特許異議申立
2021-700405
検査支援装置
- 審判番号
- 2021-700405
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-065304
- 登録番号
- 6775054
- 請求日
- 2021年04月28日
- 審決日
- 2022年05月09日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】鹿島建設株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人後藤特許事務所
- 【権利者代理人】大菅 義之
- 【権利者代理人】青木 宏義
- 【権利者代理人】天田 昌行
- 【異議申立人】西林 博
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 居島 一仁
- 審判官 佐藤 久則
- 分類
- P1652.121-ZDA(G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の2第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6775054号発明「検査支援装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6775054号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第6775054号の請求項9に係る特許を維持する。
特許第6775054号の請求項1、2、7、8に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6775054号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成31年3月29日に出願され、令和2年10月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月28日に特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は8である。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 4月30日 : 特許異議申立人 西林 博による請求項1、2、7、8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年 7月29日付け: 取消理由通知書
令和3年10月 4日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年11月22日 : 特許異議申立人西林 博による意見書の提出
令和4年 1月27日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、取消理由通知書(決定の予告)に対して、特許権者から応答はなかった。
第2 本件訂正の適否1 訂正の内容
令和3年10月4日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を訂正することを求めるものであり、次の(1)の本件訂正前の特許請求の範囲の記載を、後記(2)の本件訂正後の特許請求の範囲の記載のとおり訂正するものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、
を含む、検査支援装置。
【請求項2】
前記決定部は更に、前記鉄筋群を構成する複数の鉄筋との交差の数が最大になるように前記計測線の位置を決定することを特徴とする、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項3】
前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と外接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定することを特徴とする請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項4】
前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と少なくとも一部が内接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定することを特徴とする請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項5】
前記決定部は更に、前記平面においてユーザによって選択された任意の範囲に基づいて、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域を決定することを特徴とする請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項6】
前記決定部は更に、前記計測対象領域の中心または重心を通るように前記計測線の位置を決定することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記鉄筋群の情報に含まれるそれぞれの鉄筋の情報に基づいて、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を決定し、
前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する、ことを特徴とする請求項1~6に記載の検査支援装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を、対応する鉄筋の長手方向に延びる一方のエッジに沿うように決定することを特徴とする請求項7に記載の検査支援装置。」
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋からなる鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、
を含み、
前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、
前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
決定された角度で引かれた前記計測線を、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線と共に示し、
前記計測部は、前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する検査支援装置。
【請求項2】
前記決定部は更に、前記鉄筋群を構成する複数の鉄筋との交差の数が最大になるように前記計測線の位置を決定することを特徴とする、請求項1に記載の検査支援装置。
【請求項3】
検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と外接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定する検査支援装置。
【請求項4】
検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と少なくとも一部が内接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定する検査支援装置。
【請求項5】
検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は更に、前記平面においてユーザによって選択された任意の範囲に基づいて、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域を決定する検査支援装置。
【請求項6】
前記決定部は更に、前記計測対象領域の中心または重心を通るように前記計測線の位置を決定することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項7】
検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋からなる鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、
前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する検査支援装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記鉄筋の長手方向を示す前記直線を、対応する鉄筋の長手方向に延びる一方のエッジに沿うように決定することを特徴とする請求項7に記載の検査支援装置。
【請求項9】
前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれるそれぞれの鉄筋の情報に基づいて、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を決定し、
前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する、ことを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の検査支援装置。」
(3) 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおり、訂正事項1から訂正事項6に分けることができる。なお、訂正事項5については、訂正の内容に関する検討の便宜の観点から、訂正事項5-1と訂正事項5-2に更に細分化した。
本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の対象となる請求項1~8は、特許法120条の5第4項に規定する「一群の請求項」を構成する。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、
