審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-700756

非接触式ウェーハ厚み測定装置

審判番号
2025-700756
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-519307
登録番号
7620322
請求日
2025年07月23日
審決日
2025年09月29日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】不二越機械工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
  • 【異議申立人】石井 悠太
審判長/審判官
  • 審判長 道祖土 新吾
  • 審判官 田辺 正樹
  • 審判官 谷垣 圭二
分類
P1652.121-Y (G01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7620322号発明「非接触式ウェーハ厚み測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7620322号の請求項1及び2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7620322号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和2年4月9日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和元年5月15日)、令和7年1月15日にその特許権の設定登録がされ、令和7年1月23日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許に対し、令和7年7月23日に特許異議申立人石井悠太(以下「特許異議申立人」という。)は、請求項1及び2に対して特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7620322号の請求項1及び2の特許に係る発明(以下、「請求項の番号に従って「本件発明1」及び「本件発明2」という。」は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び2は、次のとおり記載されている。 「【請求項1】 レーザ源、前記レーザ源を制御するレーザ制御ユニット、および時間に対して設定プロファイルで変化する波長のレーザ光を発振するように前記レーザ制御ユニットにより前記レーザ源を制御するように構成するプロセッサを有するモノリシック型波長掃引半導体レーザ光源と、 前記レーザ光を厚さを求めたいウェーハの測定部分に導いて照射する光学系と、 前記測定部分から得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する検出部と、 前記検出部により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、 前記A/D変換器からのデジタル信号を解析して前記ウェーハの厚さを算出する演算部を具備するウェーハ厚み測定装置であって、 前記プロセッサが、該プロセッサの発生するクロック信号により前記レーザ制御ユニットを動作させて前記レーザ源から時間に対して設定プロファイルで波長掃引するレーザ光を発振させ、 前記A/D変換器は、前記プロセッサの発生するクロック信号に同期してサンプリングクロックを生成または直接サンプリングクロックとして使用して、前記干渉光信号をA/D変換し、 参照用ウェーハを用いた光源監視用回路をさらに具備し、 前記光源監視用回路が、前記検出部で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視することを特徴とする非接触式ウェーハ厚み測定装置。 【請求項2】 前記モノリシック型波長掃引半導体レーザ光源が、機械的動作部を有しないことを特徴とする請求項1記載の非接触式ウェーハ厚み測定装置。」 第3 特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人は、証拠として次の甲1号証から甲5号証を提出し、本件発明1及び2は、甲1号証に記載された発明、甲2号証に記載された事項、甲3号証に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明1及び2に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 甲1号証:特開2002-323303号公報 甲2号証:特表2014-522105号公報 甲3号証:Masatoshi Fujimoto et al., "Stable wavelength-swept light source designed for industrial applications using KTN beam scanning technology", Proc. SPIE 10110, Photonic Instrumentation Engineering IV, 2017年, 101100Q, p.1-12 甲4号証:社団法人電気学会編、「電気工学ハンドブック(第6版)」、2001年2月20日発行、p.271-272 甲5号証:レーザー学会編、「レーザーハンドブック(第2版)」、平成17年4月25日発行、p.538 第4 各甲号証の記載及び甲1発明等の認定 1 甲1号証の記載から認定できる事項及び甲1発明の認定 (1) 甲1号証の記載から認定できる事項 甲1号証の【図1】からは、レーザ光源3、制御回路9、受光回路8がインターフェイスを介さずに接続されていることが見て取れる。また、制御回路9は、マイクロコンピュータなどを主体として構成される(段落【0031】参照)ものである。 