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特許異議申立

2025-700946

電気化学セル

審判番号
2025-700946
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-514170
登録番号
7668957
請求日
2025年10月01日
審決日
2026年03月16日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本碍子株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
  • 【異議申立人】岸本 雅樹
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 木村 貴俊
分類
P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M) / P1651.14 -Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7668957号発明「電気化学セル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7668957号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7668957号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、令和5年2月17日(優先権主張 令和4年4月5日、日本)を国際出願日とする出願であって、令和7年4月17日にその特許権の設定登録がなされ、同年4月25日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1に係る特許に対し、令和7年10月1日に特許異議申立人 岸本雅樹(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年12月3日に異議申立人より特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出されたもの(以下、手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書のことを「異議申立書」という。)である。 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 セリウムを含むイオン伝導性材料を含有する水素極と、 酸素極と、 前記水素極及び前記酸素極の間に配置される電解質と、 を備え、 前記水素極は、前記電解質と反対側の表面から8μm以内の第1部分と、前記表面から8μm超の第2部分とを有し、 前記第1部分のイオン伝導度は、前記第2部分のイオン伝導度より低く、 前記第2部分は、前記電解質と直接的に接触しており、 前記第1部分は、Niと、イットリア、セリア及びガドリアの固溶体とを含有し、 前記第2部分は、Niと、希土類元素が添加されたセリア系酸化物とを含有する、 電気化学セル。」 第3 申立理由の概要 1 特許異議の申立理由 異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。 (1)申立理由1(新規性) 本件発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(発明該当性) 本件発明は、特許法第29条柱書に規定される発明に該当しないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものである。 2 異議申立人の提出した証拠 異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開2017-27854号公報 甲第2号証:R. Gerhardt-Anderson et al.、IONIC CONDUCTIVITY OF CeO2 WITH TRIVALENT DOPANTS OF DIFFERENT IONIC RADII、Solid State Ionics 5、p547-550、1981 甲第3号証:K. Eguchi et al.、Electrical properties of ceria-based oxides and their application to solid oxide fuel cells、Solid State Ionics 52、p165-172、1992 甲第4号証:特開2012-23017号公報 第4 異議申立人が提出した証拠の記載 1 甲第1号証 (1)甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同じ。) 「【0015】 (横縞型の構成) 図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)を示す。