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特許異議申立

2025-700963

袋

審判番号
2025-700963
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-035581外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7659366
請求日
2025年10月07日
審決日
2025年11月28日
公報発行日
2025年12月26日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (B65D) / 標準データ:手続:異議 / 標準データ:651・121-Y (B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)

事件の表示

特許第7659366号発明「袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7659366号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

特許第7659366号の請求項1、2に係る特許についての出願は、令和7年4月1日にその特許権の設定登録がされ、令和7年4月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年10月7日に特許異議申立人和田由希子(以下「申立人」という。)により、その請求項1、2に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明

請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
蒸気抜き機構を有する袋であって、
積層体と、
前記積層体の内面同士が接合されたシール部と、を備え、
続きを表示(全17行)
前記積層体は、外面側から内面側へ、第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラント層(但し、水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含むポリプロピレン系フィルムからなるシーラント層を除く)をこの順で少なくとも備え、
前記第1延伸プラスチックフィルムは、ポリエステルを主成分として含み、
前記第2延伸プラスチックフィルムは、ポリアミドを主成分として含み、
前記第2延伸プラスチックフィルムの流れ方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とする場合、前記第1方向における前記第2延伸プラスチックフィルムの引張強度が、前記第2方向における前記第2延伸プラスチックフィルムの引張強度の1.05倍以上であり、
前記第1方向における前記第2延伸プラスチックフィルムの引張強度は、200MPa以上且つ300MPa以下であり、
前記シーラント層は、第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂と、を含む未延伸フィルムであり、
前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、
第2の熱可塑性樹脂は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、
第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高くなっており、
25℃のときの15mm幅における前記シール部の常温シール強度が40N以上であり、
100℃のときの15mm幅における前記シール部の熱間シール強度が15N以下である、袋。
【請求項2】
前記袋の幅方向が前記第1方向である、請求項1に記載の袋。」

第3 申立理由の概要

申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

また、申立人は、下記2に示した甲第1号証~甲第7号証(それぞれ「甲1」等という。)を証拠として申立書に添付している。

1 申立理由(甲1を主引例とする進歩性)

請求項1、2に係る特許は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 証拠

甲1:特開2017-57008号公報
甲2:特開2013-79085号公報
甲3:特開2006-321493号公報
甲4:特開2005-59872号公報

甲5:“ユニアスロンTBグレード 直線カットグレード”、[online]、[2025年9月30日検索]、出光ユニテック株式会社、インターネット<URL:https://www.idemitsu.com/jp/iut/product/film/unilon-uniaslon/unilon_tb.pdf>(申立人の添付した甲第5号証の「ユニアスロンTBグレード 直線カットグレード」の箇所)

甲6:特開2000-211022号公報
甲7:寺西正芳、外1名、“東レフィルム加工の高機能フィルム”、[online]、2016年(平成28年)12月28日、一般社団法人日本食品包装協会、インターネット
<URL:https://shokuhou.jp/wp-content/uploads/2016/12/a1004a9c214b1dac46edd933e9545749.pdf>

