特許異議申立
2025-700340
鉄骨部材の耐火被覆構造
- 審判番号
- 2025-700340
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-198881
- 登録番号
- 7565904
- 請求日
- 2025年03月25日
- 審決日
- 2025年06月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社竹中工務店
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】渡邉 規雄
- 審判長/審判官
- 審判長 澤田 真治
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.113-Y (E04B) / P1651.121-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7565904号発明「鉄骨部材の耐火被覆構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7565904号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7565904号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和3年12月7日に特許出願され、令和6年10月3日にその特許権の設定登録がされ、同月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年3月25日に特許異議申立人 渡邉 規雄(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7565904号の請求項1~8に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材と、
隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、前記鉄骨部材に取り付けられ、隣り合う前記木質耐火被覆材を支持するコーナー下地材と、
前記鉄骨部材から外側へ突出するとともに、厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケットと、
を備え、
前記コーナー下地材は、前記第一ブラケットに重ねられた状態でボルト接合される第二ブラケットを有する、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項2】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材と、
隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、前記鉄骨部材に取り付けられ、隣り合う前記木質耐火被覆材を支持するコーナー下地材と、
前記鉄骨部材から突出する第一ブラケットと、
を備え、
前記コーナー下地材は、前記第一ブラケットに重ねられた状態でボルト接合される第二ブラケットを有し、
前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項3】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材と、
隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、隣り合う前記木質耐火被覆材を支持するコーナー下地材と、
前記鉄骨部材から外側へ突出する第一ブラケットと、
を備え、
前記コーナー下地材は、前記第一ブラケットに対して前記鉄骨部材の材軸方向に重ねられた状態でボルト接合される第二ブラケットを有し、
前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項4】
前記木質耐火被覆材の内面に予め取り付けられた金属板を備え、
前記木質耐火被覆材及び前記金属板は、前記フランジ部にビスによって取り付けられる、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項5】
隣り合う前記木質耐火被覆材の前記金属板同士は、一体化されていない、
請求項4に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項6】
前記鉄骨部材は、鋼管、又はコンクリートが充填された鋼管とされ、柱を構成する、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項7】
前記コーナー下地材は、前記隅部に沿った断面L字形状に形成される、
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項8】
前記木質耐火被覆材の外面を被覆する化粧材を備える、
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。」
第3 申立理由の概要
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1(新規性及び進歩性)
(1)本件発明1~3は、甲第1号証記載の発明と実質的に同一である。
(2)本件発明1は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第2号証、甲第3号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2、3は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第2~4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第5号証、甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第5号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明6は、甲第1号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明7は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件発明8は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明に係る特許は、特許法29条1項または2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当するから、取り消されるべきものである。
