特許異議申立
2025-700683
電気接続部材用材料および電気接続部材
- 審判番号
- 2025-700683
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-050404
- 登録番号
- 7608918
- 請求日
- 2025年07月04日
- 審決日
- 2025年09月29日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社オートネットワーク技術研究所
- 【権利者代理人】弁理士法人上野特許事務所
- 【権利者】住友電装株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人上野特許事務所
- 【権利者】住友電気工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人上野特許事務所
- 【異議申立人】小林 喜一
- 審判長/審判官
- 審判長 富永 泰規
- 審判官 酒井 英夫
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.121-Y (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7608918号発明「電気接続部材用材料および電気接続部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7608918号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7608918号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和 3年 3月24日の出願(特願2021-50404号。以下「本願」という。)であって、令和 6年12月23日にその特許権の設定登録がなされ、令和 7年 1月 7日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 7年 7月 4日に、請求項1~5(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である小林 喜一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~5に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
表面の硬度が90HV以上であるAg層を表面に有する金属材と、
前記金属材の表面を被覆する被覆層と、を有し、
前記被覆層は、メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、前記金属材の表面に接触させて形成されるものである、電気接続部材用材料。
【請求項2】
前記芳香環は、C原子に加えて、S原子およびN原子の少なくとも一方を含む複素環である、請求項1に記載の電気接続部材用材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気接続部材用材料を含んで構成される、電気接続部材。
【請求項4】
前記電気接続部材は、相手方導電部材と電気的に接触する接点部を有する接続端子として構成され、
少なくとも前記接点部において、前記金属材の表面に、前記被覆層が形成されている、請求項3に記載の電気接続部材。
【請求項5】
前記接点部に印加される面圧が30MPa以上である、請求項4に記載の電気接続部材。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第9号証を提出し、以下の申立理由1~4により、本件特許の請求項1~5に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(進歩性)
本件発明1~5は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(進歩性)
本件発明1~5は、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(進歩性)
本件発明1~5は、甲第9号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
5 証拠方法
・甲第1号証:特開2020-143307号公報
・甲第2号証:特開2014-47396号公報
・甲第3号証:特開2012-172190号公報
・甲第4号証:特開2004-169157号公報
・甲第5号証:特開平3-252006号公報
・甲第6号証:特表2011-505492号公報
・甲第7号証:土肥信康、外2名、「銀の変色,腐食に対するベンゾトリアゾールの抑制効果」、金属表面技術、1975年、第26巻第9号、p.411~415
・甲第8号証:藤波知之、「貴金属めっき技術の進展」、表面技術、2019年、第70巻第9号、p.428~434
・甲第9号証:特開2016-145413号公報
第4 当審における判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
1 甲第1号証~甲第9号証の記載事項
なお、下線は当合議体が付与し、「・・・」は記載の省略を表すものであって、以下同様である。
(1)甲第1号証の記載事項
ア 「【請求項1】
・・・
【請求項8】
基材上にニッケルからなる下地層が形成され、この下地層の表面に銀からなる表層が形成され、この表層の表面に有機皮膜が形成され、表層の表面の算術平均粗さRaが0.13μm以下であり且つ粗さ曲線のスキューネスRskが0.20以下であることを特徴とする、銀めっき材。
【請求項9】
前記有機皮膜が、チオール化合物、脂肪酸およびフッ素化合物からなる群から選ばれる1種を含む有機皮膜であることを特徴とする、請求項8に記載の銀めっき材。
【請求項10】
前記基材が銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項8または9に記載の銀めっき材。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載の銀めっき材を材料として用いたことを特徴とする、接点または端子部品。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献3の方法により作製した銀めっき材を接続端子などの材料として使用すると、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性が十分でなく、接続端子の挿抜や摺動の回数が多くなると、摩耗により基材が露出して接触抵抗が高くなり易く、外観も悪化し易いという問題がある。
【0013】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、接続端子などの材料として使用した場合に、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性に優れ且つ接触抵抗が低い銀めっき材およびその製造方法を提供することを目的とする。」
ウ 「【実施例】
【0032】
以下、本発明による銀めっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0033】
[実施例1]
まず、基材(被めっき材)として67mm×50mm×0.3mmの無酸素銅(C1020 1/2H)からなる圧延板を用意し、この被めっき材の前処理として、被めっき材とSUS板をアルカリ脱脂液に入れ、被めっき材を陰極とし、SUS板を陽極として、電圧5Vで30秒間電解脱脂を行い、水洗した後、3%硫酸中で15秒間酸洗を行った。
【0034】
次に、540g/Lのスルファミン酸ニッケル四水和物と25g/Lの塩化ニッケルと35g/Lのホウ酸を含む水溶液からなる無光沢ニッケルめっき液中において、前処理を行った被めっき材を陰極とし、ニッケル電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温55℃において電流密度5A/dm2で98秒間電気めっき(無光沢ニッケルめっき)を行って、下地めっき皮膜として無光沢ニッケルめっき皮膜を形成した。この無光沢ニッケルめっき皮膜の略中央部の厚さを蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSFT-110A)により測定したところ、1.3μmであった。
【0035】
次に、上記の無光沢ニッケルめっき液中において、無光沢ニッケルめっき皮膜を形成した被めっき材を陰極から陽極に変え、ニッケル電極板を陽極から陰極に変えて、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温55℃において電流密度10A/dm2で30秒間逆電解処理を行って、無光沢ニッケルめっき皮膜の表面部分を溶解させて剥離した後、水洗してニッケルめっき液を十分に洗い流した。この表面部分が剥離された無光沢ニッケルめっき皮膜の略中央部の厚さを上記の蛍光X線膜厚計により測定したところ、1μmであった。
【0036】
次に、3g/Lのシアン化銀カリウムと90g/Lのシアン化カリウムを含む水溶液からなる銀ストライクめっき液中において、下地めっき皮膜の表面部分を剥離した被めっき材を陰極とし、白金で被覆したチタン電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら室温(25℃)において電流密度2A/dm2で10秒間電気めっきを行って、銀ストライクめっき皮膜を形成した後、水洗して銀ストライクめっき液を十分に洗い流した。
【0037】
次に、175g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN)2)と95g/Lのシアン化カリウム(KCN)と102mg/Lのセレノシアン酸カリウム(KSeCN)を含む水溶液からなる銀めっき液中において、銀ストライクめっき皮膜を形成した被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温18℃において電流密度5A/dm2で銀めっき皮膜の140秒間電気めっき(銀めっき)を行って、銀めっき皮膜を形成した。この銀めっき皮膜の略中央部の厚さを上記の蛍光X線
