特許異議申立
2025-700494
硬化性人工爪組成物
- 審判番号
- 2025-700494
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-144090
- 登録番号
- 7580832
- 請求日
- 2025年05月01日
- 審決日
- 2025年08月26日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社サクラクレパス
- 【権利者代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
- 【異議申立人】落合 克弘
- 審判長/審判官
- 審判長 冨永 保
- 審判官 阪野 誠司
- 審判官 松元 麻紀子
- 分類
- P1651.113-Y (A61K) / P1651.121-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7580832号発明「硬化性人工爪組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7580832号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7580832号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)9月6日を出願日とする出願であって、令和6年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1について、令和7年5月1日差し出しの特許異議申立書(以下「申立書」という。)により、特許異議申立人 落合 克弘(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7580832号の請求項1の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本件発明」という。)。
「【請求項1】
(a)(メタ)アクリレート化合物、及び、
(b)重合開始剤、
を含有する硬化性人工爪組成物であって、
前記(a)(メタ)アクリレート化合物が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと脂環式モノ(メタ)アクリレートモノマーを含み、
前記ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエステル骨格、アクリル骨格、ポリオレフィン骨格からなる群より選ばれる1種以上を有するものであり、
前記(b)重合開始剤が、分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤と、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤又は過酸化物系重合開始剤を含み、
前記分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤が、式(1);
【化1】
[図:0001426857000001.jpg]
(式(1)中、R11は、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基である。
式(1)中、R12は、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数3~12の脂環族炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、炭素数1~12のアルコキシ基又は炭素数6~20のアリールオキシ基である。
R12は、置換基を有していてもよい。)
で表される分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤を含む、前記硬化性人工爪組成物。」
第3 申立理由の概要及び証拠
1 申立理由の概要
申立人は、甲第1及び2号証(以下「甲1」などという。)を提出し、本件特許は、以下の理由により、取り消されるべきものである旨主張している(申立書6頁)。
「
[図:0001426857000002.jpg]
」
上記記載、及び申立書の記載全体から、申立理由は、以下のとおりであると認められる(申立理由の番号は、当審合議体による。)。
(1)申立理由1(新規性欠如)
本件発明は、甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、本件請求項1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当する。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
本件発明は、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当する。
2 証拠方法
甲1:特表2023-517196号公報
甲2:特開2023-40762号公報
第4 甲号証の記載事項
甲1及び2には、それぞれ以下の記載がある(下線及び枠線は当審合議体による。「・・・」は摘記の省略を示す。)。
1 甲1
(甲1a)「【請求項1】
a)エチレン型不飽和化合物;並びに
b)ノーリッシュI型及びノーリッシュII型活性の両方を有するホスフィンオキシド光開始剤を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記エチレン型不飽和化合物a)が1種又は複数の(メタ)アクリラート官能化モノマー、1種又は複数の(メタ)アクリラート官能化オリゴマー及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
