特許異議申立
2024-700544
載置台及び基板処理装置
- 審判番号
- 2024-700544
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-148133
- 登録番号
- 7394556
- 請求日
- 2024年06月07日
- 審決日
- 2025年08月13日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東京エレクトロン株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】石井 悠太
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 松永 稔
- 審判官 綿引 隆
- 分類
- P1651.537-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7394556号発明「載置台及び基板処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7394556号の特許請求の範囲を、令和7年5月2日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕、〔14~17〕について訂正することを認める。
特許第7394556号の請求項1、3~7、9~12、14、16、17に係る特許を維持する。
特許第7394556号の請求項2、8、13、15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7394556号(以下「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、令和1年8月9日の出願であって、令和5年11月30日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月8日に特許掲載公報が発行され、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 6月 7日 :特許異議申立人 石井悠太(以下「申立人」
という。)による特許異議の申立て
令和6年 8月14日付け:取消理由通知書
令和6年10月 4日 :面接記録(面接日 令和6年10月2日)
令和6年10月15日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出
令和6年10月30日付け:特許権者に対する手続補正指令書(方式)
令和6年11月29日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和6年12月 4日付け:申立人に対する通知書
令和7年 1月 9日 :申立人による意見書の提出
令和7年 2月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 5月 2日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出
令和7年 5月12日 :面接記録(面接日 令和7年4月18日)
令和7年 5月12日付け:申立人に対する通知書
令和7年 6月13日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年10月15日にした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定によって、令和7年5月2日に訂正請求をしたことにより取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年5月2日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものであって、本件訂正の内容は、次のとおりである。(下線は、訂正請求書の記載のとおり。)
(1) 一群の請求項について
ア 請求項〔1~13〕について
訂正前の請求項1~13について、請求項2~13はそれぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、下記訂正事項1~訂正事項3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 請求項〔14~17〕について
訂正前の請求項14~17について、請求項15~17はそれぞれ直接的又は間接的に請求項14を引用しているものであって、下記訂正事項15~訂正事項17によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項14~17に対応する訂正後の請求項14~17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2) 請求項〔1~13〕についての訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「基板の外側に位置する第1の面と、基板を載置する第2の面とを有する載置台」と記載されているのを、「段差を有し、前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面と前記段差の内側に基板を載置する第2の面とを有する載置台」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~7、9~12も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の面に対応して第1の流路が形成され、」と記載されているのを、「前記第1の面の下方に第1の流路が形成され、」、「前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~7、9~12も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の面から前記第1の流路の上面までの垂直距離は、前記第1の面から前記第2の流路の上面までの垂直距離と等しく、」を付加する(請求項1の記載を引用する請求項3~7、9~12も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の載置台。」と記載されているのを、「請求項1に記載の載置台。」と訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~7、9~12も同様に訂正する)。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「前記第2の面に対応して第2の流路が形成され、」と記載されているのを削除する(請求項4の記載を引用する請求項5~l7、9~12も同様に訂正する)。