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特許異議申立

2023-700695

配管肉厚量測定装置

審判番号
2023-700695
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-052088
登録番号
7203480
請求日
2023年07月06日
審決日
2023年10月19日
公報発行日
2023年11月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社AIL
  • 【権利者代理人】生井 和平
  • 【異議申立人】アンリツ 株式会社
  • 【異議申立人代理人】鈴木 典行
  • 【異議申立人代理人】西村 教光
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 九鬼 一慶
  • 審判官 濱本 禎広
分類
P1651.113-Y (G01B) / P1651.121-Y (G01B) / P1651.536-Y (G01B) / P1651.537-Y (G01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7203480号発明「配管肉厚量測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7203480号の請求項1-5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7203480号(以下「本件特許」という。)の請求項1-5に係る特許についての出願は、令和4年3月28日を出願日とする特許出願であって、令和5年1月4日にその特許権の設定登録がされ、同月13日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和5年7月6日に特許異議申立人アンリツ株式会社(以下「特許異議申立人」という。)は、請求項1-5に係る特許に対して特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1-5に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1-5には、次のとおり記載されている。 「【請求項1】 被測定配管の肉厚変化量を計測するための配管肉厚量測定装置であって、該配管肉厚量測定装置は、 被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、初期状態の配管の長手方向の中心軸を基準中心軸として決定する基準中心軸決定部と、 被測定配管の外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元スキャンデータを得るための3次元スキャナと、 前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、3次元設計データと同様の外径を有する部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部と、 基準中心軸決定部により決定される基準中心軸と測定中心軸決定部により決定される測定中心軸とを一致させ、3次元設計データの外側表面と3次元スキャンデータの外側表面とを比較し、被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部と、 を具備することを特徴とする配管肉厚量測定装置。 【請求項2】 請求項1に記載の配管肉厚量測定装置において、前記測定中心軸決定部は、3次元設計データと同様の外径を有する部位を、3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータの被測定配管の長手方向の一方の端部近傍と他方の端部近傍から抽出することを特徴とする配管肉厚量測定装置。 【請求項3】 請求項1に記載の配管肉厚量測定装置であって、さらに、前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータに対して、肉厚変化量計測部により計測される肉厚変化量に応じた色を乗せるカラーマップ部を具備することを特徴とする配管肉厚量測定装置。 【請求項4】 請求項1に記載の配管肉厚量測定装置であって、さらに、前記肉厚変化量計測部により計測された過去の肉厚変化量を比較する比較部を具備することを特徴とする配管肉厚量測定装置。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の配管肉厚量測定装置において、被測定配管がボイラ火炉壁管の各配管であることを特徴とする配管肉厚量測定装置。」 第3 特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人は、特許異議申立ての理由として、以下に示す申立理由1から申立理由4を挙げている。 1 申立理由1(明確性要件違反) 本件発明1-5は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 申立理由2(サポート要件違反) 本件発明1-5は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 申立理由3(実施可能要件違反) 本件発明1-5は、その発明の詳細な説明が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 申立理由4(甲1号証に基づく新規性欠如又は進歩性欠如) 本件発明1-5は、特開2019-211419号公報(以下「甲1号証」という。)に記載された発明であり特許法29条1項3号に該当する、又は、甲1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1-5に係る特許は、特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。 第4 甲1号証の記載及び甲1発明の認定 1 甲1号証の記載事項 甲1号証には、次に摘記する事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。 (1) 【0001】-【0010】 「【0001】 本発明は、三次元形状の計測方法、計測装置、及び計測プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、対象物の表面の三次元形状と共に前記表面を構成する部材の肉厚を計測する際に用いて好適な技術に関する。 〔…中略…〕 【0010】 本発明の三次元形状の計測方法,三次元形状の計測装置,三次元形状の計測プログラムによれば、計測対象物の表面形状に加えて計測対象物の表面を構成する部材の肉厚の分布を把握することができるので、三次元形状の計測手法としての有用性を向上させることが可能になる。」 (2) 【0014】、【図1】 「【0014】 本実施形態の三次元形状の計測方法は、計測対象物の表面を構成する部材の基準寸法に基づいて当該部材の断面形状(特に、外容形状であって、外法寸法に相当する形状)が生成される処理(S4)と、計測対象物の表面の形状と前記部材の断面形状(特に、外容形状のうちの前記計測対象物の表面の形状に対応する部分)とがフィッティングされて計測対象物の表面の形状に対する前記部材の断面形状の位置が特定されると共に前記部材の断面形状に関する中心位置が計算される処理(S5)と、計測対象物の表面から前記部材の肉厚実測値の分だけ離れた位置を前記部材の内部構造の断面の境界が通るように前記部材の内部構造の断面が配置される処理(S6)と、前記部材の内部構造の断面が前記部材の断面形状に関する中心位置と関連づけられて移動して通過した部分として前記部材の内部構造の形状が作成される処理(S7)と、計測対象物の表面の形状と前記部材の内部構造の形状とが比較される処理(S8)とを有するようにしている(図1参照)。」 