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特許異議申立

2025-700434

レトルトパウチ詰め加工食品及びその製造方法

審判番号
2025-700434
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-062364
登録番号
7569594
請求日
2025年04月16日
審決日
2026年01月16日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】森産業株式会社
  • 【権利者代理人】吉永 貴大
  • 【異議申立人】石井 悠太
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 宮久保 博幸
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7569594号発明「レトルトパウチ詰め加工食品及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7569594号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕及び〔7ないし12〕について訂正することを認める。 特許第7569594号の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許を維持する。 特許第7569594号の請求項3及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7569594号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、令和6年4月8日(優先権主張 令和5年4月7日)の出願であって、令和6年10月9日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年4月16日に特許異議申立人 石井 悠太(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされ、同年6月9日付けで取消理由が通知され、同年8月11日に特許権者 森産業株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年10月15日付けで手続補正指令(方式)が通知され、同年同月30日に特許権者から手続補正書(方式)が提出され、同年11月7日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年12月11日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年同月18日に特許異議申立人から手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年10月30日に特許権者から提出された手続補正書(方式)により補正された同年8月11日に提出された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)でされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「さらに、DE値8~40の低糖化還元水あめを含有するレトルトパウチ詰め加工食品。」と記載されているのを、「さらに、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品を8.0~17.6重量%含有するレトルトパウチ詰め加工食品。」に訂正する。併せて、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2及び4ないし6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値8~40の低糖化還元水あめとをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、」と記載されているのを、「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、」に訂正する。併せて、請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8及び10ないし12も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「DE値」の数値範囲を狭くし、「低糖化還元水あめ」の種類をより具体的に特定した上でその含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2及び4ないし6についての訂正について 訂正事項1による請求項2及び4ないし6についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項2及び4ないし6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項3についての訂正について 訂正事項3による請求項3についての訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項7についての訂正について 訂正事項2による請求項7についての訂正は、「DE値」の数値範囲を狭くし、「低糖化還元水あめ」の種類をより具体的に特定した上でその充填量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)請求項8及び10ないし12についての訂正について 訂正事項2による請求項8及び10ないし12についての訂正は、請求項7についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項8及び10ないし12についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)請求項9についての訂正について 訂正事項4による請求項9についての訂正は、請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし4による請求項1ないし12についての訂正はいずれも特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし4による請求項1ないし12についての訂正はいずれも特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし6は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1及び3による請求項1ないし6についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 訂正前の請求項7ないし12は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項2及び4による請求項7ないし12についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし12に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕及び〔7ないし12〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、 前記主食が米飯類又は麺類であり、 さらに、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品を8.0~17.6重量%含有するレトルトパウチ詰め加工食品。 