers”, Poultry Science Volume 98, Issue 11, 2019年11月1日, p.5831-5839
甲第2号証:”BROWN COMMERCIAL LAYERS Management Guide“, Hy-Line, 2018年11月、p.23
甲第3号証:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構編, 日本標準飼料成分表(2009年版), 社団法人中央畜産会, p.116-117
(2) 特許権者が提出した証拠は、以下のとおりである。
乙第1号証:"Dataset for techno-economic analysis of catalytic hydrothermolysis pathway for jet fuel production", Sudha Eswaran et al., "Data in Brief", 39(2021)107514
<URL>http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
乙第2号証:"規格外卵の分類と野外事例", 鎌田隆, 鶏病研究会報、2003年2月、第38巻、第4号、p.169-181
乙第3号証:一般成鶏用飼料から食下量低減型飼料への切替えが生産成績に与える影響に関する野外試験報告書
乙第4号証:"Supplementation of Buttiauxella sp. 6-phytase to commercial laying hendiets with reduced nutrient density on productive performance and egg quality", Yueming Dersjant-Li et.al., Journal of Applied Animal Nutrition, Cambridge University Press and Journal of Applied Animal Nutrition Ltd., 2018年06月11日, Vol. 6; e4, p.1-8
以下では、甲第1号証~甲第3号証及び乙第1号証~乙第4号証のそれぞれを、甲1~甲3及び乙1~乙4ということがある。
2 異議申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1) 進歩性の欠如
本件特許の請求項1に係る発明は、甲1又は甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項2、4及び5に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、本件特許の請求項3に係る発明は、甲1~甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) サポート要件違反
本件特許の請求項1~5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないため、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 実施可能要件違反
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和6年10月21日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由:令和6年3月6日に提出された手続補正書により補正された同年2月22日にされた訂正の請求により訂正(以下、「前回の訂正」という。)された請求項2、4及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
なお、前回の訂正では、請求項1及び3が削除されている。
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由
以下、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について検討する。
1 引用文献について
(1) 甲1について
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。また、翻訳文は請求人が作成したものを採用し、囲い線は請求人により付与されたものである。
(ア) 5831頁右下欄4から13行
「
[図:0001428978000004.jpg]
」
(翻訳文:産卵鶏では食餌のエネルギー量が部分的に飼料消費に影響を与えており、他の要因、特に体重、周囲温度、光周期も飼料消費に影響を与えている。したがって、食餌性エネルギー量と他の食餌性栄養素との比率は極めて重要である。代謝エネルギーは飼料摂取と負に相関するので、適切な栄養素摂取ができるようにするためには、食餌中のエネルギーと他の食餌性栄養素との比率が食餌配合では慎重に考慮されるべきである(Fisher et al.,1998)。)
(イ) 5832頁左欄27~33行
「
[図:0001428978000005.jpg]
」
(翻訳文:さらに、飼料は卵生産の主要コストの一つなので、飼料摂取について最新の商用産卵鶏系統のエネルギー所要量の影響を再評価すべきである。本研究の目的は、商業的産卵鶏の生産成績、卵質、経済性に与える食餌性MEレベル、ビークトリミング、およびそれらの相互作用の影響を評価することであった。)
(ウ) 5832頁右欄12~39行
「
[図:0001428978000006.jpg]
」
(翻訳文:第19週まで、すべての産卵鶏に単一の食餌を与えた。第20週に産卵鶏を個別に計量し、体重およびビークトリミング処置の回数に従ってケージに分配した。産卵鶏を28週間(第20週齢~第48週齢)にわたって評価し、それぞれ28日間の7周期に分割した。