「【図1】 [図:0001403692000001.jpg] 」 (3) 【0015】、【0016】、【図3】 「【0015】 ここで、本発明が用いられて三次元形状の計測が行われる計測の対象(「計測対象物」と呼ぶ)としては、単数の管状(即ち、中空)の部材(図3(A)参照)、または、複数の管状(即ち、中空)の部材の各々の長手方向が平行になるように配置されてこれら管状の部材が連接された部材(図3(B)参照)が挙げられる。具体的には例えば、建物等の建築構造物やプラント等の機械構造物における配管(即ち、例えば図3(A)に示されるような単数の管状の部材)や、発電用やごみ焼却炉のボイラ火炉の側壁に使用されるボイラ水冷壁管(即ち、例えば図3(B)に示されるような複数の管状の部材が連接された部材)などが挙げられる。 【0016】 なお、本発明の説明では、例えば図3(A)に示されるような単体の管状の部材が計測対象物である場合には当該管状の部材のことを「管状部」と呼び、また、例えば図3(B)に示されるような複数の管状の部材が連接された部材が計測対象物である場合には管状の部材のそれぞれのことを「管状部」と呼ぶ。」 「【図3】 [図:0001403692000002.jpg] 」 (4) 【0019】、【0027】-【0035】、【図2】 「【0019】 本実施形態の三次元形状の計測プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、三次元形状の計測装置10でもある)の全体構成を図2に示す。」 「【図2】 [図:0001403692000003.jpg] 」 「【0027】 そして、コンピュータ10(以下、「三次元形状の計測装置10」と表記する)の制御部11には、三次元形状の計測プログラム17が実行されることにより、計測対象物の表面の三次元形状に相当するメッシュデータの作成に係る処理を行うデータ読込部11a及びメッシュ作成部11bと、計測対象物の表面を構成する部材の基準寸法に基づいて当該部材の断面形状(特に、外容形状であって、外法寸法に相当する形状)を生成する処理を行う断面形状生成部11cと、計測対象物の表面の形状と前記部材の断面形状(特に、外容形状のうちの前記計測対象物の表面の形状に対応する部分)とをフィッティングして計測対象物の表面の形状に対する前記部材の断面形状の位置を特定すると共に前記部材の断面形状に関する中心位置を計算する処理を行う中心位置計算部11dと、計測対象物の表面から前記部材の肉厚実測値の分だけ離れた位置を前記部材の内部構造の断面の境界が通るように前記部材の内部構造の断面を配置する処理を行う内部構造断面配置部11eと、前記部材の内部構造の断面が前記部材の断面形状に関する中心位置と関連づけられて移動して通過した部分として前記部材の内部構造の形状を作成する処理を行う内部構造形状作成部11fと、計測対象物の表面の形状と前記部材の内部構造の形状とを比較する処理を行う肉厚分布計算部11gとが構成される。 【0028】 そして、三次元形状の計測方法が実施される際の手順として、まず、点群データの整備が行われる(S1)。 【0029】 本発明では、三次元形状の計測の対象としての計測対象物の表面形状に関する点群が用いられる。なお、本発明で用いられる点群のデータは、既存のデータが利用・整備されて用いられるようにしても良く、或いは、新たに取得・整備されたデータが用いられるようにしても良い。 【0030】 本発明における点群のデータとして、例えば、半導体レーザなどの光源を備える光照射部と各々がCCD(Charge Coupled Device の略;電荷結合素子)などの受光素子を備えると共に相互に離間して配設されてステレオカメラを構築するように構成される一対の受光部とを有する計測手段が用いられて行われる計測によって取得されるデータが利用されて生成される三次元の座標群/点群のデータ(言い換えると、三次元的な複数の座標点)が用いられ得る。 【0031】 点群のデータの作成の仕法は、特定の手法に限定されるものではなく、取得・整備されたデータ(言い換えると、利用可能なデータ)に応じて適当な手法が適宜選択される。 【0032】 例えば、上記の計測手段として、例えば三角測量法を測定原理とし、計測対象物へと向けてレーザ等の計測光を照射すると共に当該計測光が計測対象物の表面で反射した反射光を検出することによって得られるデータを用いて三次元形状を計測する(言い換えると、計測対象物の表面の三次元形状に関するデータを取得する)非接触式の計測器が用いられるようにしても良い。 〔…中略…〕 【0035】 本実施形態では、S1の処理において表面形状に関する三次元の点群データとして整備された、計測対象物の計測表面に関する三次元座標値の集合である点群に係る座標群データが、データファイルに記録されて点群データファイル18として記憶部12に保存される。」 (5) 【0036】-【0041】 「【0036】 次に、肉厚の実測が行われる(S2)。 【0037】 肉厚は、後述するS6の処理において計測結果の表面形状データにおける表面形状に対して計測対象物の管状部の内部構造の断面の位置を特定する際の基準として用いられるものである。 【0038】 ここで、計測対象物における、計測表面とは反対側の形状を構成する面(言い換えると、計測表面と対向する面)であって計測表面からみて内側の面(即ち、計測手段による撮影/計測では認識され得ない面)のことを「裏面」と呼ぶ。 【0039】 肉厚が実測される箇所数は、特定の箇所数に限定されるものではなく、後述するS6の処理における手順・仕法が考慮されるなどした上で適当な箇所数に適宜設定される。 【0040】 肉厚の実測では、肉厚が実測される箇所として選択・設定された箇所(「肉厚実測箇所」と呼ぶ)毎に、肉厚が実測されると共に位置座標が特定される。 【0041】 肉厚実測箇所の位置座標は、S1の処理において整備された点群データ/座標群データの座標系(具体的には、三次元直交座標系)と共通(別言すると、同一)の座標系における座標値として特定されるようにしても良く、或いは、独自の座標系における座標値として特定された上でS1の処理において整備された点群データ/座標群データの座標系における座標値への変換が行われ得るようにしても良い。」 (6) 【0054】-【0062】 「【0054】 次に、計測対象物の管状部の断面形状の生成が行われる(S4)。 【0055】 この処理では、計測対象物の計測表面を構成・形成している管状部について、管状部の長手方向において連なる長手方向直交断面毎の形状データが生成される。 【0056】 管状部の長手方向直交断面の形状は、管状部の長手方向における各位置での例えば設計値や初期寸法などに基づいて生成される。設計値は、計測対象物の管状部の設計図面等に記載されている設計上の寸法である。初期寸法は、実機へと組み付けられて配設された状態で使用される前(即ち、供用開始時前であって腐食や摩耗などによる減肉が生じる前)に実測された寸法である。管状部の長手方向直交断面の形状が生成される際に用いられる、例えば設計値や初期寸法などの基準となる寸法のことを「基準寸法」と呼ぶ。 【0057】 このS4の処理で生成される、基準寸法に基づく断面形状に関するデータのことを「断面形状データ」と呼ぶ。 