特許異議申立
2025-700574
接合部カバー
- 審判番号
- 2025-700574
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-093002
- 登録番号
- 7593237
- 請求日
- 2025年06月02日
- 審決日
- 2025年09月09日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社IHI
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者代理人】高橋 俊一
- 【権利者代理人】伊藤 正和
- 【権利者代理人】高松 俊雄
- 【異議申立人】平本 健二
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 山田 康孝
- 審判官 本庄 亮太郎
- 分類
- P1651.121-Y (B23K)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7593237号発明「接合部カバー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7593237号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7593237号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年6月2日にされた出願であって、令和6年11月25日にその特許権の設定登録がされ、同年12月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許に対し、令和7年6月2日に特許異議申立人 平本 健二(以下「申立人」という。)が特許異議の申立てを行った(当該申立てのために提出した「特許異議申立書」を以下「申立書」という。)。
第2 本件発明
本件特許に係る発明(以下「本件発明」という。また、請求項1の特許に係る発明を「本件発明1」といい、他の請求項についても同様にいう。)は、それぞれ、前記特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
レーザー光を照射して2つの配管を突合せ接合する接合機用の接合部カバーであって、
前記レーザー光を外部から内部に導入させるレーザー導入口を有する第1円筒部と、
前記第1円筒部の一方の周端と連続する第1外周端と、前記配管の管径よりも大きな径の第1内周端とを有する第1環状壁部と、
前記第1円筒部の他方の周端と連続する第2外周端と、前記配管の前記管径よりも大きな径の第2内周端とを有する第2環状壁部と、を有する、接合部カバー。
【請求項2】
前記第1円筒部は、外部から内部にワイヤーを導入させるワイヤー導入口を有する、請求項1に記載の接合部カバー。
【請求項3】
前記第1円筒部は、外部から内部にシールドガスを導入させるガス導入口を有する、請求項1又は2に記載の接合部カバー。
【請求項4】
前記第1円筒部、前記第1環状壁部及び前記第2環状壁部の連続体は、軸方向に沿って複数の部品に分割され、
前記連続体は、複数の前記部品を組み合わせて連結する連結部材を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合部カバー。
【請求項5】
前記第1内周端と一方の周端が連続する第2円筒部と、
前記第2内周端と一方の周端が連続する第3円筒部と、の少なくともいずれか1つを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合部カバー。
【請求項6】
前記第1円筒部、前記第1環状壁部、前記第2環状壁部、及び、前記第2円筒部又は前記第3円筒部の連続体は、軸方向に沿って複数の部品に分割され、
前記連続体は、複数の前記部品を組み合わせて連結する連結部材を有する、請求項5に記載の接合部カバー。
【請求項7】
前記第1円筒部は、外壁面から外側に突出し、内部が前記レーザー導入口と連通する第1接続管部を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の接合部カバー。
【請求項8】