を含む、検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋からなる鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、
を含み、
前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、
前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
決定された角度で引かれた前記計測線を、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線と共に示し、
前記計測部は、前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する検査支援装置。」
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3における
「 前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と外接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定することを特徴とする請求項1に記載の検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正する。請求項3の記載を引用する請求項6についても同様に訂正する。
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と外接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定する検査支援装置。」
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4における
「 記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と少なくとも一部が内接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定する検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正する。請求項4の記載を引用する請求項6についても同様に訂正する。
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は更に、前記平面において前記鉄筋群と少なくとも一部が内接する矩形の範囲を、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域として決定する検査支援装置。」
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5における
「 前記決定部は更に、前記平面においてユーザによって選択された任意の範囲に基づいて、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域を決定することを特徴とする請求項1に記載の検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正する。請求項5の記載を引用する請求項6についても同様に訂正する。
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定されるそれぞれの鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は更に、前記平面においてユーザによって選択された任意の範囲に基づいて、鉄筋同士の間隔を計測する計測対象領域を決定する検査支援装置。」
オ 訂正事項5
訂正事項5は、請求項7の記載について訂正することに関するところ、次の訂正事項5-1と訂正事項5-2に分けることができる。
(ア) 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項7における
「 前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれるそれぞれの鉄筋の情報に基づいて、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を決定し、
前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する、ことを特徴とする請求項1~6に記載の検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正する。請求項7の記載を引用する請求項8についても同様に訂正する。
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋からなる鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定する決定部と、
前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋との交点から前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、を含み、
前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、
前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する検査支援装置。」
(イ) 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項7における
「 前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれるそれぞれの鉄筋の情報に基づいて、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を決定し、
前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する、ことを特徴とする請求項1~6に記載の検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正し、新たな請求項9とする。
「 前記決定部は、
前記鉄筋群の情報に含まれるそれぞれの鉄筋の情報に基づいて、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を決定し、
前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
前記計測部は、前記計測線と、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する、ことを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の検査支援装置。」
カ 訂正事項6について
特許請求の範囲の請求項8における
「 前記決定部は、前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線を、対応する鉄筋の長手方向に延びる一方のエッジに沿うように決定することを特徴とする請求項7に記載の検査支援装置。」との記載を次のとおり訂正する。
「 前記決定部は、前記鉄筋の長手方向を示す前記直線を、対応する鉄筋の長手方向に延びる一方のエッジに沿うように決定することを特徴とする請求項7に記載の検査支援装置。」
2 本件訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の「鉄筋群」について、「少なくとも3本以上の鉄筋からなる」ものに限定し、「決定部」について「前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、決定された角度で引かれた前記計測線を、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線と共に示」すものであることを限定し、「計測部」について「前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する」ものであることを限定したものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
訂正事項1に係る「鉄筋群」が「少なくとも3本以上の鉄筋からなる」ものであることは、本件特許の明細書の段落【0050】の記載及び【図15】から明らかである。
また、訂正事項1に係る「決定部」が「前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、決定された角度で引かれた前記計測線を、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線と共に示」すものであることや、「計測部」が「前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線との交点から鉄筋同士の間隔を計測する」ものであることは、本件特許の明細書の段落【0038】~【0041】、【0050】の記載及び【図11】、【図12】、【図15】から明らかである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2~4について
ア 訂正の目的
訂正事項2~4は、訂正前の請求項3~5の記載が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項3~5とする訂正であるから、訂正事項2~4は、特許法120条の5第2項ただし書き4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