【0058】 断面形状データは、計測対象物の管状部の長手方向における各位置での基準寸法に基づく形状が、長手方向における位置に拘わらず一定/同一である場合には一種類だけ生成され、一方、長手方向における位置によって異なる場合には複数種類生成される(言い換えると、基準寸法に基づく形状が異なっている区間/範囲毎に生成され、前記区間/範囲内では断面形状は一定/同一であると取り扱われる)。 【0059】 本実施形態では、計測対象物の計測表面を構成・形成している部材(少なくとも、管状部に該当する部分)の基準寸法に関するデータが、データファイルに記録されて記憶部12に保存される。 【0060】 そして、三次元形状の計測装置10における処理として、制御部11の断面形状生成部11cにより、記憶部12に保存されているデータファイルに記録されている計測対象物の計測表面を構成・形成している部材の基準寸法に関するデータが読み込まれる。 【0061】 続いて、断面形状生成部11cにより、読み込まれた基準寸法が用いられて、計測対象物の管状部についての、長手方向直交断面の形状(即ち、断面形状データ)が基準寸法に基づく形状が異なっている区間/範囲毎に生成される。 【0062】 そして、断面形状生成部11cにより、生成された断面形状データがメモリ15に記憶させられる。」 (7) 【0072】-【0078】、【図4】 「【0072】 本発明における計測対象物の管状部は中空の円筒状であり、計測結果の表面形状データにおける長手方向直交断面の形態は円形又は円弧状であると共に断面形状データにおける長手方向直交断面の外容形状も円形又は円弧状である。そして、計測対象物の管状部の表面形状としての円周又は円弧と断面形状としての円周又は円弧或いは円周のうちの表面形状の円弧に対応する部分(即ち、円弧である)とがフィッティングされた上で断面形状の円又は円弧の中心の位置が求められる。 【0073】 本実施形態では、制御部11の中心位置計算部11dにより、S3の処理においてメモリ15に記憶された計測結果の表面形状データが読み込まれると共に、S4の処理においてメモリ15に記憶された断面形状データが読み込まれる。 【0074】 続いて、中心位置計算部11dにより、計測結果の表面形状データにおける表面形状と断面形状データにおける前記表面形状に対応する部分とがフィッティングされ、前記表面形状にフィッティングする断面形状の位置が特定される。 【0075】 さらに、中心位置計算部11dにより、上記のフィッティング処理によって位置が特定された断面形状に関する中心位置(具体的には、円又は円弧の中心の位置)が計算される。 【0076】 ここで、S5の処理における計測結果の表面形状データと断面形状データとのフィッティング及び断面形状に関する中心位置の計算は、これらのデータの解像度(別言すると、再現密度)が対応し得る範囲で、計測対象物の管状部の長手方向に沿ってできる限り細かい間隔の断面位置毎に行われることが好ましい。なお、断面形状データは、S4の処理において、計測対象物の管状部の長手方向における各位置での基準寸法に基づく形状が異なっている区間/範囲毎に生成されており、フィッティング対象の計測結果の表面形状データによっては、区間/範囲毎に異なる断面形状データに関して中心位置の計算が行われる。 【0077】 上記の処理によって計算される計測対象物の管状部の長手方向における各区間/範囲毎の断面形状に関する中心位置を連結したもの(即ち、中心位置の軌跡)は、前記計測対象物の管状部の現実の湾曲状態を反映した軌跡(「断面中心の軌跡」と呼ぶ)である。 【0078】 そして、中心位置計算部11dにより、計算された断面中心の軌跡に関するデータがメモリ15に記憶させられる。」 「【図4】 [図:0001403692000004.jpg] 」 (8) 【0109】-【0119】、【図8】 「【0109】 次に、計測対象物の管状部の内部構造の形状の作成が行われる(S7)。 【0110】 この処理では、S5の処理において計算された断面中心の軌跡に関するデータとS6の処理において配置された内部構造の断面としての円とが用いられて、計測対象物の管状部の内部構造の形状が作成される。 〔…中略…〕 【0118】 上述の(1)乃至(3)のうちの何れかの仕法による移動に伴って内部構造の断面としての円が通過した部分(即ち、管状部の長手方向直交断面の形状が円形である連通する空間を構成する中空部)により、計測対象物の管状部の内部構造が再現される。そして、この内部構造は、管状部の現実の湾曲状態を反映した形状に作成される。 【0119】 このS7の処理で作成される内部構造の形状に関するデータのことを「内部構造データ」と呼ぶ。内部構造データは、計測対象物の表面からの位置が特定された内部の構造・形状に関する情報を有するものとして構成される。」 「【図8】 [図:0001403692000005.jpg] 」 (9) 【0121】-【0129】 「【0121】 続いて、内部構造形状作成部11fにより、読み込まれた断面中心の軌跡と円の直径及び当該円が配置される位置とが用いられて、上述の〈方法I〉乃至〈方法III〉のうちのS6の処理において用いられた方法に対応した仕法によって計測対象物の管状部の内部構造の形状(即ち、内部構造データ)が作成される。 【0122】 そして、内部構造形状作成部11fにより、作成された内部構造データがメモリ15に記憶させられる。 【0123】 次に、計測対象物の管状部に関する計測結果の表面形状データと内部構造データとの比較が行われる(S8)。 【0124】 この処理では、計測結果の表面形状データと内部構造データとが重ね合わされて、表面形状データと内部構造データとの差違が計算される。 【0125】 すなわち、計測対象物の管状部について、S6及びS7の処理によって計測結果の表面形状データに対して内部構造の形状(別言すると、内部構造の境界)として裏面の位置が特定されたことになるので、管状部の肉厚方向における対比が可能であり、計測結果の表面形状データにおける表面形状と内部構造データにおける内部構造の形状/境界としての裏面の形状との差違を計算することができる。この計算により、計測対象物の管状部(言い換えると、計測対象物の表面を構成する部材)の肉厚の分布が得られる。 【0126】 本実施形態では、制御部11の肉厚分布計算部11gにより、S3の処理においてメモリ15に記憶された計測結果の表面形状データが読み込まれると共に、S7の処理においてメモリ15に記憶された内部構造データが読み込まれる。 【0127】 続いて、肉厚分布計算部11gにより、計測結果の表面形状データにおける表面形状と内部構造データにおける内部構造の形状/境界としての裏面の形状との差分が算定される。 【0128】 そして、制御部11は、上述の処理によって計算された計測対象物の管状部の肉厚の分布を例えば表示部14に表示したりデータファイル等として記憶部12に保存したりした上で、ここまで取り扱ってきた計測対象物についての三次元形状の計測に関する処理を終了する(END)。 【0129】 以上のように構成された三次元形状の計測方法,三次元形状の計測装置,三次元形状の計測プログラムによれば、計測対象物の表面形状に加えて計測対象物の表面を構成する部材の肉厚の分布を把握することができる。このため、三次元形状の計測手法としての有用性を向上させることが可能になる。」 