第4 当審の判断

1 甲号証の記載について

(1)甲1について

ア 甲1の記載

甲1には、以下の記載がある。下線は当審で付した。「・・・」は省略を示す。以下同様。

「【0016】
<電子レンジ用パウチの全体構成>
図1を参照して、本実施形態に係る電子レンジ用パウチ100の全体構成について説明する。本実施形態に係る電子レンジ用パウチ100は、一対のフィルム110の周縁が熱溶着によりシールされることにより構成される。本実施形態においては、両側縁側に形成される一対のサイドシール部121と、底縁側に形成されるボトムシール部122と、上縁側に形成されるトップシール部123とにより、周縁シール部120が設けられる。これら周縁シール部120(121,122,123)内部の密閉領域が、内容物が収容されるパウチ収容部130となっている。そして、このパウチ収容部130が設けられる範囲内に、平面形状が扁平形状であり、楕円形の孔形状である蒸気抜き部140が形成されている。」
「【0046】
<フィルムの構成>
・・・図8は、電子レンジ用パウチ100に用いられるフィルム110の断面を拡大した断面図を示しており、一般的に多層構造をなしている。本実施形態に係るフィルム110は、基材樹脂層111と、バリア性樹脂層112と、易引き裂き性樹脂層113と、ヒートシール性樹脂層114と、これらの各層間をそれぞれ接着するための接着層115とから構成されている。」
「【0047】
<<基材樹脂層>>
パウチの外面側となる基材樹脂層111としては、一般的なパウチにおける基材樹脂フィルムとして使用されている樹脂フィルムを採用することができる。この基材樹脂層111としては、機械的強度が高いフィルムを用いるのが望ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体等のポリアミドフィルムを好適例として挙げられる。これらのフィルムは、一軸又は二軸延伸したフィルムとして用いられる。これらの延伸フィルムの中でも、機械的強度、耐クラック性、耐熱性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いることができる。」
「【0049】
<<易引き裂き性樹脂層>>
易引き裂き性樹脂層113としては、易引き裂き性が付与された、一軸(MD方向)又は二軸(MD方向及びTD方向)に延伸加工が施された、ポリプロピレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどを採用することができる。易引き裂き性樹脂層113の具体例としては、東レ(株)製のトレファンBO YTシリーズ、電気化学工業(株)製のカラリヤン、東京インキ(株)製のハイブロン、ノーブレン、出光ユニテック(株)製のユニアスロン、ユニチカ(株)製のエンブレムNC、エンブレットPCなどが挙げられる。易引き裂き性樹脂層113は、その延伸方向がパウチを開封する際の引き裂き方向と一致するように設けられることで、開封時のパウチ表裏の引き裂き幅のずれ(いわゆるカットずれ)の発生が抑制され、易開封性を向上させることができる。なお、易引き裂き性樹脂層113を設ける位置は、図8に示す位置に限られず、どの位置に積層させてもよい。また、図8に示すように、易引き裂き性樹脂層113を単独で設けても良いし、他の層に易引き裂き性を付与させてもよい。」
「【0050】
<<ヒートシール性樹脂層>>
パウチの内面側に設けられるヒートシール性樹脂層114としては、パウチに用いられている一般的なヒートシール性樹脂を用いることができる。より具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー等の樹脂からなるフィルムを好適例として挙げることができる。」
「【0053】
<<その他>>
上述した各種の層の他に、他の機能を有する層を設けることもできる。例えば、パウチの耐突き刺し性や耐落下衝撃性等を向上させるために、耐衝撃性樹脂層を設けることもできる。」

イ 甲1発明

上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「電子レンジ用パウチ100であって、
電子レンジ用パウチ100は、一対のフィルム110の周縁が熱溶着によりシールされることにより周縁シール部120が設けられて構成され、
周縁シール部120内部の密閉領域が、内容物が収容されるパウチ収容部130となっており、このパウチ収容部130が設けられる範囲内に、蒸気抜き部140が形成され(【0016】)、
フィルム110は、多層構造をなし、基材樹脂層111と、バリア性樹脂層112と、易引き裂き性樹脂層113と、ヒートシール性樹脂層114と、これらの各層間をそれぞれ接着するための接着層115とから構成され(【0046】)、
パウチの外面側となる基材樹脂層111として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い(【0047】)、
易引き裂き性樹脂層113として、易引き裂き性が付与された、一軸(MD方向)又は二軸(MD方向及びTD方向)に延伸加工が施された、ポリプロピレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどを採用し(【0049】)、
ヒートシール性樹脂層114として、一般的なヒートシール性樹脂を用いた(【0050】)、
電子レンジ用パウチ100。」

