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特許異議申立

2023-701145

糞量及び窒素排せつ量を低減するための豚用飼料

審判番号
2023-701145
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-075533
登録番号
7266248
請求日
2023年10月27日
審決日
2025年01月30日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】全国農業協同組合連合会
  • 【権利者代理人】弁理士法人谷川国際特許事務所
  • 【権利者】JA全農くみあい飼料株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人谷川国際特許事務所
  • 【異議申立人】中嶋 美奈子
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
  • 審判官 澤田 真治
分類
P1651.121-YAA(A23K) / P1651.537-YAA(A23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7266248号発明「糞量及び窒素排せつ量を低減するための豚用飼料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7266248号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、3〕、〔2、4〕、5、6について訂正することを認める。 特許第7266248号の請求項1、3、5、6に係る特許を維持する。 特許第7266248号の請求項2、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7266248号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年4月21日に特許出願されたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和 5年 4月20日 :特許権の設定登録 令和 5年 4月28日 :特許掲載公報発行 令和 5年10月27日 :特許異議申立人中嶋 美奈子(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~5に対する特許異議の申立て 令和 6年 2月 9日付け:取消理由通知書 令和 6年 4月 5日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和 6年 4月18日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 令和 6年 5月22日 :申立人による意見書の提出 令和 6年 8月15日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和 6年10月18日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 また、当審合議体は、令和6年10月31日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。 なお、令和6年10月18日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、先にした同年4月5日付け訂正請求は取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 令和6年10月18日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める、というものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「粗繊維含量が2.3%以下、粗タンパク質含量が12.9~14.5%、糖蜜含量が1.0~5.0%であり、加熱加工されていることを特徴とする」と記載されているのを、「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、加熱加工されていることを特徴とする」に訂正する。 請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1若しくは3記載の子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与すること、又は請求項2若しくは4記載の肉豚肥育用飼料を肥育期の豚に給与することを含む、育成期の子豚又は肥育期の豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、数値範囲の減縮を行うとともに特定事項を付加して「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、加熱加工されていることを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与することを含む、育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法であって、育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量は、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であり、加熱加工されている飼料を給与した場合よりも低減する、方法。」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1若しくは3記載の子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与すること、又は請求項2若しくは4記載の肉豚肥育用飼料を肥育期の豚に給与することを含む、育成期の子豚又は肥育期の豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法。」とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、数値範囲の減縮を行うとともに特定事項を付加して「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、エキスパンダー加工されていることを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与することを含む、育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法であって、前記子豚の糞量及び窒素排せつ量が、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であり、エキスパンダー加工されている飼料を給与した場合よりも低減する、方法。」と記載し、新たな請求項6とする。 (6) 別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正請求書において、訂正後の請求項〔1、3〕、請求項5、請求項6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 2 訂正の適否 (1) 訂正事項1 訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0026】の記載に基づいて粗繊維の含量の数値範囲を「2.0%」、粗タンパク質の含量の数値範囲を「13.0%」に限定し、同【0025】の記載に基づいて糖蜜含量の数値範囲を「2.3%」に限定し、同【0019】の記載に基づいて、「原料として油脂が配合されておらず」との発明特定事項を付加することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項1は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 (2) 訂正事項2 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、当該訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3) 訂正事項3 訂正事項3は、請求項4を削除するものであるから、当該訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4) 訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項5のうち訂正前の請求項1を引用していたものを、独立形式請求項へ改めるものである。 また、訂正事項4は、訂正前の請求項1において特定されていた「糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料」に関して、本件特許明細書の【0026】の記載に基づいて粗繊維の含量の数値範囲を「2.0%」、粗タンパク質の含量の数値範囲を「13.0%」に限定し、同【0025】の記載に基づいて糖蜜含量の数値範囲を「2.3%」に限定し、同【0019】の記載に基づいて「原料として油脂が配合されておらず」との発明特定事項を付加することで、特許請求の範囲を減縮するものである。 