第4 証拠について
1 証拠一覧
申立人が提出した申立書に添付された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:実願昭63-111952号
(実開平2-34635号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開2003-64870号公報
甲第3号証:国際公開第2020/246025号
甲第4号証:特開2020-105811号公報
甲第5号証:特開2021-11743号公報
甲第6号証:特開2012-26192号公報
(以下、各甲号証をその番号により「甲1」等と呼ぶことがある。)
2 各証拠の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
(ア)「[産業上の利用分野]
この考案は柱の外周を被うボードを取付けるスタッドの補強金具に関するものである。
[従来の技術]
ビル,マンション等の鉄骨による建築物には、構造物としてH型鋼の柱部材を使用しているが、これが部屋空間に露出する場合にあっては全体を耐火ボードで被覆する必要がある。すなわち、吹付けによる耐火被覆では部屋内の化粧にならない。従来は第6図に示すように、H型鋼柱1と、このH型鋼柱1より一定間隔離れた位置の床および天井スラブに固定された断面U字状のランナー2と、このランナー2の両端に上下端が固定された断面口字状のスタッド3と、ネジ6により上記スタッド3の外面にH型鋼柱1を囲むように取付けられるボード4と、このボード4が取付けられたコーナー部に貼着されるコーナービード5とから構成される。
上記構成において、スタッド3は、H型鋼柱1の平行板1aの両側端部より一定間隔離れた位置に、上記H型鋼柱1の垂直方向に延長する如く設けられている。すなわち、H型鋼柱1にスタッド3を接触させるようにすると、人間の力が加わるごとにスタッド3がたわんで金属同士が当たる音が発生し、またH型鋼柱1の精度不良をカバーするにはH型鋼柱1とスタッド3との間に空間が必要である。
[考案が解決しようとする課題]
従来の柱囲い構造は以上のように構成されているので、板厚が0.5~0.6mm程度の通常のスタッドではどうしても壁の強度が不足するので、形状の大きい、しかも板厚を特に厚くした高価なスタッドを使用せねばならないなどの問題点があった。また、スタッドの中間位置に補強金具を用いて、スタッドの変形を防止するには、次の問題点かあった。すなわち、上下ランナーの取付け位置と柱の精度との関係で、柱とスタッドとの距離は補強金具の取付け場所によって全て異なるため、何種類もの金具を何回も溶接する高度な技術と大変な施工手間を要していた。また、0.5~0.6mm程度の薄い鉄板のスタッドに対する無理な溶接を行なわざるを得なかった。
この考案は上記のような問題点を解消するためになされたもので、スタッドの変形を防止するとともに、柱とスタッドとの距離に応じて簡単にかつ迅速に前後左右の何れにも調節が行なえる柱囲い用スタッド補強金具を得ることを目的とする。」(明細書2頁2行~4頁8行)
(イ)「[実施例]
以下、この考案の一実施例である柱囲い用スタッド補強金具を第1図及び第2図を用いて説明する。なお、第6図と同じものは同一の符合を用いて説明を省酩する。図において、20は補強用金具であり、固定片7と接続片8および取付片9とから構成されている。上記固定片7は、ほぼ断面C字状に成形され、H型鋼柱1の平行板1aの両端部の外面側に外方向に延長する如く溶接または接着して取付けられる。上記接続片8は、L字状に成形され、上記固定片7に外側より嵌入され固定片7方向に進退する固定用ねじ8aが螺着された嵌入部8bと、この嵌入部8bの一端側より直角方向に突出するほぼ断面C字状の取付部8cとからなる。上記取付片9は、上記接続片8の取付部8cに嵌入されかつ取付部8c方向に進退する固定用ねじ9aが螺着された嵌入部9bと、この嵌入部9bの一端側から直角に折曲されほぼ断面U字状のスタッド10を固定する固定部9cとからなる。上記取付片9の固定部9cは、嵌入部9bの反対方向に互いに対向する如く折曲されたT字状の係止部9d,9dを有し、この係止部9d,9dが上記スタッド10の開口部10aに嵌合する。
上記構成において、固定片7,接続片8,取付片9,がセットされた状態で、取付片9の係止部9d,9dをスタッド10の所定位置の開口部10aに押込む。次にこのスタッド10を床および天井スラブの所定位置に取付け済の断面U字状のランナー2,2の中にはめ込んで垂直度と正しい位置を確認する。次に固定片7をH型鋼柱1の平行板1aの外側端部に溶接または接着剤で取付ける。このとき、接続片8の固定用押しねじ8aと取付片9の固定用押しねじ9aはゆるめられた状態であり、接続片8および取付片9は夫々前後左右に自由に動いてくれる。最後に固定用押しねじ8a,9aをしめつければ、スタッド10は自動的に垂直状態で正しい位置に補強周定される。
なお、本実施例においては、取付片9の固定部9cに係止部9d,9dを設け、この係止部9d,9dによりスタッド10を固定するとしたが、これに限定されず、第3図に示すような取付片IIとしてもよい。この取付片11は、固定部11cにネジ12が螺入されるネジ穴11d,11dを有しており、このネジ穴11d,11dを介してスタッド10にネジ12を螺着して、上記スタッド10を補強する。
また、本実施例においては、柱をH型鋼柱1からなるとしたが、第4図および第5図に示すように、断面口字状の柱30においても上記補強金具20を適用することができる。」(明細書5頁15行~8頁5行)
(ウ)第1図
[図:0001425797000001.jpg]
(エ)第6図
[図:0001425797000002.jpg]
(オ)図面から看取できる事項
a 上記(イ)の記載を踏まえると、第1図からは、固定片7の幅方向をH型鋼柱1の材軸方向として配置されることが看取される。
b 上記(ア)の記載を踏まえると、第6図からは、H型鋼柱1を囲むように取付けられる4枚のボード4は、隣り合うボード4の端部が突き当てられて入隅が形成されており、入隅に設けられた断面口字状のスタッド3の隣り合う2辺に隣り合うボード4の端部がネジ6によりそれぞれ取り付けられることが看取される。
イ 甲1発明
上記ア(イ)において、甲1の実施例が第6図の従来例を参照し、「第6図と同じものは同一の符合を用いて説明を省酩」しているものである。そして、スタッドが、従来のスタッド3は断面口字状であるのに対し、実施例のスタッド10は開口部10aが形成されたほぼ断面U字状であることでは相違するものの、「スタッド」は「柱の外周を被うボードを取付ける」ものである(上記ア(ア))ことから、入隅に設けられたスタッドの隣り合う2辺に隣り合うボード4の端部がネジ6によりそれぞれ取り付けられる点については従来のスタッド3も実施例のスタッド10も同様であると認められる。