【請求項2】 さらに、主菜が充填された、請求項1に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記米飯類が、白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀からなる群から選択された少なくとも1種を含むご飯である、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。 【請求項5】 前記麺類が、パスタ、ラーメン麺、うどん、素麺からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。 【請求項6】 前記加工食品が、カレーライス、ハヤシライス、中華丼、牛丼、豚丼、親子丼、麻婆丼、そぼろ丼、スパゲッティ、ラーメン、うどん、素麺、リゾット、あんかけ焼きそば、煮込みうどん、焼きうどん、おしるこ、ぜんざい、雑煮からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項2に記載のレトルトパウチ詰め加工食品。 【請求項7】 主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、 主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、 密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、 を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。 【請求項8】 前記前処理工程において、さらに、主菜原料を前記レトルトパウチに充填する、請求項7に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 前記米飯類原料が、糊化前の白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項7又は8に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。 【請求項11】 前記麺類原料が、糊化前のパスタ、ラーメン麺、うどん、素麺からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項7又は8に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。 【請求項12】 前記加工食品が、カレーライス、ハヤシライス、中華丼、牛丼、豚丼、親子丼、麻婆丼、そぼろ丼、スパゲッティ、ラーメン、うどん、素麺、リゾット、あんかけ焼きそば、煮込みうどん、焼きうどん、おしるこ、ぜんざい、雑煮からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項8に記載のレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等 令和7年4月16日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし5及び7ないし11は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし12は、甲第1号証に記載された発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)実験例において還元水あめのDEが示されているものは、サンプルCのDCP-HL(DE19.5)のみであり、Dの他社還元水あめについてはDE値の記載がない。この唯一のDEの実験結果から、本件特許発明1の「DE8~40」の還元水あめはその全ての範囲において、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるとはいえず、サポート要件を満たさない。本件特許発明2~12についても同様である。 (2)例えば還元水あめの添加量が7.1%、7.8%の場合には食感が軟らかすぎ、14.3%の時に食感が硬すぎることが示されている本件明細書の記載に触れた当業者は、そのような還元水あめ添加量では、本件特許発明の「炊き立ての米飯類や如でたての麺類の食感の維持」の課題が解決できるとは認識できない。 そうすると、本件特許発明1~12は、還元水あめの含有量が7.1%、7.8%又は14.3%の場合を含むものであるから、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでなく、サポート要件を満たさない。 3 申立理由3(明確性要件) 本件特許の請求項2及び8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明2、8には、「主菜が充填された」と記載されている。ここで「主菜」の文言上の意味は、甲第7号証(広辞苑、第四版)によれば「主食以外で食事の最も中心的な位置を占める料理。魚・肉・大豆などを主材料とする。⇔副菜」とあるように、食事の最も中心的な位置を占める料理(メーン-ディッシュ)を表し、副菜とは区別されるものと解される。 しかし、本件特許発明2、8の「主菜を充填された」という記載は主菜が料理を表すと解すると意味が不明であるし、仮にその点を措いたとしても、料理のうちのどれが主菜に該当するかは、当業者の技術常識を踏まえても直ちに明らかではない。 そこで本件明細書の記載を参酌すると、本件明細書の【0025】には、「本実施形態において、主菜とは、食品であって、その主たる栄養素がタンパク質、脂質、エネルギー、鉄であり、ビタミン・ミネラルなども含む。また、主菜には、肉、魚、大豆、卵のほか、調味料、香辛料も含まれてもよく、これらの加工調理品、具体的にはカレールー、・・・などを挙げることができる。」との記載がある。 そうすると、本件特許発明2、8にいう「主菜」は、「食品であって、その主たる栄養素がタンパク質、脂質、エネルギー、鉄であり、ビタミン・ミネラルなども含むもの」となる。 しかし、「主たる栄養素」の種類が「タンパク質、脂質、エネルギー、鉄であり、ビタミン・ミネラル」であるとしても、ほとんど全ての食品がこれらの栄養素を含有していることから、当業者はどの食品が「主菜」に該当するかを依然一義的に理解できない。 そうすると、本件特許発明2及び8の記載は、それらの技術的範囲が不明確なものであって第三者に不測の不利益を及ぼすものであるから、明確性要件を満たさない。 4 証拠方法 甲第1号証:特開昭54-105249号公報 甲第2号証:特開2003-61596号公報 甲第3号証:特開2001-78696号公報 甲第4号証:特許第6923986号公報 甲第5号証:「おうつしかえ〆カレーやわらかリゾットタイプ。『今宵をシメるもう一品』には、あれが入っていた!」(Wayback Machine 2015年9月8日付けアーカイブ) 甲第6号証:「株式会社グリーンデザイン&コンサルティングのウエブサイト」(Wayback Machine 2021年1月18日付けアーカイブ) 甲第7号証:広辞苑、第四版、p.1231、H3.11.15、株式会社岩波書店 甲第8号証の1:Handbook of Starch Hydrolysis Products and Their Derivatives,edited by M. W. Kearsley and S. Z. Dziedzic, published by Blackie Academic & Professional,1995年発行,83~86頁 甲第8号証の2:International Journal of Food Science & Technology,2020,Vol.55,pp.769-775,Susann Zahn,他 甲第8号証の3:Industrial and Engineering Chemistry,1953,Vol.45,No.5,pp.1075-1083,W,R.Fetzer,他 甲第8号証の4:Molecules,2010,Vol.15,pp.5162-5173,Junliang Sun,他 甲第8号証の5:Critical Reviews in Food Science and Nutrition,2016,Vol.56,pp.2091-2100,Denise L.Hofman,他 甲第9号証:食品工業総合事典、昭和54年10月25日発行、p.622、p.977、株式会社光琳 甲第10号証:応用糖質科学、第1巻、第1号、34~38頁、一般社団法人 日本応用糖質科学会、平成23(2011)年(発行年) 甲第11号証:United States Pharmacopeia(USP薬局方)「Maltodextrin」、令和7(2025)年12月1日(出力)、特許異議申立人(出力者) なお、甲第10及び11号証は令和7年12月18日に特許異議申立人から提出された手続補正書(方式)により補正された同年同月11日に提出された意見書に添付されたものである。 