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4において、「前記第2の流路の水平方向の幅をw1、前記第1の流路の水平方向の幅をw2としたとき、w1>w2である」を「前記第2の流路の水平方向の幅をw1、前記第1の流路の水平方向の幅をw2としたとき、w1>w2であり」に変更し、「前記第1の流路における冷媒の流速は、前記第2の流路における冷媒の流速より速い、」を付加する(請求項4の記載を引用する請求項5~7、9~12も同様に訂正する)。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載の載置台。」と記載されているのを、「請求項1又は請求項3のいずれかに記載の載置台。」と訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~7、9~13も同様に訂正する)。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9に「静電チャックを備え、」を付加する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する)。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9に「前記第1の面は、前記リング部材を吸着する静電チャックの外側上面である、」と記載されているのを、「前記第1の面は、前記フォーカスリングを吸着する前記静電チャックの外側上面である、」と訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する)。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項9に「請求項8に記載の載置台。」と記載されているのを、「請求項1、3~7のいずれかに記載の載置台。」と訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する)。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項11に「前記静電チャックは、前記第1の面と前記第1の流路との間に前記リング部材の温度を制御する第1のヒータを有する、」と記載されているのを、「前記静電チャックは、前記第1の面と前記第1の流路との間に前記フォーカスリングの温度を制御する第1のヒータを有する、」と訂正する(請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する)。
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(3) 請求項〔14~17〕についての訂正事項
ア 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項14に「基板の外側に位置する第1の面と基板を載置する第2の面とを有し、」と記載されているのを、「段差を有し、前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面と前記段差の内側に基板を載置する第2の面とを有し、」と訂正する(請求項14の記載を引用する請求項16~17も同様に訂正する)。
イ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項14に「前記第1の面に対応して第1の流路が形成され、」と記載されているのを、「前記第1の面の下方に第1の流路が形成され、」、「前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、」と訂正する(請求項14の記載を引用する請求項16~17も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項14に「前記第1の面から前記第1の流路の上面までの垂直距離は、前記第1の面から前記第2の流路の上面までの垂直距離と等しく、」を付加する(請求項14の記載を引用する請求項16~17も同様に訂正する)。
エ 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
オ 訂正事項19
特許請求の範囲の請求項16に「請求項14又は15に記載の基板処理装置。」と記載されているのを、「請求項14に記載の基板処理装置。」と訂正する(請求項16の記載を引用する請求項17も同様に訂正する)。
カ 訂正事項20
特許請求の範囲の請求項17に「前記第2の面に対応して第2の流路が形成され、」と記載されているのを削除する。
キ 訂正事項21
特許請求の範囲の請求項17に「請求項14~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。」と記載されているのを、「請求項14又は請求項16のいずれかに記載の基板処理装置。」と訂正する。
2 独立特許要件、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
以下、請求項〔1~13〕についての訂正事項と、請求項〔14~17〕についての訂正事項に関し、訂正の成否を合わせて判断する。
(1) 独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1~17について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~17に係る訂正事項1~17に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2) 訂正事項1~3、15~17について
ア 訂正の目的
(ア) 訂正事項1に係る訂正は、令和6年8月14日付け取消理由通知「第1の1」の「第1の面の内端部」に係る明確性についての取消理由を解消することを目的としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」(特許法第120条の5第2項ただし書第3号)を目的としたものといえる。
また、訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る発明を特定する事項である「載置台」が有する「第1の面」と「第2の面」について、「載置台」が「段差を有し」、「第1の面」が「前記段差の外側フォーカスリングを載置する」ものであり、「第2の面」が「前記段差の内側に基板を載置する」ものであるとの事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」(特許法第120条の5第2項ただし書第1号)を目的としたものといえる。