そうすると、上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「H型鋼柱1と、このH型鋼柱1より一定間隔離れた位置の床および天井スラブに固定された断面U字状のランナー2と、このランナー2の両端に上下端が固定されたスタッドと、ネジ6により上記スタッドの外面にH型鋼柱1を囲むように取付けられるボード4と、このボード4が取付けられたコーナー部に貼着されるコーナービード5とから構成される、柱部材の全体を耐火ボードで被覆する柱囲い構造の、スタッドの中間位置に補強金具を用いて、スタッドの変形を防止する、柱囲い構造であって、
H型鋼柱1を囲むように取付けられる4枚のボード4は、隣り合うボード4の端部が突き当てられて入隅が形成されており、入隅に設けられたスタッドの隣り合う2辺に隣り合うボード4の端部がネジ6によりそれぞれ取り付けられ、
補強用金具20は、固定片7と接続片8および取付片9とから構成されており、
上記固定片7は、ほぼ断面C字状に成形され、H型鋼柱1の平行板1aの両端部の外面側に外方向に延長する如く溶接または接着して取付けられ、
固定片7の幅方向をH型鋼柱1の材軸方向として配置され、
上記接続片8は、L字状に成形され、上記固定片7に外側より嵌入され固定片7方向に進退する固定用ねじ8aが螺着された嵌入部8bと、この嵌入部8bの一端側より直角方向に突出するほぼ断面C字状の取付部8cとからなり、
上記取付片9は、上記接続片8の取付部8cに嵌入されかつ取付部8c方向に進退する固定用ねじ9aが螺着された嵌入部9bと、この嵌入部9bの一端側から直角に折曲されほぼ断面U字状のスタッド10を固定する固定部9cとからなり、上記取付片9の固定部9cは、嵌入部9bの反対方向に互いに対向する如く折曲されたT字状の係止部9d,9dを有し、この係止部9d,9dが上記スタッド10の開口部10aに嵌合し、
固定片7,接続片8,取付片9,がセットされた状態で、取付片9の係止部9d,9dをスタッド10の所定位置の開口部10aに押込み、このスタッド10を床および天井スラブの所定位置に取付け済の断面U字状のランナー2,2の中にはめ込んで垂直度と正しい位置を確認し、固定片7をH型鋼柱1の平行板1aの外側端部に溶接または接着剤で取付け、このとき、接続片8の固定用押しねじ8aと取付片9の固定用押しねじ9aはゆるめられた状態であり、接続片8および取付片9は夫々前後左右に自由に動いてくれ、最後に固定用押しねじ8a,9aをしめつければ、スタッド10は自動的に垂直状態で正しい位置に補強周定される、柱囲い構造。」
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0008】
【発明の実施の形態】次に本発明のコンクリート型枠用の隅壁組立工法とその金具を、以下図面に基づいて詳述する。
【0009】図1は、本発明のコンクリート型枠用隅壁組立金具の一実施例を示す分解平面図、図2は、同コンクリート型枠用隅壁組立金具の斜視図、図3は同コンクリート型枠用隅壁組立工法で組立てた一実施例を示す平面図である。
【0010】先ず本発明のコンクリート型枠用の隅壁組立金具を説明する。本発明のコンクリート型枠用の組立金具1は、木質板型枠2a,2bを直交して敷設するための隅壁用のものである。図3の如く、木質板型枠2a,2bの縁部には、予め規定寸法の桟木3a,3bを取着しており、4a,4bは最後に敷設する角パイプからなる端太材である。
【0011】金具1は、フレーム5とスライド金具6a,6bとボルト7,7,7,7と当て金8と楔9,109とからなっている。但し図1では、ボルトをスライド金具6a,6bに付けた状態を示し、当て金は省略した。フレーム5は、長方形の穴10の周りに、1コーナー11が開放された略ロ字形のプレート状に形成されており、開放コーナー11に対角する外方の隅コーナー12は、延出して把手13を有する形状になっている。本実施例の場合フレーム5は、4mm厚の鉄板を使用しているが、フレーム5の外周輪郭線は、全て5mm厚の下向きの折曲鍔14を形成して補強している。
【0012】フレーム5の開放コーナー11は、両端の垂直面部15aと水平面部15bに、丸孔16,16と16,16を並設している。この丸孔16,16,16,16はスライド金具6a,6bを覆装して取り付ける際に使用するためのものである。
【0013】外方の隅コーナー12に延出した把手13には、楔9を挿入するための楔孔17を穿設している。楔9は平たい三角形状で、細い先端の方から打ち込まれる。
【0014】スライド金具6a,6bは、フレーム5を上下から挟装しうるように、二重に折り返えされたものからなり、二重に折り返えされた先端は、上下に延出させて折曲鍔114,114,114,114を有している。この折返両片106a,106a,106b,106bの両方には、丸孔16,16と16,16に対応してスライドしうる長孔116,116,116,116と116,116,116,116を並設している。
【0015】ボルト7は、本実施例の場合には、長さが4cm程度のものを使用する。一方当て金8は、直交させた型枠2a,2bを外側より支持する外装材である端太材4a,4bに当接させて、楔を打ち込みうるようにするものであるから、図2の如き縦長の直角形状で、上下面は折曲鍔214を形成している。
【0016】次に本発明のコンクリート型枠用の隅壁組立工法を説明する。図3において、コーナーに木質板型枠2a,2bを直交させて配置するが、型枠2a,2bの縁部には予め規定寸法の桟木3a,3bが取着されている。先ずフレーム5を、図3に示すように、開放コーナー11を内側(図3では左下)に、隅コーナー12を外側(図3では右上)に、長方形穴10が縦長になるように配置する。
【0017】水平型枠2aは、桟木3aを奥の方(図3では上の方)に向けて、長方形穴10の奥の方に入れる。桟木3aは、長方形穴10の短辺の形状と、垂直面15aの長さ(図1)とに合致させている(入るよう桟木3aは若干小さめにしている)ので、図3のようにセットした水平型枠2aの外周縁は、垂直面15aの奥の端面と一致する。次に、垂直型枠2bを、桟木3bが外側の方(図3では右の方)に向けて、水平型枠2aの内面と水平面15b(図1)との間の、長方形穴10に入れる。桟木3bは、桟木3aと同一形状で、長方形穴10の長辺の残り寸法と水平面15bの長さ(図1)とに合致させている(入るよう桟木3bは若干小さめにしている)ので、垂直型枠2bは図3のように水平型枠2aと直交して配置される。