前記第1接続管部に一方の端部が接続され、前記接合機の加工ヘッドの少なくとも一部を他方の端部が覆い、前記加工ヘッドから照射された前記レーザー光を前記レーザー導入口へ導く内部空間を含むアダプターを有する、請求項7に記載の接合部カバー。」
第3 申立理由の概要
申立人は、申立書とともに、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第3号証(以下、甲第1号証を「甲1」といい、他の甲号証についても同様にいう。)を提出し、本件特許については特許法(以下「法」という。)29条2項の規定に違反してされたものであり、法113条2号に該当する旨(以下「申立理由」という。)の申立てをしている。
具体的には、本件発明1~4、7~8は、甲1記載の発明と甲2記載の事項とから容易想到であり、本件発明5~6は、甲1記載の発明と甲2及び甲3記載の事項とから容易想到であるというものである(申立書3~4ページ、16~17ページ)。
甲1:実願昭59-104442号(実開昭61-22284号)のマイクロフィルム
甲2:特開2015-54339号公報
甲3:特開2017-20352号公報
第4 各証拠の記載内容
1 甲1に記載された事項及び発明
甲1には、次の事項及び発明が記載されている(下線は当審で付与。以下同じ。)。
(1) 明細書
ア 「この考案はチタン管突合せ溶接用シールド治具に関する。」(明細書1ページ末行~2ページ1行)
イ 「〔考案が解決すべき問題点〕
以上の溶接方法は、通常突合せ溶接すべき管(100)を固定し、その溶接線に沿つて下面側から溶接をスタートさせて上面側で管(100)右側又は左側半分の溶接を終了し、又、他側半分も以上のような要領で溶接を行なつている。しかし手動送りで溶接が行なわれるため、溶接工の溶接姿勢は上向、立向、下向と変化して非常に困難な姿勢をしいられることになる。そのため前記シールド治具(101)は溶接途中でふらつき易くなり、シールド性が著しく低下して母材酸化(又は窒化)により品質をキープできない場合もある。そのような傾向は特に管径が小さくなつた場合一層顕著である。
本考案は以上の問題点を解決するためなされたもので、溶接管全径を治具で包囲し該治具がこの溶接管に倣つていく形式で安定したシールドが実行可能となるシールド治具を提供せんとするものである。」(明細書2ページ13行~3ページ11行)
ウ 「このように治具本体(1)を、手動により溶接管貫通孔(2)(2a)を中心に溶接管(100)(100a)の周りに回動せしめるだけで溶接線に沿つて溶接が行なわれると共に、溶接が終了した部分には安定したシールドガスの供給がなされ、確実なアフタシールが行なわれる。」(明細書5ページ末行~6ページ6行)
エ 「[実 施 例]
以下本考案の実施例を図面に基づいて説明する。第3図及び第4図は本考案の一実施例を示しており、(1)は治具本体、(2)(2a)は溶接管貫通孔、(3)はワイヤ送給孔、(4)はトーチ挿入孔、(5)はシールドガス吹出管である。
治具本体(1)は垂直分割されていて蝶番(11)によつて左右水平方向に開閉可能な円柱体からなり、内部を中空にして突合せ溶接用空隙にに(当審注:「にに」は「に」の誤記)している。この中でチタン製溶接管(100)(100a)の突合せ溶接が行なわれるため、治具本体(1)の材質としては銅が用いられている。又、治具本体(1)は溶接中に左右に開かないようにするため、その外周面(12)(12a)との間にスプリング(13)(13)を掛止めして閉じるようにしている。
溶接管貫通孔(2)(2a)は前記治具本体(1)の円柱上面及び底面に夫々設けられており、溶接管(100)(100a)の径にほぼ等しい径を有しており、溶接管(100)(100a)の周りに治具本体(1)を回動させた際、該貫通孔(2)(2a)を中心に回ることができるようにしている。
ワイヤ送給孔(3)は前記治具本体(1)の周曲面に穿設されており、前進法で溶接を行なうためワイヤリールから速度調整器によつて自動送りされてくるフイラメタルワイヤ(30)先端を突合せ溶接用空隙(10)内にセツトされたTIG溶接トーチ(40)の溶接棒先端前方に導くように設定されている。尚、フイラメタルワイヤ(30)の進入角度は予定される溶接線の接線に対し10~20°になるようにすると良い。
トーチ挿入孔(4)は前記ワイヤ送給孔(3)近傍の治具本体(1)周曲面に設けられていて、そこにTIG溶接トーチ(40)をセツトすると、これを前記突合せ溶接用空隙(10)に支持せしめることができる。尚、TIG溶接トーチ(40)の溶接棒の設定角度は予定される溶接線の接線に対し70~90°になるようにすると良い。
