特許異議申立
2023-700710
プレスフィット端子
- 審判番号
- 2023-700710
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-246779
- 登録番号
- 7205714
- 請求日
- 2023年07月11日
- 審決日
- 2024年03月08日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社オートネットワーク技術研究所
- 【権利者代理人】弁理士法人暁合同特許事務所
- 【権利者】住友電装株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人暁合同特許事務所
- 【権利者】住友電気工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人暁合同特許事務所
- 【異議申立人】保坂 香織
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 内田 博之
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.113-ZC (H01R) / P1651.121-ZC (H01R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7205714号発明「プレスフィット端子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7205714号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。
同請求項4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7205714号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年12月28日の出願であって、令和5年1月6日にその特許権の設定登録がされ、同年1月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年7月11日 :特許異議申立人保坂香織(以下、「異議申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て(証拠:甲第1~3号証)
令和5年 9月15日付け:取消理由通知書
令和5年11月16日 :特許権者による意見書の提出
令和5年12月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、令和5年12月1日付けの取消理由通知書(決定の予告)に対して、特許権者からの意見書の提出はなかった。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、各々を「本件発明1」~「本件発明4」といい、全体を「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
回路基板に設けられたスルーホールに、挿入方向に沿って挿入されるプレスフィット端子であって、
前記挿入方向に沿って延びる基部と、
前記基部よりも前記挿入方向の前方に設けられると共に、先端部側角部を有する先端部と、
前記基部と前記先端部とを連結すると共に、前記スルーホールの内壁と接触して弾性変形する一対の変形部と、を備え、
前記一対の変形部は変形部側角部を有し、
前記一対の変形部は、前記変形部側角部のうち前記挿入方向と交差する方向において、外側の変形部側角部に設けられた曲面の曲率半径が、前記先端部側角部に設けられた曲面の曲率半径よりも大きい容易変形部を有する、プレスフィット端子。
【請求項2】
前記挿入方向と交差する方向について前記一対の変形部の差し渡し寸法が最大となる部分に、前記容易変形部が設けられている、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記挿入方向と交差する方向について前記一対の変形部の差し渡し寸法が最大となる部分よりも前記挿入方向について後方の位置に、前記容易変形部が設けられている、請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記一対の変形部には、前記先端部と前記容易変形部との間に中間部が設けられており、
前記中間部は中間部側角部を有しており、前記中間部側角部に設けられた曲面の曲率半径は、前記先端部側角部の前記曲率半径から前記変形部側角部の前記曲率半径に緩やかに変化している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレスフィット端子。」
第3 取消理由の概要
当審が令和5年12月1日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
1 (新規性)請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は取り消すべきものである。
2 (進歩性)請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
甲第1号証:戸谷友之、田畑公暢、「技術紹介 9 車載用プレスフィットコネクタ(MX17Pシリーズ)の開発」、日本航空電子工業株式会社、2006年3月発行、航空電子技報No.29、P.1-9
第4 当審の判断
1 甲第1号証について
以下、異議申立人の提出した甲第1号証を「甲1」という。下線は合議体が付したものである。