膜厚計により測定したところ、5.8μmであった。なお、この銀めっき皮膜のビッカース硬さを、微小硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製のHM-221)を使用して、測定荷重10gfを10秒間加えて、JIS Z2244に準じて測定したところ、110HV以上であった。
【0038】
次に、上記の銀めっき液中において、被めっき材を陰極から陽極に変え、銀電極板を陽極から陰極に変えて、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温18℃において電流密度5A/dm2で20秒間逆電解処理を行って、銀めっき皮膜の表面部分を剥離して、銀めっき皮膜の表面部分を剥離した後、水洗して銀めっき液を十分に洗い流して、銀めっき材を得た。この銀めっき材の表面部分が剥離された銀めっき皮膜の略中央部の厚さを上記の蛍光X線膜厚計により測定したところ、5μmであった。また、この銀めっき材の表面部分が剥離された銀めっき皮膜の表面の表面粗さについて、形状測定レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK-X150)による表面粗さ測定の結果から、JIS B0601(2001年)に基づいて表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.045μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であった。
【0039】
このようにして得られた銀めっき材を、(チオール化合物を含む)チオール系表面処理剤(JX日鉱日石金属株式会社製の(界面活性剤とチオール化合物と有機酸とイオン交換水からなる)金属変色防止剤CT-X)(チオール系A)を33mL/L含む溶液にスターラにより500rpmで撹拌しながら30秒間浸漬した後、水洗してチオール系表面処理剤を十分に洗い流し、常温で乾燥させた。
【0040】
このようにして得られた表面処理後の銀めっき材について、熱分解型ガスクロマトグラフ質量分析計により銀めっき材の表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
【0041】
また、上記の表面処理後の銀めっき材を2枚用意し、一方をインデント加工(内側R=1.5mm)して圧子として使用し、他方を平板状の評価試料として使用し、精密摺動試験装置(株式会社山崎精機研究所製のCRS-G2050)により、評価試料に圧子を一定の加重(3N)で押し当てながら、素材が露出するまで往復摺動動作(摺動距離5mm、摺動速度1.67mm/s)を継続し、50回の往復摺動動作毎にマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX-1000)により複合めっき材の摺動痕の中心部を倍率200倍で観察して、銀めっき材の磨耗状態を確認する磨耗試験を行うことにより、耐摩耗性の評価を行った。その結果、400回の往復摺動動作後に(茶色の)素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗を測定したところ、接触抵抗は0.24mΩであった。」
(2)甲第2号証の記載事項
ア 「【請求項1】
メルカプト基を有する有機化合物の少なくとも一種、及びノニオン系界面活性剤を含み、pHが3以下であることを特徴とする金属の表面処理剤。
【請求項2】
前記メルカプト基を有する有機化合物が、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト基を有するトリアジン系化合物、メルカプト基を有するチアジアゾール系化合物、メルカプト基を有するテトラゾール系化合物、又は炭素数が12~20のアルキルメルカプタンであることを特徴とする請求項1記載の金属の表面処理剤。
【請求項3】
前記メルカプト基を有する有機化合物が、メルカプト基を有するチアジアゾール系化合物、メルカプト基を有するテトラゾール系化合物、又は炭素数が12~20のアルキルメルカプタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属の表面処理剤。
【請求項4】
前記金属の表面処理剤は、被処理金属を陰極として直流電解することにより表面処理を行う表面処理剤であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の金属の表面処理剤。
【請求項5】
前記金属の表面処理剤は、1種もしくは2種以上の金属表面を有する部材を表面処理する表面処理剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の金属の表面処理剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の金属の表面処理剤を用い、被処理金属を陰極として直流電解することを特徴とする金属の表面処理方法。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属の耐変色性、及び耐食性に対する要求を充分に満たすことができる金属表面処理剤を提供することを目的とする。特に、2種以上の金属表面を有する部材においても、それらの2種以上の金属表面の耐変色性、及び耐食性に対する要求を1度の処理で充分に満たすことができる金属表面処理剤を提供することを目的とする。」
ウ 「【0013】
本発明の金属表面処理剤は、メルカプト基を有する有機化合物の少なくとも一種、及びノニオン系界面活性剤を含みpHが3以下である。
本発明の金属表面処理剤は、水溶液であり、メルカプト基を有する有機化合物、ノニオン系界面活性剤を水に溶解し、酸を用いてpHを3以下に調整することにより得られる。
【0014】
前記メルカプト基を有する有機化合物としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト基を有するトリアジン系化合物、メルカプト基を有するチアジアゾール系化合物、メルカプト基を有するテトラゾール系化合物、又は炭素数が12~20のアルキルメルカプタンが好ましい。
【0015】
メルカプト基を有するトリアジン系化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】
[図:0001428029000001.jpg]
〔式中、R1は-SH,アルキル基かアリール基で置換されたアミノ基、又はアルキル置換イミダゾリルアルキル、R2,R3は-NH2,又は-SHを表わし、R1,R2,R3の少なくともいずれか1つは-SHである。〕
【0016】
例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化2】
・・・
【0017】
メルカプト基を有するチアジアゾール系化合物としては、例えば、
2-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-メチル-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-エチル-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-フェニル-1,3,4-チアジアゾール、5-メルカプト-3-フェニル-1,2,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-メチルチオ-1,3,4-チア
ジアゾール、2-メルカプトベンゾチアジアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3,5-ジメルカプト-1,2,4-チアジアゾール、3-フェニル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール-2-チオン、2-メルカプト-5-メチルチオ-1,3,4-チアジアゾール、2-メチル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-ベンジルメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-4-フェニル-1,3,4-チアジアゾリン-5-チオン、2-チオアセテックアシド-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ジチオアセテックアシド-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、等のチアジアゾール類;
2-メルカプト-1,3,4-チアジア-5-ゾロン、2-メルカプト-4-メチル-1,3,4-チアジア-5-ゾロン、2-メルカプト-4-フェニル-1,3,4-チアジア-5-ゾロン、2-アミノ-4-メルカプト-1,3,4-チアジア-5-ゾロン、等のチアジアゾロン類;
を挙げることができる。
【0018】
メルカプト基を有するテトラゾール系化合物としては、1-メチル-5-メルカプトテトラゾール、1-シクロヘキシル-5-メルカプトテトラゾール、1-カルボキシメチル-5-メルカプトテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、5-メルカプトテトラゾール、5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、5-メルカプト-1-エチルテトラゾール、5-メルカプト-1-カルボキシメチルテトラゾール、5-メルカプト-1-シクロヘキシルテトラゾール、5-メルカプト-1-フェニルテトラゾール、5-メルカプト-1-(ハイドロキシフェニル)テトラゾール、5-メルカプト-1-(アセトアミドフェニル)テトラゾール等のメルカプトテトラゾール類が挙げられる。
【0019】
アルキルメルカプタンのアルキル基としては、炭素数が12~20が好ましく、例えば、ラウリルメルカプタン、2-エチルラウリルメルカプタン、2-ヘキシルラウリルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、エイコシルメルカプタン等が挙げられる。