シールドガス吹出管(5)は治具本体(1)周面側から入つて突合せ溶接用空隙(10)にその吹出口を設けたものであり、TIG溶接トーチ(40)が支持されるトーチ挿入孔(4)近傍に配管され他端につなげられたシールドガスボンベからシールドガスを突合せ溶接用空隙(10)に引込み、溶接された部分のアフタシールを行なう。本実施例では第4図に示すように、該吹出管(5)は突合せ溶接用空隙(10)内で治具本体(1)内周面に沿つて複数の支管(5a)(5b)(5c)に枝分かれし、その各支管に多数の吹出口が設けられており、更にその上にSUS目の金網(51)が張られていて、吹出されたシールドガスが溶接された部分に万遍無く行き渡るようにされている。」(明細書6ページ14行~9ページ6行)
(2) 図面
「
[図:0001428013000001.jpg]
[図:0001428013000002.jpg]
」
(3) 甲1から理解できる事項
ア (1)エによると、溶接管(100)(100a)の突合せ溶接をしていることから、甲1には「接合機」といえるものがあることになり、これに伴って、治具本体(1)については接合機用のものということができる。
イ (1)エの治具本体(1)の「外周面(12)(12a)」の位置と「トーチ挿入孔(4)」の位置とを第4図に照らしたうえで、(1)エの「トーチ挿入孔(4)は・・・治具本体(1)周曲面に設けられていて」という記載をみると、周曲面は外周面(12)(12a)からなり、そのうち外周面(12a)には「トーチ挿入孔(4)」が設けられているといえるから、外周面(12)(12a)は、トーチ挿入孔(4)を有するともいえる。
ウ 溶接管の周りに治具本体を回動させるには、貫通孔の径が溶接管の径よりも大きな径である必要があることを踏まえ、(1)エの「溶接管貫通孔(2)(2a)は前記治具本体(1)の円柱上面及び底面に夫々設けられており、溶接管(100)(100a)の径にほぼ等しい径を有しており、溶接管(100)(100a)の周りに治具本体(1)を回動させた際、該貫通孔(2)(2a)を中心に回ることができるようにしている。」という記載を第3図及び第4図とあわせてみると、甲1の治具本体(1)は、「外周面(12)(12a)の一方の周端と連続する部分と、前記溶接管(100)の径よりも大きな径の貫通孔(2)とを有する円柱上面」及び「外周面(12)(12a)の他方の周端と連続する部分と、前記溶接管(100a)の径よりも大きな径の貫通孔(2a)とを有する円柱底面」を有するといえる。
(4) 甲1記載の発明(以下「甲1発明」という。)
そうすると、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
「TIG溶接トーチ(40)によって2つの溶接管(100)(100a)を突合せ溶接する接合機用の治具本体(1)であって、
前記TIG溶接トーチ(40)をセットするトーチ挿入孔(4)を有する外周面(12)(12a)と、
前記外周面(12)(12a)の一方の周端と連続する部分と、前記溶接管(100)の径よりも大きな径の貫通孔(2)とを有する円柱上面と、
外周面(12)(12a)の他方の周端と連続する部分と、前記溶接管(100a)の前記径よりも大きな径の貫通孔(2a)とを有する円柱底面と、を有する、治具本体(1)。」
2 甲2に記載された事項(以下「甲2事項」という。甲3についても同様にいう。)
「【0002】
配管の長尺化を図る場合には、管材相互間を溶接またはカップリングで接続して一体化される。即ち、母材である管材相互を突合せ、その突合せ部分に幅広のU型状開先を施した後、これらを突合せ溶接していた。溶接法としては、例えば、TIG溶接(tungsten inert gas welding:非溶極式のイナートガスアーク溶接でタングステンまたはタングステン合金を電極とする溶接法)を手動でまたは溶接ロボット等で自動溶接を行っていた。
従来のこの種の被溶接管材の溶接は、厚さが5mmの管材であっても、突合せ部分のルートフェースが1~1.5mm程度の幅広のU型状開先加工を施し、その後、添加ワイヤを供給しながら、複数層の溶接を施し、溶接時間に手間がかかっていた。なお、添加ワイヤを用いない場合には、ルートフェースが短いので割れや、溶け落ちがあり、溶接の制御が困難であると共に、高度な熟練を要し、良好な溶接ができないという問題があった。これに対して、例えば、レーザ溶接等を用いる方法もあるが、ボイラチューブ等の配管の生産量に初期投資のコストが高くなるという問題があった。