さらに、訂正事項4は、同【0024】~【0030】に記載された子豚育成用飼料に関する実証実験1で用いられた対照飼料の構成を特定し、当該対照飼料を給与した場合との比較が行われることを明確にするために「育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量は、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であり、加熱加工されている飼料を給与した場合よりも低減する」との発明特定事項を付加することによって、「糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」における「糞量及び窒素排せつ量」の「低減」が、どのような場合と比較して「糞量及び窒素排せつ量」が「低減」されるのかを明瞭にするために行ったものである。 そして、訂正事項4は、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項4は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 (5) 訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項5のうち訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用していたものを、独立形式請求項へ改めるものである。 また、訂正事項5は、訂正前の請求項1において特定されていた「糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料」に関して、本件特許明細書の【0026】の記載に基づいて粗タンパク質の含量の数値範囲を「13.0%」に限定し、同【0025】の記載に基づいて糖蜜含量の数値範囲を「2.3%」に限定し、同【0019】の記載に基づいて「原料として油脂が配合されておらず」との発明特定事項を付加することで、特許請求の範囲を減縮するものである。 さらに、訂正事項5は、同【0024】~【0030】に記載された子豚育成用飼料に関する実証実験1で用いられた対照飼料の構成を特定し、当該対照飼料を給与した場合との比較が行われることを明確にするために「育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量は、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であり、加熱加工されている飼料を給与した場合よりも低減する」との発明特定事項を付加することによって、「糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」における「糞量及び窒素排せつ量」の「低減」が、どのような場合と比較して「糞量及び窒素排せつ量」が「低減」されるのかを明瞭にするために行ったものである。 そして、訂正事項5は、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項5は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 (6) 独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~5について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1~5に係る訂正事項1~5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7) 小括 上記(1)から(5)のとおりであるから、訂正事項1~3は特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項4及び5は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、訂正事項1~5は、本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、且つ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正は適法である。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項1~5について、訂正前の請求項3及び5は訂正前の請求項1を引用しているものであるから一群の請求項であり、訂正前の請求項4及び5は訂正前の請求項2を引用しているものであるから一群の請求項である。 そして、前記の二つの一群の請求項は、共通の請求項5を有するから、これらの一群の請求項は組み合わされて一つの一群の請求項となるものである。 よって、本件訂正請求は、一群の請求項について請求されたものである。 4 別の訂正単位とする求めについて 上記2のとおり、本件訂正は適法である。 そして、訂正請求書において、訂正後の請求項〔1、3〕、請求項5、請求項6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがあり、本件訂正により、訂正後の請求項5及び6は他の請求項との引用関係が解消したことから、訂正後の請求項〔1、3〕、〔2、4〕、5、6は、それぞれ別の訂正単位として扱う。 5 本件訂正についてのまとめ 以上のことから、本件訂正請求による訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法であり、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、〔2、4〕、5、6について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、1A等の記号は、分説するために当審合議体が付与した。 【請求項1】 1A 粗繊維含量が2.0%、 1B 粗タンパク質含量が13.0%、 1C 糖蜜含量が2.3%であり、 1D 原料として油脂が配合されておらず、 1E かつ、加熱加工されている 1F ことを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 3A 加熱加工がエキスパンダー加工又はペレット加工である、 3B 請求項1記載の子豚育成用飼料。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 5A 粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、加熱加工されていることを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与することを含む、 5B 育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法であって、 5C 前記子豚の糞量及び窒素排せつ量が、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であり、加熱加工されている飼料を給与した場合よりも低減する、 5D 方法。 【請求項6】 6A 粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、エキスパンダー加工されていることを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与することを含む、 6B 育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法であって、 6C 前記子豚の糞量及び窒素排せつ量が、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であり、エキスパンダー加工されている飼料を給与した場合よりも低減する、 6D 方法。 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議の申立ての概要 (1) 申立理由の概要及び証拠方法 申立人は、証拠方法として以下の甲第1~7号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由を主張している。 