特許異議申立
2022-700441
柑橘果汁飲料、その製造方法、及び柑橘果汁飲料の酸味軽減方法
- 審判番号
- 2022-700441
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-043878
- 登録番号
- 6985538
- 請求日
- 2022年05月20日
- 審決日
- 2023年05月22日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】日本香料工業会
- 【異議申立人】新井 誠一
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 三上 晶子
- 審判官 池渕 立
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6985538号発明「柑橘果汁飲料、その製造方法、及び柑橘果汁飲料の酸味軽減方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6985538号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。
特許第6985538号の請求項1ないし3及び5ないし8に係る特許を維持する。
特許第6985538号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6985538号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和3年3月17日を出願日とする特願2021-43878号に係るものであって、令和3年11月29日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年12月22日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年5月20日に特許異議申立人 日本香料工業会(以下、「特許異議申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年6月21日に特許異議申立人 新井 誠一(以下、「特許異議申立人2」という。)により特許異議申の申立て(対象請求項:全請求項)がなされ、同年10月31日付けで取消理由が通知され、同年12月23日に特許権者 ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書の提出がされ、令和5年1月12日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人1及び2に対して行ったところ、同年2月17日に特許異議申立人2から意見書が提出され、特許異議申立人1からは応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正事項1ないし3は、請求項1ないし5という一群の請求項に係る訂正であり、訂正事項4は、請求項6に係る訂正である。下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
と記載されているのを、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2,3,5も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「前記香酸柑橘類がレモンである請求項4に記載の柑橘果汁飲料。」
と記載されているのを、
「前記香酸柑橘類がレモンである請求項1~3のいずれか一項に記載の柑橘果汁飲料。」
に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
と記載されているのを、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「柑橘果汁」を、訂正後の請求項1において「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」へと訂正するものであって、「柑橘果汁」の発明特定事項をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項4の記載からみて、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2、3及び5についても同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項4を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項5の訂正は、訂正事項2により、請求項4が削除されて引用できなくなったことに伴い従属関係を変更したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項6の「柑橘果汁」を、訂正後の請求項6において「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」へと訂正するものであって、「柑橘果汁」の発明特定事項をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項4の記載からみて、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。また、総称して「本件発明」という。)は、令和4年12月23日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)
【請求項2】
前記柑橘果汁飲料の糖酸比が2.0以下である請求項1の柑橘果汁飲料。
【請求項3】
前記柑橘果汁飲料の果汁率が30%以上200%未満である請求項1又は2に記載の柑橘果汁飲料。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記香酸柑橘類がレモンである請求項1~3のいずれか一項に記載の柑橘果汁飲料。
【請求項6】
オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料の製造方法であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たすようにする工程を有する柑橘果汁飲料の製造方法。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)
【請求項7】
柑橘果汁飲料の果汁率が30%以上200%未満の柑橘果汁を含む高果汁率の柑橘果汁飲料の酸味軽減方法であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たすよう調製する柑橘果汁飲料の酸味軽減方法。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)
【請求項8】
前記柑橘果汁飲料の糖酸比が2.0以下である請求項7に記載の柑橘果汁飲料の酸味軽減方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
1 令和4年5月20日に特許異議申立人1が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書1」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1) 申立理由1-1(甲第1-1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1-1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1-1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2) 申立理由1-2(甲第1-2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1-2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1-2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3) 申立理由1-3(甲第1-3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1-3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1-3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6及び7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4) 申立理由1-4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・既存の柑橘果汁にすでにオクタナール及びデカナールが含まれていることによるもの。
・文言「含有」に伴うもの。
(5) 申立理由1-5(明確性)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・既存の柑橘果汁にすでにオクタナール及びデカナールが含まれていることによるもの。
・文言「含有」に伴うもの。
(6) 申立理由1-6(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・既存の柑橘果汁にすでにオクタナール及びデカナールが含まれていることによるもの。
・文言「含有」に伴うもの。
・実施例から拡張できない。
(7) 証拠方法
甲第1-1号証:J. Agric. Food Chem. 41(1993)809-813; P.E. Shaw, B.S. Buslig,M.G. Moshonas(Classification of commercial orange juice types by pattern recognition involving volatile constituents quantified by gas chromatography)
