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特許異議申立

2021-700990

二重構造容器成形用プリフォーム及び二重構造容器

審判番号
2021-700990
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-090177
登録番号
6867111
請求日
2021年10月13日
審決日
2023年01月30日
公報発行日
2023年05月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東洋製罐グループホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
  • 【権利者代理人】小野 尚純
  • 【権利者代理人】奥貫 佐知子
  • 【権利者】東洋製罐株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
  • 【権利者代理人】小野 尚純
  • 【権利者代理人】奥貫 佐知子
  • 【異議申立人】▲桑▼原 裕二
審判長/審判官
  • 審判長 大島 祥吾
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6867111号発明「二重構造容器成形用プリフォーム及び二重構造容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6867111号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認める。 特許第6867111号の請求項1及び6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6867111号の請求項1及び6に係る特許についての出願は、平成28年4月28日(優先権主張 平成27年5月8日)に出願され、令和3年4月12日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年10月13日 :特許異議申立人 ▲桑▼原裕二(以下、「異議申立人」という。)による請求項1及び6に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年 1月28日付け:取消理由通知書 同年 4月 5日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求 同年 6月 2日付け:訂正請求があった旨の通知 同年 同月22日 :異議申立人による意見書の提出 同年 8月25日付け:取消理由通知書 同年10月26日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求 同年11月10日付け:訂正請求があった旨の通知 同年12月14日 :異議申立人による意見書の提出 なお、令和4年4月5日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げされたものとみなされる。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年10月26日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1及び2のとおりである。なお、下線は訂正箇所について付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項6について、 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、 前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にあること、 を特徴とするデラミボトル。」 との記載を、 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前外筒体の内面と前記内袋のストレートな形態を有する外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、 前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にあること、 を特徴とするデラミボトル。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0010】について、 「本発明によれば、また、外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、 前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にあること、 を特徴とするデラミボトルが提供される。 このデラミボトルは、内袋に内容物が充填されていないことから理解されるように、成形直後の空ボトルであり、これに内容物が充填されて使用に供される。」 との記載を、 「本発明によれば、また、外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋のストレートな形態を有する外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、 前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にあること、 を特徴とするデラミボトルが提供される。 このデラミボトルは、内袋に内容物が充填されていないことから理解されるように、成形直後の空ボトルであり、これに内容物が充填されて使用に供される。」 に訂正する。 2 訂正の適否についての検討 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項6の訂正は、 外筒体の内面と内袋の外面とが密着している嵌合部について、外筒体の内面と内袋の「ストレートな形態を有する」外面とが密着していることを追加して限定する訂正事項(以下、「訂正事項1-1)という。)と、 外筒体の内面と内袋の外面との間に形成されている空隙部について、外筒体の内面と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」内袋の外面との間に形成されていることを追加して限定する訂正事項(以下、「訂正事項1-2」という。)とからなるものであり、 訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに、本件特許明細書の【0023】「一方、これのテーパー面1aに対応して、内筒プリフォーム3の外面は、固定領域Xから延伸成形領域Yにかけて、上方から下方にいくにしたがって縮径しているテーパー面3aとなっており、このテーパー面3aを除く部分が、実質上ストレートな形態を有している(図1(c)参照)。」(注:下線は当審にて付した。)と記載されるとともに、【図1】(c)に、訂正事項1-1の内袋の「ストレートな形態を有する」外面の形状が図示されている。また、本件特許明細書の【0023】には「一方、これのテーパー面1aに対応して、内筒プリフォーム3の外面は、固定領域Xから延伸成形領域Yにかけて、上方から下方にいくにしたがって縮径しているテーパー面3aとなっており」(注:下線は当審にて付した。)と記載されるとともに、【図1】(c)には、訂正事項1-2の「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」内筒プリフォームの外面の形状が図示されている。さらに、本件特許明細書【0013】に「【図3】【図1】の二重構造容器成形プリフォームから得られる二重構造容器の側断面図」が記載され、本件特許明細書【0029】には、図3において、「二重構造容器30は、外筒プリフォーム1から得られる外筒体41と、内筒プリフォーム3から得られる内袋43」とから形成されることが記載されている。 これらの記載からみて、訂正事項1-1及び訂正事項1-2はいずれも新規事項を追加するものではない。 また、訂正事項1に係る請求項6の訂正は、特許請求の範囲を実質的に拡張、変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る明細書【0010】の訂正は、訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、上記(1)と同様に、訂正事項2に係る明細書【0010】の訂正は、新規事項を追加するものではないし、特許請求の範囲を実質的に拡張、変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明6」といい、まとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、 前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられていること、 を特徴とするデラミボトル成形用プリフォーム。 【請求項6】 外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋のストレートな形態を有する外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる該内袋の外側との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、 前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にあること、 を特徴とするデラミボトル。 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 7 申立理由7(サポート要件) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 具体的理由はおおむね次のとおりである。 ・本件特許発明1及び6においては、外筒プリフォームの内周面及び内筒プリフォームの外周面に凹凸を設けず、且つ、外筒プリフォームの内径を内筒プリフォームの外径よりも大きく設定する点について規定されていないから、本件特許発明の課題を解決できない部分を含むものである。 8 申立理由8(明確性) 本件特許の訂正前の請求項1及び6に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 具体的理由はおおむね次のとおりである。 ・本件特許発明1及び6における「全周にわたる」空隙部はその具体的態様が明らかではないから、本件特許発明1及び6は明確ではない。 9 証拠方法 甲第1号証:特許第3796595号公報 甲第2号証:特開平6-39906号公報 甲第3号証:特許第3201417号公報 甲第4号証:実願平2-22751号(実開平3-114784号)のマイクロフィルム 甲第5号証:特開2009-149327号公報 甲第6号証:米国特許第8931651号明細書 甲第7号証:米国特許第4330066号明細書 甲第8号証:米国特許出願公開第2008/0260978号明細書 また、異議申立人は、令和4年6月22日に提出した意見書と併せて、次の甲第9~13号証を提出している。 甲第9号証:特開2014-108802号公報 甲第10号証:特開2014-69878号公報 甲第11号証:特表2014-503388号公報 甲第12号証:特開平6-345069号公報 甲第13号証:特開昭58-187319号公報 さらに、異議申立人は、令和12月14日に提出した意見書と併せて、次の甲第14~18号証を提出している。 甲第14号証:特開昭57-174221号公報 甲第15号証:特開2002-68229号公報 甲第16号証:特開平11-245941号公報 甲第17号証:特開平9-1639号公報 甲第18号証:特開平9-216275号公報 なお、証拠の表記については、特許異議申立書及び上記意見書における記載におおむね従った。以下、甲第1~18号証を順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審が令和4年8月25日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由の概要は、次のとおりである。 なお、取消理由2は、申立理由3のうち本件特許発明6に係る部分、申立理由5のうち本件特許発明6に係る部分である。 1 取消理由2(甲5又は甲3に基づく進歩性) 本件特許の請求項6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲5又は甲3に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由3(甲12に基づく新規性・進歩性) 本件出願の請求項6に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された甲12に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または、その優先日前に日本国内または外国において頒布された甲12に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 令和4年8月25日付けで特許権者に通知した取消理由についての当審の判断 当審は以下に述べるように、令和4年8月25日付で特許権者に通知した取消理由2及び取消理由3は、いずれも、その理由がないと判断する。 1 主な証拠等 (1)甲5に記載された発明 甲5の【請求項1】、【請求項4】、【0012】~【0014】、【0021】、【0023】、【図1】、【図2】からみて、甲5には次の発明(以下、「甲5発明B」という。)が記載されていると認められる。 <甲5発明B> 「外容器形成用の円筒状のパリソンと内袋形成用の円筒状のパリソンとを共押出し、ピンチオフで双方のパリソンを封じ切ったデラミボトル成形用のパリソンをブロー成形して得たデラミボトル本体2であって、外容器3と液体を収容する内袋4が剥離容易に積層されつつ、外容器3と内袋4とはそれらの底部で接着しており、外容器3の口部近傍に、外容器3と内袋4との間の内部空間5を外容器の外と連通させる通気孔6を有するデラミボトル本体2。」 (2)甲3に記載された発明 甲3の【特許請求の範囲】、【0002】、【0005】~【0011】、【図1】、【図2】、【図5】、【図6】、【図7】からみて、甲3には次の発明(以下、「甲3発明B」という。)が記載されていると認められる。 <甲3発明B> 「外壜と該外壜内面に接する柔軟性に富む袋状の内壜であって収容物が充填される内壜とからなり、該内壜が該外壜に挿入された二重構造を有し、収納物吐出による内壜負圧化で内外壜間に外気が導入されて内壜が収縮可能に設けた内外二重壜であって、内壜の第2口頸部外面に縦設された突条部が外壜の第1口頸部内面に当接する部分を有し、内壜の外向きフランジ下面に形成された空気流通溝を介して外気と連通する内外両壜間の小間隙を含んでいる内外二重壜。」 (3)甲12に記載された発明 甲12の【請求項1】、【請求項3】、【0018】、【0022】~【0023】、【図5】の記載から見て、甲12には次の発明(以下、「甲12発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲12発明> 「少なくとも外側層及び内側層の2層からなり、前記外側層及び内側層が剥離自在である積層剥離ボトルであって、内側層のボトル口端部に直角に屈曲して外側層の口端部面に重なって係合するフランジ状の係合片が形成され、内側層と外側層との間に形成された大気導入隙間が胴部まで延びており、外側層のボトル口の螺子部位置に大気導入孔が形成された積層剥離ボトル。」 2 令和4年8月25日付け取消理由2、取消理由3についての当審の判断 (1)本件発明6と甲5発明Bとの対比 ・判断 本件特許発明6と甲5発明Bとを対比すると、甲5発明Bの「外容器3」、「液体を収容する内袋4」、「デラミボトル本体2」、「内部空間」、「通気孔6」は、それぞれ、本件特許発明6の「外筒体」、「内容物が充填される内袋」、「デラミボトル」、「空隙部」、「空気導入口」に相当する。 甲5発明Bのデラミボトル本体2の「外容器3と液体を収容する内袋4が剥離容易に積層されつつ、外容器3と内袋4とはそれらの底部で接着して」いる構造は、本件特許発明6における「該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有している」構成に相当する。 そして、甲5発明Bのデラミボトル本体の「口部近傍部分」は、本件特許発明6の「ノズル部」に相当する。 甲5【0014】の記載から、甲5発明Bのデラミボトル本体2の下側(口部から遠い側)部分がブロー成形され、デラミボトル本体2の口部近傍部分はブロー成形されない部分であることが明らかであるから、甲5発明Bのデラミボトル本体2は、本件特許発明6の「延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成」る点に相当する部分を有し、「延伸成形された下部領域」は、「肩部と、胴部および底部」から成る構成を有している。 甲5【図1】から、デラミボトル本体の口部端面において、外容器3の内面と内袋4の外面が密着している。ここで「外容器3の内面と内袋4の外面が密着している」箇所は、シール部12が配置されており、密着嵌合させる部位、すなわち本件特許発明6の「嵌合部」に相当する部位である。 甲5発明Bの内部空間5はデラミボトル本体2の口部近傍領域から底部まで連通し、口部近傍領域においても全周にわたっているから、甲5発明Bは本件特許発明6の「該外筒体の内面と内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びている」構成を有している。 してみると、本件特許発明6と甲5発明Bの一致点、相違点はそれぞれ以下のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル。」 <相違点5-1> 上部領域の嵌合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲5発明Bにおいてはそのような特定を有しない点。 相違点5-1について検討する。 甲5発明Bにおける内袋4の延伸成形されていない口部近傍領域は、甲5【図1】及び【図2】に開示されるように口径の異なる段差形状にて成形され、かつ、デラミボトル底部に向かって下段側の口径が大きくなるように形成されている。 また、甲5には、内袋の外面を「ストレートな形態」で「上方から下方に行くにしたがって縮径」させた「テーパー面」で形成することについて、これを想起するきっかけないし契機はなく、また、そのように成形することを示唆する記載も存在しない。 そして、本件特許発明6は、内袋の外面をストレートな形態で、上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面に形成することによって、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部にスムーズに挿入し、外筒プリフォームと内筒プリフォームとが安定に保持された多重プリフォームを組み立てることが可能となるという顕著な効果を有している。 したがって、当業者は、甲5発明Bにおいて、相違点5-1に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明6は、甲5発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明6と甲3発明Bとの対比・判断 本件特許発明6と甲3発明Bとを対比すると、甲3発明Bの「外壜」、「収容物が充填される内壜」、「内外二重壜」、「内壜の第2口頸部外面に縦設された突条部が外壜の第1口頸部内面に当接する部分」、「内外両壜間の小間隙」、「空気流通溝」は、それぞれ、本件特許発明6の「外筒体」、「内容物が充填される内袋」、「デラミボトル」、「嵌合部」、「空隙部」、「空気導入口」に相当する。 