訂正事項2~4に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項2~4に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項7が請求項1~6を引用していたところ、訂正事項5により、引用の対象から請求項2が削除され、異議申立ての対象である請求項1を引用するものに対応する訂正後の請求項7(訂正事項5-1による)と、異議申立ての対象でない請求項3~6の記載を引用するものに相当する訂正後の請求項9(訂正事項5-2による)に分けられている。したがって、訂正事項5に係る訂正により、請求項9が新設されているが、訂正事項5のうち引用の対象を削減する訂正自体は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記の点も踏まえると、訂正事項5に係る訂正のうち、訂正事項5-2に係る訂正は、訂正前の請求項1~6を引用していた訂正前の請求項7のうち訂正前の請求項3~6を引用するものを訂正後の請求項9とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項5-1に係る訂正は、訂正前の請求項7のうち請求項1を引用するものに減縮するとともに、これを請求項1を引用しない形式に書き換え、さらに「鉄筋群」について「少なくとも3本以上の鉄筋からなる」ものに限定するものであるから、訂正事項5-1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
訂正事項5-1に係る「鉄筋群」が「少なくとも3本以上鉄筋からなる」ものであることは、本件特許の明細書の段落【0038】~【0041】、【0050】の記載及び【図11】、【図12】、【図15】から明らかである。
また、引用対象を削除して減縮すること及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正においては、新規事項が追加されないことは明かである。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものにも該当しないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(4) 訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、「前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線」を「前記鉄筋の長手方向を示す前記直線」とし、訂正後の請求項7との対応関係を明瞭にする旨の訂正であるため、当該訂正事項6は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
訂正事項6に係る訂正後の「前記鉄筋の長手方向を示す前記直線」の記載で特定される構成は、訂正前の「前記それぞれの鉄筋の長手方向を示す直線」の記載で特定される構成から導き出せることは明らかであるから、当該訂正事項6に係る訂正は、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(5) 独立特許要件について
請求項1、2、7、8は特許異議の申立ての対象であるから、請求項1、2、7、8については、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。また、本件訂正により新設された請求項9は、訂正前の請求項7を減縮したものに対応するから、独立特許要件は課されない。
また、特許異議の申立ての対象となっていない請求項3~6に係る訂正である訂正事項2~4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当するから、同条9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(6) 小括
以上のとおりであるから、前記結論のとおり、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 取消理由(決定の予告)の概要
本件特許について、当審の審判長が令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
本件訂正後の請求項1、2、7、8に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1、2、7,8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
甲1号証 :特開2015-1146号公報
甲2号証 :特開平7-286822号公報
追加文献1:特開2010-122008号公報
追加文献2:実願平5-57556号(実開平7-26701号のCD-ROM
追加文献3:実願昭54-8887号(実開昭55-109801号のマイクロフィルム)
追加文献4:特開2016-3981号公報
第4 当審の判断
1 本件特許に係る発明
前記第2において説示したとおり、本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、2、7~9に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」等という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲(前記第2の1(2)参照)の請求項1、2、7~9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 先行技術について
(1) 甲1号証に記載された事項と甲1発明の認定
ア 甲1号証に記載された事項
甲1号証には、以下の事項が記載されている(下線は当合議体によるものである。)。
「【0025】
まず、図1を参照して、本発明が適用された鉄筋検査支援システム10の構成を説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態に係る鉄筋検査支援システム10は、当該システム10の中心的な役割を担う鉄筋検査支援装置20と、検査対象とする鉄筋50を撮影する撮影装置30と、を有している。
【0027】
本実施の形態に係る撮影装置30は、カラー画像およびモノクロ画像の3次元撮影を行うことができると共に、撮影によって得られた3次元画像を示す左視点画像情報および右視点画像情報(以下、「3次元画像情報」という。)を外部装置に送信する機能を有している。これに対し、鉄筋検査支援装置20は、撮影装置30によって送信された3次元画像情報を受信する機能を有している。なお、本実施の形態では、鉄筋検査支援装置20と撮影装置30との間の通信を無線通信にて行う場合について説明するが、これに限らず、有線通信にて行う形態としてもよい。
【0028】
次に、図2を参照して、本鉄筋検査支援システム10において特に重要な役割を有する鉄筋検査支援装置20の電気系の要部構成を説明する。
【0029】
同図に示すように、本実施の形態に係る鉄筋検査支援装置20は、システムバスBUSに接続され、当該鉄筋検査支援装置20全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)20Aが備えられている。
(中略)
【0047】
次に、本実施の形態に係る鉄筋検査支援システム10の作用を説明する。なお、ここでは、鉄筋検査支援装置20として持ち運び可能なコンピュータ(一例として、ノートブック型のパーソナル・コンピュータ)を採用し、検査対象とする鉄筋(以下、「検査対象鉄筋」という。)を検査する検査者が鉄筋検査支援装置20および撮影装置30を持参して、検査対象鉄筋が施工されている建物(検査対象建物)に出向いて当該検査対象鉄筋を検査する場合について説明する。また、ここでは、錯綜を回避するために、鉄筋情報データベースDB1および3DCAD情報データベースDB2が既に構築されている場合について説明する。
【0048】
以下、図7を参照して、鉄筋検査支援処理の実行時における鉄筋検査支援装置20の作用を説明する。なお、図7は、鉄筋検査支援処理の実行指示がキーボード20E等を介して入力された際に、鉄筋検査支援装置20のCPU20Aによって実行される鉄筋検査支援プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。
【0049】
同図のステップ100では、予め定められたフィーマットとされた検査対象入力画面を表示するようにディスプレイ20Fを制御し、次のステップ102にて、所定情報の入力待ちを行う。
【0050】
図8には、上記検査対象入力画面の表示状態の一例が示されている。同図に示すように、本実施の形態に係る検査対象入力画面には、検査対象鉄筋が設けられている配筋部位を示す情報(本実施の形態では、3DCAD情報データベースDB2と同様の「部位ID」。)の入力領域と、当該配筋部位における検査対象鉄筋が設けられている面を示す情報(本実施の形態では、当該面の向いている方向を示す情報。)の入力領域と、検査対象鉄筋のメーカの入力領域と、が表示される。
【0051】
この際、まず、検査者は、撮影装置30により、検査対象鉄筋の1つの面を正面から3次元撮影し、当該撮影によって得られた3次元画像情報を鉄筋検査支援装置20に送信する。なお、この際の撮影は、カラー画像の撮影およびモノクロ画像の撮影の何れの撮影を行ってもよいが、撮影によって得られる3次元画像情報の小容量化および当該3次元画像情報に対する画像処理の簡易化の観点から、本実施の形態に係る鉄筋検査支援システム10では、モノクロ画像の撮影を行うものとする。なお、撮影装置30から鉄筋検査支援装置20に送信された3次元画像情報は、二次記憶部20Dの所定領域に記憶される。
【0052】
検査対象鉄筋の3次元画像情報の鉄筋検査支援装置20への送信が終了すると、検査者は、鉄筋検査支援装置20のキーボード20E等を用いて、上記検査対象入力画面の各入力領域に対応する情報を入力した後、当該検査対象入力画面の下端部近傍に表示されている終了ボタンをキーボード20E等を介して指定する。検査対象入力画面の終了ボタンが指定されると上記ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。なお、図8では、検査対象とする配筋部位が部位IDとして「1-1-1」が割り振られたものであり、当該配筋部位における北の方向を向いている面に設けられた鉄筋が検査対象鉄筋であり、メーカが「Aメーカ」である場合が例示されている。