このSOFCは、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。」 「【0024】 各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の4つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。」 「【0028】 燃料極集電部21は、NiO(酸化ニッケル)と、第2酸化物セラミックスと、を含んで構成される。なお、燃料極集電部21が第2酸化物セラミックスを含んでいるのは、NiO単独の熱膨張係数(約14ppm/K)が、通常の電極材料の熱膨張係数(10~13ppm/K)と比べて大きいことに起因して、燃料極集電部21の等価熱膨張係数を通常の電極材料の熱膨張係数に近づけるため、である。従って、第2酸化物セラミックスとしては、熱膨張係数が通常の電極材料の熱膨張係数(10~13ppm/K)と比べて小さいものが好適である。具体的には、「第2酸化物セラミックス」としては、Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適である。燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50~500μmである。燃料極集電部21の気孔率は15~55%である。 【0029】 燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と、酸素イオン伝導性を有する物質と、を含んで構成される。「電子伝導性を有する物質」としては、NiO(酸化ニッケル)が好適である。「酸素イオン伝導性を有する物質」としては、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適である。燃料極活性部22の厚さは、5~30μmである。燃料極活性部22の気孔率は15~55%である。」 「【0038】 ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。」 「【0043】 以上、説明した「横縞型」のSOFCに対して、図4に示すように、支持基板10のガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電部70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。 (1/2)・O2+2e-→O2- (於:空気極60) …(1) H2+O2-→H2O+2e- (於:燃料極20) …(2)」 「【図2】 [図:0001434186000001.jpg] 」 (2)上記(1)によれば、次のことがいえる。 ア 段落【0015】によれば、甲第1号証には、平板状の支持基板10の上下面に、電気的に直列に接続された複数の同形の発電素子部Aが配置された固体酸化物形燃料電池(SOFC)が記載されている。 イ 段落【0038】によれば、発電素子部Aは、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなり、図2によれば、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とがこの順で積層されていることが見て取れる。 ウ 段落【0024】によれば、燃料極20は、燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより構成される。 エ 段落【0028】によれば、燃料極集電部21は、NiO(酸化ニッケル)と、第2酸化物セラミックスと、を含んで構成され、第2酸化物セラミックスとしては、Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適であり、その厚さは、50~500μmである。 オ 段落【0029】によれば、燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と、酸素イオン伝導性を有する物質と、を含んで構成され、電子伝導性を有する物質としては、NiO(酸化ニッケル)が好適であり、酸素イオン伝導性を有する物質としては、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適であり、その厚さは、5~30μmである。 カ 段落【0043】によれば、支持基板10のガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流すことにより、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。 (1/2)・O2+2e-→O2- (於:空気極60) …(1) H2+O2-→H2O+2e- (於:燃料極20) …(2) (3)上記(2)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「平板状の支持基板10の上下面に、電気的に直列に接続された複数の同形の発電素子部Aが配置された固体酸化物形燃料電池(SOFC)であって、 発電素子部Aは、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とがこの順に積層されてなり、 燃料極20は、燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより構成され、 燃料極集電部21は、NiO(酸化ニッケル)と、第2酸化物セラミックスと、を含んで構成され、第2酸化物セラミックスとしては、Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適であり、その厚さは、50~500μmであり、 燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と、酸素イオン伝導性を有する物質と、を含んで構成され、電子伝導性を有する物質としては、NiO(酸化ニッケル)が好適であり、酸素イオン伝導性を有する物質としては、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適であり、その厚さは、5~30μmであり、 支持基板10のガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流すことにより、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる、 固体酸化物形燃料電池。 (1/2)・O2+2e-→O2- (於:空気極60) …(1) H2+O2-→H2O+2e- (於:燃料極20) …(2)」 2 甲第2号証 (1)甲第2号証には、次の記載がある。なお、翻訳は、異議申立人が提出した「甲第2号証の訳文」に基づくものである。 「 [図:0001434186000002.jpg] 」 (翻訳: 図1の結果は、導電率がさまざまなドーパントによって広い範囲(~103)にわたって変化し、δはSc → Y → Gdの順にM3+半径とともに増加するが、その後、大きなLa3+イオンでは減少することを示す。) 「 [図:0001434186000003.jpg] 」(548頁右欄3~6行) (翻訳: 対応する導電率の曲線は、図1に示す順序と同じであり、Gd2O3をドープした材料が最も高くなった。) 「Figure 1. [図:0001434186000004.jpg] 」 (翻訳: 図1.セリアに4種類のドーパントを用いたM2O3固溶体の導電率曲線。破線は「純粋な」 Ce02の曲線。) 3 甲第3号証 (1)甲第3号証には、次の記載がある。なお、翻訳は、異議申立人が提出した「甲第3号証の訳文」に基づくものである。 「 [図:0001434186000005.jpg] 」(167頁15~16行) (翻訳: イオン伝導率は、YbからSmまでイオン半径の増加に従って増加した。) 「Fig.4. [図:0001434186000006.jpg] 」 (翻訳: セリア系酸化物のイオン伝導率のアレニウスプロット:(〇)(Ce02)0.8(SmO1.5)0.2;(△)(Ce02)0.8(GdO1.5)0.2;(▽)(Ce02)0.8(YO1.5)2;(□)(Ce02)0.8(CaO)0.2;(■)Ce02;(●)(Zr02)0.85(YO1.5)0.15) 「Fig.5 [図:0001434186000007.jpg] 」 (翻訳: 図5. 800℃における、(Ce02)0.8(LnO1.5)0.2のドーパントカチオンのイオン半径に対するイオン伝導率の依存性。) 4 甲第4号証 甲第4号証には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、燃料電池セルに関し、より具体的には、固体酸化物形燃料電池セルに関する。」 「【0031】 <組成> 中間層16は、ジルコニウムとセリウムとを含む。ジルコニウムはジルコニアとして、セリウムはセリアとして、中間層16に含まれていてもよい。中間層16においてセリウム(又はセリア)とジルコニウム(又はジルコニア)とは混合されており、中間層16は好ましくはセリアとジルコニアとの固溶体である。なお、中間層16は、セリウム及びジルコニウム以外の物質を含んでいてもよい。中間層16は例えば、バリア層13又は電解質層15に含まれる物質(添加剤等)を含んでいてもよい。電解質層15がイットリウム(Y)を含む場合、中間層16もイットリウムを含み得る。また、バリア層13がガドリニウム(Gd)を含む場合、中間層16もガドリニウムを含み得る。」 「【0079】 セル1の製造方法は、中間層16を形成する工程を含む。つまり、セル1の製造方法は、セリウムとジルコニウムとを含み、かつ気孔を有する層を形成する工程を含む。この工程は、ジルコニア系材料を主成分として含む層(ジルコニア系材料層)とセリア系材料を主成分として含む層(セリア系材料層)とを積層する工程と、積層された層を共焼成する工程と、により実現可能である。