甲第1-2号証:Lebensm. -Wiss.u.-Technol.,34(2001)244-250; M.J.Jorcan,T.N. Tillman,B. Mucci,J. Laencina(Using HS-SPME to determine the effects of reducing insoluble solids on aromatic composition of orange juice)
甲第1-3号証:Die Nahrung 30(1986)8 783-790; J. Pino,R. Torricella,F. Orsi(Correlation between sensory and gas-chromatographic measuerments on grapefruit juice volatiles(当審注:著者中 「Orsi」の「O」はウムラウトである。)
甲第1-4号証:Essential oils,eds B.D. Mookherjee,C.J. Mussinan,Allured Publishing Corp.,Wheaton,IL 60187 USA(1981)199-228;C.J. Mussinan,B.D. Mookherjee,G.I. Malcolm(Isolation and Identification of the Volatile Constituents of Fresh Lemon Juice)
甲第1-5号証:再公表特許WO2016/148151
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書1の記載に従った。
以下、順に「甲1-1」のようにいう。
2 令和4年6月21日に特許異議申立人2が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書2」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1) 申立理由2-1(甲第2-1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び6ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2-1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2) 申立理由2-2(甲第2-2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、4及び6ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2-2号証に記載された発明並びに甲第2-1号証及び甲第2-8号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3) 申立理由2-3(甲第2-3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2-3号証に記載された発明並びに甲第2-1号証及び甲第2-8号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4) 申立理由2-4(甲第2-4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2-4号証に記載された発明並びに甲第2-1号証及び甲第2-8号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5) 申立理由2-5(甲第2-5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2-5号証に記載された発明並びに甲第2-1号証及び甲第2-8号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(6) 申立理由2-6(甲第2-6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2-6号証に記載された発明並びに甲第2-1号証及び甲第2-8号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(7) 申立理由2-7(甲第2-2号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-2号証に記載された発明並びに甲第2-1号証、甲第2-8号証及び甲第2-9号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(8) 申立理由2-8(甲第2-12号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-12号証に記載された発明並びに甲第2-1号証、甲第2-3号証、甲第2-6号証及び甲第2-8号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(9) 申立理由2-9(甲第2-14号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2-14号証に記載された発明並びに甲第2-1号証、甲第8号証及び甲第2-15号証ないし甲第2-17号証の記載に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(10) 申立理由2-10(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・レモンの実施例からは全ての柑橘類はサポートされない。
・果汁率を10%を超過する範囲としていないからサポート違反。
・糖酸比について特定されていないからサポート違反。
(11) 証拠方法
特許異議申立書2に添付して以下の証拠を提出した。
甲第2-1号証:Food Chemistry,134,696-703(2012)
甲第2-2号証:Food Sci. Technol. Res.,19(5),843-848(2013)
甲第2-3号証:Innovative Food Science and Emerging Technologies 6(2005)372-387
甲第2-4号証:Lebensm.-Wiss. U.-Technol. 36(2003)391-396
甲第2-5号証:J. Agric. Food Chem.,48,2425-2429(2000)
甲第2-6号証:Volatile Compounds in Foods and Beverages,p.305-327(1991)
甲第2-7号証:カラマンシー/四季橘
https://www.kudamononavi.com/gallerys/view/id=7322
甲第2-8号証:果実飲料の日本農林規格
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-27.pdf
甲第2-9号証:シークワーサージュースおすすめランキング3選!
https://corollia.com/shikuwasa-juice/
甲第2-10の1号証:日本食品工業学会誌第25巻第3号(1978)p.147-152 温州ミカン果汁の糖度及び酸含量と嗜好の関係
甲第2-10の2号証:フルーツのおいしさの指標となる糖度。
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2019/08/post-5924.html
甲第2-11の1号証:2013年2月20日ニュースリリース
https://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/130220_01.html
甲第2-11の2号証:2014年8月19日ニュースリリース
https://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/140819_01.htm1#:~:text=%E3%82%92%E4%B8%80%E6%96%B0%EF%BC%81-,%E3%80%8E%E3%82%AD%E3%83%AC%E3%83%88E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3%20155ml%E3%83%93%E3%83%B3%E3%80%8F,%E3%81%A7%E6%96%B0%F7%99%BA%E5%A3%B2%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
甲第2-11の3号証:ポッカサッポロ「キレートレモンWレモン(500ml)」実飲レビュー
https://engiinc.jp/blog/pokkas-klwl/
甲第2-11の4号証:Pokka Kire-To Sparkling Lemon Drink(Mintel記録番号(ID#):2039382)
甲第2-11の5号証:Pokka Sapporo Chelate Lemon Carbonated Lemon Drink(Mintel記録番号(ID#):2671213)
甲第2-12号証:Kirin Honshibori Orange FAB(Mintel記録番号(ID#):4853283)
甲第2-13号証:2012年11月28日ニュースリリース
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2012/1128c_01.html
甲第2-14号証:特開2016-146825号公報
甲第2-15号証:特開2018-126115号公報
甲第2-16号証:特開2019-140924号公報
甲第2-17号証:特開2019-135990号公報
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書2の記載に従った。
また、令和5年2月17日提出の意見書に添付して、以下の証拠を提出した。