甲3【図5】より、甲3発明Bの「内外両壜間の小間隙」は内外壜の全周にわたり形成され、かつ、これは下方にまで延びている。当該構成は本件特許発明6における「該外筒体の内面と」「該内袋の外面との間に形成されている空隙部」が「上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びている」構成に相当する。 また、甲3【0010】、【図5】~【図7】の記載からみて、第1口頸部及び第2口頸部は延伸されていない部分であり、これらから構成される壜口部分はポンプが装着されるから、本件特許発明6における「ノズル部」に相当する。 さらに、甲3【図5】~【図7】から内壜及び外壜の延伸領域は、肩部、胴部および底部から成り、当該構成は本件特許発明6における「該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトル」の構成に相当する。 そうすると、本件特許発明6と甲3発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル。」 <相違点3-1> 上部領域の嵌合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲3発明Bにおいてはそのような特定を有しない点。 相違点3-1について検討する。 甲3発明Bにおける延延成形されていない上部領域(第1口頸部及び第2口頸部)の内袋(収容物が充填される内壜)の外面の形状として、甲3の【図5】~【図7】に種々のパターンが示されているが、内袋の外面をテーパー面として、内袋の口径をデラミボトルの垂直方向に対して変更した例もない。 また、甲3には、内袋の外面を「上方から下方に行くにしたがって縮径」させた「テーパー面」とするきっかけないし契機はなく、そのように成形することを示唆する記載も存在しない。 本件特許発明6は、内袋の外面を内袋の外面を「ストレートな形態」で、「上方から下方に行くにしたがって縮径」している「テーパー面」に形成することによって、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部にスムーズに挿入し、外筒プリフォームと内筒プリフォームとが安定に保持された多重プリフォームを組み立てることが可能となるという顕著な効果を有している。 したがって、当業者は、甲3発明Bにおいて、相違点3-1に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明6は、甲3発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6と甲12発明との対比・判断 本件特許発明6と甲12発明とを対比すると、甲12発明の「内側層」、「積層剥離ボトル」、「大気導入隙間」、「大気導入孔」は、それぞれ、本件特許発明6の「内容物が充填される内袋」、「デラミボトル」、「空隙部」、「空気導入口」に相当する。また、甲12発明の「外側層」は図1~3の記載からも筒状の形状を有していることが見て取れるから、本件特許発明6の「外筒体」に相当する。 甲12発明の積層剥離ボトルは内側層が外側層の内部に挿入された二重構造を有していることは明らかである。そして、甲12発明の「ボトル口」には、ポンプディスペンサーが装着されるものである(【0020】)から、甲12発明の「ボトル口」は本件発明6の「ノズル部」に相当する。さらに、甲12【0017】の記載及び技術常識に鑑みれば、甲12発明の積層剥離ボトルの胴側部分がブロー成形されていることは明らかであるから、甲12発明の積層剥離ボトルは、本件特許発明6の「延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成」っている点に相当する部分を有することは明らかである。加えて、甲12図1~3から明らかなように、甲12発明の積層剥離ボトルは、傾斜状のボトル肩部Bと、円筒状の胴部Cと、底面部分とから構成されている。 また、甲12図3からは、ボトル口部分の大気導入口3よりも上の部分において、外側層1の内面と内側層2の外面が密着していることが見て取れ、甲12発明が「ボトル口から内側層と外側層の間への水の浸入等をより確実に防ぐ」ものであることからみても、当該「密着している」箇所は、密着嵌合させる部位、すなわち本件特許発明6の「嵌合部」に相当する部位であることは明らかである。 さらに、甲12に記載された大気導入孔3はボトル口中心に対称的に2カ所に形成されていることから、甲12発明の「大気導入隙間」は口部近傍領域においても全周にわたっているものと認められる。また、内側層4のブロー成形方法から見て、製造時点において内側層には内容物が充填されていない状態であることは明らかである。 そうすると、本件特許発明6と甲12発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル。」 <相違点12> 上部領域の嵌合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲12発明においてはそのような特定を有しない点。 本件特許発明6と甲12発明とは上記相違点12の点で相違するから、本件特許発明6は甲12に記載された発明ではない。 次に、相違点12について検討する。甲12発明における延延成形されていない上部領域の内袋(内側層)の外面の形状として、甲12に開示される何れの図面においても、内袋の外面をストレートな形態でテーパー面としたものはなく、内袋の口径をデラミボトルの垂直方向に対して変更した例もない。 また、甲12には、内袋の外面を「ストレートな形態」で「上方から下方に行くにしたがって縮径」させた「テーパー面」とするきっかけないし契機はなく、そのように成形することを示唆する記載も存在しない。 そして、本件特許発明6は、内袋の外面をストレートな形態で、上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面に形成することによって、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部にスムーズに挿入し、外筒プリフォームと内筒プリフォームとが安定に保持された多重プリフォームを組み立てることが可能となるという顕著な効果を有している。 したがって、当業者は、甲12発明において、相違点12に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明6は、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)令和4年8月25日付けで特許権者に通知した取消理由についてのまとめ 取消理由2(甲3及び甲5基づく進歩性)及び取消理由3(甲12に基づく新規性・進歩性)は、いずれにも、その理由がない。 第7 取消理由において採用しなかった申立理由についての当審の判断 以下に記載するように、取消理由において採用しなかった申立理由についても、いずれにも、その理由がないと判断する。 以下、申立理由1から順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)についての判断 (1)甲1に記載された発明 甲1の【特許請求の範囲】、【0008】~【0010】、【0012】~【0016】、【図4】から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明A」、「甲1発明B」という。)が記載されている。 <甲1発明A> 「射出成形により、口部(11)外周面に螺条(4)を設けた有底筒状に成形された合成樹脂製の外筒(2)と、射出成形により、口部(11a)上端に外フランジ(5)を設けた有底筒状に成形された、前記外筒(2)に対して剥離自在な可撓性合成樹脂製の内筒(3)とを、前記口部(11)の上端面上に外フランジ(5)を重ねて嵌合させて成るパリソン(1)の、前記外筒(2)の口部(11)に、前記外層(12)と内層(13)との間への空気導入部(6)を射出成形時に予め形成したものであって、該パリソン(1)の口部(11)、(11a)より下部分を2軸延伸ブロー成形し壜体を成形するための、パリソン。」 <甲1発明B> 「甲1発明Aのパリソン(1)の口部(11)、(11a)より下部分を2軸延伸ブロー成形した壜体。」 (2)本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲1発明Aとを対比すると、 甲1発明Aの「射出成形により」「有底筒状に成形された合成樹脂製の外筒(2)」、「射出成形により」「有底筒状に成形された」「可撓性合成樹脂製の内筒(3)」は、本件特許発明1の「試験管形状を有している外筒プリフォーム」「試験管形状を有している内筒プリフォーム」に相当する。 甲1発明Aにおいて、「前記外筒(2)に対して剥離自在な可撓性合成樹脂製の内筒(3)とを、前記口部(11)の上端面上に外フランジ(5)を重ねて嵌合させて成る」構成は、本件特許発明1における「内筒プリフォームが外筒プリフォームに内部に挿入された二重構造を有している」構造に相当し、甲1発明Aの「パリソン(1)」は、本件特許発明1の「デラミボトル成形用プリフォーム」に相当する。 甲1発明Aにおいて、「該パリソン(1)の口部(11)、(11a)より下部分を2軸延伸ブロー成形し壜体を成形する」構成は、本件特許発明1における「デラミボトル成形用プリフォーム」が、「上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区分される」構成に相当する。 甲1発明Aにおいて、外筒(2)の口部(11)の上端面上に、内筒(3)の口部(11a)上端に設けられた外フランジ(5)を重ねて嵌合する構成は、本件特許発明1における、固定領域において、外筒プリフォームの内面と内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部を持つ構成に相当する。 