共焼成によって、セリア系材料層とジルコニア系材料層との接触面において、セリアとジルコニアとを固溶させることができる。また、共焼成によって、気孔を有する中間層16を形成することができる。」 「【0084】 具体的な製造方法の流れについて説明する。 燃料極11となる材料層の上に、ジルコニア系材料層、セリア系材料層を順番に積層することで、積層体を得ることができる。この積層体を脱脂及び焼成することで、焼成体を得ることができる。焼成によって、ジルコニア系材料層は電解質層15となり、セリア系材料層はバリア層13となり、ジルコニア系材料層とセリア系材料層との間には、中間層16が形成される。 ・・・(中略)・・・。 【0086】 A.セル試料の作製 酸化ニッケル(NiO)、ジルコニア系材料(8YSZ)、及び造孔剤(PMMA)からなるセラミックグリーンシート(厚み100μm)を、300μmとなるように積層し、熱圧着(60℃、3MPa)にて一体化した。 【0087】 こうして得られた成形体に、別途作製された3YSZからなるセラミックグリーンシートと、GDCからなるセラミックグリーンシートとを順次積層し、熱圧着した。こうして、燃料極、ジルコニア系材料層、セリア系材料層がこの順に積層された積層体を得た。 得られた積層体を、1300~1500℃で1~20時間、共焼成した。 【0088】 その後、セリア系材料層(バリア層)上に、空気極としてLSCF膜(30μm)を付与して、1000~1150℃で2時間、焼成した。 以上の操作により、セル試料を作製した。」 「【0093】 シグナル強度に基づいて、さらにGdおよびYの各原子の濃度も算出した。 さらに、原子の濃度から、CeO2、Gd2O3、ZrO2、Y2O3の濃度を算出した。こうして、ライン毎の濃度、つまり厚み方向において異なる位置の濃度(濃度分布)が算出された。濃度分布の一例として、図2に示す視野において得られた各物質の分布を、図3に示す。図3において、横軸はバリア層13の上面近傍からの距離を示す。縦軸は各位置における物質の濃度を示す。」 「【図1】 [図:0001434186000008.jpg] 」 「【図3】 [図:0001434186000009.jpg] 」 第5 申立理由に対する当審の判断 1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について (1)本件発明と甲1発明との対比 ア(ア)甲1発明の「燃料極20は燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより構成され」、「燃料極活性部22」は「酸素イオン伝導性を有する物質」を含むことから、該「燃料極20」は「酸素イオン伝導性を有する物質」を含むといえる。 また、甲1発明では、「支持基板10のガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流すことにより」、「H2+O2-→H2O+2e- 」の「化学反応が起こ」るところ、当該「化学反応」が「燃料極20」で起こっているのは明らかであるから、該「燃料極20」は水素極といえる。 よって、甲1発明における「酸素イオン伝導性を有する物質」を含む「燃料極活性部22」により構成される「燃料極20」と、本件発明の「セリウムを含むイオン伝導性材料を含有する水素極」とは、「イオン伝導性材料を含有する水素極」である点で共通する。 (イ)なお、本件発明の「水素極」に関する甲第1号証の対比について、異議申立人は異議申立書において、概略次のように主張する。 甲第1号証の段落【0024】、段落【0022】の記載から、本件発明の(A2)は、燃料極活性部ではなく「燃料極集電部と燃料極活性部とにより構成される燃料極」であると解釈可能であるかもしれない。そして、(A4)の「第1部分」は、甲第1号証の燃料極集電部と支持基板との界面から8μm以内の部分であり、第2部分は、燃料極集電部と支持基板との界面から8μm超の部分であると解釈可能であるかもしれない。 しかしながら、甲第1号証の段落【0029】の記載、本件明細書の段落【0023】の記載を対比すれば、本件発明の水素極は、甲第1号証に記載の燃料極活性部と略同じ構成を備えるため、甲第1号証の燃料極活性部に該当することは明らかである。 また、甲第1号証の段落【0028】の記載と、本件明細書の段落【0020】の記載を対比すれば、本件発明の第1集電部は、甲第1号証に記載の燃料極集電部と同じ構成を備えるため、甲第1号証の燃料極集電部に該当することは明らかである。(19頁6行~20頁16行) しかしながら、本件発明における「セリウムを含むイオン伝導性材料を含有する水素極」とは、電気化学セルにおける電極そのものを特定する発明特定事項であって、電極内に存在する部位を特定するものではない。 そうすると、本件発明の「セリウムを含むイオン伝導性材料を含有する水素極」と対比する甲1発明の構成としては、甲1発明の電極である「燃料極20」を対応させることが妥当である。 よって、請求人の主張は採用できない。 