・・・
【請求項5】
前記(メタ)アクリラート官能化モノマーが、特に・・・イソボルニル(メタ)アクリラート;トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリラート;tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリラート;トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリラート;・・・及びそれらの組合せから選択されるモノ(メタ)アクリラート官能化モノマーを含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
・・・
【請求項9】
前記(メタ)アクリラート官能化オリゴマーが、2個の(メタ)アクリラート基を有する(メタ)アクリラート官能化ウレタンオリゴマー、特に2個のアクリラート基を有するアクリラート官能化ウレタンオリゴマーを含む、請求項2から8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
・・・
【請求項12】
前記エチレン型不飽和化合物a)が、1種又は複数の(メタ)アクリラート官能化モノマー及び1種又は複数の(メタ)アクリラート官能化オリゴマーの混合物から本質的になる、請求項1から10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記ホスフィンオキシド光開始剤b)が以下の式(I):
【化1】
[図:0001426857000003.jpg]
・・・
【請求項16】
前記ホスフィンオキシド光開始剤b)が、以下の化合物:
・・・のうちの1つから選択され、好ましくは前記ホスフィンオキシド光開始剤b)が、以下の構造
【化6】
[図:0001426857000004.jpg]
を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
・・・
【請求項21】
b)以外の光開始剤、特にベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、α-ヒドロキシアセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシラート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、トリアジン化合物、ベンゾイルフォルマート、芳香族オキシム、メタロセン、アシルシリル又はアシルゲルマニル化合物、カンファーキノン、それらのポリマー状誘導体、陽イオン性光開始剤、及びそれらの混合物から選択される光開始剤を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
・・・
【請求項33】
ネイルをコーティングする方法であり、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物をネイルに塗布しネイルの組成物を硬化する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物を硬化することにより、又は請求項31から33のいずれか一項に記載の方法に従って得られる硬化生成物。
【請求項35】
インク、コーティング、封止材、接着剤、成形品又は3D印刷品、特に3D印刷品又はネイルコーティングである、請求項34に記載の硬化生成物。
【請求項36】
インク、コーティング、封止材、接着剤、成形品又は3D印刷品、特に3D印刷品又はネイルコーティングを得るための、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物の使用。
・・・
【請求項38】
マニキュア組成物又はネイルコーティング方法における、ノーリッシュI型及びノーリッシュII型活性の両方を有するホスフィンオキシド光開始剤の使用。」
(甲1b)「【0001】
・・・本発明は、更に、マニキュア組成物又はネイルコーティング方法における特定のホスフィンオキシド光開始剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化3D印刷の分野において、より長波長(385nmを超える)の光源を使用して光活性樹脂の硬化を達成する印刷設備が優勢に成長している。これらの印刷機で使用されるために設計される配合物において、アシルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド誘導体は、関心のある波長領域で吸光度が強いため、好ましいクラスの光開始剤である。アシルホスフィンオキシドはノーリッシュI型開始剤として分類され、以下の化合物を含む:
・・・
【0004】
(b)Speedcure TPO(また2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとしても公知)、これは以下の構造を有する:
【0005】
【化2】
[図:0001426857000005.jpg]
【0006】
(c)Speedcure TPO-L(また(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸エチルとしても公知)、これは以下の構造を有する:
【0007】
【化3】
[図:0001426857000006.jpg]
【0008】
既存のホスフィンオキシド開始剤は効果的であり、3D印刷配合物において広く使用されているが、硬化速度又は効率を改善することができ、物理的性質を高めた印刷された部材を提供することができる開始剤に対するニーズがある。