これらの事項と、コンピュータ分野における技術常識を総合すると、制御回路9がクロック信号を発生するプロセッサを備え、そのプロセッサが該プロセッサの発生するクロック信号によりレーザ光源3を制御し、受光回路8は、該プロセッサの発生するクロック信号に同期してサンプリングクロックを生成又は直接サンプリングクロックとして使用してデジタル変換処理を行っていると認められる(以下「認定事項1」という。)。 (2) 甲1発明の認定 前記(1)において認定した事項及び甲1号証の記載事項を総合すると、甲1号証には、第1の実施形態(【図1】)に係る次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <甲1発明> 「シリコンを透過する近赤外の波長領域のレーザ光L0を測定光として出射するもので、そのレーザ光L0の発振中心波長λを連続的にもしくは一定間隔毎に変化可能に構成されている、測定光源としてのレーザ光源3と、(段落【0028】) マイクロコンピュータなどを主体として構成されるもので、レーザ光源3から出射するレーザ光L0の波長λを設定して制御すると共に、その波長λの情報と受光回路8からの検出信号とから演算処理を行ってSOI基板1のダイヤフラム2の厚さ寸法を求めるようにプログラムがあらかじめ記憶されている、演算手段及び制御手段としての制御回路9と、(段落【0031】) 光学系として設けられ、レーザ光源3から出射されるレーザ光L0をSOI基板1に導く、反射鏡4、ハーフミラー5及びレンズ6と、(段落【0028】) 受光した反射光の強度を示す電気的な検出信号に変換して受光回路8に出力する、測定手段としての光検出器7と、(段落【0030】) 光検出器7から与えられた検出信号に対してノイズ処理などの各種処理を行うと共にデジタル変換処理を行って制御回路9に出力する受光回路8と、(段落【0030】) を具備する膜厚測定装置であって、(段落【0001】、【0009】、【請求項7】) 測定対象物であるSOI基板1に照射されたレーザ光L0は、積層構造の各膜の表裏面部で反射し、各層及び全体の膜厚に依存した干渉光となってレンズ6側に戻るものであり、この反射光の光成分が検出すべき光としてレンズ6を透過した後ハーフミラー5を通じて直交する方向に偏向され、測定手段としての光検出器7に入射するように構成されており、(段落【0025】、【0030】) 実際に膜厚Dを検出する際には、レーザ光L0の波長λをある波長範囲で変化させたときに得られる反射光の強度を示す信号を周波数解析を行うことにより求めるものであり、(段落【0039】) 制御回路9がクロック信号を発生するプロセッサを備え、そのプロセッサが該プロセッサの発生するクロック信号によりレーザ光源3を制御し、受光回路8は、該プロセッサの発生するクロック信号に同期してサンプリングクロックを生成又は直接サンプリングクロックとして使用してデジタル変換処理を行っている、(認定事項1) 膜厚測定装置。」 2 甲2号証に記載された事項 甲2号証には、次の事項が記載されていると認められる。 「半導体レーザー源(段落【0021】)、 レーザー源に動作可能に結合されたレーザー制御ユニット(段落【0020】)、 規定された掃引パフォーマンス特性のセットへの適合を達成するよう前記レーザー制御ユニットが前記レーザー源を制御するように構成するプロセッサ(段落【0020】)、を有する半導体モノリシックチューナブルレーザーソース」 3 甲3号証に記載された事項及び甲3技術事項の認定 (1) 甲3号証に記載された事項 甲3号証には、次の記載がある。原文の記載は省略し、特許異議申立人が提出した日本語訳を記載する。下線は合議体が付した。 ア 要約(ABSTRACT) 「要約 タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbxO3、KTN)単結晶を基盤とした光ビームスキャン技術を用いて、産業用途向けの波長掃引光源を構築した。KTN結晶は、機械的な動作部を伴わずに波長掃引を行う電気光学光偏向器として外部共振器内に配置された。共振器の配置と機構要素は、長期安定性と環境耐性を確保するために特別に設計された。さらに、KTN結晶の取り扱い方法を改良した。正確な温度監視のため熱電対をペアで使用し、動作中に405nmの光を弱く照射することでドリフト抑制を実現した。実用的な用途に適した20kHzの中程度の繰り返し周波数を選択した。光源の出力は平均出力が6.2mW、波長が1314.5nm、波長帯域幅が83.3nmである。光の干渉縞により、点像関数のピーク位置からウェーハ試料の厚さを特定できる。シリコンウェーハの厚さは、基準石英板を用いた光学距離で3651μmと測定された。得られた値の分布は、約0.lμm(標準偏差)である。この特性が少なくとも153日間継続的に維持されることを実験的に確認した。我々の光源は特筆すべき特徴を有している:極めて低い掃引のタイミングジッタ。これにより、必要に応じて複数の干渉縞を平均化することで、ノイズレベルを容易に低減できる。 キーワード 波長掃引光源、厚さ測定、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)、電気光学偏向器」 イ 1. 導入(1. INTRODUCTION) 「1. 導入 波長を時間とともに周期的に変化させる波長掃引光源は、赤外波長領域における高速広帯域干渉測定(IFM)への応用可能性から、大きな注目を浴びている。特に、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は、IFM技術を用いて眼や動脈の重要な疾患を非侵襲的に検出できるため、このような光源の開発を牽引する主要な要因となっている1。 最近、もう一つの増大する傾向として、産業用IFM用途における波長掃引光源の活用が注目されている。例えば、光の干渉縞から、深さ領域におけるパワースペクトル密度のピーク位置を特定することで、ウェーハ試料の厚さを導出できる。産業用途では、定量的な安定性、連続駆動、長期運転が最も重要な要求事項である。これらは、高速性とゴーストフリー特性に重点を置いた医療画像化とは異なる。 OCTの分野で広く知られているように、IFM方式は時間領域(TD)とフーリエ領域(FD)のIFMに分類される。さらに、FD-IFMはスペクトル領域(SD)と波長掃引光源(SS)IFMに分類される。