特許異議申立
2021-701030
被覆電線、及び端子付き電線
- 審判番号
- 2021-701030
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-529085
- 登録番号
- 6864856
- 請求日
- 2021年10月28日
- 審決日
- 2022年03月04日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社オートネットワーク技術研究所
- 【権利者代理人】山野 宏
- 【権利者代理人】坂本 寛
- 【権利者】住友電装株式会社
- 【権利者代理人】山野 宏
- 【権利者代理人】坂本 寛
- 【権利者】住友電気工業株式会社
- 【権利者代理人】山野 宏
- 【権利者代理人】坂本 寛
- 【異議申立人】伊東 沙織
- 審判長/審判官
- 審判長 池渕 立
- 審判官 境 周一
- 審判官 井上 猛
- 分類
- P1651.536-Y (C22C) / P1651.537-Y (C22C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6864856号発明「被覆電線、及び端子付き電線」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6864856号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第6864856号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2018年(平成30年) 7月 4日(優先権主張 平成29年 7月14日)を国際出願日とする出願であって、令和 3年 4月 7日にその特許権の設定登録がされ、令和 3年 4月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その全ての請求項に係る特許について、令和 3年10月28日に特許異議申立人 伊東 沙織(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、順に「本件発明1」~「本件発明7」といい、総称して「本件発明」ということがある。また、本件特許の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。
「【請求項1】
導体と、前記導体の外周を覆う絶縁被覆層とを備える被覆電線であって、
前記導体は、銅合金から構成される複数の素線が同心撚りされた撚線であり、
前記銅合金は、Fe,Ti,Mg,Sn,Ag,Ni,In,Zn,Cr,Al,及びPから選択される1種又は2種以上の元素を合計で0.01質量%以上5.5質量%以下含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、
前記撚線の中心部に配置される中心素線の表面の油付着量が、前記中心素線の質量に対して10μg/g以下である被覆電線。
【請求項2】
前記素線の表面に酸化銅からなる被膜を有し、
前記被膜の厚さが10nm以下である請求項1に記載の被覆電線。
【請求項3】
前記導体の引張強さが450MPa以上であり、破断伸びが5%以上である請求項1又は請求項2に記載の被覆電線。
【請求項4】
前記導体の断面積が0.22mm2以下であり、
前記撚線の撚りピッチが12mm以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被覆電線。
【請求項5】
前記撚線の最外側に配置される各外周素線の外周面のうち、撚り溝を除くクラウン部から前記絶縁被覆層の外周面までの最小距離を前記絶縁被覆層の厚さとし、前記厚さの最大値に対する前記厚さの最小値の比率が80%以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被覆電線。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被覆電線と、
前記被覆電線の端部に取り付けられた端子部とを備える端子付き電線。
【請求項7】
前記導体における前記端子部が取り付けられていない未圧縮箇所の断面積に対する前記端子部が取り付けられた圧縮箇所の断面積の比を残存面積割合とし、前記残存面積割合が0.76超である請求項6に記載の端子付き電線。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証、甲第2号証(以下、単に「甲1」、「甲2」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~7に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(サポート要件)
本件発明1~7については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第4号に該当する
2 申立理由2(実施可能要件)
本件発明1~7については、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。