ア 申立理由 本件訂正前の請求項1~5に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、甲1、甲2及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 イ 証拠方法 (ア) 申立人が特許異議申立書とともに提出した証拠 甲1:P. D. Le,外5名,「Effects of dietary crude protein level on odour from pig manure」,Animal (2007),The Animal Consortium,2007年,p.734-744 甲2:Sung-Kwon Park,外3名,「Digestibility of nitrogen and dry matter of oilseed meais and distiller dried grains supplemented in swine diets」,Korean Journal of Agricultural Science 43(5),2016年12月,p.769-776 甲3:K. J. Wondra,外4名,「Effects of Particle Size and Pelleting on Growth Performance, Nutrient Digestibility, and Stomach Morphology in Finishing Pigs」,Department of Animal Sciences and Industry, Kansas State University, Manhattan 66506-0201,1995年,p.757-763 (イ) 申立人が令和6年5月22日付け意見書とともに提出した証拠 甲4: 祐森誠司,外3名,「アミノ酸添加低可消化粗タンパク質飼料による肥育豚の窒素排泄量および糞尿由来アンモニアガス濃度の低減効果」,日本養豚学会誌41巻1号,2004年3月,p.1-9 甲5:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構編 日本標準飼料成分表(2009年版)、社団法人中央畜産会、p.106-109,126-129 甲6:古橋圭介,外3名,「養豚飼料の粒度が消化率とふんの性状に及ぼす影響」,日本養豚研究会誌13巻2号,1976年9月,p.107-113 甲7:斎藤守,ニワトリおよびブタからの環境負荷物質の低減化に関する栄養飼料学的研究の動向,日本畜産学会報,2001年,72巻,8号,p.j177-j199 2 令和6年2月9日付け取消理由通知の概要 本件特許発明1~5に係る特許に対して、当審合議体が令和6年2月9日付けで特許権者に通知した取消理由1~3の概要は、以下のとおりである。 (1) 取消理由1(明確性) 本件特許発明5は、「育成期の子豚又は肥育期の豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」の発明であるが、この「糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」における「糞量及び窒素排せつ量」の「低減」が、どのような場合と比較して「糞量及び窒素排せつ量」が「低減」されるのか不明であり、発明の構成が明確でない。 よって、本件特許の請求項5に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 (2) 取消理由2(サポート要件) ア 本件特許発明1、3及び5について 本件特許発明1に特定された数値範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないことから、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3及び5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1、3及び5に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 イ 本件特許発明2、4及び5について 本件特許明細書において「肉豚」と定義される豚を用いた実験の結果は何も記載されておらず、「肉豚肥育用飼料」の発明である本件特許発明2において特定された数値範囲の妥当性を示す根拠は何も示されていないことから、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明4及び5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明2、4及び5に係る特許は同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (3) 取消理由3(進歩性) 本件特許発明1~5は、引用文献1~3に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に対する特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 引用文献1:P. D. Le,外5名,「Effects of dietary crude protein level on odour from pig manure」,Animal (2007),The Animal Consortium,2007年,p.734-744(申立人が提出した甲1) 引用文献2:古橋圭介,外4名,「飼料による豚ふんの少量・固型化に関する研究」,日豚研誌12巻2号,1975年9月,p.73-84 引用文献3:K. J. Wondra,外4名,「Effects of Particle Size and Pelleting on Growth Performance, Nutrient Digestibility, and Stomach Morphology in Finishing Pigs」,Department of Animal Sciences and Industry, Kansas State University, Manhattan 66506-0201,1995年,p.757-763(申立人が提出した甲3) 3 令和6年8月15日付け取消理由通知(決定の予告)の概要 令和6年4月5日付け訂正請求書により訂正された請求項1~6に発明に係る特許に対して、当審合議体が令和6年8月15日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 (1) 本件の請求項1、3、5及び6に係る特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) 本件の請求項2、4、5及び6に係る特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 当審合議体の判断 1 取消理由通知(決定の予告)について (1) 取消理由(1)について 取消理由(1)は、当審合議体が令和6年2月9日付けで特許権者に通知した取消理由のうち、取消理由2のアに対応する。 ア 取消理由(1)の詳細 請求項1に係る発明における数値範囲を規定する根拠は、本件特許明細書の【0024】~【0030】に記載された「実証実験1(子豚育成用飼料)」の結果であり、その実証実験1は、1例の「低蛋白質・低繊維飼料」と、1例のその比較のための「対照飼料」に基づいて、子豚の糞量と窒素排せつ量の検証を行われたものである。 そして、上記の試験結果によって確認できることは、粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、加熱加工されている「低蛋白質・低繊維飼料」を「育成期の子豚」に対して給与した場合には、粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、糖蜜が配合されておらず、油脂含量が1.0%であり、かつ、加熱加工されている「対照飼料」を「育成期の子豚」に対して給与した場合よりも、排せつ糞量(生・乾燥)および排せつ物中の窒素排せつ量を低減させることができたことである。 また、本件特許明細書の【0014】及び【0016】~【0018】には、粗繊維含量、粗タンパク質含量及び糖蜜の配合重量の数値範囲が示されてはいるが、その数値範囲を規定する客観的な根拠は示されていない。 よって、実証実験1は、複数種類の飼料を用いることによって、配合された材料の適正範囲を検証するものとはいえない。 低蛋白質化と低繊維化の相乗効果については、本件特許明細書の記載を参酌しても、その効果を生ずるための作用機序が不明であることから、パラメータを変更した具体的な実験を積み重ねることによってその相乗効果の有無を確認するしか方法がなく、上記請求項1に係る発明に特定された数値範囲内であっても、低蛋白質化と低繊維化がどの程度なされたかによって「糞中への窒素排せつ量」の低減効果が認められない疑念があり、出願時の技術常識に照らしても、上記請求項1に係る発明に特定された数値範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 上記請求項3、5及び6に係る発明についても同様である。 イ 取消理由(1)についての判断 本件訂正により、本件特許の請求項1、3、5及び6に係る発明は、上記第3に記載した本件訂正発明1、3、5及び6に訂正された。 そして、本件訂正発明1は、「粗繊維含量」、「粗タンパク質含量」、「糖蜜含量」の数値範囲が、それぞれ、「2.0%」、「13.0%」、「2.3%」に限定されることにより、本件特許明細書の【0024】~【0030】に記載された「実証実験1(子豚育成用飼料)」の結果により、「対照飼料」を「育成期の子豚」に対して給与した場合よりも、排せつ糞量(生・乾燥)および排せつ物中の窒素排せつ量を低減させる作用効果が確認できたものに限定された。 したがって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載したものと認められる。 同様に、「粗繊維含量」、「粗タンパク質含量」、「糖蜜含量」の数値範囲が限定された本件訂正発明3も、発明の詳細な説明に記載したものと認められる。 よって、取消理由(1)によっては、本件訂正後の請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。 (2) 取消理由(2)について 取消理由(2)は、当審合議体が令和6年2月9日付けで特許権者に通知した取消理由のうち、取消理由2のイに対応する。 