特許異議申立
2024-700559
燃焼炉及びボイラ
- 審判番号
- 2024-700559
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-112260
- 登録番号
- 7403502
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2025年10月08日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社IHI
- 【権利者代理人】弁理士法人青海国際特許事務所
- 【異議申立人】新妻 久
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 竹下 和志
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1651.121-YAA(F23C) / P1651.55 -YAA(F23C) / P1651.537-YAA(F23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7403502号発明「燃焼炉及びボイラ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7403502号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7403502号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7403502号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年5月29日に出願した特願2017-105319号の一部を令和3年7月6日に新たな特許出願としたものであって、令和5年12月14日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 6月12日 : 特許異議申立人 新妻 久(以下、単に「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
同 年 8月22日付け: 取消理由通知
同 年10月11日付け: 応対記録(特許権者)
同 年10月24日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年11月15日 : 特許権者による手続補正書の提出
同 年12月 5日付け: 訂正拒絶理由通知
同 年12月25日 : 特許権者による意見書の提出
令和7年 3月 6日 : 申立人による意見書の提出
同 年 3月31日付け: 取消理由通知(決定の予告)
同 年 5月28日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年 7月18日 : 申立人による意見書の提出
なお、令和6年11月15日に補正された令和6年10月24日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 本件訂正の内容
令和7年5月28日に提出の訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~4について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものである。
本件訂正の内容は、次の(1)の訂正事項を含むものである(下線は、訂正箇所を示すために、当審で付したものである。)。
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される火炉と、
噴射孔が円形であり、炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複数の複合バーナとを備え、
前記複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、
前記火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である、
ことを特徴とする燃焼炉」
との記載を、
「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む火炉と、
噴射孔が円形であり、炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複数の複合バーナとを備え、
前記複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、
前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、
前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、
前記火炉内において前記空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である、
ことを特徴とする燃焼炉」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項3~4も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の
「理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複数の複合バーナとを備え、
前記複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、
前記火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度であり、
前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている、
ことを特徴とする燃焼炉」
との記載を、
「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複数の複合バーナとを備え、
前記複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、
前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、
前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、
前記火炉内において前記空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度であり、
前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている、
ことを特徴とする燃焼炉」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3~4も同様に訂正する。
2 本件訂正の適否について
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、請求項3及び4は、それぞれ請求項1又は2を引用しているものであって、訂正事項に含まれる訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1及び2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~4〕についてされたものである。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される火炉」と、「火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域」という記載との関係で不合理を生じているため不明瞭となっている記載上の不備を解消し、その本来の意を明らかにするものといえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、「空気不足領域」の「空気量」が理論空気量よりも低いことを直列的に付加するとともに、バーナが設けられる箇所及び火炎が形成される箇所について、「前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され」ることを直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
