特許異議申立
2025-700983
ポリプロピレンフィルム及び蒸着ポリプロピレンフィルム並びに積層フィルム
- 審判番号
- 2025-700983
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-175272
- 登録番号
- 7667367
- 請求日
- 2025年10月10日
- 審決日
- 2026年01月06日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】フタムラ化学株式会社
- 【異議申立人】岩崎 千鶴子
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 長清 吉範
- 審判官 佐藤 秀之
- 分類
- P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7667367号発明「ポリプロピレンフィルム及び蒸着ポリプロピレンフィルム並びに積層フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7667367号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7667367号の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和6年10月4日に出願された特願2024-175272号であって、令和7年4月14日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報の発行日は令和7年4月22日)、その後、その請求項1~13に係る特許に対し、令和7年10月10日に特許異議申立人岩崎千鶴子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7667367号の請求項1~13の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれの請求項に係る発明を「本件発明1」等という。)。
「【請求項1】
第一表層と第二表層の少なくとも2層からなるポリプロピレンフィルムであって、
前記第一表層と前記第二表層は、ともにアンチブロッキング剤を含有し、
前記第一表層の三次元表面粗さにおける算術平均粗さをSRa1(μm)、前記第二表層の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数をSPc2(個)、としたときに下記式(i)に示される耐傷付き性の値を満たす
ことを特徴とするポリプロピレンフィルム。
【数1】
[図:0001432102000001.jpg]
【請求項2】
前記第二表層に含有されるアンチブロッキング剤の窒素吸着法により求められた細孔容積をV2(ml/g)、としたときに下記式(ii)に示される耐傷付き性の値を満たす請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【数2】
[図:0001432102000002.jpg]
【請求項3】
前記第一表層に蒸着による蒸着層が形成される請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
JIS Z 8741(1997)に準拠して測定した前記第一表層の光沢度が110%以上である請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
前記第一表層に表面処理が施されている請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
前記ポリプロピレンフィルムが無延伸フィルムである請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
前記第一表層に含有されるアンチブロッキング剤の窒素吸着法により求められた細孔容積が0.5~1.3ml/gであり、レーザー回析法により測定された平均粒径が2.5~4.5μmである請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
ともにアンチブロッキング剤を含有する第一表層と第二表層の少なくとも2層からなるポリプロピレンフィルムの前記第一表層に蒸着層が形成された蒸着フィルムであって、
前記蒸着層の算術平均高さをSa1(μm)、前記第二表層の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数をSPc2(個)、としたときに下記式(iii)に示される耐傷付き性の値を満たす
ことを特徴とする蒸着ポリプロピレンフィルム。
【数3】
[図:0001432102000003.jpg]
【請求項9】
前記第二表層に含有されるアンチブロッキング剤の窒素吸着法により求めた細孔容積をV2(ml/g)、としたときに下記式(iv)に示される耐傷付き性の値を満たす請求項8に記載の蒸着ポリプロピレンフィルム。
【数4】
[図:0001432102000004.jpg]
【請求項10】
JIS Z 8741(1997)に準拠して測定した前記蒸着層の光沢度が720%以上である請求項8又は9に記載の蒸着ポリプロピレンフィルム。
【請求項11】
前記ポリプロピレンフィルムが無延伸フィルムである請求項8又は9に記載の蒸着ポリプロピレンフィルム。