【0020】
前記メルカプト基を有する有機化合物として、より好ましくは、メルカプト基を有するチアジアゾール系化合物、メルカプト基を有するテトラゾール系化合物、又は炭素数が12~20のアルキルメルカプタンである。」
エ 「【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0028】
実施例1~9、比較例1~4
銅に対する評価
脱脂酸洗を行った銅合金板(C194,2.5mm×2mm×0.2mmt)を陰極、チタン白金板を陽極として、表1に示す表面処理液を用いて、同じく表1に示す条件で処理した後、水洗乾燥したものを表面処理基板とした。この表面処理基板を、高温高湿雰囲気(85℃/85%RH)に24時間放置し、変色の程度を目視で以下のように評価した。
評価基準:(良い)変色なし>薄茶色に変色>紫色に変色(悪い)
評価結果を表2に記す。
【0029】
【表1ー1】
[図:0001428029000002.jpg]
【0030】
【表1ー2】
[図:0001428029000003.jpg]
【0031】
【表1ー3】
[図:0001428029000004.jpg]
【0032】
【表1ー4】
[図:0001428029000005.jpg]
【0033】
【表2】
[図:0001428029000006.jpg]
【0034】
実施例10~18、比較例5~8
銀めっきに対する評価
リン青銅基板(C5191,2.5mm×2mm×0.2mmt)に対し、厚さ約5μmの光沢銀めっきを施した。実施例1~9、及び比較例1~4において、銅合金板に変えてこの銀めっき基板を陰極として用いた以外は、実施例1~9、及び比較例1~4と同様に処理した後、水洗乾燥したものをそれぞれ実施例10~18、及び比較例5~8の表面処理基板とした。この表面処理基板を、0.2%多硫化アンモニウム水溶液に3、10分間浸漬し、変色の程度を目視で以下のように評価した。
◎:全く変色なし
○:僅かに(部分的に)変色がみられる
△:全体的に黄色く変色する。
×:全体的に青もしくは黒く変色する。
評価結果を表3に記す。
【0035】
【表3】
[図:0001428029000007.jpg]
」
(3)甲第3号証の記載事項
ア 「【請求項1】
第一の成分としてメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物、第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオール、第三の成分として非イオン性界面活性剤を含む、貴金属又は貴金属合金めっき材の封孔処理剤溶液。
【請求項2】
前記第一の成分が、メルカプトイミダゾール系化合物、メルカプトトリアゾール系化合物、メルカプトテトラゾール系化合物、メルカプトチアゾール系化合物、及び、メルカプトチアゾリン系化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の封孔処理剤溶液。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤の曇点が、35~80℃である請求項1又は2に記載の封孔処理剤溶液。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤のHLBが、12~15である請求項1~3のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項5】
前記第二の成分が、オクタデカンチオールである請求項1~4のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項6】
前記溶液が、有機溶剤を含まない水溶液である請求項1~5のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項7】
前記貴金属が、金又は銀である請求項1~6のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の封孔処理剤溶液を用いて、貴金属又は貴金属合金めっき材を封孔処理する工程を含む封孔処理方法。
【請求項9】
前記封孔処理を、前記封孔処理剤溶液に前記貴金属又は貴金属合金めっき材を通電せずに浸漬することで行う請求項8に記載の封孔処理方法。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、環境汚染を引き起こす有機溶剤を含有しない水系であって、近年の小型、高密度化されたデバイスへの処理に対応するため通電せずに処理可能で、処理したい部分に対して選択的且つ定量的に封孔処理可能な封孔処理剤溶液及びそれを用いた封孔処理方法を提供することを課題とする。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る封孔処理剤溶液は、貴金属又は貴金属合金めっき材に対し特に有効である。本発明に係る封孔処理剤溶液は、第一の成分としてメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物、第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオール、第三の成分として非イオン性界面活性剤を含む。
【0025】
メルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物が有効である理由としては、詳細は不明であるが、この化合物がニッケルに対して反応性を示す窒素原子を有することに加えて、金に対する吸着性を示すメルカプト基をも同時に有し、更にベンゼン環を含まないことにより分子の大きさが比較的小さく、金上に単分子膜を生成した直鎖アルカ
ンチオールの間を通過して、ピンホールから露出したニッケル又はニッケル合金めっきに到達し易いためと思われる。
【0026】
本発明の第一の成分として使用されるメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物としては、メルカプトイミダゾール系化合物、メルカプトトリアゾール系化合物、メルカプトテトラゾール系化合物、メルカプトチアゾール系化合物、及び、メルカプトチアゾリン系化合物等が挙げられるが、具体的には次の通り例示される。
【0027】
メルカプトイミダゾール系化合物としては、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプト-4-イミダゾールカルボン酸、2-メルカプト-1,4-ジメチルイミダゾール、2-メルカプト-1,5-ジメチルイミダゾール、2-メルカプト-4,5-ジメチルイミダゾール、2-メルカプト-4-メチルイミダゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプト-1,4-ジメチルイミダゾール、2-メルカプト-1,5-ジメチルイミダゾール、2-メルカプト-4,5-ジメチルイミダゾール、2-メルカプト-4-メチルイミダゾールが挙げられ、更により好ましくは、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプト-4-メチルイミダゾールが用いられる。
【0028】
メルカプトトリアゾール系化合物としては、5-メルカプト-1,2,3-トリアゾールナトリウム、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール-3-酢酸、3,5-ジメルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチルチオ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、5-メルカプト-1,2,3-トリアゾールナトリウム、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールが挙げられ、更により好ましくは、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールが用いられる。
【0029】
メルカプトテトラゾール系化合物としては、5-メルカプトテトラゾール、5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、5-メチルチオ-1H-テトラゾール、5-エチルチオ-1H-テトラゾール、1-エチル-5-メルカプトテトラゾール、1-カルボキシメチル-5-メルカプトテトラゾール、1-シクロヘキシル-5-メルカプトテトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、5-メルカプトテトラゾール、5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、1-エチル-5-メルカプトテトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾールが挙げられ、更により好ましくは、5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾールが用いられる。
【0030】
メルカプトチアゾール系化合物としては、2-メルカプトチアゾール、2-メルカプト-4-メチルチアゾール、2-メルカプト-4,5-ジメチルチアゾール、2-メルカプト-4-メチル-5-チアゾールカルボン酸、2-メチルチオ-1,3-チアゾール、4-メチル-2-メチルメルカプトチアゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、2-メルカプトチアゾール、2-メルカプト-4-メチルチアゾール、2-メルカプト-4,5-ジメチルチアゾールが挙げられ、更により好ましくは、2-メルカプトチアゾール、2-メルカプト-4-メチルチアゾールが用いられる。
【0031】
メルカプトチアゾリン系化合物としては、2-メルカプトチアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、2-メルカプトチアゾリンが挙げられる。