甲第2-18号証:Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi Vol.39,No.1,16-24(1992)
甲第2-19号証:すだちと他の柑橘類を徹底比較!
https://sudachi.net/sudachi_compare
甲第2-20号証:シークヮーサー・表記・わかりやすく解説 Weblio辞書
https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AE%E3%83%BC%E3%82%%B5%E3%83%BC_%E8%A1%A8%E8%A8%98
甲第2-21号証:カンキツ類果汁酸度の種類間差異および酸濃度間,酸濃度-カリウム濃度間の関係
なお、証拠の表記は、おおむね意見書の記載に従った。
以下、順に「甲2―1」のようにいう。
第5 令和4年10月31日付で特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1ないし4及び6に係る特許に対して、当審が令和4年10月31日付で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由は、申立理由のうち、次の部分を包含する。
・申立理由1-1のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由1-2のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由1-3のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由2-1のうち、請求項1ないし4及び6に係る部分
・申立理由2-2のうち、請求項1ないし4及び6に係る部分
・申立理由2-3のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由2-4のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由2-5のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由2-6のうち、請求項1、3及び6に係る部分
・申立理由2-8のうち請求項1、3及び6に係る部分
1 取消理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 取消理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 取消理由1-3(甲1-3に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1-3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 取消理由2-1(甲2-1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 取消理由2-2(甲2-2に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 取消理由2-3(甲2-3に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 取消理由2-4(甲2-4に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
8 取消理由2-5(甲2-5に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-5に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
9 取消理由2-6(甲2-6に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-6に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
10 取消理由2-7(甲2-12に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-12に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-12に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
11 取消理由2-8(甲2-9に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2-9に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由及びその取消理由として採用しなかった請求項についての異議申立て理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、令和4年10月31日付けで通知した取消理由にはいずれも理由がないと判断するとともに、その取消理由として採用しなかった請求項についての異議申立て理由についても、いずれも理由がないと判断する。
1 取消理由1-1及び申立理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲1-1に記載された事項等
ア 甲1-1に記載された事項
甲1-1には、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1-1は外国語であるので、翻訳文のみ摘記する。以下、同じ。
・「
[図:0001400440000001.jpg]
a各タイプのジュースサンプルの、各繰り返しの分析は、図1~3で識別できるように、個別に番号を付した。
b特に明記されていない限り、小売市場向けに商業的に包装されている。
cNFC = 濃縮還元でない。
d市販の未殺菌ジュース、購入日4月27日(no.18-21)、4月17日(no.22-25)、4月20日(no.26-29)
e1992年4月3日に商業的に抽出された、殺菌されていないバレンシアジュース/分析前に11.8°Brixジュースに再構成。
f250mLの長方形の柔軟なカートンに無菌的にパッケージ化されている。
GCによって定最化された19の基本的揮発性成分の分析に基づく。
材料と方法
ジュースサンプル
18の市販のジュースサンプルを使用した。各々の分析は3~4回繰り返した。結果概要をTable Iに示す。5種類のジュースサンプルは濃縮還元ではない低温殺菌ジュースである(表Iのサンプル1~17)。
4つのフレッシュジュース(低温殺菌されていない)を分析した。そのうち3つは果汁抽出時(賞味期限は当日限り)から17日間経過した市販の生絞りジュース(フロリダ柑橘類部門、1992年)であり、1つは地元の商業用ジュース抽出物から直接採取した新鮮なバレンシアオレンジジュースであった(サンプル18-33)。
濃縮還元オレンジジュースの7つのサンプルには、冷凍濃縮オレンジジュース(FCOJ)3つ、分析用に再構成された無菌充填濃縮物1つ、および濃縮還元し、シングルストレングス(100%果汁相当)としたジュース3つが含まれる。
無菌的にパックされた2つのサンプルは、柔軟な多層250mLカートンにパッケージされた、濃縮物からのシングルストレングスジュースであった(サンプル55~60)。
処理ラインから直接得られた1つの無菌包装されたシングルストレングスジュースと、加工業者によって提供された無菌包装された涙縮物を除いて、商業的に包装されたサンプルは全て地元の市場で購入し、分析されるまでそれぞれ-18℃で保管した。」(809頁右欄~810頁左欄5行)
・「
[図:0001400440000002.jpg]
a同じ行の後に共通の文字が続く平均は、有意差はない(P>0.05)。各サンプルの3回または4回の繰り返しの分析値がこの計算に使用された。
b4つの未殺菌ジュースサンプル:3つの市販の「絞りたての」サンプルと1つの商業的に搾汁されて作られたバレンシアジュース。
c濃縮物からではない、5つの、純粋なプレミアム殺菌ジューススサンプル。
d7つのサンプル、3つは冷凍濃縮オレンジジュース、1つは分析用に再構成された無菌包装濃縮物、3つは濃縮還元のシングルストレングスジュース。
e2つの無菌パックジュース(250mlカートン入り)」(810頁上欄)
・「ジュースのヘッドスペースGC分析
TFE/シリコンセプタムシール付きのクリンプトップキャップでシールされた10mLバイアル内のジュースの2mLサンプルを80℃で15分間平衡化した。このバイアルはFID検出機付きPerkin-Elmer Model 8500GCが接続された、モデルHS-6ヘッドスペースサンプラーとつながっている。
極性Durowaxカラム(J&W Scientific、カリフォルニア州フォルサム)内部コート1.0μm厚、径0.53mm×長さ30mを、ヘッド圧力6.0psi(81cm/s均等ガス速度)のヘリウムキャリアガスにて使用した。ヘッドスペースサンプラーの注入条件は、バイアル加圧時間0.5分、続いて注入時間0.02分であった。GC温度プログラムは、始めに40℃で6分間保持し、その後6℃/分で上昇させ、180℃まで上げた。FIDアンプの範囲は高感度に設定し、検出器の温度は250℃とした。
すべての決定は3回または4回繰り返し行った。
個々の化合物は、標準品と、ジュースに標準品を添加して標準品の濃度を高めたサンプルの保持時間との比較によって識別した。
19の化合物の濃度は、回帰式を使用して計算した。すなわち、ジュースベースに各化合物を5つの異なる濃度で添加したものを注入して、前述のピーク高さの検量線を用いて計算した(Nisperos-Carriedo and Shaw、1990)。
ジュースベースは、エバポレーターからの濃縮ジュース(ポンプアウト)を、フレーバー画分を添加せずにBx11.8°に再構成することによって調製した。」(810頁左欄6~28行)
イ 甲1-1に記載された発明