ア 取消理由(2)の詳細 本件特許明細書の【0024】及び【0031】に記載されているように、実証実験1は、体重約30kgの10頭の豚を供試動物としており、実証実験2は、体重約50kgの10頭の豚を供試動物としていることから、同【0015】の記載を参酌すると、実証実験1と実証実験2は、いずれも、「子豚」と定義される体重が30~70kgの豚を用いた実験である。 してみると、本件特許明細書において「肉豚」と定義される豚を用いた実験の結果は何も記載されておらず、「肉豚肥育用飼料」の発明である上記請求項2に係る発明において特定された数値範囲の妥当性を示す根拠は何も示されていない。 したがって、本件特許明細書には、上記請求項2に係る発明が「肉豚」に対して「排せつ生糞量」及び「総窒素排せつ量」が少なくなる根拠は示されていないことから、「粗繊維含量が2.3%以下、粗タンパク質含量が11.0~12.9%、糖蜜含量が1.0~5.0%」である「飼料」が各構成の数値範囲内において、上記請求項2に係る発明の肉豚肥育用飼料が、肉豚に対して良好な結果をもたらし、発明の詳細な説明に記載された課題を解決し得ることとの合理的な関係が説明されているとは認められず、出願時の技術常識に照らしても、上記請求項2に係る発明に特定された数値範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 上記請求項4~6に係る発明についても同様である。 イ 取消理由(2)についての判断 本件訂正により、取消理由(2)の対象であった請求項2及び4は削除されたため、取消理由(2)は解消されたと判断される。 (3) 本件訂正発明5及び6について 本件訂正により、本件訂正発明5及び6は、「粗繊維含量」、「粗タンパク質含量」、「糖蜜含量」の数値範囲が、それぞれ、「2.0%」、「13.0%」、「2.3%」に限定され、また、取消理由(2)の対象とされた「肉豚肥育用飼料」に関する特定がすべて削除された。 したがって、上記(1)と同様に、本件訂正発明5及び6は、発明の詳細な説明に記載したものと認められる。 よって、取消理由(1)及び取消理由(2)によっては、本件訂正後の請求項5及び6に係る特許を取り消すことはできない。 (4) 取消理由通知(決定の予告)のまとめ 以上のことから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知(決定の予告)に通知されなかった取消理由について (1) 取消理由1について 本件訂正により、本件訂正発明5及び本件訂正発明6における「糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」が、「糞量及び窒素排せつ量」の「低減」が、「粗繊維含量が3.0%、粗タンパク質含量が15.0%、油脂の配合割合が1.0%、糖蜜が非配合であ」る「飼料を給与した場合」と比較して「低減」されるものであることが特定された。 その結果、「糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」における「糞量及び窒素排せつ量」の「低減」が、どのような場合と比較して「糞量及び窒素排せつ量」が「低減」されるのかが明確になり、本件訂正発明5及び本件訂正発明6は明確となった。 よって、取消理由1によっては、本件訂正後の請求項5及び6に係る特許を取り消すことはできない。 (2) 取消理由3及び申立理由について ア 引用文献及び各甲号証 (ア) 引用文献1(甲1) a 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の記載がある(訳文は、申立人が作成した添付訳文をもとに当審合議体が作成した。以下同様。)。 (a) 735頁左欄27行~39行 「Material and methods Animals、experimental design and diets A randomised complete-block arrangement with three treatments in six blocks was used to study effects of dietary CP level on odour concentration, odour emission, odour intensity, odour hedonic tone、and ammonia emission from growing pig manure and on manure characteristics (pH, and concentrations of total N, ammonium, VFA, and indolic, phenolic and sulphurous compounds). There were three dietary CP levels: 12, 15, and 18%. Each treatment was replicated six times、one replicate in each of six blocks, of which a block consisted of samples collected on the same day and from animals with similar initial body weight (BW). 」 (材料と方法 動物、実験デザインおよび飼料 6つのブロックに3つの処理を含むランダム化された完全ブロック配置を使用して、 臭気濃度、臭気放出、臭気強度、および肥育中の豚糞尿からのアンモニア放出に対するCPレベルの影響と、糞尿の特性(pH、総窒素、アンモニア、VFA、インドール化合物、フェノール化合物、硫黄化合物の濃度)に対する影響について調査した。飼料のCPレベルは12、15、18%の3種を用意した。 各実験は6回反復され、6つのブロックのそれぞれに1回の反復が行われ、1つのブロック内は同じ日に同様の初期体重(BW)をもつ豚で構成された。) (b) 735頁左欄40行~最下行 「ln total 18 growing barrows、Great Yorkshire ×(Great Yorkshire × Dutch Landrace) with an initial BW of 36.5±3.4 kg (mean±s.d.) were randomly allocated to one of the three diets within each of the six blocks. Pigs were penned individually in galvanised steel pens (2.1 × 0.96 m) with a slatted floor at the rear (0.97 × 0.96 m). There was a separate manure pit under the slatted floor of each pen. The volume of the manure pit was 1.35 × 0.91 × 0.36 m (length × width × depth). Pigs were penned in a mechanically ventilated and temperature-controlled room. Temperature and relative humidity were recorded every 5 min. The average temperature and relative humidity of the room during the experimental period were 21.0℃±0.84 and 50.0%±5.32 (mean±s.d.), respectively.」 (合計18頭の肥育豚のうち、 初期体重36.5±3.4kg(平均±s.d.)のグレートヨークシャー×(グレートヨークシャー×オランダランドレース)は、6つのブロックのそれぞれ3つの飼料のうちの1つにランダムに割り当てられた。豚は、後部にすのこ床(0.97×0.96m)を備えた亜鉛メッキ鋼製囲い(2.1×0.96m)に個別に入れられた。各囲いのすのこ床の下には個別の糞尿ピットを備えた。糞尿ピットの容積は1.35×0.91×0.36m(長さ×幅×深さ)だった。豚は機械的に換気され、温度管理された部屋に入れられた。温度と相対湿度は5分ごとに記録した。実験期間中の部屋の平均温度と相対湿度は、それぞれ21.0℃±0.84と50.0%±5.32(平均値±s.d.)であった。) (c) 735頁右欄1行~5行 「Three diets with dietary CP levels of 12, 15 and 18% were formulated. Barley was exchanged for soya-bean meal to increase the CP level. Diets had similar contents of net energy (NE), minerals, and vitamins but differed in CP levels by varying the amount of extracted soya-bean meal (Tables 1 and 2).」 (飼料中CPレベルを12、15、18%とした3種類の飼料を調製した。大麦を大豆粕に置換し、CPレベルを高めた。