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特許異議申立

2025-700680

舌筋トレーニング用食品および舌筋のトレーニング方法

審判番号
2025-700680
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-087338
登録番号
7611602
請求日
2025年07月02日
審決日
2025年08月27日
公報発行日
2025年09月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】tantore株式会社
  • 【権利者代理人】井川 浩文
  • 【異議申立人】渡邉 規雄
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 植前 充司
  • 審判官 中村 和正
分類
P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7611602号発明「舌筋トレーニング用食品および舌筋のトレーニング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7611602号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7611602号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月13日(優先権主張 平成30年3月14日)を国際出願日とする特願2020-506633号の一部を令和5年5月27日に新たな特許出願としたものであって、令和6年12月26日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、令和7年1月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月2日に特許異議申立人 渡邉 規雄(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で除溶させることで舌筋をトレーニングすることができる舌筋トレーニング用食品であって、水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状としたシート状食品によって構成され、該シート状食品は数十μmの肉厚を有し、かつ該シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されていることを特徴とする舌筋トレーニング用食品。 【請求項2】 前記水溶性材料は、澱粉、澱粉誘導体、餅米、米粉、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、フルセラリアガム、ジェランガム、グアーガム、カシアガム、タラガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、アゾトバクタービネランジーガム、ペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸ナトリウム、カードラン、大豆タンパク、ゼイン、カゼイン、プルランおよびセルロース誘導体の中から選択される1種以上である請求項1に記載の舌筋トレーニング用食品。 【請求項3】 前記徐溶性材料は、さらに、茶カテキン、過酸化尿素、乳酸菌、ビタミン類、コラーゲン、葉酸、酵素、タンパク質、αリノレン酸、プロテイン、アントシアニン、ポリフェノール、プラセンタ、グルコサミン、コンドロイチン、亜鉛、プロテオグリカン、マグネシウム、ウコンおよび食品甘味料のうち、少なくとも1種以上を含有するものである請求項1または2に記載の舌筋トレーニング用食品。 【請求項4】 前記シート状食品は、飴、餅、団子、キャンディ、チューイングガム、グミキャンディ、チューイングキャンディおよびオブラートの中から選択される食品として製造されるものである請求項1~3のいずれかに記載の舌筋トレーニング用食品。 【請求項5】 前記水溶性材料は澱粉であり、前記シート状食品はオブラートであり、肉厚を30μm~50μmの範囲内とするものである請求項1または2に記載の舌筋トレーニング用食品。 【請求項6】 前記シート状食品は、横長の矩形に形成されている請求項1~5のいずれかに記載の舌筋トレーニング用食品。 【請求項7】 請求項1~6のいずれかに記載の舌筋トレーニング食品を使用する舌筋のトレーニング方法であって、前記シート状食品の表面または裏面のうち突起を設けない側の面を上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先によって舐めることにより徐溶させることを特徴とする舌筋のトレーニング方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和7年7月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明1ないし4、6及び7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし4、6及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 甲第8号証において、デンプン及びセルロース誘導体を含有する構成においては、上あごに付着しにくい構成であることが示されている。 つまり、本件特許発明1において、構成要件D-1(水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品)等の徐溶性材料として、デンプン及びセルロース誘導体を含む場合、上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができる構成要件を満たさない構成を含むと解される。 本件特許発明1に関し、徐溶性材料において、どのような成分、それらの組み合わせ、及びそれらの含有量の場合に、上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるという構成要件を満たすのか、実験的な確認を要するまでもなく、合理的に推認できるような技術的説明を、本件特許発明の詳細な説明は何ら開示していない。 したがって、本件特許発明1は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 同様に、本件特許発明2ないし7も当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 5 申立理由5(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 甲第8号証において、デンプン及びセルロース誘導体を含有する構成においては、上あごに付着しにくい構成であることが示されている。 つまり、徐溶性材料として、デンプン及びセルロース誘導体を含む本件特許発明1においては、上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるという効果を奏しない構成を含むことが明らかである。 