・・・
【0033】
本発明の第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオールが用いられるが、効果やコスト等の観点からより好ましくは炭素数12以上18以下の直鎖のアルカンチオールが用いられる。
具体的には、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、及び、オクタデカンチオール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましくはドデカンチオール、オクタデカンチオールが用いられる。また、炭素鎖が最も長いため単分子皮膜の膜厚を最も厚くすることができ、腐食抑制効果が最大となるという利点、及び、臭気が比較的低いという利点から、より好ましくはオクタデカンチオールが用いられる。
・・・」
エ 「【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得るものである。
【0042】
・試験片、封孔処理
実施例1~7及び比較例1~9として、銅板上にニッケルめっき3μmを形成した後、金めっき0.1μmを形成し、表1に示した各処理液中に50℃で30秒間浸漬し、続いて水洗後、温風乾燥したものを試験片として使用した。
・試験方法
亜硫酸ナトリウム252g、りん酸水素2カリウム110g、りん酸2水素カリウム230gを1リットルの水に溶解させた液をデシケータ内に入れ、同時に各々の処理片をその容器内上部に固定し、蓋をして密閉した。
デシケータを40℃の恒温槽内に保持し、デシケータ内の二酸化硫黄ガス濃度が10ppm前後であることを確認しながら、24時間経過毎に試験片を取り出し、表面の腐食状態を観察した。また、水洗して撥水性を評価した。
・結果
表1に実施例の封孔処理液組成を示す。表2に比較例の封孔処理液組成を示す。表3に腐食試験結果を示す。
【0043】
【表1】
[図:0001428029000008.jpg]
【0044】
【表2】
[図:0001428029000009.jpg]
【0045】
【表3】
[図:0001428029000010.jpg]
」
(4)甲第4号証の記載事項
ア 「【請求項1】
銀メッキ層の処理方法であって、銀メッキ層を、銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物で処理することを特徴とする銀メッキ層の処理方法。
【請求項2】
前記銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物が、チオン基もしくはメルカプト基を有する有機化合物、または含窒素ヘテロ環化合物である請求項1に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項3】
前記銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物が、チオン基もしくはメルカプト基を有する含窒素ヘテロ環化合物である請求項1に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項4】
前記含窒素へテロ環化合物が、イミダゾール化合物、ベンツイミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、チアジアゾール化合物、オキサジアゾール化合物、またはテトラゾール化合物である請求項2に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項5】
前記チオン基もしくはメルカプト基を有する含窒素ヘテロ環化合物が、含窒素ヘテロ環に2個以上のチオン基もしくはメルカプト基が結合した化合物である請求項3に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項6】
前記銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物で処理するのと同時または前に銀の酸化剤で処理する請求項1に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項7】
前記銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物で処理するのと同時または前に亜硫酸塩、沃化物もしくは臭化物で処理する請求項1に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項8】
前記酸化剤が有機酸第2鉄塩である請求項6に記載の銀メッキ層の処理方法。
【請求項9】
銀メッキ層の処理液であって、銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物を含有することを特徴とする銀メッキ層の処理液。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、銀メッキ層の耐腐食性の向上及び強度を高める処理方法及びその処理液を提供することにある。本発明は、特に銀鏡反応を利用した銀メッキ層の腐食を有効に防止し、かつ強度の向上を図る処理方法及び処理液を提供する。」
ウ 「【0013】
本発明は、上記のようにして形成された銀メッキ層の腐食防止及び強度の向上を、従来技術にはない新規な処理を施すことによってその改良を図るものである。即ち、銀と反応もしくは親和性のある有機化合物を含有する処理液で銀メッキ層を処理することである。以下に、銀と反応もしくは親和性を有する有機化合物(以降、単に有機化合物という)について詳細に説明する。
【0014】
上記有機化合物としては、▲1▼チオン基もしくはメルカプト基を有する有機化合物、及び▲2▼含窒素へテロ環化合物が挙げられる。▲1▼のチオン基もしくはメルカプト基を有する化合物について詳細に説明する。該化合物として、少なくとも1個のチオン基もしくはメルカプト基が、直接に、またはアルキレン基、アリーレン基あるいはアルケニレン基のような適当な連結基を介して含窒素ヘテロ環に結合した化合物が好ましい。これらの中でも、特に含窒素ヘテロ環にチオン基もしくはメルカプト基が2個以上結合した化合物が好ましい。
【0015】
上記の含窒素ヘテロ環にチオン基もしくはメルカプト基が2個以上結合した化合物としては、1個の含窒素ヘテロ環に2個以上のチオン基もしくはメルカプト基が結合した化合物、または1個以上のチオン基もしくはメルカプト基が結合した含窒素ヘテロ環の2個以上が、直接にもしくはアルキレン基、アリーレン基、アルキニレン基、あるいはエチレンジアミンのような適当な連結基を介して結合した化合物がある。
【0016】
上記の含窒素ヘテロ環としては、ピロール、ピロリン、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、ピラゾリジン、チアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等があり、これらの環は2個以上の縮合生成した環であってもよく、またベンゼン環やナフタリン環と縮合したものであってもよい。
【0017】
係る化合物の具体例として、1個のチオン基もしくはメルカプト基が結合した含窒素ヘテロ環化合物としては、例えば、
1)2-メルカプト-4-フェニルイミダゾール
2)2-メルカプト-ベンツイミダゾール
3)2-メルカプト-1-ブチル-ベンツイミダゾール
4)1,3-ジベンジル-イミダゾリジン-2-チオン
5)2-メルカプト-4-フェニルチアゾール
6)3-ブチル-ベンゾチアゾリン-2-チオン
7)3-ドデシル-ベンゾチアゾリン-2-チオン
8)2-メルカプト-4,5-ジフェニルオキサゾール
9)3-ペンチル-ベンゾオキサゾリン-2-チオン
10)1-フェニル-3-メチルピラゾリン-5-チオン
11)3-メルカプト-4-アリル-5-ペンタデシル-1,2,4-トリアゾール
12)3-メルカプト-5-ノニル-1,2,4-トリアゾール
13)3-メルカプト-4-アセタミド-5-ヘプチル-1,2,4-トリアゾール
14)3-メルカプト-4-アミノ-5-ヘプタデシル-1,2,4-トリアゾール
15)2-メルカプト-5-フェニル-1,3,4-チアジアゾール
16)2-メルカプト-5-n-ヘプチル-オキサジアゾール
17)2-メルカプト-5-nヘプチル-オキサジアゾール
18)2-メルカプト-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール
19)5-メルカプト-1-フェニル-テトラゾール
20)3-メルカプト-4-メチル-6-フェニル-ピリダジン
21)2-メルカプト-5,6-ジフェニル-ピラジン
22)2-メルカプト-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン
23)2-アミノ-4-メルカプト-6-ベンジル-1,3,5-トリアジン
等がある。」
エ 「【0036】
【実施例】
実施例1
基材としてABS樹脂板を用意した。この基材の表面にイソプロパノールをスプレー洗浄し、続いて、ベースコート剤として大橋化学社製のB-3を基材の表面にスプレー塗布してベースコート層を設けた。次に、ベースコート層の表面に、アンダーコート剤(大橋化学社製のU-1)をスプレー塗布してアンダーコート層を形成させた。
【0037】
次に、前記アンダーコート層の表面に、3質量%の第二塩化すず及び1質量%の塩酸を含有する第二塩化すず溶液をスプレー塗布して前処理を行った後、イオン交換水にてアンダーコート層の表面をスプレー洗浄した。続いて、トレンス試薬とグリオキサールとを双頭スプレーガン(アネスト岩田社製のRG-2)を用いてアンダーコート層の表面に同時にスプレー塗布して、銀鏡反応を利用した化学メッキ法を実施することによって、アンダーコート層の表面に約0.1μmの均一な厚さの銀メッキ層が形成された。その後、イオン交換水にて銀メッキ層の表面をスプレー洗浄した。
【0038】
次に、以下の処理液を作製した。
<処理液A>
ジエチレングリコール 50g
水酸化ナトリウム 4g
有機化合物 (表1の化合物25) 4g
有機化合物 (表1の化合物34) 2g