(イ) 訂正事項2、3に係る訂正は、令和6年8月14日付け取消理由通知「第1の2(1)」のサポート要件についての取消理由を解消することを目的としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえる。
また、訂正事項2に係る訂正は、請求項1に係る発明を特定する事項である第1の面に対応して形成された「第1の流路」について、第1の面の「下方に」形成されることと限定し、さらに、「前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、」との事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものといえる。
訂正事項3に係る訂正は、請求項1に「前記第1の面から前記第1の流路の上面までの垂直距離は、前記第1の面から前記第2の流路の上面までの垂直距離と等しく、」を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものといえる。
(ウ) 以上のとおり、請求項1についての訂正事項1~3に係る訂正は、いずれも「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものといえる。
(エ) また、請求項14についての訂正事項15~17に係る訂正も、上記(ア)~(ウ)と同様である。
イ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の図2 、段落0013、0014には、訂正事項1で付加される事項に対応する事項の開示がある。
また、本件明細書等の図2 、段落0017、0018には、訂正事項2で付加される事項に対応する事項の開示がある。
さらに、本件明細書等の図3、段落0042には、訂正事項3で付加される事項に対応する事項の開示がある。
そうすると、請求項1についての訂正事項1~3に係る訂正は、いずれも、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、新規事項を追加するものではない。(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項)
また、請求項14についての訂正事項15~17に係る訂正も、同様である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア) 当審の判断
上記アのとおり、請求項1についての訂正事項1~3に係る訂正は、いずれも「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであり、そのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものとはいえない。(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項)
また、請求項14についての訂正事項15~17に係る訂正も、同様である。
(イ) 申立人の主張について
申立人は、令和7年6月13日提出の意見書5ページ下から3行~6ページ6行にて「訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「基板の外側」の位置に基づいて規定されていた「第1の面」を、「基板の外側」とは全く別の「段差」の位置に基づいて規定するように修正するものである。即ち、「基板」は発明自体の構成の範囲外であるのに対し、「段差」は載置台の一部であり、両者は全く別物である。このように、訂正事項1は、「第1の面」を規定する「基準」を全く異なる構成に置き換えている。よって、訂正事項1は、「第1の面」の定義を「質的」に変更するものであるから、この訂正が「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであるかを検討するまでもなく、実質上特許請求の範囲を変更するものであることは明らかである。」と主張する。
しかしながら、本件訂正後の「前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面」との発明特定事項が、新たに「段差」を基準にしたものであったとしても、「第1の面」が「段差の内側に基板を載置する第2の面」に載置される「基板」の外側に位置することは明らかであるから、申立人が主張するように、「基準」を全く異なる構成に置き換えているとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(3) 訂正事項4、9、14、18について
訂正事項4、18に係る訂正は、それぞれ、令和6年8月14日付けの取消理由通知の「第1の2(2)」のサポート要件についての取消理由を解消することを目的としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえる。
また、訂正事項9、14に係る訂正は、それぞれ、令和7年2月28日付けの取消理由通知(決定の予告)の「第4の1~3」の明確性要件についての取消理由を解消することを目的としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえる。
加えて、訂正事項4、9、14、18に係る訂正は、それぞれ、請求項2、8、13、15を削除する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、新規事項を追加するものではなく、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものとはいえない。
(4) 訂正事項5、8、12、19、21について
ア 訂正の目的
訂正事項5、8、12、19、21に係る訂正は、訂正前に引用していた請求項2、8、13、15が削除されたことにより、これらの請求項を引用しないものとするものであるから、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減する「特許請求の範囲の減縮」、又は、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえる。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項5、8、12、19、21に係る訂正は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、新規事項を追加するものではなく、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものとはいえない。
(5) 訂正事項6、20について