本件特許発明1に関し、上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるという効果が、水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品等の全範囲にまで拡張乃至一般化し得るものであるとは到底認められない。 したがって、構成要件D-1~D-3(水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状としたシート状食品によって構成され)の全ての範囲にまで、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるものではないから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 同様に、本件特許発明2ないし7も発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 6 申立理由6(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明1の「数十μm」の構成について、数値範囲の上限と下限が規定されておらず、その範囲は、不明確であると言わざるを得ない。そのため、範囲を曖昧にし得る表現がある結果、発明の範囲が不明確となる場合には該当する。 同様に、本件特許発明2ないし4、6及び7も発明の範囲が不明確である。 7 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2018/029671号 甲第2号証:「配合成分や溶解速度を自由設計 オリジナルの可食フィルム製品」、2017年7月3日、ツキオカフィルム製薬株式会社、URL:https://www.moonhill.jp/film/edible/ 甲第3号証:PITAS、2017年10月5日、大鵬薬品工業株式会社,URL:https://www.taiho.co.jp/chc/brand/pitas/ 甲第4号証:ピタスのどトローチ(ピーチ)12枚1個[指定医薬部外品])、2017年10月13日、アマゾンジャパン合同会社、URL:https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E9%B5%AC%E8%96%AC%E5%93%81%E5%B7%A5%E6%A5%AD-%E3%83%94%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%81%A9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81-12%E6%9E%9A%E5%85%A5%E3%82%8A-%E6%8C%87%E5%AE%9A%E5%8C%BB%E8%96%AC%E9%83%A8%E5%A4%96%E5%93%81/dp/B076FH35RN?th=1 甲第5号証:川野弘道他、棒付き飴を用いた新しい口腔機能リハビリテーション法、日本顎口腔機能学会雑誌、vol. 22、No. 1、日本顎口腔機能学会、2015年、p. 34-35 甲第6号証:武原格他、訓練法のまとめ(2014版)、日摂食嚥下リハ会誌18(1)、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、2014年、p. 55-89 甲第7号証:菊谷武他、介護予防のための口腔機能向上マニュアル、株式会社建帛社、2006年6月15日(第2刷)、p. 52-57 甲第8号証:特開2011-92068号公報 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第4 当審の判断 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)について (1)甲第1号証に記載された事項等 ア 甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、「ADHESIVE ORAL DISSOLVED FILMS IN MANAGING ORAL CARE」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲第1号証は外国語文献であるため、該当箇所の抄訳のみを示す。なお、抄訳は、特許異議申立書の記載をおおむね利用した。 ・「本発明の目的は、咀嚼又は噛むことを必要とせずに、口腔内に入れると、口腔状態を治療するために薬剤を放出するための粘膜接着性フィルムを提供することである。」([004]) ・「本発明のさらに別の目的は、1~8時間以内に溶解し、所望の活性薬剤の治療用量を放出する、口粘膜上に配置する接着フィルムを提供することである。」([006]) ・「本発明のさらなる目的は、強度と弾力性を有し、滑らかな表面を有する薄膜を提供することである。」([007]) ・「本発明の実施形態は、被験者の口腔粘膜組織に接着するように適合された溶解性フィルムを含み、このフィルムは、i)フィルム乾燥重量の35%~55%を構成する少なくとも3種の難消化性親水性ポリマーと、ii)フィルム乾燥重量の1%~35%を構成する、口腔状態を治療または予防するために8時間以内にフィルムから放出される活性剤とを含み、ここで、少なくとも3種のポリマーは、キサンタンガムとカルボキシメチルセルロース(CMC)の重量比が約1:1、および少なくとも1種の他のセルロース系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、キサンタンガムとCMCは、フィルム乾燥重量の15%~25%を構成する。他のセルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。・・・本発明のフィルムは、・・・ビタミンおよび他の栄養補助食品からなる群から選択される薬剤などの追加の活性剤を含んでもよい。本発明のフィルムは、平滑な表面を有し得る。・・・フィルムの厚さは最大0.8mmであってもよい。いくつかの実施形態によれば、フィルムの厚さは最大0.3mm、例えば最大280μm、例えば最大270μm、例えば最大260μm、例えば最大250μm、例えば最大240μm、例えば最大230μm、例えば最大220μm、例えば最大210μmである。本発明のフィルムは、最大200μm、例えば約200μm、または最大190μmの厚さを有し得る。」([0010]) ・「本発明のフィルムは、口内乾燥症または口腔乾燥症に影響を及ぼす薬剤、例えばココナッツオイル、植物抽出物・・を放出するように調整されている。」([0041]) ・「本発明の口腔フィルムは、口腔粘膜または口腔内への活性薬剤の放出を可能にする。本フィルムは、頬側、口蓋側、舌下側、または歯肉側に貼付することができる。本口腔フィルムは、任意の形状(例えば、正方形、長方形、円形、楕円形など)にすることができる。」([0042]) ・「被験者の口腔粘膜組織に付着するように適合された溶解性フィルムであって、前記フィルムは、 i)フィルム乾燥重量の35%~55%を構成する少なくとも3種の難消化性親水性ポリマー、および任意に、 ii)フィルム乾燥重量の0.01%~35%の活性剤を含み、前記少なくとも3種のポリマーは、キサンタンガムとカルボキシメチルセルロース(CMC)を1:0.8~1.6の重量比で含み、かつ少なくとも1種の他のセルロース系ポリマーを含む。」