リン酸2カリ 25g
リン酸(85%) 11g
ブタジエン・無水マレイン酸共重合体 4g
水で1リットルに調整する。pHは6.5である。
【0039】
この処理液Aに、銀メッキ層を20秒間浸漬して処理した後、水洗、乾燥した。更に、銀メッキ層の表面に、トップコート剤(大橋化学社製のT-1)をスプレー塗布してトップコート層を設けた。
【0040】
比較として、上記の処理液Aによる処理を実施しない以外は全く同様にして、基材上にベースコート層、アンダーコート層、銀メッキ層及びトップコート層を設けた。
・・・
【0045】
実施例3
実施例1の処理液Aに代えて、以下の処理液B、C、D、あるいはEで処理する以外は、実施例1と同様に試験した。
・・・
【0049】
<処理液E>
ジエチレングリコール 50g
水酸化ナトリウム 4g
有機化合物 (表1の化合物34) 2g
有機化合物(2-メルカプトベンツイミダゾール) 4g
リン酸2カリ 25g
リン酸(85%) 11g
ブタジエン・無水マレイン酸共重合体 4g
水で1リットルに調整する。pHは6.5に調整する。
・・・
【0051】
実施例1と同様に評価した結果、上記の処理液B、C、D、E及びFで処理したものは、実施例1の処理液Aで処理したものに比べて、耐腐食性でわずかに劣るものの、実施例1の比較に比べて大幅に、耐食性、強度、紫外光照射による変色は改良されていた。」
(5)甲第5号証の記載事項
ア 「2.特許請求の範囲
(1)銀又は銀合金を被覆したリード線にメルカプト化合物を被覆したことを特徴とする耐変色性銀被覆リード線。
(2)メルカプト化合物を有機溶媒に溶解した処理液中に、銀又は銀合金を被覆したリード線を連続的に通過させて、該リード線の表面に処理液を塗布することを特徴とする耐変色性銀被覆リード線の製造方法。
(3)処理液中のメルカプト化合物の濃度が0.05~5wt%である請求項(2)記載の耐変色性銀被覆リード線の製造方法。」
イ 「また第2図に示すようにAg被覆リード線(1)の一端部をチャック(2)でつかみ、その先端をプレス(3)でつぶして第3図のような形状に加工するヘッダー加工を行う際に、チャック(2)とリード線(1)とにすべりが発生し、そのため加工が安定せずに形状がばらつくことがあり、またひどい場合には加工ができない場合があるので問題であった。
このように材料同士の摺動、即ち共ずれに対しては、Ag被覆リード線同士の場合には、すべり性がよく、傷がつかないのが望ましいが、ヘッダー加工時のチャック材質である鋼とAg被覆リード線との場合には上記のようにあまりすべらないものが好ましいといえる。そして一般的には、共ずれ防止のためには摩擦係数は0.2以下が良く、またヘッダー加工に最適な摩擦係数の領域は0.12~0.2が良い。
〔課題を解決するための手段〕
本発明はこれに鑑み種々検討の結果、耐変色性に優れ、電子部品及び電子機器用のリード線として優れた性能を示す耐変色性銀被覆リード線とその製造方法を開発したものである。即ち本発明リード線は、Ag又はAg合金を被覆したリード線にメルカプト化合物を被覆したことを特徴とするものである。
また本発明の製造方法は有機溶媒例えばトリクロロエチレン,フレオン,トルエン,アロマチックソルベント等に、メルカプト化合物を溶解した処理液中にAg又はAg合金を被覆したリード線を連続的に通過させてこのリード線の表面に処理液を塗布することを特徴とするものである。
これらメルカプト化合物としては、一般式R-SHで示される有機化合物及びこれ等の無機塩類であり、脂肪族メルカプタンとしては、効力及び蒸気圧の点から炭素数C4~C18に相当するメルカプタンが適しており、例えば、ラウリルメルカプタン(C12H25SH)、オクタデシルメルカプタン(C18H37SH)等がある。芳香族メルカプタンとしては、フェニルメルカプタン(C6H5SH)、ベンジルメルカプタン(C6H5CH2SH)、チオアンスラノール(C14H5SH)等がある。またその他としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(C7H5S2N)、2,5-ジメチルカプトチアジアゾール(C2N2S3H2)、ベンズオキサゾールチオール(C7H5NOS)、ベンズイミダゾールチオール(C7H5N2S)等がある。
そして処理液中のこれらメルカプト化合物の濃度は、0.05~5wt%が適当である。」(第2ページ左上欄第5行~左下欄第14行)
ウ 「〔実施例〕
以下本発明の実施例について説明する。
実施例(1)
線径0.63mmのCu線上に電気メッキ法によりシアン厚メッキ浴を用いてAgを3.3μmの厚さに被覆した後、減面率10%の伸線加工を行い、線径0.6mm、Ag厚さ3.0μmのAg被覆Cu線を得た。
その後このAg被覆Cu線を、第1表に示すようにメルカプト化合物濃度(%)を0,0.02,0.05,0.1,0.5,1.0,2.5,5.0,7.0に変えて有機溶媒に溶解した処理液中に連続的に通過させることにより、メルカプト化合物の塗布量を変えたAg被覆Cu線を得た。
この9種類のAg被覆Cu線について、それぞれ第1表に示すように200℃に2時間保持する加熱変色試験を行うと共に、20℃の大気中に60日間保持する大気バクロ試験を行い、又、40℃×6hrで3ppm濃度にて硫化試験を行い、更に摩擦係数の測定を行った。その結果を第1表及び第1図に示した。
摩擦係数測定は、バウデン型摩擦試験機により、荷重100gにて、0.7mmRクサビ型鋼材又はAg材のヘッドを用い、すべり速度100mm/min、測定距離30mm(一方向すべり)、測定温度25℃で行った。
[図:0001428029000011.jpg]
・・・
実施例(2)
下記の方法により、メルカプト化合物を有機溶媒に溶解した処理液をAg被覆リード線上に塗布し、実施例(1)と同様にして、加熱変色試験,大気バクロ試験,硫化変色試験,摩擦係数の測定を行った。そしてその結果を第2表に示す。
(a)線径0.63mmの銅被覆鋼線上に電気メッキ法により、銀-アンチモン-シアン厚メッキ浴を用いてAg-1%Sb合金を1.1μmの厚さに被覆した後、減面率10%の伸線加工を行い、線径0.6mm、Ag厚さ1.0μmのAg-Sb合金被覆銅被覆鋼線を得た。その後メルカプト化合物を有機溶媒中に1.5%溶解した処理液中に上記線材を連続的に通過させてメルカプト化合物を塗布した本発明の耐変色性銀被覆鋼線(本発明リード線a)を製造した。
(b)線径0.68mmの銅線上に電気メッキ法により、シアン厚メッキ浴を用いてAgを1.3μmの厚さに被覆した後、減面率30%の伸線加工を行い、線径0.6mm、Ag厚さ1.0μmのAg被覆銅線を得た。そしてメルカプト化合物を有機溶媒中に1.5%溶解した処理液中にこの線材を連続的に通過させてその表面にメルカプト化合物を塗布し、本発明の耐変色性銀被覆鋼線(本発明リード線b)を製造した。
[図:0001428029000012.jpg]
第2表から明らかなように、本発明リード線は何れも加熱変色試験,大気バクロ試験,硫化変色試験で変色することなく、摩擦係数はAgvsAgでは小さく、鋼vsAgでヘッダー加工最適領域内にあることが判る。」(第2ページ右下欄第17行~第4ページ右下欄第5行)
(6)甲第6号証の記載事項
ア 「【請求項1】
銅又は銅合金基材の表面上に貴金属を含む金属表面層をデポジットする工程;並びに
その上に金属表面層を有する銅又は銅合金基材を、(a)貴金属表面と相互作用し、かつ保護する少なくとも1つの官能基を含む第一有機分子、(b)銅表面と相互作用し、かつ保護する少なくとも1つの官能基を含む第二有機分子、及び(c)界面活性剤を含む水性組成物に暴露する工程
を含む、銅又は銅合金基材の表面の耐腐食性を向上させる方法。
【請求項2】
前記金属表面層が、浸漬置換めっき工程によってデポジットされ、かつ該金属表面層が銀、金又はこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一有機分子が、チオール(メルカプタン)、ジスルフィド、チオエーテル、チオアルデヒド、チオケトン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる請求項1又は2に記載の方法。
・・・」
イ 「【0008】 一態様において、本発明は、銅又は銅合金基材の表面の耐腐食性を向上させる方法を対象とする。該方法は、銅又は銅合金基材の表面上に貴金属を含む金属表面層をデポジットする工程;並びにその上に金属表面層を有する銅又は銅合金基材を、(a)貴金属表面と相互作用し、かつ保護する少なくとも1つの官能基を含む第一有機分子、(b)銅表面と相互作用し、かつ保護する少なくとも1つの官能基を含む第二有機分子、及び(c)界面活性剤を含む水性組成物に暴露する工程を含む。
【0009】
また本発明は、銅又は銅合金基材の表面上に銀及び/又は金コーティングを有する銅又は銅合金基材の表面の耐腐食性を向上させるための組成物を対象とし、該組成物は、(a)チオール(メルカプタン)、ジスルフィド、チオエーテル、チオアルデヒド、チオケトン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、約1g/Lと約10g/Lとの間の濃度であって、貴金属表面と相互作用し、かつ保護する第一有機分子、(b)第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、窒素を含む芳香族複素環及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、約1g/Lと約10g/Lとの間の濃度であって、銅表面と相互作用し、かつ保護する第二有機分子、並びに(c)界面活性剤を含む。
ウ 「【0068】
実施例3:メルカプタン化合物を含む保護有機コーティングの銅基材上の浸漬めっき銀コーティングへの適用
実施例1に示す方法によって、3つの銅被覆FR-4ラミネート基材をAlphaSTAR(登録商標)化学品を用いてめっきした。該銅被覆FR-4ラミネート基材をメルカプタン化合物を含む市販の後処理組成物中にさっと浸した。後処理組成物はエバブライト(Evabrite)WS(登録商標)(エントン社、ウェストヘーブン、コネティカット州から入手)であった。該後処理組成物は次の成分を含んでいた。