甲1-1には、上記アから、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1-1発明>
「オクタナールが平均で0.48ppmであって0.13~0.83ppmのレンジで包含し、
デカナールが平均で0.35ppmであって0~0.74ppmのレンジで含有する7つの濃縮還元オレンジジュースの中で、オクタナールの量が平均値の0.48よりの大きな値をとる1つのサンプルの濃縮還元オレンジジュース。」
<甲1-1製法発明>
「甲1-1発明の製造方法。」
(2) 本件発明1との対比・判断
本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
甲1-1発明の「濃縮還元オレンジジュース」は、本件発明1の「柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり」と、「柑橘果汁飲料」の限りで共通する。
甲1-1発明は、本件発明1と同様に「オクタナールとデカナールを含有する」ものである。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲1-1発明は、「濃縮還元オレンジジュース」である点
<相違点1-1-2>
本件発明1は、「前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)
」と特定するのに対し、甲1-1発明は、オクタナールが平均で0.48ppmであって0.13~0.83ppmのレンジで包含し、デカナールが平均で0.35ppmであって0~0.74ppmのレンジで含有するものである点
以下、相違点1-1-1について検討する。
オレンジは、香酸柑橘類ではないから、相違点1-1-1は、実質的な相違点である。よって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明でない。
そして、甲1-1及び他の証拠には、甲1-1発明の「濃縮還元オレンジジュース」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1-1発明において、相違点1-1-1に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明3との対比・判断
本件発明3は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、甲1-1発明であるとはいえないし、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲1-1製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲1-1製法発明でないし、甲1-1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7について
甲1-1の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲1に記載された発明とはいえないし、甲1-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由1-1には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明7に対する申立理由1-1も理由がない。
2 取消理由1-2及び申立理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲1-2に記載された発明
甲1-2(特に、245頁左欄、247頁右欄及び表3参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1-2発明>
「オクタノールが平均0.21mg/kg±0.25で含有し、
デカナールが平均0.76mg/kg±0.29で含有する、
フィニッシャー装置の出口で採取された抽出したてのオレンジシュースサンプル10個のうちの、オクタノールの含有量が平均値の0.21mg/kgより大きな値をとる1つのサンプルのオレンジジュース。」
<甲1-2製法発明>
「甲1-2発明の製造方法。」
(2) 本件発明1について
本件発明1と甲1-2発明とを対比する。
甲1-2発明の「オレンジジュース」は、本件発明1の「柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり」と、「柑橘果汁飲料」の限りで共通する。
甲1-2発明は、本件発明1と同様に「オクタナールとデカナールを含有する」ものである。
そうすると、本件発明1と甲1-2発明は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-2-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲1-2発明は、「オレンジジュース」である点
<相違点1-2-2>
本件発明1は、
「前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
と特定するのに対し、甲1-2発明は、オクタノールが平均0.21mg/kg±0.25で含有し、デカナールが平均0.76mg/kg±0.29で含有するものである点
以下、相違点1-2-1について検討する。
オレンジは、香酸柑橘類ではないから、相違点1-2-1は、実質的な相違点である。よって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-2発明でない。
そして、甲1-2及び他の証拠には、甲1-2発明の「オレンジジュース」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1-2発明において、相違点1-2-1に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明3との対比・判断
本件発明3は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、甲1-2発明であるとはいえないし、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲1-2製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲1-2製法発明でないし、甲1-2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7について
甲1-2の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲1-2に記載された発明とはいえないし、甲1-2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由1-2には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明7に対する申立理由1-2も理由がない。
3 取消理由1-3及び申立理由1-3(甲1-3に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲1-3に記載された発明
甲1-3(特に、786頁表2参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1-3発明>
「オクタノールを810ppb、デカナールを490ppb含有する、グレープフルーツジュース。」
<甲1-3製法発明>
「甲1-3発明の製造方法。」
(2) 本件発明1について
本件発明1と甲1-3発明とを対比する。
甲1-3発明の「グレープフルーツジュース」は、本件発明1の「柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり」と、「柑橘果汁飲料」の限りで共通する。
甲1-3発明は、本件発明1と同様に「オクタナールとデカナールを含有する」ものである。
甲1-3発明のオクタナールの含有量である810ppbは、単位変換すると0.81ppmであるから、本件発明1のオクタナールの含有量の特定である0.1≦X≦1を満足し、オクタノールとデカナールとの関係式である(4)を満たしている。
そうすると、本件発明1と甲1-3発明は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-3-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲1-3発明は、「グレープフルーツジュース」である点
以下、相違点1-3-1について検討する。
グレープフルーツは、香酸柑橘類ではないから、相違点1-3-1は、実質的な相違点である。よって、本件発明1は、甲1-3発明でない。
そして、甲1-3及び他の証拠には、甲1-3発明の「グレープフルーツジュース」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1-3発明において、相違点1-3-1に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明3との対比・判断
本件発明3は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、甲1-3発明であるとはいえないし、甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲1-3製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲1-3製法発明でないし、甲1-3製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7について
甲1-3の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲1-3に記載された発明とはいえないし、甲1-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由1-3には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明7に対する申立理由1-3も理由がない。