訂正事項6に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正によって、請求項1に「前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、」との事項が付加されることに対応して、請求項1を引用する請求項4の「前記第2の面に対応して第2の流路が形成され、」との記載を削除するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえ、また、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、新規事項を追加するものではなく、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものとはいえない。
訂正事項20に係る訂正についても同様である。
(6) 訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7に係る訂正は、令和6年8月14日付けの取消理由通知の「第1の2(3)」のサポート要件についての取消理由を解消することを目的としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえる。
また、請求項4に係る発明を特定する事項である「第1の流路」及び「第2の流路」について、「前記第1の流路における冷媒の流速は、前記第2の流路における冷媒の流速より速い、」との事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものといえる。
イ 新規事項の有無
本件明細書等の段落0046には、訂正事項7で付加される事項に対応する事項の開示があるから、請求項4についての訂正事項7に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、請求項4についての訂正事項7に係る訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであり、そのカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものとはいえない。
(7) 訂正事項10、11、13について
ア 訂正の目的
訂正事項10、11、13に係る訂正は、令和7年2月28日付けの取消理由通知(決定の予告)の「第4の1、2」の明確性要件についての取消理由を解消することを目的としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものといえる。
そして、訂正事項10は、請求項9に係る発明について、「静電チャックを備え、」との事項を付加するものであり、また、訂正事項11、13の請求項9又は請求項11に係る発明を特定する事項である「リング部材」をその一例である「フォーカスリング」とするものである、いずれも「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものといえる。
イ 新規事項の有無
訂正事項10において、訂正前の請求項9に係る発明が「静電チャック」を備えることは明らかであり、また、訂正事項11、13の「フォーカスリング」については、本件明細書等の段落0014に記載があるから、請求項9、11についての訂正事項10、11、13に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、請求項9、11についての訂正事項10、11、13に係る訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであり、そのカデゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものとはいえない。
(8) 小括
以上のとおり、訂正事項1~21に係る訂正は、いずれも「特許請求の範囲の減縮」又は「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正後の請求項1~17に係る発明(以下それぞれ「本件発明1~17」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
段差を有し、前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面と前記段差の内側に基板を載置する第2の面とを有する載置台であって、
前記第1の面の下方に第1の流路が形成され、
前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、
前記第1の面から前記第1の流路の上面までの垂直距離は、前記第1の面から前記第2の流路の上面までの垂直距離と等しく、
前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度が60°以下である、
載置台。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記角度は、45°以下である、
請求項1に記載の載置台。
【請求項4】
前記第2の流路の水平方向の幅をw1、前記第1の流路の水平方向の幅をw2としたとき、w1>w2であり、
前記第1の流路における冷媒の流速は、前記第2の流路における冷媒の流速より速い、
請求項1又は請求項3のいずれかに記載の載置台。
【請求項5】
前記第1の面と前記第2の面との境界面から前記第1の流路までの水平距離をd、前記第1の流路から前記第2の流路までの水平距離をd’としたとき、d’>dである、
請求項4に記載の載置台。
【請求項6】
前記第1の流路と前記第2の流路とは、前記第1の流路と前記第2の流路とに熱交換媒体を流すことが可能なチラーユニットに並列に接続される、
請求項4又は5に記載の載置台。
【請求項7】
前記第1の流路と前記第2の流路とは、前記第1の流路と前記第2の流路とに熱交換媒体を流すことが可能なチラーユニットに直列に接続される、
請求項4又は5に記載の載置台。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
静電チャックを備え、
前記第1の面は、前記フォーカスリングを吸着する前記静電チャックの外側上面である、
請求項1、3~7のいずれかに記載の載置台。
【請求項10】
前記第2の面は、基板を吸着する前記静電チャックの内側上面である、
請求項9に記載の載置台。
【請求項11】
前記静電チャックは、前記第1の面と前記第1の流路との間に前記フォーカスリングの温度を制御する第1のヒータを有する、
請求項9又は10に記載の載置台。
【請求項12】
前記静電チャックは、前記第2の面と平行に基板の温度を制御する第2のヒータを有する、
請求項9~11のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項13】(削除)