2 甲1発明の認定 前記1で示した摘記事項を総合すると、甲1号証には、次に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「計測対象物の表面形状に加えて計測対象物の表面を構成する部材の肉厚の分布を把握することができる三次元形状の計測装置10であって、(【0010】、【0027】) 三次元形状の計測装置10の制御部11には、 三次元形状の計測プログラム17が実行されることにより、計測対象物の表面の三次元形状に相当するメッシュデータの作成に係る処理を行うデータ読込部11a及びメッシュ作成部11bと、 計測対象物の表面を構成する部材の基準寸法に基づいて当該部材の断面形状(特に、外容形状であって、外法寸法に相当する形状)を生成する処理を行う断面形状生成部11cと、 計測対象物の表面の形状と前記部材の断面形状(特に、外容形状のうちの前記計測対象物の表面の形状に対応する部分)とをフィッティングして計測対象物の表面の形状に対する前記部材の断面形状の位置を特定すると共に前記部材の断面形状に関する中心位置を計算する処理を行う中心位置計算部11dと、 計測対象物の表面から前記部材の肉厚実測値の分だけ離れた位置を前記部材の内部構造の断面の境界が通るように前記部材の内部構造の断面を配置する処理を行う内部構造断面配置部11eと、 前記部材の内部構造の断面が前記部材の断面形状に関する中心位置と関連づけられて移動して通過した部分として前記部材の内部構造の形状を作成する処理を行う内部構造形状作成部11fと、 計測対象物の表面の形状と前記部材の内部構造の形状とを比較する処理を行う肉厚分布計算部11gとが構成され、(【0027】) 計測対象物は、管状の部材(「管状部」)である配管であり、(【0015】、【0016】) 計測手段として、計測対象物へと向けてレーザ等の計測光を照射すると共に当該計測光が計測対象物の表面で反射した反射光を検出することによって得られるデータを用いて三次元形状を計測する(言い換えると、計測対象物の表面の三次元形状に関するデータを取得する)非接触式の計測器が用いられ、(【0032】) 管状部の長手方向直交断面の形状は、管状部の長手方向における各位置での設計値(基準寸法)に基づいて生成され、(【0056】) 中心位置計算部11dは、フィッティング処理によって位置が特定された断面形状に関する中心位置(具体的には、円又は円弧の中心の位置)を計算し、(【0075】) 中心位置の計算は、計測対象物の管状部の長手方向に沿ってできる限り細かい間隔の断面位置ごとに行われ、(【0076】) 中心位置計算部11dは、断面中心の軌跡に関するデータを計算し、(【0078】) 肉厚分布計算部11gにより、計測結果の表面形状データにおける表面形状と内部構造データにおける内部構造の形状/境界としての裏面の形状との差分が算定される、(【0127】) 三次元形状の計測装置。」 第5 当審の判断 1 申立理由1(明確性要件違反)について (1) 明確性要件の判断の基準及び検討の結果の概要 特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の定める要件を充足するか否か、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 そして、申立理由1は、次の(2)アから(5)アに示す申立理由1-1から申立理由1-4までからなるところ、以下の(2)イ-(5)イにおいて上記判断基準に従って詳細に検討するとおり、いずれも理由がないから、申立理由1は、理由がない。 (2) 申立理由1の1について ア 申立理由1の1についての特許異議申立人の具体的主張内容 特許異議申立人は、特許異議申立書の8頁から9頁において、次の(ア)及び(イ)に示す理由により請求項1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5は、発明が明確でない旨主張している。 (ア) 請求項1の記載において、計測の対象となる物理量が、肉厚変化量であるのか肉厚量であるのかが明確でない。また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の段落【0024】の記載を参酌して、請求項1の「肉厚変化量」には肉厚自体を含むと解釈すると、かえって、どちらを計測しようとしているのかが不明確である。 (イ) 仮に計測対象の物理量が肉厚変化量であるとしても、「変化量」の意味が、各計測地点における時間の経過に伴う変化量なのか、それとも、一つの計測時点における空間内のある方向に沿った変化量なのか、明確でない。 イ 申立理由1の1についての当審の判断 (ア) 特許異議申立人の前記ア(ア)の主張について a 請求項1における「肉厚変化量」という用語の意味を把握するために発明の詳細な説明の記載を参酌すると、発明の詳細な説明の段落【0024】には、次に摘記する事項が記載されている。 「【0024】 なお、上述の図示例では、外側表面のみの差分を取って肉厚変化量を計測する例について説明したが、肉厚変化量とは、肉厚自体を計測するものであっても良い。即ち、例えば被測定配管1の設計諸元として、外径だけでなく内径も利用した場合には、3次元設計データの内径から3次元スキャンデータの外側表面までの距離により、肉厚自体を計測することも可能である。即ち、非破壊で肉厚自体を計測することも可能である。」 b 発明の詳細な説明の段落【0024】の記載を参酌すると、請求項1の記載における「肉厚変化量」という用語の意味には、「肉厚」の「変化量」に加えて、それを計算する前段階の「肉厚自体」も含まれることは、明らかであって、不明瞭ということはない。 c したがって、特許異議申立人の前記ア(ア)の主張は、理由がない。 (イ) 特許異議申立人の前記ア(イ)の主張について a 請求項1の第5段落には次に示す記載がある。 「3次元設計データの外側表面と3次元スキャンデータの外側表面とを比較し、被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部」 b 上記aに摘記した記載から、請求項1における「肉厚変化量」という用語における「変化量」の意味に各計測地点における時間の経過に伴う変化量を含むことは、明確である。 また、前記(ア)に示したとおり、「肉厚変化量」という用語の意味には、「肉厚」の「変化量」に加えて、それを計算する前段階の「肉厚自体」も含まれるのであり、その結果、計測時点における空間内のある方向に沿った肉厚の変化量も含み得ることは、明らかである。 c したがって、特許異議申立人の前記ア(イ)の主張は、理由がない。 (ウ) 申立理由1の1のまとめ 以上のとおりであるから、請求項1の記載における「肉厚変化量」という用語の意味は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確でではない。 したがって、請求項1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5は、発明が明確であり、申立理由1の1は理由がない。 (3) 申立理由1の2について ア 申立理由1の2についての特許異議申立人の具体的主張内容 特許異議申立人は、特許異議申立書の9頁において、次に示す理由により請求項1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5は、発明が明確でない旨主張している。 請求項1には「被測定配管」の断面形状について限定がないところ、断面形状が非円形である「被測定配管」に対して、「中心軸」とはいかなる軸を意味するのか不明確である。 イ 申立理由1の2についての当審の判断 (ア) 請求項1の第2段落及び第4段落には、「中心軸」という用語を含む、次のa-cに示す語句が、記載されている。 