これらの分類のうち、SS-IFMは波長掃引光源を利用する。 (以下略)」 ウ 3. 光源の特性(3. CHARACTERISTICS OF LIGHT SOURCE)、図3(Figure 3) 「3. 光源の特性 …(中略)… 光源の出力は平均パワー6.2mW、中心波長1314.5nm、帯域幅83.3nmであった。スペクトルは図3に示されている。波長掃引帯域の両端で強度が強く見えるのは、波長スキャンにおける折り返し点のためである。」 「 [図:0001428040000001.jpg] 図3. 光源の出カスペクトル。中心波長と帯域幅はそれぞれ1314.5nmと83.3nm。帯域の上限と下限が強く見えるのは、波長スキャンの折り返し点だからである。1350nmを超える波長範囲に見られる吸収線は、環境中の水分子によるものである。」 エ 4. 光源評価のための厚さ測定(4. THICKNESS MEASUREMENT FOR LIGHT SOURCE EVALUATION) (ア) 4.1 厚さ測定のセットアップ(4.1 Setup for thickness measurement) 「4.1 厚さ測定のセットアップ 光源の性能を評価するために、厚さ測定を行った。図4は、構築した光源を使用して材料の厚さを測定するためのセットアップを示している。光源からの光は50/50光ファイバカプラによって2つのポー卜に分離された。その後、両方の光は個別に光サーキュレータを通じて空間に入力した。光はコリメートされ、サンプル及び参照と呼ばれる薄い板材料に入射した。光はサンプルと参照によって反射され、光ファイバに戻った。各光が照射された板の表面と裏面で反射されるため、戻ってくる光の強度は2つの面から発生した成分の干渉によって変調された。光サーキュレータを通じて戻ってくる光は検出器ポートに到達した。検出器はポートで光を受け取ることによって干渉信号を生成した。 検出器によって生成された信号には、干渉パターンの時系列が含まれていた。掃引光源を使用したため、時間と波長が対応する。その結果、信号はスペクトル的に分離された干渉縞を表した。したがって、FD-IFMの手順を使用して縞を分析することにより、サンプルと参照の厚さ値を導き出した。使用した検出器は200MHzの帯域幅で動作し、デモンストレーションには十分であった。 ここで、サンプルと参照板の実際の厚さをそれぞれsaとraとして表わす。しかし、IFMは光路長の観点からのみ厚さ値を評価することができる。したがって、光路長としてサンプルと参照の厚さをsoplとroplとして定義することも便利である。これらのパラメータは以下の関係を持つ: sopl=nssaおよびropl =nrra, (1) ここで、nsとnr(合議体注:「nsとnr」の誤記と認める。)はサンプルと参照材料の屈折率である。 検出器によって生成された信号は、250MHzの帯域幅をもち、500MS/sで動作するアナログ-デジタルコンバータによってデジタル信号に変換された。取得された信号は、この目的のために開発されたPCプログラムによって処理された。 参照材料として石英ガラス板を使用した。使用した参照の実際の厚さは1.5mmであった。つまり、ra=1500μmである。したがって、ropl=2175μmはnr=1.45から導き出された。 (以下略)」 (イ) 図4(Figure 4) 「 [図:0001428040000002.jpg] 図4. 我々が構築した光源を用いた厚さ測定の実験装置。光源から放射された光は、2つの光ファイバ経路に分割される。これらの光は空間に入り、コリメートされた後にサンプルと参照と呼ばれる材料に入射する。光はファイバに反射され、最終的に各ポートの検出器によって受信される。各検出器が生成する信号には、材料の表面と裏面から反射された光の干渉パターンが含まれている。したがって、信号解析によりサンプルと参照の厚さ値が得られる。すべてのファイバコンポーネントは偏波無依存のシングルモードファイバで構成されており、この装置では光の偏波に依存しない信号が得られる。 結果の一部は第4.3節および第4.4節で説明する。」 (ウ) 4.2 厚さ値を導き出すためのデータ処理(4.2 Data processing for deriving thickness values) 「4.2 厚さ値を導き出すためのデータ処理 サンプルと参照による干渉信号は同時に取得され、デジタル信号に変換された。単一の取得で、短波長から長波長へのスキャン中のほぼ全体の時間範囲をカバーした。本論文では、評価のために100組の連続した信号ペアを1セットとして使用した。 最初に、信号の時間軸が光の波数に正確に比例していなかったため、信号を波数の関数として干渉縞を再現するようにリスケージングした。リサンプリングポイントは、次の手順で100の参照縞の平均を使用して導き出された7。平均縞をフーリエ変換した後、正の周波数部分を抽出した。次に、正の周波数部分を逆フーリエ変換によって複素数のシーケンスに変換した。複素数のアンラップされた位相のセットは、時間と波数の関係に対応した。この関係は、干渉信号のリサンプリングポイントを提供した。 すべての100組の信号は同一の関係を使用してリスケーリングされた。フーリエ空間でゼロパディングによってデータポイントを増加させた後、線形補間を使用してリスケーリングした。次に、リスケーリングされた縞を十分なゼロパディングで伸ばし、フーリエ変換した。結果の絶対二乗は、波数のフーリエ共役パラメータである深さの関数としてのパワースペクトル密度を提供する。スペクトルのピーク位置は、測定された材料の相対的な厚さ値に対応する。サンプルのスペクトルピーク位置から、ペアの参照のピーク位置をroplとして識別することにより、絶対サンプル厚さsoplを導き出した。 上記のデータ処理手順は、同一サンプルの100のsopl値のセットを生成した。このセットは統計解析に使用された。100のsopl値の平均と標準偏差は、それぞれμ100とσ100で表される。σ100の値は、システム全体の短期安定性の尺度を提供し、変動は主に光源に起因する。」 (エ) 4.3 シリコンウェーハの厚さ測定の安定性(4.3 Stability of measurement of silicon-wafer thickness) 「4.3 シリコンウェーハの厚さ測定の安定性 標準サンプルとして、sa≒1mmのシリコンウェーハを測定した。 …(中略)… 第4.2節で説明したように、光源の100回連続掃引によって得られたサンプルと参照の縞を使用してデータ処理を行った。図6は、データセットから導き出された100のパワースペクトル密度の1組を示している。参照のピーク位置が2175μmに対応すると仮定して、サンプルスペクトルのピーク位置からサンプルの厚さを決定した。 μ100とσ100の値を計算した。光源の安定性を評価するために、99時間ごとにデータセットを9.1秒ごとに取得した。 …(中略)… 光源は150日以上連続して動作していた。その期間中、厚さを断続的に測定した。測定では、σ100値が常に0.lμmレベルであることを確認した。毎日得られた厚さ値は平均され、図9(a)に示されている。この期間中、厚さ測定の安定性がほぼ維持されていることが確認できる。しかし、わずかなドリフトと分布が認められる。その原因を探るために、測定時の対応する時間の平均周囲温度と日々の厚さ平均を比較する。図9(b)はその結果を示している。厚さと温度の間に明らかな相関が確認できる。温度効果を除去すると、平均厚さ値の分布は0.1μmよりもはるかに小さく見える。 図9(b)の回帰線は、環境温度が1℃上昇するごとに厚さ値が0.22μm増加したことを示している。別の機会に、光源と測定システムの周囲温度が変化しない条件下で厚さ値の変動を測定したところ、その時は温度が1℃上昇するごとに厚さ値が0.02μm増加した。したがって、1℃あたり0.20μmの割り当てはおそらく測定システムに起因する。実際、シリコンと石英の屈折率はそれぞれ1℃あたり1.93×10-4と1.07×10-5増加する8,9。これらの変化は、サンプル厚さの測定結果をそれぞれ1℃あたり0,201μmと0.027μm増加および減少させるため、soplの増加率は0.174μm/℃と推定される。これは実験的に得られた0.20μm/℃の値と十分に一致している。測定された厚さのサブμmレベルのドリフトは、主に周囲温度の変動によるサンプルと参照の屈折率の小さな変化によるものであると結論付ける。 この節の結果は、第4.2節で説明された手順のみによって導き出された。他のデータ処理技術が安定性を向上させることを確認した。例えば、干渉信号に適切な窓関数を適用することでσ100値が減少した6。しかし、この論文では、測定の目的が光源の性能評価であるため、固定された単純なデータ処理の結果のみを記述する。 (オ) 図6、図9(Figure 6, Figure 9) 「 [図:0001428040000003.jpg] 図6. シリコンウェーハの測定で得られた干渉信号のパワースペクトル密度。黒線と赤線はそれぞれサンプルと参照に対応する。横軸は波数のフーリエ共役パラメータである深さに対応する。それに応じて、各スペクトルのピーク位置は光路長に関する厚さの測定値を提供する。」 「 [図:0001428040000004.jpg] 図9. 153日間の断続的な厚さ測定の結果。(a) 測定が行われた各国の全厚さ値の平均。光源の運転は横軸の原点の日に開始され、グラフの日数にわたって続いた。(b)(a)に表示された平均厚さ値と対応する期間の平均周囲温度との相関グラフ。回帰線も表示されている。」 (カ) 4.4 他の測定されたサンプル(4.4 Other samples measured) 「4.4 他の測定されたサンプル …(中略)… 多くの場合、多くの不明瞭な信号を平均化することで明確な信号を得ることができる。現在の検査では、単一のデータセットは100対の信号で構成されていたため、サンプルおよび参照プレートによって生成された100の信号を平均化した。KTNベースの掃引光源は低トリガージッタを持っているため、縞の平均化は容易に行われた2,3。 …(中略)… 図15は、サンプルおよび参照の縞の100平均によって導出されたパワースペクトル密度の一対を示している。今回は、ピークがノイズフロアよりも40dB高い。この結果は、縞の平均化操作が厚さ測定の信号対ノイズ比を成功裏に改善したことを示している。この技術は、時間のかかる測定が許可される限り、より多くの吸収を持つ材料のIFMに有用である。(以下略)」 (キ) 図15(Figure.15) 「 [図:0001428040000005.jpg] 図15. 高濃度ドープp型シリコンウェーハの測定で得られた干渉信号の100平均のパワースペクトル密度。この図の説明は図6と同じである。」 (2) 甲3号証の記載から認定できる事項 ア 甲3号証における「光源の出力は平均パワー6.2mW、中心波長1314.5nm、帯域幅83.3nmであった。」との記載(3章参照)及び図3の記載から見て、甲3号証における「光源」は波長掃引光源であるといえる。 イ 甲3号証における「光源からの光は50/50光ファイバカプラによって2つのポー卜に分離された。その後、両方の光は個別に光サーキュレータを通じて空間に入力した。光はコリメートされ、サンプル及び参照と呼ばれる薄い板材料に入射した。光はサンプルと参照によって反射され、光ファイバに戻った。各光が照射された板の表面と裏面で反射されるため、戻ってくる光の強度は2つの面から発生した成分の干渉によって変調された。光サーキュレータを通じて戻ってくる光は検出器ポートに到達した。検出器はポートで光を受け取ることによって干渉信号を生成した。」との記載(4.1節参照)及び図4の記載から見て、甲3号証に記載された厚さ測定の実験装置は、「サンプルから得られる反射光の干渉信号を検出する検出器」と、「参照から得られる反射光の干渉信号を検出する検出器」をそれぞれ具備しているといえる。 ウ(ア) 甲3号証には、厚さ測定に関し次のa及びbの記載がある。 a 「したがって、FD-IFMの手順を使用して縞を分析することにより、サンプルと参照の厚さ値を導き出した。…(中略)…ここで、サンプルと参照板の実際の厚さをそれぞれsaとraとして表わす。しかし、IFMは光路長の観点からのみ厚さ値を評価することができる。