イ 甲1発明では、「支持基板10のガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流すことにより」、「空気極60」において「(1/2)・O2+2e-→O2-」の「化学反応が起こ」るところ、当該「化学反応」が「空気極60」で起こっているのは明らかであるから、該「空気極60」は酸素極といえる。 よって、甲1発明の「空気極60」は、本件発明の「酸素極」に相当する。 ウ 甲1発明の「発電素子部Aは、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とがこの順に積層されて」いることから、「固体電解質膜40」は「燃料極20」と「空気極60」との間に配置されているといえる。 よって、上記ア、イも踏まえれば、甲1発明の「燃料極20」と「空気極60」との間に配置されている「固体電解質膜40」は、本件発明の「水素極及び前記酸素極の間に配置される電解質」に相当する。 エ 甲1発明の「固体酸化物形燃料電池(SOFC)」は、電気化学セルの一種であるから、本件発明の「電気化学セル」に相当する。 オ 上記ア~エによれば、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「イオン伝導性材料を含有する水素極と、 酸素極と、 前記水素極及び前記酸素極の間に配置される電解質と、 を備える、 電気化学セル。」 (相違点1) イオン伝導性材料に関し、本件発明は「セリウム」を含むのに対し、甲1発明の「酸素イオン伝導性を有する物質」は、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適であるとされている点。 (相違点2) 本件発明は「前記水素極は、前記電解質と反対側の表面から8μm以内の第1部分と、前記表面から8μm超の第2部分とを有し、前記第1部分のイオン伝導度は、前記第2部分のイオン伝導度より低く、前記第2部分は、前記電解質と直接的に接触しており、前記第1部分は、Niと、イットリア、セリア及びガドリアの固溶体とを含有し、前記第2部分は、Niと、希土類元素が添加されたセリア系酸化物とを含有する」のに対し、甲1発明は、「燃料極20は、燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより構成され、燃料極集電部21は、NiO(酸化ニッケル)と、第2酸化物セラミックスと、を含んで構成され、第2酸化物セラミックスとしては、Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適であり、その厚さは、50~500μmであり、燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と、酸素イオン伝導性を有する物質と、を含んで構成され、電子伝導性を有する物質としては、NiO(酸化ニッケル)が好適であり、酸素イオン伝導性を有する物質としては、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適であり、その厚さは、5~30μmであ」る点。 (2)判断 ア 申立理由1(新規性)について 本件発明と甲1発明とは、上記相違点1、2を有するものであるから、本件発明は、甲1発明ではない。 イ 申立理由2(進歩性)について 事案に鑑み、相違点2から検討する。 (ア)甲1発明の「燃料極20」は、「厚さ」が「50~500μm」である「燃料極集電部21」と、「厚さ」が「5~30μm」である「燃料極活性部22」とにより構成されるところ、甲第1号証には、「燃料極10」を「固体電解質膜40」と反対側の表面から8μm以内の部分と、該表面から8μm超の部分とを有するよう構成すること、ましてや、該8μm以内の部分と、該8μm超の部分との「イオン伝導度」を異ならせるよう調整することは一切記載されていない。 (イ)また、甲第2号証(第4の2の548頁左欄第14~19行、548頁右欄3~6行、Figure 1.を参照。)には、セリアにドープされるSc→Y→Gdの順に、セリアの導電率が増加する技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載され、甲第3号証(第4の3の167頁15~16行、Fig.4、Fig.5を参照。)には、セリア系酸化物にドープされるYb、Y、Dy、Gd、Smの順にイオン伝導率が増加する技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載され、甲第4号証(第4の4の段落【0079】、【0087】を参照。)には、燃料電池セルにおいて、ジルコニア系材料を主成分として含む層(ジルコニア系材料層)とセリア系材料を主成分として含む層(セリア系材料層)とが積層した層を共焼成することにより、セリア系材料層とジルコニア系材料層との接触面において、セリアとジルコニアとを固溶させることができ、該共焼成は1300~1500℃で1~20時間行う技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されている。 