飼料は正味エネルギー(NE)、ミネラル、ビタミンの含有量は同程度であったが、大豆粕抽出物の含有量を変えることでCPレベルに差をつけた(表1および2)。) (d) 735頁右欄18行~20行 「Experimental diets were analysed for AA composition, ash、DM, CP, minerals, crude fibre, fat, starch, sugar and gross energy.」 (実験飼料はアミノ酸組成、灰分、固形物、CP、ミネラル、粗繊維、脂肪、デンプン、糖、総エネルギーについて分析された。) (e) 735頁右欄26行~736頁右欄22行 「Starch content was determined enzymatically according to the amyloglucosidase/hexokinase method (NEN 3574). Sugar was assayed according to the non-starch polysaccharides (NSP) procedure (Gelder et al., 1992). Crude fibre was determined gravimetrically after treatment with sulphuric acid and potassium hydroxide (ISO/DIS 6895). For total fat, samples were hydrolysed with chloric acid, followed by extraction of fat with petroleum ether. The Ca, P, Mg, Na, K, Cu and Zn contents were determined using the inductively coupled plasma atomic emission spectrometry (ICP-AES). The Cl content was determined by potentiometric titration of water-diluted solid samples with the chloride specific ion electrode (Jenway Chloride Meter, model PCLM3). For sulphate、samples were extracted with chloric acid. Sulphate was separated with ion chromatography using a water/sodium hydroxide gradient and an Ionpac AS 11 (Dionex) as column. Detection takes place by suppressed electric conductivity. Identification and quantification occur using an external standard solution. The DM was determined gravimetrically after 4 h at 103℃(ISO 6496). The content of ash was determined gravimetrically after ashing at 550℃(ISO 5984). Nitrogen content was determined by the Kjeldahl method (ISO 5983). The analysed dietary CP levels of 12% CP, 15% CP and 18% CP on an as-fed basis were 12.3、14.2 and 18.0%, respectively (Table 2). 」 (デンプン含量はアミログルコシダーゼ/ヘキソキナーゼ法(NEN 3574)に従って酵素的に測定した。糖分は非デンプン多糖類(NSP)法(Gelderら、1992)に従って測定した。粗繊維は硫酸と水酸化カリウム)(ISO/DIS 6895)で処理した後、重量法で測定した。総脂肪については、試料を塩素酸で加水分解した後、石油エーテルで脂肪を抽出した。Ca、P、Mg、Na、K、CuおよびZn含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)を用いて測定した。Cl含量は、水で希釈した固体試料を塩化物イオン電極(Jenway Chloride Meter, model PCLM3)で電位差滴定して測定した。硫酸塩については、試料を塩素酸で抽出した。硫酸塩は、水/水酸化ナトリウム勾配を用い、カラムにIon pac AS11 (Dionex)を用いたイオンクロマトグラフィーで分離した。検出は電気伝導度の抑制によって行われた。同定と定量は外部標準溶液を用いて行われた。DMは、103℃で4時間後に重量測定した(ISO 6496)。灰分は、550℃で灰化した後、重量法で測定した(IS05984)。窒素含有量はケルダール法(ISO 5983)で測定した。飼料中のCP濃度は、12%CP、15%CPおよび18%CPで、それぞれ12.3、14.2および18.0%であった(表2)。) (f) 表1 「 [図:0001422394000001.jpg] 」 (表1 [図:0001422394000002.jpg] ) (g) 表2 「 [図:0001422394000003.jpg] 」 (表2 [図:0001422394000004.jpg] ) (h) 736頁右欄23行~37行 「 Pigs were fed 2.8 times the maintenance NE requirement (293 k」/kg sw 0.75). Water was restrictedly provided by mixing feed with water in the ratio of 1/2.5 (w/w). Apart from water with feed no additional water was given to the pigs. So it was aimed to have the same amount of feed and water intake by the pigs to excrete almost a similar amount of manure. Pigs were fed two times per day at 0800 h and 1500 h. The amount of feed provided was adjusted each day according to the expected BW gain of 750 g/day. Feed intake was recorded every day. Pigs were weighed at the beginning and at the end of the experimental period just before the morning feeding. Daily weight gain and feed efficiency were obtained from the feed intake and the increase in BW during the experimental period. 」 (豚には維持NE要求量(293kJ/kg BW0・75) の2.8倍を給与した。水は飼料と水を1/2.5(w/w)の割合で混ぜて制限的に与えた。飼料に水を混ぜた以外は、豚に追加の水は与えなかった。飼料と水の摂取量が同じで、糞尿の排泄量がほぼ同じになるようにした。豚は1日2回、8時と15時に給餌された。給与量は予想される体重増加量750g/日に応じて毎日調整された。飼料摂取量は毎日記録した。豚の体重は実験期間の開始時と終了時に、朝の給餌の直前に測定した。1日の体重増加と飼料効率は、飼料摂取量と実験期間中の体重増加量から求めた。) (i) 736頁右欄38行~44行 「 After an adaptation period of 2 weeks to allow pigs to acclimatise to the experimental diets, pens and manure pits were cleaned. Subsequently, faeces and urine were accumulated together in the manure pit. In the 5th week of the collection period, air samples for odour and ammonia measurements and manure samples were collected for subsequent analyses.」 (豚が実験飼料に慣れるように2週間の適応期間を設けた後、囲いと糞尿ピットを清掃した。その後、糞便と尿を一緒に糞尿ピットに溜めた。