したがって、光路長としてサンプルと参照の厚さをsoplとroplとして定義することも便利である。これらのパラメータは以下の関係を持つ: sopl=nssaおよびropl =nrra, (1) ここで、nsとnrはサンプルと参照材料の屈折率である。 …(中略)… 参照材料として石英ガラス板を使用した。使用した参照の実際の厚さは1.5mmであった。つまり、ra=1500μmである。したがって、ropl=2175μmはnr=1.45から導き出された。」(「4.1節参照) b 「サンプルと参照による干渉信号は同時に取得され、デジタル信号に変換された。…(中略)… すべての100組の信号は同一の関係を使用してリスケーリングされた。フーリエ空間でゼロパディングによってデータポイントを増加させた後、線形補間を使用してリスケーリングした。次に、リスケーリングされた縞を十分なゼロパディングで伸ばし、フーリエ変換した。結果の絶対二乗は、波数のフーリエ共役パラメータである深さの関数としてのパワースペクトル密度を提供する。スペクトルのピーク位置は、測定された材料の相対的な厚さ値に対応する。サンプルのスペクトルピーク位置から、ペアの参照のピーク位置をroplとして識別することにより、絶対サンプル厚さsoplを導き出した。 上記のデータ処理手順は、同一サンプルの100のsopl値のセットを生成した。このセットは統計解析に使用された。100のsopl値の平均と標準偏差は、それぞれμ100とσ100で表される。σ100の値は、システム全体の短期安定性の尺度を提供し、変動は主に光源に起因する。」(4.2節参照) (イ) 前記a及びbにおいて摘記した記載を踏まえると、甲3号証には、次の事項が記載されていると認められる。 「サンプルと参照による干渉信号を同時に取得し、それぞれをデジタル信号に変換してフーリエ変換することでスペクトルピーク位置を得て、 サンプルのスペクトルピーク位置から、ペアの参照のピーク位置を光路長としての参照の厚さであるroplとして識別することにより、絶対サンプル厚さsoplを導き出し、 同一サンプルの100個のsopl値の標準偏差であるσ100から、変動は主に光源に起因する、システム全体の短期安定性の尺度を提供すること。」 (3) 甲3技術事項の認定 前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した甲3号証の記載事項を総合すると、甲3号証には次の事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <甲3技術事項> 「サンプルから得られる反射光の干渉信号を検出する検出器と、参照から得られる反射光の干渉信号を検出する検出器を備え、 サンプルと参照による干渉信号を同時に取得し、それぞれをデジタル信号に変換してフーリエ変換することでスペクトルピーク位置を得て、 ペアの参照のピーク位置を光路長としての参照の厚さであるroplとして識別することにより、サンプルのスペクトルピーク位置から絶対サンプル厚さsoplを導き出し、 同一サンプルの100個のsopl値の標準偏差であるσ100から、変動は主に波長掃引光源に起因する、システム全体の短期安定性の尺度を提供すること。」 4 甲4号証に記載された事項 甲4号証には、「高速フーリエ変換(FFT Fast Fourier Transform)は、入力された信号波形をA-D変換器を用いてディジタイジングし、高速にFFT変換処理を行い時間領域から周波数領域へ信号表現を変換することができる」ことが記載されている(271ページ)。 5 甲5号証に記載された事項 甲5号証には、SiO2(石英)は0.15から4.5μmの範囲の波長の光を、Si(シリコン)は1.2から15.0μmの範囲の波長の光を、それぞれ透過することが記載されている(図24・27)。 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1) 本件発明1と甲1発明の対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明は、「SOI基板1」を測定対象とする「膜厚測定装置」であるから、本件発明1と甲1発明は、「ウェーハ厚み測定装置」の発明である点において一致する。 イ(ア) 甲1発明における「レーザ光源3」は、本件発明1における「レーザ光源」に相当する。 (イ) 甲1発明において、制御回路9は、クロック信号を発生するプロセッサを備えるものである。そうすると、甲1発明における「マイクロコンピュータなどを主体として構成されるもので、レーザ光源3から出射するレーザ光L0の波長λを設定して制御する」「演算手段及び制御手段としての制御回路9」と、本件発明1における「時間に対して設定プロファイルで変化する波長のレーザ光を発振するように前記レーザ制御ユニットにより前記レーザ源を制御するように構成するプロセッサ」は、「時間に対して設定プロファイルで変化する波長のレーザ光を発振するように前記レーザ源を制御するように構成するプロセッサ」を含む点において共通する。 (ウ) 甲1発明においては、「レーザ光源3」が「シリコンを透過する近赤外の波長領域のレーザ光L0を測定光として出射するもので、そのレーザ光L0の発振中心波長λを連続的にもしくは一定間隔毎に変化可能に構成されている」ものであるから、波長掃引レーザ光源が構成されているといえる。 (エ) したがって、本件発明1と甲1発明は、次の点において共通する。 「レーザ源、および時間に対して設定プロファイルで変化する波長のレーザ光を発振するように前記レーザ源を制御するように構成するプロセッサを有する波長掃引レーザ光源」を具備する点。 ウ(ア) 甲1発明における「SOI基板1」は、本件発明1における「厚さを求めたいウェーハ」に相当する。 (イ) 甲1発明における「反射鏡4、ハーフミラー5及びレンズ6」は、「光学系として設けられ、レーザ光源3から出射されるレーザ光L0をSOI基板1に導く」ものであるから、本件発明1における「前記レーザ光を厚さを求めたいウェーハの測定部分に導いて照射する光学系」に相当する。 