1質量%/volのエバブライト(Evabrite)WS(登録商標)添加剤
バランス水
【0069】
ラミネート基材を表2に示すパラメータに従って浸漬した。浸漬した後、エバブライト(Evabrite)WS(登録商標)で被覆した銀めっきラミネート基材の表面上の銀、炭素、酸素及び硫黄の各々の元素の相対的原子%を、X線光電子分光法によって測定した。結果を表3に示す。
【0070】
【表2】
[図:0001428029000013.jpg]
【0071】
【表3】
[図:0001428029000014.jpg]
【0072】
硫黄及び炭素の相対的原子%によれば、メルカプタンの表面領域は、浸漬時間を30秒から5分に増やすことによっては充分に増大しなかった。さらに、5分間の浸漬時間は、30秒の浸漬時間に比べ、表面酸素において相当量の減少を引き起こさなかった。従って、効果的なメルカプタンコーティングはわずか30秒で適用できる。
【0073】
銀めっきラミネート基材を50℃でエバブライト(Evabrite)WS(登録商標)に浸漬した際、硫黄の相対的原子%によって測定されたように、表面領域は少なくとも50%増大した。さらに、ラミネート基材を50℃で組成物に浸漬した場合、表面酸素原子%が充分に減少した。特定の理論に縛られることなく、より高い温度が銀コーティング上のメルカプタン自己組織化単一層の形成を触媒するものと考えられる。すなわち、より高い温度が銀原子と硫黄との間で化学結合の形成を触媒し、かつ銀原子と酸素との間で結合開裂を触媒した。さらに、より高い温度が組成物の表面張力を減じ、それがより良好なぬれ性、ひいてはメルカプタン分子による銀孔へのより良好な浸透性をもたらすと考えられる。より良子な孔浸透性を有することは、銀孔を介する銅原子の移動を遮断し、銅酸化を抑制するものと判断され得る。
・・・
【0075】
実施例5:メルカプタン官能基を含む化合物を含有する後処理組成物
次の成分を有する後処理組成物を調製した。
0.08質量%/volの1-オクタデカンチオール
バランス水
・・・
【0079】
【表4】
[図:0001428029000015.jpg]
【0080】
図4E及び4Fに記載された試験片8及び9は、H2Sへの暴露45分後でさえ、ほとんど若しくは全く変色を示さなかった。従って、高められた温度でのメルカプタンの適用、或いはメルカプタン及び窒素を含む芳香族複素環の適用を採用した後処理方法は、たとえ高い腐食環境条件下でも変色を抑制する効果的な方法である。」
(7)甲第7号証の記載事項
ア 「本実験結果も銅の場合とよく類似した傾向がみられ,しかもB.T.A.は銅および銀のキレート試薬として知られている7)ことから,中性溶液においてB.T.A.-Ag錯体皮膜が銀表面にも形成されると考えることができる。」(第413ページ左欄第25~30行)
(8)甲第8号証の記載事項
ア 「4.貴金属めっきの技術動向
4.1 銀めっき
・・・
硬質銀・アンチモンめっき(AgSb,Sb=1%)は,電気自動車(EV/PHV)の充電コネクタ12)に検討されている。ステーション側コネクタ(Outlet)を車両側コネクタ(Inlet)に接続して充電されるが,前者は軟質銀めっき,後者は硬質銀めっきがそれぞれ10~100μm施される。ステーション側コネクタの削れた軟質銀は,再めっきが施されるが,車両側コネクタの硬質銀は,再めっきなしで10,000回以上の挿抜耐久性が求められる。硬質銀・アンチモンめっき浴は,アルカリシアン浴の添加剤としてアンチモン化合物,炭素化合物が加えられる。アンチモン化合物を添加すると,金属間化合物が共析して,硬度110~180Hvの硬質銀・アンチモン皮膜が形成される。インジウム,すず,テルルの化合物を添加しても,同様の効果が得られる。炭素化合物として,グラファイト13),酸化グラフェン14)等を用いて複合めっき化させると,耐摩耗性,アンチモン酸化,再結晶化等の問題解消が期待される。」(第430ページ左欄第19行~右欄第15行)
(9)甲第9号証の記載事項
ア 「・・・
【請求項7】
素材上に銀からなる表層が形成された銀めっき材において、反射濃度が0.3以上、表層のAg純度が99.9質量%以上であり、大気中において50℃で168時間加熱する耐熱試験を行った後のビッカース硬さHvが110以上であることを特徴とする、銀めっき材。
【請求項8】
前記素材が銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項7に記載の銀めっき材。
【請求項9】
前記素材と前記表層との間にニッケルからなる下地層が形成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の銀めっき材。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の銀めっき材を材料として用いたことを特徴とする、接点または端子部品。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、銀めっき中にアンチモンなどの元素を含有させると、銀が合金化して硬度が向上するものの、銀の純度が低くなるため、接触抵抗が増加するという問題がある。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、高い硬度を維持したまま、接触抵抗の増加を防止することができる、銀めっき材およびその製造方法を提供することを目的とする。」
2 申立理由1(進歩性)
(1)甲第1号証に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲第1号証には、「銀めっき材およびその製造方法」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項8~11の記載を前提に、特に、段落【0033】~【0041】の実施例1に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
無酸素銅からなる基材上にニッケルからなる下地層が形成され、この下地層の表面に銀からなる表層が形成され、この表層の表面に有機皮膜が形成され、表層の表面の算術平均粗さRaが0.045μmであり且つ粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であり、
有機皮膜が、チオール化合物を含む有機皮膜である、接点または端子部品に用いられる銀めっき材。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における、「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」は、本件発明1における、「電気接続部材用材料」に相当する。
(イ)甲1発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における、「無酸素銅からなる基材上にニッケルからなる下地層が形成され、この下地層の表面に銀からなる表層が形成」された「銀めっき材」は、本件発明1の「電気接続部材用材料」における、「Ag層を表面に有する金属材」に相当する。
(ウ)甲1発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における、「銀からなる」「表層の表面に」「形成され」た「有機皮膜」は、本件発明1の「電気接続部材用材料」における、「Ag層を表面に有する」「金属材の表面を被覆する被覆層」に相当する。
(エ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「Ag層を表面に有する金属材と、
前記金属材の表面を被覆する被覆層と、を有する電気接続部材用材料。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1の「電気接続部材用材料」は、「金属材」における「Ag層」の「表面の硬度が90HV以上」であるのに対し、甲1発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」は、「無酸素銅からなる基材上にニッケルからなる下地層が形成され、この下地層の表面に銀からなる表層が形成」された「銀めっき材」における「銀からなる表層」の表面の硬度が不明である点。
<相違点1-2>
本件発明1の「電気接続部材用材料」は、「金属材の表面を被覆する被覆層」が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、前記金属材の表面に接触させて形成されるもの」であるのに対し、甲1発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」は、「銀からなる」「表層の表面に」「形成され」た「有機皮膜」が、「チオール化合物を含む有機皮膜」である点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、相違点1-2を検討する。
a 相違点1-2が実質的な相違点であるかについて
(a)甲1発明における、「銀からなる」「表層の表面に」「形成され」た「有機皮膜」は、「銀めっき材を、(チオール化合物を含む)チオール系表面処理剤(JX日鉱日石金属株式会社製の(界面活性剤とチオール化合物と有機酸とイオン交換水からなる)金属変色防止剤CT-X)(チオール系A)を33mL/L含む溶液にスターラにより500rpmで撹拌しながら30秒間浸漬した後、水洗してチオール系表面処理剤を十分に洗い流し、常温で乾燥させ」て形成したものであるから(上記1(1)ウの段落【0039】)、「メルカプト基」「を有する有機化合物を、」「銀めっき材」「の表面に接触させて形成されるもの」であるといえる。
(b)しかしながら、甲第1号証には、甲1発明における「チオール化合物」が如何なる化合物であるかが記載されていないから、甲1発明における「チオール化合物」が「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」であるかは不明である。また、技術常識を考慮しても、JX日鉱日石金属株式会社製の金属変色防止剤CT-Xに含まれる「チオール化合物」が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」であるかは不明である。