甲1発明Aにおける、外層(12)と内層(13)との間のうち、口部(11)(11a)の部分は、本件特許発明1における「外筒プリフォームの内面と内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部」に相当している。 また、甲1発明Aにおける外筒(3)の口部(11)に外層(12)と内層(13)との間への空気導入部(6)を設ける構成は、本件特許発明1における、固定領域における外筒プリフォームの壁部に、空隙部に通じている空気導入部を設ける構成に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区分されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、前記固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部を通じている空気導入口が設けられている、デラミボトル成形用プリフォーム。」 <相違点1-1> 本件特許発明1における空隙部は「固定領域の全域にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びている」との特定を有しているのに対して、甲1発明Aにおいてはそのような特定がない点。 本件特許発明1は甲1発明Aと相違点1-1の点で相違するから、甲1に記載された発明ではない。 次に、上記相違点1-1について検討すると、甲1の【図2】には固定領域の嵌合部の下側に位置した空隙部として、内筒の一部切り欠き形状にて空隙部を形成した構造や、【図3】には外筒の一部切り欠き形状にて空隙部を形成した構造が示されているが、このような切り欠きによる空隙部は固定領域の口径周方向の一部に設けられるものであり、空隙部が固定領域の全周にわたって且つ固定領域の少なくとも下端にまで延びているものではない。また、甲1には空隙部を固定領域の全周にわたって且つ固定領域の少なくとも下端にまで延びた形状を採用するきっかけないし契機はなく、当該構造を想起させる示唆もない。 したがって、当業者は、甲1発明Aにおいて、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明1は、甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6についての対比、検討 本件特許発明6と甲1発明Bとを対比すると、 甲1発明Bにおける「外筒(2)」の「口部(11)」「より下部分を2軸延伸ブロー成形し」た「外層(12)」、「内筒(3)」の「口部(11a)より下部分を2軸延伸ブロー成形し」た「内層(13)」は、それぞれ、本件特許発明6の「外筒体」、「内容物が充填される内袋」に相当する。 甲1発明Bにおいて、「外筒(2)に対して?離自在な」「内筒(3)とを」「嵌合させて成るパリソン(1)」「の口部(11)(11a)より下部分を2軸延伸ブロー成形し壜体を成形」する構成は、本件特許発明6の「該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っている」構成に相当する。 そして、甲1発明Bの外筒(2)の口部(11)の上端面上に、内筒(3)の口部(11a)上端に設けられた外フランジ(5)を重ねて嵌合する構成は、本件特許発明6における、「延伸成形されていない」「上部領域において、外筒体の内面と内袋の」「外面とが密着している嵌合部」を有する構成に相当している。 さらに、甲1【図1】から、甲1発明Bにおける内筒(3)の外面は平坦でストレートな面を有している。 甲1発明Bにおける、外層(12)と内層(13)との間のうち、口部(11)(11a)の部分は、本件特許発明6における「上部領域」の「該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部」に相当し、当該空隙部は嵌合部の下側に位置している。 そして、甲1発明Bにおける「外筒(3)の口部(11)に」「外層(12)と内層(13)との間への空気導入部(6)」を設ける構成は、本件特許発明6における、上部領域における外筒体の壁部に、空隙部に通じている空気導入口が設けられている構成に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸整形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、 前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋のストレートな形態を有する外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、前記上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられており、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル。」 <相違点1-2> 上部領域の嵌合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲1発明Bにおいてはそのような特定を有しない点。 本件特許発明6は甲1発明Bと相違点1-2の点で相違するから、甲1に記載された発明ではない。 次に、上記相違点1-2について検討する。 甲1の【図2】には固定領域の嵌合部の下側に位置した空隙部として、内筒の一部切り欠き形状にて空隙部を形成した構造や、【図3】には外筒の一部切り欠き形状にて空隙部を形成した構造が示されているが、このような切り欠きによる空隙部は固定領域の口径周方向の一部に設けられるものであり、空隙部が固定領域の全周にわたって且つ固定領域の少なくとも下端にまで延びているものではない。また、甲1には空隙部を固定領域の全周にわたって且つ固定領域の少なくとも下端にまで延びた形状を採用するきっかけないし契機はなく、当該構造を想起させる示唆もない。 さらに、甲1のいずれの図においても、内袋の外面を「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面」とした構成はなく、そのような構成を採用するきっかけないし契機もない。してみると、当業者は、甲1発明Bにおいて、相違点1-2に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明6は、内袋の外面を上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面に形成することによって、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部にスムーズに挿入し、外筒プリフォームと内筒プリフォームとが安定に保持された多重プリフォームを組み立てることが可能となるという顕著な効果を有している。 よって、本件特許発明6は、甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由1についてのまとめ 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)は、その理由がない。 2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)についての判断 (1)甲2に記載された発明 甲2の【請求項1】~【請求項3】、【0001】、【0028】~【0030】、【0032】、【0034】~【0035】、【図1】~【図4】、【図6】から、甲2には次の発明(以下「甲2発明A」、「甲2発明B」という。)が記載されている。 <甲2発明A> 「熱可塑性樹脂を構成層とする層間易剥離性の多層成形容器において、熱可塑性樹脂から成る上端部開口の外層となる有底パリソンと、熱可塑性樹脂の構成層から成り上端部開口の内層となる有底パリソンをそれぞれ成形したのち嵌合した複合パリソンであって、内層となるパリソン外表面及び/又は外層となるパリソンの内表面には層間抜気可能空間の生成機能として直状又は間欠螺条溝が設けられて、容器頭部において口部外端部又は口部下部から頭部下端に貫通する層間通気孔となる空隙となるように形成されており、二軸延伸ブロー法により多層成形容器とするための複合パリソン。」 <甲2発明B> 「甲2発明Aの複合パリソンを二軸延伸ブロー法により成形し、成形後の頭部の内層が外層内で回動又は上下動することにより層間通気孔が開閉する多層成形容器。」 (2)本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲2発明Aとを対比すると、 甲2発明Aにおける「熱可塑性樹脂からなる上端部開口の外層となる有底パリソン」、「熱可塑性樹脂の構成層からなり上端部開口の内層となる有底パリソン」は、それぞれ、本件特許発明1の「試験管形状を有している外筒プリフォーム」「試験管形状を有している内筒プリフォーム」に相当する。 また、甲2発明Aにおける外層と内層の有底パリソンをそれぞれ成形したのち嵌合した複合パリソンの構成は、本件特許発明1における「内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有している」構成に相当する。 甲2【図1】より、複合パリソンの頭部は延伸されず、有底下部が二軸延伸ブロー成形されれるから、甲2発明Aは本件特許発明1の「上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画される」構成を有するデラミボトル成形用プリフォームである。 また、甲2発明Aは、外層と内層の有底パリソンが上端部開口で嵌合されているから、本件特許発明1の「外筒プリフォームの内面と内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部」を有する構成を有しており、甲2発明Aの嵌合されている上端部開口が、本件特許発明1の「嵌合部」である。 