【0009】
更に、TPOは、最近、新規の毒物学試験に基づくクラス1B生殖毒物として分類された。このことで、多くの用途においてその使用が限定される。TPO-L及びBAPOが次の1~2年で同様に再分類されると予想される。したがって、毒性の懸念及び使用制限のない、これらの一般に使用されるホスフィンオキシド光開始剤の代替解決策に対するニーズがある。
【0010】
ノーリッシュI型及びノーリッシュII型開始メカニズムの両方を示すことができるホスフィンオキシド開始剤の使用は、これらの要求に対する解決策を提供することができる。」
(甲1c)「【0087】
ポリウレタン(メタ)アクリラートオリゴマーは、脂肪族、環状脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアナート(例えば、ジイソシアナート、トリイソシアナート)を、OH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカルボナートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオルガノシロキサンポリオール(例えば、ポリジメチルシロキサンポリオール)、若しくはポリジエンポリオール(例えば、ポリブタジエンポリオール)、又はそれらの組合せと反応させてイソシアナート官能化オリゴマーを形成し、次いでこれは、ヒドロキシエチルアクリラート又はヒドロキシエチルメタクリラート等のヒドロキシル官能化(メタ)アクリラートと反応させて末端(メタ)アクリラート基を与えることにより調製されてもよい。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリラートオリゴマーは、1分子当たり2、3、4個以上の(メタ)アクリラート官能基を含有していてもよい。当技術分野において公知のように、添加を他の順序で実施して、ポリウレタン(メタ)アクリラートを調製してもよい。。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリラートは、最初にポリイソシアナートと反応させてイソシアナート官能化(メタ)アクリラートを得てもよく、次いで、これは、OH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカルボナートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール、又はそれらの組合せと反応させてもよい。なお別の実施形態において、最初にポリイソシアナートを、前述のタイプのポリオールのいずれかを含むポリオールと反応させて、イソシアナート官能化ポリオールを得てもよく、これは、その後ヒドロキシル官能化(メタ)アクリラートと反応させてポリウレタン(メタ)アクリラートを得る。代替として、化合物はすべて同時に組み合わせ、反応させてもよい。
・・・
【0143】
適切なラジカル光開始剤の例としては、2-メチルアントラキノン、・・・及び1-ヒドロキシフェニルケトン等のアセトフェノン類、・・・これらに限定されない。
【0144】
特に、b)以外の光開始剤は、・・・α-ヒドロキシアセトフェノン・・・から選択されるラジカル光開始剤を含んでいてもよい。」
(甲1d)「【実施例】
【0251】
材料
実施例中で使用した原料は以下に記載される:
【0252】
【表1】
[図:0001426857000007.jpg]
・・・
【0280】
(実施例6)
UV硬化性ネイルコーティング用のSpeedCure(登録商標)Xkm反応性
UV硬化性ネイルゲルトップコートにおいてSpeedCure(登録商標)XKmをSpeedCure(登録商標)TPO-Lと比較した。典型的なUV硬化性ネイルゲルトップコート配合物を以下に示す。CN1968は、接着、光学的透明度及び引張性の良好なバランスを有するウレタンメタクリラートオリゴマーである。ウレタンメタクリラートオリゴマーを、5官能性モノマーSR399(DiPEPA)、SR349(EO3BPADA)及び2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)と混合した。(メタ)アクリラートモノマー及びオリゴマーの質量に関して3質量%充填のTPO-Lを含有する配合物を、1%、3%又は5質量%装填のSpeedCure(登録商標)XKmを含有する配合物と比較した。
【0281】
【表9】
[図:0001426857000008.jpg]
【0282】
ガラスパネルに3ミル(3MIL)塗工棒を使用して配合物を塗工し、それぞれ60秒間LEDネイルランプ(Gelish 18G、λ-395-405nm)で硬化した。HunterLab Ultrascan VIS分光光度計を使用して、組成物の色度、ヘーズ及び黄色度を測定した。・・・
【0283】
【表10】
[図:0001426857000009.jpg]
【0284】
SpeedCure(登録商標)XKmのより高い充填を含有する組成物は、フィルムにわずかに黄色を帯び、これは、比色計で黄色値(b*)及びAPHA色値を測定した。実施例6.2及び比較例6の硬度値はIPA拭きの前後で同様であった。
【0285】
TPO-L及びSpeedCure(登録商標)XKmを含有するUV硬化性トップコート組成物について、光示差走査熱量測定法(PhotoDSC)を使用して硬化速度及び硬化及び熱流測定中の熱発生を測定した。・・・
【0286】
【表11】
[図:0001426857000010.jpg]
【0287】