(2)甲2~甲4について

ア 甲2の記載

甲2には、以下の記載がある。

「【請求項2】
前記食品接触層が、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)と、ブテン-1を15質量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体と、を含有する樹脂組成物であって、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(I)65~85質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(II)15~35質量%と含有し、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(III)85~95質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(IV)5~15質量%とを含有する樹脂組成物からなる請求項1記載のシーラント。」
「【請求項5】
請求項1~3のうちいずれか一項記載のシーラントを用いたことを特徴とする積層体。
【請求項6】
前記積層体を用いたことを特徴とする電子レンジ用包装袋。」
「【0001】
本発明は、シーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋に関し、詳しくは、電子レンジ用包装袋に用いることで、その内容物の風味の劣化を抑制することができ、かつ、輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によって剥離することなく、電子レンジでの加熱時に内圧により容易に剥離するシーラント、それを用いた積層体および電子レンジ用包装袋に関する。」
「【0019】
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)と、ブテン-1を15質量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体と、を含有する樹脂組成物であって、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)が、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(I)65~85質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(II)15~35質量%と含有し、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2質量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(III)85~95質量%と、エチレン含量が20~95質量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(IV)5~15質量%と、を含有する樹脂組成物を好適に用いることができる。かかる樹脂組成物を食品接触層4に適用することで、上記物性を容易に満足させることができる。」
「【0026】
しかしながら、これらの成分を必須の主成分とする樹脂組成物においてプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)含量の増加は柚子肌適性の低下につながるおそれがあり、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)含量の増加はレトルト殺菌後のヒートシール強度の低下および耐寒衝撃性の低下につながるおそれがあり、エチレン-ブテン-1共重合体含量の増加はレトルト殺菌後のヒートシール強度の低下につながるおそれがある。そのため、本発明においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の含量を25~50質量%、プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)の含量を25~70質量%、エチレン-ブテン-1共重合体の含量を5~30質量%の範囲内とすることが好ましい。この範囲外においては、ヒートシール適性・柚子肌適性・耐寒衝撃性のいずれかが劣ったヒートシール性フィルムとなる場合があり好ましくない。」
「【0078】
本発明の電子レンジ用包装袋100においては、コの字状シール部を、図3(b)に示すように、胴部シール部105と連結して設けることが好ましい。これにより、電子レンジで加熱すると、コの字状シール部109に圧力が集中してかかるため、コの字状シール部109の縁部からシール剥離して、未シール部110内に形成される切欠111等を通って、内容物より発生する蒸気を速やかに袋外に排出することができる。また、コの字状シール部109を形成する際、胴部シール部105とコの字状シール部109とを一体で生産性良くシール加工できるという利点も有している。」

イ 甲3の記載

甲3には、以下の記載がある。

「【0012】
本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、図1(a)に示すように、胴部を構成する四角形からなる前面2と後面3の底部に、底面4を逆V字状に折り畳んで挿入し、天部シール部7を残して、当該前面2と当該後面3と当該底面4の周縁部をそれぞれヒートシールして、胴部シール部5、および、底部シール部6を形成し、内容物を充填後、更に、天部シール部7をヒートシールして密封して包装体とするものであって、かつ、充填した内容物により前記の底部が前後に拡張して自立できる形態の自立性包装袋である。
上記において、当該天部シール部7または胴部シール部6と連結してコの字状シール部9を設け、当該コの字状シール部9に囲まれた未シール部19を当該胴部シール部5に一部未シール部16を設けて外部と連通させてなる構成である。
本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、周縁シール部、すなわち、天部シール部7、胴部シール部5、および、底部シール部6は、袋の密封のために設けられたものであり、コの字状シール部9は、電子レンジによる加熱に際して蒸気を逃がす為に設けられたものである。
更に、当該胴部シール部5の一部を未シール部16とすることによって、電子レンジによる加熱に際して、内容物から発生する水蒸気で袋内の内圧が上昇し、コの字状シール部9が剥離後退して未シール部19に到達すると、当該胴部シール部5の未シール部16から速やかに安定して蒸気が抜け、容易で安全に自動開封することができる。
また、従来と比較して、切込みや切欠を形成する工程が必要なく、胴部シール部5や天部シール部7とコの字状シール部9とを一体でヒートシール加工可能であり、同時に易蒸通手段となる未シール部16、19を形成することができるので、生産性が大幅に向上するものであり、かつ、切込みや切欠の際に発生する抜きカスが、包装袋に付着または混入するおそれがないため、衛生性にも優れるものである。」
「【0022】
前記のシーラント層15において、とりわけ、低温時(0℃)および常温時(25℃)において十分なシール強度があり、電子レンジ加熱時(90℃以上)にシール強度が低く、速やかに剥離する性質を有する熱接着性樹脂層として、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものを使用することが好ましい。
この混合樹脂の各組成物の配合割合は、第1成分としてのプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、第2成分としてのプロピレン-エチレンブロック共重合体(B)と、第3成分としてのブテン-1を15重量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体とを必須成分とし、第1成分としての前記のプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2重量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(I)65~85重量%と、エチレン含量が20~95重量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(II)15~35重量%とからなり、第2成分としての前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2重量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(III)85~95重量%と、エチレン含量が20~95重量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(IV)5~15重量%の範囲で用いるのが適当である。」