そして、訂正事項1は、段落【0025】-【0029】、【0034】-【0035】、【図1】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものといえる。
また、訂正事項1は、記載上の不備を変更することで、「空気不足領域」の意を明らかにするものであって、かつ、「空気不足領域」の「空気量」及び火炎の形成される箇所を直列的に限定するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものや、特許請求の範囲を変更するものには当たらない。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される火炉」と、「火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域」という記載との関係で不合理を生じているため不明瞭となっている記載上の不備を解消し、その本来の意を明らかにするものといえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するといえる。
また、「空気不足領域」の「空気量」が理論空気量よりも低いことを直列的に付加するとともに、バーナが設けられる箇所及び火炎が形成される箇所について、「前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され」ることを直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
また、訂正事項2は、段落【0025】-【0029】、【0034】-【0035】、【図1】から、特許明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものといえる。
また、訂正事項2は、記載上の不備を変更することで、「空気不足領域」の意を明らかにするものであって、かつ、「空気不足領域」の「空気量」及び火炎の形成される箇所を直列的に限定するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものや、特許請求の範囲を変更するものには当たらない。
(4)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~4〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、次のとおり特定されるものと認められる。
「【請求項1】
空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む火炉と、
噴射孔が円形であり、炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複数の複合バーナとを備え、
前記複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、
前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、
前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、
前記火炉内において前記空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である、
ことを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複数の複合バーナとを備え、
前記複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、
前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、
前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、
前記火炉内において前記空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度であり、
前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている、
ことを特徴とする燃焼炉。
【請求項3】
前記炭素燃料は微粉炭であり、前記窒素含有燃料はアンモニアであることを特徴とする 請求項1または2に記載の燃焼炉。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の燃焼炉を備えることを特徴とするボイラ。」
第4 取消理由の概要
当審が令和7年3月31日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載における請求項1~4に係る発明が、複数の複合バーナの設置箇所がいかなる場所にあってもよく、火炎が形成される場所の全てが空気不足領域になくてもよいものを含むことにより、本願の課題を解決することができると理解できる範囲を超えるため、発明の詳細な説明に記載したものではないという点で不備があり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、訂正後の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか検討する。
2 願書に添付した明細書の記載について
願書に添付した明細書には、以下の記載事項及び図示事項がある(下線は、理解の一助のために、当審にて付与した。)。
(1)「【0004】
ところで、アンモニアを燃料の一部として燃焼させた場合には燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の増加が懸念される。上記背景技術は、専ら二酸化炭素の排出量の削減を目的としており、窒素酸化物(NOx)を低減さることについて何ら解決策を提示するものではない。天然ガスのような炭素燃料とアンモニアのような窒素含有燃料とを一緒に燃焼させる場合には、実用性の観点から窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが必要不可欠である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、炭素燃料と窒素含有燃料とを一緒に燃焼させる場合における窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することを目的とするものである。」
(2)「【0025】
ここで、火炉1内における空気雰囲気は、理論空気量よりも低い状態に維持される。すなわち、各バーナM11~M34、N11~N34は、火炉1内に微粉炭あるいはアンモニアを噴射するが、同時に一定量の燃焼用空気を火炉1内に供給する。この燃焼用空気の供給量は、火炉1内において微粉炭火炎Sa及びアンモニア火炎Sbを包含する空間の空気量が理論空気量よりも低くなるように設定される。図1及び図2では、火炉1内において空気量が理論空気量よりも低い領域を空気不足領域Skとしている。
【0026】
火炉1内では、微粉炭及びアンモニアが燃焼することによって燃焼熱を伴った燃焼ガスが発生する。そして、この燃焼ガスが火炉1内を上昇して熱交換機器2に作用することにより、燃焼ガスの燃焼熱によって水が気化して水蒸気が発生する。ボイラは、このようにして発生させた水蒸気を発電機等の外部機器に供給する。なお、熱交換機器2と熱交換された後の燃焼ガスは、火炉1から煙道を経由して外気に放出される。
【0027】
ここで、本第1実施形態に係る燃焼炉A及びボイラでは、上述した空気不足領域Sk内で微粉炭及びアンモニアが燃焼するので、アンモニア(NH3)の熱分解によって発生するアンモニア原子(N)は、空気中の酸素(O2)の熱分解によって発生する酸素原子(O)と結合して一酸化窒素(NO)になることが抑制され、他のアンモニア原子(N)と結合してアンモニア分子(N2)となる。
