特許異議申立
2025-700628
食料品用の防腐組成物
- 審判番号
- 2025-700628
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-547497
- 登録番号
- 7604383
- 請求日
- 2025年06月13日
- 審決日
- 2025年10月03日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェー
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】日本香料工業会
- 審判長/審判官
- 審判長 天野 宏樹
- 審判官 松田 成正
- 審判官 宮久保 博幸
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7604383号発明「食料品用の防腐組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7604383号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7604383号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)1月22日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年2月14日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、令和6年12月13日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、当該特許に対し、令和7年6月13日に特許異議申立人 日本香料工業会(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~3)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいう。また、総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
保存食料品を調製するための方法であって、ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物からなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含み、保存食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。
【請求項2】
保存食料品を調製するための方法であって、E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含み、保存食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。
【請求項3】
前記食料品が10ppmから10000ppmの前記防腐組成物を含むような量で前記防腐組成物を前記食料品に添加する、請求項1又は2に記載の方法。」
第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和7年6月13日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。なお、判断の便宜上、当審において、主たる証拠ごとに特許異議申立の理由を整理した。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件発明2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件発明2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第5号証を主たる証拠とする新規性)
本件発明2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(サポート要件)
本件発明3についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は次のとおりである。
本件の特許明細書には、真菌の増殖阻害試験のために、芳香組成物(芳香化合物の混合物で防腐組成物のこと)を培地に2%添加したことが記載されている(段落0045の実施例1、段落0056の実施例2、段落0060)。一般的に真菌増殖阻害剤の添加効果は、阻害剤の添加濃度の上昇とともに阻害効果が高くなることは当業者の常識であるが、試験濃度よりも極めて低い濃度(請求項3の10~10,000ppm)で真菌の増殖が阻害されることは当業者でも想定できない。
6 証拠方法
・甲第1号証:特表2009-523016号公報
・甲第2号証:特開2005-143467号公報
・甲第3号証:特開2000-342179号公報
・甲第4号証:特開2002-136259号公報
・甲第5号証:特開2005-15686号公報
証拠の表記は特許異議申立書の記載に従った。
以下、順に「甲1」等という。
第4 当審の判断
当審は、申立人が申し立てた特許異議申立理由によって、本件発明1~3についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。
1 申立理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には「緑茶製品の製造方法」に関し、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。
・「【請求項1】
香りを改良した緑茶製品の製造方法であって、
(a)E-2-ヘキセナール及びリナロールを少なくとも0.7:1の重量比で含む芳香組成物を提供する工程;及び
(b)前記芳香組成物を緑茶製品と組み合わせる工程
を含む、方法。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
驚くべきことに、本出願人は、E-2-ヘキセナールを比較的多量に含む芳香組成物を緑茶製品に添加することによって、前記緑茶製品の香りが実際に改良されることを見出した。結果として得られる緑茶製品は、E-2-ヘキセナールを比較的多量に含有することが認められたが、フローラルノート及びシトラスノートに富み、且つ、低級茶に典型的なグリーンノートが低減した香りを有する。」
・「【0063】
(実施例1)
本実施例は、本発明において使用するために適切な芳香組成物の製造を示す。
【0064】
水分含有量が76から80重量%のCamellia sinensis var.assamica由来の新しく摘んだ葉を萎れさせ、水分含有量を68から72重量%にした。次いで、萎れさせた葉はローターバンを用いて浸漬し、CTC(破砕(crush)、引き裂き(tear)、回転(curl))装置に三回通した。
【0065】
三回目のCTCによる切断の直後の浸漬した新鮮葉を回収し、回転真空乾燥器(RVD)に直ぐに(10分以内に)供した。RVDの操作条件は、真空圧力 -500mgHg;固体温度 45~50℃;注入冷却水温度 15~20℃及び放出冷却水温度 25℃である。茶葉はRVDで1時間乾燥し、約10分毎に5リットルのバッチで合計25リットルの濃縮物(100kgの浸漬した葉あたり)を回収した。濃縮物を4℃で保存した。