実施例6.2及び比較例6は、3%のSpeedCure(登録商標)Xkmを含有する組成物に対する3%のTPO-Lを含有する組成物の直接比較である。両方の組成物は硬化の後に同じ表面粘着性を有していた。実施例6.2の硬化速度は、比較例6と比較してより速く、第1のパルス照射における硬化中の最高温度はより低かった。
・・・
【0288】
(実施例7)
UV硬化性指ネイルコーティング用のSpeedCure(登録商標)Xkm表面硬化性
組成物の表面硬化性を増大するために、SpeedCure(登録商標)MBF等の別のII型光開始剤とともに、又はSpeedCure(登録商標)7040、CN386又はCN3715LMのようなアミン相乗剤を有する、SpeedCure(登録商標)XKmを含有する新しい配合物を試験した。実験計画を容易にするために、Table 7(表9)において見られるものと同じ比率を使用して、CN1968、DiPEPA、EO3BPADA及びHEMAを使用する予備配合物を調製した。II型のPI及びアミン相乗剤の異なる組合せに加えてSpeedCure(登録商標)XKmを、予備配合物に添加してTable 10(表12)に示される表面硬化性を改善した(量は質量部である)。
・・・
【0294】
(実施例8)
UV硬化性指ネイルコーティングについてのSpeedCure(登録商標)XkmのTPO-Lとの比較
SpeedCure(登録商標)TPO-Lを含有する配合物を調製し、実施例7のものと同じII型 PIs及びアミン相乗剤と共にSpeedCure(登録商標)XKmを含有する配合物と比較した。これらの実施例のために、実施例7と比較して、さらなる表面硬化を促進するために、SpeedCure(登録商標)DETXを含んでいた。更に、これらの配合物は、SpeedCure(登録商標)TPO-Lの性能特性をSpeedCure(登録商標)XKmと直接比較することを可能にする。
【0295】
【表15】
[図:0001426857000011.jpg]
【0296】
比較例8.2~8.5及び実施例8.12~8.15の性能特性を試験し、Table 14(表16)に示す。硬度の結果は先の実施例7と同様であった。配合物はほぼ完全に粘着性のない表面を達成することができたので、IPA拭きの後の硬度を測定しなかった。溶媒拭きを用いて硬化不足の粘着性層を取り除く必要がないことは著しい利点である。
【0297】
【表16】
[図:0001426857000012.jpg]
【0298】
Table 15(表17)のPhotoDSC測定は、SpeedCure(登録商標)XKmを含有する本発明による組成物が、SpeedCure(登録商標)TPO-Lを含有する比較組成物と同様の硬化速度及び最高温度を硬化中に有していたことを示す。LEDネイルランプで60秒硬化後の表面粘着性を測定した。実施例8.14及び8.15は、比較例8.4及び8.5と同様の粘着性のない表面を有していた。
【0299】
【表17】
[図:0001426857000013.jpg]
【0300】
実施例1~8は、SpeedCure(登録商標)XKmが、組み合わせたノーリッシュI型及びII型反応性を利用し、TPO、TPO-L及びBAPOに基づく光硬化性開始系と同じ又はより良好な性能を有し、後者の3種と関連した毒性の懸念がない光硬化性開始系を設計するのに使用することができることを例証する。」
2 甲2
(甲2a)「【請求項1】
下記A~C;
A:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を含むラジカル重合性成分、
B:アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤、
C:α-ヒドロキシアルキルフェノン型光重合開始剤、
を含有し、
A~Cの合計100質量%における、Bの含有量をX質量%及びCの含有量をY質量%とした場合、下記式(1);
1.79X+Y≧22.0 ・・・(1)
(式中、Xは、30.0≧X>0、Yは、30.0≧Y>0である。)
を満たす、硬化性人工爪組成物。」
(甲2b)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2には、硬化性人工爪組成物の硬化時上昇温度の感応評価が行われているだけであり、硬化性人工爪組成物の組成面から硬化時上昇温度の制御を行うことについて、記載も示唆もされていない。
特許文献3、4には、硬化性人工爪組成物の組成面から硬化時上昇温度の制御を行うことについて、記載も示唆もされていない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)、密着持続性、硬化性、塗布作業性及び硬化塗膜の美感が実用的なものであるとともに、硬化時上昇温度が低い硬化性人工爪組成物を得ることである。
・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)、密着持続性、硬化性、塗布作業性及び硬化塗膜の美感が実用的なものであるとともに、硬化時上昇温度が低いという顕著な効果を発揮する。
・・・
【0036】
アシルフォスフィンオキシド型光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(Omnirad TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等からなる群より選ばれる1種類以上が挙げられる。
特に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、皮膚コンディショニング剤としても機能することから、本発明において好ましく用いることができる。」
(甲2c)「【実施例】