採取期間の5週目に、臭気とアンモニア測定用の空気サンプルと、その後の分析用の糞尿サンプルを採取した。) (j) 739頁右欄22行~35行 「Effects of dietary CP level on manure characteristics and ammonia emission Tables 6 and 7, respectively, show the descriptive statistics and the analyses of variance of the effects of different dietary CP level on manure characteristics including VFA, indolic and phenolic and sulphurous compounds, total N and ammonium concentrations, pH and ammonia emission. Reduced dietary CP levels decreased total N, methyl sulphide, carbon disulphide, ethanethiol, phenol, indole, 3-methyl indole, and 4-ethyl phenol concentrations (P < 0.05), pH (P < 0.01) and ammonia emission from pig manure (P= 0.01). Reduced dietary CP levels caused a tendency to decrease ammonium concentration in pig manure (P = 0.07).」 (糞尿の特性とアンモニア排出に及ぼす飼料CPレベルの影響 表6および表7はそれぞれ、VFA、インドール化合物、フェノール化合物、硫黄化合物、総窒素量、アンモニア濃度、pH、アンモニア放出量を含む糞尿特性に及ぼす飼料CPレベルの影響に関する記述統計および分散分析を示している。飼料中のCPレベルを低下させると、豚糞尿中の総窒素量、メチルスルフィド、二硫化炭素、エタンチオール、フェノール、インドール、3-メチルインドール、4-エチルフェノール濃度(P<0.05)、pH(P<0.01)、アンモニア放出量(P=0.01)が低下した。飼料中CPレベルを低下させると、豚糞尿中のアンモニア濃度が低下する傾向がみられた(P=0.07)。) (k) 表6 「 [図:0001422394000005.jpg] 」 (表6 [図:0001422394000006.jpg] ) b 引用文献1の記載事項より認定できる事項 (a) 認定事項ア及び認定事項イ a(e)の記載事項及びa(g)に示した表2に記載された実験飼料の栄養組成における分析組成を参照すると、12%CP飼料及び15%CP飼料のCP(N×6.25)の値(CP濃度)が、それぞれ12.28%、14.2%である点(以下「認定事項ア」という。)が認定できる。 また、同表2の記載より、12%CP飼料及び15%CP飼料の粗繊維含有量が、それぞれ、3.26%、3.56%である点(以下「認定事項イ」という。)が認定できる。 (b) 認定事項ウ及び認定事項エ a(f)に示した表1に記載された実験飼料の成分組成を参照すると、12%CP飼料および15%CP飼料の糖蜜が30.0g/kgであることが示されていることから、12%CP飼料および15%CP飼料における糖蜜含量は3.0%である点(以下「認定事項ウ」という。)が認定できる。また、12%CP飼料および15%CP飼料は、大豆油を、それぞれ、15.2g/kg、19.4g/kg含有する点(以下「認定事項エ」という。)も認定できる。 c 引用発明1及び引用発明2 上記a及びbより、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。 「粗繊維含量が3.56%(認定事項イ)、CP濃度が14.24%(認定事項ア)、糖蜜含量が3.0%であり(認定事項ウ)、大豆油を含有する(認定事項エ)、初期体重36.5±3.4kg(a(b))の豚に与える15%CP飼料。」(以下「引用発明1」という。)」 「粗繊維含量が3.26%(認定事項イ)、CP濃度が12.28%(認定事項ア)、糖蜜含量が3.0%であり(認定事項ウ)、大豆油を含有する(認定事項エ)、初期体重36.5±3.4kg(a(b))の豚に与える12%CP飼料。」(以下「引用発明2」という。) d 引用文献1記載事項 上記a(a)及びa(j)の記載より、引用文献1には以下の点も記載されていると認められる。 「肥育中の豚糞尿からのアンモニア放出に対するCPレベルの影響と、糞尿の特定に対する影響について調査した結果、飼料中CPレベルを低下させると、豚糞尿中のアンモニア濃度が低下する傾向がみられた点。」(以下「引用文献1記載事項」という。) (イ) 引用文献2 a 引用文献2に記載された事項 引用文献2には、以下の記載がある。 (a) 73頁左欄13行~24行 「この豚のふん尿排泄量や性状に影響する主な要因(条件)としては,飼料の質や給与量,給飼, 給水方法(制限,不断),体重,飼養方法,飼養環境等が推測されるが,特に飼料の質と排ふん量および性状との関係については,相沢らは残飯の事例1),古橋らは”養豚飼料の高エネルギー化,低せんい化が排ふん量の少量化に著るしく影響することを報告2,3,4)している。 そこで本試験では,飼料栄養面からの対応として,ふんの少量・固型化により豚舎内でのふん尿分離促進をはかるため,飼料のエネルギー水準と粗せんい水準を段階的に設定した場合の排ふん尿量と理化学的性状との関係について一連の調査を実施した。」 (b) 73頁右欄1行~7行 「材料および方法 供試豚としては,日令,体重の近いランドレース半きようだい豚16頭・・・を用いた。うち去勢豚8頭については消化試験用ケージに単飼して定量(制限)給与,自由飲水とし,残る雌豚8頭については, コンクリート床開放豚房(2.7m×3.6m)に2頭づつ群飼して不断給与,自由飲水とした。」 (c) 73頁右欄表1 「 [図:0001422394000007.jpg] 」 (d) 73頁右欄下8行~最下行 「供試飼料は表1に示すように, エネルギー(TDN)および粗せんい水準が異なる4種の市販飼料と,とうもろこし,大豆粕,魚粉,ふすま,脱脂ぬか,アルファルファミール,イエローグリース等を主要原料として,エネルギー水準と粗せんい水準だけを段階的に変えて設計した8種の試作飼料を用いた。 また定量給与基準は,産肉能力検定の給与基準量を基に,他の栄養水準が異なる試験飼料についても,同一体重時にはほぼ等量のTDN量を与えるよう配慮した。」 (e) 74頁右欄13行~19行 「結果および考察 1. 飼料栄養水準と排泄量 (1) 排ふん量 給与飼料の栄養水準と排泄量の関係については表2に示すとおりで,試験次によって供試豚の体重や給飼量が異なるため,試験次の異なる区間の排泄量をそのまゝ比較することはできない。」 (f) 74頁表2 「 [図:0001422394000008.jpg] 」 (g) 75頁左欄18行~31行 「3,4次試験は2次とは逆に,TDN準を一定に保ち, 粗せんい水準を2%きざみで段差をつけたほか,1つの区についてはふんの固型化をねらいとして, ゼオライトを4%添加したものも加えて試験した。その結果,TDN80で粗せんいを6,4,2%と低せんい化した場合には,2次より明らかにふんの減少効果があり,80-6に対し80-2では, 粗せんい水準が1/3になるとふん量はほゞ1/2になったが, ゼオライト添加区では62%とやゝ多かった。TDN70で粗せんい水準を変えた4次の結果でも同様の傾向で, 低せんい化によりふん量は減少し,粗せんい水準が8%から4%に半減することにより,ふん量は69%に減少した。なお,粗せんいの消化率がふん量に大きな影響をもつことについては次項を参照されたい。」 (h) 81頁右欄16行~27行 「要約 ふん尿処理問題への対応としては,効率的な処理技術の開発だけでなく,飼料栄養面からふんの少量固型化をはかり,処理負荷を軽減する方策も望まれる。そこで飼料のTDNで65~85の5段階, 粗せんいで2~8%の4段階の差がある12種類の試験飼料を用いて,それらを給与した場合の排ふん尿量,ふんの一般性状,理化学的性状や消化率等につき一連の調査を実施し,次のような結果を得た。 1. 排ふん量は,TDN65の旧検定飼料100に対し,TDN80,粗せんい2%の高栄養低せんい飼料では約40%と少なく,固型化する傾向がみられた。」 b 引用文献2記載事項 上記a(a)~(h)より、引用文献2には、以下の点が記載されていると認められる。 「豚のふん尿排泄量に関して、給与飼料の粗せんいを6、4、2%と低せんい化した場合には、明らかにふんの減少効果があり、排ふん量は、粗せんい2%の高栄養低せんい飼料では少ない点。」(以下「引用文献2記載事項」という。) (ウ) 引用文献3(甲3) a 引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の記載がある。 (a) 757頁左欄1行~9行 「ABSTRACT: The effects of particle size and pelleting on growth performance, carcass characteristics, nutrient digestibility, and stomach morphology were determined using 160 finishing pigs. The pigs were fed a corn-soybean meal-based diet with the corn milled to particle sizes of 1,000, 800, 600, or 400 μm. The diets were fed in meal or pellet form. Pelleting the diets resulted in 5% greater ADG (P <.01) and 7% greater gain/feed (P <.001).」 