【請求項12】
前記第一表層に含有されるアンチブロッキング剤の窒素吸着法により求められた細孔容積が0.5~1.3ml/gであり、レーザー回析法により測定された平均粒径が2.5~4.5μmである請求項8又は9に記載の蒸着ポリプロピレンフィルム。
【請求項13】
請求項8又は9に記載の蒸着ポリプロピレンフィルムを用いた積層フィルムであって、前記蒸着ポリプロピレンフィルムの前記蒸着層側にポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリプロピレン系フィルムのいずれかからなる積層用基材フィルムが少なくとも1層積層されてなることを特徴とする積層フィルム。」
第3 申立理由の概要
申立人による申立理由は、概略以下のとおりである。
申立理由 本件特許の請求項1~13に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~13に係る特許を取り消すべきものである。
本件特許の発明の詳細な説明には、「無延伸」のポリプロピレンフィルムしか具体例をもって確認されていない。下記甲第1号証のとおり、「延伸」ポリプロピレンフィルムと「無延伸」ポリプロピレンフィルムとは、耐傷付き性又は与傷付け性が異なる。そうすると、延伸ポリプロピレンフィルムの場合でも課題が解決できると当業者が認識できないから、延伸ポリプロピレンフィルムを含む本件発明1~13は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
甲第1号証(以下「甲1」という。):「OPP(二軸延伸フィルム)はCPP(無延伸フィルム)と比べ何がどう優れているか?」、[online]、2021年7月28日、株式会社アイエヌジー、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20210727222942/http://www.ing-cdbukuro.com/column/post-19/>
第4 当審の判断
1 申立理由について(サポート要件違反)
(1)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある。(「・・・」は省略を意味する。下線は当審が付した。以下、同様である。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、第一表層と第二表層の少なくとも2層からなるポリプロピレンフィルム及びポリプロピレンフィルムを使用した蒸着ポリプロピレンフィルム並びに蒸着ポリプロピレンフィルムを使用した積層フィルムに関し、特に蒸着や印刷加工に好適なポリプロピレンフィルム及び蒸着ポリプロピレンフィルム並びに積層フィルムに関する。
・・・
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、蒸着加工や印刷加工が施されるフィルム表面の耐傷付き性能に優れたポリプロピレンフィルム及び蒸着ポリプロピレンフィルム並びに積層フィルムを提供するものである。
・・・
【0050】
各表層にアンチブロッキング剤が添加されたポリプロピレンフィルムでは、フィルム表面の微細な凹凸によってフィルム同士が擦れ合った場合等にフィルム表面が傷付くことが懸念される。そこで、本発明のポリプロピレンフィルム10では、第一表層20を傷付けられる側の表層、第二表層30を傷付ける側の表層と想定して、第一表層20の三次元表面粗さにおける算術平均粗さと、第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数とに着目し、これらのパラメータ同士の関係と耐傷付き性との相関を見出して、各表層20,30にアンチブロッキング剤が含有されたポリプロピレンフィルム10の耐傷付き性の指標を導いた。
【0051】
すなわち、本発明のポリプロピレンフィルム10は、第一表層20の三次元表面粗さにおける算術平均粗さをSRa1(μm)、第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数をSPc2(個)、としたときに下記式(i)に示される耐傷付き性の値を満たすものである。
【0052】
【数5】
[図:0001432102000005.jpg]
【0053】
三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(SRa1)は、高さ方向のパラメータであって、粗さ曲面からその中心面上に直交座標軸X,Y軸をおき、中心面に直交する軸をZ軸とし、粗さ曲面と中心面で囲まれた部分の体積を測定範囲で除した値である。三次元表面粗さにおける算術平均粗さは、値が大きいほどフィルム表面が荒れていることを示し、傷付けられる側の表層においてはフィルム表面が傷付けられにくくなる傾向を示す。ポリプロピレンフィルム10において、第一表層20は傷付けられる側の表層となることから、第一表層20の三次元表面粗さにおける算術平均粗さSRa1(μm)は、第一表層20の表面の傷付けられにくさの指標となり、算術平均粗さSRa1が大きい値であるほどポリプロピレンフィルムの耐傷付き性能が向上する傾向にあるといえる。
【0054】