しかしながら、甲第2号証~甲第4号証には、「燃料極10」を「固体電解質膜40」と反対側の表面から8μm以内の部分と、該表面から8μm超の部分とを有するよう構成し、さらに、該8μm以内の部分と、該8μm超の部分との「イオン伝導度」を異ならせるよう調整する記載や示唆は見当たらない。 そうすると、仮に、甲1発明に甲第2号証~甲第4号証に記載された技術を適用したとしても、上記相違点2に係る「水素極は、前記電解質と反対側の表面から8μm以内の第1部分と、前記表面から8μm超の第2部分とを有し、前記第1部分のイオン伝導度は、前記第2部分のイオン伝導度より低」いとの構成を導き出すことはできない。 (ウ)以上によれば、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1発明において、上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 異議申立人の主張について (ア)新規性について a 異議申立人は、異議申立書において、新規性に関し概略次のように主張する。 (a)甲第1号証には「燃料極活性部22の厚さは、5~30μmである」(段落【0029】)と記載されている。すなわち、甲第1号証には、燃料極活性部(本件特許発明の水素極に該当する)の厚さが8μm超である構成が開示されている。したがって、甲第1号証には「燃料極活性部が、固体電解質膜とは反対側の表面(燃料極集電部との界面)から8μm以内の第1部分と、この表面から8μm超の第2部分とを備えること」が実質的に開示されている。(15頁14~20行) (b)甲第1号証の段落【0028】及び【0029】の記載によれば、甲第1号証の燃料極活性部はNiOと、YSZ(8YSZ) およびGDC等とを含み、甲第1号証の燃料極集電部はNiOと、Y2O3、YSZ、およびCSZ等とを含む。このため、燃料極活性部と燃料極集電部が共焼成されると、燃料極活性部の燃料極集電部の側の表面から固体電解質膜側にかけて所定の勾配を伴ってYが拡散する。このことは甲第4号証でも説明されている。 そして、甲第2号証及び甲第3号証には、セリア系酸化物において、ドーパントのイオン半径がY~Gdの範囲ではイオン伝導度はイオン半径に対して正の相関があることが示されている。すなわち、これらの文献から、セリア系酸化物において、ドーパントのイオン半径がY~Gdの範囲では、ドーパントのイオン半径が小さい部分のイオン伝導度は、ドーパントのイオン半径が大きい部分のイオン伝導度よりも低くなることは自明である。 ここで、燃料極活性部の燃料極集電部の側の表面でY濃度が高く、固体電解質膜側にかけてY濃度が低くなりGd濃度が高くなることから、燃料極活性部の燃料極集電部の側の表面から固体電解質膜側にかけてドーパントのイオン半径の加重平均は大きくなる。すなわち、燃料極活性部の燃料極集電部の側の表面から固体電解質膜側にかけてイオン伝導度は大きくなる。従って、「燃料極活性部のうちの燃料極集電部に近い部分(第1部分)」のイオン伝導度が「燃料極活性部のうちの燃料極集電部より遠い部分(第2部分)」のイオン伝導度より低いことは自明である。(15頁下から3行~16頁下から3行) b 異議申立人の上記主張について検討する。 (a)上記イの(ア)のとおり、甲第1号証には、「燃料極10」を「固体電解質膜40」と反対側の表面から8μm以内の部分と、該表面から8μm超の部分とを有するよう構成することは一切記載されていない。 よって、異議申立人の上記主張(a)は採用できない。 (b)甲1発明は、「燃料極集電部21」を構成する「第2酸化物セラミックス」として「Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等」が好適であること、「燃料極活性部22」を構成する「酸素イオン伝導性を有する物質」として「YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等」が好適であるというのみであり、また、甲第1号証には、「燃料極活性部22」が「YSZ」および「GDC」とを含み、「燃料極集電部21」が「Y2O3」、「YSZ」、および「CSZ」とを含む実施例等は記載されていない。 また、甲第4号証(第4の4の段落【0031】、【0086】~【0088】、【0093】、図3を参照。)によれば、ジルコニア系材料であるYSZ層(電解質層)とセリア系材料であるGDC層(バリア層)とが積層した層を共焼成すると、「Y(イットリウム)」が、GDC層側へ拡散することは一応理解できる。しかし、甲第4号証には、甲1発明の「燃料極集電部21」が、仮に「Y2O3」、「YSZ」、および「CSZ」を含み、「燃料極活性部22」が、仮に「YSZ」および「GDC」を含む場合、「燃料極集電部21」及び「燃料極活性部22」を共焼成すると、「Y」の濃度が「燃料極活性部22」の「燃料極集電部21」の側の表面で高く、「固体電解質膜」側にかけて低くなるような濃度分布が生じることを裏付ける記載や示唆はなく、甲第2、3号証についても同様である。 