エ(ア) 甲1発明においては、「測定対象物であるSOI基板1に照射されたレーザ光L0は、積層構造の各膜の表裏面部で反射し、各層及び全体の膜厚に依存した干渉光となってレンズ6側に戻るものであ[る]」から、SOI基板1からの反射光は、干渉光であるといえる。 (イ) 甲1発明における「測定手段としての光検出器7」は、「受光した反射光の強度を示す電気的な検出信号に変換して受光回路8に出力する」ものであるから、前記(ア)も踏まえると、本件発明1における「前記測定部分から得られる反射光の干渉光信号を検出する検出部」に相当する。 オ 甲1発明における「受光回路8」は、「光検出器7から与えられた検出信号に対してノイズ処理などの各種処理を行うと共にデジタル変換処理を行って制御回路9に出力する」ものであるから、本件発明1における「前記検出部により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するA/D変換器」に相当する。 カ 甲1発明における「制御回路9」は、「レーザ光源3から出射するレーザ光L0の」「波長λの情報と受光回路8からの検出信号とから演算処理を行ってSOI基板1のダイヤフラム2の厚さ寸法を求めるようにプログラムがあらかじめ記憶されている」ものであるから、本件発明1における「前記A/D変換器からのデジタル信号を解析して前記ウェーハの厚さを算出する演算部」に相当する。 キ 甲1発明は、「制御回路9がクロック信号を発生するプロセッサを備え、そのプロセッサが該プロセッサの発生するクロック信号によりレーザ光源3を制御[する]」ものであるから、本件発明1と、「プロセッサが、該プロセッサの発生するクロック信号により前記レーザ制御ユニットを動作させて前記レーザ源から時間に対して設定プロファイルで波長掃引するレーザ光を発振させ[る]」点において一致する。 ク 甲1発明は、「受光回路8は、該プロセッサの発生するクロック信号に同期してサンプリングクロックを生成又は直接サンプリングクロックとして使用してデジタル変換処理を行っている」ものであるから、本件発明1と、「前記A/D変換器は、前記プロセッサの発生するクロック信号に同期してサンプリングクロックを生成または直接サンプリングクロックとして使用して、前記干渉光信号をA/D変換[する]」点において一致する。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「 レーザ源、および時間に対して設定プロファイルで変化する波長のレーザ光を発振するように前記レーザ源を制御するように構成するプロセッサを有する波長掃引レーザ光源と、 前記レーザ光を厚さを求めたいウェーハの測定部分に導いて照射する光学系と、 前記測定部分から得られる反射光の干渉光信号を検出する検出部と、 前記検出部により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、 前記A/D変換器からのデジタル信号を解析して前記ウェーハの厚さを算出する演算部を具備するウェーハ厚み測定装置であって、 前記プロセッサが、該プロセッサの発生するクロック信号により前記レーザ源から時間に対して設定プロファイルで波長掃引するレーザ光を発振させ、 前記A/D変換器は、前記プロセッサの発生するクロック信号に同期してサンプリングクロックを生成または直接サンプリングクロックとして使用して、前記干渉光信号をA/D変換する、 非接触式ウェーハ厚み測定装置。」 イ 相違点 (ア) 相違点1 本件発明1における「プロセッサ」は、「レーザ制御ユニット」を介してレーザ源を制御するものであるのに対し、 甲1発明における「制御回路9」は、直接「レーザ光源3」を制御するものである点。 (イ) 相違点2 本件発明1における「レーザ光源」が、「モノリシック型波長掃引半導体レーザ光源」であるのに対し、 甲1発明における「レーザ光源3」が、「波長掃引レーザ光源」であるが、「モノリシック型波長掃引半導体レーザ光源」とは特定されていない点。 (ウ) 相違点3 本件発明1は、 「参照用ウェーハを用いた光源監視用回路をさらに具備し、 前記光源監視用回路が、前記検出部で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視する」ものであるのに対し、 甲1発明は、「光源監視用回路」に相当する構成を有していない点。 (3) 相違点3についての当審の判断 上記相違点3について検討する ア 相違点3に係る本件発明1の構成について (ア) 本件発明1における「光源監視用回路」は、「前記検出部で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視する」ものである。このうち、「前記検出部で取得した干渉波形」の解釈について検討する。 (イ)a 本件特許の明細書の段落【0032】~【0034】及び【図4】には、次の記載がある。下線は合議体が付した。 「【0032】 図4は、モノリシック型波長掃引半導体レーザ光源10の他の実施の形態を示す全体システムのブロック図である。 図1における部材と同一の部材は同一の符号をもって示し、その説明は省略する。 本実施の形態では、参照ウェーハによる光源監視用回路32を追加している。 この光源監視用回路32は、レーザ源14から放出され、分光されたレーザ光がサーキュレータ34およびプローブ36から参照用ウェーハ38に照射されるようになっている。参照用ウェーハ38の表面および裏面で反射されたレーザ光(干渉光)は、プローブ36およびサーキュレータ34を経てフォトダイオード40で検出され、さらにA/D変換器28でデジタル信号に変換され、コンピュータ30に入力されるようになっている。 【0033】 コンピュータ30では、入力されたデジタル信号値から、フォトダイオード40から出力される電圧の平均値(設定時間内における平均値)を算出する。レーザ源14から放出されるレーザ光の光量の増減に比例してフォトダイオード40から出力される電圧値が変動する。上記電圧値の変動を適宜監視し、上記電圧の平均値があらかじめ定めてある閾値よりも低下した場合に異常と判断され、警報が発せられるようになっている。 