【0028】
すなわち、空気不足領域Skでは、下式(1)の反応は抑制され、下式(2)の反応が活発になる。例えば、空気不足領域Skにおける空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である。
NH3+5/4O2→NO+3/2H2O (1)
NH3+3/4O2→1/2N2+3/2H2O (2)
【0029】
このような第1実施形態によれば、空気量が理論空気量よりも低い空気不足領域Sk内で微粉炭(炭素燃料)及びアンモニア(窒素含有燃料)を燃焼させるので、微粉炭(炭素燃料)及びアンモニア(窒素含有燃料)を一緒に燃焼させる場合における一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能である。」
(3)「【0034】
この燃焼炉Cにおける複数(24個)のバーナP11~P34、Q11~Q34は、個別に受け入れた微粉炭とアンモニアとを火炉1内に個別に噴射する複合バーナである。すなわち、この燃焼炉Cにおける微粉炭供給装置3は、全てのバーナP11~P34、Q11~Q34に微粉炭を供給し、アンモニア供給装置4は、全てのバーナP11~P34、Q11~Q34にアンモニアを供給する。
【0035】
このような燃焼炉Cでは、火炉1内において微粉炭とアンモニアとが個別にあるいは混合して燃焼することによって複合火炎Sdが形成される。この複合火炎Sdは、上述した燃焼炉A,Bと同様に空気不足領域Sk内に形成されるので、上式(1)の反応は抑制され、上式(2)の反応が活発になる。したがって、この第3実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能である。」
(4)「【図1】
[図:0001431103000001.jpg]
」
3 サポート要件に対する判断
発明の詳細な説明から把握される本件発明が解決しようとする課題は、段落【0005】に記載されるとおり、炭素燃料と窒素含有燃料とを一緒に燃焼させる場合における窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することである。
また、この課題を解決するための手段は、上記段落【0025】-【0029】及び【0034】-【0035】の記載からみて、火炉1内の空気雰囲気を、理論空気量よりも低い状態である、空気量を空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度に維持する空気不足領域Skとし、当該空気不足領域Sk内で微粉炭(炭素燃料)及びアンモニア(窒素含有燃料)を燃焼させることである。
そして、複数の複合バーナの設置箇所及び火炎が形成される箇所について、上記課題を解決できると理解し得る程度に具体的に開示されているのは、【図1】に示されるとおり、複数の複合バーナの全てを空気不足領域内に設置し、かつ、形成される火炎の全てが空気不足領域に形成されることである。
これに対して、訂正後の本件発明1は、「複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され」ることが特定され、複数の複合バーナの設置箇所及び火炎が形成される箇所が、上記課題を解決するための手段において特許明細書等に具体的に開示されている事項に含まれるものとなった。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できることを認識し得る範囲のものと理解できる。
また、本件発明2も、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できることを認識し得る範囲のものと理解できる。
したがって、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
本件発明3~4についても同様である。
よって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものである。
4 小括
よって、取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由では、本件発明1~4を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の理由1(進歩性)について
(1)理由1の概要
申立人は、甲第1~11号証を提出し、理由1について概ね以下の主張をしている。
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5~9号証に記載された事項に基いて、又は甲第10号証に記載された発明及び甲第1、4、7~9及び11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5~9号証に記載された事項に基いて、又は甲第10号証に記載された発明及び甲第1、4、7~9及び11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5~9号証に記載された事項に基いて、又は甲第10号証に記載された発明及び甲第1、4、7~9及び11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5~9号証に記載された事項に基いて、又は甲第10号証に記載された発明及び甲第1、4、7~9及び11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
[証拠方法]
甲第 1号証:「石炭火力発電所でのアンモニア利用の実現に向けて-窒素酸化物の排出を抑制した微粉炭との混焼技術を開発-」、電力中央研究所プレスリリース、一般財団法人電力中央研究所、2017年1月10日
甲第 2号証:山崎正和、「新版熱計算入門III(燃焼計算)」、財団法人省エネルギーセンター、1989年7月8日、第1版、p.34-37
甲第 3号証:牧野尚夫、外2名、「第6章微粉炭火力の環境性の向上」、電中研レビュー、財団法人電力中央研究所、2002年11月14日、NO.46、p.57-74
甲第 4号証:小林秀昭、早川晃弘、「カーボンフリーアンモニア燃焼」、日本燃焼学会誌、日本燃焼学会、2016年2月、第58巻183号、p.41-48
甲第 5号証:「燃焼工学ハンドブック」、社団法人日本機械学会、1995年7月25日、初版、p.162-163、180-183
甲第 6号証:高島啓行、上仲基文、「微粉燃料バーナー」、燃料協会誌、一般社団法人日本エネルギー学会、1987年12月20日、1987年66巻12号、p.992-1001
甲第 7号証:特開昭62-87709号公報
甲第 8号証:実公平3-30650号公報
甲第 9号証:実公昭51-35004号公報
甲第10号証:実願昭59-170461号(実開昭61-89614号)のマイクロフィルム
甲第11号証:益子庄一、三田武雄、「石炭燃焼ボイラの燃焼システム」、日立評論、日立評論社、1980年4月25日、62巻4号、p.21-26、p.81-82
(以下、甲第1~11号証を、それぞれ「甲1」~「甲11」という。)
(2)甲1について
ア 甲1の記載事項及び図示事項
甲1には、次の記載事項及び図示事項がある(行数は、申立人の主張による。)。
(ア)「
[図:0001431103000002.jpg]
」(第1ページ第1~6行)
(イ)「
[図:0001431103000003.jpg]
」(第1ページ第10~16行)
(ウ)「
[図:0001431103000004.jpg]
」(第1ページ第17~26行)
(エ)「
[図:0001431103000005.jpg]
」(第2ページ第1~5行)
(オ)「
[図:0001431103000006.jpg]
」(第2ページ図1)
(カ)「
[図:0001431103000007.jpg]
」(第3ページ図2)
イ 上記アから認められる事項
(ア)図1の図示事項から、微粉炭及び1次空気と、温水式気化器から供給されたアンモニアと、2次空気と、3次空気との供給を受けて、微粉炭及びアンモニアを空気(1次空気、2次空気、3次空気)と共に火炉内に噴射する1つのバーナ部が看取できる。