「要約: 160 頭の仕上げ豚を使用して、成長パフォーマンス、屠体の特性、栄養素の消化率、および胃の形態に及ぼす粒子サイズとペレット化の影響を測定した。豚には、粒径1,000、800、600、または400 μmに粉砕したトウモロコシを含むトウモロコシと大豆ミールをベースとした飼料を与えた。飼料はミールまたはペレットの形で与えられた。飼料をペレット化すると、ADGが5%増加し(P<0.01)、増体量/飼料摂取量が7%増加した(P<0.001)。」 (b) 758頁右欄15行~20行 「The pelleted diets were processed with a 30-horsepower pellet mill(30 HD Master Model, California Pellet Mill, San Francisco, CA) using a 38-mm thick die with 4.8-mm diameter holes. Steam was used before pelleting to condition the diets to 75℃.」 「ペレット化飼料は、直径4.8mmの穴を備えた厚さ38mmのダイを使用して、30馬力のペレットミル (30 HD Master Model, California Pellet Mill, San Francisco, CA)で処理した。飼料を75℃に調整するために、ペレット化する前に蒸気を使用した。」 b 引用文献3記載事項 上記a(b)において、ペレット化するにあたって蒸気を使用して75℃にすることは、加熱加工であると認められるから、引用文献3には、「豚に与える飼料において、飼料を加熱加工し、ペレット化する点。」(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 (エ) 甲2 甲2のTable 3、Table 4等を参照すると、甲2には、豚用飼料のタンパク源である油糧種子ミールについてその固形物およびタンパク質の消化率を評価したところ、粗繊維含量が2.25~2.54%である大豆粕(SBM-KD、SBM-I及びSBM-K)配合飼料群は、粗繊維含量が相対的に多い他のタンパク源配合飼料よりも、消化率(%)が高かったとともに、総糞便排せつ量(g/日)及び糞中窒素排せつ量(g/日)が少なかったことが示されている。 (オ) 甲4 甲4の表1を参照すると、甲4には、「アミノ酸添加低可消化粗タンパク質飼料による肥育豚の窒素排泄量および糞尿由来アンモニアガス濃度の低減効果」を検討した試験において、粗タンパク質含量を15.8%(対照区飼料)から11.0%に低減し、原料として油脂が配合されていない肥育前期(体重30-70kg)の豚用飼料(試験区飼料)を調製し、前記試験区飼料を肥育前期の豚に給与すると、対照区飼料を給与した豚より排泄糞量及び糞尿中の窒素量が低減したことが記載されている。 (カ) 甲5 甲5のp.106~109に掲載された表より、エネルギー価の高い飼料原料として、油脂以外に、トウモロコシ、コーンスターチ、菓子屑等があることが認定できる。 (キ) 甲6 甲6には、養豚飼料の例として「豚検4号」の組成が表-1として示されており、その表-1に基づくと、「豚検4号」の飼料には、油脂が含まれないことが認定できる。 (ク) 甲7 甲7のp.J177右欄第1行~第5行には、マッシュ飼料をペレット化することで消化率が向上し、糞量が減少すること、高温・ 高圧を施すエキスパンダー処理での糞量低減効果は、ペレット加工と同程度であることが記載されている。 イ 本件訂正発明1について (ア) 引用発明1に基づく容易性に関して a 対比 本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。 (a) 本件訂正発明1の「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であ」ることと、引用発明1の「粗繊維含量が3.56%」、「CP濃度が14.24%」、「糖蜜含量が3.0%である」こととは、繊維、タンパク質、糖蜜を含有する点で一致する。 (b) 引用発明1における「初期体重36.5±3.4kg」「の豚」は、本件訂正発明1における「子豚」に相当し、引用発明1における「初期体重36.5±3.4kg」「の豚に与える15%CP飼料」と本件特許発明1における「子豚育成用飼料」は、「子豚に与える飼料」である点で一致する。 b 一致点及び相違点 上記a(a)及びa(b)より、本件訂正発明1と引用発明1は、以下の点で一致する。 <一致点> 繊維、タンパク質、糖蜜を含有する子豚に与える飼料。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1A>(構成1Aに関して) 本件訂正発明1は「粗繊維含量が2.0%」であるのに対して、引用発明1は「粗繊維含量が3.56%」である点。 <相違点1B>(構成1Bに関して) 本件訂正発明1は「粗タンパク質含量が13.0%」であるのに対して、引用発明1は「CP濃度が14.24%」である点。 <相違点1C>(構成1Cに関して) 本件訂正発明1は「糖蜜含量が2.3%」であるのに対して、引用発明1は「糖蜜含量が3.0%」である点。 <相違点1D>(構成1Dに関して) 本件訂正発明1は「原料として油脂が配合されて」いないことが特定されているのに対して、引用発明1は「大豆油を含有する」点。 <相違点1E>(構成1Eに関して) 本件訂正発明1は「加熱加工されている」飼料であるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。 <相違点1F>(構成1Fに関して) 本件訂正発明1は「窒素排せつ量を低減するための」飼料であるのに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。 <相違点1G>(構成1Fに関して) 本件訂正発明1は「子豚育成用」の飼料であるのに対して、引用発明1は、そのような用途の特定がされていない点。 c 相違点についての検討 相違点1A、1B、1C及び1Dは、いずれも「子豚育成用飼料」の組成に関する特定事項であるので、まとめて検討する。 引用文献1には、ア(ア)dに示した引用文献1記載事項が記載されており、引用文献2には、ア(イ)bに示した引用文献2記載事項が記載されており、引用文献3には、ア(ウ)bに示した引用文献3記載事項が記載されている。 しかしながら、いずれの文献にも、粗繊維含量を2.0%に特定すること、粗タンパク質含量を13.0%に特定すること、糖蜜含量を2.3%に特定すること、及び、原料として油脂が配合されていないことに関して、記載も示唆もされていない。 そして、「子豚育成用飼料」を構成する成分の含有量を異ならせれば、当該「子豚育成用飼料」によってもたらされる作用効果が異なるものとなることは当業者の技術常識であるから、上記の特定事項が、当業者が適宜なし得る設計的事項とはいえず、また、引用文献1~3の記載を参照しても、上記の特定事項を、当業者が容易に想到し得るものとする根拠が見いだせない。 してみると、相違点1A、1B、1C及び1Dに係る本件訂正発明1の構成は、甲1発明1に、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を適用することによって、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 また、相違点1A、1B、1C及び1Dに係る本件訂正発明1の構成は、甲2、甲4~7にも記載も示唆もされていないことから、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に加えて、さらに、甲2及び甲4~7に記載された事項を適用しても、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 d 小括 よって、他の相違点に係る本件訂正発明1の構成について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明1、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ) 引用発明2に基づく容易性に関して a 対比 本件訂正発明1と引用発明2とを対比する。 (a) 本件訂正発明1の「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であ」ることと、引用発明2の「粗繊維含量が3.26%」、「CP濃度が12.28%」、「糖蜜含量が3.0%である」こととは、繊維、タンパク質、糖蜜を含有する点で一致する。 (b) 引用発明2における「初期体重36.5±3.4kg」「の豚」は、本件訂正発明1における「子豚」に相当し、引用発明1における「初期体重36.5±3.4kg」「の豚に与える12%CP飼料」と本件特許発明1における「子豚育成用飼料」は、「子豚に与える飼料」である点で一致する。 b 一致点及び相違点 上記a(a)及びa(b)より、本件訂正発明1と引用発明2は、以下の点で一致する。 <一致点> 繊維、タンパク質、糖蜜を含有する子豚に与える飼料。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1A’>(構成1Aに関して) 本件訂正発明1は「粗繊維含量が2.0%」であるのに対して、引用発明2は「粗繊維含量が3.26%」である点。 <相違点1B’>(構成1Bに関して) 本件訂正発明1は「粗タンパク質含量が13.0%」であるのに対して、引用発明2は「CP濃度が12.28%」である点。 <相違点1C’>(構成1Cに関して) 本件訂正発明1は「糖蜜含量が2.3%」であるのに対して、引用発明2は「糖蜜含量が3.0%」である点。 <相違点1D>(構成1Dに関して) 本件訂正発明1は「原料として油脂が配合されて」いないことが特定されているのに対して、引用発明2は「大豆油を含有する」点。 <相違点1E>(構成1Eに関して) 本件訂正発明1は「加熱加工されている」飼料であるのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。 <相違点1F>(構成1Fに関して) 本件訂正発明1は「窒素排せつ量を低減するための」飼料であるのに対して、引用発明2は、そのような特定がない点。 <相違点1G>(構成1Fに関して) 本件訂正発明1は「子豚育成用」の飼料であるのに対して、引用発明2は、そのような用途の特定がされていない点。 c 相違点についての検討 相違点1A’、1B’、1C’及び1Dは、いずれも「子豚育成用飼料」の組成に関する特定事項であるので、まとめて検討する。 相違点1A’、1B’、1C’及び1Dに係る本件訂正発明1の構成は、上記(ア)bに示した相違点1A、1B、1C及び1Dに係る本件訂正発明1の構成と同じものである。 してみると、上記(ア)cにおいて検討したとおり、相違点1A’、1B’、1C’及び1Dに係る本件訂正発明1の構成は、甲1発明2に、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を適用することによって、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 また、相違点1A’、1B’、1C’及び1Dに係る本件訂正発明1の構成は、甲2、甲4~7にも記載も示唆もされていないことから、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に加えて、さらに、甲2及び甲4~7に記載された事項を適用しても、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 d 小括 よって、他の相違点に係る本件訂正発明1の構成について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明2、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、甲2、及び、甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、相違点1A’、1B’、1C’及び1Dに係る本件訂正発明1の構成は、甲2、甲4~7にも記載も示唆もされていないことから、引用文献1記載事項、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に加えて、さらに、甲2及び甲4~7に記載された事項を適用しても、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明1についてのまとめ 以上のことから、本件訂正発明1は、引用文献1~3に記載された発明、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件訂正発明3について 本件訂正発明3は本件訂正発明1を引用するものであり、上記相違点1A、1B、1C及び1Dに係る本件訂正発明1の構成を備えるものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、引用文献1~3に記載された発明、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件訂正発明5について 本件訂正発明5は、「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、加熱加工されていることを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与することを含む育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」の発明であり、本件訂正発明1の「糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料」を「育成期の子豚に給与することを含む、育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」の発明である。 そして、本件訂正発明1が、上記イに示したように、引用文献1~3に記載された発明、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことから、本件訂正発明1の「子豚育成用飼料」を「育成期の子豚に給与することを含む」「方法」の発明である本件訂正発明5についても、引用文献1~3に記載された発明、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 本件訂正発明6について 本件訂正発明6は、「粗繊維含量が2.0%、粗タンパク質含量が13.0%、糖蜜含量が2.3%であり、原料として油脂が配合されておらず、かつ、エキスパンダー加工されていることを特徴とする、糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料を育成期の子豚に給与することを含む、育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」の発明であり、本件訂正発明3の「糞量及び窒素排せつ量を低減するための子豚育成用飼料」を「育成期の子豚に給与することを含む、育成期の子豚の糞量及び窒素排せつ量を低減する方法」の発明である。 そして、本件訂正発明3が、上記ウに示したように、引用文献1~3に記載された発明、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことから、本件訂正発明3の「子豚育成用飼料」を「育成期の子豚に給与することを含む」「方法」の発明である本件訂正発明6についても、引用文献1~3に記載された発明、甲2及び甲4~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 カ 令和6年5月22日付け意見書(申立人)の概要 申立人は、上記意見書とともに、甲4~甲7を提出し、本件特許は、令和6年2月9日付け取消理由通知書に記載された取消理由3又は申立理由により取り消されるべき旨を主張している。 しかしながら、甲2及び甲4~7には、粗繊維含量を2.0%に特定すること、粗タンパク質含量を13.0%に特定すること、糖蜜含量を2.3%に特定すること、及び、原料として油脂が配合されていないことに関して、記載も示唆もされていないことから、甲2及び甲4~7を参照しても、上記相違点1A、1B及び1Cに係る本件訂正発明1の構成を充足することができず、また、上記相違点1A、1B及び1Cに係る本件訂正発明1の構成が、当業者が適宜なし得る設計的事項であることの根拠を見いだすことはできない。 よって、上記意見書における申立人の主張を参酌しても、本件訂正後の請求項1、3、5及び6に係る特許を取り消す根拠は見いだせない。 キ 取消理由3及び申立理由についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由3及び申立理由によっては、本件訂正後の請求項1、3、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1、3、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1、3、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2及び4は、本件訂正により削除された。これにより、請求項2及び4に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。

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2023-701145

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    共通の審決分類: 121・A23K、537・A23K
  • 2023-701293異議申立 / 2024-09-19 / 訂正認容ドライペットフード
    共通の審決分類: 121・A23K、537・A23K
  • 2021-700950異議申立 / 2023-03-02 / 訂正認容菜種皮及びその用途
    共通の審決分類: 121・A23K、537・A23K
  • 2018-700901異議申立 / 2019-06-06 / 請求成立(取消)プロバイオティクス微生物を含有するペットフード調製物
    共通の審決分類: 121・A23K、537・A23K
  • 2017-700552異議申立 / 2018-03-20 / 訂正認容採食性が優れた乳牛飼育用飼料及び当該飼料を用いた乳牛の飼育方法
    共通の審決分類: 121・A23K、537・A23K

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