産卵鶏を5×2要因実験に完全無作為化法で割り付けた。食餌に含まれる5段階の見かけのME(2,600、2,700、2,980、2,900および3,000 kcal ME/kg飼料)と、2種類のビークトリミング処置(第70日齢におけるビークトリミングの有無)とを組み合わせて合計10種類の飼育操作を設定し、各群について産卵鶏8羽、反復数8で実験を行った。ビークトリミングを1回または2回行った影響、および食餌性MEレベルとビークトリミングとの間の相互作用を分析した。
Rostagno et al.(2011)の栄養推奨値に従い、2,800kcalME/kgを含む、トウモロコシと大豆粉を主成分とする基礎食餌を配合した。評価した食餌性MEレベルは、不活性原料(カオリン)を大豆油で置き換えることによって得た。実験用食餌はイソ栄養食餌であり、その成分を表1に示す。
産卵鶏には自由に摂取できる水および飼料が提供され、飼料は1日2回給餌された。鶏種マニュアルによる勧告に従い、点灯時間を16時間とする点灯プログラムを適用した(Novogen,2014)。
卵を1日2回収集し、正常卵の総数および格外卵の総数を反復ごとに記録した。)
(エ) 5832頁40行~5833頁左欄3行
「
[図:0001428978000007.jpg]
[図:0001428978000008.jpg]
」
(翻訳文:生産成績および卵質の評価
生産成績を、28日周期の終わりごとに、反復当たりで評価した。以下の変数を測定した。総産卵率(EP)(生産された卵の総数を各反復の産卵鶏の平均数で除した商。パーセンテージ/羽/日で示される)、飼料摂取(FI)(各反復の平均卵重に散乱率を乗じた積。g/羽/日で示される)、日卵量(EM)(各反復の平均卵量に産卵率を乗じた席。g/羽/日で示される。)、生産された卵1ダース当たりの飼料要求率(FCR)(FCRDZ)(飼料摂取と平均産卵率との比に、鶏卵1ダースを乗じて得られる積。Kg飼料/卵1ダースで示される)、および、卵重当たりの飼料要求率(FCRM)(飼料摂取と日卵量との比から求めた。kg飼料/kg日卵量で示される。)
(オ) 5833頁
「
[図:0001428978000009.jpg]
」
(翻訳文:
[図:0001428978000010.jpg]
)
(カ) 5834頁
「
[図:0001428978000011.jpg]
」
(翻訳文:
[図:0001428978000012.jpg]
)
(キ) 5834頁左欄下から9~末行
「
[図:0001428978000013.jpg]
」
(翻訳文:結果
産卵率および卵重は、食餌性MEレベルにも、ビークトリミング処置の回数にも影響されなかった(P>0.05)。しかし、評価対象とした飼育操作は、飼料摂取、鶏卵1ダース当たりのFCR、および日卵量当たりのFCRに影響を与えた(P<0.05)(表2)。食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的に減少し(図lA)、鶏卵1ダース当たりのFCRおよび日卵量当たりのFCR両方ともに直線的に改善された(図lBおよびlC)。)
(ク) 表から看取できる事項
a 前記(オ)の表1から看取できる事項
前記(オ)の表1において、一番右の列には、「トウモロコシ」が60.18、「大豆粕」が23.5、「小麦」が0.42、「大豆油」が4.6、「合計」が100と記載されていることから、一番右の列の食餌は、トウモロコシ60.18質量%、大豆粕23.5質量%、小麦0.42質量%、大豆油4.6質量%を成分とする食餌であることが理解できる。
また、「見かけの代謝エネルギーkcal/kg」が3000、「粗タンパク質、%」が16.020、「メチオニン+シスチン、%」が0.617、「リシン、%」が0.719と記載されていることから、一番右の列には、「粗タンパク質」16.020質量%、「メチオニン+シスチン」0.617質量%、「リシン」0.719質量%の栄養素を含む「代謝エネルギー」3000kcal/kgの食餌であることも理解できる。
b 前記(カ)の表2から看取できる事項
前記(カ)の表2において、「影響1」として、「ME2kcal ME/kg」2600、2700、2800、2900、3000に対して、「FCRM(kg飼料/kg卵)」は、それぞれ1.902、1.839、1.782、1.773、1.729であることが記載され、欄外には、「1EP・・・FCRM、日卵量当たりの飼料要求率(kg飼料/kg日卵量)」「2ME、代謝エネルギー」と記載されている。
このことは、前記(キ)の「食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的減少」することを裏付けるものと解することができる。
イ 甲1に記載された発明
前記アを総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
<甲1発明>
「トウモロコシと大豆粉を主成分とする産卵鶏の食餌であって、
トウモロコシ60.18質量%、大豆粕23.5質量%、小麦0.42質量%、大豆油4.6質量%を成分とし、粗タンパク質16.020質量%、メチオニン+シスチン0.617質量%、リシン0.719質量%の栄養素を含み、代謝エネルギー(ME)3000kcal/kgであって、
産卵鶏には自由に摂取できる水及び飼料が提供され、飼料は1日2回給餌され、
産卵鶏を28週間(第20週齢~第48週齢)に渡って評価し、
代謝エネルギー(ME)を2600、2700、2800、2900、3000と増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が、1.902、1.839、1.782、1.773、1.729と減少し、