【0053】
ステップ104では、撮影装置30から受信した3次元画像情報(以下、「処理対象画像情報」という。)を二次記憶部20Dから読み出し、次のステップ106では、読み出した処理対象画像情報に基づいて、当該処理対象画像情報により示される画像に含まれる物体の各点における3次元位置を示す座標情報(以下、「3次元点群座標情報」という。)を作成する。本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、上記3次元点群座標情報として、3DCAD情報データベースDB2の各鉄筋の座標と同様の3次元座標系の座標情報を適用している。なお、複数の視点から撮影された物体の3次元点群座標情報の作成は、従来既知のステレオ・マッチングの技術等による3次元計測手法等を利用することによって実行することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0054】
次のステップ108では、作成した3次元点群座標情報から、処理対象画像情報により示される画像における、撮影装置30による撮影位置から予め定められた順番で近い位置に位置する鉄筋群の画像領域に対応する座標情報を抽出する。なお、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、上記予め定められた順番として1番を適用しており、本ステップ108では、上記撮影位置から最も近い位置に位置する鉄筋群(図1に示す例では、黒色とされた鉄筋群)の画像領域に対応する座標情報を抽出するものとしている。なお、この鉄筋群が設けられている領域は、撮影装置30による撮影位置からみて最も手前側に位置しているため、以下では、この鉄筋群が設けられている配筋部位の領域を「前面領域」という。
【0055】
以下、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムにおける、上記前面領域の座標情報の抽出手順を、図9~図11を参照しつつ詳細に説明する。
(1)まず、図9に示すように、3次元点群座標情報から、撮影装置30による撮影方向を示す視線ベクトルaと同一の直線上にない座標であり、当該撮影方向からみて最も手前側にある面(以下、「前面」という。)に位置する予め定められた複数点(本実施の形態では、3点。)の座標情報を抽出する。なお、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、上記前面に位置する3点の座標情報の抽出を、当該前面の座標群により示される2次元画像を正面視左上部、右上部、下部の3領域に分割し、各分割領域の中央部から1点ずつ、合計3点の座標情報を抽出することにより行う。
(2)次に、抽出した前面に位置する3点を含む平面の法線ベクトルbを導出する。
(3)次に、導出した法線ベクトルbの方向に沿って、3次元点群座標情報により示される3次元点群を撮影装置30側から順に並べた場合に同一の位置に位置する点の個数を積算することにより、一例として図10に示すヒストグラムを作成する。
(4)次に、作成したヒストグラムにおいて、最も撮影装置30側にあるピーク(極大値)を含む領域を前面領域と見なし、当該前面領域に含まれる座標情報を3次元点群座標情報から抽出する。
【0056】
本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、一例として図10に示すように、ヒストグラムの極大値を含み、かつ当該ヒストグラムの平均値以上の領域(同図のマスクされている領域。)を前面領域としているが、これに限るものではない。例えば、上記平均値に代えて、上記極大値に対する予め定められた割合(例えば、50%)の値等の他の値を適用してもよい。
(5)次に、抽出した前面領域に含まれる3次元点群座標情報(以下、「前面座標情報」という。)を用いて、最小自乗法等により正確な前面の法線ベクトルbを導出する。
【0057】
すなわち、一例として図11に示すように、抽出した前面座標情報により示される3次元点群(同図の黒色の鉄筋群の前面を示す3次元点群)は、前面の面方向(同図の矢印cが示す方向。)には、大きなばらつきがあり、前面に垂直な方向(同図の矢印dが示す方向。)には、ばらつきが最も小さくなる。この前面に垂直な方向を法線ベクトルbとして最小自乗法等により導出する。ここでは、前面座標情報の全てを演算対象としているため、上記3点で計算した前面の法線ベクトルbよりも誤差の影響を受けにくく、より正確な法線ベクトルbを求めることができる。
(6)以上の処理によって得られた法線ベクトルbを用いて、上記(3)、(4)と同じ処理によって前面座標情報を抽出する。
【0058】
次のステップ110では、上記ステップ108の処理によって抽出した前面座標情報に基づいて、当該前面座標情報により示される画像における鉄筋の領域の一部となる矩形領域を設定する。以下、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムによる上記矩形領域の設定手順を、図12~図14を参照しつつ詳細に説明する。
【0059】
まず、上記前面座標情報を、2次元座標系(X-Y座標系)に配置する。これにより、一例として図12に示すように、前面領域の主筋50A、帯筋50B、及び床面等の底面50Cに相当する点群が2次元座標系に配置される。なお、以下では、この2次元座標系に点群が配置されて得られた画像を「2次元画像」という。
【0060】
次に、この2次元画像における各点の数をX軸方向、Y軸方向で計数することにより、同図の下端部に示すヒストグラム(以下、「X軸ヒストグラム」という。)および右端部に示すヒストグラム(以下、「Y軸ヒストグラム」という。)を得る。
【0061】
次に、X軸ヒストグラムおよびY軸ヒストグラムを、各々予め定められた閾値(本実施の形態では、対応するヒストグラムの最大値と平均値との中央値。)で区分する。これにより、鉄筋部分と非鉄筋部分とにおおよそ区別することができる。
【0062】
ここで、上記2次元画像の端部には、底面50C等の非鉄筋部分が含まれている場合が多いので、一例として図12に示すように、当該2次元画像の中央部付近で、X軸ヒストグラムおよびY軸ヒストグラムの各々の最大値に対応する座標同士の交点を基準位置として、当該交点の近傍で、かつ当該交点に連続する主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像上に、後述する鉄筋の画像領域の特定を開始するための矩形領域52A、52Bを設定する。
【0063】
従って、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、上記各矩形領域52A、52Bの設定の際に、上記2次元画像から主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域を切り出すが、この際の切り出しは、X軸ヒストグラムおよびY軸ヒストグラムの各々について、最大値の座標位置を中心として予め定められた閾値以上となる領域を、上記交点に連続する主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域として切り出す。
【0064】
しかしながら、上記2次元画像に含まれる主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の画像の軸線方向が、必ずしも垂直方向および水平方向となるように撮影されるとは限らない。このため、切り出した主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域は、一例として図13(A)および図13(B)に示すように、鉄筋でない部分が少なからず含まれてしまう場合が多い。
【0065】
これに対処するため、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の軸線方向が、できるだけ垂直方向および水平方向となるように、上記2次元画像を回転させる画像処理を施す。なお、上記画像処理としては、予め定められた回転角度の刻み幅(例えば、0.2度の刻み幅。)で上記2次元画像を回転させ、その際のX軸ヒストグラムおよびY軸ヒストグラムの最大値が最も大きくなった場合の2次元画像を採用する方法等、従来既知の方法を適用することができる。
【0066】
そして、本ステップ110では、この画像処理を経た2次元画像から主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域を切り出し、これらの画像領域に対して、一例として図14(A)および図14(B)に示すように、予め定められた寸法の矩形領域52A、52Bを、各々の軸線方向とは直交する方向に対して中央部に設定する。なお、この際の各矩形領域における軸線方向に対する寸法は、鉄筋50に設けられている節が少なくとも複数(本実施の形態では、2)含まれる長さとすることが好ましい。
【0067】
次のステップ112では、処理対象画像情報のうちの左視点画像情報および右視点画像情報の何れか一方(本実施の形態では、左視点画像情報であり、以下、「適用画像情報」という。)から上記ステップ110の処理によって設定した矩形領域52Aおよび矩形領域52Bの各々に対応する領域の画像情報(以下、「基準矩形画像情報」という。)を抽出した後、抽出した基本矩形画像情報により示される矩形の画像と同一、または略同一の矩形の画像を示す画像情報(以下、「抽出矩形画像情報」という。)を適用画像情報から抽出する。そして、本ステップ112では、抽出した基準矩形画像情報および抽出矩形画像情報の各々によって示される画像のうち、垂直方向に延びる同一直線上に並ぶ画像の領域の各々を各主筋50Aの画像領域として特定し、水平方向に延びる同一直線上に並ぶ画像の領域の各々を各帯筋50Bの画像領域として特定する。
【0068】
