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特許異議申立

2023-700488

発電システム

審判番号
2023-700488
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-140352
登録番号
7173245
請求日
2023年05月12日
審決日
2024年03月19日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社IHI
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】寺本 光生
  • 【権利者代理人】清水 雄一郎
  • 【権利者代理人】高橋 久典
  • 【異議申立人】新妻 久
審判長/審判官
  • 審判長 山本 信平
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 吉村 俊厚
分類
P1651.121-YAA(F01K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7173245号発明「発電システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7173245号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7173245号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7173245号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年5月29日に出願した特願2017-105320号の一部を、令和3年8月30日に新たな特許出願としたものであって、令和4年11月8日に特許権の設定登録がされ、同年11月16日に特許掲載公報が発行されたものである。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 5年 5月12日 :特許異議申立人新妻久(以下「申立人」と いう。)による請求項1~3に係る特許に 対する特許異議の申立て 令和 5年 8月 3日付け:取消理由通知書 令和 5年10月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出 令和 5年10月24日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第1 20条の5第5項) 令和 5年11月24日 :申立人による意見書の提出 令和 5年12月26日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 6年 2月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 上記令和6年2月27日提出の訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、訂正自体を、「本件訂正」という。本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備えることを特徴とする発電システム。」と記載されているのを、 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記気化器は、前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として河川あるいは海に放流し、 前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定することを特徴とする発電システム。」に、訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記気化器は、並列に複数台設けられることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項2について、独立形式に改め、 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水のみと前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記気化器は、並列に複数台設けられることを特徴とする発電システム。」に、訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記冷却水は、水あるいは海水であることを特徴とする請求項1または2に記載の発電システム。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項3について、独立形式に改め、 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水のみと前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記冷却水は、水あるいは海水であることを特徴とする発電システム。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2に「前記気化器は、並列に複数台設けられることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。」、及び、特許請求の範囲の請求項3に「前記冷却水は、水あるいは海水であることを特徴とする請求項1または2に記載の発電システム。」と記載されているのを、請求項2を引用する請求項3について、独立形式に改め、 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記気化器は、並列に複数台設けられ、 前記冷却水は、水あるいは海水であり、 前記気化器は、前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として河川あるいは海に放流し、 前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定することを特徴とする発電システム。」に訂正し、請求項4とする。