【0066】
濃縮物を100リットルのバッチで蒸留した。これによって、約1リットルの蒸留物を得た。次いで、結果として得られた芳香組成物は4℃で保存した。
【0067】
芳香組成物の主要な成分を表1に挙げる。
【0068】
【表1】
[図:0001429036000001.jpg]
【0069】
(実施例2)
本実施例は、本発明に係るリーフティー製品及びレディトゥドリンクティーの製造を示す。
【0070】
既製の緑茶葉の一部(100g)をガラスジャーに入れ、実施例1からの芳香成分を、5つの分割量で滴下して加え、各添加の間には混合していた。添加した芳香成分の全量は、5×0.30mlの分割量で1.5mlであった。次いで、前記ジャーを密封して、アルミニウムホイルで覆い、日光を遮断して、室温で3日間に亘って保存し、サンプルを水及び香りに関して平衡化させた。
【0071】
次いで、結果として得られた香りが改良されたリーフティー製品を、上記の「DETERMINATION OF AROMA COMPOUNDS」に記載の方法よって水で煎じた。結果として得られたレディトゥドリンクティー中において検出された主要な芳香化合物を表2に挙げる。
【0072】
【表2】
[図:0001429036000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アの記載事項を、特に緑茶製品である実施例2のレディトゥドリンクティーの製造方法に関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認められる。
「香りを改良した緑茶製品の製造方法であって、
Camellia sinensis var.assamica由来の葉をCTC装置で切断して回転真空乾燥器(RVD)で乾燥し、回収した濃縮物を蒸留して、メタノール、E-2-ヘキセナール、リナロール、Z-3-ヘキセノール、trans-リナロールオキシド、メチルサリチレート、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、アセトアルデヒド、Z-2-ペンテン-1-オール、cis-リナロールオキシド、1-ペンテン-3-オール、ヘキサン-1-オール及び1-ペンテン-3-オンを含む芳香組成物を得て、
前記芳香組成物をガラスジャーに入れた緑茶葉に加え、密封保存して平衡化させ、
得られたリーフティー製品を水で煎じて、リナロールを191ppb含む緑茶製品を得る方法。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
両者を対比すると、甲1発明の「緑茶製品の製造方法」は、本件発明1の「保存食料品を調製するための方法」と、「食料品を調製するための方法」である限りにおいて一致する。また、甲1発明により製造される緑茶製品は「リナロールを191ppb含む」ものであるから、甲1発明は、本件発明1の「60ppm未満のリナロールを含む」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「食料品を調製するための方法であって、
食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。」
(相違点)
・相違点1-1
調製する食料品について、本件発明1は、「保存」食料品と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。
・相違点1-2
本件発明1は、「ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物からなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」を含むのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1発明は、レディトゥドリンクティーの原材料として、Camellia sinensis var.assamica由来の葉から得た「芳香組成物」を用いている。しかしながら、当該芳香組成物は、「ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチル」以外の化合物であるリナロール、Z-3-ヘキセノール、アセトアルデヒド、Z-2-ペンテン-1-オール、cis-リナロールオキシド、1-ペンテン-3-オール、ヘキサン-1-オール及び1-ペンテン-3-オンの各種化合物を含むものであるから、「ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物からなる」組成物であるとはいえない。さらに、甲1発明は上記芳香組成物を緑茶製品の香りを改良するための原材料として緑茶葉に混合して用いる(甲1の【0008】、【0070】~【0071】)ものであって、芳香組成物を「防腐組成物」として用いるものではないし、食料品に「添加する」ものともいえない。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、Camellia sinensis var.assamica由来の葉から得た芳香組成物のうち特定の化合物に着目し、芳香組成物を「ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物からなる防腐組成物」として、「微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する」ものとする動機付けとなる記載はない。
そして、本件発明1は、相違点1-2に係る発明特定事項を有することにより、食料品が酵母又はカビに対する抗真菌活性を示す(本件明細書の【0009】、【0051】~【0052】、【0060】~【0061】)ものとなるという、甲1及び他の証拠から予測することができない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明及び他の全ての証拠に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書14頁において、以下のとおり主張する。
「甲2発明に、茶フレーバー組成物が殺菌・抗菌・防腐などの作用・機能を維持できる効果を有すること、当該茶フレーバーは緑茶の天然香料を含むことが記載されている。したがって、甲1発明の芳香組成物は緑茶天然香料そのものであるから(甲1発明の段落0063-0066の芳香組成物の製造法)、殺菌・抗菌・防腐などの作用・機能有する蓋然性は非常に高い。」