【0034】 あるいは、光源監視用回路32は、モノリシック型波長掃引半導体レーザ光源10の掃引波長精度の監視用としても利用できる。参照用ウェーハ38の厚さ(およびその分布)は一定であるから、測定した厚さにずれが生じた場合、モノリシック型波長掃引半導体レーザ光源10の掃引波長精度が変動したと判断でき、その変動要因把握の目安となりうる。掃引波長精度は、取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数(例えば1000回)測定した平均値、P-P値、偏差値等で把握しうる。 なお、監視のタイミングはプログラムで設定が可能である。例えば、ウェーハ厚み測定の直前などとすることができる。」 「【図4】 [図:0001428040000006.jpg] 」 b 前記aにおいて摘記した記載を踏まえると、本件特許の明細書には、次の事項が記載されていると認められる。 「参照用ウェーハ38」を用いた「光源監視用回路32」を具備し、 「光源監視用回路32」が、「フォトダイオード40」で取得した「参照用ウェーハ38の表面および裏面で反射されたレーザ光(干渉光)」の干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数(例えば1000回)測定した平均値、P-P値、偏差値等で把握しうる掃引波長精度を監視すること。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)を総合すると、相違点3に係る本件発明1の構成のうち、「前記検出部で取得した干渉波形」は、「検出部で取得した、参照用ウェーハの表面および裏面で反射されたレーザ光の干渉波形」と解釈するのが自然である。 イ 相違点3の検討 (ア) 前記アにおける検討を踏まえて、本件発明1と甲3技術事項を対比する。 a 甲3技術事項において、「参照から得られる反射光の干渉信号を検出する検出器を備え、」「参照による干渉信号」を取得し、「デジタル信号に変換してフーリエ変換することでスペクトルピーク位置を得[る]」ことは、本件発明1における「前記検出部で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数」を求めることに対応するといえなくもない。 b しかしながら、甲3技術事項においては、「ペアの参照のピーク位置を光路長としての参照の厚さであるroplとして識別することにより、サンプルのスペクトルピーク位置から絶対サンプル厚さsoplを導き出[す]」ものであるから、参照から得られたスペクトルピーク位置の周波数それ自体についての「設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値」でシステム全体の短期安定性(例えば光源の掃引波長精度)を把握するものではない。 c また、前記bにおいて示した事項を踏まえると、甲3号証に記載された発明における「参照による干渉信号」は、「サンプル」の厚さを導き出すための基準として用いられるものであるから、そのような「参照による干渉信号」のみを利用して、光源の掃引波長精度を把握しようとする動機も存在しない。 d したがって、仮に甲1発明に甲3技術事項を適用したとしても、前記相違点3に係る本件発明1の構成に想到することはできない。 (イ) そして、参照から得られたスペクトルピーク位置の周波数それ自体についての「設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値」で光源の掃引波長精度を把握することは、甲2号証、甲4号証及び甲5号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、技術常識であるともいえない。 (ウ) したがって、相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が甲1発明、甲2~5号証の記載及び技術常識に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 本件発明1についての判断のまとめ したがって、前記相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明、甲2~5号証の記載及び技術常識に基づいて容易に発明できたものではないから、本件発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。 2 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1と同様に、前記相違点1~3に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2~5号証の記載及び技術常識に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、本件発明2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。 3 特許異議申立人の主張について (1) 特許異議申立人の主張内容について 特許異議申立人は、前記相違点3に関し、特許異議申立書の46~47ページにおいて、次のア~エの主張をしている。 ア 主張1 甲3号証に記載された発明において、「参照プレートによって生成された100の信号を平均化した」(4.4節参照)ことは、本件発明1の「設定回数測定した平均値」に相当し、「縞の平均化操作が厚さ測定の信号対ノイズ比を成功裏に改善」(4.4節参照)することを確認しているため、それらは、本件発明1の「平均値」によって「把握しうる掃引波長精度を監視すること」に相当する。 イ 主張2 甲3号証に記載された発明において、サンプルの「厚さを断続的に測定」し、「毎日得られた厚さ値は平均され」(4.3節、図9(a)参照)、それに基づき、「厚さ測定の安定性がほぼ維持されていることが確認できる」(4.3節参照)ことが示されており、そのような確認は、測定信号のピーク位置の周波数に対応するサンプルの厚さの最大値と最小値の差に基づいて行われたと理解されるところ、そのような最大値と最小値の差が対応する「フーリエ変換後の信号強度のピーク位置の周波数のP-P値」に相当し、ここで、サンプルと参照は測定のために置換可能なものとして使用されており、それらは、本件発明1の「P-P値」によって「把握しうる掃引波長精度を監視すること」に相当する。 