(1)甲1の記載等
甲1には、以下のア~キの事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア「「要旨
端子の基板スルーホール挿入部に弾性構造を持たせ、基板とコネクタの接触を雑持する「プレスフィット端子」は、民生機器等では多く利用されていますが、使用環境の厳しい車載機器ではそのまま流用するには多くの課題を持っています。基板の設計に自由度を確保しつつこれらの課題解決を行い、比較的限定された車載環境に適合する要件の中で使用可能な、車載用プレスフィットコネクタ(MX17Pシリーズ)の開発を行いました。」(第1頁)
イ「3 製品構造
図2に車載用プレスフィットコネクタの構造を示します。
各部品の機能は以下の通りです。
インシュレータ:各端子の保持、外部や各端子間の絶縁および相手側コネクタとの接続保持の機能を持ちます。
端子(コネクタ接続部):相手側コネクタの端子と接触し、通電する機能を持ちます。
端子(プレスフィット部) :基板スルーホール部と接触し、通電する機能を持ちます。
ロケータ:インシュレータ背面側より基板に向けて伸びた端子の整列および変形防止の機能を持ちます。」(第4頁)
ウ「5.1 プレスフィット部の構造
プレスフィット接続の原理は、端子のプレスフィット部分と基板スルーホールとのはめあい関係が“しまりばめ“となるように設計することで、締め代によって発生する復元カにより接触、通電をします(図3)。
しかし、外形を打ち抜いただけの中実断面の端子をプレスフィット接続に利用した場合、スルーホールの製造精度を極めて高精度にしなければ、スルーホールめっきの断線や基板の破損、復元力不足による接続不良が発生してしまいます。これは基板の製造に高度な製造技術を要することになり、基板のコストアップや供給不安定を引き起こします。
これに対し車載用プレスフィットコネクタでは、プレスフィット部の形状を図4に示すように端子の中心部を打ち抜いた形状(アイレット形状と呼ばれる)にすることで、弾性構造を持たせ、Φ0.94~Φ1.09のスルーホール径に対して電気的接続、機械的接続を十分に維持できる接触性能を持った形状としました。この対応可能なスルーホール径の範囲はIEC規格に準拠しており、従来の製造技術で製造可能な精度になります。図5にスルーホール径に対する接触力の特性を示します。」(第6頁)
エ「5.3 コネクタの基板への実装方法
車載用プレスフィットコネクタは、ECUメーカーにて基板へ実装され、ECUの組立が行われます。
実装方法は図6に示すように、コネクタを下にして基板を上から実装する方法と、基板を下にしてコネクタを上から実装する方法の2通りがあります。ただし、前者の方法では、作業者から見てコネクタが基板で覆われるため、コネクタの端子をスルーホールに挿入することが難しくなります。そこで、車載用プレスフィットコネクタでは端子がスルーホールに案内されるように、コネクタにガイド用のポスを加え、適用基板にそれに対応するガイド用の穴を加えました。これにより、基板への実装作業の作業性を確保しました。」(第9頁)
オ「
[図:0001411326000001.jpg]
」
カ「
[図:0001411326000002.jpg]
」
キ「
[図:0001411326000003.jpg]
」
ク「
[図:0001411326000004.jpg]
」
ケ 上記キの「図4 プレスフィット部の形状」の「接続状態」の断面図から、プレスフィット端子は、基板のスルーホールに長手方向に沿って挿入される構成であることが見て取れる。
コ 上記ウの「プレスフィット部の形状を図4に示すように端子の中心部を打ち抜いた形状(アイレット形状と呼ばれる)にすることで、弾性構造を持たせ、」との記載に照らせば、上記カの「図4 プレスフィット部の形状」のいずれの図面にも、長手方向に沿って伸びたプレスフィット端子は、プレスフィット部分より後端側の部分と、プレスフィット部分より先端側の部分と、端子の中心部が打ち抜かれて細くなっているアイレット形状のプレスフィット部分を有することが見て取れる。
サ 上記オの「端子の仕様」の項目に「Snめっき」との記載がある。
シ 上記キの「図4 プレスフィット部の形状」の左のプレスフィット端子の斜視図から、先端側の角部と、プレスフィット部分の外側の角部の、陰影のグラデーションが付いている部分の横方向の広さを見比べると、先端側の角部と、プレスフィット部分の外側の角部のグラデーションがついている部分の幅が明らかに先端側の角部のグラデーションがついている部分の幅より広いことが見て取れる。
そして、プレスフィット部分の外側の角部に設けられたグラデーションの幅が、先端側の角部に設けられたグラデーションの幅より広い部分は、プレスフィット端子の長手方向と交差する方向についてアイレット形状のプレスフィット部分の差し渡し寸法が最大となる部分の位置にも、前記差し渡し寸法が最大となる部分よりもプレスフィット端子の長手方向の後方の位置にも設けられていることが見て取れる。
2 甲1発明について
上記(1)の記載事項及び図示内容から、引用文献には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「基板のスルーホールに長手方向に沿って挿入されるプレスフィット端子であって、
プレスフィット端子の長手方向に沿って伸びる、プレスフィット部分より後端側に延びた部分と、
プレスフィット部分より先端側に設けられ、先端側の角部を有する先端側の部分と、
前記後端側に延びた部分と前記先端側の部分との間の、端子の中心部を打ち抜いたアイレット形状とすることで弾性構造を持たせたプレスフィット部分と、を備え、