・・・
【0014】
そこで、本発明は、面倒な前準備を簡略化でき、溶接線に忠実に沿った作業が可能で、溶接トーチと溶接線との距離を一定とし、被溶接管材相互間、被溶接管材とエルボ、チーズ等の付属部品との溶接が可能で、その作業効率を良くした溶接トーチハンド装置の提供を課題とするものである。
・・・
【0016】
ここで、上記緩衝材を介して溶接トーチを保持する溶接本体部は、TIG溶接用、アーク溶接用の溶接トーチを保持するもので、ウィービング等の機能の有無に関係なく、溶接トーチを取付け自在とするものであればよい。また、必要に応じて、溶接本体部には、溶接ワイヤを溶接個所に案内する溶接ワイヤ供給ガイド部を有している。また、緩衝材は合成樹脂、ゴム、皮革等の弾性面からなる弾性体であればよい。・・・。」
3 甲3事項
「【0046】
まず、図2A及び2Bを用いて装置構成の概略を説明する。
【0047】
図2Aに示すように、装置は、レーザ発振器からファイバで伝送されたレーザビームの直径を調節する集光レンズ183と、処理部シールド治具188と、を備えている。処理部シールド治具188は、貫通孔を有し、この貫通孔からパイプ2にレーザビーム184を照射することができるようになっている。また、貫通孔にワイヤ181を挿入し、パイプ2にワイヤ181を接触させることができるようなっている。また、パイプ2は、符号aで示す方向に回転することができるように設置されている。処理部シールド治具188及びパイプ2の内部には、シールドガス186、187を供給することができるようなっている。
【0048】
パイプ2に改質部185を形成する際は、シールドガス186、187を供給し、パイプ2にワイヤ181を接触させるとともに、パイプ2を回転しながらレーザビーム184を照射し、パイプ2にワイヤ181を溶接する。これにより、パイプ2の一部に磁性を弱めた改質部185を形成することができる。なお、改質部185は、パイプ2の他の部分よりも厚さが小さい(薄肉である)ことが望ましい。
【0049】
外部からの熱供給方法は、例えばレーザ照射(波長1070nmのファイバーレーザ)を用いることができる。レーザ発振器からファイバコア径0.1mmのファイバで伝送された円状のレーザビームを、集光レンズ183を介してレーザビーム184をパイプ2の外周面に照射する。集光レンズ183にはシリンドリカルレンズを用い、焦点位置でのレーザビーム184の形状が線状(幅5mm、奥行き0.2mm)となるように変換する。パイプ2の外周面(改質部)に対するレーザビーム184の焦点外し距離は0mmとし、焦点位置でのレーザビーム184の幅方向がパイプ2の長手方向と平行になるようにパイプ2の外周面に照射する。」
「
[図:0001428013000003.jpg]
」
第5 申立理由についての判断
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア その機能・作用からみて以下の用語が相当関係にある。
甲1発明の用語 本件発明1の用語
溶接管(100)(100a) 配管
突合せ溶接 突合せ接合
治具本体(1) 接合部カバー
外周面(12)(12a) 第1円筒部
一方の周端と連続する部分 一方の周端と連続する第1外周端
溶接管(100)(100a)の径 配管の管径
貫通孔(2)(2a) 第1内周端、第2内周端
円柱上面 第1環状壁部
他方の周端と連続する部分 他方の周端と連続する第2外周端
円柱底面 第2環状壁部
イ 突合せ接合に関し、甲1発明の「TIG溶接トーチ(40)によって」と本件発明1の「レーザー光を照射して」とは、「接合手段によって」という概念で共通する。
ウ 甲1発明においてTIG溶接トーチ(40)をセットするには、第1図や第3図からみて、TIG溶接トーチ(40)を外部から内部に挿入してセットするのが合理的と認められるから、甲1発明の「前記TIG溶接トーチ(40)をセットするトーチ挿入孔(4)」と本件発明1の「前記レーザー光を外部から内部に導入させるレーザー導入口」とは、「前記接合手段を外部から内部に入れる接合手段導入口」という概念で共通する。
エ そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点・相違点は以下のとおりになる。