上記主張について検討する。甲1発明は、緑茶製品の香りを改良すること(甲1の【0008】)を課題とする発明であって、甲1には緑茶製品の保存や防腐の必要性について記載されておらず、芳香組成物を防腐組成物として用いることを動機付ける記載はない。甲2の【0010】には、茶フレーバー組成物に関して、「香料が潜在的に有している、例えば、殺菌・抗菌・防腐、酸化防止、アロマテラピーなどの作用・機能を期待できる効果を有する。」との記載があり、【0051】には利用対象として緑茶も例示されているが、【0010】の記載は緑茶系香料全般に期待される一般的な効果を列記したものにすぎず、相違点1-2に係る特定の成分からなる茶葉抽出物あるいは化合物を防腐のために茶葉に添加することを開示するものではない。そうすると、甲1及び甲2に接した当業者であっても、甲1発明において、Camellia sinensis var.assamica由来の葉から得た芳香組成物のうち相違点1-2に係る特定の化合物に着目し、芳香組成物を「ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物からなる」ものとし、これを「防腐組成物」として「緑茶葉」に添加することが動機付けられるとはいえないし、さらに防腐の必要性について記載のない「緑茶葉」に代えて「微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する」ことが動機付けられるともいえない。
そして、本件発明1は、相違点1-2に係る発明特定事項を有することにより、食料品が酵母又はカビに対する抗真菌活性を示す(本件明細書の【0009】、【0052】、【0061】)ものとなるという効果を奏するものであり、当該効果は甲1、甲2及びその他の証拠から当業者が予測することができないものである。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。
(エ)本件発明1についてのまとめ
以上まとめると、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記ア(ア)と同様の相当関係がとれるから、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「食料品を調製するための方法であって、
食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。」
(相違点)
・相違点1-3
調製する食料品について、本件発明2は、「保存」食料品と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。
・相違点1-4
本件発明2は、「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」を含むのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み相違点1-4について検討すると、相違点1-4は、化合物群のうち「E-2-ヘキセナール」を必須成分とする点の他は、相違点1-2と同じ内容であるから、上記ア(イ)と同様に判断される。そうすると、本件発明1と同様の理由により、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由1のまとめ
上記のとおり、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1の理由では、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲3を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
甲3には「4-メルカプト-2-ペンタノン化合物からなる茶飲料用添加剤」に関し、次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンからなる茶飲料用添加剤。
【請求項2】 4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンを10-4~103ppbの濃度添加したことを特徴とする茶飲料用香味料組成物。
【請求項3】 4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンを10-6~10ppbの濃度添加したことを特徴とする茶飲料。」
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、入れ立ての茶が持つ柔らかくふくよかなグリーン香を持った茶飲料を提供することを目的とする。」
・「【0010】実施例2
緑茶抽出液を蒸留して得られた緑茶飲料用香味料組成物100重量部に対し、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンの10ppbエタノール溶液を0.002重量部加え、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンを0.0002ppb含有する本発明の茶飲料用香味料組成物を得た。このものを緑茶抽出物100重量部に対し1重量部添加したところ、緑茶独特の苦味及び渋みが軽減し、入れ立ての茶が持つ柔らかくふくよかなグリーン香を持った緑茶飲料が得られた。
【0011】実施例3
表1の緑茶飲料用香味料組成物100重量部に、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンの1ppbエタノール溶液を5重量部加え、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンを0.05ppb含有する本発明の香味料組成物を得た。このものを緑茶抽出物100重量部に対し1重量部加え、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンを0.0005ppb含有する緑茶飲料を調製した。
【0012】
【表1】
[図:0001429036000003.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
上記アの記載事項を、特に実施例3の緑茶飲料の調製方法に関して整理すると、甲3には次の発明が記載されていると認められる。
「1000重量部中に(Z)-3-ヘキセノール0.2重量部、β-イオノン0.1重量部、ヘキサナール0.1重量部、リナロールオキシド0.4重量部、イソブチルアルデヒド0.1重量部、ヘキサノール1.0重量部、オクタノール0.06重量部、ベンジルアルコール0.04重量部、(E)-2-ノネナール0.002重量部、リナロール0.06重量部、95%アルコール適量、水400重量部を含む緑茶飲料用香味料組成物100重量部に、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンの1ppbエタノール溶液を5重量部加えて得られた香味料組成物を、緑茶抽出物100重量部に対し1重量部加える工程を含む、緑茶飲料を調製する方法。」(以下、「甲3発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲3発明との対比
両者を対比すると、甲3発明の「緑茶飲料を調製する方法」は、本件発明2の「保存食料品を調製するための方法」と、「食料品を調製するための方法」である限りにおいて一致する。