【0061】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0062】
[実施例1~8、比較例1~9]
表1及び表2に示す成分を、表1及び表2に示す量比(質量部)となるように容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ50℃に加温し撹拌した。撹拌しながら圧力0.1MPa下で10分脱泡し、硬化性人工爪組成物を得た。これらの工程は、全て遮光下にて行った。
【0063】
<成分>
表1及び表2中の成分は、それぞれ以下のとおりである。
(オリゴマー)
PUA-1:ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート及びポリカーボネートジオールから得られるポリエーテルポリウレタンメタクリレート(重量平均分子量29,000)
(モノマー)
HBMA:2-ヒドロキシブチルメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
(重合開始剤)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
HCPK:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0064】
<硬化時上昇温度>
得られた硬化性人工爪組成物の硬化時上昇温度の測定を、以下のように行った。結果を表1及び表2に併せて示す。
(測定開始温度及び硬化熱測定)
硬化収縮率計(商品名Custron;アクロエッジ社製)に付属している、硬化時の温度測定装置により、測定開始温度を測定するとともに、硬化時の温度測定を行って最高温度を硬化熱とした。
硬化熱の測定に際して用いられるサンプルは、以下のよう調製した。
紫外線光源の上に基板固定治具を設け、透明ガラス基板を基板固定治具に固定した。
テフロン(登録商標)プレートに直径1.0mmの孔を穿孔し、テフロンリングを作製した。
透明ガラス基板の上に、作成したテフロンリングを設置し、穿孔部分に硬化性人工爪組成物を硬化前膜厚が1.0±0.1mmとなるように充填した後に、テフロンリング上を遮光材料(黒色アルミフォイル)で覆いサンプルを作製した。
サンプルの透明ガラス基板側から紫外線を照射し、テフロンリングの穿孔部分に充填した硬化性人工爪組成物を硬化させ、硬化時に発生する硬化熱を測定した。
【0065】
(硬化時上昇温度の算出)
得られた硬化熱を用い、下記式(A):
硬化時上昇温度(℃)=硬化熱(℃)-測定開始温度(℃)
により硬化時上昇温度を算出した。
【0066】
【表1】
[図:0001426857000014.jpg]
・・・
【0068】
実施例1~8の硬化性人工爪組成物は、いずれも、硬化塗膜の基材への密着性(爪への接着力)、密着持続性、硬化性、塗布作業性及び硬化塗膜の美感が実用的なものであり、ジェルネイルとして問題なく使用し得るものであった。
表1及び表2より、硬化性人工爪組成物が、A:ラジカル重合性成分、B:アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤及びC:α-ヒドロキシアルキルフェノン型光重合開始剤の合計100質量%における、Bの含有量をX質量%及びCの含有量をY質量%とした場合、式(1);
1.79X+Y≧22.0 ・・・(1)
(式中、Xは、30.0≧X>0、Yは、30.0≧Y>0である。)
を満たす場合には、硬化時上昇温度を低く抑えることができる。具体的には、硬化時上昇温度を23℃以下に抑えることが可能であることがわかる。」
第5 判断
1 申立理由1(新規性欠如)
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1には、ネイルコーティング等に用いられる硬化性組成物において、従来から使用されているアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤である、以下の構造を有する「SpeedCure(登録商標)TPO-L」(エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート又は(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸エチル。以下「TPO-L」という。)
[図:0001426857000015.jpg]
等の化合物に毒性の懸念等があるため、当該従来から使用されてきたアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤に代えて、「ノーリッシュI型及びノーリッシュII型活性の両方を有するホスフィンオキシド光開始剤」を用いた硬化性組成物について記載されている(甲1a及び甲1b)。
そして、甲1の実施例には、「ノーリッシュI型及びノーリッシュII型活性の両方を有するホスフィンオキシド光開始剤」の具体例である、以下の構造を有する「SpeedCure(登録商標)XKm」(エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)ホスフィナート。以下「XKm」という。)
[図:0001426857000016.jpg]
を含む実施例6.1~6.3及び実施例8.12~8.15のUV硬化性ネイルコーティング用の硬化性組成物と、TPO-Lを含む比較例6及び比較例8.2~8.5の硬化性組成物が記載されている(甲1d)。
イ 特に、比較例8.2は、以下の組成を有することが記載されている(甲1dの【表15】)。
[図:0001426857000017.jpg]