食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的に減少する、
産卵鶏の食餌。」
(2) 甲2について
ア 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア) 23頁
「
[図:0001428978000014.jpg]
」
(翻訳文:
[図:0001428978000015.jpg]
(なお、必要箇所のみ翻訳した。))
(イ) 表から看取できる事項
前記(ア)の表をみると、産卵鶏の食餌において、リジンの質量%は0.75%を上回る食餌が多く、メチオニン及びシスチンの合計が0.65質量%を上回ることがほとんどであることが看取できる。
イ 甲2記載技術
甲2には、次の技術的事項(以下、「甲2記載技術」という。)が記載されている。
<甲2記載技術>
「産卵鶏の食餌において、リジンの質量%は0.75%を上回る食餌が多く、メチオニン及びシスチンの合計が0.65質量%を上回ることがほとんどであること。」
(3) 甲3について
ア 甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
(ア) 116頁
「
[図:0001428978000016.jpg]
」
(イ) 117頁
「
[図:0001428978000017.jpg]
」
(ウ) 図面から看取できる事項
前記(ア)及び(イ)の表をみると、豚・鶏の飼料の組成において、大豆粕、大豆粕(エクストルーダー処理)、脱皮大豆粕、脱皮大豆粕(膨化処理)、脱皮大豆粕(エクストルーダー処理)が挙げられていることが看取できる。
イ 甲3記載技術
甲3には、次の技術的事項(以下、「甲3記載技術」という。)が記載されている。
<甲3記載技術>
「豚・鶏の飼料の組成において、大豆粕、大豆粕(エクストルーダー処理)、脱皮大豆粕、脱皮大豆粕(膨化処理)、脱皮大豆粕(エクストルーダー処理)が挙げられていること。」
(4) 乙4について
ア 乙4の記載事項
乙4には、次の事項が記載されている。
(ア) 要約欄
「A study was conducted to evaluate productive performance in laying hens fed diets with reduced nutrient density based on the nutritional contribution of a Buttiauxella phytase in laying-hen diets from 21-57 weeks of age.(以下略)」
(翻訳文:21~57 週齢の産卵鶏用飼料に含まれる Buttiauxella フィターゼの栄養学的寄与を基に、栄養密度を低減した飼料を与えた産卵鶏の生産成績を評価する試験を実施した。)
イ 乙4記載技術
乙4には、次の技術的事項(以下、「乙4記載技術」という。)が記載されている。
<乙4記載技術>
「21~57 週齢の産卵鶏用飼料にButtiauxella フィターゼが含まれること。」
2 本件訂正発明2について
(1) 対比
本件訂正発明2と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「トウモロコシ」、「大豆粕」、「大豆油」及び「産卵鶏の食餌」のそれぞれは、本件訂正発明2の「穀類」、「大豆粕」、「油脂」及び「産卵鶏用配合飼料」に相当する。
イ 甲1発明の「代謝エネルギー(ME)3000kcal/kg」は、本件訂正発明2の「代謝エネルギーが2960~3100kcal/kg」に相当する。
ウ 甲1発明の「粗タンパク質16.020質量%」は、本件訂正発明2の「粗蛋白質含量が17質量%以下」に相当する。
エ 甲1発明の「大豆粕23.5質量%」は、本件訂正発明2の「前記大豆粕の配合割合が18~25質量%」に相当する。
オ 甲1発明の「大豆油4.6質量%」は、本件訂正発明2の「前記油脂の配合割合が、3.5~6質量%(ただし、6質量%を除く)」であることに相当する。
カ 本件訂正発明2の「リジン」が「リシン」と表記されることは顕著な事実である。
よって、本件訂正発明2の「リジン含量が0.83質量%以上」であることと、甲1発明の「リシン0.719質量%」であることとは、リジン含量が所定質量%である点で共通する。
キ 本件訂正発明2の「メチオニン及びシスチンの合計含量が0.74%以上」であることと、甲1訂正発明の「メチオニン及びシスチンが0.617質量%」であることとは、メチオニン及びシスチンの合計含量が所定質量%である点で共通する。
ク 以上を総合すると、本件訂正発明2と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1~5において相違する。
<一致点>
「穀類、大豆粕及び油脂を含み、
前記大豆粕の配合割合が18~25質量%であり、
前記油脂の配合割合が、3.5~6質量%(ただし、6質量%を除く)であり、
粗蛋白質含量が17質量%以下、リジン含量が所定質量%、かつメチオニン及びシスチンの合計含量が所定質量%であり、
代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。」
<相違点1>
本件訂正発明2は、「フィターゼ」を含むのに対し、甲1発明は、そのようなものを含む特定がされていない点。
<相違点2>
リジン含量が、本件訂正発明2は、0.83質量%以上であるのに対し、甲1発明は、0.719質量%である点。
<相違点3>
メチオニン及びシスチンの合計含量が、本件訂正発明2は、0.74質量%以上であるのに対し、甲1発明は、0.617質量%である点。
<相違点4>
本件訂正発明2は、粗繊維含量が2.5%未満であるのに対し、甲1発明は、「トウモロコシ60.18質量%、大豆粕23.5質量%、小麦0.42質量%」を含むものであるが、粗繊維について特定されていない点。