なお、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムでは、上記同一、または略同一の画像か否かの判定を、基準矩形画像情報により示される画像との間で、同一の位置関係にある画素同士の画素値の差の標準偏差が予め定められた閾値未満である画像情報の画像を同一または略同一の画像であると判定し、上記閾値以上である画像情報の画像を異なる画像であると判定することにより行っている。しかしながら、この方法に限らず、従来既知の画像認識技術(パターン・マッチング技術)を適用して判定してもよいことは言うまでもない。
【0069】
図15には、本ステップ112の処理により特定された帯筋50Bの画像領域(同図の白線矩形領域)の一例が示されている。
【0070】
次のステップ114では、以上の処理によって得られた各主筋50Aおよび各帯筋50Bの各画像領域の適用画像情報に基づいて、主筋50Aおよび帯筋50Bの各鉄筋における節間距離を導出する。以下、本実施の形態に係る鉄筋検査支援プログラムによる上記節間距離の導出手順を、図16を参照しつつ詳細に説明する。
【0071】
まず、上記ステップ112の処理によって特定された主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域の画像は、複数の節が軸線方向に繰り返された画像となっているため、それらをフーリエ変換することにより、一例として図16に示すように、その画像の中に波がいくつあるか、換言すれば、繰り返し存在する節がいくつあるかを求める。なお、図16に示す例では、帯筋50Bの画像領域に85個の節があることを示している。
【0072】
次に、3次元点群座標情報に基づいて、特定された各主筋50Aおよび各帯筋50Bの各々の画像領域の軸線方向に対する実際の長さを導出し、最後に、導出した各主筋50Aおよび各帯筋50Bの節の数を、対応する鉄筋について導出した軸線方向の長さで除算することにより、各主筋50Aおよび各帯筋50Bの各々の節間距離を算出する。
【0073】
次のステップ116では、以上の処理によって得られた主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の節間距離に対応し、かつ上記検査対象入力画面を介して入力されたメーカに対応する鉄筋の径を鉄筋情報データベースDB1から読み出すことにより、主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の径を特定する。
【0074】
また、ステップ116では、上記ステップ112の処理によって得られた主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域に基づいて、主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の本数を導出すると共に、主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域の位置を3次元点群座標情報に基づいて特定し、特定した位置に基づいて隣接する主筋50A間の距離および隣接する帯筋50B間の距離を導出する。
【0075】
次のステップ118では、上記検査対象入力画面を介して入力された部位IDおよび検査対象面に対応する鉄筋に関する情報を3DCAD情報データベースDB2から読み出し、次のステップ120にて、読み出した情報により示される対応する主筋50Aおよび帯筋50Bの径と、以上の処理によって得られた主筋50Aおよび帯筋50Bの径とを照合する。
【0076】
また、本ステップ120では、上記ステップ116の処理によって得られた主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の本数と、3DCAD情報データベースDB2から読み出した情報により得られる、対応する鉄筋の本数との照合も実行する。さらに、本ステップ120では、上記ステップ116の処理によって得られた主筋50A間の距離および帯筋50B間の距離と、3DCAD情報データベースDB2から読み出した情報により得られる、対応する距離との照合も実行する。なお、CPU20Aは、本ステップ120の処理による照合結果を示す情報を二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。
【0077】
次のステップ122では、上記ステップ120の処理による照合の結果に基づいて、予め定められたフォーマットとされた照合結果表示画面を構成し、当該照合結果表示画面をディスプレイ20Fにより表示するように制御する。
【0078】
図17には、本ステップ122の処理によってディスプレイ20Fにより表示される照合結果表示画面の一例が示されている。」
「【図1】
[図:0001388355000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001388355000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001388355000003.jpg]
」
「【図9】
[図:0001388355000004.jpg]
」
「【図10】
[図:0001388355000005.jpg]
」
「【図11】
[図:0001388355000006.jpg]
」
「【図12】
[図:0001388355000007.jpg]
」
「【図15】
[図:0001388355000008.jpg]
」
「【図16】
[図:0001388355000009.jpg]
」
イ 図面から読み取れる事項の認定
図12から、「前面領域」に含まれる「主筋50A」、「帯筋50B」は、「主筋50A」の本数及び「帯筋50B」の本数が、それぞれ3本以上あることが読み取れる。
ウ 甲1号証に記載された発明の認定
前記ア及びイを総合すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲1発明>
「 撮影装置30から鉄筋検査支援装置20に送信された3次元画像情報は、二次記憶部20Dの所定領域に記憶され(【0051】)、
撮影装置30から受信した3次元画像情報(以下「処理対象画像情報」という。)を二次記憶部20Dから読み出し、次に、読み出した処理対象画像情報に基づいて、当該処理対象画像情報により示される画像に含まれる物体の各点における3次元位置を示す座標情報(以下「3次元点群座標情報」という。)を作成し(【0053】)、
作成した3次元点群座標情報から、処理対象画像情報により示される画像における、撮影装置30による撮影位置から最も近い位置に位置する鉄筋群の画像領域に対応する座標情報を抽出し(以下、この鉄筋群が設けられている配筋部位の領域を「前面領域」という。)(【0054】)、
当該前面領域に含まれる座標情報を3次元点群座標情報(以下「前面座標情報」という。)から抽出し(【0055】、【0056】)、
上記前面座標情報を、2次元座標系(X-Y座標系)に配置し、これにより、前面領域の主筋50A、帯筋50B、及び床面等の底面50Cに相当する点群が2次元座標系に配置され(以下、この2次元座標系に点群が配置されて得られた画像を「2次元画像」という。)(【0059】)、
この前面領域の主筋50A及び50Bは、3本以上あり(イ図面から読み取れる事項)、
主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の軸線方向が、できるだけ垂直方向および水平方向となるように、上記2次元画像を回転させる画像処理を施し、当該画像処理としては、予め定められた回転角度の刻み幅(例えば、0.2度の刻み幅。)で上記2次元画像を回転させ、その際のX軸ヒストグラムおよびY軸ヒストグラムの最大値が最も大きくなった場合の2次元画像を採用する方法が適用され(【0065】)、
この画像処理を経た2次元画像から主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域を切り出し、これらの画像領域に対して、予め定められた寸法の矩形領域52A、52Bを、各々の軸線方向とは直交する方向に対して中央部に設定し(【0066】)、
処理対象画像情報のうちの左視点画像情報および右視点画像情報の何れか一方である適用画像情報から、矩形領域52Aおよび矩形領域52Bの各々に対応する領域の基準矩形画像情報を抽出した後、抽出した基本矩形画像情報により示される矩形の画像と同一、または略同一の矩形の画像を示す抽出矩形画像情報を適用画像情報から抽出し、抽出した基準矩形画像情報および抽出矩形画像情報の各々によって示される画像のうち、垂直方向に延びる同一直線上に並ぶ画像の領域の各々を各主筋50Aの画像領域として特定し、水平方向に延びる同一直線上に並ぶ画像の領域の各々を各帯筋50Bの画像領域として特定し(【0067】)、
主筋50Aおよび帯筋50Bの各画像領域の位置を3次元点群座標情報に基づいて特定し、特定した位置に基づいて隣接する主筋50A間の距離および隣接する帯筋50B間の距離を導出し(【0074】)、
得られた主筋50A間の距離および帯筋50B間の距離と、3DCAD情報データベースDB2から読み出した情報により得られる、対応する距離との照合も実行し(【0076】)、
照合の結果に基づいて、予め定められたフォーマットとされた照合結果表示画面を構成し、当該照合結果表示画面をディスプレイ20Fにより表示する(【0077】)、
検査支援プログラムがCPU20Aによって実行される(【0048】)、
鉄筋検査支援装置20。」
(2) 甲2号証に記載された事項の認定