([請求項1]) イ 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証に記載された事項を、特に請求項1に関して整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、順に「甲1発明」「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「被験者の口腔粘膜組織に付着するように適合された溶解性フィルムであって、前記フィルムは、 i)フィルム乾燥重量の35%~55%を構成する少なくとも3種の難消化性親水性ポリマー、および、 ii)フィルム乾燥重量の0.01%~35%の活性剤を含み、前記少なくとも3種のポリマーは、キサンタンガムとカルボキシメチルセルロース(CMC)を1:0.8~1.6の重量比で含み、かつ少なくとも1種の他のセルロース系ポリマーを含む、溶解性フィルム。」 <甲1方法発明> 「甲1発明を使用する方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「溶解性フィルム」は、「3種の難消化性親水性ポリマー」及び「活性剤」を含むものであり、当該「活性剤」は、甲第1号証の[010]より、口腔状態を治療または予防するために8時間以内にフィルムから放出されるものであるから、甲1発明における「溶解性フィルム」は、本件特許発明1における「水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品」に相当する。 また、甲1発明における「溶解性フィルム」は、「被験者の口腔粘膜組織に付着するように適合された」ものであり、甲第1号証の[010]より、平滑な表面を有するものであるから、本件特許発明1における「該シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されている」という特定事項を満たす。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状としたシート状食品によって構成され、かつ該シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されていることを特徴とする食品。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1は、「上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で除溶させることで舌筋をトレーニングすることができる舌筋トレーニング用食品」とあるのに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点1-2> 本件特許発明1は、「シート状食品は数十μmの肉厚を有し」とあるのに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1-1について検討する。 甲1発明は、「咀嚼又は噛むことを必要とせずに、口腔内に入れると、口腔状態を治療するために薬剤を放出するため」([004])のものであって、「舌筋トレーニング用」ではない。 したがって、相違点1-1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1発明ではない。 また、甲第1号証及び他の証拠には、甲1発明において相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「必要な器具を要することなく、空いた時間を利用してトレーニングを補助することができる」(発明の詳細な説明の【0033】)という効果は、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明は、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができる徐溶性フィルムであると認められ、用途・効果の点において、本件特許発明1と区別することができない」と主張するが、甲1発明は、上記したとおり、「咀嚼又は噛むことを必要とせずに、口腔内に入れると、口腔状態を治療するために薬剤を放出するため」([004])のものであって、「舌筋トレーニング用」ではないから、特許異議申立人が主張する「舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができる徐溶性フィルム」であるとは認められない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし4及び6について 本件特許発明2ないし4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2、3及び6は、甲1発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし4及び6は、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 本件特許発明7と甲1方法発明を対比すると、上記(2)と同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲1方法発明であるとはいえないし、甲1方法発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由1についてのむすび 上記(2)ないし(4)のとおり、本件特許発明1ないし3、6及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし4、6及び7は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)について (1)甲第2号証に記載された事項等 ア 甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、「配合成分や溶解速度を自由設計 オリジナルの可食フィルム製品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001426866000001.jpg] 」 イ 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証に記載された事項を整理すると、甲第2号証には次の発明(以下、順に「甲2発明」「甲2方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「ゼラチン、プルラン、デンプン、アルギン酸、カラギーナン、寒天を含み、膜厚が10~300μmであり、カテキン、ポリフェノール、コラーゲンが配合され、口腔内で素早く溶けるフィルム状食品。」 <甲2方法発明> 「甲2発明を使用する方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「フィルム状食品」は、「ゼラチン、プルラン、デンプン、アルギン酸、カラギーナン、寒天」を含む「口腔内で素早く溶ける」ものであるから、本件特許発明1における「水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品」「によって構成され」た「食品」という特定事項を満たす。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状としたシート状食品によって構成されていることを特徴とする食品。