(2) 検討・判断
ア 相違点1について
前記第2の2(2)に示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】及び【0030】には、配合飼料に「フィターゼ」が「0.100%」添加された実施例が記載されているが、他に「フィターゼ」に関する記載はない。そうすると、配合飼料に「フィターゼ」を付加することに特段の技術的意義を有することは記載されておらず、それを裏付けるに足る比較例等があるともいえない。
一方、配合飼料に「フィターゼ」を付加することについては、一例として乙4記載技術(「21~57 週齢の産卵鶏用飼料にButtiauxella フィターゼが含まれること。」)のように周知の技術である。
そして、甲1発明にフィターゼ等の他の構成を付加することを阻害する記載も示唆もない。
よって、甲1発明に周知のフィターゼを付加して、相違点1に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
イ 相違点2及び相違点3ついて
(ア) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】に、「産卵初期の鶏は、大雛期に引き続き成長を続けるとともに、産卵が開始されると急激な産卵率の上昇と卵重の増加をともなって産卵量が増加するので、産卵期の飼料における蛋白質、アミノ酸含量の重要性が指摘されている。特に、卵重は飼料の粗蛋白質(メチオニン)摂取量によって大きな影響を受けるといわれている。一方、飼料中の粗蛋白質レベルを増加すると、他のどれかの原料をその代償として減少させなければならない。そこで、本実施形態の配合飼料では、粗蛋白質含量が18.5質量%未満であっても、リジン含量を0.75質量%以上とし、かつメチオニン及びシスチンの合計含量を0.65質量%以上とすることにより最適なアミノ酸バランスを維持し、配合飼料の設計自由度を高めることにした。」と記載され、「リジン含量」の下限値、及び、「メチオニン及びシスチンの合計含量」の下限値を変更することによって、格別の効果等を発揮することを示す実施例等の記載や示唆があるものでもない。
また、本件特許明細書の前記記載のようにアミノ酸バランスを最適化するという課題も飼料のみならず食品一般に共通する広く知られた課題解決手段である。
(イ) よって、リジン含量の下限値、及び、メチオニン及びシスチンの合計含量の下限値は、飼料の栄養バランスを考慮するという当業者が通常行う最適化に基づきなし得る程度の技術的意味を有するものといえる。
(ウ) 一方、甲1発明のリジン含量及びメチオニン及びシスチンの合計含量は、本件訂正発明2のそれぞれの数値範囲と顕著に異なるものとはいえず、前記(ア)に示した本件訂正発明2の課題を解決でき得るものといえる。
(エ) そうすると、甲1発明において、甲2記載技術の「産卵鶏の食餌において、リジンの質量%は0.75%を上回る食餌が多く、メチオニン及びシスチンの合計が0.65質量%を上回ることがほとんどであること。」を適用し、前記相違点2及び相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである。
ウ 相違点4について
甲1発明の粗繊維の含量は不明であるが、穀類として、「トウモロコシ60.18質量%、大豆粕23.5質量%、小麦0.42質量%」を含んでいる。
本件特許明細書の実施例に記載された穀類は、表2-1の「5%F○1」、「7%F○1」、表2-2の「5%F○2」、「7%F○2」(当審注:○で囲んだ数字は「○数字」と表記した。)において、それぞれ順番(各質量%)に、とうもろこしを60.730、59.520、63.600、60.920、コーングルテンミールを1.160、1.710、0.970、1.190、大豆粕(cp、48%)を20.940、23.640、20.790、21.910、を含んでいる飼料の粗繊維は、1.9、1.6、1.6、1.6であるところ、甲1発明の穀類と本件訂正発明2の実施例の穀類において、その主要な成分であるトウモロコシ及び大豆粕の配合比に顕著な違いが見られないことからみて、甲1発明の産卵鶏の飼料も、粗繊維を2.5%未満含有している蓋然性が高い。
したがって、相違点4は実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点4が実質的な相違点であったとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0024】に「鶏糞量は、飼料中の粗繊維含量を低減することによっても低減することができる。繊維質の多い糟糠類や植物性油粕の代わりに繊維質が比較的少ない穀類や蛋白質原料を用いることにより、配合飼料の粗繊維含量を低下させることができる。本実施形態の配合飼料は、消化性の低いそうこう類を使用せず、粗繊維の含有量を2.5%未満、好ましくは2.0%未満とすることにより鶏卵の生産に伴う鶏糞量を低減することができる。」と記載され、本件訂正発明2の「粗繊維を2.5%未満含有」に粗繊維と排便量の関係に技術的意味があるといえるが、そのような関係は、広く知られているところ、甲1発明において、前記相違点4に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである。
エ 相違点1~4の総合判断について
そして、相違点1~4に係る本件訂正発明2の構成を総合することによっても、格別な効果を奏するものともいえない。
(3) 特許権者の主張について
ア 意見書での特許権者の主張