アイレット形状のプレスフィット部分は、プレスフィット部分の角部を有し、
アイレット形状のプレスフィット部分は、プレスフィット部分の角部のうちプレスフィット端子の長手方向と交差する方向において、プレスフィット部分の外側の角部のグラデーションがついている部分の幅が、先端側の角部のグラデーションがついている部分の幅より広い、細くて外側のグラデーションの幅が広い部分を有する、プレスフィット端子であって、
プレスフィット端子の長手方向と交差する方向についてアイレット形状のプレスフィット部分の差し渡し寸法が最大となる部分に、細くて外側のグラデーションの幅が広い部分が設けられており、
プレスフィット端子の長手方向と交差する方向についてアイレット形状のプレスフィット部分の差し渡し寸法が最大となる部分よりもプレスフィット端子の長手方向の後方の位置にも、細くて外側のグラデーションの幅が広い部分が設けられている、Snめっきされたプレスフィット端子。」
3 請求項1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
後者の「基板のスルーホール」は前者の「回路基板に設けられたスルーホール」に相当し、
後者の「長手方向に沿って挿入される」ことは後者の「挿入方向に沿って挿入される」ことに相当するから、
後者の「プレスフィット端子」は、前者の「プレスフィット端子」に相当する。
後者の「プレスフィット端子の長手方向に沿って伸び」ることは、前者の「前記挿入方向に沿って延びる」ことに相当するから、
後者の「プレスフィット部分より後端側に延びた部分」は、前者の「基部」に相当する。
後者の「プレスフィット部分より先端側に設けられ」ることは前者の「前記基部よりも前記挿入方向の前方に設けられる」に相当し、
後者の「先端側の角部を有する」ことは前者の「先端部側角部を有する」ことに相当するから、
後者の「先端側の部分」は、前者の「先端部」に相当する。
後者の「前記後端側に延びた部分と前記先端側の部分との間の」「プレスフィット部分」は、前者の「前記基部と前記先端部とを連結する」「一対の変形部」に相当する。
そして、後者の、「端子の中心部を打ち抜いたアイレット形状とすることで弾性構造を持たせた」構成は、中心部のアイレットの両脇に2本の細い部分を残す構成であって、その2本の細い部分が、スルーホールに挿入された際に、スルーホールの内壁に押され弾性変形する構成であるから、後者の「端子の中心部を打ち抜いたアイレット形状とすることで弾性構造を持たせた」構成は、前者の「前記スルーホールの内壁と接触して弾性変形する」構成に相当し、
後者の「アイレット形状」の「プレスフィット部分」は、前者の「一対の変形部」に相当する。
後者の「プレスフィット部分の角部」は、前者の「変形部側角部」に相当する。
後者の「プレスフィット部分」の「細くて外側のグラデーションの幅が広い部分」は、細いため、「プレスフィット部分より後端側に延びた部分」や「先端部」より明らかに変形しやすいから、前者の「容易変形部」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「回路基板に設けられたスルーホールに、挿入方向に沿って挿入されるプレスフィット端子であって、
前記挿入方向に沿って延びる基部と、
前記基部よりも前記挿入方向の前方に設けられると共に、先端部側角部を有する先端部と、
前記基部と前記先端部とを連結すると共に、前記スルーホールの内壁と接触して弾性変形する一対の変形部と、を備え、
前記一対の変形部は変形部側角部を有する、プレスフィット端子。」
[相違点]
本件発明1の「容易変形部」は「前記変形部側角部のうち前記挿入方向と交差する方向において、外側の変形部側角部に設けられた曲面の曲率半径が、前記先端部側角部に設けられた曲面の曲率半径よりも大きい」構成であるのに対し、
甲1発明の「プレスフィット部分」の「細くて外側のグラデーションの幅が広い部分」は、「プレスフィット部分の角部のうちプレスフィット端子の長手方向と交差する方向において、プレスフィット部分の外側の角部のグラデーションがついている部分の幅が、先端側の角部のグラデーションがついている部分の幅より広い」構成である点。
(2)相違点の検討
次に、本件発明1と甲1発明に関する上記相違点について検討する。
後者の「プレスフィット部分の角部」は、前者の「変形部側角部」に相当するから、
後者の「プレスフィット部分の角部のうちプレスフィット端子の長手方向と交差する方向」は前者の「前記変形部側角部のうち前記挿入方向と交差する方向」に相当する。
そして、一般的に、斜視図においては、曲率半径が大きい角部ほどグラデーションの幅が広く描かれることや、後者のプレスフィット端子がSnめっきによって、角部が丸みを帯びた曲面となることを考慮すれば、後者の「プレスフィット部分の外側の角部のグラデーションがついている部分の幅が、先端側の角部のグラデーションがついている部分の幅より広い」構成は、プレスフィット部分の外側の角部に設けられた曲面の曲率半径が、先端側の角部に設けられた曲面の曲率半径よりも大きい構成を意味すると解することができるので、前者の「外側の変形部側角部に設けられた曲面の曲率半径が、前記先端部側角部に設けられた曲面の曲率半径よりも大きい」ことに相当する。
そうすると、上記相違点は実質的なものではない。
仮に実質的なものであるとしても、甲1発明のプレスフィット部分の外側の角部及び先端側の角部を、丸みを持った曲率を持つ曲面とすることで、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