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明1は、「上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で除溶させることで舌筋をトレーニングすることができる舌筋トレーニング用食品」とあるのに対して、甲2発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点2-2> 本件特許発明1は、「シート状食品は数十μmの肉厚を有し」とあるのに対して、甲2発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点2-3> 本件特許発明1は、「シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されている」とあるのに対して、甲2発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点2-1について検討する。 甲2発明は、その用途が口中清涼食品、サプリメント、オーラルケア食品(「フィルムの用途」)であって、「舌筋トレーニング用」ではない。 そして、甲第2号証及び他の証拠には、甲2発明において相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲2発明において、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「必要な器具を要することなく、空いた時間を利用してトレーニングを補助することができる」(発明の詳細な説明の【0033】)という効果は、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲2発明は、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるフィルムであると認められ、用途・効果の点において、本件特許発明1と区別することができない」と主張するが、甲2発明は、上記したとおり、その用途が口中清涼食品、サプリメント、オーラルケア食品(「フィルムの用途」)であって、「舌筋トレーニング用」ではないから、特許異議申立人が主張する「舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるフィルム」であるとは認められない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし6について 本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 本件特許発明7と甲2方法発明を対比すると、上記(2)と同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲2方法発明であるとはいえないし、甲2方法発明並びに甲第2号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由2についてのむすび 上記(2)ないし(4)のとおり、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性)について (1)甲第3号証に記載された事項等 ア 甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、「PITAS」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001426866000002.jpg] 」 ・「 [図:0001426866000003.jpg] 」 イ 甲第3号証に記載された発明 甲第3号証に記載された事項を整理すると、甲第3号証には次の発明(以下、順に「甲3発明」「甲3方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3発明> 「直径1.5cmの円形薬剤フィルムが上あごにピッタリ貼り付き、有効成分がじんわり溶けだす、ピタスのどトローチ。」 <甲3方法発明> 「甲3発明を使用する方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明における「のどトローチ」は、「円形薬剤フィルム」で「有効成分がじんわり溶けだす」ものであるから、本件特許発明1における「水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品」に相当する。 また、甲3発明における「のどトローチ」は、「上あごにピッタリ貼り付」く「円形薬剤フィルム」であり、突起を設けない面によって構成されていると認められるから、本件特許発明1における「該シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されている」という特定事項を満たす。 すると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させる食品であって、水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料もしくは水溶性材料を主原料とする徐溶性材料をシート状とするシート状食品、所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなるシート状食品、または前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状としたシート状食品によって構成され、かつ該シート状食品の表面または裏面のうち少なくとも一方が、口腔内表面に付着させるために、突起を設けない面によって構成されていることを特徴とする食品。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3-1> 本件特許発明1は、「舌先で除溶させることで舌筋をトレーニングすることができる舌筋トレーニング用食品」とあるのに対して、甲3発明は、そのようには特定されていない点。 <相違点3-2> 本件特許発明1は、「シート状食品は数十μmの肉厚を有し」とあるのに対して、甲3発明は、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点3-1について検討する。 甲3発明は、口腔内の殺菌・消毒等を効能・効果とするのどトローチ(【効能・効果】)であって、「舌筋トレーニング用」ではない。 