a 「初期状態の配管の長手方向の中心軸を基準中心軸として決定する基準中心軸決定部」 b 「抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部」 c 「基準中心軸決定部により決定される基準中心軸と測定中心軸決定部により決定される測定中心軸とを一致させ、3次元設計データの外側表面と3次元スキャンデータの外側表面とを比較し、被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部」 (イ)a 本件発明1は、「基準中心軸決定部により決定される基準中心軸と測定中心軸決定部により決定される測定中心軸とを一致させ、3次元設計データの外側表面と3次元スキャンデータの外側表面とを比較し、被測定配管の肉厚変化量を計測する」ものである。 b したがって、請求項1の記載における「中心軸」は「被測定配管の肉厚変化量を計測する」際の基準として「一致させ[る]」ことができる程度の指標として定まる「軸」であればよいことは、その目的からして自明である。そして、このような基準となる軸が断面形状が非円形である「被測定配管」に対しても定め得ることは、自明である。 (ウ) したがって、請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2-5の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではなく、発明は明確である。 よって、申立理由1の2は、理由がない。 (4) 申立理由1の3について ア 申立理由1の3についての特許異議申立人の具体的主張内容 特許異議申立人は、特許異議申立書の9頁において、次の理由により、請求項2及び請求項2の記載を引用する請求項5は、発明が明確でない旨主張している。 請求項2の記載に現われる「端部近傍」とは、どのような範囲をもって「端部近傍」というのか不明確である。発明の詳細な説明の段落【0020】及び【0021】には「近傍」という用語が現れるものの、この用語が意味する範囲について記載がない。 イ 申立理由1の3についての当審の判断 (ア) 請求項2における「端部近傍」という用語の意味を把握するために発明の詳細な説明の記載を参酌すると、発明の詳細な説明の段落【0019】及び【0020】には、次の事項が記載されている 「【0019】 測定中心軸決定部30は、被測定配管1の3次元スキャンデータから被測定配管1の長手方向の中心軸を決定するものである。具体的には、3次元スキャナ20により得られ3次元スキャンデータベース21に記憶された3次元スキャンデータから、3次元設計データと同様の外径を有する部位を少なくとも2か所抽出する。3次元設計データと同様の外径を有する部位とは、腐食を受けておらず外径が新品時の外径を維持している部位である。そして、この抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定すれば良い。なお、3次元設計データと同様の外径を有する部位は、必ずしも完全に一致する外径でなくても良く、適宜パラメータを調整することで、配管の製造誤差等による製品誤差を吸収しても良い。 【0020】 ここで、この3次元設計データと同様の外径を有する2か所の部位は、3次元スキャナ20により得られる3次元スキャンデータの被測定配管1の長手方向の一方の端部近傍と他方の端部近傍から抽出すれば良い。即ち、被測定配管1の3次元スキャンデータの両端近傍からそれぞれ抽出することで、被測定配管1の全体的な傾き等を考慮した誤差の少ない中心軸を得ることが可能である。なお、3次元設計データと同様の外径を有する部位は2か所だけに限らず、より多くの部位を抽出しても良い。」 (イ) 前記(ア)に摘記した記載を参酌すると、請求項2の記載における「端部近傍」として「抽出」される「部位」は、「被測定配管1の全体的な傾き等」を考慮して「中心軸を決定する」ために用いられるものであり、「3次元設計データと同様の外径を有する部位」であって、「必ずしも完全に一致する外径でなくても良[い]」ものであり、誤差を考慮しつつ決定できる部位であることが理解できる。 すなわち、請求項2の記載における「端部近傍」とは、「被測定配管」の「端部」そのものを含め、「全体的な傾き等を考慮し[つつ]」「抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する」ことに用い得る程度に互いに離間した各々の「部位」であることは、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することにより理解することができる。 そして、請求項2は、少なくとも、先行技術と区別し得る程度には明確であるといえる。 (ウ) したがって、請求項2の記載及び請求項2の記載を直接的に引用する請求項5の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではなく、発明は明確である。 よって、申立理由1の3は、理由がない。 (5) 申立理由1の4について ア 申立理由1の4についての特許異議申立人の具体的主張内容 特許異議申立人は、特許異議申立書の9頁において、次の理由により請求項4及び請求項4の記載を引用する請求項5は、発明が明確でない旨主張している。 「比較」とは二つのものを対照し、差異を調べることであるところ、請求項4の「前記肉厚変化量計測部により計測された過去の肉厚変化量を比較する比較部」との記載は、「過去の肉厚変化量」を何と比較するのか不明確である。 イ 申立理由1の4についての当審の判断 (ア) 請求項4の記載における「前記肉厚変化量計測部により計測された過去の肉厚変化量を比較する」という語句の意味を把握するために発明の詳細な説明の記載を参酌すると、発明の詳細な説明の段落【0027】には、次に摘記する事項が記載されている。 「【0027】 さらに、本発明の配管肉厚量測定装置には、比較部60を設けても良い。比較部60は、肉厚変化量計測部40により測定された過去の肉厚変化量を比較するものである。過去の肉厚変化量は、肉厚変化量データベース41に記憶されたものを用いれば良い。このような比較部60により肉厚変化量を比較することで、測定された時期毎の経年変化を見ることも可能である。ボイラ火炉壁管の減肉速度は配管の位置によっても異なるため、経年変化を見ることで各配管に対する補修や交換等のメンテナンスのスケジュールも立てやすくなる。」 (イ) 前記(ア)に摘記した記載を参酌すると、請求項4の記載における「前記肉厚変化量計測部により計測された過去の肉厚変化量を比較する」ことは、「測定された時期毎の経年変化を見る」ためのものであるから、二つの時点間の比較であることは明確である。 (ウ) したがって、請求項4の記載及び請求項4の記載を直接的に引用する請求項5の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確ではなく、発明は明確である。 よって、申立理由1の4は、理由がない。 2 申立理由2(サポート要件違反)について (1) 申立理由2について特許異議申立人の具体的主張内容 特許異議申立人は、特許異議申立書の10頁において、申立理由2として、それぞれ次のア及びイに示す理由を申し立てている。以下、当該申立理由をそれぞれ「申立理由2の1」及び「申立理由2の2」という。 