上記の組成中の「予備配合物」について、実施例7と同じ配合物が用いられ(甲1dの【0294】及び【0295】)、実施例7には、「Table 7(表9)において見られるものと同じ比率を使用して、CN1968、DiPEPA、EO3BPADA及びHEMAを使用する予備配合物を調製した。・・・(量は質量部である)」と記載され(甲1dの【0288】)、「Table 7(表9)」及びその表中の成分については、以下の記載がある。
[図:0001426857000018.jpg]
「CN1968は、接着、光学的透明度及び引張性の良好なバランスを有するウレタンメタクリラートオリゴマーである。ウレタンメタクリラートオリゴマーを、5官能性モノマーSR399(DiPEPA)、SR349(EO3BPADA)及び2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)と混合した」(甲1dの【0280】)。
これらの記載と、材料の略称を説明したから、【表1】(甲1d)の記載を参照すると、上記「予備配合物」は、以下の組成からなるといえる。
予備配合物:
CN1968(二官能性ウレタンメタクリラート)
SR399(DiPEPA:ジペンタエリトリトールペンタアクリラート)
SR349(E03BPADA:3EOビスフェノールAジアクリラート)
HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)
ウ そうしてみれば、甲1には、比較例8.2に基づいて、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。
「以下の組成からなるUV硬化性指ネイルコーティング(単位は重量部)。
予備配合物 25
TPO-L 1.25
DETX(2,4-ジエチルチオオキサントン) 0.1375
MBF(ベインゾイルギ酸メチル) 1.25
ここで、上記予備混合物は、以下の組成からなる。
CN1968(二官能性ウレタンメタクリラート)
SR399(DiPEPA:ジペンタエリトリトールペンタアクリラート)
SR349(E03BPADA:3EOビスフェノールAジアクリラート)
HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)」
(2)対比
本件発明と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「CN1968(二官能性ウレタンメタクリラート)」、「SR399(DiPEPA:ジペンタエリトリトールペンタアクリラート)」、「SR349(E03BPADA:3EOビスフェノールAジアクリラート)」及び「HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)」は、本件発明の「(a)(メタ)アクリレート化合物」に相当する。
また、「CN1968(二官能性ウレタンメタクリラート)」は、本件発明の「ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当する。
イ 甲1発明の「TPO-L」は、以下の構造を有する重合開始剤であるから(甲1bの【0006】)、本件発明の「式(1)」「で表される」「分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤」に相当する。
[図:0001426857000019.jpg]
ウ また、甲1発明の「UV硬化性指ネイルコーティング」は、本件発明の「硬化性人工爪組成物」に相当する。
エ そうしてみれば、本件発明と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(ア)一致点
「(a)(メタ)アクリレート化合物、及び、
(b)重合開始剤、
を含有する硬化性人工爪組成物であって、
前記(a)(メタ)アクリレート化合物が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、
前記(b)重合開始剤が、分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤を含み、
前記分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤が、式(1);
(省略)
で表される分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤を含む、前記硬化性人工爪組成物。」
(イ)相違点
(相違点1)「(a)(メタ)アクリレート化合物」について、本件発明は、「脂環式モノ(メタ)アクリレートモノマーを含」むのに対し、甲1発明は、含まない点
(相違点2)本件発明の「ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」は、「ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエステル骨格、アクリル骨格、ポリオレフィン骨格からなる群より選ばれる1種以上を有するもの」であるのに対し、甲1発明の「CN1968(二官能性ウレタンメタクリラート)」は、そのような骨格を有するものであるかどうか明らかでない点
(相違点3)本件発明の「(b)重合開始剤」は、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤又は過酸化物系重合開始剤を含」むのに対し、甲1発明は、含まない点
(3)判断
甲1発明は、「脂環式モノ(メタ)アクリレートモノマー」及び「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤又は過酸化物系重合開始剤」を含まないから、上記相違点1及び相違点3は、実質的な相違点である。