そして、甲第3号証及び他の証拠には、甲3発明において相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲3発明において、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「必要な器具を要することなく、空いた時間を利用してトレーニングを補助することができる」(発明の詳細な説明の【0033】)という効果は、甲3発明並びに甲第3号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲3発明は、舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるフィルムであると認められ、用途・効果の点において、本件特許発明1と区別することができない」と主張するが、甲3発明は、上記したとおり、口腔内の殺菌・消毒等を効能・効果とするのどトローチ(【効能・効果】)であって、「舌筋トレーニング用」ではないから、特許異議申立人が主張する「舌先で徐溶させることで舌筋をトレーニングすることができるフィルム」であるとは認められない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明並びに甲第3号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし4及び6について 本件特許発明2ないし4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明並びに甲第3号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明7について 本件特許発明7と甲3方法発明を対比すると、上記(2)と同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲3方法発明であるとはいえないし、甲3方法発明並びに甲第3号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由3についてのむすび 上記(2)ないし(4)のとおり、本件特許発明1ないし4、6及び7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由4(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件特許発明1ないし6は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明7は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)実施可能要件の判断 発明の詳細な説明の【0009】ないし【0017】、【0019】、【0022】、【0029】、【0030】、【0037】ないし【0040】、【0044】及び【0045】には、本件特許発明1ないし7の各発明特定事項について、その技術的意義を含め具体的に記載されており、発明の詳細な説明の【0068】ないし【0074】には、本件特許発明1ないし7を満たす実施例についても具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし6を生産し、使用することができる程度の記載があり、本件特許発明7を使用することができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1ないし7に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 なお、特許異議申立人は、上記第3 4のとおり主張するが、本件特許発明1ないし7が実施可能要件を満たすか否かは、上記(1)の判断基準に従って(2)のとおり判断されるものであり、また、甲第8号証は「本発明の可食性フィルムは、口腔内において、上あごに付着しにくく舌に付着しやい」と示すのみで、実施し得ないとする具体的証拠を提示するものでもないから、特許異議申立人の当該主張は上記判断に何ら影響しない。 (3)申立理由4(実施可能要件)についてのまとめ 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。 5 申立理由5(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 発明の詳細な説明の【0008】によると、本件特許発明1ないし7の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「場所や時間を選ばず舌筋をトレーニングすることができる食品および舌筋のトレーニング方法を提供すること」である。 そして、発明の詳細な説明の【0009】ないし【0017】、【0019】、【0022】、【0029】、【0030】、【0037】ないし【0040】、【0044】及び【0045】には、本件特許発明1ないし7に対応する記載がある。 さらに、発明の詳細な説明の【0068】ないし【0074】には本件特許発明の実施形態について説明があり、【0033】及び【0034】には本件特許発明による発明の効果が記載されている。 そうすると、当業者は、「上顎の歯列よりも奥側の口腔内表面に付着させ、舌先で除溶させることで舌筋をトレーニングすることができる舌筋トレーニング用食品」を「水溶性材料のみを原料とする徐溶性材料」もしくは「水溶性材料を主原料とする徐溶性材料」を「シート状」とするシート状食品が、「所望の食品材料によるシート状の基材層の表面に前記徐溶性材料を積層もしくは担持させてなる」「シート状」の食品、または、「前記徐溶性材料と同種もしくは異種の徐溶性材料もしくはその他の食品材料が前記徐溶性材料に積層されてシート状とした」「シート状」の食品によって構成されている、との特定事項を満たすことで、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 そして、本件特許発明1ないし6及び7は、上記の発明の課題を解決できると認識できる全ての特定事項を有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。 したがって、本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、特許異議申立人は、上記第3 5のとおり主張するが、本件特許発明1ないし7がサポート要件を満たすことは上記検討のとおりであり、また、発明の課題を解決し得ないとする具体的証拠を提示するものでもないから、特許異議申立人の当該主張は上記判断に何ら影響しない。 (3)申立理由5(サポート要件)についてのむすび 本件特許発明1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。 6 申立理由6(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 本件特許の請求項1ないし4、6及び7の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。 したがって、本件特許発明1ないし4、6及び7に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし4、6及び7は明確である。 なお、特許異議申立人は、上記第3 6のとおり主張するが、発明の詳細な説明の【0045】には「全体を徐溶によって食することができるシート状食品の場合には、上述のように、基本的には数十μmの肉厚とすることが望ましい」と記載されているから、本件特許発明1の「数十μmの肉厚」は、「全体を徐溶によって食することができる」との作用を奏する十の位を用いる数値範囲と理解することができ、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 (3)申立理由6(明確性要件)についてのまとめ 本件特許の請求項1ないし4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700680

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