そうすると、甲1発明において、「燃料極活性部の燃料極集電部の側の表面Y濃度が高く、固体電解質膜側にかけてY濃度が低くなりGd濃度が高くなる」か否かは不明であるから、異議申立人の主張(b)は前提を欠き、採用できない。 (イ)進歩性について a 異議申立人は、異議申立書において、進歩性に関し概略次のように主張する。 (a)甲第1号証の段落【0029】及び本件明細書の段落【0023】の記載を対比すれば、本件発明の水素極は、甲第1号証の燃料極活性部に該当し、甲第1号証の段落【0028】及び本件明細書の段落【0020】の記載を対比すれば、本件発明の第1集電部は、甲第1号証の燃料極集電部に該当することは明らかであり、本件発明の水素極と第1集電部は、甲第1号証に記載の燃料極活性部と燃料極集電部のそれぞれと同じ構成を備えることから、甲第1号証に記載の構成を水素極と第1集電部に適用することにより水素極の第1部分と第2部分を得ることについて特段の困難性はない。(19頁16行~20頁下から7行) (b)甲第2号証及び甲第3号証に記載されるように、セリア系酸化物において、ドーパントのイオン半径がY~Gdの範囲ではイオン伝導度はイオン半径に対して正の相関があることは周知である。そして、甲第1号証は、第2酸化物セラミックスとしてY2O3を選択し、酸素イオン伝導性を有する物質としてGDCを選択した際、燃料極活性部の燃料極集電部の側でY濃度が高く、固体電解質膜側にかけてY濃度が低くなりGd濃度が高くなることから、燃料極活性部の燃料極集電部の側(第1部分)から固体電解質膜側(第2部分)にかけてドーパントのイオン半径の加重平均は大きくなる。このため、第1部分のイオン伝導度が第2部分のイオン伝導度よりも低くなるという構成は当然に得られる。(20頁下から5行~21頁5行) b 異議申立人の上記主張について検討する。 上記(1)ア(イ)のとおり、本件発明の「セリウムを含むイオン伝導性材料を含有する水素極」と対比する甲1発明の構成としては、甲1発明の電極である「燃料極20」を対応させることが妥当である。 また、上記イのとおり、本件発明において、「水素極は、前記電解質と反対側の表面から8μm以内の第1部分と、前記表面から8μm超の第2部分とを有し、前記第1部分のイオン伝導度は、前記第2部分のイオン伝導度より低」いとの構成を含む上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 さらに、上記(ア)b(b)のとおり、甲1発明において、「燃料極活性部の燃料極集電部の側の表面Y濃度が高く、固体電解質膜側にかけてY濃度が低くなりGd濃度が高くなる」か否かは不明である。 したがって、異議申立人の上記主張(a)、(b)は採用できない。 エ 申立理由1及び申立理由2のまとめ 以上によれば、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由1及び申立理由2には理由がない。 2 申立理由3(発明該当性) (1)異議申立人の主張について 異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 本件発明には発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能である。したがって、本件発明は、特許法第29条柱書に規定される発明に該当しない(審査基準第III部第1章発明該当性及び産業上の利用可能性)。 本件発明が解決しようとする課題は、水素極に供給されるガスに被毒物質が含まれている場合に、被毒物質の付着によって水素極が劣化することから、水素極の劣化を抑制可能な電気化学セルを提供することである(本件明細書の段落【0004】および【0005】)。そして、この課題を解決するため、本件発明に係る電気化学セルは、「水素極は電解質と反対側の表面から8μm以内の第1部分と、表面から8μm超の第2部分とを有する」「第1部分のイオン伝導度は、第2部分のイオン伝導度よりも低い」という構成要件を備える。 本件発明による課題解決原理は、本件明細書の段落【0036】の記載を要約すれば、水素極の第1部分は第2部分よりも高温になるから、第1部分に被毒物質が吸着しやすくなり、その結果第2部分に被毒物質が到達しにくくなる、というものである。 しかしながら、このような構成では、課題を解決することはできない。水素極の第1部分おいて吸着反応が自発的に進行する場合のこの吸着反応は発熱反応である。このことは、反応が自発的に進行する場合にはギブスの自由エネルギー(G(=H-TS))(H:エンタルピー、T:絶対温度、S:エントロピー)変化が負であること(ΔG(=ΔH-TΔS)<0)、及び、吸着反応では分子の自由度が低下するため、エントロピー(S)が減少する(ΔS<0)ことから求められるエンタルピー変化が負であること(ΔH<0)から説明される。 そして、電極反応抵抗の反応熱により温度が上昇すると、ルシャトリエの原理により、温度変化(上昇)の影響を打ち消す方向に平衡が移動するため、平衡が発熱側から吸熱側に移動する。