三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数(SPc2)は、表層の凹凸の程度を表すパラメータである。傷付ける側の表層において、高さが所定値(1μm)以上の山は、擦れ合う相手側のフィルム表面を傷付けやすいと考えられ、その山数が多くなるほど相手側のフィルム表面がより傷付きやすくなる傾向を示す。ポリプロピレンフィルム10において、第二表層30は傷付ける側の表層となることから、第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数SPc2(個)は、第二表層30による相手方の第一表層20の表面への傷付けやすさの指標となり、山高さ1μm以上の山数SPc2が小さい値であるほどポリプロピレンフィルム10の耐傷付き性能が向上する傾向にあるといえる。
【0055】
前記式(i)の左辺は、これら2つの指標を用いて表されたポリプロピレンフィルムの耐傷付き性である。後述の実施例から、式(i)で表される耐傷付き性の値が2100以下を満たすことにより、ポリプロピレンフィルム10の第二表層30による第一表層20に対しての傷が生じにくくなるのである。
【0056】
式(i)において、第一表層20の表面の傷付けられにくさの指標である三次元表面粗さにおける算術平均粗さSRa1は、式(i)の分母であることから、算術平均粗さSRa1が小さくなるほど耐傷付き性の値が大きくなり、第一表層20が平滑化されて第二表層30により第一表層20が傷付けられやすくなることを示す。そこで、第一表層20の好ましい算術平均粗さSRa1は、0.01~0.15μm、より好ましくは0.02~0.08μmである。第一表層20の算術平均粗さSRa1が小さすぎると第一表層20の荒れ具合が不足して第一表層20が傷付けられやすくなるおそれがある。算術平均粗さSRa1が大きすぎると、第一表層20が荒れすぎて蒸着フィルムとしての機能が低下するおそれがある。
【0057】
また、式(i)の分子には、第二表層30による傷付けやすさの指標である山高さ1μm以上の山数SPc2が用いられる。山高さ1μm以上の山数SPc2の値が大きくなるほど耐傷付き性の値が大きくなり、第二表層30が第一表層20を傷付けやすくなることを示す。
【0058】
第二表層30の凹凸の高さの指標である三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数SPc2は、山高さ1μm以上の山数SPc2が多くなるほど分子の値が大きくなり、第一表層20を傷付けやすくなることを示す。そこで、第二表層30の好ましい山高さ1μm以上の山数SPc2は3~200個、より好ましくは5~130個である。山高さ1μm以上の山数SPc2が少なすぎると、アンチブロッキング剤による耐ブロッキング性等の性能が不足するおそれがある。山高さ1μm以上の山数SPc2が多すぎると、山数が過剰となって第一表層20を傷付けやすくなるおそれがある。
・・・
【0067】
本発明のポリプロピレンフィルム10では、耐傷付き性能の評価としてスクラッチヘーズを用いた。スクラッチヘーズは、フィルム同士を擦り合わせた際のフィルム表面の耐傷付き性(耐スクラッチ性)を示す指標であり、擦り合わせた後のフィルムのヘーズと擦り合わせる前のフィルムのヘーズとの差から求めた値である。ヘーズは、JIS K 7136(2000)に準拠して測定されるフィルムの透明性を表す指標であり、数値が低いほど透明性に優れることを示す。
【0068】
スクラッチヘーズの値は、高いほど擦り合わせによりフィルム表面が多く傷付き透明性が損なわれたことを示し、低いほど擦り合わせによるフィルム表面の傷付きが少なく透明性が損なわれていないことを示す。ポリプロピレンフィルム10では、蒸着フィルムとして使用する場合、スクラッチヘーズは低い方が好ましい。本発明のポリプロピレンフィルム10では、スクラッチヘーズが10%以下、より好ましくは6.5%以下とされるのがよい。スクラッチヘーズが高すぎると、フィルムの耐傷付き性能が十分でなく、蒸着フィルムとされた際にはフィルムが曇って見える等、外観が劣るおそれがある。スクラッチヘーズが10%以下であれば、擦り合わせによって生じる第一表層20(蒸着面21)の傷付きは抑制されているといえるため、運搬時や加工時のフィルム同士の擦れによるフィルムの意匠性の低下を抑えることができる。
・・・
【0074】
蒸着ポリプロピレンフィルムでは、基材フィルムに蒸着を施した後の巻き取り等の際に、ポリプロピレンフィルムと同様に、フィルム表面の微細な凹凸によってフィルム同士が擦れ合ってフィルム表面が傷付くことが懸念される。そこで、本発明の蒸着ポリプロピレンフィルム50では、蒸着層60を傷付けられる側の表層、第二表層30を傷付ける側の表層と想定して、蒸着層の算術平均高さと、第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数に着目し、蒸着ポリプロピレンフィルム50の耐傷付き性の指標を導いた。
【0075】
すなわち、本発明の蒸着ポリプロピレンフィルムは、蒸着層60の算術平均高さをSa1(μm)、第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数をSPc2(個)、としたときに下記式(iii)に示される耐傷付き性の値を満たすものである。
【0076】
【数7】
[図:0001432102000006.jpg]
【0077】