4 取消理由2-1及び申立理由2-1(甲2-1に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-1に記載された発明
甲2-1(特に、700頁表1のマレーシア産参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-1発明>
「オクタナールを0.63ppm含有し、
デカナールを0.52ppm含有する
カラマンシー果汁。」
<甲2-1製法発明>
「甲2-1発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-1発明との対比・判断
本件発明1と甲2-1発明を対比する。
甲2-1発明の「カラマンシー果汁」は、本件発明1の「柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり」と、「柑橘果汁飲料」の限りで共通する。
甲2-1発明は、本件発明1と同様に「オクタナールとデカナールを含有する」ものである。
甲2-1発明のオクタナールの含有量である0.63ppmは、本件発明1のオクタナールの含有量の特定である「0.1≦X≦1」を満足し、デカナールの含有量は0.52ppmであることから、オクタナールとデカナールとの関係式である「(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」を満たしている。
そうすると、本件発明1と甲2-1発明は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-1発明は、「カラマンシー果汁」である点
以下、相違点2-1-1について検討する。
甲2-1発明は「カラマンシー果汁」の発明であり、「カラマンシー」を含むことから、相違点2-1-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-1発明でない。
また、甲2-1及び他の証拠には、甲2-1発明の「カラマンシー果汁」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-1発明において、相違点2-1-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明2、3は、本件発明1と同様に、甲2-1発明であるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-1製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-1製法発明でないし、甲2-1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-1の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7及び8は、甲2-1に記載された発明とはいえないし、甲2-1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1ないし3及び6に対する取消理由2-1には理由がないし、取消理由において採用しなかった本件発明5、7及び8に対する申立理由2-1も理由がない。
5 取消理由2-2並びに申立理由2-2及び申立理由2-7(甲2-2に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-2に記載された発明
甲2-2(特に、846頁表4のシークワーサー濃度0%参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-2発明>
「オクタナールを0.43ppm含有し、
デカナールを0.46ppm含有する
カラマンシー果汁。」
<甲2-2製法発明>
「甲2-2発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-2発明との対比・判断
本件発明1と甲2-2発明を対比する。
甲2-2発明の「カラマンシー果汁」は、本件発明1の「柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり」と、「柑橘果汁飲料」の限りで共通する。
甲2-2発明は、本件発明1と同様に「オクタナールとデカナールを含有する」ものである。
甲2-2発明のオクタナールの含有量である0.43ppmは、本件発明1のオクタナールの含有量の特定である「0.1≦X≦1」を満足し、デカナールの含有量は0.46ppmであることから、オクタナールとデカナールとの関係式である「(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」を満たしている。
そうすると、本件発明1と甲2-2発明は、
「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-2-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-2発明は、「カラマンシー果汁」である点
以下、相違点2-2-1について検討する。
甲2-2発明は「カラマンシー果汁」の発明であり、「カラマンシー」を含むことから、相違点2-2-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-2発明でない。
また、甲2-2及び他の証拠には、甲2-2発明の「カラマンシー果汁」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-2発明において、相違点2-2-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明3は、本件発明1と同様に、甲2-2発明であるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-2製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-2製法発明でないし、甲2-2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-2の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7及び8は、甲2-2に記載された発明とはいえないし、甲2-2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1ないし3及び6に対する取消理由2-2には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明5、7及び8に対する申立理由2-2、申立理由2-7も理由がない。
6 取消理由2-3及び申立理由2-3(甲2-3に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-3に記載された発明
甲2-3(特に、380頁表7参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-3発明>
「オクタナールを0.88μg/ml含有し、
デカナールを0.84μg/ml含有する
加工オレンジ果汁。」
<甲2-3製法発明>
「甲2-3発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-3発明との対比・判断
本件発明1と甲2-3発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2-3-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-3発明は、「加工オレンジ果汁」である点
以下、相違点2-3-1について検討する。
オレンジは、香酸柑橘類ではないから、相違点2-3-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-3発明でない。
また、甲2-3及び他の証拠には、甲2-3発明の「加工オレンジ果汁」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-3発明において、相違点2-3-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明3は、本件発明1と同様に、甲2-3発明であるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-3製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-3製法発明でないし、甲2-3製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-3の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲2-3に記載された発明とはいえないし、本件発明7及び8は、甲2-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由2-3には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明2、5、7及び8に対する申立理由2-3も理由がない。
7 取消理由2-4及び申立理由2-4(甲2-4に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-4に記載された発明
甲2-4(特に、394頁表1参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-4発明>
「オクタナールを0.25±0.18mg/Kg含有し、
デカナールを0.81±0.21mg/Kg含有する
脱気装置を出た後に採取された10個のオレンジ果汁の中で、