【請求項14】
プラズマ処理又は熱処理が行われるチャンバと、前記チャンバの内部にて静電チャックに基板を載置する載置台と、を有する基板処理装置であって、
前記載置台は、
段差を有し、前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面と前記段差の内側に基板を載置する第2の面とを有し、
前記第1の面の下方に第1の流路が形成され、
前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、
前記第1の面から前記第1の流路の上面までの垂直距離は、前記第1の面から前記第2の流路の上面までの垂直距離と等しく、
前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度が60°以下である、
基板処理装置。
【請求項15】(削除)
【請求項16】
前記角度は、45°以下である、
請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第1の流路と前記第2の流路とに熱交換媒体を流すことが可能なチラーユニットを有する、
請求項14又は請求項16のいずれかに記載の基板処理装置。」
第4 取消理由(決定の予告)について
1 令和7年2月28日付けの取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由は次のとおりである。
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1) 請求項8、9、11
本件明細書の段落0014には、「エッジリング25は、基板の周囲に位置するリング部材の一例であり、フォーカスリングともいう。」と、フォーカスリングがリング部材の一例であるとの記載があるのに対し、請求項8、9、11には、請求項8、9、11が引用する請求項1に記載された「フォーカスリング」との関係が明らかでない「リング部材」が記載されている。
そうすると、請求項8、9、11に記載された「リング部材」は、請求項1に記載された「フォーカスリング」に対してどのような物を意味しているか明らかとはいえないから、本件発明8、9、11、及び請求項8、9、11の記載を引用する本件発明10、12、13は明確でない。
(2) 請求項9~12
請求項9~12に記載された「静電チャック」が、「載置台」自体、「第1の面」及び「リング部材(フォーカスリング)」、「第2の面」及び「基板」と、それぞれどのような関係の物なのか明らかでない。
したがって、本件発明9~12、及び、請求項9~12の記載を引用する本件発明13は明確でない。
(3) 請求項13
請求項1は、「段差を有し、前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面と前記段差の内側に基板を載置する第2の面とを有する載置台であって、前記第1の面の下方に第1の流路が形成され」ているから、「前記第1の流路は、基板の端部よりも外側に形成される」といえる。
そうすると、請求項1を引用する、請求項13に記載された事項が、どのような技術事項を特定しているのか明らかとはいえない。
したがって、本件発明13は明確でない。
(4) サポート要件
ア 発明の詳細な説明の段落0004には、「基板の最外周の温度を制御することが可能な載置台及び基板処理装置を提供する。」、また、段落0035には、「基台18の内部に設けられた第2の流路19aでは、所定の温度に冷却された冷媒を流すことによって基板Wを冷却するが、直径が300mm以上の基板の端部から例えば数mm程度の、基板の最外周の局所的な領域の温度を制御することは難しい。」との、発明の課題が記載されている。
一方、「段差を有し、前記段差の外側にフォーカスリングを載置する第1の面と前記段差の内側に基板を載置する第2の面とを有する載置台であって、
前記第1の面の下方に第1の流路が形成され、
前記第2の面の下方に第2の流路が形成され、
前記第1の面から前記第1の流路の上面までの垂直距離は、前記第1の面から前記第2の流路の上面までの垂直距離と等しく、」と特定される、本件発明1の載置台において、「前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度」が小さくなるほど、「第1の流路」と基板の最外周との距離が離れることによって、基板を載置する第2の面の下方に形成される「第2の流路」に対する「第1の流路」の、基板の最外周の温度に対する影響が相対的により小さくなるから、基板の最外周の温度を制御すること、すなわち、発明の課題を解決することは、発明の詳細な説明の段落0048~0050の「条件4」についての記載を踏まえても、より困難になる。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとも、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものともいえないから、本件発明1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
本件発明14及び、請求項1又は請求項14を引用する本件発明3~13、16、17も、同様に発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 当審の判断
(1) 上記1(1)、(2)の取消理由(明確性)について
ア 本件訂正によって、請求項8、13 を削除し、また、請求項9、11における「リング部材」との記載を「フォーカスリング」と訂正することにより、上記1(1)の取消理由は解消した。
イ 本件訂正により、本件発明9の「静電チャック」が、「載置台」に備えられるものであって、かつ、「第1の面」が、フォーカスリングを吸着する静電チャックの外側上面であることを明確にし、本件発明10において、「第2の面」が、基板を吸着する静電チャックの内側上面であることを明確にし、請求項13を削除したことによって、上記1(2)の取消理由は解消した。
ウ 上記1(2)についての申立人の主張
申立人は、令和7年6月13日提出の意見書7ページ15~23行にて「本件特許明細書には、載置台は、基台及び静電チャックからなり、静電チャックは基台の載置面に載置されていること、第1の面は静電チャックの外側上面であり、エッジリングを吸着すること、第2の面は静電チャックの内側上面であり、基板を吸着すること、が記載されている。
d. これに対して、訂正後の請求項9には、載置台が静電チャックを有すること、第1の面は静電チャックの外側上面であり、エッジリングを吸着すること、が記載されているのみである。従って、「静電チャック」と「載置台」自体の関係、及び「静電チャック」と「第2の面」及び「基板」の関係は依然として明らかではなく、本件発明9~12は明確ではない。」と主張する。