蒸着層60の算術平均高さ(Sa1)は、高さ方向のパラメータであって、各測定点の平均面からの高さの差の絶対値の平均を表した値である。蒸着層60は傷付けられる側の表層となることから、蒸着層60の算術平均高さSa1(μm)は、蒸着層60の表面の傷付けられにくさの指標となり、算術平均高さSa1が大きい値であるほどポリプロピレンフィルムの耐傷付き性能が向上する傾向にあるといえる。
【0078】
第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数SPc2(個)は、前記の通り、第二表層30による相手方の蒸着層60の表面への傷付けやすさの指標である。
【0079】
前記式(iii)の左辺は、これら2つの指標を用いて表された蒸着ポリプロピレンフィルムの耐傷付き性である。後述の実施例から、式(iii)で表される耐傷付き性の値が130以下を満たすことにより、蒸着ポリプロピレンフィルム50の第二表層30による蒸着層60に対しての傷が生じにくくなるのである。
【0080】
式(iii)において、蒸着層60の表面の傷付けられにくさの指標である算術平均高さSa1は、式(iii)の左辺の分母であることから、算術平均高さSa1が小さくなるほど耐傷付き性の値が大きくなり、蒸着層60が平滑化されて第二表層30により蒸着層60が傷付けられやすくなることを示す。そこで、蒸着層60の好ましい算術平均高さSa1は、0.2~1.5μm、より好ましくは0.3~0.8μmである。蒸着層60の算術平均高さSa1が小さすぎると蒸着層60の荒れ具合が不足して蒸着層60が傷付けられやすくなるおそれがある。算術平均高さSa1が大きすぎると、蒸着層60が荒れすぎて蒸着フィルムとしての機能が低下するおそれがある。
【0081】
式(iii)の左辺の分子は、前出の式(i)と同様である。蒸着層60を傷つける側の表層として、傷付けやすさの指標である山高さ1μm以上の山数SPc2が指標として用いられる。
・・・
【0086】
本発明の蒸着ポリプロピレンフィルム50では、耐傷付き性能の評価としてスクラッチ全光線透過率を用いた。スクラッチ全光線透過率は、フィルム同士を擦り合わせた際のフィルム表面の耐傷付き性(耐スクラッチ性)を示す指標であり、擦り合わせた後のフィルムの最大全光線透過率と擦り合わせる前のフィルムの最大全光線透過率との差から求めた値である。スクラッチ全光線透過率は、数値が低いほど擦り合わせた後の光の透過性に優れることを示し、16%以下であることが好ましい。スクラッチ全光線透過率が高すぎると、蒸着ポリプロピレンフィルムの耐傷付き性能が十分でなく、外観が劣るおそれがある。スクラッチ全光線透過率が16%以下であれば、擦り合わせによって生じる蒸着層60の傷付きは抑制されているといえるため、運搬時や加工時のフィルム同士の擦れによるフィルムの意匠性の低下を抑えることができる。
・・・
【実施例】
【0091】
[ポリプロピレンフィルムの作製]
試作例1~33のポリプロピレンフィルムの作製に際し、後述する各材料を所定の配合割合(重量%)に基づいて混練、溶融してTダイ法にて共押出し、冷却ロールで冷却させた後、第一表層にコロナ放電処理を施して無延伸ポリプロピレンフィルムを製膜した。試作例1,4,5,30のフィルムは第一表層(蒸着面)と第二表層(ヒートシール面)からなる2層のフィルムであり、試作例2,3,6~29,31~33は第一表層(蒸着面)と中間層と第二表層(ヒートシール面)からなる3層のフィルムである。各試作例1~33のフィルムの厚さは25μmとした。試作例1~33の各層に使用された材料について、後述の表1~5に示した。
・・・
【0137】
[耐傷付き性の算出]
三次元表面粗さの測定によって求めた第一表層の三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(SRa1)及び第二表層の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数(SPc2)を用いて式(i)に基づき耐傷付き性1の値を算出した。また、第一表層の三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(SRa1)、第二表層の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数(SPc2)及び第二表層に含まれるアンチブロッキング剤の細孔容積(V2)とを用いて、式(ii)に基づき耐傷付き性2の値を算出した。
【0138】
[スクラッチヘーズの測定]
擦り合わせる前のフィルムのヘーズ(%)を、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター「NDH-8000(日本電色工業株式会社製)」を用いて測定した。次に、試作例ごとに試験片を3つずつ用意して、摩擦測定器「FRICTION TESTER TR(株式会社東洋精機製作所製)」を使用し、JIS K 7125(1999)を参考に、試験テーブル側に試験片の第二表層を、滑り片側に第一表層を設置し、滑り片を1度滑らせ、第一表層と第二表層を擦り合わせた。・・・
【0139】
続いて、擦り合わせた滑り片側のフィルムのヘーズを6箇所測定し、最大値(最大ヘーズ)を読み取った。ここで、擦り合わせる前に測定したフィルムのヘーズをH1(%)、擦り合わせた後の試験片3個の最大ヘーズの平均値をH2(%)とし、スクラッチヘーズ(ΔH=H2-H1)を求めた。得られたスクラッチヘーズの値が6.5%以下の場合を「優(◎)」、10%以下の場合を「良(○)」、10%より大きい場合を「不可(×)」として評価した。