【0018】この状態で、水平型枠2aと垂直型枠2bを固定する。両桟木3a,3bは、フレーム5の長方形穴10内で、スライド金具6a,6bを使用して固定する。スライド金具6a,6bの折曲鍔114,114,114,114の表面には、突設した爪18,18,18,18,18,18,18,18(図1)を付設しているので、爪18,18,18,18,18,18,18,18が桟木3a,3bの表面に食い込んで当接させることができ、図1の丸孔16,16,16,16と図2の長孔116,116,116,116,116,116,116,116に挿通したボルト7,7,7,7で締め付ける。」
イ 甲2発明
上記アから、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「木質板型枠2a,2bを直交して敷設するための隅壁用のコンクリート型枠用の組立金具1であって、
フレーム5とスライド金具6a,6bとボルト7と当て金8と楔9,109とからなっており、
フレーム5は、長方形の穴10の周りに、1コーナー11が開放された略ロ字形のプレート状に形成されており、開放コーナー11に対角する外方の隅コーナー12は、延出して把手13を有する形状になっており、
フレーム5の開放コーナー11は、両端の垂直面部15aと水平面部15bに、スライド金具6a,6bを覆装して取り付ける際に使用するための丸孔16を並設しており、
スライド金具6a,6bは、フレーム5を上下から挟装しうるように、二重に折り返えされたものからなり、二重に折り返えされた先端は、上下に延出させて折曲鍔114を有し、この折返両片106a,106bの両方には、丸孔16に対応してスライドしうる長孔116を並設しており、
コンクリート型枠用の隅壁組立において、型枠2a,2bの縁部には予め規定寸法の桟木3a,3bが取着されており、フレーム5を、開放コーナー11を内側に、長方形穴10が縦長になるように配置し、
水平型枠2aは、桟木3aを奥の方に向けて、長方形穴10の奥の方に入れ、垂直型枠2bを、桟木3bが外側の方に向けて、水平型枠2aの内面と水平面15bとの間の、長方形穴10に入れ、
この状態で、水平型枠2aと垂直型枠2bを固定するにあたり
フレーム5の長方形穴10内で、スライド金具6a,6bの折曲鍔114を桟木3a,3bの表面に当接させ、丸孔16と長孔116に挿通したボルト7で締め付ける、
金具1。」
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、エレベーターのガイドレールを昇降路の壁面に固定するガイドレール固定装置に関する。」
(イ)「[0014] また、乗りかご1の上部に一端を連結された主索3は、昇降路上部の機械室内に配置された巻上機4に巻き掛けてから図示していない釣合おもりに他端が連結されており、乗りかご1の下部に連結された釣合ロープ5は、釣合ロープ張り6に巻き掛けた後に釣合おもりの下端部に連結されている。
[0015] 本実施例のガイドレール固定装置7は、昇降路壁面11に固定される壁側ブラケット9と、ガイドレール2A,2Bを固定するレール側ブラケット10と、両ブラケットを結合する軸状部材21を組み合わせたものである。以下、本実施例のガイドレール固定装置7の詳細を説明する。
[0016] 図2Aは、ガイドレール2Aを昇降路壁面11に固定した状態のガイドレール固定装置7の平面図である。また、図2Bは、壁側ブラケット9を単独で示す平面図であり、図2Cは、レール側ブラケット10を単独で示す平面図である。
[0017] 壁側ブラケット9は、図2A、図2Bに示すように、昇降路壁面11に沿って垂直方向に折り曲げられた垂直部9vと、この垂直部9vに対してほぼ水平方向に折り曲げられた水平部9hを有する、側方から見ると略L字状の金具である。この壁側ブラケット9は、水平部9hをほぼ水平にした状態で、昇降路壁面11に埋め込まれたアンカーボルト(図示せず)を用いて垂直部9vが昇降路壁面11に固定される。以下の説明では、水平部9hが配置された水平面上で、昇降路壁面11とガイドレール2Aを結ぶ方向をX方向とし、同水平面上で、X方向と直交する方向をY方向としている。また、図2Bに示すように、壁側ブラケット9の水平部9hの右側には、Y方向に延びた第一長孔14Aが形成されている。
[0018] これに対し、レール側ブラケット10は、図2A、図2Cに示すように、ガイドレール2Aの軸方向に折り曲げられた垂直部10vと、壁側ブラケット9の水平部9h上に搭載されることになる水平部10hを有する、側方から見ると略L字状の金具である。また、図2Cに示すように、レール側ブラケット10の水平部10hの右側には、X方向に延びた第二長孔15Aが形成されている。」
イ 甲3発明
上記アから、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明)
「エレベーターのガイドレールを昇降路の壁面に固定するガイドレール固定装置であって、
昇降路壁面11に固定される壁側ブラケット9と、ガイドレール2A,2Bを固定するレール側ブラケット10と、両ブラケットを結合する軸状部材21を組み合わせたものであり、
壁側ブラケット9は、昇降路壁面11に沿って垂直方向に折り曲げられた垂直部9vと、この垂直部9vに対してほぼ水平方向に折り曲げられた水平部9hを有する、側方から見ると略L字状の金具であり、水平部9hをほぼ水平にした状態で、昇降路壁面11に埋め込まれたアンカーボルトを用いて垂直部9vが昇降路壁面11に固定され、水平部9hが配置された水平面上で、昇降路壁面11とガイドレール2Aを結ぶ方向をX方向とし、同水平面上で、X方向と直交する方向をY方向とし、壁側ブラケット9の水平部9hの右側には、Y方向に延びた第一長孔14Aが形成されており、
レール側ブラケット10は、ガイドレール2Aの軸方向に折り曲げられた垂直部10vと、壁側ブラケット9の水平部9h上に搭載されることになる水平部10hを有する、側方から見ると略L字状の金具であり、レール側ブラケット10の水平部10hの右側には、X方向に延びた第二長孔15Aが形成されている、
ガイドレール固定装置。」
(4)甲4
ア 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
建物の出隅柱と、二枚の面材が一体とされている断面形状がL型のコーナー面材とを繋ぐ、コーナーフレームであって、
前記出隅柱と前記コーナー面材を面的に繋ぐ水平片と、
前記水平片に対して垂直に延出し、前記二枚の面材に対して直接的もしくは間接的に固定される第一固定片と、を有し、
前記水平片は、前記出隅柱の断面形状の隅角部と相補的な形状の切欠きを有していることを特徴とする、コーナーフレーム。
【請求項2】
前記切欠きに沿って前記水平片に対して垂直に延出し、前記出隅柱に固定される第二固定片をさらに有し、