また、本件発明1に係る作用・効果は、甲1発明から当業者が予測可能なものに過ぎない。
したがって、本件発明1は甲1発明であるか、または、本件発明1は甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
4 請求項2について
本件発明2と甲1発明とを対比すると、
後者の「プレスフィット端子の長手方向と交差する方向についてアイレット形状のプレスフィット部分の差し渡し寸法が最大となる部分に、細くて外側のグラデーションの幅が広い部分が設けられて」いることは、
前者の「前記挿入方向と交差する方向について前記一対の変形部の差し渡し寸法が最大となる部分に、前記容易変形部が設けられている」ことに相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、上記3(1)の相違点以外に、相違するところはない。
したがって、本件発明2は甲1発明である。また、仮に相違するところがあるとしても、本件発明2は、甲1発明に基いて当業者であれば容易に想到し得たものである。
5 請求項3について
本件発明3と甲1発明とを対比する。
後者の「プレスフィット端子の長手方向と交差する方向についてアイレット形状のプレスフィット部分の差し渡し寸法が最大となる部分よりも長手方向の後方の位置にも、細くて外側のグラデーションの幅が広い部分が設けられている」ことは、
前者の「前記挿入方向と交差する方向について前記一対の変形部の差し渡し寸法が最大となる部分よりも前記挿入方向について後方の位置に、前記容易変形部が設けられている」ことに相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、上記3(1)の相違点以外に、相違するところはないから、本件発明3は甲1発明であるか、仮に相違するところがあるとしても、本件発明3は、甲1発明に基いて当業者であれば容易に想到し得たものである。
6 意見書の主張について
特許権者は、令和5年11月16日付け意見書の5(3)(イ)において甲第1号証に記載された発明について、前記意見書の5(3)(ウ)において、「引用発明では、外側の変形部側角部に設けられた曲面の曲率半径の比較対象が明確となっておりません。すなわち、本件発明1の先端部側角部は曲面を有しているのに対し、引用発明の先端部側角部は曲面を有していない点で、両者は相違しています。」と主張している。
しかしながら、Snめっきの厚さが仮に0.0025mmであっても、Snめっきにより丸みがついて、曲率半径を持つこととなるのは明らかであるし、本件特許の明細書において、「寸法公差によって形成される曲面」のように「意図して付けるものではなく製造上形成されるもの」(前記意見書の第4ページ下から4~3行)のすべてを除外する旨の開示や、端子の先端側の角の丸みの具体的な数値の開示があるわけでもないので、上記3(2)で検討したとおり、甲1発明は、「プレスフィット端子の長手方向と交差する方向において、アイレット形状のプレスフィット部分の角部のうち、外側の角部に設けられた曲面の曲率半径が、先端側の角部に設けられた曲面の曲率半径よりも大きい」構成を実質的に有するか、又は、甲1発明が当該構成を有するものとすることは当業者が容易になし得たと認められるから、特許権者の上記の主張は採用できない。
第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
異議申立人は、異議申立書において、甲1の図4に基づき、本件発明4は甲1発明であるか、または、本件発明4は甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである旨主張する(第17頁第11行~第18頁第19行)。
そこで、甲1の図4の、プレスフィット端子の長手方向と交差する方向のグラデーションの幅に注目すると、プレスフィット部分の外側の角部の、幅の広いグラデーションから、先端部の角部の、幅の狭いグラデーションに、急に変化する部分が図示されていることが見て取れる。
そして、これらのグラデーションの幅の大小は、角部の曲率半径の大小を表現していると解される。
そうすると、甲1の図4には、プレスフィット部分側(当審注:上側)の角部の、大きい曲率半径から、先端側(当審注:下側)の角部の、小さい曲率半径に、急に変化する中間部の角部の構成が図示されていると認められるため、本件発明4の「当該中間部側角部に設けられた曲面の曲率半径が、先端部側角部の曲率半径から変形部側角部の曲率半径に緩やかに変化している」構成が図示されているとはいえないから、本件発明4は甲1発明であるか、または、本件発明4は甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、異議申立人の上記の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~3は、甲1発明であるか、又は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、又は特許法第29条第2項に規定に違反してなされたものでありから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項4に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、他に本件の請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
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