さらに、甲2発明Aの「内層となるパリソン外表面に、層間抜気可能空間の生成機能として」設けられた「直状又は間欠螺条溝」によって形成された「容器頭部において口部外端部又は口部下部から頭部下端に貫通する層間通気孔となる空隙」は、本件特許発明1における「外筒プリフォームの内面と内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と、前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間で形成されている空隙部を含んでいるデラミボトル成形用プリフォーム。」 <相違点2-1> 本件特許発明1における空隙部は「固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びている」との特定を有しているのに対して、甲2発明Aにおいてはそのような特定がない点。 <相違点2-2> 本件特許発明1においては「固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられている」のに対して、甲2発明Aにおいては、空隙部への空気導入は口部外端部又は口部下部から頭部下端に貫通する層間通気孔によるものであり、外筒プリフォームの壁部に設けられた空気導入用の開口はない点。 本件特許発明1と甲2発明Aは相違点2-1、相違点2-2の点で相違する。したがって、本件特許発明1は甲2に記載された発明ではない。 相違点2-1について検討する。 甲2発明Aにおける空隙は、「内層となるパリソン外表面に、層間抜気可能空間の生成機能として」設けられた「直状又は間欠螺条溝」によって形成され、「容器頭部において口部外端部又は口部下部から頭部下端に貫通する層間通気孔」となって、内層と外層の間の層間抜気をするものである。このように、層間抜気するために「直状又は間欠等条溝」で設けられている甲2発明Aの空隙を、「固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びている」形状とするに、そのきっかけないし契機はない。 したがって、当業者は、甲2発明Aにおいて、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6についての対比、検討 本件特許発明6と甲2発明Bとを対比すると、 甲2発明Bにおける「熱可塑性樹脂からなる上端部開口の外層となる有底パリソン」を「二軸延伸ブロー法により成形し」た「内層」、「熱可塑性樹脂の構成層からなり上端部開口の内層となる有底パリソン」を「二軸延伸ブロー法により成形し」た「外層」は、本件特許発明6の「内袋」、「外筒体」に相当する。 また、甲2発明Bにおける外層と内層の有底パリソンをそれぞれ成形したのち嵌合した複合パリソンを二重部延伸ブロー法により成形した構成は、本件特許発明6における「該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有している」構成に相当する。 甲2【図1】より、該複合パリソンの頭部は延伸されず、有底下部が二軸延伸ブロー成形されるから、甲2発明Bは本件特許発明6の「延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区分され、該上部領域はノズル部からなり、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っている」構成を有している。 そして、甲2発明Bにおける「成形後の頭部」、「多層成形容器」は、本件特許発明6の「延伸成形されていない上部領域」、「デラミボトル」に相当する。 また、甲2発明Bは、外層と内層の有底パリソンが上端部開口で嵌合されているから、本件特許発明6の「前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部」の構成を有している。 さらに、甲2発明Bの「内層となるパリソン外表面に、層間抜気可能空間の生成機能として」設けられた「直状又は間欠螺条溝」によって形成された「容器頭部において口部外端部又は口部下部から頭部下端に貫通する層間通気孔となる空隙」は、本件特許発明6における「該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部」に相当しており、「嵌合部の下側に」位置している。 甲2発明Bの「内層」は本件特許発明6における「内袋」であるが、これが、「内容物が充填される」ための内袋であり、かつ、まだ「内容物が充填されていない状態にあること」は明らかである。 そうすると、本件特許発明6と甲2発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区分され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、前記上部領域は、前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル。」 <相違点2-3> 上部領域の接合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と、「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。 <相違点2-4> 本件特許発明6においては「上部領域における外筒体の壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられて」いるのに対して、甲2発明Bにおいてはそのような特定はない点。 本件特許発明6は甲2発明Bと相違点2-3、相違点2-4の点で相違するから、甲2に記載された発明ではない。 次に、上記相違点2-3について検討する。 甲2発明Bにおける空隙は、「内層となるパリソン外表面に、層間抜気可能空間の生成機能として」設けられた「直状又は間欠螺条溝」によって形成され、「容器頭部において口部外端部又は口部下部から頭部下端に貫通する層間通気孔」となって、内層と外層の間の層間抜気をするものである。このように、層間抜気するために「直状又は間欠等条溝」で設けられている甲2発明Bの空隙を、「固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びている」形状としようとすることには動機がない。 また、甲2発明Bにおいて、上記のとおり「内層となるパリソン外表面」には「層間抜気可能」とするために「直状又は間欠等条溝」が形成されているから、内袋の外表面は「スムーズな形態を有する」外面ではなく、そのように形成する動機もない。 さらに、甲2発明Bにおいても内袋の外面を「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面」に形成することについてきっかけないし契機はない。 そして、本件特許発明6は、内袋の外面をストレートな形態で、上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面に形成することによって、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部にスムーズに挿入し、外筒プリフォームと内筒プリフォームとが安定に保持された多重プリフォームを組み立てることが可能となるという顕著な効果を有している。 したがって、当業者は、甲2発明Bにおいて、相違点2-3に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由2についてのまとめ 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)は、その理由がない。 3 本件特許発明1に対する申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)についての判断 (1)甲3に記載された発明 甲3の【特許請求の範囲】、【0002】、【0005】~【0011】、【図1】、【図2】、【図5】、【図6】、【図7】からみて、甲3には次の発明(以下、「甲3発明A」という。)が記載されていると認められる。 <甲3発明A> 「外壜と該外壜内面に接する柔軟性に富む袋状の内壜であって収容物が充填される内壜とからなり、該内壜が該外壜に挿入された二重構造を有し、収納物吐出による内壜負圧化で内外壜間に外気が導入されて内壜が収縮可能に設けた内外二重壜であって、内壜の第2口頸部外面に縦設された突条部が外壜の第1口頸部内面に当接する部分を有し、内壜の外向きフランジ下面に形成された空気流通溝を介して外気と連通する内外両壜間の小間隙を含んでいる内外二重壜を形成するための、内壜形成用の二軸延伸可能な有底の合成樹脂製のピースと、外壜。」 (2)本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲3発明Aとを対比すると、 甲3発明Aの「内壜形成用の二軸延伸可能な有底の合成樹脂製のピース」、「外壜」は、本件特許発明1の「試験管形状を有している内筒プリフォーム」、「試験管形状を有している」「外筒体」に相当する。 甲3発明Aの「内外二重壜」、「内壜の第2口頸部外面に縦設された突条部が外壜の第1口頸部内面に当接する部分」、「内外両壜間の小間隙」、「空気流通溝」は、それぞれ、本件特許発明1の「デラミボトル」、「嵌合部」、「空隙部」、「空気導入口」に相当する。 甲3【0010】、図5-7の記載からみて、第1口頸部及び第2口頸部は延伸されていないことは明らかであり、これらから構成される壜口部分は、本件特許発明1における「上部の固定領域」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲3発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「何れもが試験管形状を有している外筒体と内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域を有するデラミボトル成形用プリフォームにおいて、前記固定領域は、前記外筒体の内面と前記内筒プリフォームの外面が密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられているデラミボトル成形用プリフォーム。」 <相違点3-2> 本件特許発明1においては、デラミボトル成形用プリフォームは、内筒プリフォームと外筒プリフォームとからなるとの特定を有しているのに対し、甲3発明Aにおいては、内筒プリフォームと外筒体とからなり、内筒及び外筒共にプリフォームであるとの特定がない点 <相違点3-3> 本件特許発明1においては、「空隙部は、該固定領域の全周にわたって」設けられるとの特定を有しているのに対し、甲3発明Aにおいてはそのような特定はない点 <相違点3-4> 本件特許発明1においては、空隙部に通じている空気導入口が「前記固定領域における外筒プリフォームの壁面」に設けられるとの特定を有しているのに対し、甲3発明Aにおいてはそのような特定はない点。 本件特許発明1と甲3発明Aとは、相違点3-2、相違点3-3、相違点3-4の点で相違するから、本件特許発明1は甲3に記載された発明ではない。 次に相違点3-2について検討する。 甲3【0010】及び【図6】において記載されるように、甲3発明Aのデラミボトルは、外壜内に、予め加熱した内壜形成用のピースを挿入し、内壜形成用ピースを押し下げ棒22と圧縮空気管23により外壜内にて二軸延伸ブロー成形して製造するものであることから、甲3発明Aにおいて、内壜と共に外壜もプリフォームとする、きっかけないし契機はない。 したがって、当業者は、甲3発明Aにおいて、相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明1に対する申立理由3についてのまとめ 本件特許発明1に対する申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)は、、その理由がない。 4 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)についての判断 (1)甲4に記載された発明 甲4の実用新案登録請求の範囲、第5頁第3行~第6頁第1行、第7頁第16行~末行、第2図から、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。 <甲4発明> 「比較的剛性のある外装容器1と柔軟性のある内装容器2とによって二重構造に構成された容器本体Aと、外気吸入機構の持たないポンプ4を軸心部に一体不可分に備え且つ前記容器本体Aの口部外周面に嵌合する筒状のポンプホルダー3とから成り、前記容器本体Aの外装容器1と内装容器2は相互に非接着状態であり、且つ外装容器1の周壁には外気流入口5が設けられており、前記内装容器2は、前記外装容器1の上端面に係合して外装容器2内への脱落を阻止するフランジ部2aを有し、内装容器内から内容物が取り出されると、取り出された内容物の容積だけ内装容器2の胴部が縮小変形し、この時に生じる内装容器と外装容器の間の負圧が外気流入口5からの外気流入によって解消される、二重容器。」 なお、甲4からはプリフォームの発明は認定できない。 (2)本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、 本件特許発明1がプリフォームであるのに対して甲4発明は二重容器であってプリフォームではないから、次の点で相違する。 <相違点4-1> 本件特許発明1は、 「何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、 前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、 前記固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられているデラミボトル成形用プリフォーム。」 であるのに対して、甲4発明はプリフォームではない点 本件特許発明1は甲4発明と相違点4-1の点で相違するから、甲4に記載された発明ではない。 次に相違点4-1について検討する。 甲4発明における二重容器を、相違点4-1に係る本件特許発明1の「プリフォーム」から成形するきっかけないし契機はない。 したがって、当業者は、甲4発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6についての対比、検討 本件特許発明6と甲4発明とを対比すると、 甲4発明の「比較的剛性のある外装容器1」「柔軟性のある内装容器2」は、本件特許発明6の「外筒体」「内袋」に相当する。 また、甲4発明の「二重構造」は、本件特許発明6の「該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造」に相当し、甲4発明における「二重容器」は、本件特許発明6における「デラミボトル」である。 甲4発明の内装容器と外装容器の「上端」部分は、本件特許発明6の「延伸成形されていない上部領域」の「ノズル部」に相当し、甲4発明の「内装容器2」の「外装容器2内の脱落を阻止するフランジ部2a」と外装容器とが「係合する」部分は、本件特許発明6における「前記外筒体の内面と前記内袋の外面とが密着している嵌合部」に相当する。 甲4発明の内装容器と外装容器の上端部分より下の部分には、本件特許発明6の「肩部、胴部および底部から成っている」「下部領域」が存在する。 甲4発明の「外装容器1の周壁に」も設けられた「外気流入口5」は、本件特許発明6における「外筒体の壁部」に設けられた「空気導入口」に相当する。 さらに、甲4の第2図から、内装容器2と外装容器1の上端部では、両者の間には隙間があり、当該隙間は内装容器2と外装容器1の全周囲に亘って形成され、デラミボトルの下方まで延びている。当該甲4発明のこの隙間部分は、本件特許発明6の「空隙部」に相当し、「該空隙部は、該固定領域の全周に亘ってかつ該固定領域の少なくとも下端まで延びている」構成を備えている。 そうすると、本件特許発明6と甲4発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と下部領域を有し、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、前記上部領域は、前記外筒体の内面と内袋とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該上部領域の全周にわたってかつ上部領域の少なくとも下端にまで延びており、外筒体の壁部には空気導入部が設けられ、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル」 <相違点4-2> 本件特許発明6においては、下部領域が「延伸成形により形成された」との特定を有しているのに対して、甲4発明における下部領域は成形方法が不明である点。 <相違点4-3> 上部領域の嵌合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲4発明においてはそのような特定を有しない点。 <相違点4-4> 本件特許発明6においては、空気導入口が「前記固定領域における」外筒プリフォームの壁部において形成されるとの特定を有するのに対し、甲4発明においてはそのような特定を有さない点。 本件特許発明6と甲4発明とは、相違点4-2、相違点4-3、相違点4-4の点で相違するから、本件特許発明6は甲4に記載された発明ではない。 次に、事案に鑑み、相違点4-3について検討する。 甲4発明は「内装容器2」の「外装容器2内の脱落を阻止するフランジ部2a」と外装容器とを「係合」させて嵌合させているから、嵌合部を外筒体の内面と内袋の「ストレートな形態を有する」外面との間に形成することについてきっかけないし契機はない。また、甲4発明において該外筒体の内面と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面」となる内袋の外面との間に空隙部を設けるよう構成することについてもきっかけないし契機はなく、甲4にはそのような構成を示唆する記載もない。 本件特許発明6は、内袋の外面をストレートな形態で、上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面に形成することによって、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部にスムーズに挿入し、外筒プリフォームと内筒プリフォームとが安定に保持された多重プリフォームを組み立てることが可能となるという顕著な効果を有している。 したがって、当業者は、甲4発明において、相違点4-3に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由4についてのまとめ 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)は、その理由がない。 5 本件特許発明1に対する申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)についての判断 (1)甲5に記載された発明 甲5の【請求項1】、【請求項4】、【0012】~【0014】、【0021】、【0023】、【図1】、【図2】には次の発明(以下、「甲5発明A」という。)が記載されている。 <甲5発明A> 「外容器形成用の円筒状のパリソンと内袋形成用の円筒状のパリソンとを共押出し、ピンチオフで双方のパリソンを封じ切ったデラミボトル成形用のパリソンであって、当該パリソンは、その後でブロー成形して、外容器と液体を収容する内袋が剥離容易に積層されつつ、外容器3と内袋4とはそれらの底部で接着しているデラミボトル本体2となり、外容器の口部近傍に、外容器3と内袋4との間の内部空間5を外容器3の外と連通させる通気孔6を有するデラミボトル成形用のパリソン。」 (2)本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲5発明Aとを対比すると、 甲5発明Aにおける「外容器形成用の円筒状のパリソン」、「内袋形成用の円筒状のパリソン」は、本件特許発明1における「外筒プリフォーム」「内筒プリフォーム」に相当する。 