ウ 甲4の記載

甲4には、以下の記載がある。

「【0020】
本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、周縁シール部、すなわち、天部シール部7、胴部シール部5、および、底部シール部6は、袋の密封のために設けられたものであり、コの字状シール部9は、電子レンジによる加熱に際して蒸気を逃がす為に設けられたものである。」
「【0055】
前記のシーラント層15において、とりわけ、低温時(0℃)および常温時(25℃)において十分なシール強度があり、電子レンジ加熱時(90℃以上)にシール強度が低く、速やかに剥離する性質を有する熱接着性樹脂層として、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものを使用することが好ましい。」
「【0056】
この混合樹脂の各組成物の配合割合は、第1成分としてのプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、第2成分としてのプロピレン-エチレンブロック共重合体(B)と、第3成分としてのブテン-1を15重量%以上含有するエチレン-ブテン-1共重合体とを必須成分とし、第1成分としての前記のプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2重量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(I)65~85重量%と、エチレン含量が20~95重量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(II)15~35重量%とからなり、第2成分としての前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン単独重合体またはエチレン含量が2重量%以下のプロピレン-エチレン共重合体よりなるプロピレンブロック(III)85~95重量%と、エチレン含量が20~95重量%のエチレン-プロピレン共重合体ブロック(IV)5~15重量%の範囲で用いるのが適当である。」

エ 甲2~甲4に基づく周知技術

上記ア~ウの記載から、以下の事項は周知技術(以下「周知技術」という。)であると認められる。

「加熱時に内圧により蒸気抜き機構のシールを剥離される電子レンジ用包装袋に用いる積層体において、シーラント層の樹脂組成物を、第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物であり、第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、第2の熱可塑性樹脂は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高いものとすること。」

(3)甲5について

ア 甲5の記載

甲5には、以下の記載がある。

「
[図:0001430050000001.jpg]
」
「
[図:0001430050000002.jpg]
」

イ 甲5に記載されていると認められる事項

上記ア、特に表中、引張強度としてMD280MPa、TD260MPaと記載されていることから、甲5には、ユニアスロンTBグレードにおいて、MD方向の引張強度はTD方向の引張強度の約1.08倍(=280÷260)であることが記載されていると認められる。

ウ 甲5に記載された事項

上記ア及びイより、甲5には、以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「ボイル・レトルト食品に至るまで幅広い用途に適する、出光ユニテック株式会社が製造するユニアスロンTB-1000/1010は、MD方向の引張強度が、TD方向の引張強度の約1.08倍であり、MD方向における引張強度が280MPaである、直線カット性ナイロンフィルムであること。」

(4)甲6について

ア 甲6の記載

甲6には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】食品、医薬品、雑貨等の包装には、各種プラスチックフィルム製の包装袋が大量に使用されており、通常、二軸延伸されたプラスチックフィルムとヒートシール可能な無配向フィルムとをラミネートしたものが用いられている。
【0003】特に、二軸延伸ポリアミドフィルムはガスバリア性に優れるため、食品などを長期保存する上で好適な包装材料である。包装袋に要求される特性としては、強度と、開封するときの易引裂性の一見相反すると思われる2つの特性を兼備していることが要求される。従来、包装袋に開封性を与えるためには、ミシン目、ティアテープ、あるいはノッチを付したりするという工夫がなされている。しかし、このような従来の方法では、新たに加工工程を追加することが必要であり、また、フィルムの強度が低下するという問題がある。また、一軸延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートする方法があるが、引き裂くために大きな力を要したり、あるいは、包装袋を直線的に引き裂けないというトラブルがしばしば発生する。このような場合、開封と同時に内容物が飛散して内容物が無駄になったり、また、衣服や調度品を汚したり、あるいは、内容物が熱い場合、火傷の原因になったりするというトラブルが生じる。」
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、ポリアミドフィルムの強靱性と優れた透明性と厚み均一性を有し、かつ、フィルムの長手方向に引き裂いた際の直進性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して生産することができる方法を提供しようとするものである。」
「【0024】
・・・
(5)引張強度(kgf/mm2)
幅10mm、試料長100mmの試料を用いて、ASTM D882に準じて測定した。」
「【0025】実施例1
N6(ユニチカ社製、商品名:A1030BRF、相対粘度3.10)およびMXD6(三菱瓦斯化学社製、商品名:MXナイロンS6907、相対粘度2.40)を80:20(重量比)で混合したポリアミド組成物を、200mmφダムフライトタイプのスクリューを備えた押出機を使用して、スクリュー計量部における最大せん断速度40s-1、押出機内における樹脂の滞留時間を2分、シリンダー内における樹脂の最高温度270℃の条件で、CDR=8.0としてTダイよりシート状に押し出した。押し出した未延伸シートを、表面温度15℃に温調された回転するキャストロールに密着急冷し、厚み約150μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートを60℃の温水中で1分間処理した後、テンター式同時二軸延伸機のクリップに把持し、延伸温度185℃、延伸倍率を縦および横方向に3.0×3.3倍の条件で延伸した後、205℃で4秒間の熱処理を施して、厚み約15μmの二軸延伸フィルムを得た。熱処理の際、巾方向に5%の弛緩処理を施した。得られた二軸延伸フィルムの引張強度、厚み均一性、長手方向の引裂直進性および切断復旧性を測定した結果を表1に示した。」
「【0031】
【表1】
[図:0001430050000003.jpg]
」