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されている気化器を、「前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として前記河川あるいは前記海に放流」する構成に限定し、訂正前の請求項1に記載されている発電システムを「前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定する」構成に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0020】及び図1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、また、訂正前の請求項2が引用する請求項1に記載されている、気化器において液体アンモニアと熱交換する媒体を、復水器で加熱された冷却水「のみ」と限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0016】、【0029】~【0030】及び図1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、上記アのとおり他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1を引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、また、訂正前の請求項3が引用する請求項1に記載されている、気化器において液体アンモニアと熱交換する媒体を、復水器で加熱された冷却水「のみ」と限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0016】、【0029】~【0030】及び図1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、上記アのとおり他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項3が請求項2を引用し、当該請求項2が請求項1をさらに引用するものであるところ、請求項間の引用関係を解消して訂正前の請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項3を独立形式請求項へ改めて請求項4とする訂正であって、また、訂正前の請求項3が引用する請求項2がさらに引用する請求項1に記載されている気化器を、「前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として前記河川あるいは前記海に放流」する構成に限定し、同じく請求項1に記載されている発電システムを「前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定する」構成に限定するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0020】及び図1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、上記アのとおり他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。 4 小括 以上のとおり、本件訂正による訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定に適合すると共に、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記気化器は、前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として河川あるいは海に放流し、 前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定することを特徴とする発電システム。 【請求項2】 ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水のみと前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記気化器は、並列に複数台設けられることを特徴とする発電システム。 【請求項3】 ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水のみと前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記冷却水は、水あるいは海水であることを特徴とする発電システム。 【請求項4】 ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え、 該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記アンモニア気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器と を備え、 前記気化器は、並列に複数台設けられ、 前記冷却水は、水あるいは海水であり、 前記気化器は、前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として河川あるいは海に放流し、 前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定することを特徴とする発電システム。」 第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要 当審が令和5年12月26日付けで通知した取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由(特許法第29条第2項) 本件特許の請求項1及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項1 甲第1号証、甲第2号証、甲第6号証 ・請求項4 甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証 甲号証一覧 甲第1号証:特開2005-98240号公報 甲第2号証:一般財団法人電力中央研究所,プレスリリース「石炭火力発 電所でのアンモニア利用の実現に向けて-窒素酸化物の排出 を抑制した微粉炭との混焼技術を開発-」,[online],20 17年1月10日,一般財団法人電力中央研究所,インター ネット<URL:https://criepi.denken.or.jp/press/pres srelease/2017/01_10press.pdf> 甲第5号証:佐々木達司,「LNG火力の設備と運転実績」,燃料協会誌 ,燃料協会,1973年、第52巻,第552号、p.268 ~281 甲第6号証:社団法人日本機械学会,機械工学便覧 A.基礎編 B.応 用編,新版6刷,社団法人日本機械学会,1993年7月3 0日,p.B6-85~B6-87,B6-94~B6-95 (以下、「甲第1号証」、「甲第2号証」、「甲第5号証」及び「甲第6号証」を、それぞれ「甲1」、「甲2」、「甲5」及び「甲6」という。) 第5 取消理由(特許法第29条第2項)に対する判断 1 甲1に記載された発明 甲1(特に、【0001】、【0003】~【0005】、【0013】~【0019】、図1参照。)