甲2号証には、次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は各辺が波うっている形状の矩形に近い形状(以下単に矩形という)の画像につき、その傾斜角および幅を計測する方法に係わり、幅の場合人間の目視による測定と大差ないように、画像処理によって測定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】テレビジョンのシャドウマスクやIC(集積回路)の基板に穴あけするような場合、露光エッチングが行われる。これは加工するパターンを拡大して透明フイルムに描き、感光剤を塗った目的の面に投光して結像させることにより縮小像を得、これをエッチングすることにより目的のパターンを得る加工方法である。このような露光エッチングにより矩形の小穴を開ける場合、小さい穴ほど回折による屈折で露光に用いるレーザ光がしみ出し、フイルム上の矩形を投光すると、繭形に中央が凹む傾向がある。一方シャドウマスクはCRT(陰極線管)の走査結像を電気信号へ変換するためには中央に膨らみを有する樽形の形状がよいので、樽形の矩形が用いられる。矩形の各辺は、感光剤自体粒子であること、およびエッチングは錆のように進行するので、直線とはならず凹凸の曲線となっている。しかも、この凹凸の中には幅は狭いがピークの大きなものがランダムに混じっている場合が多い。
【0003】図8は露光エッチングによって得られる矩形小穴の形状を示す。(A)は樽形の矩形を示し、(B)は繭形の矩形を示す。各辺は凹凸の曲線よりなり、かつ凹凸には幅は狭いがピークの大きなものが表れている。矩形の大きさの一例を示すと、矩辺(幅)が80~200μm、凹凸のピークからピークまでの波高は4~10μm、突然発生する大きな波高は他の大部分の波高の2~3倍程度である。また、この矩形を顕微鏡に接続したテレビカメラで撮像し、CRTに表示する場合、1画素の大きさは2μm程度となるので、矩形の幅は40~100画素、凹凸の通常のピークからピークまでの波高は2~5画素で表される。また、凹凸の周期は3~8画素となっている。
【0004】このような形状、寸法の矩形について、矩形の傾きθと幅の測定が行われる。同時にその付近の矩形の相対位置や間隔も測定される。従来は目視により顕微鏡の視野で十字線と像を相対移動して測定していた。これを画像解析により自動測定する時、傾きθは図9に示すように矩形の重心Gを通り長辺の方向を示す中心線Sの傾斜をCRT画面の走査線Pに垂直な線Qとの角度θで表す。角度θの測定は、矩形の重心Gを求め、この重心Gを通り、矩形と交差する線分で交点間の長さが最大の線分L1と次に大きな線分L2すなわち仮想対角線を求め、このL1とL2の2等分線を中心線Sとし、走査線Pに垂直な垂直線Qとの角度としてθを求めていた。
【0005】矩形の幅の測定は人が顕微鏡の十字線を用いて測定する時は図8のように平均的な線を引くことにより分解能及び再現性のよい測定ができる。一方、図10は矩形の幅の画像解析による自動測定方法を示す。(A)は幅に平行な線分から求める寸法で走査線Pに垂直な垂直線Qに対する中心線Sの角度θを上述した方法により求め、重心Gを通り、走査線Pに角度θの線分を引き、この線分に平行に前後数本の線分を引き、各線分と矩形との交点を求め、各線分につき交点間の長さを求め、この長さの平均値を矩形の幅とする。なお、各平行線の間隔は数画素程度離れて設定していた。(B)は面積から求める方法で、重心Gを挟んで中心線Sに直交する2本の平行線H1,H2間隔hで引き、この2本の線分H1,H2と矩形の長辺で囲まれる斜線で示す面積を求め、この面積をhで除した値を幅とする方法である。」
「【0016】図6は中心線Sと垂直線Qとの角度がθである略矩形の重心近傍の幅Nを算出する他の方法を示す図で、図4とは異なり基準線T平行に、基準線Tも含めn本を1画素程度の間隔で引き、略矩形との交点を求める。次にこの交点間の線分の長さを求め、最大値と最小値を除き平均値Nを求めている。平行線を用いて幅を測定する従来の方法に比べピッチが1画素程度と小さく、平行線の範囲を1組の凹凸以上を含む範囲とすることにより各平行線が略矩形の両辺の凹部の位置ばかり通ることや凸部の位置ばかり通る確率は少なくなっている。図4に示す方法とほぼ同様に、目視による測定に近い結果が得られる。」
「【図6】
[図:0001388355000010.jpg]
」
「【図8】
[図:0001388355000011.jpg]
」
「【図10】
[図:0001388355000012.jpg]
[図:0001388355000013.jpg]
」
(3) 追加文献1に記載された事項の認定
追加文献1には、次の技術事項が記載されている。
「【0038】
続いて、携帯端末4は、二値化された画像データから鉄筋の輪郭を検出し、両端の鉄筋にあるマーカの輪郭を検出する(S804)。図12を用いて説明すると、背景が白色(ピクセルの値=1)で、鉄筋やマーカが黒色(ピクセルの値=0)になっているので、例えば、画像データを水平右方向にスキャンしたときに、ピクセルの値が1から0に変化する箇所を左側輪郭(左側エッジ)として検出し、ピクセルの値が0から1に変化する箇所を右側輪郭(右側エッジ)として検出する。次に、マーカ間の対のエッジを鉄筋として認識し、鉄筋本数を取得する(S805)。図12では、マーカ間には、左側エッジ及び右側エッジの対が2つあるので、マーカ間には2本の鉄筋があり、マーカ貼付の両端鉄筋2本を加算して、合計4本の鉄筋があることが認識される。
【0039】
続いて、携帯端末4は、画像データ内におけるマーカ内基準長Lmの占有ピクセルLp[pixel]を抽出し、画像スケール(1ピクセル当たりの長さ)を取得する(S806)。具体的には、マーカである円形の直径のうち、最大の直径を特定し、その径長に含まれるピクセル数Lpをカウントする。そして、マーカ内基準長Lmをピクセル数Lpで除することにより、1ピクセル当たりの長さが求められる。これによれば、円形のマーカを用いることにより、どの方向からマーカを見ても最大直径が一定になるので、マーカの向きが変わっても精度よく1ピクセル当たりの長さを特定することができる。さらに、配筋ピッチ(鉄筋の間隔)を計測する(S807)。ここで、配筋ピッチは、隣り合う鉄筋の中心軸間の間隔を示すものであり、例えば、左側エッジ間距離及び右側エッジ間距離の平均値として算出される。」
「【図12】
[図:0001388355000014.jpg]
」
(4) 技術常識Aの認定
ア 追加文献2に記載された事項
追加文献2には、次の技術事項が記載されている。
「【0006】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を図面に基づき説明する。
図1はこの実施例における磁性材料に着脱自在な定規の使用状態を示す正面図であり、図2は図1のA-A線断面図である。
図2から分かるように、この定規1A,1Bは、粉状の磁石をゴム中に分散させた材料により板状に成形された板状ゴム磁石から、所定の幅と長さの長方形に切り出されたマグネットシート2の片面に、長さの目盛を記した目盛表示板3を接着剤4により貼り付けたものである。この目盛表示板3は、マグネットシート2と同じ長方形の極薄いプラスチック板からなり、図1から分かるように、その幅方向一端に、長手方向に沿う長さの目盛が刻んである。
【0007】
したがって、コンクリート打設前の配筋状態の写真撮影に際し、二本一組で前期定規1A,1Bを用意し、図1に示すように、水平に配置された鉄筋5a~5cに一方の定規1Aのマグネットシート2側を垂直に当てれば、この定規1Aは、鉄筋5a~5cに磁力により容易に取り付けられて、目盛表示板3の目盛により鉄筋5a~5cの配置間隔の寸法を示すことができる。また、このように取り付けられた定規1Aの上に直角に、他方の定規1Bを貼り付けることにより、鉄筋の長さ方向における所定位置間の寸法を示すこともできる。さらに、これらの定規1A,1Bは、適度な磁力により鉄筋5a~5cに取り付けられるため鉄筋からの着脱が容易であり、取り付け位置の調整が簡単にできる。」
「【図1】
[図:0001388355000015.jpg]
」
イ 追加文献3に記載された事項
追加文献3には、次の技術事項が記載されている。
(1頁13行~2頁2行)
「 本考案は主に鉄筋の間隔を測定するスケールに関するものである。
鉄筋コンクリートでは鉄筋が引張力に抵抗する。従つて鉄筋コンクリート構造物では鉄筋の本数や間隔が設計どうりに配置されていることが重要である。
そこでコンクリート打設前に配筋状態を写真にとつておくがその際スケールを一緒に写すことによつて正確なピツチで配置されていることが確認できる。」
(3頁3~9行)
「<1>定規板
定規板1は軽い材料で作つた長尺の板体でありその表面には縁に沿つて目盛2を太い線や数字で見やすく表示しておく。
そして定規板1の中央には長手方向に長窓3を、出来るだけ定規板の端から端まで十分な長さで開設する。」
(6頁2~20行)
「 次に第3図のように垂直に配列された主筋10群の間隔を表示する場合の使用方法について説明する。
主筋10は前記したように横方からみて一列に揃つておらず例えば端と端の主筋10間で平面的にβの出入りが存在する。(第2図)
そのときまず固定具5をゆるめて主軸4を長窓3内を移動させる。そして両方の磁石6の溝61に主筋10を位置せしめたら定規板1を撮影者に向かつて平行になるように調整する。
この調整は磁石6と裏ワツシャ8の間のばね7がたわむから定規板1を鉄筋側に軽く押しつけるだけで簡単に行える。
その状態で固定具5で主軸4を固定すれば定規板1は撮影者に平行な状態で主筋10群の適当な高さに容易に取り付けられる。
以上は水平方向の間隔の表示のために用いる方法を示したが垂直方向の間隔を表示する場合も同様である。」
(第1図~第3図)
「
[図:0001388355000016.jpg]
[図:0001388355000017.jpg]
」
追加文献3の第3図から、垂直に配列された3本以上の主筋10群に対して、撮影者に平行な状態で前記主筋10群の適当な高さに容易に取り付けた定規板1により、前記主筋群の水平方向の間隔を表示することが読み取れる。
ウ 技術常識Aの認定
前記アにおいて追加文献2に記載された技術事項及び追加文献3に記載された技術事項を摘記して例示したように、次の技術事項は技術常識である(以下「技術常識A」という。)。
[技術常識A]
「3本以上の鉄筋における配置間隔を1本の定規を当てて測定すること。」
(5) 周知技術Bの認定
ア 追加文献4に記載された事項
追加文献4には、次の技術事項が記載されている。