特許権者は、令和7年4月14日に提出された意見書(以下「意見書」という。)において、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】、【0003】、【0008】を示しつつ、本件訂正発明について「特にアミノ酸の利用効率を上げて、飼料の配合設計の自由度を確保し、様々な環境条件においても上記課題を達成することができるようにしたものである。」と主張(意見書5(4)イ(ア))した上で、次の主張をしている。
(ア) 主張1(相違点1について:意見書5(4)イ(イ))
フィターゼとは、フィチン酸を無機(正)リン酸とイノシトールに加水分解する酵素であり、麦類及び微生物由来の飼料用酵素として市販されている。穀類などの植物性飼料原料に含まれているリンの大部分はフィチン酸の形(フィチンリン酸)で存在しており、家禽の消化性は極めって悪い。このため、飼料にフィターゼを添加して、フィチンリン酸を無機リンに変換することで、鶏におけるリンの利用性を改善することは当業者においては周知技術である。
フィターゼは、飼料中のリンの利用性を上げるだけではなく、エネルギーやアミノ酸の利用性を上げることもまた知られている。
・・・(略)・・・
このように、フィターゼの添加は飼料のエネルギーやアミノ酸の利用効率を上げる点で重要な役割を果たすものである。飼料にフィターゼを添加すること自体は、当業者にとって慣用的な手段であるものの、以下の相違点2及び3とともに、本件訂正発明の課題を解決するために重要な役割を果たしている。
(イ) 主張2(相違点2及び相違点3について:意見書5(4)イ(ウ))
本件訂正発明2は、代謝エネルギーを上げながら栄養バランスを確保するという難しい条件下において、フィターゼを添加し、リジン含量を0.83質量%以上とし、かつメチオニン及びシスチンの合計含量を0.74質量%以上とすることにより、鶏の食下量が低下した場合でも最適なアミノ酸バランスを保つように、各成分の含有量を最適化したものである。甲1発明は、代謝エネルギーを増加させるために大豆油の含量を最大化すると、不活性材料の含量が0となりその他の配合成分の含有量の調整が難しい。すなわち、原材料の価格変動などに合わせて配合成分の含有量を調整する自由度が低い。そもそも、甲第1号証には、食下量の低下に合わせて飼料のアミノ酸バランスを最適化するという技術的思想は記載されていない。
甲2には、確かに、産卵鶏の食餌において、リジンの質量%は0.83%を上回る食餌もあり、メチオニン及びシスチンの合計が0.74質量%を上回るものもあるが、・・・(略)・・・
そうすると、甲2の記載事項から看過できる事項は、産卵鶏の食餌において、様々な代謝エネルギーとアミノ酸含量の組み合わせが設計されるが、典型的な飼料消費量の場合に用いられる配合飼料は、本件訂正発明2の範囲に含まれるものはないということである。
よって、相違点2及び3は、甲1発明のリジン含量並びにメチオニン及びシスチンの合計含量とは実質的に異なるものであり、甲2の記載事項を考慮しても当業者が適宜なし得た程度のことではない。
イ 主張についての見解
(ア) 主張1について
主張1において特許権者が主張するように、飼料にフィターゼを添加することは当業者にとって周知・慣用な技術である。また、本件特許明細書等には「フィターゼ」を産卵鶏用配合飼料に付加することに技術的意義や他の構成との関係について記載がなく、「フィターゼ」と他の構成との関係から、特許権者が主張する「特にアミノ酸の利用効率を上げて、飼料の配合設計の自由度を確保し、様々な環境条件においても上記課題を達成することができるようにしたものである。」ことを裏付けるための比較例や、作用機序等に係る記載も示唆もない。
また、「フィターゼ」を採用することによる効果も、特許権者が主張する周知の効果を発揮する程度であり、格別のものともいえない。
よって、主張1は前記(2)アの判断を左右するものはなく採用できない。
(イ) 主張2について
前記(2)アや前記(ア)に示したように、本件特許明細書等には「フィターゼ」を産卵鶏用配合飼料に付加することの技術的意義が記載されておらず、「リジン含量」や「メチオニン及びシスチンの合計含量」との関係についても記載も示唆もなく、技術常識ともいえないから、「フィターゼ」と「リジン含量」や「メチオニン及びシスチンの合計含量」との組み合わせによる格別な効果に関する主張は、本件特許明細書等に基づく主張とはいえない。
また、「リジン含量」や「メチオニン及びシスチンの合計含量」の数値範囲については、前記(2)イに示したとおりである。
よって、主張2は前記(2)イの判断を左右するものはなく採用できない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、甲1発明、甲2記載技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件訂正発明3について
(1) 対比
本件訂正発明3は、本件訂正発明2の「大豆粕」を「前記大豆粕の少なくとも一部が、脱皮大豆粕である」と限定したものである。
そうすると、本件訂正発明3と甲1発明を対比すると、前記2(1)に示した一致点で一致し、相違点1~4に加え、次の相違点5で相違する。
<相違点5>
本件訂正発明3は、「前記大豆粕の少なくとも一部が、脱皮大豆粕である」であるのに対し、甲1発明の「大豆粕」はそのような特定がされていない点。
(2) 検討・判断
相違点1~4については、前記2(2)に示したとおりであり、相違点5について検討する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】に、「(産卵鶏用配合飼料)