(イ)図1の図示事項から、バーナ部よりも下流側で二段燃焼用空気が投入されることが看取できる。
(ウ)図1の図示事項から、図1に示される炉は、シングルバーナ炉であるといえる。
(エ)記載事項(ウ)及び図2の図示事項から、「NH3投入位置」がバーナ部のみである場合に、「火炉出口O2濃度」が4%で、「2段燃焼率」が30%であることが看取できる。
ウ 引用発明1
上記アの記載事項及び図示事項並びに上記イの認定事項から、甲1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明1〕
「バーナ部よりも下流側で二段燃焼用空気が投入される火炉と、
微粉炭及びアンモニアを火炉に噴射して燃焼させる1つのバーナ部と、を備え、
バーナ部は、微粉炭及びアンモニアを空気と共に噴射し、
火炉出口O2濃度が4%であり、2段燃焼率が30%である
シングルバーナ炉。」
(3)甲2について
ア 甲2の記載事項及び図示事項
甲2には、次の記載事項がある。
(ア)「
[図:0001431103000008.jpg]
」(第35ページ第3~23行)
(イ)「
[図:0001431103000009.jpg]
」(第37ページ第1~11行)
(4)甲3について
ア 甲3の記載事項及び図示事項
甲3には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「
[図:0001431103000010.jpg]
」(第61ページ左欄第12~24行)
(イ)「
[図:0001431103000011.jpg]
」(第62ページ左欄第1~27行)
(5)甲4について
ア 甲4の記載事項及び図示事項
甲4には、次の記載事項がある。
(ア)「
[図:0001431103000012.jpg]
[図:0001431103000013.jpg]
」(第42ページ右欄第1~26行)
(イ)「
[図:0001431103000014.jpg]
」(第43ページ左欄第13行~右欄第16行)
[図:0001431103000015.jpg]
」
(ウ)「
[図:0001431103000016.jpg]
」(第44ページ右欄第4~13行)
(エ)「
[図:0001431103000017.jpg]
」(第3図)
(オ)「
[図:0001431103000018.jpg]
」(第7図)
(6)甲5について
ア 甲5の記載事項及び図示事項
甲5には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「
[図:0001431103000019.jpg]
[図:0001431103000020.jpg]
」(第163ページ左欄第3行~右欄第6行)
(イ)「
[図:0001431103000021.jpg]
[図:0001431103000022.jpg]
」(第181ページ右欄第11行~第182ページ左欄第5行)
(ウ)「
[図:0001431103000023.jpg]
」(第162ページ図53(b))
(エ)「
[図:0001431103000024.jpg]
」(第181ページ図12)
(7)甲6について
ア 甲6の記載事項及び図示事項
甲6には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「
[図:0001431103000025.jpg]
[図:0001431103000026.jpg]
」(第992ページ左欄第1行~右欄第9行)
(イ)「
[図:0001431103000027.jpg]
[図:0001431103000028.jpg]
」(第994ページ左欄第2行~右欄第12行)
(ウ)「
[図:0001431103000029.jpg]
」(第996ページ左欄第7~18行)
(エ)「
[図:0001431103000030.jpg]
」(第996ページ第2図)
(8)甲7について
ア 甲7の記載事項及び図示事項
甲7には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「最近の燃料事情の変化に伴ない、燃料比の高い石炭(粗悪炭)や石油コークス等難燃の固体燃料をボイラ等の燃焼炉で燃焼させて運転コストを下げたいとの相談、構想が相次いでいる。一方製鉄所や、石油精製プラントでは、これらの製造過程で出て来る副生の低カロリーガスを粗悪炭や石油コークス等の助燃料として使用しオイルレス化を図りたい希望が出されている。
燃料比4.0以上の粗悪炭や、石油コークスの性状は、燃料比(固定炭素/揮発分)が高く、すなわち揮発分が少ない為に、着火保炎が出来ないとの理由で、従来技術では同バーナ内へ5~20%入熱量から成る重油または高カロリーガス火炎を形成させ、油ガス火炎のもつエネルギーで粉炭を保炎燃焼させる方式が採用されて来た。第4図はさきに本出願人の提案した粉炭バーナの構造を示す。図示のバーナは高カロリーガス助燃による粉炭バーナで示すもので粗悪炭石油コークスといつた粉炭16は上流側で粉砕装置で微粉砕され、気流輸送されて微粉エルボ9を経て粉炭バーナ2の先端に取付けられているインペラによって火炉内へ放射される。先端部には、予め高カロリーガスによる助燃用ガス火炎14が形成してあり、粉炭はガス火炎の内側へ供給される。この結果高温なガス火炎の輻射熱と風箱の3次エアレジスタ6および2次空気の通路13からの燃焼用空気の旋回力によって粉炭と空気が混合され粉炭は炉内で燃焼するものである。」(第1ページ右欄第5行~第2ページ左上欄第13行)
(イ)「本発明の一実施例を第1~3図により説明する。これらの図面において用いた符号は第4図と同一符号のものとは同一機能を有するものである。すなわち本発明の特徴とする点は、第1に助燃用燃料となる低カロリーガスを2微粉炭から離れた通路を経由させ異形のバーナスロート部の煉瓦8にその火炎が打ち当るように構成し、且つバーナスロート煉瓦8の持つ保有熱を活用出来る構造としている点である。このためバーナスロート煉瓦8の形状は低カロリー燃料ガス流と火炎を衝突させ衝突部を白熱化させて着火源として活用するようにしている。第2の点は低カロリーガスは高カロリーガスに比べて同一入熱量を供給するには10~20倍ものガス容積の量を必要とし、ガスの噴出速度も低流速にして吹飛び防止をするようにしたとしても燃料中に含まれるN2,CO2,N20といつた不活性ガスを多量に含有している為、これらの不活性ガスにより空気との混合接触を阻害されて微粉炭バーナの燃焼性が阻害されるおそれがある。微粉炭16の流れる通路と低カロリーガスの通路との間には燃焼用空気の流れる通路を設け、かつ低カロリーガス17を正面よりみたとき少くとも2以上に分割し、そのガス通路形状は燃焼用空気の入口通路の空気流れを阻害することのないエアレジスタ6を通過する気体流れに添った形状としている点にある。
第3の点は低カロリーガスを低カロリーガスの通路10を経由しスロート部の煉瓦に衝突させて着火させた火炎を、スロート部の煉瓦8’にエッジ8a’を規制して微粉炭16へ火炎流れを吹き付け、その低カロリーガス火炎の持つ熱量(温度)によって粉炭火炎15をバーナ軸心を軸心とする円周上に形成させるように配慮されている点である。
このようなバーナを用い燃料費が高く、粉炭そのものが着火、保炎性が悪い微粉炭の燃焼を促進する場合の、助燃用低カロリーガスバーナ構造を工夫することにより以下のように機能することとなる。
まず低カロリーガス自身が保炎着火性が良くないことに対しては、スロート部の耐火物へ衝突燃焼させて自燃化して着火源としており且つ燃料を2以上に分割している為に、燃料ガスと燃焼空気の接触面も広く、ガス火炎温度が高く維持できる。
また、粉炭の噴出流に対しても、低カロリーガス火炎を、粉炭外周に吹き付けることによつて粉炭への着火エネルギーとしての役割を成す。
さらに、粉炭外周へはフレッシュな燃焼用空気をサンドイツチ状に供給しているので、粉炭の燃焼率を確保出来る他、空気流路と一体で流線状に燃料ガス流路形成しているので、旋回力の維持確保のほか風圧損失も最少限に低く押えることが可能となる等、一連の低カロリーガス助燃の為に生ずると予想出来る問題点を全て解決しており新規な低カロリーガスと高燃料比炭を燃焼させるバーナ構造となっている。」(第2ページ左下欄第4行~第3ページ右上欄第1行)
(ウ)「