(c)よって、相違点1-2は、実質的な相違点である。
b 相違点1-2の容易想到性について
(a)上記1(2)~(6)に摘記したとおり、甲第2号証には、「2種以上の金属表面の耐変色性、及び耐食性に対する要求を1度の処理で充分に満たすことができる金属表面処理剤」として、「メルカプト基を有するチアジアゾール系化合物、メルカプト基を有するテトラゾール系化合物、又は炭素数が12~20のアルキルメルカプタン」を含む処理剤が記載され、甲第3号証には、「処理したい部分に対して選択的且つ定量的に封孔処理可能な封孔処理剤溶液」として、「メルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物」を含む封孔処理剤溶液が記載され、甲第4号証には、「銀メッキ層の耐腐食性の向上及び強度を高める処理液」として、「チオン基もしくはメルカプト基を有する有機化合物、または含窒素ヘテロ環化合物」を含む処理液が記載され、甲第5号証には、銀被覆リード線に耐変色性を付与する処理液として、「炭素数C4~C18に相当するメルカプタン」を含む処理液が記載され、甲第6号証には、「銅又は銅合金基材の表面上に銀及び/又は金コーティングを有する銅又は銅合金基材の表面の耐腐食性を向上させるための組成物」として、「(a)チオール(メルカプタン)、ジスルフィド、チオエーテル、チオアルデヒド、チオケトン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる第一有機分子」を含む組成物が記載されている。
(b)上記(a)のとおり、甲第2~6号証には、表面処理液に、「メルカプト基を有する有機化合物」が含まれることは記載されている。
しかしながら、例示される「有機化合物」には、「メルカプト基」を有しない「有機化合物」が含まれていたり(甲第4、6号証)、「メルカプト基を有する有機化合物」に限定されていても、「芳香環」を有するものに限らず、「芳香環」を有しないものも含まれていたりするため(甲第2、3、5号証)、甲1発明の「銀からなる」「表層の表面に」「形成され」た「有機皮膜」における「チオール化合物」として、多種多様な「有機化合物」の中から、特に「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」を選択することが動機付けられるとはいえない。
仮に、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」を選択することが動機付けられたとしても、本件明細書の記載によれば、本件発明1の発明特定事項を備えることにより、硬質Ag層の表面に被覆層を形成した試料における耐高温凝着性が小面圧で高くなる(A+)という効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第1~6号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。
そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記1(7)の甲第7号証の記載事項を考慮しても、本件発明2~5についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由1(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2(進歩性)
(1)甲第5号証に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲第5号証には、「耐変色性銀被覆リード線とその製造方法」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項1の記載を前提に、特に、第3ページ右下欄第20行~第4ページ右下欄第5行の実施例2に着目すると、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲5発明>
Ag-1%Sb合金メッキを表面に有する銅被覆鋼線の表面にメルカプト化合物を被覆した、耐変色性銀被覆リード線。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
(ア)リード線は、電気的に接続する部材であるから、甲5発明の「耐変色性銀被覆リード線」における、「銅被覆鋼線」は、本件発明1における、「電気接続部材用材料」に相当する。
(イ)甲5発明の「耐変色性銀被覆リード線」における、「Ag-1%Sb合金メッキを表面に有する銅被覆鋼線」は、本件発明1の「電気接続部材用材料」における、「Ag層を表面に有する金属材」に相当する。
(ウ)甲5発明の「耐変色性銀被覆リード線」における、「Ag-1%Sb合金メッキを表面に有する銅被覆鋼線の表面」に「被覆」された「メルカプト化合物」は、本件発明1の「電気接続部材用材料」における、「Ag層を表面に有する」「金属材の表面を被覆する被覆層」に相当する。
(エ)そうすると、本件発明1と甲5発明とは、
「Ag層を表面に有する金属材と、
前記金属材の表面を被覆する被覆層と、を有する電気接続部材用材料。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件発明1の「電気接続部材用材料」は、「金属材」における「Ag層」の「表面の硬度が90HV以上」であるのに対し、甲5発明の「耐変色性銀被覆リード線」は、「銅被覆鋼線」における「Ag-1%Sb合金メッキ」の表面の硬度が不明である点。
<相違点2-2>
本件発明1の「電気接続部材用材料」は、「金属材の表面を被覆する被覆層」が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、前記金属材の表面に接触させて形成されるもの」であるのに対し、甲5発明の「耐変色性銀被覆リード線」は、「Ag-1%Sb合金メッキを表面に有する銅被覆鋼線の表面にメルカプト化合物」が「被覆」されている点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、相違点2-2を検討する。
a 相違点2-2が実質的な相違点であるかについて
(a)甲5発明における「メルカプト化合物」は、「メルカプト化合物を有機溶媒中に1.5%溶解した処理液中に」「Ag-1%Sb合金メッキを表面に有する銅被覆鋼線」「を連続的に通過させて」形成したものであるから(上記1(5)ウの実施例2)、「メルカプト基」「を有する有機化合物を、」「Ag-1%Sb合金メッキを表面に有する銅被覆鋼線」「の表面に接触させて形成されるもの」であるといえる。
(b)しかしながら、甲第5号証には、甲5発明における「メルカプト化合物」が如何なる化合物であるかが記載されていないから、甲5発明における「メルカプト化合物」が「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」であるかは不明である。また、技術常識を考慮しても、甲5発明における「メルカプト化合物」が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」であるかは不明である。
(c)よって、相違点2-2は、実質的な相違点である。
b 相違点2-2の容易想到性について
(a)上記2(1)イ(ア)b(a)で述べたとおり、甲第2~6号証には、表面処理液に、「メルカプト基を有する有機化合物」が含まれることは記載されている。
しかしながら、例示される「有機化合物」には、「メルカプト基」を有しない「有機化合物」が含まれていたり(甲第4、6号証)、「メルカプト基を有する有機化合物」に限定されていても、「芳香環」を有するものに限らず、「芳香環」を有しないものも含まれていたりするため(甲第2、3、5号証)、甲5発明の「メルカプト化合物」として、多種多様な「有機化合物」の中から、特に「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」を選択することが動機付けられるとはいえない。
仮に、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」を選択することが動機付けられたとしても、本件明細書の記載によれば、本件発明1の発明特定事項を備えることにより、硬質Ag層の表面に被覆層を形成した試料における耐高温凝着性が小面圧で高くなる(A+)という効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第2~6号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。このことは、甲第8号証に、「アンチモン化合物を添加すると,金属間化合物が共析して,硬度110~180Hvの硬質銀・アンチモン皮膜が形成される」ことが記載されていても変わるものではない。
そうすると、本件発明1は、甲5発明及び甲第2~6、8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~6、8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~6、8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記1(7)の甲第7号証の記載事項を考慮しても、本件発明2~5についても同様に、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由2(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3(進歩性)
(1)甲第8号証に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲第8号証には、「貴金属めっき技術の進展」(表題)に関する記載があり、特に、「4.1 銀めっき」の記載に着目すると、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲8発明>