本発明の1つの実施形態において、穀類、大豆粕及び油脂を含み、代謝エネルギーが約2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料が提供される。好ましい実施形態では、この配合飼料の代謝エネルギーは約3000~3100kcal/kgである。本実施形態の飼料に含まれる大豆粕成分は、粗蛋白質成分が約44%のいわゆる「ロープロ大豆粕」と約48%のいわゆる「ハイプロ大豆粕」のいずれを用いてもよい。通常の大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約44%であり、ロープロ大豆粕と称されるのに対して、脱皮させたものはハイプロ大豆粕と称される。この脱皮大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約48%と通常の大豆粕より1割程度高いことが特徴である。本実施形態では、大豆粕の少なくとも一部に脱皮大豆粕を含むことが好ましく、実質的に全て脱皮大豆粕を使用することがさらに好ましい。脱皮大豆粕の種類は特に制限はなく、市販されている任意のものを使用することが出来る。例えば、昭和産業の銘柄名「ハイプロ大豆(粕)」を例として挙げることが出来る。ここで、「実質的に全て」とは、以下に示すような効果が得られる限り、意図せずに通常の大豆粕が少量混入しているような場合等も許容するということである。」と記載されている。
一方、本件訂正発明3は、「粗蛋白質含量が17質量%以下」であるから、「脱皮大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約48%と通常の大豆粕より1割程度高いことが特徴」である「脱皮大豆粕」を採用することが本件訂正発明3に格別の効果を奏するものとはいえない。
そうすると、甲3記載技術にある、飼料において、脱皮大豆粕等から適宜選択して大豆粕を用いるという周知慣用技術(以下「周知慣用技術1」という。)に基づき、甲1発明の大豆粕として脱皮大豆粕を用いて、本件訂正発明3の相違点5に係る構成のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(3) 特許権者の主張について
ア 意見書での特許権者の主張
特許権者は、意見書において、次の主張をしている。
主張3(相違点5について:意見書5(5)イ)
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「通常の大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約44%であり、ロープロ大豆粕と称されるのに対して、脱皮させたものはハイプロ大豆粕と称される。この脱皮大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約48%と通常の大豆粕より1割程度高い」ことが記載されている。本件訂正発明3では、大豆粕成分の少なくとも一部を脱皮大豆粕とすることによって、同程度の蛋白質量含量を確保する為に必要な大豆粕の量を約1割程度まで減らすことが出来る。そして、産卵期の飼料における蛋白質、アミノ酸含量のバランスは重要であり、特に、卵重は飼料の粗蛋白質(メチオニン)摂取量によって大きな影響を受けるといわれているところ、飼料中の粗蛋白質レベルを増加すると、他のどれかの原料をその代償として減少させなければならない。そこで、本件訂正発明3に係る配合飼料では、相違点5を有することにより、大豆粕の配合割合を減らして飼料の配合設計の自由度を確保することができる。
イ 主張に対する見解
飼料の各種成分比に留意して配合することは、当該技術分野における技術常識といえるところ、大豆粕を脱皮大豆粕にするのであれば、含まれる粗蛋白質含量に留意して配合することに技術的な困難性があるとはいえず、それに応じて適宜他の構成を設計する程度のことは当業者の通常の創作活動の範囲にすぎない。また、甲1発明において、通常の大豆粕を脱皮大豆粕とすることにより、他の構成の配合比のバランスを保つように設計すること、すなわち、「他のどれかの原料をその代償として減少させなければならない」という最適化の範囲で設計することについても、前記技術常識に照らし、当業者であれば設計し得ることである。
よって、主張3は、前記(2)に示した判断を左右するものでなく、採用できない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明3は、甲1発明、甲2記載技術及び周知慣用技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件訂正発明4について
(1) 対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明2又は3の「産卵鶏用配合飼料」を「前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を、対照飼料に対して乾燥糞重量比72%以下に低減し得る」ものであって、「ここで、対照飼料とは、CP18又はCP17である。」ことを特定し限定したものである。
そうすると、本件訂正発明4と甲1発明を対比すると、前記2(1)に示した一致点で一致し、前記2(1)及び3(1)に示した相違点1~5に加え、次の相違点6で相違する。
<相違点6>
本件訂正発明4は、「前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を、対照飼料に対して乾燥糞重量比で72%以下に低減し得る」、「産卵鶏用配合飼料」であって「ここで、対照飼料とは、CP18又はCP17である。」のに対し、甲1発明は、「代謝エネルギー(ME)を2600、2700、2800、2900、3000と増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が、1.902、1.839、1.782、1.773、1.729と減少し、食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的に減少する」ものであるが、そのような特定がされていない点。