しかしながら、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書等を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるところ、本件明細書等の記載を踏まえれば、本件発明9~12について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
(2) 上記1(3)の取消理由(明確性)について
本件訂正により請求項13が削除されたことにより、上記1(3)の取消理由は解消した。
(3) 上記1(4)の取消理由(サポート要件)について
ア 本件発明1及び14の構成は、本件明細書等の段落0035~段落0050、図3及び図4に記載されている。
そして、令和7年5月2日に特許権者が提出した意見書3ページ19行~4ページ下から2行での主張も参酌すると、本件発明1において、「前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度」が小さくなるほど、「第1の流路」と基板の最外周との距離が離れることによって、基板を載置する第2の面の下方に形成される「第2の流路」に対する「第1の流路」の、基板の最外周の温度に対する影響が相対的により小さくなったとしても、基板の最外周の温度の制御が、「第1の流路」による温度影響と「第2の流路」による温度影響との合算によりなされることに変わりなく、加えて、「前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度を60°以下」にすることにより、第1の流路について、基板の最外周の温度制御対象エリアTgにおける温度影響範囲を小さくし、更に局所的な温度制御ができるようになることが理解できる。
そうすると、当業者は、本件発明1及び14の構成によって、本件明細書の段落0004に記載された、基板の最外周の温度を制御することが可能な載置台及び基板処理装置を提供するという発明の課題を解決できると認識できるから、本件発明1及び14の構成を含む本件発明3~7、9~12、16及び17も含め、上記1(4)の取消理由は解消した。
イ 申立人の主張
(ア)令和7年6月13日提出の意見書10ページ17~末行において、申立人は次の主張をする。
「d. 一方、令和7年5月2日提出の意見書において、特許権者は、請求項1に対して更なる訂正を行うことなく、審判合議体の上記認定に反論している。特許権者による反論を要約すれば、本件発明1において規定されている「角度」が小さくなるほど「第1の流路」と「基板の最外周」との間の距離が遠くなるため、「基板の最外周」の温度に対し、「第1の流路」の温度の影響が「第2の流路」に対して相対的に小さくなり、局所的な領域の温度を制御することができる、というものである。この特許権者による反論は、本件発明が、基板の最外周の温度を制御することを目的として、「第1の流路」の位置に数値限定を加えているにも関わらず、その数値限定により「第1の流路」の温度の影響が小さくなることによって、発明の課題が解決される、という理解し難いものである。」
しかしながら、上記アのとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立人の主張は採用できない。
(イ) 令和7年6月13日提出の意見書11ページ1行~12ページ1行において、申立人は次の主張もする。
「e. ここで、本件特許明細書の段落0043には、「構造上、第2の面20cの端部と、第1の面20d及び第2の面20cの境界面とによりなす角部分は、基板処理時に発生する反応生成物が付き易く、かつ、プラズマ入熱により熱くなり易い。よって、温度制御対象工リアTgの温度制御は重要である。」との記載がある。ここに記載されているように、本件発明の技術課題は、プラズマ入熱等により「基板の最外周」が過熱してしまうのを抑制することにある、と理解することができる。
f. 上記の技術課題を解決するのであれば、「基板の最外周」の温度を低下させるべく、「第1の流路」に「冷媒」を流すことが自然である。しかしながら、「第1の流路」に「冷媒」を流したとすれば、本件発明1において規定されている「角度」が小さくなるほど「第1の流路」と「基板の最外周」との間の距離が遠くなるため、「基板の最外周」の温度を低下させる効果は低下してしまい、「角度」を60°以下とすることは逆効果である。一方、仮に「第1の流路」に温度の高い「熱媒体」を流したとすれば、「第1の流路」と「基板の最外周」との間の距離を遠くすることにより、「基板の最外周」の冷却は邪魔されにくくなる。従って、「第1の流路」に「熱媒体」を流した場合、本件発明の技術課題を解決できるほどの効果があるとは考えにくいが、本件発明1に規定されている「角度」を小さくすることは有利に働く。
g. このように、本件発明1に規定されている「角度」は、「第1の流路」に「冷媒」を流した場合と「熱媒体」を流した場合で、正反対の効果を奏するものである。そして、本件発明1においては、「第1の流路」に流す媒体は何ら特定されていない。このように、「第1の流路」に流す媒体を特定することなく、単に「角度」により「第1の流路」の位置を規定することには、何ら技術的意味を見いだすことはできない。よって、本件発明1は、発明の技術課題を解決できるものではなく、発明の詳細な説明に記載したものではない。同様に、本件発明14、及び請求項1又は14を引用する本件発明3~7、9~12、16、17も、発明の詳細な説明に記載したものではない。このため、これらの発明は対する特許は取り消されるべきである。」
しかしながら、本件発明1の発明の課題は、上記アのとおり、本件明細書等の段落0004に記載された「基板の最外周の温度を制御することが可能な載置台及び基板処理装置を提供する」ことであって、段落0043に記載された事項ではない。
また、本件明細書等の段落0017に「以下、熱交換媒体の一例として冷媒を挙げて説明するが、熱交換媒体はこれに限られず、温度調整媒体であってもよい。」と記載されているように、本件発明1において、「第1の流路」には、「冷媒」又は「熱媒体」を流すことができ、いずれの場合であっても、上記アのとおり、当業者は、基板の最外周の局所的な領域の温度を制御するという発明の課題を解決できると認識できる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
3 小括
以上のとおり、本件発明1、3~7、9~12、14、16及び17に係る特許は、特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、本件発明1、3~7、9~12、14、16及び17に係る特許は、取消理由(決定の予告)に記載した理由によって取り消されるべきものではない。