前記第二固定片において、前記出隅柱と直接的もしくは間接的にボルト接合されるボルトが挿通されるボルト孔が開設されていることを特徴とする、請求項1に記載のコーナーフレーム。
・・・
【請求項4】
前記コーナー面材と、
前記コーナー面材の長手方向の頂部に取り付けられているとともに、前記出隅柱の柱頭に取り付けられる、請求項2に記載のコーナーフレームからなる柱頭コーナーフレームと、
前記コーナー面材の長手方向の途中位置に取り付けられているとともに、前記出隅柱の途中位置に当接する、請求項1に記載のコーナーフレームからなる中間コーナーフレームと、
前記コーナー面材の長手方向の底部に取り付けられているとともに、前記出隅柱の柱脚に取り付けられる、請求項3に記載のコーナーフレームからなる柱脚コーナーフレームと、を有することを特徴とする、コーナーカバー。
【請求項5】
前記コーナー面材の背面に、断面形状がL型の下地鉄板が取り付けられており、
前記下地鉄板に対して、前記柱頭コーナーフレームと、前記中間コーナーフレームと、前記柱脚コーナーフレームが取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載のコーナーカバー。
【請求項6】
前記出隅柱と、
前記出隅柱の柱頭に取り付けられ、ボルト孔を有している柱頭被取り付け片と、
前記出隅柱の柱脚に取り付けられ、係合溝を有している柱脚被取り付け片と、
請求項4又は5に記載のコーナーカバーと、を有し、
前記柱脚被取り付け片の前記係合溝に対して、前記第三固定片の前記係合突起が係合され、
前記第二固定片と前記柱頭被取り付け片の双方の前記ボルト孔にボルトが挿通されてボルト固定されていることを特徴とする、出隅柱とコーナーカバーの取り付け構造。
【請求項7】
前記柱脚コーナーフレームの有する第三固定片において、前記コーナーカバーの平面内における二方向の位置調整を自在とする位置調整用ボルトがスライド自在に取り付けられていることを特徴とする、請求項6に記載の出隅柱とコーナーカバーの取り付け構造。」
(イ)「【0020】
また、本発明による出隅柱とコーナーカバーの取り付け構造の他の態様は、前記柱脚コーナーフレームの有する第三固定片において、前記コーナーカバーの平面内における二方向の位置調整を自在とする位置調整用ボルトがスライド自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、柱脚コーナーフレームの有する第三固定片において位置調整用ボルトがスライド自在に取り付けられていることにより、位置調整用ボルトを張り出させて、例えば隣りの外壁材(窯業系サイディングボード等からなる外装材と下地材、フレーム部材等のユニット材)に反力を取ることにより、コーナーカバーの立ち姿勢を調整することができる。特に、柱脚コーナーフレームにおいて直交する二方向に対応する二つの位置調整用ボルトがスライド自在に取り付けられている形態では、この二つの位置調整用ボルトを張り出させて、それぞれ対応する隣りの外壁材に反力を取ることにより、コーナーカバーの三次元的な立ち姿勢をより一層効率的でかつ高精度に調整することが可能になる。」
(ウ)「【0034】
より詳細には、断面形状がW型の第三固定片43において、中央の断面形状がL型の二片に開設されているボルト孔43aに対して、頭付きボルトからなる係合突起44が挿通され、ナット締めされている。また、中央の断面形状がL型の二片の端部において他の片が屈曲して下地鉄板20側に延出しており、この他の片に開設されているボルト孔43bに対して、六角ボルトにより形成される位置調整用ボルト46が挿通され、スライド自在にナット締めされている。」
(エ)「【0049】
図11に示すように、係合溝78aの横幅を、係合突起44のボルト径よりも大きく製作しておくことにより、コーナーカバー60の立ち姿勢をX方向及びY方向の二方向に調整する際の調整代が形成される。そして、レンチRによって位置調整用ボルト46を回転させ、位置調整用ボルト46をスライドさせて外側に張り出させることにより、二つの位置調整用ボルト46をX方向及びY方向の側方にある二つの外壁材19の端面に当接させて反力を取りながら、コーナーカバー60の柱脚部における立ち姿勢を調整することができる。」
(オ)【図3】
[図:0001425797000003.jpg]
(カ)【図10】
[図:0001425797000004.jpg]
イ 甲4記載技術
上記アから、甲4には、以下の技術(以下「甲4記載技術」という。)が記載されていると認められる。
(甲4記載技術)
「断面形状がW型の第三固定片43において、中央の断面形状がL型の二片に開設されているボルト孔43aに対して、頭付きボルトからなる係合突起44が挿通され、ナット締めされており、中央の断面形状がL型の二片の端部において他の片が屈曲して下地鉄板20側に延出しており、この他の片に開設されているボルト孔43bに対して、六角ボルトにより形成される位置調整用ボルト46が挿通され、スライド自在にナット締めされており、
レンチRによって位置調整用ボルト46を回転させ、位置調整用ボルト46をスライドさせて外側に張り出させることにより、二つの位置調整用ボルト46をX方向及びY方向の側方にある二つの外壁材19の端面に当接させて反力を取りながら、コーナーカバー60の柱脚部における立ち姿勢を調整すること。」
(5)甲5
ア 甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0016】
柱10は、建物を構成する構造部材であり、角形鋼管である。柱10の外周面には、耐火被覆材20、空気層30、不燃薄板40、および仕上材50が順に積層配置されている。
すなわち、柱10の外周面は、不燃薄板40で覆われている。また、柱10の外側表面には、耐火被覆材20が設けられている。空気層30は、耐火被覆材20と不燃薄板40との間に設けられている。
耐火被覆材20は、吹き付けロックウールである。不燃薄板40は、矩形筒状の鋼板である。仕上材50は、不燃薄板40の表面に取り付けられた可燃物であり、例えば木である。
空気層30のうち柱10の四隅には、柱10の軸方向に沿って延びるリップ溝形鋼である支持部材11が設けられており、不燃薄板40は、この支持部材11の外側表面に取り付けられている。」
(イ)【図1】
[図:0001425797000005.jpg]
(6)甲6
ア 甲6の記載事項
甲6には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0028】
図1~図3に示すように、構造物10の柱100は、鉄骨柱110がボード部材150で耐火被覆された構成とされている。なお、図1と図2とに示すように、柱100(柱100の壁面を構成するボード部材150で囲まれた部位)の水平断面は略正方形状とされ、この柱100の断面における鉄骨柱110に向かう方向を内側方向とし、鉄骨部柱110から離れる方向を外側方向とする。