証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。なお、甲第5、6及び11号証についてはURLの摘記は省略した。以下、順に「甲1」のようにいう。 5 特許権者が提出した証拠方法 特許権者は、令和7年8月11日に提出された意見書に添付して以下の乙第1号証を提出した。 乙第1号証:実験成績証明書、2025年8月2日、森産業株式会社 山口孝之 証拠の表記は、当審による。以下、「乙1」という。 第5 取消理由の概要 令和7年6月9日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし5及び7ないし11は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし12は、甲1に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。 2 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2と重複する。 発明の詳細な説明及び図面の記載により当業者は「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を8.0~17.6重量%含有するレトルトパウチ詰め加工食品」及び「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、8.0~17.6重量%の添加量のDE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 しかし、本件特許発明1、2及び4ないし6においては「デンプン分解物を8.0~17.6重量%含有する」ことが特定されておらず、本件特許発明7、8及び10ないし12においては「8.0~17.6重量%の添加量」で「デンプン分解物」を「レトルトパウチに充填」することが特定されていない。 したがって、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 よって、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12に関し、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するとはいえない。 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「食品組成物」に関しておおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角数字は適宜全角で摘記した。下線は当審で付したものである。 ・「特許請求の範囲 1. α化された定形性澱粉質食品と、前記食品を浸漬したデキストリン又はデキストリンアルコールの溶液とから成ることを特徴とする、食品組成物。 2. 前記澱粉質食品が米である、特許請求の範囲第1項記載の食品組成物。 3. 前記溶液中のデキストリン濃度が5~30%である、特許請求の範囲第1項記載の食品組成物。 4. 前記溶液中のデキストリンアルコール濃度が5~35%である、特許請求の範囲第1項記載の食品組成物。」(第1ページ左下欄第3ないし14行) ・「そこで本発明者は、α化され一定溶液中に浸漬された定形性澱粉質食品が保存中の時間の経過によつても一定量以上吸水膨潤して軟化することなくその定形性を保持することができ、また、加温するだけで製造直後と殆んど変わりない風味と外観を有する食品組成物を提供することを目的として種々検討した結果、α化された定形性澱粉質食品を、デキストリン又はデキストリンアルコールを添加溶解した溶液に浸漬することにより目的の食品組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。」(第1ページ右下欄第14行ないし第2ページ左上欄第4行) ・「本発明においてα化された定形性澱粉質食品とは、種々の澱粉を主原料とする澱粉質食品原料、たとえば生の米、マカロニ、スパゲツテイ、うどん、そば等を、たとえば水中にて常法により加熱するなどの手段により澱粉をα化させた一定の形状を有する食品のことをいう。このα化された定形性澱粉質食品は、加熱α化の前段階等で適宜の調味香辛料、添加物を含有することができる。 本発明に用いるデキストリンとしては、D.E.7~25のものが好ましく、デキストリンに水素添加して得られるデキストリンアルコールとしてはD.H.(加水分解率)14~16のものが好ましい。なお目的とする食品組成物に甘味が付与されるのが望ましくない場合は、特にデキストリンアルコールを用いるとよい。 前記デキストリン又はデキストリンアルコールの溶液は、目的とする食品組成物により適宜決定されるが、たとえばデキストリン又はデキストリンアルコールを添加溶解した清水、調味液、ホワイトソース、ミートソースなどが用いられる。」(第2ページ左上欄第9行ないし右上欄第8行) ・「生もしくは部分的にα化された半生の澱粉質食品原料とデキストリン又はデキストリンアルコールの溶液をプラスチツク製袋等の容器に充填密封し、その後α化と殺菌を兼ねた加熱処理を行なつて製してもよく、後者の製法による場合の方が一般的である。」(第2ページ右下欄第7ないし12行) ・「本発明の食品組成物においては、デキストリン又はデキストリンアルコールの溶液に浸漬されていることにより、α化された定形性澱粉質食品の吸水膨潤しての軟化が一定限度で防止されるため、長期間保存後も喫食時に加温するだけで保存前の製造直後と殆んど変りのない風味のものとなる。またデキストリンおよびデキストリンアルコールの溶液の添加により前記食品の風味やその食品を浸漬する溶液の粘度の変化を生起することもない。以下例により本発明を更に詳細に説明する。なお本明細書中部および%は全て重量単位である。 試験例1 1時間水漬した生の米(うるち)60部、下記第1表に示す種類および量の添加物を清水に溶解した溶液240部(試験番号1~8、このうち3~8は対照)からなる組成物300gをプラスチツク製袋(ポリプロピレンとナイロンの積層物、以下同じ)に充填密封し、116℃で18分間殺菌し生の米をα化させた。 室温にて1ケ月間保存後米粒の残存を観察し、また開封して内容物について風味を検討した結果を下記第1表に示す。更に対照として1時間水積した生の米(うるち)60部と清水のみ240部から成る組成物300gについて同様に試験した結果(試験番号9)を合わせて下記第1表に示す。 なお表中の「米粒の残存」の欄における記号は下記を示す;◎:非常に良い、炊き上げ直後と同様、〇:良い、米粒の崩れはないがやゝ膨潤、△:やゝ悪い、米粒の崩れが少しある、×:悪い、米粒の崩れが目立つ(以下同様)。」