ア 申立理由2の1についての特許異議申立人の具体的主張内容 明細書の【0016】の「被測定配管1の設計諸元は、例えば外径や内径、肉厚、長手方向の長さ等、配管の設計パラメータである」との記載を参酌すると、請求項1に記載された「設計諸元」は、外径のほか内径、肉厚、長手方向の長さ等配管の設計パラメータを含むところ、発明の詳細な説明には、設計諸元が「外径」を含まない場合の基準中心軸の決定については記載されていないから、請求項1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 イ 申立理由2の2についての特許異議申立人の具体的主張内容 請求項1においては、「被測定配管」については断面の形状を定める限定がないから、「被測定配管」には断面の形状が非円形のものも含まれるところ、発明の詳細な説明には、断面の形状が非円形の場合に「中心軸」をどのように決定するのか記載されていないから、請求項1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5については、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (2) 申立理由2についての当審の判断 ア(ア) 事案に鑑みて、申立理由2の2から検討する。 (イ) 前記1(3)イの「申立理由1の2についての当審の判断」における(イ)において検討したとおり、「中心軸」は「被測定配管の肉厚変化量を計測する」際の基準として「一致させ[る]」ことができる程度の指標として定まる「軸」であればよいことは明確であるところ、「被測定配管」の断面の形状が例えば楕円などの非円形である場合であってもこのような「中心軸」を定め得ることは、自明である。 (ウ) したがって、申立理由2の2は、理由がない。 イ(ア) 次に申立理由2の1について検討する。 (イ) 前記アにおいて検討したとおり、「被測定配管」の断面の形状が非円形の場合であっても良いことは自明であるところ、この場合、「設計諸元」としては、例えば長軸長と短軸長という、円形の管の「外径」とは異なるパラメータを用い得ることは、明らかである。 (ウ) したがって、申立理由2の1は、理由がない。 ウ 以上ア及びイに検討のとおりであるから、請求項1及び請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-5は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、申立理由2は、理由がない。 3 申立理由3(実施可能要件違反)について 特許異議申立人は、特許異議申立書の10頁から12頁において、申立理由3として、以下の(1)から(3)までのそれぞれのアに示す理由により本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1-5について、特許法36条4項1号が規定する実施可能要件を充足しない旨申し立てている(以下、当該申立理由を、枝番を付けて「申立理由3の1」などという。)。 しかしながら、それぞれ、以下の(1)から(3)までのそれぞれのイに示すとおり、いずれも理由がない。 (1) 申立理由3の1について ア 申立理由3の1についての特許異議申立人の主張内容 請求項1には、「前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、3次元設計データと同様の外径を有する部位を少なくとも2か所抽出」するとの記載があるところ、明細書の段落【0019】には、「3次元設計データと同様の外径を有する部位とは、腐食を受けておらず外径が新品時の外径を維持している部位である。」との記載がある。 これから肉厚変化量を測定しようとしている状況で、どうやって「腐食を受けておらず」という部位を特定するのか記載されておらず、当業者にとって実施可能とはいえない。 特に配管内部が腐食を受けていないかどうかは外部からの目視や3次元スキャナによって確認することができないから、発明の詳細な説明を参照しても、当業者が「腐食を受けておらず」という部位を特定することは不可能である。 したがって、本件発明1-5は、その発明の詳細な説明が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 申立理由3の1についての当審の判断 (ア)a 段落【0020】には、次の記載がある。 「この3次元設計データと同様の外径を有する2か所の部位は、3次元スキャナ20により得られる3次元スキャンデータの被測定配管1の長手方向の一方の端部近傍と他方の端部近傍から抽出すれば良い。」 b 「腐食を受けて[いない]」状態に近い部位として、「被測定配管1の長手方向の一方の端部近傍と他方の端部近傍」が例示されており、当業者が「腐食を受けて[いない]」部位を特定することが不可能であるという特許異議申立人の主張は失当である。 (イ)a 明細書の段落【0001】には、次の記載がある。なお、下線は合議体による。 「本発明は配管肉厚量測定装置に関し、特に、ボイラ火炉壁管等、配管表面が腐食する可能性のある被測定配管の肉厚変化量を計測するための配管肉厚量測定装置に関する。」 b 前記aに摘記した記載からも分かるとおり、本件発明1-5は、配管表面が腐食する可能性のある被測定配管を対象としたものであり、配管内部の腐食を考慮の対象としたものではない。 c したがって、「配管内部が腐食を受けていないかどうかは外部からの目視や3次元スキャナによって確認することができない」ことは、本件発明1-5の実施においては何ら問題となることではない。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)に検討のとおりであるから、申立理由3の1は、理由がない。 (2) 申立理由3の2について ア 申立理由3の2についての特許異議申立人の主張内容 請求項1の記載においては、「被測定配管」という用語について、断面の形状に関する限定がないから、「被測定配管」の断面の形状には非円形のものも含まれる。 しかしながら、断面の形状が非円形の形状である場合には、そもそも中心軸が存在するのか否かが不明であり、また、中心軸が存在するとしても、どのように中心軸を定義するのかが不明である。更に加えて、楕円形状の配管に中心軸が定義され得るとしても、楕円形には長軸及び短軸の二つのパラメータがあるから、「被測定配管の外表面の長手方向の少なくとも一部の3次元スキャンデータ」から、どのようにして「測定中心軸」の位置を決定するのか不明である。 したがって、本件発明1-5は、その発明の詳細な説明が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 申立理由3の2についての当審の判断 前記1(3)イの「申立理由1の2についての当審の判断」における(イ)において検討したとおり、「中心軸」は「被測定配管の肉厚変化量を計測する」際の基準として「一致させ[る]」ことができる程度の指標として定まる「軸」であればよいことは明確であるところ、「被測定配管」の断面の形状が例えば楕円などの非円形である場合であってもこのような「中心軸」を定め得ることは、自明であるし、例えば、長軸長と短軸長を用いれば、中心軸の位置を決定し得ることは自明である。 したがって、申立理由3の2は、理由がない。 (3) 申立理由3の3について ア 申立理由3の3についての特許異議申立人の主張内容 「配管肉厚量測定装置」の発明である本件発明1-5において肉厚を計算するためには、被測定配管における外径と内径の差分の演算が必要であるが、発明の詳細な説明には被測定配管の内径や内面形状を計測することの記載がない。このような外面計上の少なくとも一部の測定データからなぜ「配管肉厚量」又は「配管肉厚変化量」が計測できるのか、当業者にとっても理解できない。 特別な場合として、被測定配管の外面は全く腐食も変形もされず、内面のみが腐食される場合を考えると、本件特許発明のような方法で「配管肉厚量」も「配管肉厚変化量」も計測することは不可能である。 したがって、本件発明1-5は、その発明の詳細な説明が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 申立理由3の3についての当審の判断 (ア) 発明の詳細な説明の段落【0024】には、次の記載がある。 