また、図1と図3とに示すように鉛直方向を矢印Zで示し、X方向とY方向とは直交し、X方向及びY方向にZ方向が直交する。なお、X方向又はY方向に沿って配置された部材の符号の後に「X」又は「Y」を付して区別する場合がある。また、上側の部材には符号の後に「U」を付し、下側の部材には「L」を付して区別する場合がある。」
(イ)「【0041】
図1~図3に示すように、スタッド120にボード部材150が固定されている。本実施形態では、まず下張りボード152をスタッド120にドリリングタッピンねじ142(図1、図2参照)で固定した後に、下張りボード152に上張りボード154を接着剤とステープル(図示略)で接合した。なお、上張りボード154も、ドリリングタッピンねじ142で下張りボード152を貫通させてスタッド120に固定してもよい。」
(ウ)「【0087】
更に、本実施形態では、ボード部材150を構成する内側の下張りボード152及び外側の上張りボード154は、石膏ボード(正確には、下張りボード152は繊維補強された強化石膏ボード)で構成されていたが、これに限定されない。石膏ボード以外の耐火ボード、例えば、繊維混入けい酸カルシウム板、モルタルボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード、PC板、ALCパネル、押し出し成形セメント板等で構成されていてもよい。また、ボード部材が耐火ボード以外のボード(化粧板など)で構成されていてもよい。或いは、ボード部材が複数枚のボードで構成されている場合は、耐火ボードと耐火ボード以外のボードとが組合わされた構成であってもよい。」
第5 当審の判断
1 本件発明1
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「H型鋼柱1」は、本件発明1の「鉄骨部材」に相当する。
イ 本件発明1の「前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材」と甲1発明の「柱部材の全体を耐火ボードで被覆する柱囲い構造」における「H型鋼柱1を囲むように取付けられる4枚のボード4」とは、「前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の耐火被覆材」の点で共通する。
ウ 本件発明1の「隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部」と甲1発明の「隣り合うボードの端部が突き当てられて」「形成され」た「入隅」とは、「隣り合う前記耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部」の点で共通する。
エ 上記ウの対比を踏まえると、本件発明1の「隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部」と、甲1発明の「隣り合うボード4の端部がネジ6によりそれぞれ取り付けられ」る、「入隅に設けられたスタッドの隣り合う2辺」は、「隣り合う前記耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部」の点で共通する。
オ 甲1発明の「スタッド」は、「H型鋼柱1の平行板1aの外側端部に溶接または接着剤で取付け」た「固定片7」と、「上記固定片7に外側より嵌入され固定片7方向に進退する固定用ねじ8aが螺着された嵌入部8bと、この嵌入部8bの一端側より直角方向に突出するほぼ断面C字状の取付部8cとからな」る「L字状に成形され」た「接続片8」と、「上記接続片8の取付部8cに嵌入されかつ取付部8c方向に進退する固定用ねじ9aが螺着された嵌入部9bと、この嵌入部9bの一端側から直角に折曲されほぼ断面U字状のスタッド10を固定する固定部9cとからな」る「取付片9」とから構成される「補強用金具20」の固定用押しねじ8a,9aがしめつけられて補強固定されるものである。そうすると、本件発明1の「前記鉄骨部材に取り付けられ、隣り合う前記木質耐火被覆材を支持するコーナー下地材」と甲1発明の「補強用金具20」によって「H型鋼柱1」に固定される「スタッド」であって「入隅に設けられたスタッドの隣り合う2辺に隣り合うボード4の端部がネジ6によりそれぞれ取り付けられ」る「スタッド」とは、「前記鉄骨部材に取り付けられ、隣り合う前記耐火被覆材を支持するコーナー下地材」の点で共通する。
カ 本件発明1の「前記鉄骨部材から外側へ突出するとともに、厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケット」と、甲1発明の「H型鋼柱1の平行板1aの両端部の外面側に外方向に延長する如く溶接または接着して取付けられ」、「幅方向をH型鋼柱1の材軸方向として配置され」る「固定片7」とは、「前記鉄骨部材から外側へ突出する第一の部材」である点で共通する。
キ 本件発明1の「前記第一ブラケットに重ねられた状態でボルト接合される第二ブラケット」と甲1発明の「固定片7に外側より嵌入され固定片7方向に進退する固定用ねじ8aが螺着された嵌入部8b」を備える「接続片8」とは、「前記第一の部材に重ねられた状態で接合される第二の部材」の点で共通する。
ク 甲1発明の「H型鋼柱1」である「柱部材」を「耐火ボードで被覆する柱囲い構造」は、本件発明1の「鉄骨部材の耐火被覆構造」に相当する。
ケ 上記ア~クから、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の耐火被覆材と、
隣り合う前記耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、前記鉄骨部材に取り付けられ、隣り合う前記耐火被覆材を支持するコーナー下地材と、
前記鉄骨部材から外側へ突出する第一の部材を備え、前記第一の部材に重ねられた状態で接合される第二の部材を有する、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
(相違点1)
本件発明1は、耐火被覆材が「木質耐火被覆材」であるのに対し、甲1発明は、「耐火ボード」(耐火被覆材)の材質が「木質」と特定されていない点。
(相違点2)
取付けに関し、本件発明1は、「第一の部材」が「厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケット」であり、「第二の部材」が「前記コーナー下地材」が有する「第二ブラケット」であって、「前記第一ブラケットに重ねられた状態でボルト接合される」ものであるのに対し、