「【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る配筋検査システム10を示す図である。この図に示すように、配筋検査システム10は、建設工事の現場で配筋された柱又は梁の鉄筋を撮影するのに用いられるデジタルカメラ12と、デジタルカメラ12によって撮影された画像に基づいて鉄筋の規格を判別したり鉄筋の本数やピッチを計算したり、計算結果と設計情報との一致/不一致を判定したりする処理を実行するPC(処理装置、Personal Computer)20を備えている。PC20は、上記処理によって得られた鉄筋の規格や鉄筋のピッチ等の計測情報及び判定結果を撮影画像と共に表示するモニタ(表示装置)30を備えている。PC20としては、ペンタブレットやタブレットPC(タッチパネルPC)やノートパソコン等の携帯型PCを採用でき、本実施形態ではPC20としてペンタブレットが用いられている。
【0015】
ここで、本実施形態に係る配筋検査方法では、長手方向両端にマーカMを設けた背景バーBを対象の鉄筋の背後に設置して、デジタルカメラ12により鉄筋を撮影する。そして、後述するように、PC20により、対象の鉄筋の背景バーBと重なる部分を抽出し、対象の鉄筋の抽出された部分について、径、本数、ピッチを算出する。」
「【0020】
図3は、モニタ30の表示画面を示す図である。この図に示すように、モニタ30には、データファイル(例えば、図示するようにJPG方式による画像ファイル)選択部31と、撮影画像表示部32と、ローカル座標設定部33と、鉄筋マップファイル選択部34と、配筋情報設定部35と、カラーチューブの指定や計測指示の指示入力部36と、計測結果表示部37と、計測結果の表示切替部38と、保存選択部39とが表示される。」
「【0026】
計測結果表示部37には、縦筋と横筋とのそれぞれについての径、本数、ピッチと、判定結果とが表示される。ここで、判定結果は、配筋情報設定部35で入力された縦筋及び横筋の径、本数、ピッチと、縦筋及び横筋の計測結果とが比較されて、径、本数については一致するか否か、ピッチについては差が許容範囲内にあるかという点について判定された結果である。
【0027】
計測結果の表示切替部38では、撮影画像表示部32に表示させる縦筋又は横筋のピッチを平均値にするか、1本1本の個別の値にするかを選択できる。また、保存選択部39では、撮影画像表示部32に表示中の画像を保存するか否か、ならびにログを保存するか否かを選択できる。」
「【図3】
[図:0001388355000018.jpg]
」
追加文献4に記載された配筋検査装置では、上記段落【0015】に記載されているとおり、対象の鉄筋の背後に設置した背景バーを利用して、対象の鉄筋の抽出された部分のピッチを計算しているところ、図3からは、3本以上の鉄筋のピッチが計測され、複数の計測結果が背景バーとともにモニタに示されていることが読み取れる。
イ 周知技術Bの認定
前記アにおいて追加文献4に記載された技術事項を摘記して例示したように、次の技術は周知技術である(以下「周知技術B」という。)。
[周知技術B]
「 建設工事の現場で配筋された柱又は梁の鉄筋を撮影するのに用いられるデジタルカメラと、デジタルカメラによって撮影された画像に基づいて鉄筋の規格を判別したり鉄筋の本数やピッチを計算したり、計算結果と設計情報との一致/不一致を判定したりする処理を実行するPC(処理装置、Personal Computer)を備え、前記PCが前記処理によって得られた鉄筋の規格や鉄筋のピッチ等の計測情報及び判定結果を撮影画像とともに表示するモニタ(表示装置)を備える配筋検査システムにおいて、前記モニタの判定結果表示部に3本以上の鉄筋のピッチを背景バーとともに表示すること。」
3 対比・判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明は、「鉄筋検査支援装置20」の発明であるから、本件発明1と甲1発明は、「検査支援装置」の発明である点で一致する。
(イ)a 甲1発明の、「主筋50A」は、本件発明1の「鉄筋」に相当する。
また、「主筋50A」は、特定された「3次元点群座標情報」に基づいて「隣接する」「主筋50A間の距離」が「導出」され、「検査」されるものであるから、「検査対象」とされる「複数」の「鉄筋」であるといえる。
よって、甲1発明の「主筋50A」が特定されるものも含む「3次元点群座標情報」は、本件発明1の「検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データ」に相当する。
b 上記aでの検討結果を踏まえると、甲1発明において、「鉄筋検査支援装置20」がその「CPU20A」により「検査支援プログラム」を実行し、「主筋50A」が特定されるものも含む「3次元点群座標情報」を「作成」することは、本件発明1の「検査支援装置」の「取得部」が「検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部」を含む点で一致する。
(ウ)a 甲1発明の「前面領域に含まれる座標情報」は、「2次元座標系に配置」されるものであるから、「平面」をなすものである。
b また、当該「前面領域に含まれる座標情報」に含まれる「主筋50A」は、「3本以上」の「鉄筋」であり、「2次元座標に配置」に配置したときの「各々の軸線方向」が「できるだけ垂直方向」となるように「回転させる画像処理」されるものであるから、当該「前面領域前面領域に含まれる座標情報」に含まれる「3本以上」の「主筋50A」の「軸線方向」は互いに「略平行」であるといえる。
そして、前記(イ)aで検討したとおり、甲1発明の「3次元点群座標情報」は、本件発明1の「前記3次元データ」に相当するところ、甲1発明の「前面領域に含まれる座標情報」は、「3次元点群座標情報」から「抽出」されるものであるから、上記aでの検討結果も踏まえると、甲1発明の「前面領域に含まれる座標情報を3次元点群座標情報から抽出」することは、本件発明1の「3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋からなる鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する」ことに相当する。
c 上記a及びbの検討結果を踏まえると、甲1発明の「鉄筋検査支援装置20」が、その「CPU20A」により「検査支援プログラム」を実行して「前面領域に含まれる座標情報を3次元点群座標情報から抽出」することは、本件発明1の「検査支援装置」の「抽出部」が、「前記3次元データから、略平行な鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部」を含む点で一致する。
(エ) 甲1発明において、「主筋50Aの各画像領域の位置」を「3次元点群座標情報に基づいて特定」し、この「特定した位置に基づいて」「導出」される「隣接する主筋50A間の距離」は、本件発明1の「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔」に相当する。
よって、甲1発明の「鉄筋検査支援装置20」が、その「CPU20A」により「検査支援プログラム」を実行して「隣接する主筋50A間の距離」を「導出」することは、本件発明1の「検査支援装置」の「計測部」が「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部」を含む点で共通する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「 検査対象の複数の鉄筋を含む3次元データを取得する取得部と、
前記3次元データから、略平行な少なくとも3本以上の鉄筋からなる鉄筋群を含む平面に沿って前記鉄筋群の情報を抽出する抽出部と、
前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔を計測する計測部と、
を含む、検査支援装置。」
<相違点>
本件発明1は、「決定部」が「前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋の長手方向と、計測線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定」するものであって、
「前記決定部は、前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し、
前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定し、
決定された角度で引かれた前記計測線を、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線と共に示し」、
「計測部」が「計測線」と、「前記鉄筋群の情報から特定され」、「鉄筋の長手方向を示す」「少なくとも3本以上の鉄筋との交点」から「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔」を計測するものであるのに対して、
甲1発明においては、「3本以上の主筋50A」について、「主筋50Aの各画像領域の位置を3次元点群座標情報に基づいて特定し、特定した位置に基づいて隣接する主筋50A間の距離の距離を導出」しており、「主筋50A」の長手方向を示す「軸線方向」の「直線」を決定し、この「直線」に対して「なす角が直角に近づくように」計測線を適用して鉄筋同士の間隔を計測しておらず、照合結果表示画面に計測線を示していない点。
ウ 相違点についての判断
(ア) 甲1発明は、「主筋50Aおよび帯筋50Bの各々の軸線方向が、できるだけ垂直方向および水平方向となるように、上記2次元画像を回転させる画像処理を施し、当該画像処理としては、予め定められた回転角度の刻み幅(例えば、0.2度の刻み幅。)で上記2次元画像を回転させ、その際のX軸ヒストグラムおよびY軸ヒストグラムの最大値が最も大きくなった場合の2次元画像を採用する方法が適用され」たものであるから、2次元画像に含まれる主筋50Aの各々の画像の軸線方向が、必ずしも厳密に垂直方向となるとは限らず、例えば、0.2度程度の「予め定められた回転角度の刻み幅」分の誤差を含んでいる。したがって、この誤差が、隣接する主筋50A間の距離を導出する際に誤差を生じ得ることは明らかであるから、より正確に測定するためには、このような主筋50Aの軸線方向の垂直方向からのずれの誤差を前提にして距離を求める方法を採用すべきことは、当業者にとって自明である。