・・・
【0146】
[結果と考察(1)]
表6~10から理解されるように、試作例1~33のポリプロピレンフィルムでは、試作例1~26のフィルムのスクラッチヘーズが良好であったが、試作例27~33のフィルムのスクラッチヘーズが不良であった。
【0147】
スクラッチヘーズが良好な試作例1~26では、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)が0.027~0.070μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が8~117個、第二表層のアンチブロッキング剤(以下、AB剤)の細孔容積(V2)が0.80~1.25ml/gであった。一方、良好なスクラッチヘーズが得られなかった試作例27~33では、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)が0.027~0.046μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が64~117個、第二表層のAB剤の細孔容積(V2)が0.80ml/gであり、いずれも試作例1~26の各物性を測定した数値範囲に含まれる。そのため、フィルムの物性について好ましい条件を個別に特定することは困難であると考えられる。
【0148】
そこで、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)と、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)に基づいて表した耐傷つき性1(SPc2/SRa1)の値について検討すると、試作例1~26では耐傷つき性1の値が186~1671であった。これに対し、試作例27~33では、耐傷つき性1の値が2133~3407であり、いずれも試作例1~26を上回る値であった。そうすると、(SPc2/SRa1)で表されるフィルムの物性は、フィルムの耐傷付き性を表す指標として有効であるといえる。そして、試作例1~26と試作例27~33の結果から、耐傷付き性として好ましい関係は、(SPc2/SRa1)≦2100であると考えられる。
・・・
【0151】
以上の通り、本発明のポリプロプレンフィルムでは、(SPc2/SRa1)で表される耐傷付き性1の値が2100以下であることを満たすことにより、スクラッチヘーズが良好となることが示された。また、{(SPc2/V2)/SRa1}で表される耐傷付き性2の値が2600以下であることを満たすことにより、スクラッチヘーズが良好となることが示された。特に、各試作例から理解されるように、フィルムの個別の物性から良好な耐傷付き性が得られる条件を特定することが困難であるため、フィルムの特定の物性同士の関係性を耐傷付き性能の指標として用いることの有意性も示されたといえる。
【0152】
[蒸着ポリプロピレンフィルムの作製]
試作例1,2,4~33のポリプロピレンフィルムについて、第一表層に蒸着加工を施して蒸着ポリプロピレンフィルムを作製した。蒸着加工では、抵抗加熱真空蒸着装置(マシン・テクノロジー株式会社製)を用いて、各ポリプロピレンフィルムにアルミ蒸着膜厚が350Å、真空度が9E-03Paになるようにアルミ蒸着を行った。得られた各試作例1,2,4~33のアルミ蒸着ポリプロピレンフィルムの評価に関し、蒸着層の算術平均高さSa1(μm)、スクラッチ全光線透過率(%)、光沢度(%)を測定した。また、前記の第二表層のアンチブロッキング剤の細孔容積と第二表層の山高さ1μm以上の山数の測定結果、さらに蒸着層の算術平均高さの測定結果に基づいて耐傷付き性3及び4を算出した。各測定の結果及びその評価を後述の表11~15に示した。
・・・
【0154】
[蒸着ポリプロピレンフィルムの耐傷付き性の算出]
レーザースコープによって求めた蒸着層の算術平均高さ(Sa1)及び第二表層の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数(SPc2)を用いて式(iii)に基づき耐傷つき性3を算出した。また、蒸着層の算術平均高さ(Sa1)、第二表層の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数(SPc2)及び第二表層に含まれるアンチブロッキング剤の細孔容積(V2)とを用いて、式(iv)に基づき耐傷付き性4の値を算出した。
【0155】
[スクラッチ全光線透過率の測定]
擦り合わせる前の蒸着ポリプロピレンフィルムの全光線透過率(%)をヘーズメーター「NDH-8000(日本電色工業株式会社製)」を用いて測定した。次に、試作例ごとに試験片を3つずつ用意して、摩擦測定器「FRICTION TESTER TR(株式会社東洋精機製作所製)」を使用し、JIS K 7125(1999)を参考に、試験テーブル側に試験片の第二表層を、滑り片側に蒸着層を設置し、滑り片を1度滑らせ、蒸着層と第二表層を擦り合わせた。・・・
【0156】