イ 甲6に記載されていると認められる事項

上記アより、甲6には、以下の事項が記載されていると認められる。

実施例1の、N6/MXD6重量比が80/20である二軸延伸フィルムにおいて、MD方向の引張強度はTD方向の引張強度の約1.09倍(=24÷22)であること。(【表1】)。

ウ 甲6に記載された事項

上記ア及びイより、甲6には、以下の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「N6(ユニチカ社製、商品名:A1030BRF、相対粘度3.10)およびMXD6(三菱瓦斯化学社製、商品名:MXナイロンS6907、相対粘度2.40)を80:20(重量比)で混合したポリアミド組成物から得られた食品包装袋に用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムは、引き裂いた際の直進性に優れ、MD方向の引張強度はTD方向の引張強度の約1.09倍であり、MD方向における引張強度が24kgf/mm2(=約235MPa)であること。」

(5)甲7について

ア 甲7の記載

甲7には、以下の記載がある。

「図9は、高温雰囲気下のヒートシール強度の低下を調べたデーターで、電子レンジで蒸気を抜くようなパウチを設計する場合、内圧の上昇にあわせてヒートシール部の抜けやすさを選択することも可能である。」(2.(3)ハイレトルト用CPPフィルムの項目、第8ページ下から6~下から4行目)

「
[図:0001430050000004.jpg]
図9 高温雰囲気下のヒートシール強度の低下」

イ 甲7に記載された事項

上記アより、甲7には、以下の事項(以下「甲7記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「電子レンジで蒸気を抜くようなパウチを設計する場合、内圧の上昇にあわせてヒートシール部の抜けやすさを選択できるよう、高温雰囲気下のヒートシール強度の低下に着目すること。」

2 本件発明1について

(1)対比

本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の「電子レンジ用パウチ100」は本件発明1の「袋」に相当し、以下同様に、「多層構造をな」す「フィルム110」は「積層体」に、「周縁シール部120」は「シール部」に、それぞれ相当するから、甲1発明の「電子レンジ用パウチ100は、一対のフィルム110の周縁が熱溶着によりシールされることにより周縁シール部120が設けられて構成され、周縁シール部120内部の密閉領域が、内容物が収容されるパウチ収容部130となって」いることは、本件発明1の「積層体と、前記積層体の内面同士が接合されたシール部と、を備え」ることに相当する。

また、甲1発明の「蒸気抜き部140」は本件発明1の「蒸気抜き機構」に相当する。

さらに、甲1発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い」た「基材樹脂層111」は本件発明1の「第1延伸プラスチックフィルム」に相当し、以下同様に、「一軸(MD方向)又は二軸(MD方向及びTD方向)に延伸加工が施された」「易引き裂き性樹脂層113」は「第2延伸プラスチックフィルム」に、「ヒートシール性樹脂層114」は「シーラント層」に、それぞれ相当するから、甲1発明の「フィルム110」が「基材樹脂層111と、バリア性樹脂層112と、易引き裂き性樹脂層113と、ヒートシール性樹脂層114と、これらの各層間をそれぞれ接着するための接着層115とから構成され」、「基材樹脂層111」が「パウチの外面側となる」ことは、本件発明1の「前記積層体は、外面側から内面側へ、第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラント層」「をこの順で少なくとも備え」ることに相当する。