甲1:山本 麻由佳、「油分抽出溶媒H-519」、Readout HORIBA Technical Reports June 2019 No. 52、株式会社堀場製作所、2019年、pp.48-51、[online]、[令和 4年 2月 1日検索](当審注:当審による検索日)、インターネット
<URL:https://www.horiba.com/jpn/company/about-horiba/readout/list/detail/news/6/2019/readout-horiba-technical-reports-june-2019-no-52/emission-measurement-systems/>
<URL:https://static.horiba.com/fileadmin/Horiba/Company/About_HORIBA/Readout/JA/R52J/R52J_11_048.pdf>
(当審注:甲1から直接「株式会社堀場製作所」が発行人であることは読み取れなかったが、インターネットのURL<https://www.horiba.com/jpn/company/about-horiba/company-profile/>を参照し、「株式会社堀場製作所」が甲1の発行人であると判断した。)
甲2:特許第5729143号公報
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)本件発明に関するサポート要件の判断
ア 本件明細書等の記載(【0010】)によれば、本件発明の課題は、「座屈し難い被覆電線、及び端子付き電線を提供する」ことであると認められる。
イ そして、本件明細書等の【0012】~【0016】、【0030】、【0039】~【0042】、【0064】、【0067】、【0070】、【0071】、【0083】~【0094】、【0096】~【0099】、【0101】~【0105】、表1~表3には、被覆電線及び被覆電線の端部に端子部が取り付けられてなる端子付き電線について、その構造、特性、製造方法、効果及び試験例について開示されている。
ウ 特に【0014】~【0016】、【0039】、【0040】、【0070】には、被覆電線の導体である撚線の中心部に配置される中心素線の表面の油付着量と座屈し難さ、接触抵抗、溶接強度に関する作用機序について、以下のように記載されている。
(ア)被覆電線の導体を構成する撚線における各素線には同様の製造条件で製造したものを利用するため、中心素線の表面の油付着量が少なければ、各外周素線の表面の油付着量も少ないといえ、全ての素線についてその表面の油分が少ないといえるので、隣り合う素線間の摩擦、導体と絶縁被覆層間の摩擦が大きくなり易く、被覆電線の構成要素全体が一体として動き易く座屈し難い。(【0014】、【0039】、【0040】)
(イ)被覆電線の導体を構成する撚線における各素線の表面に付着する油分は一般に電気絶縁材であるものの、中心素線の表面の油付着量が少なければ、被覆電線の端部に端子部を取り付けた場合に導体と端子部間の油分が少なくなり易く、導体と端子部との接触抵抗を低減できる。(【0015】、【0039】、【0040】)
(ウ)被覆電線の導体を構成する撚線における各素線の表面に付着する油分が少ないため、溶接時に油分に起因する変成物などを生成し難く、溶接箇所に変成物を介在することに起因する強度の低下を招き難い。(【0016】、【0070】)
エ また、【0101】~【0105】には、試験例において各試料と座屈力、端子挿入性、接触抵抗、溶接強度を評価した結果、導体を構成する撚線における中心素線の表面の油付着量が10μg/g以下である試料は油付着量が11μg/g以上である試料に比べて座屈し難く、接触抵抗が低く、溶接強度に優れること、及び油付着量が少ないほど概ね座屈し難く、接触抵抗が低く、溶接強度に優れる傾向にあることが開示されている。
オ してみると、上記イ~エにて摘記した発明の詳細な説明の記載を考慮すれば、上記アの課題は、端部に端子部が取り付けられて利用される被覆電線において、「複数の素線が同心撚りされた撚線である被覆電線の導体について、撚線の中心部に配置される中心素線の表面の油付着量が、前記中心素線の質量に対して10μg/g以下である」ことによって、撚りピッチのほか、油の種類や絶縁被覆層の種類による程度の差はあるとしても、解決できることが理解できる。
カ そうすると、本件明細書の記載を総合すれば、上記の各要件を備える本件発明1~7は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、当業者が、出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
(2)サポート要件に関する申立人の主張(第1の理由)について
ア 申立人は、本件発明1~7について、申立理由1(サポート要件)の(第1の理由)として、
「本件発明が解決しようとする課題は座屈し難い被覆電線を得ることであるところ、本件明細書等の発明の詳細な説明の試験例の記載によれば、被覆電線の座屈力は油付着量だけでなく撚りピッチにも大きく依存するため、上記課題を解決するための手段としては油付着量だけでなく「撚線の撚りピッチが12mm以上20mmであること」も必要不可欠と考えられるが、本件発明1~7においては撚りピッチが特定されていないから、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。」との旨を主張する。