甲1発明は、「前記鉄骨部材から外側へ突出する第一の部材」として「H型鋼柱1の平行板1aの両端部の外面側に外方向に延長する如く溶接または接着して取付けられ」る「固定片7」を備えるものの、固定片7の「幅方向」をH型鋼柱1の材軸方向として配置されるものであって、「厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケット」ではなく、
また、「前記第一の部材に重ねられた状態で接合される第二の部材」である「接続片8」は、「厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケット」に重ねられた状態で接合されるものではないため「第二ブラケット」ではなく、「固定片7方向に進退する固定用ねじ8aが螺着された嵌入部8b」が「固定片7に外側より嵌入され」るとともに、「ほぼ断面U字状のスタッド10を固定する固定部9c」を有する「取付片9」を介してスタッド10に固定されるものであるから、「スタッド10」が「接続片8」を有するとはいえず、また、「嵌入部8b」が嵌合した状態で「固定用押しねじ8a」を「しめつけ」て固定されるものであるから「ボルト接合」されるものでもない点。
(2)判断
ア 新規性について
上記(1)ケの通り、本件発明1と甲1発明とは、相違点1及び相違点2で相違し、相違点1及び相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
イ 進歩性について
事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。
(ア)甲1発明は、柱部材の全体を耐火ボードで被覆する柱囲い構造において、スタッドの中間位置の補強金具によってスタッドの変形を防止するものであり、固定片7と接続片8および取付片9とから構成される補強用金具20を、固定片7,接続片8,取付片9,がセットされた状態、すなわち、上記固定片7に接続片8の嵌入部8bを嵌入し、接続片8の取付部8cに取付片9の嵌入部8bを嵌入し、接続片8および取付片9は夫々前後左右に自由に動ける状態で、取付片9の係止部9d,9dをスタッド10の所定位置の開口部10aに押込み、スタッド10の垂直度と位置調整の後、最後に固定用押しねじをしめつけてスタッドを正しい位置に補強固定するものである。
甲1発明の固定片7は、「固定片7の幅方向をH型鋼柱1の材軸方向として配置」するものであるが、この配置は、「H型鋼柱1の平行板1aの外側端部に溶接または接着剤で取付ける」ものであることに鑑みると、配置を「厚み方向」とするよりも「H型鋼柱1の平行板1a」と接触する面積が大きいため、「溶接または接着剤」での取り付けに好適であるといえる。また、固定片7に接続片8の嵌入部8bを嵌入し、嵌入した状態で固定用押しねじ8aをしめつけて固定するに際しても、横方向からねじ8aを回転させることができる方が好適であるといえる。
そうすると、甲1発明において「固定片7」の配置を変更して「厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケット」とする動機付けはない。
(イ)甲2発明及び甲3発明は、それぞれ、「木質板型枠2a,2bを直交して敷設するための隅壁用のコンクリート型枠用の組立金具1」及び「エレベーターのガイドレールを昇降路の壁面に固定するガイドレール固定装置」であって、「鉄骨部材の耐火被覆構造」に関するものではなく、木質耐火被覆材を鉄骨部材に取り付けることについて記載も示唆もされていない。
また、仮に、甲2発明及び甲3発明に、厚み方向を水平方向として取り付けることが記載されている、ないし、厚み方向を水平方向として取り付けることが一般に周知技術であるとしても、上記(ア)で説示したように、甲1発明において「固定片7」の配置を変更して「厚み方向を前記鉄骨部材の材軸方向として配置される第一ブラケット」とする動機付けはない。
(ウ)また、申立人が本件発明2~8に関して提出した甲3~甲6にも、相違点2に係る構成について記載も示唆もない。
よって、甲1発明において、相違点2に係る発明とすることは、甲2発明及び甲3発明を考慮しても、甲2~甲6の記載を考慮しても、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された事項から当業者が容易になし得たものではない。
2 本件発明2
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
ア 上記1(1)ア~オ、キ、クにおける本件発明1と甲1発明との対比は、本件発明2と甲1発明とにおいても同様である。
イ 彰国社編「建築大辞典第2版」によれば、「ブラケット」は、「もちおくり」を意味し、「もちおくり」は、「壁や柱の垂直面から,水平に突出させて庇,梁,棚,出窓などの上の荷重を支持する部材またはその構法。」を意味する。
そして、甲1発明の「固定片7」は、「補強用金具20」を構成する部材であるが、甲1発明の「補強用金具20」は「スタッドの変形を防止する」ものであって、「補強用金具20」がボード4の荷重を支持するものではないから、「固定片7」は「ブラケット」ではない。
そうすると、本件発明2の「前記鉄骨部材から突出する第一ブラケット」と、甲1発明の「H型鋼柱1の平行板1aの両端部の外面側に外方向に延長する如く溶接または接着して取付けられ」る、「固定片7」とは、「前記鉄骨部材から突出する第一の部材」である点で共通する。
ウ 上記ア、イから、本件発明2と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の耐火被覆材と、
隣り合う前記耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、前記鉄骨部材に取り付けられ、隣り合う前記耐火被覆材を支持するコーナー下地材と、
前記鉄骨部材から突出する第一の部材を備え、前記第一の部材に重ねられた状態で接合される第二の部材を有する、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
(相違点1’)
本件発明2は、耐火被覆材が「木質耐火被覆材」であるのに対し、甲1発明は、「耐火ボード」(耐火被覆材)の材質が「木質」と特定されていない点。
(相違点2’)
取付けに関し、本件発明2は、「第一の部材」が「第一ブラケット」であり、「第二の部材」が「前記コーナー下地材」が有する「第二ブラケット」であって、「前記第一ブラケットに重ねられた状態でボルト接合される」ものであり、「前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる」ものであるのに対し、