そして、緑茶抽出物は微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品であるから、甲3発明の「香味料組成物を、緑茶抽出物100重量部に対し1重量部加える工程」は、本件発明2の「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」と、「組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」である限りにおいて一致する。
また、食料品中のリナロールの濃度について、本件発明2は「60ppm未満のリナロールを含む」と特定するのに対し、甲3発明において緑茶抽出物中に含まれるリナロールの含有量は不明である。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「食料品を調製するための方法であって、組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含む、方法。」
(相違点)
・相違点3-1
調製する食料品について、本件発明2は「保存」食料品と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されていない点。
・相違点3-2
添加する組成物について、本件発明2は「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されていない点。
・相違点3-3
保存食料品に含まれるリナロールについて、本件発明2は「60ppm未満」と特定するのに対し、甲3発明では緑茶抽出物中に含まれるリナロールの含有量が不明である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3-2について検討する。
添加する組成物について、本件発明2は「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物」と特定するのに対し、甲3発明の香味料組成物は、本件発明2の防腐組成物の必須成分であるE-2-ヘキセナールを含まず、本件発明2で特定される化合物以外の化合物であるヘキサノール、オクタノール等の化合物を含んでおり、両者は成分の組成が相違する。さらに、甲3発明は、組成物を、入れ立ての茶が持つ柔らかくふくよかなグリーン香を持った茶飲料(甲3の【0004】)とするための香味料として添加するものであって、「防腐組成物」として添加するものではない。
そして、甲3及び他の全ての証拠をみても、甲3発明において、添加する組成物を「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物」とする動機付けとなる記載はない。
そして、本件発明1は、相違点3-2に係る発明特定事項を有することにより、食料品が酵母又はカビに対する抗真菌活性を示すものとなるという、甲3及び他の証拠から予測することができない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点3-2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲3発明及び他の全ての証拠に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書15~16頁において、以下のとおり主張する。
「甲3発明における「緑茶飲料」は、本件特許発明2における「保存食料品」に相当し、緑茶飲料に添加する緑茶飲料用香味料組成物はヘキサナール、リナロールオキシド、リナロールを含有し、緑茶飲料中のリナロールは0.06/1000/100=0.6ppm(60ppm未満)である。したがって、両者は
F:保存食料品を調製するための方法であって、
G:ヘキサナールおよびE-リナロールオキシド(リナロールオキシドと同意)から選択される少なくとも2つの化合物からなる
I:微生物による腐敗の影害を受けやすい食料品に添加する工程を含み、
J:保存食料品が60ppm末満のリナロールを含む、方法。
が一致するが、緑茶飲料用香味料組成物が防腐組成物である点で相違する。
甲2発明に、茶フレーバー組成物が殺菌・抗菌・防腐などの作用・機能を維持できる効果を有すること、当該茶フレーバーは緑茶の天然香料を含むことが記載されている。また、甲3発明の緑茶飲料用香味料組成物は緑茶天然香料そのものであるから(甲3発明の段落0010)、殺菌・抗菌・防腐などの作用・機能有する蓋然性は非常に高い。」
上記主張について検討する。
申立人は、本件発明2の防腐組成物と、甲3発明の香味料組成物とは、防腐組成物という用途のみが相違し、組成については一致するものと主張しているが、本件発明2の防腐組成物は「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる」ものであって、E-2-ヘキセナールが必須の成分とされているから、両者は組成について一致するものとはいえない。そして、甲3及び他の全ての証拠をみても、甲3発明において香味料組成物の必須成分としてE-2-ヘキセナールを含むものとする動機付けとなる記載はない。
さらに、甲3発明は、入れ立ての茶が持つ柔らかくふくよかなグリーン香を持った茶飲料を提供すること(甲3の【0004】)を課題とする発明であって、甲3には香味料組成物を防腐組成物とすることを動機付ける記載はない。また、甲2には上記1(2)ア(ウ)のような事項が記載されているにすぎないから、甲3及び甲2に接した当業者であっても、甲3発明において、相違点3-2に係る本件発明2の発明特定事項を満たすものとすることが動機付けられるとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。
(エ)本件発明2についてのまとめ
以上まとめると、相違点3-2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲3及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由2のまとめ
上記のとおり、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2の理由では、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲4を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には「茶含有飲食品用添加剤」に関し、次の事項が記載されている。
・「【請求項1】3-メルカプト-1-ヘキサノールからなる茶含有飲食品用添加剤。
【請求項2】3-メルカプト-1-ヘキサノールを10-4~103ppbの濃度添加したことを特徴とする香味料組成物。
【請求項3】3-メルカプト-1-ヘキサノールを10-7~1ppbの濃度添加したことを特徴とする茶含有飲食品。
【請求項4】3-メルカプト-1-ヘキサノールを10-7~1ppbの濃度添加したことを特徴とする茶飲料。」
・「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熟成感を伴った深みのある香ばしい茶葉のグリーン香を持った茶含有飲食品を提供することを目的とする。」