(申立書の第2頁の「理由の要点」の欄の(1)-1(当審注:原文は丸付き数字。以下同様に、丸付き数字は-(ハイフン)を付けて標記する。)、及び、第5~10頁の(5)(i)(イ)-1~4を参照。)
イ しかしながら、上記(1)ウで述べたとおり本件明細書等の発明の詳細な説明には中心素線の表面の油付着量と座屈し難さに関する作用機序について記載されており、また(1)エで述べたとおり試験例においても中心素線の表面の油付着量が10μg/g以下である試料が11μg/g以上である試料に比べて座屈し難いことが示されているから、撚線の撚りピッチが12mm以上20mmであることが課題解決のための手段として必要不可欠であるとまではいえない。
ウ よって、申立理由1の第1の理由に対する申立人の主張は採用することができない。
(3)サポート要件に関する申立人の主張(第2の理由)について
ア 申立人は、本件発明1~7について、申立理由1(サポート要件)の(第2の理由)として、
「請求項1~7は、あらゆる測定方法で測定した油付着量、あらゆる溶媒を用いて測定した油付着量、及びあらゆる種類の油の油付着量を文言上含んでいるが、発明の詳細な説明には特定の測定方法及び特定の溶媒を用いて油付着量を特定することのみが示されており、油付着量の値が油の種類や測定に使用する溶媒によって大きく変化することは技術常識であることを鑑みれば、上記特定の測定方法及び特定の溶媒とは異なる測定方法及び溶媒を用いて請求項1に記載の油付着量の条件を満たしたとしても、本件明細書等に記載の効果が得られるかどうか不明である。よって、測定方法、溶媒及び油の種類を特定していない本件発明1~7は、本件発明の効果を奏しない範囲のものを含んでいるから、本件発明1~7の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるとはいえない。」との旨、並びに「請求項1~7は、あらゆる絶縁被覆層を文言上含んでいるが、発明の詳細な説明には特定の絶縁被覆層を用いることのみが示されており、導体と絶縁被覆層とを備える被覆電線において座屈力が導体だけでなく絶縁被覆層の種類や導体と絶縁被覆層との組み合わせにも大きく依存することは技術常識であることを鑑みれば、上記特定の絶縁被覆層とは絶縁被覆層を用いて請求項1に記載の油付着量の条件を満たしたとしても、本件明細書等に記載の効果が得られるかどうか不明である。よって、絶縁被覆層の種類及び導体と絶縁被覆層との組み合わせを特定していない本件発明1~7は、本件発明の効果を奏しない範囲のものを含んでいるから、本件発明1~7の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるとはいえない。」との旨を主張する。
なお、申立人は上記技術常識に関連して、甲1より「油の濃度を測定する際、溶媒によって油の抽出力が大きく異なること」、「同一の抽出溶媒であっても、油の種類によって測定値が異なること」が裏付けられ、甲2より「座屈力が、絶縁被覆層の種類に大きく依存すること」が裏付けられる旨を主張している。
(申立書の第2頁の「理由の要点」の欄の(1)-1、2、及び、第10~14頁の(ロ)-1、2を参照。)
イ 測定方法、溶媒及び油の種類についての検討
(ア)本件明細書等の【0090】の「用意した各試料の被覆電線について、導体を構成する撚線における中心素線の表面の油付着量(μg/g)を以下のように測定した。・・・中心素線を溶媒に浸漬して、油分を溶媒に溶解する。油分濃度計を用いて、溶媒中に溶解した油分の質量(μg)を測定し、この油分の質量(μg)を中心素線の質量(g)で除して(油分の質量/中心素線の質量)、中心素線1gあたりの油分量(μg/g)を測定する。ここでは、油分濃度計として市販の装置及び溶媒(株式会社堀場製作所製:OCMA?305、溶媒:H-997、代替ハイドロクロロフルオロカーボン)を用いた。」の記載によれば、本件明細書等では中心素線の油付着量の測定方法及び測定に使用する溶媒が特定されている。
してみると、請求項1~7に係る中心素線の油付着量は、上記の測定方法及び溶媒を使用して測定した値であると解するのが相当であるから、請求項1~7があらゆる測定方法及び溶媒で測定した油付着量を含むという出願人の主張は採用することができない。
(イ)また、上記(1)のとおり、本件発明は「複数の素線が同心撚りされた撚線である被覆電線の導体について、撚線の中心部に配置される中心素線の油付着量が、前記中心素線の質量に対して10μg/g以下である」ことを特定することによって、油の種類による程度の差はあるとしても、(1)アに記載した本件発明の課題を解決するものであるから、(3)アの技術常識を勘案したとしても、油の種類を特定しない本件発明1~7が、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないとはいえないから、「油の種類を特定しない」ことに基く申立人の主張は採用することができない。
(ウ)以上のことから、「測定方法、溶媒及び油の種類を特定していない」ことに基く申立人の主張は、いずれも採用することができない。
ウ 絶縁被覆層についての検討