甲1発明は、「前記鉄骨部材から突出する第一の部材」として「H型鋼柱1の平行板1aの両端部の外面側に外方向に延長する如く溶接または接着して取付けられ」る「固定片7」を備えるものの、固定片7は、上記(1)イにおいて説示したように「第一ブラケット」ではなく、また、「前記第一の部材に重ねられた状態で接合される第二の部材」である「接続片8」は、「第二ブラケット」ではなく、「固定片7方向に進退する固定用ねじ8aが螺着された嵌入部8b」が「固定片7に外側より嵌入され」るとともに、「ほぼ断面U字状のスタッド10を固定する固定部9c」を有する「取付片9」を介してスタッド10に固定されるものであるから、「スタッド10」が「接続片8」を有するとはいえず、また、「嵌入部8b」が嵌合した状態で「固定用押しねじ8a」を「しめつけ」て固定されるものであるから「ボルト接合」されるものでもなく、「前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる」ものでもない点。
(2)判断
ア 新規性について
上記(1)ウの通り、本件発明2と甲1発明とは、相違点1’及び相違点2’で相違し、相違点1’及び相違点2’は、実質的な相違点であるから、本件発明2は甲1に記載された発明ではない。
イ 進歩性について
事案に鑑み、まず、上記相違点2’について検討する。
(ア)甲1発明は、柱部材の全体を耐火ボードで被覆する柱囲い構造において、スタッドの中間位置の補強金具によってスタッドの変形を防止するものであり、固定片7と接続片8および取付片9とから構成される補強用金具20を、固定片7,接続片8,取付片9,がセットされた状態、すなわち、上記固定片7に接続片8の嵌入部8bを嵌入し、接続片8の取付部8cに取付片9の嵌入部8bを嵌入し、接続片8および取付片9は夫々前後左右に自由に動ける状態で、取付片9の係止部9d,9dをスタッド10の所定位置の開口部10aに押込み、スタッド10の垂直度と位置調整の後、最後に固定用押しねじをしめつけてスタッドを正しい位置に補強固定するものである。
(イ)甲1発明を相違点2’に係る構成とするためには、補強用金具20を固定片7と接続片8および取付片9とから構成されるものではなく、「重ねられた状態でボルト接合される」第一の部材と第二の部材という2の部材がそれぞれ異なる方向に延びる長孔を有するものとしなければならない。しかし、甲1発明は、単に耐火被覆材の厚み方向と幅方向に調整できればよいというものではなく、上記(ア)において説示したように、補強用金具20を、固定片7,接続片8,取付片9,がセットされた状態、すなわち、上記固定片7に接続片8の嵌入部8bを嵌入し、接続片8の取付部8cに取付片9の嵌入部8bを嵌入し、接続片8および取付片9は夫々前後左右に自由に動ける状態で、取付片9の係止部9d,9dをスタッド10の所定位置の開口部10aに押込み、スタッド10の垂直度と位置調整の後、最後に固定用押しねじをしめつけてスタッドを正しい位置に補強固定するものである。そして、「前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる」ものが、甲1発明における補強用金具として、固定片7と接続片8および取付片9とから構成される補強用金具20同様ないし該補強用金具20以上にスタッドの変形防止に好適に使用できるといえるものではなく、甲1発明を「前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる」ものに変更する動機付けはない。
(ウ)また、固定片7(第一の部材)及び接続片8(第二の部材)について、「一方のボルト孔」は、「耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ」、「他方のボルト孔」は、「耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる」ものとするためには、甲1発明において「固定片7」及び「接続片8」の両方が耐火被覆材の幅方向にも厚み方向にも突出していなければならず、結局、上記1(2)イにおいて本件発明1について検討したように、固定片7及び接続片8の配置を変更することが必要となる。そして、上記1(2)イにおいて検討したように、固定片7及び接続片8について配置を変更する動機付けはない。
(エ)甲2発明、甲3発明、甲4記載技術は、いずれも、「鉄骨部材の耐火被覆構造」に関するものではなく、木質耐火被覆材を鉄骨部材に取り付けることについて記載も示唆もされていない。また、甲2発明、甲4記載技術のいずれも、水平に延びる板状の2の部材のそれぞれに、異なる方向に延びる長孔を設けることを開示しない。
(オ)仮に、水平に延びる板状の2の部材のそれぞれに、異なる方向に延びる長孔を設けることが一般に周知技術であるとしても、上記(イ)及び(ウ)で説示したように、甲1発明において「前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる」ものとすることが当業者が容易になし得たこととはいえない。
(カ)また、申立人が本件発明4等に関して提出した甲5及び甲6にも、相違点2’に係る構成について記載も示唆もない。
よって、甲1発明において、相違点2’に係る発明とすることは、甲2発明、甲3発明及び甲4技術事項を考慮しても、甲2~甲6の記載を考慮しても、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(キ)小括
以上のとおりであるから、相違点1’について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された事項から当業者が容易になし得たものではない。
3 本件発明3
本件発明3は、本件発明2の構成において、第一ブラケットが前記鉄骨部材から外側へ突出することがさらに特定され、また、第二ブラケットが、第一ブラケットに対して前記鉄骨部材の材軸方向に重ねられた状態であることが更に特定されたものであり、本件発明3と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点1’及び相違点2’において相違する。
そして、その新規性、進歩性についての判断は、上記2(2)において判断したとおりである。
4 本件発明4~8
本件発明4~8は、本件発明1~3のいずれかを直接または間接的に引用するものであり、本件発明4~8と甲1発明とは、少なくとも、1(1)ケの相違点1及び相違点2または上記2(1)ウの相違点1’及び相違点2’において相違する。
そして、その新規性、進歩性についての判断は、上記1(2)及び2(2)において判断したとおりである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700340