続いて、擦り合わせた滑り片側の蒸着ポリプロピレンフィルムの全光線透過率を6箇所測定し、最大値(最大全光線透過率)を読み取った。ここで、擦り合わせる前に測定した蒸着ポリプロピレンフィルムの全光線透過率をT1(%)、擦り合わせた後の試験片3個の最大全光線透過率の平均値をT2(%)とし、スクラッチ全光線透過率(ΔT=T2-T1)を求めた。得られたスクラッチ全光線透過率の値が16%以下の場合を「優(◎)」、16%より大きい場合を「不可(×)」として評価した。
・・・
【0159】
【表12】
[図:0001432102000007.jpg]
【0160】
【表13】
[図:0001432102000008.jpg]
【0161】
【表14】
[図:0001432102000009.jpg]
【0162】
【表15】
[図:0001432102000010.jpg]
【0163】
[結果と考察(2)]
表11~15から理解されるように、試作例1,2,4~33の蒸着ポリプロピレンフィルムでは、試作例1,2,4~8,10~14,16~26のフィルムのスクラッチ全光線透過率が良好であったが、試作例9,15,27~33のフィルムのスクラッチ全光線透過率が不良であった。
【0164】
スクラッチ全光線透過率が良好な試作例1,2,4~8,10~14,16~26では、第一表層の算術平均高さ(Sa1)が0.37~0.72μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が8~117個、第二表層のAB剤の細孔容積(V2)が0.80~1.25ml/gであった。一方、良好なスクラッチ全光線透過率が得られなかった試作例9,15,27~33では、第一表層の算術平均高さ(Sa1)が0.037~0.046μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が64~117個、第二表層のAB剤の細孔容積(V2)が0.80ml/gであり、いずれも試作例1,2,4~8,10~14,16~26の各物性を測定した数値範囲に含まれる。
【0165】
そこで、蒸着層の算術平均高さ(Sa1)と、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)に基づいて表した耐傷つき性3(SPc2/Sa1)の値について検討すると、試作例1,2,4~8,10~14,16~26では耐傷つき性3の値が13~128であった。これに対し、これに対し、試作例9,15,27~33では、耐傷つき性3の値が136~221であり、いずれも試作例1,2,4~8,10~14,16~26を上回る値であった。そうすると、(SPc2/Sa1)で表されるフィルムの物性は、フィルムの耐傷付き性を表す指標として有効であるといえる。そして、試作例1,2,4~8,10~14,16~26と試作例9,15,27~33の結果から、耐傷付き性として好ましい関係は、(SPc2/Sa1)≦130であると考えられる。
・・・
【0168】
以上の通り、本発明の蒸着ポリプロプレンフィルムでは、(SPc2/Sa1)で表される耐傷付き性3の値が130以下であることを満たすことにより、スクラッチ全光線透過率が良好となることが示された。また、{(SPc2/V2)/Sa1}で表される耐傷付き性の値4が165以下であることを満たすことにより、スクラッチ全光線透過率が良好となることが示された。また、本発明のポリプロピレンフィルムと同様に、蒸着ポリプロプレンフィルムにおいてもフィルムの個別の物性から良好な耐傷付き性が得られる条件を特定することが困難であるため、フィルムの特定の物性同士の関係性を耐傷付き性能の指標として用いることの有意性も示されたといえる。」
(2)判断
上記第2のとおり、本件発明は、パラメータ発明に関するものであるところ、このような発明において、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するためには、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当事者に理解できる程度に記載するか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数式が示す範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当事者が認識できる程度に、具体例を開示して記載することを要するものと解することを要する。かかる観点から以下検討する。
ア 本件発明の解決しようとする課題
上記(1)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「第一表層と第二表層の少なくとも2層からなるポリプロピレンフィルム及びポリプロピレンフィルムを使用した蒸着ポリプロピレンフィルム並びに蒸着ポリプロピレンフィルムを使用した積層フィルムに関し」(【0001】)、「蒸着加工や印刷加工が施されるフィルム表面の耐傷付き性能に優れたポリプロピレンフィルム及び蒸着ポリプロピレンフィルム並びに積層フィルムを提供するものである」(【0006】)と認められる。
イ 課題を解決するための手段
(ア)本件発明1~7
本件発明1~7は、課題を解決する手段として式(i)を含んでいるところ、その構成するパラメータ及び式(i)の技術的意義について、発明の詳細な説明に記載された事項を確認する。
a 第一表層の算術平均粗さ(SRa1)に関して
上記(1)の【0053】の記載より、式(i)に用いられているパラメータである第一表層の算術平均粗さ(SRa1)に関して次の事項が把握できる。