には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「ボイラー14で発生させた水蒸気により蒸気タービン22を回転する発電システム10であって、 蒸気タービン22を回転した水蒸気を冷却して水に戻し、その排熱がLNGの気化に利用される復水器23及び気化器12を備え、 復水器23及び気化器12で発生した気体状の天然ガスはボイラー14で燃焼され、 蒸気タービン22の回転に用いられた水蒸気を冷却水を用いて冷却して水に戻す復水器23と、 復水器23の冷却水として使用された温排水を用いることで気体状の天然ガスを発生する気化器12と を備え、 気化器12でLNGの気化に用いられた冷却水は、放水口32における弁の開閉により適宜に放出され、 復水器23、気化器12それぞれで必要とする冷却水の流量が必ずしも一致しないことから、取水口31から採取された冷却水の一部がポンプ24を通じて復水器23に送られ、その他が復水器23を迂回することによって、復水器23と気化器12との間で流量を調節する発電システム10。」 2 甲2に記載された事項 甲2には以下の記載がある。 (1)「石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を低減するため、燃焼してもCO2を排出しないアンモニア(NH3)を燃料として利用する技術開発を進めています。このたび、微粉炭燃焼場へのアンモニア投入方法を適正化することで、アンモニア投入率を20%とした場合でも窒素酸化物(NOx)の排出を石炭の専焼時と同等のレベルに抑制できる可能性を見出しました。本成果は、アンモニアの発電分野における利用技術としての実用化が期待されます。」(第1ページ第1欄) (2)「アンモニアを燃料として燃焼させた場合、大気汚染物質となるNOxが発生し、排ガスのNOx濃度が大幅に増加する可能性があります。既設の大型石炭火力発電所では、石炭ボイラからのNOx排出を抑制させる低NOx燃焼技術が導入され、さらに、脱硝装置でボイラ排ガス中のNOxを分解することで、大気中へのNOx排出量は極めて低いレベルになっています。アンモニアを微粉炭と混焼利用するには、脱硝装置の大規模な改造等による新たなコストを生じさせることなく、ボイラ排ガスのNOx濃度の増加を抑える技術が必要となります。」(第1ページ第2欄) (3)「当研究所では、保有する石炭燃焼量100kg/hのシングルバーナ炉(写真1)にアンモニアを安定して供給する設備を追設し、微粉炭燃焼場にアンモニアを投入する燃焼試験を実施しました。アンモニアの投入量や投入位置(図1)を変化させ、排ガスのNOx濃度を測定した結果、バーナ部のみからアンモニアを投入した場合(図1の丸1(当審注:丸数字は「丸1」等と表記する。以下同様。))は、アンモニア投入率10%程度までのNOx濃度は石炭専焼時と同程度であり、投入率20%でもNOx濃度は約1.2倍の増加に留まることが分かりました(図2)。さらに、アンモニア投入率を20%一定とし、バーナ部だけではなく後段部からも投入しながら複数の条件で試験を行ないました(図1の丸2、丸3)。その結果、バーナからの距離1.0mの後段部から全量投入した場合に、石炭の専焼時とほぼ同等のNOx排出濃度で燃焼できることを確認しました(図3)。」(第1ページ第3欄) (4)「 [図:0001411291000001.jpg] 」 3 甲5に記載された事項 甲5には以下の記載がある。 (1)「1-1 東京電力・南横浜火力発電所(以下,南横浜と記す)は液化天然ガス(LNG)専燃の火力発電プラントとして建設されたものである。 これまで,天然ガスを火力発電の燃料として他の燃料と併用することはいくつか行なわれているが,南横浜はLNGの再ガス化と直結した発電プラントであるところに特徴がある。」 (2)「3-1-3 LNG気化器(ベーパライザー)はLNGに蒸発の潜熱および-162℃から常温までの顕熱を与えて再ガス化するもので種々のタイプがある。 南横浜ではオープンラックとサブマージドの二つのタイプを前者は常用、後者は非常用として設置している。」 (3)「 [図:0001411291000002.jpg] 」 4 甲6に記載された事項 甲6には以下の記載がある。 (1)「4・2・5 設計上予定あるいは仮定すべき数値 ・・・ e.冷却水量と温度上昇 復水器の構造,配置上の条件と,復水装置全体の経済性および排水の環境におよぼす影響を考慮してきめられる.実際の冷却水量/蒸気量は50~120の範囲にあるが,最近のものでは,温度上昇に対する制約から約75以上にとられる場合が多い.排水の温度が規制される場合には,復水器の冷却水量が増加し,温度上昇を7k以下に押さえるのが一般的である.」 (2)「4・6 冷却水系統(cooling water system) 蒸気タービンプラントにおける冷却水系統はプラントの構成機器によって異なるが,使用される水質によっても差異がある.また、冷却水が十分に得られない地域では冷却塔を使用することもある.わが国では冷却水として海水が広く用いられているが,河川水や湖水などが使われることもある. 外国では,内陸にプラントが建設されることが多く,河川水や湖水を使用したり,冷却塔を設置する例が多い. 図203は冷却水概略系統の一例(海水使用の場合)である.」 (3)「 [図:0001411291000003.jpg] 」 5 本件発明1について (1)対比 ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ボイラー14」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「ボイラ」に相当し、以下同様に、「水蒸気」は「蒸気」に、「蒸気タービン22」は「蒸気タービン」に、「回転」は「駆動」に、「発電システム10」は「発電システム」に、「蒸気タービン22を回転した水蒸気」は「蒸気タービンから排出された排蒸気」に、「発生した」は「得られた」に、「蒸気タービン22の回転に用いられた水蒸気」は「蒸気タービンから排出された排蒸気」に、「冷却水」は「所定の冷却水」に、「冷却して水に戻す」態様は「凝縮させる」態様に、「復水器23」は「復水器」に、「復水器23の冷却水として使用された温排水」は「復水器で加熱された冷却水」に、「発生する」は「生成する」に、「気化器12」は「気化器」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲1発明における「ボイラー14で発生させた水蒸気により蒸気タービン22を回転する発電システム10であって」は、本件発明1の「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって」に相当する。 