オクタナールの平均値である0.25を超える値をとる1つのオレンジ果汁。」
<甲2-4製法発明>
「甲2-4発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-4発明との対比・判断
本件発明1と甲2-4発明を対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点2-4-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-4発明は、「オレンジ果汁」である点
以下、相違点2-4-1について検討する。
オレンジは、香酸柑橘類ではないから、相違点2-4-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-4発明でない。
また、甲2-4及び他の証拠には、甲2-4発明の「オレンジ果汁」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-4発明において、相違点2-4-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3は、甲2-4発明であるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-4製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-4製法発明でないし、甲2-4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-4の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲2-4に記載された発明とはいえないし、本件発明7及び8は、甲2-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由2-4には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明2、5、7及び8に対する申立理由2-4も理由がない。
8 取消理由2-5及び申立理由2-5(甲2-5に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-5に記載された発明
甲2-5(特に、2426頁表1参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-5発明>
「オクタナールが平均で0.38ppmであって0.13~0.81ppmのレンジで包含し、
デカナールが平均で0.36ppmであって0.008~0.98ppmのレンジで含有する
21の濃縮果汁を還元したグレープフルーツ果汁のなかで、オクタナールの含有量がオクタナールの平均値の0.38よりも大きな値である一つのグレープフルーツ果汁。」
<甲2-5製法発明>
「甲2-5発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-5発明との対比・判断
本件発明1と甲2-5発明を対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点2-5-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-5発明は、「グレープフルーツ果汁」である点
以下、相違点2-5-1について検討する。
グレープフルーツは、香酸柑橘類ではないから、相違点2-5-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-5発明でない。
また、甲2-5及び他の証拠には、甲2-5発明の「グレープフルーツ果汁」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-5発明において、相違点2-5-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3は、甲2-5発明であるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-5製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-5製法発明でないし、甲2-5製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-5の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲2-5に記載された発明とはいえないし、本件発明7及び8は、甲2-5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由2-5には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明2、5、7及び8に対する申立理由2-5も理由がない。
9 取消理由2-6及び申立理由2-6(甲2-6に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-6に記載された発明
甲2-6(特に、307頁表1、313頁表3参照。)には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-6発明A>
「オクタナールを0.88ppm含有し、
デカナールを0.84ppm含有する
加工オレンジジュース。」
<甲2-6発明B>
「オクタナールを0.36ppm含有し、
デカナールを0.36ppm含有する
加工マンダリンジュース。」
<甲2-6製法発明A>
「甲2-6発明Aの製造方法。」
<甲2-6製法発明B>
「甲2-6発明Bの製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-6発明A及び甲2-6発明Bとの対比・判断
ア 甲2-6発明A
本件発明1と甲2-6発明Aとを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点2-6-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-6発明Aは、「加工オレンジジュース」である点
以下、相違点2-6-1について検討する。
オレンジは、香酸柑橘類ではないから、相違点2-6-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-6発明Aでない。
また、甲2-6及び他の証拠には、甲2-6発明Aの「加工オレンジジュース」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-6発明Aにおいて、相違点2-6-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-6発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
イ 甲2-6発明B
本件発明1と甲2-6発明Bとを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点2-6-2>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-6発明Bは、「加工マンダリンジュース」である点
以下、相違点2-6-2について検討する。
マンダリンは、香酸柑橘類ではないから、相違点2-6-2は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-6発明Bでない。
また、甲2-6及び他の証拠には、甲2-6発明Bの「加工マンダリンジュース」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-6発明Bにおいて、相違点2-6-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-6発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3は、甲2-6発明A又はBであるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-6発明A又はBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-6製法発明A又はBとを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-6製法発明A又はBでないし、甲2-6製法発明A又はBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-6の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7は、甲2-6に記載された発明とはいえないし、本件発明7及び8は、甲2-6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由2-6には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明2、5、7及び8に対する申立理由2-6も理由がない。
10 取消理由2-7及び申立理由2-8(甲2-12に基づく新規性・進歩性)について
(1) 甲2-12に記載された発明
甲2-12には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-12発明>
「オレンジ果汁45%入りのアルコール飲料。」
<甲2-12製法発明>
「甲2-12発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-12発明との対比・判断
本件発明1と甲2-12発明を対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点2-12-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-12発明は、「オレンジ果汁」である点