そうしてみれば、相違点2を検討するまでもなく、本件発明は、甲1に記載された発明とはいえない。
(4)申立人の主張
申立人は、甲1に記載の事項について
[図:0001426857000020.jpg]
と述べ(申立書4頁のイ(ア))、
[図:0001426857000021.jpg]
と主張する(申立書5頁のウ(ア))。
しかしながら、相違点1及び3が、「甲1記載事項1~3より」「当業者であれば設計事項」であるとしても、実質的な相違点であることに変わりない。また、「甲1記載事項1~3」は、周知とはいえないから、申立人の主張は、受け入れられない。
なお、比較例に基づいて、組成を変更することに動機付けはないから、相違点1及び3が、「甲1記載事項1~3より」「当業者であれば設計事項」であるとはいえない。
また、申立人は甲1の【0294】及び【0295】に実施例8が記載されており、これを「甲1発明」として申立理由1について主張しているが(特に、申立書4頁下から11~10行)、実施例8.12~8.15のネイルコーティングは、本件発明の式(1)で表される重合開始剤を含有しない一方で、比較例8.2は上記段落に記載されており、かつ、本件発明の式(1)で表される重合開始剤を含有するものであって、本件発明により近い構成を有するものであるから、当審合議体はこれを甲1発明として認定した。仮に、実施例8.12~8.15のいずれかのネイルコーティングを甲1発明としたとしても、結論を左右しない。
(5)小括
以上より、本件発明は、甲1に記載された発明とはいえないから、申立理由1(新規性欠如)は、理由がない。
甲1に記載された発明を、甲1の比較例6及び比較例8.3~8.5に基づいて認定しても、同様の判断となる。
2 申立理由2(進歩性欠如)
(1)甲2に記載された発明
甲2には、「下記A~C;
A:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を含むラジカル重合性成分、
B:アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤、
C:α-ヒドロキシアルキルフェノン型光重合開始剤」を含有する、硬化時上昇温度が低い「硬化性人工爪組成物」が記載され(甲2a及び甲2b)、その具体例として、実施例1~8において、表1に示される硬化性人工爪組成物が記載されている(甲2c)。
これらの記載、特に実施例1の記載から、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。
「下記の成分からなる硬化性人工爪組成物(単位は質量%)。
[図:0001426857000022.jpg]
ここで、上記表の成分は、以下のとおりである。
(オリゴマー)
PUA-1:ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート及びポリカーボネートジオールから得られるポリエーテルポリウレタンメタクリレート(重量平均分子量29,000)
(モノマー)
HBMA:2-ヒドロキシブチルメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
(重合開始剤)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
HCPK:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」
(2)対比
本件発明と甲2発明を対比する。
ア 甲2発明の「PUA-1」、「HBMA」及び「IBXA」は、本件発明の「(a)(メタ)アクリレート化合物」に相当する。
また、上記「PUA-1」は、「ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート及びポリカーボネートジオールから得られるポリエーテルポリウレタンメタクリレート(重量平均分子量29,000)」であり、ポリカーボネートの骨格を有するものであるから、本件発明の「ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエステル骨格、アクリル骨格、ポリオレフィン骨格からなる群より選ばれる1種以上を有する」「ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に相当する。
さらに、上記「IBXA」は、「イソボルニルアクリレート」であるから、本件発明の「脂環式モノ(メタ)アクリレートモノマー」に相当する。
イ 甲2発明の「TPO」及び「HCPK」は、本件発明の「(b)重合開始剤」に相当する。
また、上記「TPO」は、「2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド」であるから、本件発明の「分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤」と、アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤である点で一致する。
さらに、上記「HCPK」は、「1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」であるから、本件発明の「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」に相当する。
ウ 甲2発明は「硬化性人工爪組成物」であり、本件発明の「硬化性人工爪組成物」に相当する。