そして、幾何学における平行な二つの線の定義から、当該平行な二つの線に共通の垂線と当該平行な二つの線の交点間の長さから当該平行な二つの線の間の距離が求められるから、二つの略平行な直線状の点の集合に共通の垂線を引いて、その結果できる二つの交点の距離を求めることにより二つの略平行な直線状の点の集合間の距離を求めることは、当業者にとってあまりにも自明のことである。
そして、前記2(4)ウにおいて示したとおり、3本以上の鉄筋における配置間隔を1本の定規を当てて測定することは、本願出願時の技術常識である(技術常識A(前記2(4)ウ参照))。
よって、3本以上の鉄筋の略平行な直線状の点の集合に対して、間隔測定のための共通の垂線を引いて、その結果できる三つ以上の交点の距離を求めることにより3本以上の略平行な直線状の点の集合の間の距離を求めることは、当業者にとって自明な事項である。
また、甲2号証には、前記(2)イに示したとおり、段落【0005】に「矩形の幅の測定は人が顕微鏡の十字線を用いて測定する時は図8のように平均的な線を引くことにより分解能及び再現性のよい測定ができる」と記載されており、直線近似を行う複数の点に対して、平均的な直線を引いて、すなわち「鉄筋の長手方向を示す」「直線を決定」して、当該直線の間隔を求めることは、自明の事項である。そして、追加文献1に記載されているとおり、配筋ピッチは、隣り合う鉄筋の中心軸間の距離であるから、まず鉄筋の中心軸を求めて「鉄筋の長手方向を示す」「直線を決定」して、それらに垂直に交わる計測線を引いて、間隔を求めるようにすることは、当業者にとって自明である。
したがって、甲1発明において、より正確に「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔」を計測するために、「少なくとも3本以上の鉄筋の軸線方向を示す直線を決定」し、この決定された直線に対して共通の垂線として計測線を引き、鉄筋との交点から「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔」を計測するようにすること、すなわち、甲1発明において、「少なくとも3本以上の鉄筋を含む鉄筋群の鉄筋同士の間隔」を求めるために、「前記鉄筋群の情報に含まれる少なくとも3本以上の鉄筋の情報に基づいて、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の直線を決定し」、「前記計測線と、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線とのなす角が直角に近づくように前記計測線の角度を決定」する「決定部」を備え、「前記計測線と、前記鉄筋群の情報から特定される少なくとも3本以上の鉄筋との交点」から「前記鉄筋群の鉄筋同士の間隔」を計測するようにすることは、当業者にとって自明の設計事項にすぎない。
(イ) そして、「建設工事の現場で配筋された柱又は梁の鉄筋を撮影するのに用いられるデジタルカメラと、デジタルカメラによって撮影された画像に基づいて鉄筋の規格を判別したり鉄筋の本数やピッチを計算したり、計算結果と設計情報との一致/不一致を判定したりする処理を実行するPC(処理装置、Personal Computer)を備え、このPCが上記処理によって得られた鉄筋の規格や鉄筋のピッチ等の計測情報及び判定結果を撮影画像とともに表示するモニタ(表示装置)を備える配筋検査システムにおいて、当該モニタの判定結果表示部に3本以上の鉄筋のピッチを背景バーとともに表示すること」は、本願出願前における周知技術である(周知技術B(前記2(5)イ参照))。この周知技術における鉄筋のピッチを計測するための「背景バー」は、上述の座標情報で構成される計測線に対応するものであるから、甲1発明において、鉄筋同士の間隔を計測するための座標情報としての計測線を適用する際に、3本以上の鉄筋の間隔とともにその間隔を計測するために利用した計測線を表示するようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ) 以上のとおりであるから本件発明1は、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 特許権者の主張について
(ア)特許権者の主張
特許権者は、令和3年10月4日に提出した意見書において、次の主張1及び主張2を主張している。
<主張1>
甲1号証の記載からは、「二つの平行な鉄筋に対して共通の垂線としての計測線を引き、二つの鉄筋同士の間隔を計測すること」は自明であるが、「少なくとも3本以上の鉄筋群」に対して、「どのように共通の垂線を引くか」について、示唆や開示はなく、「3本以上の鉄筋群に対して、共通の垂線を引いて計測線とし鉄筋同士の間隔を計測する」ことが当業者にとって自明な設計事項であったとはいえない(意見書の5頁4~12行)。
<主張2>
甲1発明においては、3本以上の鉄筋間の距離を求めるには、2本以上の垂線を計測線として引く必要が生じることとなり、3本以上の鉄筋に対して共通の計測線を引くものとはならない(意見書の5頁20~24行)。
(イ)特許権者の主張についての検討
<主張1及び2について>
前記ウで検討したとおり、「3本の鉄筋に対して定規1Aを直角になるように貼付けると、定規1Aの目盛表示板3の目盛により、定規1Aの目盛表示板3の目盛により、3本の鉄筋の配置間隔を示すこと」が、本願出願時における技術常識であることを踏まえると、「3本以上の鉄筋群に対して、共通の垂線を引いて計測線とし鉄筋同士の間隔を計測する」ことが当業者にとって自明な設計事項である。
また、上記技術常識において、3本の鉄筋に対して1本の定規を当てることで3本の鉄筋の配置間隔が示されることを踏まえると、3本以上の鉄筋間の距離を求める際に、2本以上の垂線を計測線として引くのではなく、3本以上の鉄筋に対して共通の計測線を引くことは、当業者にとって自明な事項である。
よって、特許権者の主張を採用することはできない。
(2) 本件発明2について
2次元画像に含まれる全ての主筋50A間の距離を同一の基準、すなわち、計測線で計測しようとすることは、当業者の当然の配慮事項であるから、効率よくデータを解析するために、適用する計測線をより多くの鉄筋と交差するようにして決定することは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明2は、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1から、「決定部」が「決定された角度で引かれた前記計測線を、前記鉄筋の長手方向を示す少なくとも3本以上の前記直線と共に示す」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本件発明7の発明特定事項を含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件発明1が、前記(1)ウに記載したとおり、甲1発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明7も、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明8について
鉄筋の間隔をエッジ間の間隔で求めることも自明のことである(追加文献1の【0023】「ここで、配筋ピッチは、隣り合う鉄筋の中心軸間の間隔を示すものであり、例えば、左側エッジ間距離及び右側エッジ間距離の平均値として算出される。」を参照)。
よって、本件発明8は、甲1発明、甲2号証に記載の事項、追加文献1に記載の事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明9について
ア 前記第2の2(3)で検討したとおり、本件発明9は、特許異議の申立てがされている請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとなり、特許異議の申立てがされていない請求項3~6の記載のみを引用するものとなった。
イ 特許異議申立人の理由は、請求項1、2、7、8に係る発明は、甲1号証に記載された発明、甲2号証に記載の事項及び後記の甲3号証~甲7号証に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、という理由である。
甲3号証 特開平6-137815号公報
甲4号証 特開平7-29016号公報
甲5号証 特開平11-203473号公報
甲6号証 特開2005-147665号公報
甲7号証 特開2011-242352号公報
ウ 請求項3~6は、特許法120条の2第2項の規定により審理することができないところ、本件発明9は、審理することができない請求項3~6において特定した発明特定事項を含む以上、いずれも進歩性要件違反を理由とするものである、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由の、いずれによっても、取り消すことができないものであり、この点について、職権で審理すべきものでもないことは明らかである。
そして、その他、本件発明9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1、2、7、8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1、2、7、8に係る特許は、特許法113条2項に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明9に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。そして、その他、本件発明9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700405