以下、相違点2-12-1について検討する。
甲2-12発明は「オレンジ果汁45%入りのアルコール飲料」の発明であり、「オレンジ」を含むことから、香酸柑橘類の果汁飲料でなく、相違点2-12-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-12発明でない。
また、甲2-12及び他の証拠には、甲2-12発明において、「オレンジ果汁」を「香酸柑橘類(カラマンシ-及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-12発明において、相違点2-12-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3は、甲2-12発明であるとはいえないし、本件発明2、3及び5は、甲2-12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-12製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-12製法発明でないし、甲2-12製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-12の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7及び8は、甲2-12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1、3及び6に対する取消理由2-7には理由がないし、取消理由として採用しなかった本件発明2、5、7及び8に対する申立理由2-8も理由がない。
11 取消理由2-8(甲2-9に基づく新規性・進歩性)
(1) 甲2-9に記載された発明
甲2-9には、[おすすめ3]の「山原シークワーサー100%」を「水」を用いて「10倍」に薄めたジュースに注目すると、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2-9発明>
「シークワーサー果汁を10倍に希釈したシークワーサージュース。」
<甲2-9製法発明>
「甲2-9発明の製造方法。」
(2) 本件発明1と甲2-9発明との対比・判断
本件発明1と甲2-9発明を対比する、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2-9-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-9発明は、「シークワーサー果汁」である点
以下、相違点2-9-1について検討する。
甲2-9発明は「シークワーサージュース」の発明であり、「シークワーサー」を含むことから、相違点2-9-1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2-9発明でない。
また、甲2-9及び他の証拠には、甲2-9発明の「シークワーサー果汁」にかえて「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2-9発明において、相違点2-9-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲2-9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-9製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-9製法発明でないし、甲2-9製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4) まとめ
よって、本件発明1及び6に対する取消理由2-8には理由がない。
第7 取消理由に全く採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由に全く採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1-4(実施可能要件違反)、申立理由1-5(明確性)、申立理由1-6(サポート要件)、申立理由2-9(甲2-14に基づく進歩性)、申立理由2-10(サポート要件)である。
以下、検討する。
1 申立理由1-4及び申立理由1-5(実施可能要件・明確性)について
(1) 特許異議申立人1の主張
特許異議申立人1は、以下の主張をしている。
ア 主張1-1
既存の柑橘果汁にすでにオクタナール及びデカナールが含まれていることによる実施可能性要件違反等
オレンジ果汁やグレープフルーツ果汁にはそもそも、すでに各請求項に表された式の範囲内のオクタナールとデカナールが含まれている(甲1-1及び甲1-2)。また、レモン果汁にはそもそも、すでに0.032ppmのオクタナールが含まれている(甲1-4)。
そうすると、本発明を実施するためには、まずはじめに、オクタナールとデカナールが全く含まれていない柑橘果汁を何らかの手段で調達又は調整し、オクタナールとデカナール含有量を確認する作業が必要であると認められる。しかしながら、そのような手段(例えば、分析方法)は明細書中に全く記載がない。
そうする柑橘果汁をどのようにすればオクタナールとデカナールの含有量を各請求項の関係式で表された範囲内とすることができるのか、当業者であっても認識することができない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
また、明細書の記載が実施可能でないゆえに、特許請求の範囲に記載の発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、不明確となっている。
イ 主張1-2
文言「含有」に伴う実施可能要件違反等
「含有」という文言は、一般的には、その文字通り、その組成物の中に含まれている特定成分の量であるととらえるべき文言であるが、本特許の詳細な説明では、オクタナールとデカナールが含まれていない柑橘(レモン)果汁(段落【0038】)にオクタナールとデカナールを添加し、その添加量をもって含有量としていると認められる。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明、特に実施例を参考に本発明を実施しようとしても、原料の柑橘果汁として、特に、オクタナールとデカナールが含まれていない果汁を使用しない限り、元々果汁に含まれていたオクタナールとデカナールに、外部から加えたオクタナールとデカナールが加算されることになり、果汁中のオクタナールとデカナールの含有量は、分析しなければ判明しない。しかしながら、そのような分析方法、確認方法は明細書中に全く記載がなく、柑橘果汁をどのようにすればオクタナールとデカナールの含有量を本件発明の関係式で表された範囲内とすることができるのか、当業者であっても認識することができず、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(2) 実施可能要件及び明確性の判断
まず、特許請求の範囲に記載されている発明においての「オクタナール」及び「デカナール」の含有量は、柑橘果汁飲料中の含有量であることは明らかで、特許請求の範囲の記載は明確であり、発明の詳細な説明の記載とも整合している。そして、この発明の実施は、たとえ実施例がないとしても当業者は実施できるから、実施可能要件も満足している。
(3) 異議申立人の明確性及び実施可能要件についての主張の検討
上記(2)での判断のとおりであり、当業者は、特許請求の範囲は明確に理解できるし、特許請求の範囲に記載の発明の実施もできる。
なお、本件特許の詳細な説明に記載の実施例における表1の「対象品」において、「オクタナール」が「0」と記載されているが、甲1-4からレモン果汁が0.032ppmのオクタナールを含有しているとして、有効数字1桁で考えれば、対象に微量のオクタナールが含有されていたとしてもその値は0となると当業者は理解するから、実施例及び対象品を再現することができないとの主張は失当であって採用できない。
(4) まとめ
よって、本件発明1ないし3及び5ないし8に対する申立理由1-4及び申立理由1-5には理由がない。
2 申立理由1-6及び申立理由2-10(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下に検討する。
イ 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
ウ サポート要件の判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、「詳細な説明」という。)の【0002】~【0005】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「柑橘果汁飲料において、柑橘果汁由来の酸味の軽減による飲みやすさ」を「付与」することである。
そして、同【0006】には、柑橘果汁飲料において所定量のオクタナール及びデカナールを含有することにより、柑橘果汁由来の酸味を軽減できることによって上記課題が解決されることを見出した旨記載され、その態様として「オクタナール及びデカナールを含有する柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たすことを特徴とする。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」と記載されている。
詳細な説明の【0016】~【0019】には、
「(オクタナール及びデカナール)
オクタナール及びデカナールは、柑橘果汁飲料に所定量含有することにより、柑橘果汁由来の酸味を軽減させる。柑橘果汁飲料中において、オクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)
図1において、オクタナールとデカナールによる酸味軽減効果を示す範囲が、グラフの網掛け範囲として示される。