イ 甲1発明における「蒸気タービン22を回転した水蒸気を冷却して水に戻し、その排熱がLNGの気化に利用される復水器23及び気化器12を備え」ることと本件発明1における「前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え」ることとは、「蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体燃料を気化させる気化設備を備え」ることという限りにおいて一致する。 ウ 甲1発明における「復水器23及び気化器12で発生した気体状の天然ガスはボイラー14で燃焼され」る態様と本件発明1における「該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ」る態様とは、「気化設備で得られた気体燃料をボイラに供給して燃料として燃焼させ」る態様という限りにおいて一致する。 エ 甲1発明の「復水器23の冷却水として使用された温排水を用いることで気体状の天然ガスを発生する気化器12」は、温排水とLNGとが熱交換することは明らかであるから、本件発明1の「該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器」と、「復水器で加熱された冷却水と液体燃料とを熱交換させて気体燃料を生成する気化器」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲1発明における「蒸気タービン22の回転に用いられた水蒸気を冷却水を用いて冷却して水に戻す復水器23と、復水器23の冷却水として使用された温排水を用いることで気体状の天然ガスを発生する気化器12とを備える」ことと本件発明1における「前記アンモニア気化設備は、前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器とを備える」こととは、「気化設備は、排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、復水器で加熱された冷却水と液体燃料とを熱交換させて気体燃料を生成する気化器とを備える」ことという限りにおいて一致する。 オ 甲1発明の「気化器12でLNGの気化に用いられた冷却水は、放水口32における弁の開閉により適宜に放出され」る態様と本件発明1における「前記気化器は、前記液体アンモニアとの熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として河川あるいは海に放流」する態様とは、「気化器は、液体燃料との熱交換によって冷却された冷却水を排水として放流」する態様という限りにおいて一致する。 カ 甲1発明の「取水口31から採取された冷却水の一部がポンプ24を通じて復水器23に送られ、その他が復水器23を迂回することによって、復水器23と気化器12との間で流量を調節する」態様と本件発明1における「前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整することにより、前記排水の温度を、許容される温度以下に設定する」態様とは、「復水器に取り込む冷却水の取込量を調整する」態様という限りにおいて一致する。 したがって、本件発明と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点] 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体燃料を気化させる気化設備を備え、 該気化設備で得られた気体燃料を前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体燃料とを熱交換させて前記気体燃料を生成する気化器と を備え、 前記気化器は、前記液体燃料との熱交換によって冷却された前記冷却水を排水として放流し、 前記復水器に取り込む前記冷却水の取込量を調整する発電システム。」 [相違点1] 液体燃料、気化設備及び気体燃料に関して、本件発明1は、液体燃料が「液体アンモニア」であり、気化設備が「液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備」であって、気体燃料が「気体アンモニア」であるのに対し、甲1発明は、液体燃料が「LNG」であり、気化設備が「LNGの気化に利用される復水器23及び気化器12」であって、気体燃料が「LNG」を気化した「気体状の天然ガス」である点。 [相違点2] 冷却水を排水として放流することに関し、本件発明1は、「河川あるいは海に放流」するのに対し、甲1発明は、河川あるいは海に放流するのか不明な点。 [相違点3] 復水器に取り込む冷却水の取込量を調整することに関し、本件発明1は、それにより「排水の温度を、許容される温度以下に設定」するのに対し、甲1発明は、そのようなものではない点。 (2)判断 事案に鑑みて、まず相違点3について検討する ア 相違点3について 上記5に記載のとおり、甲6には、排水の環境に及ぼす影響を考慮して排水の温度が規制される場合には、復水器の冷却水量をが増加させて温度上昇を7k以下に押さえること、蒸気タービンプラントの冷却水として海水、河川水、湖水等が使われることが記載されている。 一方で、上記相違点2のとおり、甲1発明は、冷却水を排水として河川あるいは海に放流するのか不明であり、排水の温度が規制される必要があるのか否か不明であり、甲1発明に甲6記載事項を採用する動機はない。 なお、甲1の【0017】の記載から、甲1発明の冷却水も海水等を利用していると認められ、そのため、冷却水を排水として放流する際も海等に放流することが技術常識である、又は、当業者が容易になし得ると仮定すると、当該排水の環境に及ぼす影響を考慮して排水の温度を規制する必要があることまでは、容易に想到し得るといえる。 しかしながら、上記1に記載したとおり、甲1発明は、「復水器23、気化器12それぞれで必要とする冷却水の流量が必ずしも一致しないことから」「復水器23と気化器12との間で流量を調節」し、そのために復水器23に取り込む冷却水の量を調整するものである。 よって、復水器23に取り込む冷却水の量の調整を、排水の温度の規制のために行うことは、「復水器23と気化器12との間で流量を調節」することができなくなるから、甲1発明に甲6記載事項を採用することには阻害要因があるといえる。 また、甲2には、相違点3に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明に甲2及び甲6に記載された技術を適用して、相違点3に係る本件発明1の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。 