(第3ページ左上欄第6行ないし右上欄末行) ・「 [図:0001434159000001.jpg] 」(第3ページ下欄) ・「試験例2 1時間水漬した生の米(うるち)60部と、下記第2表に示す量のデキストリン(D.E.10~12)又はデキストリンアルコール(D.H.14~16)を清水に加えた溶液240部とから成る組成物300gをプラスチツク製袋に充填密封し、116℃で18分間殺菌し生の米をα化させた。室温で1ケ月保存後米粒の残存を観察し、内容物について風味等を検討した結果を下記第2表に示す。」(第4ページ左上欄第1ないし末行) ・「 [図:0001434159000002.jpg] 」(第4ページ右上欄) ・「実施例2 生のマカロニ200gを熱水中にてゆでて550gとした。 一方牛乳800g、バター100g、小麦粉90g、食塩10g、清水250gおよびデキストリンアルコール(D.E.14~16)(当審注:「デキストリンアルコール(D.E.14~16)」は「デキストリンアルコール(D.H.14~16)」の誤記と認める。)の13%溶液200gを用いて常法によりホワイトソース(1450g)を作成した。なお対照としてデキストリンアルコール溶液を用いず、小麦粉を100g、清水を440g用いた以外は同様のホワイトソース(1450g)も作成した。 プラスチツク製袋にゆでたマカロニ550gとホワイトソース1450gを充填密封し、135℃で14分間加熱殺菌した(溶液のデキストリンアルコール溶液は約5%であつた)。これを室温にて1ケ月間保存後開封し、ホワイトソースを除くマカロニの重量を測定したところ680g(1.24倍)であり、形の崩れはみられず、次いで除いてあつたホワイトソースと共に加温して風味をみたところ良好であつた。対照についても同様に保存して調べてみたところ風味は良好であつたが、マカロニの重量は1.2Kg(2.18倍)で、形の崩れがみられた。」(第4ページ左下欄第14行ないし右下欄第15行) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に試験例1(試験番号2)、試験例2(デキストリンアルコールを30部(10%)又は45部(15%)添加したもの)及び実施例2に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1物発明」及び「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1物発明> 「生の米(うるち)又は生のマカロニが充填密封されたプラスチック製袋を116℃で18分間又は135℃で4分間加熱殺菌して得られる、プラスチック製袋詰めのα化された米(うるち)又はホワイトソース入りのゆでたマカロニであって、全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)を含有する、プラスチック製袋に充填されたα化された米又はホワイトソース入りのゆでマカロニ。」 <甲1製法発明> 「プラスチック製袋に充填されたα化された米(うるち)又はホワイトソース入りのゆでマカロニを製造する方法であって、 生の米(うるち)又は生のマカロニと、全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)とを、プラスチック製袋に充填密封して、116℃で18分間又は135℃で4分間加熱殺菌して調理を行う、上記製造する方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1物発明を対比する。 甲1物発明における「生の米(うるち)又は生のマカロニ」は本件特許発明1における「米飯類又は麺類」である「主食」に相当する。 甲1物発明における「プラスチック製袋」は、「116℃で18分間又は135℃で4分間加熱殺菌」されるものであり、甲9によると、このような「袋」は「レトルトパウチ」であるといえるから、本件特許発明1における「レトルトパウチ」に相当する。 甲1物発明における「プラスチック製袋詰めのα化された米(うるち)又はホワイトソース入りのゆでたマカロニ」は本件特許発明1における「レトルトパウチ詰め加工食品」に相当する。 甲1物発明における「全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)を含有する」は本件特許発明1における「さらに、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品を8.0~17.6重量%含有する」と「さらに、デキストリンの還元糖化品を所定量含有する」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、 前記主食が米飯類又は麺類である、 さらに、デキストリンの還元糖化品を所定量含有するレトルトパウチ詰め加工食品。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点1> 「デキストリンの還元糖化品を所定量含有する」に関して、本件特許発明1においては「さらに、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品を8.0~17.6重量%含有する」と特定されているのに対し、甲1物発明においては「全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)を含有する」と特定されている点。 イ 判断 相違点1について検討する。 甲1物発明における「デキストリンアルコール(D.H.14~16)」が「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」という事項の条件を満たすことは甲1に記載されていないし、他の証拠にも記載されていない。 したがって、相違点1は実質的な相違点である。 そして、甲1には甲1物発明において、「デキストリンアルコール(D.H.14~16)」を「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」という事項の条件を満たすようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 よって、甲1物発明において、「全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)を含有する」に代えて「さらに、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品を8.0~17.6重量%含有する」ようにして、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「デンプン分解物を原材料の一つとして使用することで、米飯類や麺類の保存期間中の水分の過度な吸収を抑制するため、開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感を再現することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0012】)という効果は、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲1物発明であるとはいえないし、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2、4及び5について 本件特許発明2、4及び5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1物発明であるとはいえないし、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明6について 本件特許発明6は請求項1の記載を間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件特許発明7について ア 対比 本件特許発明7と甲1製法発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲1物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。 