[図:0001431103000031.jpg]
」(第4図)
(9)甲8について
ア 甲8の記載事項及び図示事項
甲8には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「大型ボイラにおいても、その燃料を石油(例えば重油など)から石油ボイラの構造のままで、他の低廉な燃料(例えば石油コークスなど)に混焼転換され」(第3欄第4~7行)
(イ)「第5図に、これらの従来技術による石油コークスなどの微粉体を浮遊燃焼させるバーナの断面構造を示す。なお、第6図は第5図におけるバーナを火炉内から見た正面図である。図はガス助燃による微粉状石油コークス(微粉コークス)の燃焼バーナの一例を示すものであつて、微粉コークス16は、バーナの上流側で所定の粒径の微粒子に粉砕されて圧縮空気による気流輸送により送られ、気流輸送配管のエルボ9を経て微粉コークスバーナ2の先端に取付けられているインペラ3によつて放射状に噴出され、あらかじめ助燃用の例えばガスバーナによつて助燃用ガス火炎(主孔火炎)14および助燃用ガス火炎(副孔火炎)14′が形成されている状況下で、それらのガス火炎の内側を包囲する形で供給される。」(第3欄第18~33行)
(ウ)「
[図:0001431103000032.jpg]
」(第5図)
(エ)「
[図:0001431103000033.jpg]
」(第6図)
(10)甲9について
ア 甲9の記載事項及び図示事項
甲9には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「多種燃料バーナ10は渦形区間16と僅かに先細りしたバーナノズル11とを有する微粉燃料バーナ15から成る。」(第5欄第5~7行)
(イ)「渦形区間16及びバーナノズル17の内部に配列されて截頭円錐形のそらせ管34があり、それはバーナノズル17の軸線と同軸関係において延長する。そらせ管34はバーナノズル17の先細りに相当する先細りを有し且つバーナノズル17よりも小さな横断面の寸法を有し、その結果環状の微粉燃料通路35がそらせ管34の外面とバーナノズル17の内面との間に限界される。そらせ管34の外端は環状の外方に向って延長するフランジ36を設けられ、そのフランジはボルト39によって端壁37と渦形区間16の端壁38のフランジとの間に固定される。
コツプ形部材40は端壁37と共に空気密封室41を形成するために、ボルト23(第2図)によつて、渦形区間の端壁37の外側面に固定される。室41の機能及び目的は下文に十分に記述されるであろう。
渦形区間16の直径よりも幾分か大きな直径を有する環状の又はリング状のガスマニホルド42はマニホルド42の内周から内方に向つて延長する半径方向の出張り44における孔を貫通する複数のボルト43によつてコツプ形部材40に固定される(第2図参照)。ガスマニホルド42は、第2及び5図に示されるようにマニホルドに圧力のもとにある気体燃料を送り出すための管(図示されていない)が接続された入口連続部42Aを設けられる。
マニホルド42からバーナ口14に気体燃料を導くことに備えるために、複数の長くされたガスバーナ管45がそらせ管34の内部にガスバーナ管相互間に間隔を置いて周方向に配列される。長くされたバーナ管45の各々は外端において一体のU形端部分46を設けられたものとして示され、然るにガス燃料ノズル60はバーナ管の内端において配列される。ガスバーナ管45の各々はマニホルド42からそらせ管34の内部をとおつて微粉燃料バーナノズル17の放出出口端を僅かに越えて横たわる各ガスバーナ管のガス燃料ノズル60を備えて延長するように支持され且つ寸法を与えられる。ガス燃料ノズル60の新規な配列及び配置は下文は十分に記述されるであろう。」(第6欄第2~42行)
(ウ)「第4図に示されるように、ガス燃料ノズル60の各々はそれが適宜に取り付けられたガスバーナ管の縦方向の軸線に関して斜めに位置させられた平らな面81を有する。各々の平らな面81は複数の間隔を置かれたオリフィス82を設けられ、それを通じて気体燃料が放出する。」(第10欄第19~24行)
(エ)「
[図:0001431103000034.jpg]
」(第1図)
(オ)「
[図:0001431103000035.jpg]
」(第4図)
(11)甲10について
ア 甲10の記載事項及び図示事項
甲10には、次の記載事項及び図示事項がある。下線は、当審において付与した。以下同様。
(ア)「<本考案の目的>
本考案は上述した問題点に鑑み構成したものであり、石油コークス等のN分が多くかつ燃焼性の低い燃料であっても燃焼性を向上させると共に燃焼段階におけるNOxの発生量を低減させ大型の脱硝装置の設置を不用とし得る燃焼装置を提供することを目的とする。
<手段の概要>
要するに本考案は助燃料により火炎の一部にこの助燃料または主燃料から成る低O2高温燃焼域を形成して還元性中間生成物を生成し、この 中間生成物により発生したNOxを気相還元するよう構成した燃焼装置である。
<実施例>
以下本考案の実施例につき説明する。
第1図において、1は内筒,2は外箇,3は外筒2の開口端円周方向に形成した保炎板、4は内箇2内に、同筒2と中心軸線をほぼ等しくするように配置した助燃用重油バーナである。
この重油バーナのノズルは小さな拡散角θ1で燃料を噴射するノズルと、大きな噴射角θ2で燃料を噴射するノズルが形成してある。
内筒1内を一次空気により気流輸送された微粉石油コークス(以下単に「石油コークス」と称する)5は炉内に拡散噴射される。一方重油バーナ4から噴射された燃料は前述の如く、角度θ1,θ2をもつて火炎を形成するが、このうちθ2をもつて拡散された火炎F2は石油コークス5と直接接触して着火させ火炎F3を形成する。一方この石油コークス5の火炎F3の中心には助燃料たる重油による火炎F1が形成されるが、この火炎F1は周囲に形成された火炎Fにより二次空気A2,三次空気A3との接触が絶たれ、高温かつ低O2の燃焼を行い、この結果・NH2, ・CN等の還元ラジカルや、CO等の還元性物質を生成する。これら還元性を有する物質は例えば以下の式の如くNOxを気相還元し、発生したNOxをN2に濃元する。なお発生するNOxの殆んどはNOである。
NO+・NH2 → N2+ H2O ・・・(1)
NO+・CN → N2+ CO ・・・(2)
NO+ CO → 1/2N2 + CO ・・・(3)
また第1図の保炎板3に近接して渦流が形成され火炎Fを石油コークス噴射口側に引き付けるので、石油コークスを早い段階で着火燃焼させることができる。なお発生した未燃分は二次空気A2及び三次空気A3により主として火炎下流側で燃焼される。第2図は第2の実施例を示す。図中符号6は外筒2の外部に近接して一以上配置した気体燃科用助燃バーナであり、バーナ軸心に向つて、つまり炉内に噴射された石油コークスに向つて火炎F2を噴射して石油コークスを着火,燃焼させて火炎F3を形成する。なおこの場合、図の如く火炎F2をF2'とF2''に分割し、F2'はバーナ軸心とほぼ直交するよう噴射して主として石油コークス着火用に使用し、F2''はこれよりも火炉側に向つて噴射することにより還元性中問生成物生成用の火炎F1を形成するよう構成するとより効果的である。またこの場合、インペラ7を有する中心筒8から助燃料を噴射し火炎F1を形成するようにしてもよい。」(明細書第3ページ第11行~第6ページ第12行)
(イ)「
[図:0001431103000036.jpg]
」(第1図)
(ウ)「
[図:0001431103000037.jpg]
」(第2図)
イ 上記アから認められる事項
(ア)記載事項(ア)及び第1図の図示事項から、助燃用重油バーナ4から重油を火炉に噴射させ、助燃用重油バーナ4の外側に設けられた内筒1から石油コークス5を火炉に噴射するものといえる。
(イ)第1図には、燃焼装置の技術常識から、燃焼炉が示されているといえる。そして、記載事項(ア)から、燃焼炉が、火炉と燃焼装置とを備えたものといえる。
ウ 引用発明2
上記アの記載事項及び図示事項並びに上記イの認定事項から、甲10には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
〔引用発明2〕
「火炉と、
重油と石油コークス5とを前記火炉に噴射して燃焼させる燃焼装置とを備え、