・「【0016】実施例2
緑茶抽出液を蒸留して得られた緑茶飲料用香味料組成物100重量部に対し、3-メルカプト-1-ヘキサノールの100ppbエタノール溶液を1重量部加え、3-メルカプト-1-ヘキサノールを1ppb含有する本発明の茶飲料用香味料組成物を得た。このものを緑茶抽出物100重量部に対し0.1重量部添加したところ、熟成感を伴い、深みのある茶葉様をイメージする香気を持った緑茶飲料が得られた。
【0017】実施例3
表1の緑茶飲料用香味料組成物100重量部に、3-メルカプト-1-ヘキサノールの1ppbエタノール溶液を5重量部加え、3-メルカプト-1-ヘキサノールを0.05ppb含有する本発明の香味料組成物を得た。このものを緑茶抽出物100重量部に対し0.1重量部加え、3-メルカプト-1-ヘキサノールを0.00005ppb含有する緑茶飲料を調製した。
【0018】
【表1】
[図:0001429036000004.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
上記アの記載事項を、特に実施例3の緑茶飲料の調製方法に関して整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認められる。
「1000重量部中にヘキサノール0.04重量部、シス-3-ヘキセノール0.3重量部、リナロールオキサイド1.0重量部、リナロール2.0重量部、サリチル酸メチル0.5重量部、β-イオノン0.07重量部、ベンジルアルコール0.2重量部、フェネチルアルコール0.12重量部、グリセロール100重量部、エタノール適量、水400重量部を含む緑茶飲料用香味料組成物100重量部に、3-メルカプト-1-ヘキサノールの1ppbエタノール溶液を5重量部加えて得られた香味料組成物を、緑茶抽出物100重量部に対し0.1重量部加える工程を含む、緑茶飲料を調製する方法。」(以下、「甲4発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲4発明との対比
両者を対比すると、甲4発明の「緑茶飲料を調製する方法」は、本件発明2の「保存食料品を調製するための方法」と、「食料品を調製するための方法」である限りにおいて一致する。
そして、緑茶抽出物は微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品であるから、甲4発明の「香味料組成物を、緑茶抽出物100重量部に対し0.1重量部加える工程」は、本件発明2の「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」と、「組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」である限りにおいて一致する。
また、食料品中のリナロールの濃度について、本件発明2は「60ppm未満のリナロールを含む」と特定するのに対し、甲4発明において緑茶抽出物中に含まれるリナロールの含有量は不明である。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「食料品を調製するための方法であって、組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含む、方法。」
(相違点)
・相違点4-1
調製する食料品について、本件発明2は「保存」食料品と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されていない点。
・相違点4-2
添加する組成物について、本件発明2は「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物」と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されていない点。
・相違点4-3
保存食料品に含まれるリナロールについて、本件発明2は「60ppm未満」と特定するのに対し、甲4発明では緑茶抽出物中に含まれるリナロールの含有量が不明である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4-2について検討する。
添加する組成物について、本件発明2は「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物」と特定するのに対し、甲4発明の香味料組成物は本件発明2の防腐組成物の必須成分であるE-2-ヘキセナールを含まず、本件発明2で特定される化合物以外の化合物であるシス-3-ヘキセノール、ベンジルアルコール等の化合物を含んでおり、両者は成分の組成が相違する。さらに、甲4発明は、組成物を、熟成感を伴った深みのある香ばしい茶葉のグリーン香を持った茶含有飲食品(甲4の【0006】)とするための香味料として添加するものであって、「防腐組成物」として添加するものではない。
そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において、添加する組成物を「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物」とする動機付けとなる記載はない。
そして、本件発明1は、相違点4-2に係る発明特定事項を有することにより、食料品が酵母又はカビに対する抗真菌活性を示すものとなるという、甲4及び他の証拠から予測することができない顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点4-2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲4発明及び他の全ての証拠に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書16頁において、以下のとおり主張する。
「甲4発明における「緑茶飲料」は、本件特許発明2における「保存食料品」に相当し、緑茶飲料に添加する緑茶飲料用香味料組成物はリナロールオキサイド、サリチル酸メチル、リナロールを含有し、緑茶飲料中のリナロールは2/1000×0.1/100=2ppm(60ppm未満)である。したがって、両者は
F:保存食料品を調製するための方法であって、
G:ヘキサナールおよびE-リナロールオキシド(リナロールオキシドと同意)から選択される少なくとも2つの化合物からなる
I:微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含み、
J:保存食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。
が一致するが、緑茶飲料用香味料組成物が防腐組成物である点で相違する。
甲2発明に、茶フレーバー組成物が殺菌・抗菌・防腐などの作用・機能を維持できる効果を有すること、当該茶フレーバーは緑茶の天然香料を含むことが記載されている。また、甲4発明の緑茶飲料用香味料組成物は緑茶天然香料そのものであるから(甲4発明の段落0016)、殺菌・抗菌・防腐などの作用・機能有する蓋然性は非常に高い。」
上記主張について検討する。