甲1製法発明における「生の米(うるち)又は生のマカロニと、全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)とを、プラスチック製袋に充填密封」する工程は本件特許発明7における「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程」と「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、デキストリンの還元糖化品所定量とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程」という限りにおいて一致する。 甲1製法発明における「116℃で18分間又は135℃で4分間加熱殺菌して調理を行う」工程は本件特許発明7における「密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、 主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、デキストリンの還元糖化品所定量とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、 密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、 を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法。」 そして、両者は次に点で相違又は一応相違する。 <相違点2> 「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、デキストリンの還元糖化品所定量とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程」に関して、本件特許発明7においては「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程」と特定されているのに対し、甲1製法発明においては「生の米(うるち)又は生のマカロニと、全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)とを、プラスチック製袋に充填密封」する工程と特定されている点。 イ 判断 相違点2について検討する。 甲1製法発明における「デキストリンアルコール(D.H.14~16)」が「DE値15~20」という事項の条件を満たすことは甲1に記載されていないし、他の証拠にも記載されていない。 したがって、相違点2は実質的な相違点である。 そして、甲1には甲1製法発明において、「デキストリンアルコール(D.H.14~16)」を「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」という事項の条件を満たすようにする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 よって、甲1製法発明において、「生の米(うるち)又は生のマカロニと、全量に対して1.3%、10%、12%又は15%のデキストリンアルコール(D.H.14~16)とを、プラスチック製袋に充填密封」する工程に代えて「主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程」として、相違点2に係る本件特許発明7の発明特定事項を採用することは、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。 そして、本件特許発明7の奏する「デンプン分解物を原材料の一つとして使用することで、米飯類や麺類の保存期間中の水分の過度な吸収を抑制するため、開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感を再現することができる。」という効果は、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明7は甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明8、10及び11について 本件特許発明8、10及び11はいずれも、請求項7の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明7と同様に、甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明12について 本件特許発明12は請求項7の記載を間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明7の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明7と同様に、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (8)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和7年12月11日に提出された意見書において、「(i)甲1の・・・(略)・・・上の4-2.(4)で述べたとおり、本件訂正発明の「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」が、「還元前にDE値が15~20を有するマルトデキストリンの液体還元糖化品」であるとの前提で以下議論する。・・・(略)・・・本件訂正発明は依然として取消理由通知の理由1が解消されておらず、取り消されるべきものである。」(上記意見書第5ないし11ページ)旨主張している。 そこで、検討するに、下記第8のとおり、本件特許発明1及び7における「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」という発明特定事項が、「低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」が「DE値15~20」を有することを意味するものであって、「還元前にDE値が15~20を有するマルトデキストリンの液体還元糖化品」を意味するものではないことは当業者に明らかであり、特許異議申立人の上記主張は議論の前提が誤っているから採用できない。 (9)取消理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、4、5、7、8、10及び11は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(サポート要件)及び申立理由2(サポート要件)について 取消理由2(サポート要件)と申立理由2(サポート要件)は重複することから、併せて検討する。 (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 発明の詳細な説明の【0001】ないし【0008】によると、本件特許発明1、2、及び4ないし6の解決しようとする課題は「開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感が維持されるレトルトパウチ詰め加工食品を提供すること」であり、本件特許発明7、8及び10ないし12の解決しようとする課題は「開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感が維持されるレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。 