加えて、甲1発明の「基材樹脂層111として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い」ることは、本件発明1の「前記第1延伸プラスチックフィルムは、ポリエステルを主成分として含」むことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

ア 一致点

「蒸気抜き機構を有する袋であって、
積層体と、
前記積層体の内面同士が接合されたシール部と、を備え、
前記積層体は、外面側から内面側へ、第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラント層をこの順で少なくとも備え、
前記第1延伸プラスチックフィルムは、ポリエステルを主成分として含む、袋。」

イ 相違点1

シーラント層について、本件発明1では「(但し、水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含むポリプロピレン系フィルムからなるシーラント層を除く)」ものであって、「第1の熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂と、を含む未延伸フィルムであり、前記第1の熱可塑性樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、第2の熱可塑性樹脂は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含み、第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高くなって」いるのに対して、甲1発明の「ヒートシール性樹脂層114」はそのようなものであるか不明である点。

ウ 相違点2

第2延伸プラスチックフィルムについて、本件発明1は、「ポリアミドを主成分として含み、前記第2延伸プラスチックフィルムの流れ方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とする場合、前記第1方向における前記第2延伸プラスチックフィルムの引張強度が、前記第2方向における前記第2延伸プラスチックフィルムの引張強度の1.05倍以上であり、前記第1方向における前記第2延伸プラスチックフィルムの引張強度は、200MPa以上且つ300MPa以下であ」るのに対して、甲1発明の「易引き裂き性樹脂層113」はそのようなものであるか不明である点。

エ 相違点3

本件発明1は、「25℃のときの15mm幅における前記シール部の常温シール強度が40N以上であり、100℃のときの15mm幅における前記シール部の熱間シール強度が15N以下である」のに対して、甲1発明はそのようなものであるか不明である点。

(2)判断

事案に鑑み相違点2について検討する。

甲5には、上記1(3)ウのとおりの甲5記載事項が記載されており、また、甲6には、上記1(4)ウのとおりの甲6記載事項が記載されており、これらの甲5記載事項及び甲6記載事項は、相違点2において特定される第二延伸プラスチックフィルムと同様の物性を有する直線カット性のナイロンフィルムを示すものであると認められる。

しかしながら、甲5記載事項及び甲6記載事項は、「第一延伸プラスチックフィルムは、ポリエステルを主成分として含」むものにおいて、「第二延伸プラスチックフィルムは、ポリアミドを主成分として含」むことは示しておらず、基材樹脂層111(第1延伸プラスチックフィルム)と易引き裂き性樹脂層113(第2延伸プラスチックフィルム)との積層体として構成されてなる甲1発明において、易引き裂き性樹脂層113にかえて甲5記載事項又は甲6記載事項を適用しようとする動機付けは存在しない。

ここで、甲1には、「易引き裂き性樹脂層113としては、易引き裂き性が付与された、一軸(MD方向)又は二軸(MD方向及びTD方向)に延伸加工が施された、ポリプロピレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどを採用することができる。・・・具体例としては、・・・出光ユニテック(株)製のユニアスロン・・・などが挙げられる。」(【0049】)と記載されている。

しかしながら、甲1の【0049】に列挙されている中からポリアミドフィルムである「出光ユニテック(株)製のユニアスロン」を敢えて採用する動機付けは認められず、易引き裂き性樹脂層113のMD方向及びTD方向の引張強度の関係及び引張強度の程度を規定することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

そして、本件発明1は、本件明細書の【0039】の記載からみて、「第二延伸プラスチックフィルムは、ポリアミドを主成分として含」む構成により、積層体の突き刺し強度も高めるという効果を奏すると認められる。他方、甲1では、パウチの耐突き刺し性のために、他の層として耐衝撃性樹脂層を設けることが記載されており(【0053】)、易引き裂き性樹脂層113に耐突き刺し性も具備するようにすることは記載も示唆もされていない。

したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

また、申立人が提出したその他の証拠を参照しても、同様である。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2について

本件発明2は、直接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。

したがって、上記2に示したことと同様に、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび

したがって、申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2025-700963

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