申立人は、本件発明2の防腐組成物と、甲4発明の香味料組成物とは、防腐組成物という用途のみが相違し、組成については一致するものと主張しているが、本件発明2の防腐組成物は「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる」ものであって、E-2-ヘキセナールが必須の成分とされているから、両者は組成について一致するものとはいえない。そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において香味料組成物にさらにE-2-ヘキセナールを含むものとする動機付けとなる記載はない。
さらに、甲4発明は、熟成感を伴った深みのある香ばしい茶葉のグリーン香を持った茶含有飲食品を提供すること(甲4の【0006】)を課題とする発明であって、香味料組成物を防腐組成物とすることを動機付ける記載はない。また、甲2には上記1(2)ア(ウ)のような事項が記載されているにすぎないから、甲4及び甲2に接した当業者であっても、甲4発明において、相違点4-2に係る本件発明2の発明特定事項を満たすものとすることが動機付けられるとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。
(エ)本件発明2についてのまとめ
以上まとめると、相違点4-2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲4及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由3のまとめ
上記のとおり、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3の理由では、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲5を主たる証拠とする新規性)について
(1)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には「フルーツ様香料組成物」に関し、次の事項が記載されている。
・「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来提案のフルーツ様香料組成物は、食品に使用されている原材料が有する特異臭のマスキング、原材料の香味の改善、清涼感、爽快感など嗜好性の面で必ずしも満足できるものではなく、改善されたフルーツ様香料組成物の開発が望まれている。
【0006】
従って、本発明の目的は、嗜好性および持続性が高く、且つ食品の原材料の香味の改善、特異臭のマスキングに効果があり、酸性あるいは塩基性領域でも安定で食品原材料の作用・機能を阻害することのないフルーツ様香料組成物ならびに該香料組成物を含有する食品を提供することである。
【0007】
さらには、本発明の目的は、殺菌・抗菌・防腐、酸化防止、変色防止、紫外線吸収、アロマテラピーなどの作用・機能を期待できるシトラス様香料組成物を提供することである。」
・「【0117】
【発明の効果】
特定の天然香料類、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素物類、含硫化物類、酸類の群がら選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有するシトラス様香料組成物は、清涼感、爽快感など嗜好性が高く、かつ食品の原材料のマスキング、原材料の香味の改善、酸性あるいは塩基性領域でも安定で、食品の原材料の作用・機能を阻害することのない優れた効果を有する。さらには、香料が潜在的にもっている、例えば、殺菌・抗菌・防腐、酸化防止、変色防止、アロマテラピーなどの作用・機能を期待できる効果を有する。」
・「【0134】
(実施例78~84:フルーツ様香料組成物(梅))
実施例78~84(表9)に記載の添加量に従い、梅様のフルーツ香料組成物を調製した。尚、表中の「~」は、「合計を100に調製する」ことを示す。
【0135】
【表9】
梅様フルーツ香料組成物
[図:0001429036000005.jpg]
」
・「【0140】
スポーツ飲料
下記処方に従い、実施例1~96のフルーツ様香料組成物を含むスポーツ飲料を常法にて調製したところ、清涼感に優れたスポーツ飲料を得ることができた。
(処方) (Kg)
砂糖 8
果糖ぶどう糖液糖(75%) 5
クエン酸 0.25
ビタミンC 0.2
フルーツ様香料組成物 (実施例1~96) 0.2
乳化製剤 0.1
水にて全量を200Lとする。」
イ 甲5に記載された発明
上記アの記載事項を、特に実施例79、81のフルーツ様香料組成物を含むスポーツ飲料の調製方法に関して整理すると、甲5には次の発明が記載されていると認められる。
「表9の実施例79の組成からなる梅様フルーツ香料組成物を0.2Kg、砂糖を8Kg、果糖ぶどう糖液糖(75%)を5Kg、クエン酸を0.25Kg、ビタミンCを0.2Kg、乳化製剤を0.1Kg含み、水にて全量を200Lとする、スポーツ飲料の調製方法。」(当審注:「表9」については、上記ア参照。以下、「甲5実施例79発明」という。)
「表9の実施例81の組成からなる梅様フルーツ香料組成物を0.2Kg、砂糖を8Kg、果糖ぶどう糖液糖(75%)を5Kg、クエン酸を0.25Kg、ビタミンCを0.2Kg、乳化製剤を0.1Kg含み、水にて全量を200Lとする、スポーツ飲料の調製方法。」(当審注:「表9」については、上記ア参照。以下、「甲5実施例81発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲5実施例79発明との対比
両者を対比すると、甲5実施例79発明の「スポーツ飲料の調製方法」は、本件発明2の「保存食料品を調製するための方法」と、「食料品を調製するための方法」である限りにおいて一致する。また、甲5実施例79発明のスポーツ飲料中のリナロール濃度は、0.1/100×0.1/200=0.5ppmであるから、本件発明2の「食料品が60ppm未満のリナロールを含む」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「食料品を調製するための方法であって、保存食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。」
(相違点)
・相違点5-1
調製する食料品について、本件発明2は「保存」食料品と特定するのに対し、甲5実施例79発明はそのように特定されていない点。
・相違点5-2
本件発明2は、「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」を含むことを特定するのに対し、甲5実施例79発明は、そのように特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点5-2について検討する。