前記燃焼装置は助燃用重油バーナ4から前記重油を噴射し、前記助燃用重油バーナ4の外側に設けられた内筒1から石油コークス5を噴射する
燃焼炉。」
(12)甲11について
ア 甲11の記載事項及び図示事項
甲11には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「
[図:0001431103000038.jpg]
[図:0001431103000039.jpg]
[図:0001431103000040.jpg]
[図:0001431103000041.jpg]
[図:0001431103000042.jpg]
」(第21ページ右欄第1行~第22ページ右欄第5行)
(イ)「
[図:0001431103000043.jpg]
」(図3(a))
2 理由1についての対比・判断
(1)引用発明1を主引用発明とした場合の本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、引用発明1とを対比する。
引用発明1の「火炉」は、本件発明1の「火炉」に相当する。また、引用発明1の「微粉炭」、「アンモニア」及び「バーナ部」は、本件発明1の「炭素燃料」、「窒素含有燃料」及び「複合バーナ」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明1の「微粉炭及びアンモニアを火炉に噴射して燃焼させる1つのバーナ部」は、本件発明1の「炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる」、「複合バーナ」に相当する。
引用発明1の「シングルバーナ炉」は、本件発明1の「燃焼炉」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点1〕
「火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複合バーナと、
を備える燃焼炉。」
〔相違点1〕
本件発明1は、「火炉」が 「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む」ものであるのに対し、引用発明1は、「火炉」が、そのようなものであるか不明である点。
〔相違点2〕
本件発明1は、「噴射孔が円形であ」る、「複数」の「複合バーナ」であるのに対し、引用発明1の「バーナ部」は、噴射孔の形状が不明であって、また、「1つ」の「バーナ部」である点。
〔相違点3〕
本件発明1では、「複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射」するものであるのに対し、引用発明1は、「バーナ部」の構造が不明である点。
〔相違点4〕
本件発明1では、「前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、前記火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である」のに対し、引用発明1は、そのようなものであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み相違点3について検討する。
申立人が提出したいずれの証拠にも、「複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射」することについて、記載されていない。
したがって、引用発明1に申立人が提出した証拠に開示される事項を適用しても、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることはできない。」
また、本件発明1は、段落【0035】に記載されるとおり、「一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能である」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)引用発明1を主引用発明とした場合の本件発明2について
ア 対比
本件発明2と、引用発明1とを対比する。
引用発明1の「火炉」は、本件発明1の「火炉」に相当する。また、引用発明1の「微粉炭」、「アンモニア」及び「バーナ部」は、本件発明2の「炭素燃料」、「窒素含有燃料」及び「複合バーナ」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明1の「微粉炭及びアンモニアを火炉に噴射して燃焼させる1つのバーナ部」は、本件発明2の「炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる」「複合バーナ」に相当する。
引用発明1の「シングルバーナ炉」は、本件発明2の「燃焼炉」に相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点2〕
「火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複合バーナと、
を備える燃焼炉。」
〔相違点5〕
本件発明2は、「火炉」が 「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む」ものであるのに対し、引用発明1は、「火炉」が、そのようなものであるか不明である点。
〔相違点6〕
本件発明2は、「複数」の「複合バーナ」であるのに対し、引用発明1は、「1つ」の「バーナ部」である点。
〔相違点7〕
本件発明2は、「複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射」するものであり、「前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている」のに対し、引用発明1は、「バーナ部」の構造が不明である点。
〔相違点8〕
本件発明2は、「複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、前記火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度であ」るのに対し、引用発明1は、そのようなものであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み相違点7について検討する。
申立人が提出したいずれの証拠に記載されるものは、「複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射」し、「前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている」ことについては開示されていない。
したがって、引用発明1に申立人が提出した証拠に開示される事項を適用しても、相違点7に係る本件発明2の発明特定事項を得ることはできない。
また、本件発明2は、段落【0035】に記載されるとおり、「一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能である」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)引用発明1を主引用発明とした場合の本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明1又は2を引用するものであって、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項又は上記相違点7に係る本件発明2の発明特定事項を含むものであるから、本件発明1又は2と同様の理由により、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(4)引用発明2を主引用発明とした場合の本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、引用発明2とを対比する。