第5 取消理由として採用しなかった申立ての理由について
1 申立理由の概要
特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載された、以下の証拠方法による、異議申立ての理由は次のとおりである。
甲第1号証 : 特開2014-150104号公報
甲第2号証 : 特開2016-207979号公報
甲第3号証 : 特開平11-233605号公報
甲第4号証 : 特開2014-11382号公報
甲第5号証 : 特開2011-9351号公報
甲第6号証 : 特許第6518024号公報
甲第7号証 : 特開2018-164092号公報
(1) 申立理由1(進歩性欠如)
甲第1号証を主たる引用文献とし、甲第2~7号証を従たる引用文献とする進歩性欠如(申立書42ページ1行~57ページ14行)
(2) 申立理由2(明確性要件違反)
明確性要件違反(申立書61ページ1行~62ページ18行)
なお、申立書57ページ15行~60ページ末行において申立人が主張するサポート要件違反は、取消理由(決定の予告)(上記第4の1(4))として採用した。
2 当審の判断
(1) 申立理由1(進歩性欠如)
ア 申立人は、申立書43ページ7行~47ページ9行において、本件訂正前の請求項1に係る発明の「前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度が60°以下である」との構成要件C(なお、本件発明1及び14も同じ構成を有する。)について、例えば、甲第1号証に関し、申立書43ページの下図のように公開特許公報の図面に基づいて角度を測定することによって、甲第1号証の図3、図8、他にも、甲第2号証の図4、図7、甲第3号証の図1、図14、甲第4号証の図4、図6、図7A、図8に基づいて、構成要件Cはありふれた構造であって、周知技術であるから、基板の温度制御性を高めるという周知の技術課題を達成するために、甲第1号証に記載された発明において、当該周知技術の構成を適用することは、当業者が容易に想到し得る旨主張する。
[図:0001428992000001.jpg]
しかしながら、例えば、平成22年(行ケ)第10381号の33~34ページにおいて判示されているように、特許出願に係る図面は、設計図面のように具体的な寸法などが正確に描かれるものではなく、具体的な定量的事項を認定することは妥当でないというべきであるから、公開特許公報の図面に基づいて角度を測定したことによる申立人の主張は、周知技術の認定として妥当性を欠く。
イ また、申立人は、申立書47ページ10~25行において、さらに「角度θが60度以下となる位置に冷媒流路を設ける設計は、多くの特許公報の図面に見られるようにありふれたものであると共に、角度θを60度以下とすることに「臨界的意義」を見いだすこともできないから、構成要件Cは当業者が適宜選択する単なる設計的事項であるということができる。」と主張する。
しかしながら、上記アのとおり、構成要件Cは周知技術であるとはいえないから、「角度θが60度以下となる位置に冷媒流路を設ける設計は、多くの特許公報の図面に見られるようにありふれたもの」ということもできず、かつ、上記第4の2(3)アのとおり、本件発明1は、その構成によって、基板の最外周の温度を制御することが可能な載置台及び基板処理装置を提供するという発明の課題を解決するものであるから、単なる設計的事項ということはできない。
ウ そうすると、本件発明1の「前記第1の流路の上面の延長線と、前記第1の流路の上面のうち前記第2の面に近い側の端部と前記第1の面の内端部とを結ぶ線とがなす角度が60°以下である」という構成要件Cは、申立人が提出した甲第1号証~甲第4号証には記載されていないし、他に甲第5号証~甲第7号証をみても記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲第1号証~甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明14、及び本件発明1又は本件発明14の構成を全て含む本件発明3~7、9~12、16、17についても同様に、甲第1号証~甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1は、理由がない。
エ さらに、申立人は、申立書47ページ26行~48ページ23行において、本件発明1の技術的範囲に「溝部が存在して第1の面と第2の面との間で熱の伝達がない構造」を含むことを前提とし、構成要件Cの技術的意義は極めて小さく、当業者が適宜選択する単なる設計的事項である旨主張するが、構成要件Cが単なる設計的事項であるといえないことは、上記イのとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
(2) 申立理由2(明確性要件違反)
申立人は、申立書61ページ23行~62ページ3行において、「本件発明1(当審注;本件訂正前の請求項1に係る発明)において、「第1の面」は「基板の外側に位置する」と定義されているから、第2の面に基板が載置された状態でなければ「第1の面」の内周を特定することはできない。ここで、「第1の面の内端部」は、本件発明1の構成要件Cに規定されている角度を規定するためのパラメータであるから、「第1の面の内端部」が特定されない限り、本件発明1の外縁は確定しないこととなる。このように、本件発明1は、発明の構成要素に含まれていない「基板」を加えなければその外縁を確定することができず、本件発明1に含まれる構成のみでは、その外縁を判断することができないから、不明確であると言わざるを得ない。」と主張する(本件訂正前の他の請求項についても同様。)。
しかしながら、本件訂正により、本件発明1において、申立人の主張の前提となる「基板の外側に位置する第1の面」との構成はなくなったから、本件発明14、及び本件発明1又は本件発明14の構成を全て含む本件発明3~7、9~12、16、17を含め、申立人の主張は前提を欠き、採用できない。
第6 むすび
上記第4、第5のとおりであるから、取消理由(決定の予告)、及び、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、3~7、9~12、14、16、17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、3~7、9~12、14、16、17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件発明2、8、13、15に係る特許は、本件訂正により削除されたから、申立人による特許異議の申立てについて、本件発明2、8、13、15に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700544