甲5実施例79発明は、表9の実施例79の組成からなる梅様フルーツ香料組成物を原材料として用いており、当該組成物は、サリチル酸メチル0.5質量部と、トランス-2-ヘキセナール(本件発明2の「E-2-ヘキセナール」に対応する。)0.2質量部を含む。仮に、甲5実施例79発明の梅様フルーツ香料組成物が本件発明2の防腐組成物に対応するものと解釈しても、甲5実施例79発明の梅様フルーツ香料組成物は「E-2-ヘキセナール」を含有するものの、「ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物」のうち一種類しか含有しておらず、両者は成分の組成が一致しない。さらに、甲5実施例79発明の梅様フルーツ香料組成物は、スポーツ飲料に嗜好性の高い香味を付与する原材料として用いられる(甲5の【0005】-【0006】)ものであって、「防腐組成物」とはいえず、「食料品に添加する」ものであるともいえない。
そうすると、相違点5-2は実質的な相違点であり、相違点5-1について検討するまでもなく、本件発明2は甲5実施例79発明ではない。
(ウ)本件発明2と甲5実施例81発明との対比・判断
両者を対比すると、甲5実施例81発明の「スポーツ飲料の調製方法」は、本件発明2の「保存食料品を調製するための方法」と、「食料品を調製するための方法」である限りにおいて一致する。また、甲5実施例81発明のスポーツ飲料中のリナロール濃度は、3/100×0.1/200=15ppmであるから、本件発明2の「食料品が60ppm未満のリナロールを含む」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「食料品を調製するための方法であって、保存食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。」
(相違点)
・相違点5-3
調製する食料品について、本件発明2は「保存」食料品と特定するのに対し、甲5実施例81発明はそのように特定されていない点。
・相違点5-4
本件発明2は、「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程」を含むことを特定するのに対し、甲5実施例81発明は、そのように特定されていない点。
(エ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点5-4について検討する。
甲5実施例81発明は、表9の実施例81の組成からなる梅様フルーツ香料組成物を原材料として用いており、当該組成物は、サリチル酸メチル1.5質量部と、トランス-2-ヘキセノール(本件発明2の「E-2-ヘキセノール」に対応する。)1.5質量部を含む。仮に、甲5実施例81発明の梅様フルーツ香料組成物が本件発明2の防腐組成物に対応するものと解釈しても、甲5実施例81発明の梅様フルーツ香料組成物は「E-2-ヘキセナール」を含有しておらず、両者は成分の組成が一致しない。さらに、甲5実施例81発明の梅様フルーツ香料組成物は、スポーツ飲料に嗜好性の高い香味を付与する原材料として用いられる(甲5の【0005】-【0006】)ものであって、「防腐組成物」とはいえず、「食料品に添加する」ものであるともいえない。
そうすると、相違点5-4は実質的な相違点であり、相違点5-3について検討するまでもなく、本件発明2は甲5実施例81発明ではない。
(オ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書17頁において、以下のとおり主張する。
「甲5発明における「飲食品」は、本件特許発明2における「保存食料品」に相当する。スポーツ飲料に添加するフルーツ様香料組成物はサリチル酸メチル、トランス-2-ヘキセノール(E-2-ヘキセノール)、トランス-2-ヘキセナール(E-2-ヘキセナール)を含有し、スポーツ飲料中のリナロールは0.1/100×0.1/200=0.5ppm(実施例79)、3/100×0.1/200=15ppm(実施例81)となりいずれも60ppm末満である。同様に、ニアウォーター、炭酸飲料、酸乳飲料、カクテル(実施例79のフルーツ様香料組成物のみ)、ゼリー(実施例79のフルーツ様香料組成物のみ)、ヨーグルトムース中のリナロール濃度も60ppm未満になる。
したがって、両者は
F:保存食料品を調製するための方法であって、
G:ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物からなる、
H:防腐組成物を、
I:微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含み、
J:保存食料品が60ppm未満のリナロールを含む、方法。で一致する。」
上記主張について検討する。
申立人は、本件発明2の防腐組成物と、甲5実施例79発明又は甲5実施例81発明のフルーツ様香料組成物とは、成分の組成が一致するものと主張しているが、上記ア及びイで検討したとおり、両者は成分の組成についても一致するものとはいえない。さらに、甲5実施例79発明又は甲5実施例81発明の梅様フルーツ香料組成物は、スポーツ飲料に嗜好性の高い香味を付与する原材料として用いられるものであって、「防腐組成物」とはいえず、「食料品に添加する」ものであるともいえない。甲5の【0007】、【0117】には、香料組成物について、香料が潜在的に持っている防腐の作用・機能を期待できる旨が記載されているものの、当該記載は香料全般に期待される防腐効果について漠然と記載したものにすぎず、実施例79又は実施例81の香料組成物において防腐効果が確かめられたことを開示するものではない。よって、甲5の上記記載を参酌しても甲5実施例79発明又は甲5実施例81発明のフルーツ様香料組成物が「防腐組成物」であるということはできない。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。
(カ)本件発明2についてのまとめ
以上まとめると、相違点5-2及び相違点5-4は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲5実施例79発明又は甲5実施例81発明のいずれでもない。
(3)申立理由4のまとめ
上記のとおり、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4の理由では、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由5(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の【0003】~【0010】等の記載からみて、本件発明3の課題は「抗真菌活性の観点で有益な資質をもたらしてくれる、避けた方がよい化学添加物を含まない防腐組成物を、食品に添加する工程を含む、保存食料品を調製する方法の提供」にあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載について