ウ 主張3 甲3号証に記載された発明において、「参照の縞の100平均によって導出されたパワースペクトル密度」において「ピークがノイズフロアよりも40dB高い」(4.4節参照)ものであり、ピークを周波数領域における信号強度の最大値、ノイズフロアを周波数領域における信号強度の最小値と理解できるところ、ピークとノイズフロアとの差がフーリエ変換後の「周波数領域における信号強度」についての「P-P値」に相当し、それらは、本件発明1の「P-P値」によって「把握しうる掃引波長精度を監視すること」に相当する。 エ 主張4 甲3号証に記載された発明における、100のsopl値(絶対サンプル厚さ)の「標準偏差」である「σ100」は「システム全体の短期安定性の尺度を提供」(4.2節参照)するところ、「光源の100回連続掃引」によって得られたサンプルと「参照の縞を使用してデータ処理を行い」、「100のパワースペクトル密度」の標準偏差である「σ100の値」を使用して「光源の安定性を評価」(4.3節参照)することは、本件発明1の「(もしくは)偏差値」で「把握しうる掃引波長精度を監視すること」に相当する。 (2) 特許異議申立人の主張についての検討 ア 主張1について 甲3号証に記載された発明において、「参照プレートによって生成された100の信号を平均化した」(4.4節参照)ことは、「参照から得られる反射光の干渉信号」を平均化することを意味している。これに対して、本件発明1は、設定回数測定した「干渉波形のFFTピーク値の周波数」を平均化するものである。「干渉波形のFFTピーク値の周波数」とは、干渉信号を高速フーリエ変換して得られたピーク値に対応する周波数のことであるから、干渉信号そのものとは異なるものである。 したがって、特許異議申立人の前記主張1は採用できない。 イ 主張2について (ア) 甲3号証に記載された発明において、「厚さ測定の安定性がほぼ維持されていること」の確認は、「サンプル」の厚さ値に基づくものであり、「参照」の厚さ値に基づくものではない。 (イ) また、特許異議申立人は「ここで、サンプルと参照は測定のために置換可能なものとして使用されており、」と主張しているが、この主張が具体的に何を意味しているか明らかではない。仮に「サンプル」と「参照」による干渉信号の取得及び処理が同様の構成によってなされることを意味しているとしても、そのこと自体が前記(ア)の認定を覆すに足るものではない。 (ウ) したがって、特許異議申立人の前記主張2は採用できない。 ウ 主張3について 特許異議申立人は、甲3号証に記載された「参照の縞の100平均によって導出されたパワースペクトル密度」において、ピークとノイズフロアとの差がフーリエ変換後の「周波数領域における信号強度」についての「P-P値」に相当すると主張している。これに対し、本件発明1における「P-P値」は、「参照ウェーハ」の「干渉波形のFFTピーク値の周波数」についてのP-P値であるから、複数回測定して得られた「FFTピーク値の周波数」についての最大値と最小値の差と理解される。そうすると、特許異議申立人が主張するP-P値と、本件発明1におけるP-P値は異なるものである。 したがって、特許異議申立人の前記主張3は採用できない。 エ 主張4について 甲3号証に記載された発明における「σ100」はsopl値、すなわち、絶対サンプル厚さの「標準偏差」であるのに対し、本件発明1における「偏差値」は「参照ウェーハ」の「干渉波形のFFTピーク値の周波数」についての偏差値である。前者は「サンプル」に関する値であるのに対し、後者は「参照ウェーハ」に関する値であるので、両者は異なるものである。 したがって、特許異議申立人の前記主張4は採用できない。 第6 むすび 以上検討のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700756

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決24件(不二越機械工業株式会社、石井 悠太)
  • 2026-700149異議申立 / 2026-06-29 / 維持野菜含有調味料、及び野菜含有調味料の製造方法
    同じ当事者: 石井 悠太
  • 2025-700770異議申立 / 2026-03-25 / 訂正認容酸化ガリウム結晶の製造装置
    同じ当事者: 不二越機械工業株式会社
  • 2025-700434異議申立 / 2026-01-16 / 訂正認容レトルトパウチ詰め加工食品及びその製造方法
    同じ当事者: 石井 悠太
  • 2024-700544異議申立 / 2025-08-13 / 訂正認容載置台及び基板処理装置
    同じ当事者: 石井 悠太
  • 2025-700084異議申立 / 2025-04-30 / 維持基板支持器及びプラズマ処理装置
    同じ当事者: 石井 悠太
同じ論点・分野の審決(審決分類)180件(121・G01B)
  • 2025-700436異議申立 / 2026-01-23 / 請求成立(取消)プログラム可能ライトカーテン
    共通の審決分類: 121・G01B
  • 2024-700364異議申立 / 2025-08-29 / 訂正認容光干渉計測装置
    共通の審決分類: 121・G01B
  • 2023-700695異議申立 / 2023-10-19 / 維持配管肉厚量測定装置
    共通の審決分類: 121・G01B
  • 2022-700745異議申立 / 2023-07-07 / 訂正認容皮膚の歪み測定方法
    共通の審決分類: 121・G01B
  • 2021-700405異議申立 / 2022-05-09 / 請求成立(取消)検査支援装置
    共通の審決分類: 121・G01B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存