甲5発明Aにおける「円筒状のパリソンと内袋形成用の円筒状のパリソンとを共押出し、ピンチオフで双方のパリソンを封じ切った」構成は、本件特許発明1における「該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有している」構成に相当する。 甲5発明Aにおける、「当該パリソンは、その後でブロー成形して」「デラミボトル本体2」となる構成は、本件特許発明1における「上部の固定領域と、下部の延伸成形領域との区分されるデラミボトル」の構成に相当している。 甲5図1からは、デラミボトル本体2の口部端面において、外容器3の内面と内袋4の外面が密着していることが見て取れる。ここで「外容器3の内面と内袋4の外面が密着している」箇所は、シール部12が配置されることからみても、密着嵌合させる部位、すなわち本件特許発明1の「嵌合部」に相当する部位である。 甲5発明Aの「内部空間5」、「通気孔6」は、それぞれ、本件特許発明6の「空隙部」、「空気導入口」に相当しており、甲5【図1】【図2】から、甲5発明Aの「内部空間5」すなわち本件特許発明6の「空隙部」は、「嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成され」てなり、かつ、「該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びている」構成を有している。 また、甲5発明Aの「通気孔6」すなわち本件特許発明6の「空気導入口」は、甲5【図1】【図2】から、「前記固定領域における外筒プリフォームの壁部」に形成されている。 してみると、本件特許発明1と甲5発明Aの一致点、相違点はそれぞれ以下のとおりである。 <一致点> 「外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、前記固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と前記内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含んでおり、該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びていると共に、前記固定領域における外筒プリフォームの壁部には、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられている、デラミボトル成形用プリフォーム。」 <相違点5-2> 本件特許発明1においては外筒プリフォーム及び内筒プリフォームは「何れも試験管形状を有している」のに対し、甲5発明Aにおいては、外容器形成用の円筒状のパリソンと内袋形成用の円筒状のパリソンとを共押出し、ピンチオフで双方のパリソンを封じ切ったものである点。 本件特許発明1と甲5発明Aとは、相違点5-2の点で相違するから、本件特許発明1は甲5に記載された発明ではない。 次に、相違点5-2について検討する。 甲5発明Aにおいて、外筒プリフォームと内筒プリフォームとを「何れも試験管形状」とするきっかけないし契機はない。 したがって、当業者は、甲5発明Aにおいて、相違点5-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、本件特許発明1は、甲5発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明1に対する申立理由5についてのまとめ 本件特許発明1に対する申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)は、その理由がない。 6 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)についての判断 (1)甲6に記載された発明 甲6の第5頁第1欄第30行~第52行、第6頁第3欄第54行~第64行、第6頁第3欄第65行~同頁第4欄第3行、第6頁第4欄第56~58行、第7頁第5欄第7~13行、第7頁第5欄第59行~同頁第6欄第2行、第8頁第7欄第1~15行、図1B、図2B、図3及び図4には次の発明(以下、「甲6発明A」、「甲6発明B」という。)が記載されている。 <甲6発明A> 「何れもが試験管形状を有している外側のプリフォーム(12)と内側のプリフォーム(11)とからなり、該内側のプリフォーム(11)が外側のプリフォーム(12)の内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の首部(6)と首部の下のブロー成形される領域とに区画される二重構造容器のための成形用プリフォームであって、首部(6)において、外側のプリフォーム(12)に対して、内側のプリフォーム(11)が固定されるように設計され、外側のプリフォーム(12)の内面と内側のプリフォーム(11)の外面との間には境界部(interface24)を含み、該境界部(interface24)は、該固定領域の全周に亘って且つ該首部(6)の少なくとも下端にまで延びており、外側のプリフォーム(12)の内面には空隙(opening4)が形成され、空隙(opening4)はベント(vents3)を通じて空隙(opening4)と連通している、二重構造容器のための成型用プリフォーム」 <甲6発明B> 「外層(22)と内層(21)とからなり、該内層(21)が外層(22)の内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の首部(6)と、首部の下部のブロー成形された領域(6)とに区画され、該首部はノズル部からなり、該首部の下部の領域は、肩部、胴部および底部から成っている二重構造容器において、前記首部(6)において、前記外層(22)に対して、前記内層(21)が固定されるように設計され、該外層(22)の内面と該内層(21)の外面との間に形成されている境界部(interface24)とを含んでおり、該境界部(interface24)は、該固定領域の全周に亘って且つ該首部(6)の少なくとも下端にまで延びており、外側のプリフォーム(12)の内面には空隙(opening4)が形成され、空隙(opening4)はベント(vents3)を通じて空隙(opening4)と連通しており、前記内層(21)には内容物が充填されていない状態にある、二重構造容器。」 (2)本件特許発明1についての対比・判断 本件特許発明1と甲6発明Aとを対比すると、 甲6発明Aの「試験管形状を有している外側のプリフォーム(12)」、「試験管形状を有している内側のプリフォーム(11)」は、本件特許発明1の「試験管形状を有している外筒プリフォーム」、「試験管形状を有している内筒プリフォーム」に相当する。 甲6発明Aの「二重構造容器」、「首部(6)」、「ベント(vents3)」は、本件特許発明1の「デラミボトル」、「上部の固定領域」、「空隙部」に相当する。 甲6発明Aの「ベント(vents3)を通じて空隙(opening4)と連通して」いる構成は、本件特許発明1における「空隙部に通じている空気導入」のための部位を有する構成に相当する。 また、甲6(Figure18)から、外側のプリフォーム(12)と内側のプリフォーム(11)は首部(6)で嵌合部を有しており、当該構成は本件特許発明1における「嵌合部」に相当する、 してみると、本件特許発明1と甲6発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「何れもが試験管形状を有している外筒プリフォームと内筒プリフォームとからなり、該内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有していると共に、上部の固定領域と、下部の延伸成形領域とに区画されるデラミボトル成形用プリフォームにおいて、該固定領域は、前記外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部と、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部とを含み、空隙部に通じている空気導入のための部位を有する、デラミボトル成形用プリフォーム。」 <相違点6-1> 本件特許発明1においては、「該空隙部は、該固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びている」との特定を有するのに対して、甲6発明Aにおいてはそのような特定を有していない点。 <相違点6-2> 本件特許発明1においては、「前記固定領域における外筒プリフォームの壁部」に空隙部に通じている空気導入「口」を設けるとの特定を有しているのに対し、甲6発明Aにおいてはそのような特定がない点。 本件特許発明1と甲6発明Aとは、相違点6-1、相違点6-2の点で相違するから、本件特許発明1は甲6に記載された発明ではない。 次に相違点6-1について検討する。 甲6発明Aにおいては、空隙部に相当する「ベント(vents3)」を通じ、「空隙(opening4)」から空気導入をしており、空隙部を固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びているよう構成することについて、きっかけないし契機はない。 したがって、当業者は、甲6発明において、相違点6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6についての対比・判断 本件特許発明6と甲6発明Bとを対比すると、 甲6発明Bの「外層(22)」、「内層(21)」は、本件特許発明6の「外筒体」、「内容物を充填される内袋」に相当する。 甲6発明Bの「二重構造容器」、「首部(6)」、「ベント(vents3)」は、本件特許発明6の「デラミボトル」、「延伸成形されていない上部領域」、「空隙部」に相当する。 