イ まとめ 上記アのとおりであるから、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2及び甲6に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 6 本件発明4について 本件発明4と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点3において相違する。 そして、相違点3については、上記5(2)で検討したとおりである。 さらに、甲5には、相違点3に係る本件発明4の構成は、記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2、甲5及び甲6に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 7 小括 以上により、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、取消理由によって取り消すことはできない。 第6 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)理由 本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項1 甲1~4 ・請求項2及び3 甲1~5 上記第4で提示していない甲号証一覧 甲第3号証:大阪大学,科学技術振興機構(JST),プレスリリース「 世界初!アンモニアと混焼する微粉炭の詳細燃焼挙動を明ら かに~再生可能エネルギーの利用拡大につながる新たな知見 ~」,[online],2016年10月31日,科学技術振興機 構(JST),インターネット<URL:https://www.jst. go.jp/pr/announce/20161031/index.html> 甲第4号証:秋鹿研一,「エネルギーキャリアLCAへの期待:CO2 フリー水素、アンモニア導入を例に」,日本LCA学会誌, 2016年7月,vol.12,No.3,p.161~16 9 (以下、「甲第3号証」及び「甲第4号証」を、それぞれ「甲3」及び「甲4」という。) 2 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点3において相違する。 そして、相違点3については、上記第5の5(2)で検討したとおりである。 さらに、甲3及び4には、相違点3に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3 本件発明2について (1)対比 ア 本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ボイラー14」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明2の「ボイラ」に相当し、以下同様に、「水蒸気」は「蒸気」に、「蒸気タービン22」は「蒸気タービン」に、「回転」は「駆動」に、「発電システム10」は「発電システム」に、「蒸気タービン22を回転した水蒸気」は「蒸気タービンから排出された排蒸気」に、「発生した」は「得られた」に、「蒸気タービン22の回転に用いられた水蒸気」は「蒸気タービンから排出された排蒸気」に、「冷却水」は「所定の冷却水」に、「冷却して水に戻す」態様は「凝縮させる」態様に、「復水器23」は「復水器」に、「復水器23の冷却水として使用された温排水」は「復水器で加熱された冷却水」に、「発生する」は「生成する」に、「気化器12」は「気化器」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲1発明における「ボイラー14で発生させた水蒸気により蒸気タービン22を回転する発電システム10であって」は、本件発明2の「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって」に相当する。 イ 甲1発明における「蒸気タービン22を回転した水蒸気を冷却して水に戻し、その排熱がLNGの気化に利用される復水器23及び気化器12を備え」ることと本件発明2における「前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備を備え」ることとは、「蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体燃料を気化させる気化設備を備え」ることという限りにおいて一致する。 ウ 甲1発明における「復水器23及び気化器12で発生した気体状の天然ガスはボイラー14で燃焼され」る態様と本件発明2における「該アンモニア気化設備で得られた気体アンモニアを前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ」る態様とは、「気化設備で得られた気体燃料をボイラに供給して燃料として燃焼させ」る態様という限りにおいて一致する。 エ 甲1発明の「復水器23の冷却水として使用された温排水を用いることで気体状の天然ガスを発生する気化器12」は、温排水とLNGとが熱交換することは明らかであるから、本件発明2の「該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器」と、「復水器で加熱された冷却水と液体燃料とを熱交換させて気体燃料を生成する気化器」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲1発明における「蒸気タービン22の回転に用いられた水蒸気を冷却水を用いて冷却して水に戻す復水器23と、復水器23の冷却水として使用された温排水を用いることで気体状の天然ガスを発生する気化器12とを備える」ことと本件発明2における「前記アンモニア気化設備は、前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体アンモニアとを熱交換させて前記気体アンモニアを生成する気化器とを備える」こととは、「気化設備は、排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、復水器で加熱された冷却水と液体燃料とを熱交換させて気体燃料を生成する気化器とを備える」ことという限りにおいて一致する。 したがって、本件発明2と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点] 「ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動する発電システムであって、 前記蒸気タービンから排出された排蒸気の熱を用いて液体燃料を気化させる気化設備を備え、 該気化設備で得られた気体燃料を前記ボイラに供給して燃料として燃焼させ、 前記気化設備は、 前記排蒸気を所定の冷却水を用いて凝縮させる復水器と、 該復水器で加熱された前記冷却水と前記液体燃料とを熱交換させて前記気体燃料を生成する気化器と を備える発電システム。」 [相違点4] 液体燃料、気化設備及び気体燃料に関して、本件発明2は、液体燃料が「液体アンモニア」であり、気化設備が「液体アンモニアを気化させるアンモニア気化設備」であって、気体燃料が「気体アンモニア」であるのに対し、甲1発明は、液体燃料が「LNG」であり、気化設備が「LNGの気化に利用される復水器23及び気化器12」であって、気体燃料が「LNG」を気化した「気体状の天然ガス」である点。 [相違点5] 気化器に関し、本件発明2は、「復水器で加熱された前記冷却水のみと前記液体アンモニアとを熱交換させて」いるのに対し、甲1発明は、復水器23の冷却水として使用された温排水を用いることで気体状の天然ガスを発生しているものの、復水器23の冷却水として使用された温排水「のみ」を用いるものではない点。 [相違点6] 気化器に関し、本件発明2は、「並列に複数台設けられる」のに対し、甲1発明は、そのように設けられていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、まず相違点5について検討する ア 相違点5について 甲2~5には、相違点5に係る本件発明2の構成は、記載も示唆もされていない。 また、上記第5の1に記載したとおり、甲1発明は、復水器23、気化器12それぞれで必要とする冷却水の流量が必ずしも一致しないことから、取水口31から採取された冷却水の一部がポンプ24を通じて復水器23に送られ、その他が復水器23を迂回することによって、復水器23と気化器12との間で流量を調節するものである。仮に、相違点5に係る本件発明2の構成が公知であったとしても、復水器23で加熱された冷却水のみが気化器12に送られると、復水器23と気化器12との間で流量を調節することができなくなってしまうから、当該公知技術を採用することには阻害要因があるといえる。 したがって、甲1発明に甲2~5に記載された技術を適用して、相違点5に係る本件発明2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。 イ まとめ 上記アのとおりであるから、相違点4及び6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 4 本件発明3について 本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点5において相違する。 そして、相違点5については、上記3(2)で検討したとおりである。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 5 本件発明4について 本件発明4と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点3において相違する。 そして、相違点3については、上記第5の5(2)で検討したとおりである。 さらに、上記2で検討したとおり、甲3及び4には、相違点3に係る本件発明4の構成は、記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲2~5に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 6 小括 以上により、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由によって取り消すことはできない。 第7 令和5年11月24日提出の意見書における申立人の主張について 1 上記意見書における申立人の主張の概要 (1)相違点5について 「甲1の【0017】の記載は地点P1での冷却水の分流および地点P2での冷却水の合流を行わずに復水器23で加熱された冷却水のみを気化器12に供給する単純な技術を暗黙の基準とし、その改良技術として、「復水器23、気化器12それぞれで必要とする冷却水の流量が必ずしも一致しない」ことを考慮して、地点P2において復水器23で加熱された冷却水と復水器23を迂回した冷却水とを合流させる例を説明したものに過ぎない。甲1に接した当業者であれば、復水器23の排熱をLNGの気化に利用するという甲1発明の本質(甲1の【0016】)の範囲内で、当業者の通常の創作能力の発揮を行い得たことは当然である。 よって、甲1発明から出発した当業者が、復水器23及び気化器12の各々の必要冷却水量の不一致の程度、および、配管系統の複雑化に伴うコスト増加等を考慮して、地点P1での冷却水の分流および地点P2での冷却水の合流を行わずに復水器23で加熱された冷却水のみを気化器12に供給する単純な技術を採用することは設計事項に過ぎない。」(第13ページ第20行~第14ページ第8行) (2)相違点3について 「甲1発明に対して、復水器を備えた蒸気タービンプラントの技術分野における〔甲6周知事項2〕及び〔甲6周知事項3〕を適用することで、当業者が容易に為し得たものに過ぎない。 すなわち、本件出願以前から、排水が環境に及ぼす影響を考慮に入れて復水器における冷却水量を決定すること、排水温度が規制される場合、一般に復水器における冷却水量を増加させることで冷却水の温度上昇を7K以下に押さえること、および、復水器の基本要領の決定に際し、所与の熱負荷Qおよび冷却水温度上昇△tから、復水器における冷却水量を算出することが周知であったから(〔甲6周知事項2〕及び〔甲6周知事項3〕)、甲1発明において、〔甲6周知事項2〕及び〔甲6周知事項3〕の適用により、排水温度が規制値以下になるように復水器23への冷却水の取込量を調整し、訂正後本件発明3に想到することは当業者にとって容易であった。」(第16ページ第18行~第17ページ第4行) 2 上記申立人の主張について、以下検討する。 (1)相違点5について 上記第6の3(2)で検討したとおり、甲1発明の復水器23で加熱された冷却水のみが気化器12に送られると、復水器23と気化器12との間で流量を調節することができなくなってしまうから、そのようにすることには阻害要因があるといえる。 また、申立人は、「甲1の【0017】の記載は地点P1での冷却水の分流および地点P2での冷却水の合流を行わずに復水器23で加熱された冷却水のみを気化器12に供給する単純な技術を暗黙の基準とし」ていると主張するが、そのようなことを証明するものはない。 よって、申立人の主張は、当を得たものではない。 (2)相違点3について 上記第5の5(2)で検討したとおり、甲1発明に甲6記載事項を採用する動機はなく、また、甲1発明に甲6記載事項を採用することには阻害要因がある。 よって、申立人の主張は、当を得たものではない。 3 小括 以上により、上記意見書における申立人の主張は、当を得たものではなく、採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700488

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