また、上記(1)のとおり、本件発明は「複数の素線が同心撚りされた撚線である被覆電線の導体について、撚線の中心部に配置される中心素線の油付着量が、前記中心素線の質量に対して10μg/g以下である」ことを特定することによって、絶縁被覆層の種類による程度の差はあるとしても、(1)アに記載した本件発明の課題を解決するものであるから、(3)アの技術常識を勘案したとしても、被覆電線の絶縁被覆層の種類及び導体と絶縁被覆層との組み合わせを特定しない本件発明1~7が、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないとはいえないから、「絶縁被覆層の種類及び導体と絶縁被覆層との組み合わせを特定しない」ことに基く申立人の主張は採用することができない。
エ サポート要件に関する申立人の主張(第2の理由)についてのまとめ
したがって、申立理由1(サポート要件)の(第2の理由)における申立人の主張は採用することができない。
(4)申立理由1(サポート要件)についてのまとめ
以上(2)、(3)のとおり、申立人の申立理由1(サポート要件)に関する(第1の理由)及び(第2の理由)の主張は、いずれも採用することができず、上記(1)のとおり、本件発明1~7については、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
2 申立理由2(実施可能要件)について
(1)物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである(実施可能要件を満たす)というためには、発明の詳細な説明には、当業者がその物を製造することができ、かつ、その物を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されている必要があるので、以下に検討する。
(2)本件発明1~7は、被覆電線及び端子付き電線に関するものである。
本件明細書等には、まず被覆電線を構成する導体に関して、組成及び組織(【0030】~【0038】)、表面状態(【0039】~【0048】)、断面積(【0049】、【0050】)、撚り合わせ状態(【0051】~【0055】)、形状(【0056】)、特性(【0057】、【0058】)の各事項について、具体的な説明がなされている。
また、被覆電線を構成する絶縁被覆層(【0059】~【0062】)、被覆電線の製造方法【0072】~【0081】についても、具体的な説明がなされている。
さらに、被覆電線とその端部に取り付けられた端子部からなる端子付き電線(【0064】~【0069】)とその製造方法(【0082】)についても、具体的な説明がなされている。
また、試験例(【0083】~【0112】、【表1】~【表3】)には、試料No.1-1~1-7として、Fe、Ti、Mg、Sn、Ag、Ni、In、Zn、Cr、Al、Pが本件特許の請求項1~7の規定を満たす組成の銅合金から構成された導体を用いて、請求項1~7に規定された構造及び特性を満たす被覆電線及びそれを用いた端子付き電線を製造しており、特に【0103】の記載によれば、中心素線の表面の油付着量が10μg/g以下である試料No.1-1~1-7は、中心素線の表面の油付着量が11μg/g以上である試料No.1-101~1-105に比べて座屈し難いことが示されている。
さらに、上記試験例に記載された以外の被覆電線及び端子付き電線についても、当業者であれば、本件明細書等の記載に基いて、本件特許の請求項1~7に規定される組成、構造及び特性を満たす被覆電線及び端子付き電線を、上記の製造方法を参照しつつ製造することができる。
したがって、当業者が、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基いて、本件発明1~7に係る被覆導線及び端子付き電線を製造し、使用することができるといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は本件発明1~7について、「本件発明の「油付着量」に係る「油」について、本件明細書等の発明の詳細な説明にはその種類や化学構造が具体的に示されておらず、当業者が本件発明1~7を実施して座屈し難い被覆電線を得るために多大な試行錯誤が必要である点で、発明の詳細な説明の記載が本件発明1~7を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」との旨を主張している。
(申立書の第2頁の「理由の要点」の欄の(2)、及び、第14頁の(ii)を参照。)
イ しかしながら、上記1(3)イにて検討したように、本件発明に係る中心素線の油付着量は、1(3)イ(ア)に示された特定の測定方法及び溶媒を使用して測定した値であると解するのが相当であり、また上記(2)のとおり、試験例には本件特許の請求項1~7に規定される組成、構造及び特性を満たし、座屈し難い被覆電線が製造できたことが記載されているから、発明の詳細な説明に油の種類や化学構造が記載されていなくても、本件発明を実施して座屈し難い被覆電線を得るために多大な試行錯誤が必要とはいえないので、申立人の主張は採用することができない。
(4)申立理由2(実施可能要件)についてのまとめ
以上(3)のとおりであるから、申立人の申立理由2(実施可能要件)に関する主張は採用することができず、上記(1)のとおり、本件発明1~7については、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおり、申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701030