また、本件発明は、「(a)(メタ)アクリレート化合物以外のラジカル重合性化合物を配合することができるから(本件特許明細書の【0048】~【0049】を参照。)、甲2発明が「DMAA」(ジメチルアクリルアミド)を含むことは、両発明の相違点とはならない。
エ そうしてみれば、本件発明と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(ア)一致点
「(a)(メタ)アクリレート化合物、及び、
(b)重合開始剤、
を含有する硬化性人工爪組成物であって、
前記(a)(メタ)アクリレート化合物が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと脂環式モノ(メタ)アクリレートモノマーを含み、
前記ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエステル骨格、アクリル骨格、ポリオレフィン骨格からなる群より選ばれる1種以上を有するものであり、
前記(b)重合開始剤が、アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤と、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤又は過酸化物系重合開始剤を含む、
前記硬化性人工爪組成物。」
(イ)相違点
硬化性人工爪組成物に含まれる「(b)重合開始剤」のうち、「アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤」が、本件発明では、「式(1):(省略)で表される」「分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤」であるのに対し、甲2発明では、「TPO」(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)である点
(3)判断
甲2には、以下の記載がある(甲2bの【0036】)。
「アシルフォスフィンオキシド型光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(Omnirad TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等からなる群より選ばれる1種類以上が挙げられる。
特に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、皮膚コンディショニング剤としても機能することから、本発明において好ましく用いることができる。」
しかしながら、上記記載において例示された化合物は、いずれも「式(1):(省略)で表される」「分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤」ではない。
また、甲2の硬化性人工爪組成物は「B:アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤」及び「C:α-ヒドロキシアルキルフェノン型光重合開始剤」の含有量を特定の範囲(甲2aの「1.79X+Y≧22.0・・・式(1)」を満たす範囲)とすることにより、硬化時上昇温度の制御をするものであり、硬化時上昇温度が低い硬化性人工爪組成物を得ることを課題とすることが記載されている甲2には、硬化時上昇温度を低くするために、アシルフォスフィンオキシド型光重合開始剤を上記相違点に係る特定の構造を有するものとすることについては、何ら記載はない。
そうしてみれば、甲2発明において、「TPO」(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)を「式(1):(省略)で表される」「分子内にフェニル環を1個又は2個有するアシルフォスフィンオキシド系重合開始剤」とする動機付けはない。
(4)申立人の主張
申立人は、甲1及び甲2に記載の事項について
[図:0001426857000023.jpg]
(申立書5頁のウ(ア))、
[図:0001426857000024.jpg]
(申立書4~5頁のイ(イ))と述べ、
[図:0001426857000025.jpg]
と主張する(申立書5頁のウ(ア))。
しかしながら、上述のとおり、甲2には、硬化時上昇温度を低くするために、アシルフォスフィンオキシド型光重合開始剤を本件発明で特定される特定の構造を有するものとすることについては、何ら記載はなく、そのような動機付けはない。
甲1には、TPO-Lを含む硬化性組成物についての硬化時の最高温度が示されている(甲1dの【表17】の比較例8.2~8.5)が、この硬化温度が、甲2発明で用いられる光重合開始剤であるTPOを含む硬化性組成物の硬化温度と比べて低いことを甲1の記載から把握することはできないから(甲1dの【0298】には、「SpeedCure(登録商標)XKmを含有する本発明による組成物が、SpeedCure(登録商標)TPO-Lを含有する比較組成物と同様の硬化速度及び最高温度を硬化中に有していたことを示す」と記載されており、TPO-LとTPOの比較は記載されていない。)、甲1の記載を参酌しても、甲2発明のTPOを甲1に記載のTPO-Lに代える動機付けがあるとはいえない。
それゆえ、申立人の主張は、受け入れられない。
(5)小括
以上より、本件発明は、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立理由2(進歩性欠如)は、理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、そのほかに請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700494