引用発明2の「火炉」は、本件発明1の「火炉」に相当する。また、引用発明2の「重油」、「石油コークス5」及び「燃焼装置」は、本件発明1の「炭素燃料」、「窒素含有燃料」及び「複合バーナ」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明2の「重油と石油コークス5とを前記火炉に噴射して燃焼させる燃焼装置と」は、本件発明1の「炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる」「複合バーナ」に相当する。
引用発明2の「燃焼炉」は、本件発明1の「燃焼炉」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点3〕
「火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複合バーナと、
を備える燃焼炉。」
〔相違点9〕
本件発明1は、「火炉」が 「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む」ものであるのに対し、引用発明2は、「火炉」が、そのようなものであるか不明である点。
〔相違点10〕
本件発明1は、「噴射孔が円形であ」る、「複数」の「複合バーナ」であるのに対し、 引用発明2は、「燃焼装置」の噴射孔の形状及び数が不明である点。
〔相違点11〕
本件発明1は、「複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射」するものであるのに対し、引用発明2は、「燃焼装置」の構造が不明である点。
〔相違点12〕
本件発明1では、「前記複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、前記火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である」のに対し、引用発明2は、そのようなものであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み相違点11について検討する。
申立人が提出したいずれの証拠にも、「複合バーナは、軸中心に同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射し、前記二重筒の外側に軸中心周りに所定角度で複数設けられた単筒から前記窒素含有燃料を噴射」することについて、記載されていない。
したがって、引用発明2に申立人が提出した証拠に開示される事項を適用しても、相違点11に係る本件発明1の発明特定事項を得ることはできない。
また、本件発明1は、段落【0035】に記載されるとおり、「一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能である」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(5)引用発明2を主引用発明とした場合の本件発明2について
ア 対比
本件発明2と、引用発明2とを対比する。
引用発明2の「火炉」は、本件発明2の「火炉」に相当する。また、引用発明2の「重油」、「石油コークス5」及び「燃焼装置」は、本件発明2の「炭素燃料」、「窒素含有燃料」及び「複合バーナ」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明2の「重油と石油コークス5とを前記火炉に噴射して燃焼させる燃焼装置と」は、本件発明2の「炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる」「複合バーナ」に相当する。
引用発明2の「燃焼炉」は、本件発明2の「燃焼炉」に相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明2とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点4〕
「火炉と、
炭素燃料と窒素含有燃料とを前記火炉に噴射して燃焼させる複合バーナと、
を備える燃焼炉。」
〔相違点13〕
本件発明2は、「火炉」が 「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域を含む」ものであるのに対し、 引用発明2は、「火炉」が、そのようなものであるか不明である点。
〔相違点14〕
本件発明2は、「複数」の「複合バーナ」であるのに対し、引用発明2は、「燃焼装置」の数が不明である点。
〔相違点15〕
本件発明2は、「複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射」するものであり、「前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている」のに対し、引用発明2は、「燃焼装置」の構造が不明である点。
〔相違点16〕
本件発明2は、「複合バーナの全てが前記空気不足領域に設けられ、前記炭素燃料と前記窒素含有燃料の燃焼による火炎の全てが前記空気不足領域に形成され、前記火炉内において空気量が前記理論空気量よりも低い領域である空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度であ」るのに対し、引用発明2は、そのようなものであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み相違点15について検討する。
申立人が提出したいずれの証拠に記載されるものは、「複合バーナは、軸中心又は軸中心周りに設けられた少なくとも一つの単筒から前記窒素含有燃料を噴射し、前記単筒よりも軸中心から遠く同心円状に設けられた二重筒から前記炭素燃料を噴射」し、「前記単筒は、軸中心周りに所定角度で複数設けられている」ことは、開示されていない。
したがって、引用発明2に申立人が提出した証拠に開示される事項を適用しても、相違点15に係る本件発明2の発明特定事項を得ることはできない。」
また、本件発明2は、段落【0035】に記載されるとおり、「一酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能である」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(6)引用発明2を主引用発明とした場合の本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明1又は2を引用するものであって、上記相違点11に係る本件発明1の発明特定事項又は上記相違点15に係る本件発明2の発明特定事項を含むものであるから、本件発明1又は2と同様の理由により、申立人が提出したいずれの証拠の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(7)小括
よって、特許異議申立理由の理由1によって、本件発明1~4を取り消すことはできない。
3 特許異議申立理由の理由2(新規事項の追加)について
(1)理由2の概要
申立人は、異議申立書の「理由の要点」(p.7)の記載から理由2について、令和4年6月13日付け手続補正書における、「噴射孔が円形であり」を追加する補正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない旨の主張をしている。
そして、令和7年7月18日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)の「(b-3)「筒の先端形状」と「噴射孔の形状」は別個の概念であること」(p.9)では、更に以下の主張をしている。
「本件明細書において、「噴射孔」に言及する唯一の箇所は、別の実施形態に関する段落【0038】の「なお、この複合バーナRcにおける単筒r4の先端は、単純な開口ではなく、複数の噴射孔が形成された円板を備える。」との記載である。
例えば、単筒r4が、4個の噴射孔が形成された円板を先端に有する場合、単筒r4の先端(円板)の形状が円であるからといって、単筒r4の先端(円板)に設けられた複数の噴射孔が「円形」であるとは限らない。下図に示すとおり、非円形の「複数の噴射孔」が単筒r4の先端(円板)に設けられているかもしれないのである。」
(2)願書に最初に添付した明細書の記載について
本件特許の発明の願書に最初に添付した明細書及び図面には、以下の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0036】