(2) 検討・判断
相違点1~5については、前記2(2)及び3(2)に示したとおりであり、相違点6について検討する。
本件特許発明4の「前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を」、「低減し得る」ことに関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0039】に「・・・両試験区の鶏糞重量減少の要因は、食下量が減少していることに加えて、鶏が消化吸収出来ない繊維の摂取量が減少したことによると考えられた。」と記載されている。
甲1発明は、「代謝エネルギー(ME)3000kcal/kg」の「産卵鶏の食餌」であって、「代謝エネルギー(ME)を2600、2700、2800、2900、3000と増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が、1.902,1.839、1.782、1.773、1.729と減少し、食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的に減少する」こととなるから、代謝エネルギー(ME)を3000kcal/kgに増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が減少すること、すなわち食下量が減少することにより、糞量が低減されていると解することができるから、甲1発明は「前記配合飼料を給餌した産卵鶏の糞量を」、「低減し得る」ものである。
本件訂正発明4の「CP18」及び「CP17」のそれぞれは、粗蛋白質が18%、粗蛋白質が17%であることを意味するものということが飼料における技術常識であるが、飼料内の他の構成を特に特定するものとはいえない。
また、飼料の構成により糞量が異なることも例示するまでもない技術常識である。
そうすると、甲1発明の「産卵鶏の食餌」と比較する「CP18」や「CP17」の飼料との間で、どの程度の割合で糞量を減少させるかは、比較する飼料の選択任意性に依存するものであり、糞量を「低減」する数値範囲に格別の技術的意義を有するものではない。
よって、甲1発明において、相違点6に係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
(3) 特許権者の主張について
ア 意見書での特許権者の主張
特許権者は、意見書において、次の主張をしている。
主張4(相違点6について:意見書5(6)イ)
「本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明2の発明特定事項の範囲内において、特定の配合率及び栄養設計値を有する実施例1区及び実施例2区の配合飼料が記載されている(表2参照)。そして、これらの配合飼料を産卵鶏に給餌したときの27、34及び51週齢時に測定した鶏糞重量が表5に示される。27週齢、34週齢および51週齢時の平均乾燥糞重量(50羽、3日分)は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ4.4、3.1および3.2kgとなり、対照区に対して実施例1区および実施例2区はそれぞれ70%および72%となっている。
そうすると、本件訂正発明2の発明特定事項の範囲内において、上記実施例1区および実施例2区の配合率及び栄養設計値を参照し、対照飼料に対して乾燥糞重量比で72%以下に糞量を低減し得る産卵鶏用配合飼料を製造することは当業者であれば容易に実施することができる。なお、本件明細書には、対照飼料として、「一般的な採卵鶏飼料である対照CP18(フェーズ1)および対照CP17(フェーズ2)(共に株式会社ジャパンフィード製)を用いた(段落0027)。」ことが記載されている。
これに対し、甲第1号証には、甲1発明に係る産卵鶏の食餌を用いると糞量が低減されることは記載されていない。甲第1号証の記載から、代謝エネルギー(ME)を3000kcal/kgに増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が減少することにより、糞量が低減されていると解することができたとしても、相違点6に係る相当程度まで糞量を低減し得ることは例え当業者であったとしても容易に想到することはできない。
よって、本件訂正発明4は、甲1発明及び甲2記載の事項に基づいて、
当業者が容易に発明をすることができたものではない。」
イ 主張に対する見解
特許権者は、本件特許発明4を実施可能である旨主張した上で、甲1発明が、代謝エネルギー(ME)を3000kcal/kgに増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が減少することにより、糞量が低減されていると解することができたとしても、相違点6に係る相当程度まで糞量を低減し得ることは例え当業者であったとしても容易に想到することはできない旨主張するものであるが、前記(2)に示したとおりであるから、主張4は、前記(2)に示した判断を左右するものでなく、採用できない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明4は、甲1発明、甲2記載技術及び周知慣用技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件訂正発明5について
(1) 対比
本件訂正発明5は、本件訂正発明2又は3の「産卵鶏用配合飼料」を「汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で9.7%以下に低減し得る」ものと特定し限定したものである。
そうすると、本件訂正発明5と甲1発明を対比すると、前記2(1)に示した一致点で一致し、前記2(1)及び3(1)に示した相違点1~5に加え、次の相違点7で相違する。