そして、発明の詳細な説明の【0009】には「本発明者らは上記課題を解決するため、デンプン含有食品原料の水分調整の役割を行う原材料について種々検討した結果、デンプン分解物を原材料に加えることで、上記課題を解決することができるとの知見を得た。」と記載され、同【0010】には「本発明は係る知見に基づきなされたものであり、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を含有する、レトルトパウチ詰め加工食品を提供するものである。」と記載され、同【0011】には「また、本発明は、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法を提供するものである。」と記載され、同【0016】には「米飯類としては、白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀(アワ、ヒエ、キビ、ハト麦、オーツ麦、大豆、小豆、キヌア、そばなど)からなる群から選択された少なくとも1種を含む米飯類、並びにこれらの米飯類に調理を施した米飯類、例えば餅、炒飯、ピラフ、ガーリックライス、バターライス、ケチャップライス、ジャンバラヤ、ガパオライス、ナシゴレン、タコライス、メキシカンライス、ビビンバ、カオパット、ビリヤンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」と記載され、同【0017】には「麺類としては、小麦粉又はその他の穀粉及びその他の原材料を加水混練して製麺したものをいい、例えば、うどん、中華麺(ラーメン麺、焼きそば麺)、皮類、和そば、素麺、冷麦、冷麺、ビーフン、春雨、きしめん、パスタが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」と記載され、同【0019】には「本実施形態において、DE値8~40のデンプン分解物を使用する。ここで、デンプン分解物とは、デンプン(加工デンプンを含む)を酵素及び/又は酸を用いて低分子化(加水分解)することにより得ることができる食品材料をいう。「DE値」とは、Dextrose Equivalent値の略称であり、DE値はデンプン分解物の加水分解の程度を示す指標として用いられる。DE値が100に近いほど加水分解が進行し、グルコースに近いことを示すため、それだけ食品に甘味を付与することになる。」と記載され、同【0020】には「本実施形態において用いられるデンプン分解物のDE値は、レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類及び麺類の適度な食感を維持するという観点から8~40である。本発明において用いられ得るデンプン分解物の具体例としては、マルトトリオース(DE値33)、マルトテトラオース(DE値25)、マルトデキストリン(DE値10~20程度)、粉あめ(DE値20~40程度)、還元水あめ(DE値8~40程度)、水あめ(DE値35~40)等が挙げられ、好ましくはDE値8~40の低糖化還元水あめ、より好ましくはDE値15~20の低糖化還元水あめである。」と記載され、同【0022】には「本発明においては、レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類及び麺類の適度な食感を維持するという観点からDE値8~40の低糖化還元水あめを用いることが好ましく、食感に加え風味や外観を考慮すればDE値15~20の低糖化還元水あめを用いることがより好ましい。」と記載され、同【0024】には「DE値8~40のデンプン分解物の含有量は、米飯類及び麺類の食感を考慮して8.0~17.6重量%であることが好ましい。」と記載され、同【0026】には「本実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品は米飯類や麺類の保存期間中の水分の過度な吸収が抑制されるため、開封時に炊き立ての米飯類や茹でたての麺類の食感が維持される。また、1つのレトルトパウチで、米飯類や麺類などの主食と、おかずとしての主菜が混在した状態であっても、米飯類や麺類の食感が損なわれることなく維持されるため、例えば、ご飯とカレールーが一緒になったカレーライスのレトルト食品、ご飯と中華丼の具が一緒になった中華丼のレトルトパウチ詰め加工食品、ご飯と牛丼の具が一緒になった牛丼のレトルトパウチ詰め加工食品や、パスタとパスタソースが一緒になったスパゲッティのレトルトパウチ詰め加工食品など、1つのレトルトパウチで主食と主菜を同時に温めて手軽に食べることができる商品を提供することができる。」と記載され、同【0027】には「次に、本発明の実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法について説明する。本実施形態に係るレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法は、主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、DE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有する。」と記載され、同【0029】には「米飯類を主食とするレトルトパウチ詰め加工食品とする場合、米飯類原料は、炊飯前すなわち糊化前の白米、黒米、赤米、緑米、玄米、麦、雑穀(アワ、ヒエ、キビ、ハト麦、オーツ麦、大豆、小豆、キヌア、そばなど)、並びにこれらの米飯類原料に調理を施したもの(例えば餅など)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」と記載され、同【0032】には「麺類としては、小麦粉又はその他の穀粉及びその他の原材料を加水混練して製麺した生麺又は糊化前の乾燥麺をいい、例えば、うどん、中華麺(ラーメン麺、焼きそば麺)、皮類、和そば、素麺、冷麦、冷麺、ビーフン、春雨、きしめん、パスタが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」と記載され、同【0035】には「本実施形態においては、前記前処理工程において、さらに、主菜原料を前記レトルトパウチに充填することもできる。」と記載され、同【0038】には「本実施形態において用いられるデンプン分解物のDE値は、レトルトパウチ詰め加工食品の米飯類及び麺類の適度な食感を維持するという観点から8~40である。本発明において用いられ得るデンプン分解物の具体例としては、マルトトリオース(DE値33)、マルトテトラオース(DE値25)、マルトデキストリン(DE値10~20程度)、粉あめ(DE値20~40程度)、還元水あめ(DE値8~40程度)、水あめ(DE値35~40)等が挙げられ、好ましくはDE値8~40の低糖化還元水あめ、より好ましくはDE値15~20の低糖化還元水あめである。」と記載されている。すなわち、発明の詳細な説明には、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12に対応する記載があるといえる。 また、発明の詳細な説明の【0046】ないし【0051】及び図1において、米30g、DE値19.5の還元水あめ33g又はDE値20~40の水あめ33g、水13.2gを混合した後、200ml容レトルトパウチに充填し、シーラーにて密封し、その後、122℃、0.11MPaで20分間加熱殺菌したレトルトパウチ詰め加工食品は米の良好な食感を維持することができることを確認している。 さらに、発明の詳細な説明の【0056】ないし【0079】及び図4ないし12において、還元水あめの添加量が8.0~17.6重量%の範囲内であるレトルトパウチ詰め加工食品は米や麺類の良好な食感を維持することができること及び還元水あめの添加量が8.0~17.6重量%の範囲外であるレトルトパウチ詰め加工食品では食感が柔らかすぎたり、硬くなる傾向があることを確認している。 