「外側表面のみの差分を取って肉厚変化量を計測する例について説明したが、〔…中略…〕3次元設計データの内径から3次元スキャンデータの外側表面までの距離により、肉厚自体を計測することも可能である。」 (イ) そして、前記(1)イ「申立理由3の1についての当審の判断」において検討したとおり、本件発明1-5は、配管表面が腐食する可能性のある被測定配管を対象としたものであり、配管内部の腐食を考慮の対象としたものではない。したがって、前記(ア)で示した摘記事項も踏まえると、「3次元設計データの内径」と「3次元スキャンデータの外側表面までの距離」から、「肉厚変化量」である「肉厚自体」が計測できることの根拠は明確である。 (ウ) したがって、申立理由3-3は、理由がない。 4 申立理由4(甲1号証に基づく新規性欠如又は進歩性欠如) (1) 当審の判断 ア 対比分析 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)a(a) 本件発明1における「肉厚変化量」という用語の意味を把握するために発明の詳細な説明の記載を参酌すると、段落【0024】には、次に摘記する事項が記載されている。 「【0024】 なお、上述の図示例では、外側表面のみの差分を取って肉厚変化量を計測する例について説明したが、肉厚変化量とは、肉厚自体を計測するものであっても良い。即ち、例えば被測定配管1の設計諸元として、外径だけでなく内径も利用した場合には、3次元設計データの内径から3次元スキャンデータの外側表面までの距離により、肉厚自体を計測することも可能である。即ち、非破壊で肉厚自体を計測することも可能である。」 (b) 明細書の前記段落【0024】の記載を参酌すると、請求項1における「肉厚変化量」という用語の意味には、「肉厚」の「変化量」に加えて、「肉厚自体」が含まれることが理解できる。 b そして、甲1発明は「計測対象物の表面を構成する部材の肉厚の分布を把握することができる三次元形状の計測装置10」であり、「計測対象物は、管状の部材(「管状部」)である配管であ[る]」から、甲1発明の「配管」「の肉厚」は、本件発明1の「被測定配管の肉厚変化量」に相当する。 c したがって、前記a及びbを踏まえると、「配管肉厚量測定装置」の発明である本件発明1と「計測対象物の表面を構成する部材の肉厚の分布を把握することができる三次元形状の計測装置10」の発明である甲1発明は、 「被測定配管の肉厚変化量を計測するための配管肉厚量測定装置」の発明である点において一致する。 (イ)a 甲1発明における「管状部の断面形状に関するデータ」を「生成」するための、「管状部の」「設計値(基準寸法)」は、本件発明1の「初期状態の配管の設計諸元」に相当する。 b また、甲1発明においては、「管状部の長手方向直交断面の形状は、管状部の長手方向における各位置での設計値(基準寸法)に基づいて生成され[る]」から、3次元のデータであるといえる。 c そうすると、甲1発明の「外容形状であって、外法寸法に相当する形状」を含む「断面形状」に関するデータである「管状部の長手方向における各位置での設計値(基準寸法)に基づいて生成され[る]」「管状部の長手方向直交断面の形状」は、本件発明1の「外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データ」と、「外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データ」である点において共通する。 d 前記cを踏まえると、甲1発明の「計測対象物の表面の形状と前記部材の断面形状(特に、外容形状のうちの前記計測対象物の表面の形状に対応する部分)とをフィッティングして計測対象物の表面の形状に対する前記部材の断面形状の位置を特定すると共に前記部材の断面形状に関する中心位置を計算する処理を行う中心位置計算部11d」と「被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、初期状態の配管の長手方向の中心軸を基準中心軸として決定する基準中心軸決定部」とは、「被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、何らかの処理を実行する手段」の点において共通する。 e したがって、本件発明1と甲1発明は、次の点において共通する。 「被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、何らかの処理を実行する手段」を備える点。 (ウ)a 甲1発明の「計測対象物へと向けてレーザ等の計測光を照射すると共に当該計測光が計測対象物の表面で反射した反射光を検出することによって得られるデータを用いて三次元形状を計測する(言い換えると、計測対象物の表面の三次元形状に関するデータを取得する)非接触式の計測器」は、本件発明1の「被測定配管の外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元スキャンデータを得るための3次元スキャナ」に相当する。 b したがって、本件発明1と甲1発明は、次の点において共通する。 「被測定配管の外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元スキャンデータを得るための3次元スキャナ」を備える点。 (エ)a 甲1発明の「中心位置計算部11d」が「計算」する、「円又は円弧の中心の位置」である「断面中心の軌跡に関するデータ」は、本件発明1の「外径の中心点をそれぞれ通る線」である「測定中心軸」に相当する。 b 前記a及び前記(ウ)の検討結果を踏まえると、甲1発明の「断面中心の軌跡に関するデータを計算し、」「計測対象物の表面の形状と前記部材の断面形状(特に、外容形状のうちの前記計測対象物の表面の形状に対応する部分)とをフィッティングして計測対象物の表面の形状に対する前記部材の断面形状の位置を特定すると共に前記部材の断面形状に関する中心位置を計算する処理を行う中心位置計算部11d」と、本件発明1の「前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、3次元設計データと同様の外径を有する部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部」は、次の点において共通する。 「前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部」 c したがって、本件発明1と甲1発明は、次の点において共通する。 「前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部」を備える点。 (オ)a 甲1発明においては、「肉厚分布計算部11g」により、「計測結果の表面形状データにおける表面形状と内部構造データにおける内部構造の形状/境界としての裏面の形状との差分が算定される」ものである。 b ここで、前記(ウ)の検討結果も踏まえると、甲1発明の「計測結果の表面形状データにおける表面形状」は、本件発明1の「3次元スキャンデータの外側表面」に相当する。 c 甲1発明の「内部構造データにおける内部構造の形状/境界としての裏面」と本件発明1の「3次元設計データの外側表面」は、仮想の構造物の内側表面又は外側表面である点において共通する。 d 前記(ア)aで示した「肉厚変化量」という用語の解釈を踏まえると、甲1発明の「肉厚分布計算部11g」は、本件発明1の「被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部」に相当する。 