すなわち、「第1部分101の方が反応熱によって高温になる」(本件明細書の段落【0036】)と、第1部分における平衡は吸熱側に移動する。このため、第1部分においては発熱反応である吸着に対して吸熱反応である脱離の方が相対的に多くなる。すなわち、反応熱が大きい第1部分においては、脱離が優位になる。このため、第1部分において被毒物質を吸着することができない(吸着しても離脱してしまう)。そして、第1部分において吸着されなかった被毒物質は第2部分に到達する。したがって、水素極の劣化を抑制することができない。(22頁下から8行~24頁10行) (2)異議申立人の主張に対する検討 ア 一般に、「ルシャトリエの原理」とは、平衡状態にある系において、濃度、圧力、温度等変化が外部から加えられると、その変化を弱める方向に移動するというものであり(例えば、「講座3 化学反応-その本質にせまる 化学平衡-化学平衡とルシャトリエ・ブラウンの定理、化学と教育、44巻3号、1996年、1頁、[取得日 2026年3月11日],取得先<https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/44/3/44_KJ00003518933/_article/-char/ja/>」、「化学大事典9、化学大事典編集委員会、共立出版株式会社、1962年7月31日、836頁」、「マグロ-ヒル科学技術用語大事典、株式会社 日刊工業新聞、1997年3月18日、1949頁」を参照。)また、「平衡」とは、可逆反応における正反応と逆反応の反応速度が等しくなる状態であることは技術常識である(例えば、「プラントエンジニアリングメモ 第99回 化学反応平衡定数の計算、南一郎、化学装置、第58巻、第1号、株式会社工業通信、2016年1月1日、2頁左欄」、「よくわかる計算問題の解き方 高圧ガス甲種資格者への近道、高圧ガス保安協会、2016年2月12日、85~86頁」を参照。)。 イ ここで、本件明細書の段落【0036】によれば、第1部分101の電極反応抵抗が第2部分102の電極反応抵抗より大きいため、燃料電池セル10の作動中、第2部分102に比べて第1部分101の方が反応熱によって高温の状態になることから、この状態は「発熱」する反応、即ち「発熱反応」と解される。 しかし、「吸熱」に関して、異議申立人は、異議申立書において、「平衡が発熱側から吸熱側に移動する」、「平衡は吸熱側に移動する」、「吸熱反応である脱離」と主張しているのみで、第1部分101における「吸熱」とは、第1部分101においてどのような状態にあることを意味しているのか具体的かつ明確な説明がなされていない。 また、燃料電池セル10の作動中では、燃料電池セル10に燃料ガスと酸素を含むガスが供給され、水素極2においてはH2+O2-→H2O+2e- …(1)で表される電極反応が起こる(本件明細書の段落【0022】、【0027】を参照。)ところ、作動中に第1部分101の組成が変化する理由も見当たらないことから、異議申立人の主張する「吸熱反応」がどのように起こるのかも不明である。 まして、該「発熱反応」と該「吸熱反応」が「ルシャトリエの原理」でいう「平衡」状態にあるとは、「第1部分101」においてどのような状態にあるのかも、異議申立書では一切説明がない。 ウ さらに、異議申立人が主張する「温度」の「上昇」は、「電極反応抵抗の反応熱」、即ち、「発熱反応」によるものであるから、「ルシャトリエの原理」でいう「外部」からの「変化」には当たらないといえる。 エ そうすると、「ルシャトリエの原理により、・・・、平衡が発熱側から吸熱側に移動する。すなわち、・・・、第1部分における平衡は吸熱側に移動する。」との異議申立人の主張は、その前提を欠いており、また、第1部分101において被毒物質を吸着することができないことを裏付ける具体的な証拠も何等提出されていない。 オ したがって、申立人が提出した証拠を精査しても、「燃料電池セル10」が作動中に、第1部分101において被毒物質を吸着することができないとはいえないから、異議申立人の主張によっては、本件発明が本件明細書(段落【0005】を参照。)に記載された「水素極の劣化を抑制可能な電気化学セルを提供する」という課題を解決することは不可能であるとはいえない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (3)まとめ 以上によれば、本件特許は、特許法第29条1項柱書きの規定に違反してされたものではない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由3には理由がない。 第6 むすび 以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人らの提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700946

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