そうすると、発明の詳細な説明及び図面の記載により当業者は「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を8.0~17.6重量%含有するレトルトパウチ詰め加工食品」及び「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、8.0~17.6重量%の添加量のDE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1、2及び4ないし6は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「レトルトパウチ詰め加工食品」をさらに限定したものであり、本件特許発明7、8及び10ないし12は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「レトルトパウチ詰め加工食品の製造方法」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12に関し、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)取消理由2について 取消理由2は、訂正前の本件特許発明1において「DE値8~40のデンプン分解物を8.0~17.6重量%含有する」ことが特定されていなかったこと及び訂正前の本件特許発明7において「8.0~17.6重量%の添加量のDE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する」ことが特定されていなかったことに起因するものであるところ、本件訂正により、本件特許発明1において「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品を8.0~17.6重量%含有する」ことが特定され、本件特許発明7において「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品8.0~17.6重量%とをレトルトパウチに充填し密封する」ことが特定されたので、取消理由2は解消した。 (4)特許異議申立人の申立理由2における主張について 特許異議申立人の申立理由2における主張について検討する。 ア 申立理由2(1)について 実験例において還元水あめのDEが示されているのが、サンプルCのDCP-HL(DE19.5)のみであるとしても、上記(2)のとおり、発明の詳細な説明及び図面の記載から、当業者は「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を8.0~17.6重量%含有するレトルトパウチ詰め加工食品」及び「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、8.0~17.6重量%の添加量のDE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 また、本件特許発明1及び7において特定される発明特定事項を有しているだけでは、どのような「レトルトパウチ詰め加工食品」及び「レトルトパウチ詰め加工食品の製造方法」であっても、発明の課題を解決できないことを示す具体的な証拠がある訳でもない。 したがって、特許異議申立人の申立理由2(1)における主張は採用できない。 イ 申立理由2(2)について 発明の詳細な説明及び図面において、還元水あめの添加量が7.1%、7.8%の場合には食感が軟らかすぎ、14.3%の時に食感が硬すぎることが示されているのは、特定のレトルトパウチ詰め加工食品(ご飯のみ、スパゲティのみ、ペンネのみ)の場合であって、他のレトルトパウチ詰め加工食品の場合には、「DE値8~40のデンプン分解物を8.0~17.6重量%含有する」という条件を満たすことで発明の課題を解決できることが示されている。 したがって、発明の詳細な説明及び図面の記載から、当業者は「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品であって、前記主食が米飯類又は麺類であり、さらに、DE値8~40のデンプン分解物を8.0~17.6重量%含有するレトルトパウチ詰め加工食品」及び「主食が充填されたレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法であって、主食原料としての米飯類原料又は麺類原料と、8.0~17.6重量%の添加量のDE値8~40のデンプン分解物とをレトルトパウチに充填し密封する前処理工程と、密封された前記レトルトパウチを加熱及び加圧することで調理及び殺菌を行うレトルト殺菌工程と、を有するレトルトパウチ詰め加工食品の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できるとした判断が変わることはない。 よって、特許異議申立人の申立理由2(2)における主張は採用できない。 なお、特許異議申立人は、令和7年12月11日に提出された意見書において、「しかしながら、「デンプン分解物を8.0~17.6重量%含有する」場合に、課題を解決することが示されているのは、図7に示されている加工食品が「カレーご飯」の例のみであり、その他の多数の加工食品の実施例はいずれもこの範囲において課題を解決することが示されていないから、いずれの加工食品も包含する本件訂正発明について、サポート要件違反が解消していないことは明らかである。 ・・・(略)・・・デンプン分解物含有量が「10.6~11.2重量%」の範囲内において課題を達成するといえるとしても、「8.0~17.6重量%」の全ての範囲にわたって本件特許発明の課題を達成しえないこと、すなわちサポート要件を満たしていないことが明らかである。」(上記意見書第12及び13ページ)旨主張するが、該主張についても同様に判断される。すなわち、該主張も採用できない。 (5)取消理由2及び申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由2及び申立理由2によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由は、申立理由2(サポート要件)の一部及び申立理由3(明確性要件)である。 申立理由2(サポート要件)の一部については上記第6 2(4)で検討したとおりである。 以下、申立理由3(明確性要件)について検討する。 1 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 2 明確性要件の判断 本件特許の請求項2及び8の記載は、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。 したがって、本件特許発明2及び8に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 3 特許異議申立人の申立理由3における主張について 本件特許発明2における「主菜」という発明特定事項及び本件特許発明8における「主菜原料」という発明特定事項がそれぞれ何を指すかは、「レトルトパウチ詰め加工食品」が何であるかで決まるものであり、当業者であれば、明確に理解できる。 したがって、本件特許発明2における「主菜を充填された」という発明特定事項及び本件特許発明8における「主菜原料を前記レトルトパウチに充填する」という発明特定事項の意味が不明確であるとはいえない。 よって、特許異議申立人の申立理由3における主張は採用できない。 4 申立理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項2及び8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 第8 特許異議申立人の主張する新たな取消理由について 特許異議申立人は、令和7年12月18日に提出された手続補正書(方式)により補正された同年同月11日に提出された意見書において、新たな取消理由(明確性要件及びサポート要件)を主張しているので、該主張について検討する。 