e 以上をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の点において共通する。 「仮想の構造物の内側表面又は外側表面と3次元スキャンデータの外側表面とを比較し、被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部」を備える点。 エ 一致点及び相違点の認定 前記ウの「対比分析」の検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記の(イ)に示す相違点において相違する。 (ア) 一致点 「被測定配管の肉厚変化量を計測するための配管肉厚量測定装置であって、該配管肉厚量測定装置は、 被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、何らかの処理を実行する手段と、 被測定配管の外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元スキャンデータを得るための3次元スキャナと、 前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部と、 仮想の構造物の内側表面又は外側表面と3次元データの外側表面とを比較し、被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部と、 を具備する配管肉厚量測定装置」である点。 (イ) 相違点 a 相違点1 本件補正発明においては、 被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、何らかの処理を実行する手段が、 「初期状態の配管の長手方向の中心軸を基準中心軸として決定する基準中心軸決定部」であり、 前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部が抽出する部位が、 「3次元設計データと同様の外径を有する部位」であり、 被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部が、 「基準中心軸決定部により決定される基準中心軸と測定中心軸決定部により決定される測定中心軸とを一致させ[る]」のに対して、 甲1発明においては、 被測定配管の初期状態の配管の設計諸元に基づく外側表面の長手方向の少なくとも一部の3次元設計データから、何らかの処理を実行する手段が、 「計測対象物の表面の形状と前記部材の断面形状(特に、外容形状のうちの前記計測対象物の表面の形状に対応する部分)とをフィッティングして計測対象物の表面の形状に対する前記部材の断面形状の位置を特定すると共に前記部材の断面形状に関する中心位置を計算する処理を行う中心位置計算部11d」であり、 前記3次元スキャナにより得られる3次元スキャンデータから、部位を少なくとも2か所抽出し、抽出された部位の外径の中心点をそれぞれ通る線を測定中心軸として決定する測定中心軸決定部が抽出する部位が、 「計測対象物の管状部の長手方向に沿ってできる限り細かい間隔の断面位置」であり、 「被測定配管の肉厚変化量を計測する肉厚変化量計測部」に相当する「肉厚分布計算部11g」が、 「基準中心軸決定部により決定される基準中心軸と測定中心軸決定部により決定される測定中心軸とを一致させ[る]」ことは行わず、「三次元形状の計測装置」は、「計測対象物の表面から前記部材の肉厚実測値の分だけ離れた位置を前記部材の内部構造の断面の境界が通るように前記部材の内部構造の断面を配置する処理を行う内部構造断面配置部11e」を備える点。 b 相違点2 肉厚変化量計測部が被測定配管の肉厚変化量を計測するに際して3次元データの外側表面との比較に用いる仮想の構造物の内側表面又は外側表面が、 本件発明1においては「3次元設計データの外側表面」であるのに対して、 甲1発明は「内部構造データにおける内部構造の形状/境界としての裏面の形状」である点。 オ 相違点についての判断 前記相違点1について検討する。 相違点1に係る構成は、甲1号証において開示も示唆もされておらず、さらに、相違点1に係る構成が周知技術や技術常識等に該当すると認めるに足る証拠も発見できていない。 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、新規性を有し、当業者が甲1発明に基づいて容易に想到し得たものということはできない。 本件発明1の構成を全て有する本件発明2から本件発明5についても同様に、新規性を有し、当業者が甲1発明に基づいて容易に想到し得たものということはできない。 (2) 特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人の主張内容 特許異議申立人は、特許異議申立書の19-20頁において、次の点を主張している。 基準中心軸について、本件発明1は、「基準中心軸決定部」が「基準中心軸」を決定した後に「肉厚変化量計測部」が「基準中心軸」と「測定中心軸」を一致させるのに対して、甲1発明は、「中心位置決定部」が表面の三次元形状に関するデータにおける表面形状と、断面形状データにおける前記表面形状に対応する部分とをフィッティングさせ、断面形状に関する中心位置を計算した後に、長手方向における各区間/範囲毎の断面形状に関する前記中心位置を連結した断面中心の軌跡を生成する点において、本件発明1は甲1発明と相違する。 上記相違点については、結局のところ、本件発明1が基準中心軸と基準中心軸をそれぞれ決定した後に両中心軸を一致させるのに対し、甲1発明は3次元設計データと3次元スキャンデータを最初にフィッティングすることによって両者の中心位置を予め一致させ、その中心位置を連結して断面中心の軌跡を得ているにすぎない。 すなわち、本件発明1と甲1発明においては最終的に生成されるものは同じであり、生成に至る手順が相違するにすぎない。 基準中心軸と測定中心軸を一致させたものをどのように生成するかは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 さらに、別の見方をすれば、甲1発明においてはフィッティングの結果として基準中心軸と測定中心軸が同一のものとなっているから、甲1発明においても、基準中心軸と測定中心軸はいずれも決定されているとみることもできる。 したがって、上記相違点は、実質的には相違点とならない。 イ 特許異議申立人の主張についての合議体の見解 特許異議申立人は、本件発明1と甲1発明においては最終的に生成されるものは同じであり、生成に至る手順が相違するにすぎず、基準中心軸と測定中心軸を一致させたものをどのように生成するかは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないと主張するが、甲1発明においては、「肉厚実測値」が必要であるのに対して、本件発明1においては、このような測定値を必要としておらず、本件発明1と甲1発明は、単なる手順が相違するものとは認められず、具体的に相違点1に係る手法が公知でない以上、設計事項であるとはいえない。 (3) 申立理由4についての小括 前記(1)及び(2)に検討したとおり、本件発明1から本件発明5は、甲1発明に対して新規性及び進歩性を有するから、申立理由4は理由がない。 第6 むすび 以上より、特許異議申立書で申し立てられた申立理由1から申立理由4によっては、本件発明1から本件発明5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700695

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