<相違点7>
本件訂正発明5は、「汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で9.7%以下に低減し得る」ものであるのに対し、甲1発明は、「代謝エネルギー(ME)を2600、2700、2800、2900、3000と増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が、1.902、1.839、1.782、1.773、1.729と減少し、食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的に減少する」ものであるが、そのような特定がされていない点。
(2) 検討・判断
相違点1~5については、前記2(2)及び3(2)に示したとおりであり、相違点7について検討する。
前記4(2)に示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0039】に照らすと、甲1発明は、「代謝エネルギー(ME)3000kcal/kg」の「産卵鶏の食餌」であって、「代謝エネルギー(ME)を2600、2700、2800、2900、3000と増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が、1.902,1.839、1.782、1.773、1.729と減少し、食餌性MEレベルが増加すると、飼料摂取が直線的に減少する」こととなるから、代謝エネルギー(ME)を3000kcal/kgに増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が減少することにより、糞量が低減されていると解することができるから、それに伴い、卵に付着する糞量も低減されると解することができ、すなわち、甲1発明は、「汚卵発生率を」、「低減し得る」ものである。
また、本件訂正発明5の「汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で9.7%以下に低減し得る」ことについて、本件特許明細書等に「9.7%以下」と数値範囲を特定することの特段の技術的意義について記載も示唆もなく、「低減し得る」範囲で最適なもの程度の意味で解すべきものである。
よって、甲1発明において、相違点7に係る本件訂正発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た程度のことである。
(3) 特許権者の主張について
ア 意見書での特許権者の主張
特許権者は、意見書において、次の主張をしている。
主張5(相違点7について:意見書5(7)イ)
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正発明2の発明特定事項の範囲内において、特定の配合率及び栄養設計値を有する実施例1区及び実施例2区の配合飼料が記載されている(表2参照)。そして、これらの配合飼料を産卵鶏に給餌したときの汚卵の発生率が発明の詳細な説明の表6に示され、34週から51週齢までの平均汚卵発生率は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ12.1、9.7および8.9%となり、対照区に対して試験区の汚卵発生率が減少する結果となったことが記載されている。
そうすると、本件訂正発明2の発明特定事項の範囲内において、上記実施例1区および実施例2区の配合率及び栄養設計値を参照し、汚卵発生率を、34週齢から51週齢の産卵鶏が生産した鶏卵についての平均値で10%以下に低減し得る産卵鶏用配合飼料を製造し、これを給餌することは当業者であれば容易に実施することができる。
これに対し、甲第1号証には、甲1発明に係る産卵鶏の食餌を用いると汚卵発生率が低減されることは記載されていない。甲第1号証の記載から、代謝エネルギー(ME)を3000kcal/kgに増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が減少することにより、糞量が低減されていると解することができたとしても、糞量の低減が汚卵発生率と関連することのみならず、相違点7に係る相当程度まで汚卵発生率を低減し得ることは例え当業者であったとしても容易に想到することはできない。
よって、本件訂正発明5は、甲1発明及び甲2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 主張に対する見解
特許権者は、本件特許発明5を実施可能である旨主張した上で、甲1発明が、代謝エネルギー(ME)を3000kcal/kgに増加させると、日卵量当たりの飼料要求率(FCRM)が減少することにより、糞量が低減されていると解することができたとしても、糞量の低減が汚卵発生率と関連することのみならず、相違点7に係る相当程度まで汚卵発生率を低減し得ることは例え当業者であったとしても容易に想到することはできない旨 主張するものであるが、前記(2)に示したとおりであるから、主張5は、前記(2)に示した判断を左右するものでなく、採用できない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明5は、甲1発明、甲2記載技術及び周知慣用技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 まとめ
したがって、進歩性欠如に係る特許異議の申立ての理由及び証拠、並びに取消理由通知(決定の予告)の理由によって、請求項2~5に係る特許を取り消す。
また、請求項1に係る特許は、前記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700862