1 新たな取消理由1(明確性要件)について (1)新たな取消理由1(明確性要件)の概要 「訂正後の「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」の記載は、「低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」が「DE値15~20」を有するとも理解できるし、「DE値15~20を有する低甘味マルトデキストリン」の液体還元糖化品」とも理解することができる。この点から、訂正後の「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」なる記載は、多義的に理解することができるため、発明の範囲が不明確となっている。よって、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではない。 また、「低甘味マルトデキストリン」の「低甘味」は技術的に何を限定しようとしているのか不明である。」(上記意見書第2及び3ページ) (2)明確性要件の判断基準 明確性要件の判断基準は上記第7 1のとおりである。 (3)明確性要件の判断 まず、上記(1)の主張について検討する。 本件特許発明1及び7における「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」という発明特定事項が、「低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」が「DE値15~20」を有することを意味していることは、発明の詳細な説明の【0020】、【0022】、【0038】及び【0046】の記載から、当業者に明らかである。 したがって、「訂正後の「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」なる記載は、多義的に理解することができるため、発明の範囲が不明確となっている。」とはいえない。 なお、特許異議申立人は、「なお、「マルトデキストリン」は一般にDE値(還元力の割合)が20以下であり・・・(略)・・・そのマルトデキストリンの還元物のDE値は、還元末端の還元により還元力が失われているはずであるから「15~20」であることは到底考えられない(ほぼ0かそれに小さい数のはずである)。」(上記意見書第3ページ)旨主張するが、発明の詳細な説明の【0046】の「還元水あめ(第一化成社製のDCP-HL(商標)、低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品、DE値19.5)」という記載からみて「低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」の「DE値」が「15~20」の物が存在しないとはいえないし、「低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」の「DE値」が「15~20」とはならないことを示す具体的な証拠が示されている訳でもないので、該主張は採用できない。 また、「低甘味」は、文字どおり、甘味が低いことを意味するものであるし、「DE値15~20」という限定が付されていることから、「低甘味」という記載が本件特許発明1及び7を第三者の利益が不当に害されるほどに不明確にするものとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記(1)の主張は採用できない。 そして、改めて検討するに、本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12の記載は、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。 そうすると、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)新たな取消理由1についてのむすび したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許は、特許異議申立人の主張する新たな取消理由1によっては取り消すことはできない。 2 新たな取消理由2(サポート要件)について (1)新たな取消理由2(サポート要件)の概要 「本件訂正発明の「マルトデキストリンの液体還元糖化品」のDE値が15である場合と、実験成績証明書において比較実験として示した松谷化学工業社製の「デキストリンアルコール」(DE値15)とは物として同じであり、区別がつかない。 そして、被異議申立人は、実験成績証明書において、松谷化学工業社製の「デキストリンアルコール」(DE値15)をサンプル2として用いて、本件特許発明の課題を達成するものであるか否かについて試験を行い、その結果、サンプル2は、食感及びレオメータによる試験において、発明の課題を達成しないこと(お粥様に柔らかく、荷重が低い)を明確に示している。 つまり、被異議申立人は、本件訂正発明の請求の範囲に入る発明が本件特許発明の課題を達成しないこと(サポート要件違反となること)を自ら証明したことになる。 従って、本件訂正発明の「還元前にDE値が15~20を有するマルトデキストリンの液体還元糖化品」の全ての範囲にわたって本件特許発明の課題を達成するものではなく、本件訂正発明はサポート要件を満たさない。」(上記意見書第14ページ) (2)サポート要件の判断基準 サポート要件の判断基準は上記第6 2(1)のとおりである。 (3)サポート要件の判断 まず、上記(1)の主張について検討する。 実験成績証明書(乙1)において比較実験として示した松谷化学工業社製の「デキストリンアルコール」(DE値15)が、本件特許発明1及び7で特定された「DE値15~20の低甘味マルトデキストリンの液体還元糖化品」という発明特定事項の条件を満たすかどうかは不明である。 したがって、「本件訂正発明の「マルトデキストリンの液体還元糖化品」のDE値が15である場合と、実験成績証明書において比較実験として示した松谷化学工業社製の「デキストリンアルコール」(DE値15)とは物として同じであり、区別がつかない。」とはいえず、特許異議申立人の上記(1)の主張は採用できない。 そして、上記第6 2(2)のとおり、本件特許発明1、2、4ないし8及び10ないし12に関し、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (4)新たな取消理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許は、特許異議申立人の主張する新たな取消理由2によっては取り消すことはできない。 第9 結語 上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許は、取消理由、特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由及び特許異議申立人の主張する新たな取消理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2、4ないし8及び10ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項3及び9に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3及び9に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700434

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