硬度110~180Hvの硬質銀・アンチモン皮膜が形成された充電コネクタ。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲8発明とを対比する。
(ア)甲8発明における、「充電コネクタ」は、本件発明1における、「電気接続部材」に相当する。
(イ)甲8発明の「充電コネクタ」が金属製の材料からなることは自明である。
(ウ)甲8発明の「充電コネクタ」において、(金属製の材料に)「硬度110~180Hvの硬質銀・アンチモン皮膜が形成」されていることは、本件発明1の「電気接続部材用材料」において、「金属材」が「表面の硬度が90HV以上であるAg層を表面に有する」ことに相当する。
(エ)そうすると、本件発明1と甲8発明とは、
「表面の硬度が90HV以上であるAg層を表面に有する金属材、を有する電気接続部材用材料。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件発明1は、「前記金属材の表面を被覆する被覆層と、を有し、
前記被覆層は、メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、前記金属材の表面に接触させて形成されるものである」のに対し、甲8発明の「充電コネクタ」は、「硬質銀・アンチモン皮膜」の表面が被覆されているのか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点3-1について
a 相違点3-1が実質的な相違点であるかについて
甲第8号証には、甲8発明の「充電コネクタ」における「硬質銀・アンチモン皮膜」の表面を被覆することについて何ら記載されていないから、甲8発明の「充電コネクタ」における「硬質銀・アンチモン皮膜」の表面が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」で被覆されているかは不明である。また、技術常識を考慮しても、甲8発明「充電コネクタ」における「硬質銀・アンチモン皮膜」の表面が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」で被覆されているかは不明である。
よって、相違点3-1は、実質的な相違点である。
b 相違点3-1の容易想到性について
(a)上記2(1)イ(ア)b(a)で述べたとおり、甲第2~6号証には、表面処理液に、「メルカプト基を有する有機化合物」が含まれることは記載されている。
しかしながら、甲第8号証には、甲8発明の「充電コネクタ」における「硬質銀・アンチモン皮膜」の表面を被覆することについて何ら記載されていない以上、甲第2~6号証の記載を考慮しても、甲8発明の「充電コネクタ」において、硬質銀・アンチモン皮膜の表面を被覆する被覆層を有するものとした上で、さらに、前記被覆層を、メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、硬質銀・アンチモン皮膜の表面に接触させて形成されるものとすることが動機付けられるとはいえない。
仮に、甲第2~6号証の記載に基づき、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」を選択することが動機付けられたとしても、本件明細書の記載によれば、本件発明1の発明特定事項を備えることにより、硬質Ag層の表面に被覆層を形成した試料における耐高温凝着性が小面圧で高くなる(A+)という効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第2~6号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。
そうすると、本件発明1は、甲8発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記1(7)の甲第7号証の記載事項を考慮しても、本件発明2~5についても同様に、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由3(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲第8号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由3(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由4(進歩性)
(1)甲第9号証に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲第9号証には、「銀めっき材およびその製造方法」(発明の名称)に関する記載があり、特に、請求項7~10の記載を前提に、特に、段落【0024】~【0037】の実施例1に着目すると、次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲9発明>
純銅からなる素材上に銀からなる表層が形成された銀めっき材において、反射濃度が1.69、表層のAg純度が99.9質量%以上であり、ビッカース硬さHvが132である、接点または端子部品に用いられる銀めっき材。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲9発明とを対比する。
(ア)甲9発明における、「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」は、本件発明1における、「電気接続部材用材料」に相当する。
(イ)甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における、「純銅からなる素材上に銀からなる表層が形成された銀めっき材」は、ビッカース硬さHvが132であるから、本件発明1の「電気接続部材用材料」における、「表面の硬度が90HV以上であるAg層を表面に有する金属材」に相当する。
(ウ)そうすると、本件発明1と甲9発明とは、
「表面の硬度が90HV以上であるAg層を表面に有する金属材、を有する電気接続部材用材料。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
本件発明1は、「前記金属材の表面を被覆する被覆層と、を有し、
前記被覆層は、メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、前記金属材の表面に接触させて形成されるものである」のに対し、甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」は、「銀からなる表層」の表面が被覆されているのか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点4-1について
a 相違点4-1が実質的な相違点であるかについて
甲第9号証には、甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における「銀からなる表層」の表面を被覆することについて何ら記載されていないから、甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における「銀からなる表層」の表面が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」で被覆されているかは不明である。また、技術常識を考慮しても、甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における「銀からなる表層」の表面が、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」で被覆されているかは不明である。
よって、相違点4-1は、実質的な相違点である。
b 相違点4-1の容易想到性について
(a)上記2(1)イ(ア)b(a)で述べたとおり、甲第2~6号証には、表面処理液に、「メルカプト基を有する有機化合物」が含まれることは記載されている。
しかしながら、甲第9号証には、甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」における「銀からなる表層」の表面を被覆することについて何ら記載されていない以上、甲第2~6号証の記載を考慮しても、甲9発明の「接点または端子部品に用いられる銀めっき材」において、銀からなる表層の表面を被覆する被覆層を有するものとした上で、さらに、前記被覆層を、メルカプト基および芳香環を有する有機化合物を、硬質銀・アンチモン皮膜の表面に接触させて形成されるものとすることが動機付けられるとはいえない。
仮に、甲第2~6号証の記載に基づき、「メルカプト基および芳香環を有する有機化合物」を選択することが動機付けられたとしても、本件明細書の記載によれば、本件発明1の発明特定事項を備えることにより、硬質Ag層の表面に被覆層を形成した試料における耐高温凝着性が小面圧で高くなる(A+)という効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第2~6号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。
そうすると、本件発明1は、甲9発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第9号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第9号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記1(7)の甲第7号証の記載事項を考慮しても、本件発明2~5についても同様に、甲第9号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由4(進歩性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲第9号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由4(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700683