防腐組成物の成分について、本件明細書の【0012】には「本発明は、ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物、好ましくは少なくとも4つの化合物、より好ましくは少なくとも5つの化合物からなる防腐組成物に関し、またそのような防腐組成物を含む保存食料品にも関する。好ましくは、防腐組成物は、E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物、より好ましくは少なくとも3つの化合物、更により好ましくは少なくとも4つの化合物とからなる。」との記載があり、防腐組成物の濃度について、【0014】には「良好な防腐組成物は、食料品の感覚特性を妨げることなく腐敗微生物を阻害する。保存食料品は、10ppmから10000ppm、より好ましくは50ppmから5000ppm、最も好ましくは100ppmから2500ppmの防腐組成物を含むことが好ましい。明示した濃度は、貯蔵される最終製品中に存在する防腐組成物のレベル(すなわち、保存食料品中に見出されるレベル)に関する。」との記載がある。
そして、【0041】~【0061】には実施例として、各種芳香組成物原液を調製して培地(酵母又はカビでスパイクしたモモフレーバー茶濃縮物)中に希釈し1~12週間培養した後の真菌増殖阻害試験の結果について記載されており、その結果から、ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルの6つをすべて含む試料(試料1、2、4及び5)が酵母及びカビの双方に対して抗真菌活性を示し(【0045】~【0053】、表2)、E-2-ヘキセナール、サリチル酸メチル、E-リナロールオキシド及びヘキサナールのうち3つの化合物を含む試料6~8も抗真菌活性を示した(【0058】~【0061】、表4)のに対し、リナロールのみを含む試料3は抗真菌活性を示さず(【0051】、表2)、ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルの6つの化合物のうち1つの化合物のみを含有する試料は抗真菌活性を示さず、2つ含有する試料は顕著な抗真菌活性を示さなかった(【0054】~【0057】、表3)ことが理解できる。
(4)サポート要件の判断
上記(3)の実施例における実施例の真菌増殖阻害試験の結果についての記載と、一般記載における防腐組成物の組成についての記載等を参酌すると、当業者は、「ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも3つの化合物からなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含」む、又は、「E-2-ヘキセナールと、ヘキサナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルから選択される少なくとも2つの化合物とからなる防腐組成物を、微生物による腐敗の影響を受けやすい食料品に添加する工程を含」むとの特定事項を満たすことで、「天然由来の成分からなる防腐組成物を含むことにより十分な抗真菌活性を有する保存食料品を提供すること」ができ、発明の課題を解決できるものと認識することができる。
そして、本件発明3は、上記発明の課題を解決し得るものと認識できる特定事項の全てを有するものであるから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人の主張について
申立人は、本件特許のサポート要件に関して上記第3 5のように主張しているので、以下、検討する。
本件明細書には、実施例1の真菌の増殖阻害試験における芳香組成物原液の調製と添加方法について、以下の記載がある。
「芳香組成物原液を調製した。Table 1(表1)に、4つのそのような芳香組成物原液(試料1から5)中に存在する芳香化合物をまとめる。各芳香組成物原液における化合物(含まれる場合)の濃度は、以下の通りであった:メタノール(12900ppm)、E-2-ヘキセナール(6280ppm)、リナロール(3170ppm)、Z-3-ヘキセノール(1070ppm)、E-リナロールオキシド(973ppm)、サリチル酸メチル(833ppm)、ヘキサナール(509ppm)、E-2-ヘキセノール(492ppm)、アセトアルデヒド(365ppm)、Z-2-ペンテン-1-オール(344ppm)、1-ペンテン-3-オール(251ppm)、1-ペンテン-3-オン(107ppm)。」(【0045】)
「真菌の増殖阻害試験のために、培地が2%(体積で)の当該芳香組成物を含有するように、適切な原液を培地(すなわち、非保存モモフレーバー茶濃縮物)中に希釈した。」(【0046】)
上記記載によれば、実施例1では、試料1~5に対応して【0045】に列記される濃度で各化合物を含有する各芳香組成物原液を調製し、次いで、培地が当該芳香組成物原液を2体積%含有するように各試料に係る原液を培地に添加し、真菌の増殖阻害試験を行ったことが理解できる。(なお、【0046】には「培地が2%(体積で)の当該芳香組成物を含有するように」との記載があるが、芳香組成物原液中の化合物の含有量からみて、培地中の化合物自体の含有量が2%となるように原液を培地に添加することは不可能であり、上記記載は「培地が2%(体積で)の当該芳香組成物原液を含有するように」との意味であることは明らかである。)
そして、培地中の芳香組成物の含有量を計算すると、例えば6種類の化合物を含有する試料4では、芳香組成物原液にメタノール(12900ppm)、E-2-ヘキセナール(6280ppm)、E-リナロールオキシド(973ppm)、サリチル酸メチル(833ppm)、ヘキサナール(509ppm)及びE-2-ヘキセノール(492ppm)が含まれるから、培地及び原液の比重を1として、培地中の各化合物の合計含有量は(12900+6280+973+833+509+492)×0.02=439.74ppmと算出され、10~10000ppmの範囲内である。実施例1の他の試料及び実施例2、3の各試料についても同様に、培地中の芳香組成物の含有量は10~10000ppmの範囲内となる。そうすると、本件明細書の実施例における真菌増殖阻害試験は、本件発明3の「前記食料品が10ppmから10000ppmの前記防腐組成物を含むような量で前記防腐組成物を前記食料品に添加する」との特定事項を満たす条件で行われているといえ、当業者は当該実施例の記載等に基づいて「10ppmから10000ppm」の濃度で発明の課題を解決できると認識することができる。
申立人は、本件発明3で特定される防腐組成物の濃度範囲が、実施例の試験濃度よりも極めて低いと主張しているが、上記したとおり、申立人が主張の根拠として引用する【0045】等の記載は、前後の文脈からみて、芳香組成物原液の濃度を記載したものであることが明らかであるから、申立人の主張は本件明細書の記載に基づくものといえず、妥当でない。
(6)申立理由5についてのまとめ
以上のことから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、その発明についての特許は、同条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由5(サポート要件)により本件発明3についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできないものである。
また、他に、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700628