(ア) 一致点
「接合手段によって2つの配管を突合せ接合する接合機用の接合部カバーであって、
前記接合手段を外部から内部に入れる接合手段導入口を有する第1円筒部と、
前記第1円筒部の一方の周端と連続する第1外周端と、前記配管の管径よりも大きな径の第1内周端とを有する第1環状壁部と、
前記第1円筒部の他方の周端と連続する第2外周端と、前記配管の前記管径よりも大きな径の第2内周端とを有する第2環状壁部と、を有する、接合部カバー。」
(イ) 相違点1
接合手段に関し、本件発明1では「レーザー光を照射して」接合するのに対し、し、甲1発明では「TIG溶接トーチ(40)によって」接合する点。
(ウ) 相違点2
接合手段を外部から内部に入れる接合手段導入口に関し、本件発明1では「レーザー光を外部から内部に導入させるレーザー導入口」であるのに対し、甲1発明では「TIG溶接トーチ(40)をセットするトーチ挿入孔(4)」である点。
(2) 相違点についての検討
相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成が、申立人が主張するように甲1発明に甲2事項を適用することで容易に想到できたものであるか否かを検討する。
ア 甲2事項には、配管の突合せ溶接に関し、従来は例えばTIG溶接を行っていたところ、レーザ溶接等を用いる方法もあるが初期投資のコストが高くなるという問題があることが示されており、かつ、溶接トーチとしてはTIG溶接用、アーク溶接用を用いる旨が示されている。
イ つまり、甲2事項では、配管の突合せ溶接にレーザ溶接を用いる方法が文言としては出てくるものの、むしろ甲2事項にはレーザ溶接を採用しない方向での記載がされているといえ、結局のところTIG溶接やアーク溶接によって配管の突合せ溶接をする技術思想が開示されている。なお、甲2の明細書において「レーザ溶接」という用語は【0002】に記載されるのみである。
ウ そして、甲1には配管の突合せ溶接にレーザ溶接を用いるための動機付けとなり得る記載や示唆は全く見当たらない。
エ そうすると、甲1発明に甲2事項を適用する動機がなく、仮に適用したとしてもイで述べたことからみてレーザ溶接を用いたものになり得ないから、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成については、当業者にとって容易に想到できたものではない。
オ 申立人による申立理由には含まれていない(上記第3を参照)ものの、予備的に甲3事項の適用についても検討すると、甲3事項には、パイプ2を回転しながらレーザビーム184を照射し、パイプ2にワイヤ181を溶接することで、パイプ2の一部に磁性を弱めた改質部185を形成できることが示されている。
カ つまり、甲3事項は配管の改質に関するものであって、申立人が申立書11ページd1で認定するような配管の突合せ溶接に関して開示されるものではない。また、ウに照らせば甲1発明に甲3事項を適用する動機もないといえ、かつ、甲1発明にレーザ改質技術に関する甲3事項を適用しても、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成には当業者といえども想到しようがない。加えて、甲1発明に甲2事項及び甲3事項の適用を検討しても同様のことがいえる。
(3) 小括
以上のとおり、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成は当業者にとって容易に想到できたものではないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項~甲3事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~8も甲1発明及び甲2事項~甲3事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 申立理由についてのまとめ
したがって、本件特許については法29条2項の規定に違反してされたものでないから、法113条2号に該当するものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立書に記載の申立理由及び提出された証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700574