「三次元表面粗さにおける算術平均粗さは、値が大きいほどフィルム表面が荒れていることを示し、傷付けられる側の表層においてはフィルム表面が傷付けられにくくなる傾向を示す」ことになるから、「第一表層20の三次元表面粗さにおける算術平均粗さSRa1(μm)は、第一表層20の表面の傷付けられにくさの指標とな」る。
そして、「算術平均粗さSRa1が大きい値であるほどポリプロピレンフィルムの耐傷付き性能が向上する」こととなる。
b 第二表層の山高さ1μm以上の山数(SPc2)に関して
上記(1)の【0054】の記載より、式(i)に用いられているパラメータである第二表層の山高さ1μm以上の山数(SPc2)に関して次の事項が把握できる。
「傷付ける側の表層において、高さが所定値(1μm)以上の山は、擦れ合う相手側のフィルム表面を傷付けやすいと考えられ、その山数が多くなるほど相手側のフィルム表面がより傷付きやすくなる傾向を示す」ことになるから、「第二表層30の三次元表面粗さにおける山高さ1μm以上の山数SPc2(個)は、第二表層30による相手方の第一表層20の表面への傷付けやすさの指標となる。
そして、「山高さ1μm以上の山数SPc2が小さい値であるほどポリプロピレンフィルム10の耐傷付き性能が向上する」こととなる。
c 耐傷付き性1として好ましい関係に関して
式(i)で示される耐傷付き性1の値とスクラッチヘーズとの関係について、実施例を確認する。
【0147】には、「スクラッチヘーズが良好な試作例1~26では、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)が0.027~0.070μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が8~117個」であって、「良好なスクラッチヘーズが得られなかった試作例27~33では、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)が0.027~0.046μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が64~117個」であることが記載されている。
そして、良好なスクラッチヘーズが得られなかった試作例27~33と、スクラッチヘーズが良好な試作例1~26とで、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)に関する数値範囲が重複するから、第一表層の算術平均粗さ(SRa1)又は第二表層の1μm以上の山数(SPc2)の数値とスクラッチヘーズが良好かどうかとの関係性を見いだすことは困難といえる。
一方、【0148】には、「第一表層の算術平均粗さ(SRa1)と、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)に基づいて表した耐傷つき性1(SPc2/SRa1)の値について検討すると、試作例1~26では耐傷つき性1の値が186~1671」であり、「試作例27~33では、耐傷つき性1の値が2133~3407であり、いずれも試作例1~26を上回る値」であることが記載されているから、耐傷つき性1の値は、スクラッチヘーズが良好かどうかに関係があることが見いだせる。
そうすると、【0148】のとおり、「(SPc2/SRa1)で表されるフィルムの物性は、フィルムの耐傷付き性を表す指標として有効である」といえる。ここで、スクラッチヘーズが良好な試作例1~26は、(SPc2/SRa1)≦2100という条件を満たし、良好なスクラッチヘーズが得られなかった試作例27~33は、当該条件を満たしていない。
d 上記a~cから、(SPc2/SRa1)の値は、フィルムの耐傷付き性を表す指標として有効であり、この値がある数値以下であればスクラッチヘーズが良好である、という機序を当業者は理解できるといえる。
そして、【実施例】では、ポリプロピレンフィルムにおいて、(SPc2/SRa1)≦2100であれば、フィルム表面の耐傷付き性能に優れたポリプロピレンフィルムであることが示されており、当該機序を裏付ける結果となっているから、本件発明1は、ポリプロピレンフィルムの具体例の開示がなくとも当事者に理解できる程度に記載されており、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
また、本件発明2~7についても、本件発明1と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
(イ)本件発明8~13
上記第2のとおり、本件発明8は、第一表層に蒸着層が形成された蒸着フィルムであり、前記蒸着層の算術平均高さをSa1(μm)としたとき、式(iii)に示される耐傷付き性の値を満たすものであるから、上記(ア)と同様に、式(iii)の技術的意義について、発明の詳細な説明に記載された事項を確認する。
e 耐傷付き性3として好ましい関係について
上記(ア)cと同様に、式(iii)で示される耐傷付き性3の値とスクラッチ全光線透過率との関係について、実施例を確認する。