ここで、第3実施形態における各バーナP11~P34、Q11~Q34(複合バーナ)として、図5に示す構造のものが例示できる。例えば、図5(a)に示す複合バーナRaは、全体として略円筒状に形成されており、軸中心に同心円状に設けられた二重筒r1から微粉炭を噴射し、この二重筒r1の外側に軸中心周りに60°毎の角度で6個設けられた単筒r2からアンモニアを噴射する。すなわち、この複合バーナRaは、軸中心に比較的近い内側から微粉炭を噴射し、軸心から比較的遠い外側からアンモニアを噴射する。
【0037】
一方、図5(b)に示す複合バーナRbは、全体として略円筒状に形成されており、上記二重筒r1に代えて、単筒r2よりも軸心から遠い二重筒r3を備え、この二重筒r3から微粉炭を噴射する。すなわち、この複合バーナRbは、軸中心に比較的近い内側からアンモニアを噴射し、軸心から比較的遠い外側から微粉炭を噴射する。
【0038】
一方、図5(c)に示す複合バーナRcは、全体として略円筒状に形成されており、軸心を含む単筒r4からアンモニアを噴射し、この単筒r4の外側に同心状に設けられた二重筒r5から微粉炭を噴射する。すなわち、この複合バーナRcは、軸中心に比較的近い内側から軸心からアンモニアを噴射し、比較的遠い外側から微粉炭を噴射する。なお、この複合バーナRcにおける単筒r4の先端は、単純な開口ではなく、複数の噴射孔が形成された円板を備える。」
イ 「【図5】
[図:0001431103000044.jpg]
」
(3)当審の判断
段落【0036】の「同心円状」との記載及び実施例に係る【図5】(a)の図示事項から、微粉炭を噴射する二重筒r1の筒の先端の断面形状及びアンモニアを噴射する単筒r2の筒の先端の断面形状が円形であると解することができる。そして、これら筒の先端の断面形状が円形である二重筒r1及び単筒r2は、燃料を噴射するものであるから、願書に最初に添付した明細書及び図面には、「円形の噴射孔」は記載されていたと解するのが自然である。
(4)申立人の主張に対して
上述の通り、段落【0036】及び【図5】(a)の図示事項から、本件発明1の「噴射孔が円形であ」るとの事項は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載したものといえる。
そうすると、令和4年6月13日付け手続補正書における、「噴射孔が円形であり」を追加する補正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができる。
よって、申立人の主張は、採用できない。
(5)小括
よって、特許異議申立理由の理由2によって、本件発明1~4を取り消すことはできない。
4 特許異議申立理由の理由3(サポート要件)について
(1)理由3の概要
申立人は、異議申立書の「理由の要点」(p.8)の記載から理由3について、本件発明1における「噴射孔が円形であり」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項1及びこれに従属する請求項3及び4は、サポート要件に違反する旨の主張をしている。
なお、意見書の「(b-6)小括」(p.11)で、更に「また、同特定事項を含む本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号の要件も満たさない。」と主張している。
(2)当審の判断
上記2(3)で判断したとおり、「噴射孔が円形であり」との発明特定事項は、段落【0036】及び【図5】(a)から、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(3)小括
よって、特許異議申立理由の理由3によって、本件発明1~4を取り消すことはできない。
5 特許異議申立理由の理由4(明確性)について
(1)理由4の概要
異議申立書の「理由の要点」(P.8)及び意見書の「(a-2)問題の所在(“局所的な空気過剰率”を求める方法が不明である)」(p.3)の記載から、異議申立人が主張する理由4に係る異議理由は、大略、次の主張1ないし主張3からなるものと理解できる。
(主張1)
・「本件特許の請求項1及び2は、発明特定事項間の矛盾により、「火炉」の全体が「理論空気量よりも低い空気雰囲気設定」されるのか、「火炉」の一部のみが「理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定」されて他の領域が理論空気量以上の空気雰囲気であるのかが不明確であり、請求項1及び2並びにこれらに従属する請求項3及び4は、明確性要件に違反する。」
(主張2)
・「本件発明1及び2では、“空気過剰率が0.9~1.0である遷移領域”が、「空気不足領域」に該当するのか否かが不明確であり、「空気不足領域」の外縁(当審注:「外延」の誤記)が明りょうではないから、請求項1及び2並びにこれらに従属する請求項3及び4は、明確性要件に違反するものである。」
(主張3)
・「このため、本件発明の技術的範囲に属するか否かを評価するためには、火炉内の一部の領域の“局所的な空気過剰率”を平均的な値として計算する以外に現実的な方法は存在しない。
しかるに、本件明細書には、火炉内の一部の領域の“局所的な空気過剰率”をいかに算出するかの具体的な定義や計算方法が一切記載されていない。」
(2)当審の判断
上記主張1~主張3についての当審の判断を以下に述べる。
はじめに、上記主張1について検討する。
本件発明1~4は、本件訂正により「火炉」が「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される空気不足領域」を含むことが特定されたため、主張1における発明特定事項間の矛盾が解消されたといえる。
したがって、「火炉」の全体が「理論空気量よりも低い空気雰囲気設定」されるのか、「火炉」の一部のみが「理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定」されて他の領域が理論空気量以上の空気雰囲気であるのかは、明確であるといえる。
よって、上記主張1は、採用できない。
次に、上記主張2について検討する。
本件発明1~4は、「火炉」が含む「空気不足領域」が、「空気量が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される」ものであり、かつ、「前記空気不足領域における空気量は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である」ことが特定されている。
したがって、本件発明1~4の「火炉」が含む「空気不足領域」は、空気過剰率という指標で示した場合に0.8~0.9程度である空気量に限定されているのだから、「空気過剰率が0.9~1.0である遷移領域」を含まないことは、明確といえる。
そうすると、“空気過剰率が0.9~1.0である遷移領域”が、「空気不足領域」に該当しないことは、本件発明1~4の記載から明確に理解できる。
よって、上記主張2は、採用できない。
次に、上記主張3について検討する。
主張3は、「“局所的な空気過剰率”を求める方法が不明である」という理由により発明が明確でないことを主張するものであるが、そもそも、本件発明1~4には「局所的な空気過剰率」なる事項に係る特定はされていない。したがって、主張3は、本件発明1~4の記載が明確であるか否かに影響を与えるものではない。
また、プローブ等で点測定を行う等、局所的な空気過剰率を測定する方法は、当業者にとって自明であるから、“局所的な空気過剰率”を算出する具体的な方法が明細書に記載されていないことによって、仮に「局所的な空気過剰率」が本件発明1~4の理解に影響を与えるとしても、第3者に不足の不利益を与える程度に発明が不明確になるということはできない。
よって、上記主張3は、採用できない。
(3)小括
よって、特許異議申立理由の理由4によって、本件発明1~4を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~4に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700559