柑橘果汁飲料中におけるオクタナールの含有量の上限は、1ppm以下である。かかる含有量が1ppm以下の場合、酸味軽減効果を向上させる。また、柑橘果汁飲料中におけるデカナールの含有量の上限は、2.5ppm以下である。かかる含有量が2.5ppm以下の場合、酸味軽減効果を向上させる。
柑橘果汁飲料中におけるオクタナールの含有量の下限は、好ましくは0.25ppm以上である。かかる範囲に規定することにより、酸味軽減効果をより向上させる。柑橘果汁飲料中におけるデカナールの含有量の下限は、好ましくは0.375ppm以上である。かかる範囲に規定することにより、酸味軽減効果をより向上させる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。」と記載され、下記の図1の記載がある。
「【図1】
[図:0001400440000003.jpg]
」
そして、詳細な説明の【0036】~【0048】には、本件発明1の発明特定事項を満たす実施例においては酸味が軽減されていることが確認されており、本件発明1の発明特定事項を満たさない比較例は、酸味の軽減が十分でないことが確認されている。
そうすると、当業者は、上記詳細な説明の記載から、
「柑橘果汁飲料中において、オクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)」
飲料であれば、発明の課題を解決すると理解する。
そして、本件発明1は、上記の発明の課題を解決できると認識できる全ての特定事項を有した上で、さらに一部の特定事項を限定するものであるから、当業者は、本件発明1が発明の課題を解決することができると認識できる。
本件発明2、3、5ないし8についても同様である。
したがって、本件発明1ないし3、5ないし8は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件発明1ないし3、5ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(2) 特許異議申立人1及び2の主張
ア 特許異議申立人1の主張1-3
本特許実施例表1~4に記載の通り、本特許明細書で本発明の効果を確認したのはいずれもレモン果汁のみであり、これらは、いずれも糖酸比2.0以下である。
一方、甲第5号証(段落【0016】、表1)に示される通り柑橘果汁には様々な種類があり、糖酸比もそれぞれ極めて大きく異なる。
しかしながら、本発明における課題解決手段の効果が、糖酸比が2.0よりも大きい果汁まで拡張できることが本特許明細書には示されていない。そうすると、本特許実施例表1~4の結果が、本件発明1、3、4、6及び7まで拡張できるとは認識し難い。したがって、本件発明1、3、4、6及び7に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 特許異議申立人2の主張2-1
本発明は、特殊パラメータを用いた特定が行われていて、オクタナールの含有量とデカナールの含有量を調整した実施例及び比較例として表1及び表2及び図1が示されているが、そもそも柑橘果汁由来の酸味の軽減との関係で、オクタナールとデカナールとの含有量が直線的に影響しているかが技術常識を鑑みても不明である。また、柑橘果汁を香酸柑橘類の果汁に変更したり、香酸柑橘類としてレモンを選択したりすることは進歩性を基礎づけるものではないが、仮に柑橘果汁を香酸柑橘類の果汁に変更したり、香酸柑橘類としてレモンを選択したりすることで進歩性があるというような主張を本件特許権者が仮に行うのであれば、サポート要件に違反するものである。つまり、柑橘果汁は多種多様な成分を含有しており、その成分や含有量(組成比)は柑橘の種類によって相違する。柑橘果実の種類によって香気成分だけでなく、糖度、酸度、苦味等の味覚の特徴が多種多様であり、数百の成分を含む柑橘果汁において、特定の2成分のみを調整することで、柑橘類果実すべての香味を調整し酸味を低減する同等の効果が得られるかは不明である。
そして、本件特許明細書で開示されている実施例ではレモンについての結果しか示していないことから、本件発明1、6及び7で示されている数式が仮に有効であったとしても、レモンに対してのみ機能するものであり、当該実施例での内容をその他の柑橘果汁まで拡大し、一般化することはできない。
ウ 特許異議申立人2の主張2-2
本件特許明細書【0010】で「本発明によれば、柑橘果汁飲料において、柑橘果汁由来の酸味を軽減できる。」と記載されているところ、果汁率10%の場合、オクタナール、デカナール、糖酸比は全て充足しているものの、課題となる「酸味」が存在していないことが示されていることからすると、本件発明1、6及び7の独立請求項における権利範囲として、下限値として果汁率が10%を超過する値を設定する必要があり、10%以下の態様はサポート要件を満たしていない。
エ 特許異議申立人2の主張2-3
糖度及び酸度は飲料の香味に影響を与える要素であり、その含有量(絶対値)によって味は大きく左右されるから、どのような酸度・糖度であったとしても、柑橘果汁飲料の酸味軽減が得られるとする効果は理解できず、明細書の記載の内容を拡大ないし一般化できない。
(3) 特許異議申立人の主張の検討
本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は上記(1)のとおり、本件発明1ないし8は発明の課題を解決すると理解するから、特許異議申立人1の主張1-3及び特許異議申立人2の主張2-1は失当であって採用できない。
なお、主張2-1のうち、実施例のレモンから香酸柑橘類にまで拡張ないし一般化できないとの主張については、上記(1)での判断のとおり、発明の詳細な説明の記載からは、柑橘果汁に対して特定のオクタナールとデカナールとの含有量の関係を満たすことで課題を解決すると理解するのであり、また、特許異議申立人2が意見書において数々の香酸柑橘類の酸っぱさと遊離酸についてのデータを示していることをみれば、レモンにおいて効果を発揮しているのであれば、同様の遊離酸成分を有する香酸柑橘類においても同様の効果が奏されると推認できるともいえる。
また、上記(1)のとおり、果汁率及び糖酸比は課題解決手段とは関係がないから、特許異議申立人2の主張2-2及び主張2-3は、失当であって採用できない。
(4) まとめ
よって、本件発明1ないし3及び5ないし8に対する申立理由1-6及び申立理由2-10には理由がない。
3 申立理由2-9(甲2-14に基づく進歩性)について
(1) 甲2-14に記載された発明
甲2-14には、特許異議申立書2の(4-9)アに記載のとおり、以下の発明が記載されている。
<甲2-14発明>
「容器詰め柑橘類のチューハイ。」
<甲2-14製法発明>
「甲2-14発明の製造方法。」
(2) 本件発明1との対比・判断
本件発明1と甲2-14発明とを対比する。
甲2-14発明の「柑橘類のチューハイ」は、本件発明1の「柑橘果汁飲料であって、前記柑橘果汁が香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁であり」と、「柑橘果汁飲料」の限りで共通する。
そうすると、本件発明1と甲2-14発明は、
「柑橘果汁飲料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-14-1>
柑橘果汁に関し、本件発明1は「香酸柑橘類(カラマンシー及びシークワーサーを除く)の果汁」と特定するのに対し、甲2-14発明は、「柑橘類のチューハイ」である点
<相違点2-14-2>
本件発明1は、「オクタナール及びデカナールを含有する」と特定するとともに「前記柑橘果汁飲料中のオクタナールの含有量をx(ppm)、デカナールの含有量をy(ppm)とした場合、0.25≦y≦2.5において、以下の関係式(1)~(4)を満たす柑橘果汁飲料。
(1)y≧-35x+6(0.1≦X<0.15)
(2)y≧-5x+1.5(0.15≦x<0.2)
(3)y≧-2.5x+1(0.2≦X<0.25)
(4)y≧-x/6+5/12(0.25≦X≦1)
」と特定するのに対し、甲2-14発明は、このような特定はない点
事案に鑑み、相違点2-14-2について検討する。
特許異議申立人2及び1の提示するいずれの証拠にも、柑橘果汁飲料中のオクタナール及びデカナールを相違点2-14-2に係る発明特定事項とすることで、酸味軽減をできることを記載したものはない。
そうすると、甲2-14発明において、相違点2-14-2に係る発明特定事項とすることは、当業者においても容易でない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-14発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3) 本件発明2、3、及び5との対比・判断
本件発明2、3及び5は、請求項1を引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、甲2-14発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明6との対比・判断
本件発明6と甲2-14製法発明とを対比すると、上記(2)と同様に判断されるから、本件発明6は甲2-14製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5) 本件発明7及び8について
甲2-14の記載からは、柑橘果汁飲料の酸味軽減に係る技術的事項は認定できないから、本件発明7及び8は、甲2-14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6) まとめ
よって、本件発明1ないし3及び5ないし8に対する申立理由2-9は理由がない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書1及び2に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人1及び2による請求項4に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700441