【0164】には、「スクラッチ全光線透過率が良好な試作例1,2,4~8,10~14,16~26では、第一表層の算術平均高さ(Sa1)が0.37~0.72μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が8~117個」と記載されている。また、【0158】~【0162】、【0164】の記載より、良好なスクラッチ全光線透過率が得られなかった試作例9,15,27~33では、第一表層の算術平均高さ(Sa1)が0.37~0.72μm、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)が64~117個であると認められる。
そして、第一表層の算術平均高さ(Sa1)、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)の値は、スクラッチ全光線透過率が不良であった試作例9,15,27~33と、スクラッチ全光線透過率が良好な試作例1,2,4~8,10~14,16~26とで、数値範囲が重複するから、上記(ア)cと同様に、第一表層の算術平均高さ(Sa1)又は第二表層の1μm以上の山数(SPc2)の数値とスクラッチ全光線透過率が良好かどうかとの関係性を見いだすことは困難である。
一方、【0165】には、「蒸着層の算術平均高さ(Sa1)と、第二表層の1μm以上の山数(SPc2)に基づいて表した耐傷つき性3(SPc2/Sa1)の値について検討すると、試作例1,2,4~8,10~14,16~26では耐傷つき性3の値が13~128」であり、「試作例9,15,27~33では、耐傷つき性3の値が136~221であり、いずれも試作例1,2,4~8,10~14,16~26を上回る値」であることが記載されているから、耐傷付き性3の値は、スクラッチ全光線透過率が良好かどうかに関係があることが見いだせる。
そうすると、【0165】のとおり、「(SPc2/Sa1)で表されるフィルムの物性は、フィルムの耐傷付き性を表す指標として有効である」といえる。ここで、スクラッチ全光線透過率が良好な試作例1,2,4~8,10~14,16~26は、(SPc2/Sa1)≦130という条件を満たし、スクラッチ全光線透過率が不良であった試作例9,15,27~33は、当該条件を満たしていない。
f 上記(ア)a~c、(イ)eから、上記(ア)dと同様に、(SPc2/Sa1)の値は、フィルムの耐傷付き性を表す指標として有効であり、この値がある数値以下であればスクラッチ全光線透過率が良好である、との機序を当業者は理解できるといえる。
そして、【実施例】では、ポリプロピレンフィルムにおいて、(SPc2/Sa1)≦130であれば、フィルム表面の耐傷付き性能に優れた蒸着フィルムであることが示されており、当該機序を裏付ける結果となっているから、本件発明8は、ポリプロピレンフィルムの具体例の開示がなくとも当事者に理解できる程度に記載されており、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
また、本件発明9~13についても、本件発明8と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書3(4)(4-4)(4-4-1)オ~カ、(4-4-2)オ~カにおいて、「ポリプロピレンは、延伸により、物理的特性が変化して、表面に傷が付きにくくなることが技術常識(例えば、甲第1号証の「2:CPP袋と比較して物理的特性はここまで変わる・・・4. 表面特性が向上 光沢だけでなくフィルム表面の滑りがよくなります。同時に耐摩耗性も高まるため傷が付きにくくなります。」との記載を参照)であることからすると、延伸ポリプロピレンの耐傷付き性、又は、与傷付け性は、無延伸ポリプロピレンフィルムと同じとはいえない。・・・延伸ポリプロピレンフィルムについては具体例をもって確認されていないから、延伸ポリプロピレンフィルムの場合、・・・所望の効果(性能)が得られると当業者が認識できる程度に、具体例を開示して記載されているとはいえない。」、「ポリプロピレンフィルムについて「無延伸」であることを特定しておらず、「延伸」されたポリプロピレンフィルムを包含するところ、ポリプロピレンフィルムが「無延伸」であることを特定しない」本件発明1、8は発明の詳細な説明に記載されたものではない旨、主張する。
確かに、申立人が主張するとおり、「ポリプロピレンは、延伸により、物理的特性が変化して、表面に傷が付きにくくなること」は技術常識であると認められる。
ここで、上記イ(ア)aのとおり、「三次元表面粗さにおける算術平均粗さは、値が大きいほどフィルム表面が荒れていることを示し、傷付けられる側の表層においてはフィルム表面が傷付けられにくくなる傾向を示す」ため、「無延伸」ポリプロピレンフィルムと、「延伸」ポリプロピレンフィルムとで、算術平均粗さが同等である場合は、「無延伸」ポリプロピレンフィルムに比べ、「延伸」ポリプロピレンフィルムは更に、傷付けられにくくなることは当業者であれば理解できる。
よって、「延伸」ポリプロピレンフィルムに比べ、傷付けられやすい「無延伸」ポリプロピレンフィルムにて耐傷付き性を評価している本件発明1、又は本件発明8において、延伸ポリプロピレンフィルムの場合であっても、所望の効果(性能)が得られると解するのが妥当であるため、当該申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1~13は特許法第36条第6項第1項の規定に適合するから、申立理由は理由がない。
第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700983