甲6発明Bの「ベント(vents3)を通じて空隙(opening4)と連通して」いる構成は、本件特許発明6における「空隙部に通じている空気導入」のための部位を有する構成に相当する。 また、甲6(Figure28)から、外層(22)と内層(21)は首部(6)で嵌合部を有しており、当該構成は本件特許発明1における「嵌合部」に相当しており、内層(21)の内面は凹凸のないストレートな形態を有している。 してみると、本件特許発明6と甲6発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 <一致点> 「外筒体と、内容物が充填される内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、該上部領域はノズル部から成り、該下部領域は、肩部、胴部および底部から成っているデラミボトルにおいて、前記上部領域は、前記外筒体の内面と該内袋のストレートな外面とが密着している嵌合部と、嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外側との間に形成されている空隙部とを含んでおり、空隙部に通じている空気導入のための部位を有し、前記内袋は、前記内容物が充填されていない状態にある、デラミボトル。」 <相違点6-3> 上部領域の嵌合部と空隙部における内袋の外面の形状に関し、本件特許発明6が、「ストレートな形態を有する」嵌合部と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」空隙部と特定されるのに対し、甲6発明Bにおいてはそのような特定を有しない点。 <相違点6-4> 本件特許発明6においては、「前記上部領域における外筒体の壁部」に空隙部に通じている空気導入「口」を設けるとの特定を有しているのに対し、甲6発明Bにおいてはそのような特定がない点。 本件特許発明6と甲6発明Bとは、相違点6-3、相違点6-4の点で相違するから、本件特許発明6は甲6に記載された発明ではない。 次に相違点6-3について検討する。 甲6発明Bにおいて、外筒体の内面と「上方から下方に行くにしたがって縮径しているテーパー面となる」該内袋の外面との間に空隙部を形成することについてきっかけないし契機はない。また、甲6発明Bにおいては、空隙部に相当する「ベント(vents3)」を通じ、「空隙(opening4)」から空気導入をしており、空隙部を固定領域の全周にわたって且つ該固定領域の少なくとも下端にまで延びているよう構成することについても、きっかけないし契機はない。 したがって、当業者は、甲6発明Bにおいて、相違点6-3に係る本件特許発明6の発明特定事項を満たすものとすることは容易になし得たものであるとはいえない。 よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲6発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由6についてのまとめ 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)は、その理由がない。 7 申立理由7(サポート要件) についての判断 (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】の記載によると、本件特許発明1及び6の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「極めてシンプルな形状を有しており、複雑な形状の金型を使用せずに成形されるプリフォームの組み合わせからなる二重構造容器形成用の二重構造プリフォームを提供すること」及び「上記の二重構造プリフォームから得られる二重構造容器を提供すること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】ないし【0011】、【図23】、【図1】、【図3】、【図4】には本件特許発明1及び6に対応する記載がある。 本件特許の発明の詳細な説明の【0011】には「本発明の二重構造容器成形用プリフォームでは、外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部が外筒プリフォームに形成されている空気導入口に連通している。この空隙部は、最終的に成形される二重構造容器において、その内袋と外筒との間に空気を挿入するための導入路として機能するのであるが、このような空隙部は、固定領域(延伸成形されない容器の首部に相当)の全周に延びている。このため、かかる空隙部は、外筒プリフォームの内径を内筒プリフォームの外径よりも大きく設定するという単純な手段で形成することができる。即ち、本発明の二重構造容器成形用プリフォームにおいては、外筒プリフォームに空気導入口が必要であることを除けば、これを形成する外筒プリフォーム及び内筒プリフォームが何れもシンプルな形態を有しており、通常の延伸ブロー容器のプリフォームの大きさ(内径や外径)が適宜変更されているに過ぎず、容易に成形される外筒プリフォームと内筒プリフォームとを使用し、内筒プリフォームを外筒プリフォームの内部に挿入して嵌合固定するという単純な作業によって容易に製造される。加えて、形態がシンプルであることから金型構造が単純でよくコストの低減にも寄与する。」との記載があり、同【0023】には「上記のように内筒プリフォーム3が外筒プリフォーム1内に挿入し、嵌合部Aで固定する作業がスムーズに行われるようにするために、外筒プリフォーム1の外面は、サポートリング5が形成されている部分を除き、実質上ストレートな形態を有しているが、その内面は、固定領域Xから延伸成形領域Yにかけて、上方から下方にいくにしたがって縮径しているテーパー面1aとなっており(図1(b)参照)、一方、これのテーパー面1aに対応して、内筒プリフォーム3の外面は,固定領域Xから延伸成形領域Yにかけて、上方から下方にいくにしたがって縮径しているテーパー面3aとなっており、このテーパー面3aを除く部分が、実質上ストレートな形態を有している(図1(c)参照)。即ち、外筒プリフォーム1及び内筒プリフォーム3が上記のような形態を有しているため、内筒プリフォーム3を外筒プリフォーム3の内部にスムーズに挿入し、図1(a)に示すように、外筒プリフォーム1と内筒プリフォーム3とが安定に保持された多重プリフォーム20を組み合立てることが可能となる。」との記載がり、これらを具体化した図面も記載されている(【図1,3及び4)。 以上の記載事項から、内袋と外筒からなる二重構造を有するデラミボトルをプリフォームにて成形するにあたり、内筒プリフォームが外筒プリフォームの内部に挿入された二重構造を有しているとともに、上部の固定領域において、外筒プリフォームの内面と内筒プリフォームの外面とが密着している嵌合部を有し、該嵌合部の下側において、該外筒プリフォームの内面と該内筒プリフォームの外面との間に形成されている空隙部を含んでおり、空隙部が固定領域の全周にわたってかつ該固定領域の少なくとも下端にまで延びているとともに、該空隙部に通じている空気導入口が設けられている構成を採ることにより、極めてシンプルな形状を有しており、複雑な形状の金型を使用せずに成形されるプリフォームによってデラミボトルを提供することができることが当業者において理解されるものである。 また、上記構成を備えたプリフォームにて成形されたデラミボトルは、外筒体と内袋とからなり、該内袋が該外筒体の内部に挿入された二重構造を有していると共に、延伸成形されていない上部領域と、延伸成形により形成された下部領域とに区画され、上部領域は、外筒体の内面と内袋の外面とが密着している嵌合部と、該嵌合部の下側において、該外筒体の内面と該内袋の外面との間に形成されている空隙部とを含み、該空隙部は、該上部領域の全周にわたって且つ上部領域の少なくとも下端にまで延びているとともに、外筒体の壁部に、前記空隙部に通じている空気導入口が設けられている構成となることも当業者において理解される。 そうすると、当業者は、本件特許発明1及び6の構成を備えることにより、発明の課題を解決できると認識できる。 したがって、本件特許発明1及び6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明1及び6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、特許異議申立人の上記第4 7の主張について検討する。 上記検討したとおり、本件特許発明1及び6において、外筒プリフォームの内周面及び内筒プリフォームの外周面に凹凸を設けないとの特定、外筒プリフォームの内径を内筒プリフォームの外径よりも大きく設定するとの特定を有さなくても、上記検討のとおり、発明の課題は解決できると当業者は理解する。 したがって特許異議申立人の上記第4 7の主張は採用できない。 (3)申立理由7についてのむすび 上記(2)のとおりであるから、申立理由7(サポート要件)は、その理由がない。 8 申立理由8(明確性) についての判断 (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 本件特許の請求項1及び6の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、願書に添付した明細書の記載及び図面とも整合する。 したがって、本件特許発明1及び6に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立理由8についてのむすび 上記(2)のとおりであるから、申立理由8(明確性)は、その理由がない。 第8 むすび 上記第6、第7のとおり、本件特許発明1、6に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできず、また、他に取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700990

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