特許異議申立
2021-701143
自爪塗布用光硬化性人工爪組成物
- 審判番号
- 2021-701143
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-083062
- 登録番号
- 6886691
- 請求日
- 2021年12月03日
- 審決日
- 2022年04月28日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社サクラクレパス
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】長谷部 善太郎
- 【異議申立人】落合 克弘
- 審判長/審判官
- 審判長 大熊 幸治
- 審判官 野田 定文
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.121-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6886691号発明「自爪塗布用光硬化性人工爪組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6886691号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6886691号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成29年4月19日(優先権主張 平成28年4月26日)に出願され、令和3年5月19日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年12月3日に特許異議申立人 落合克弘は、特許異議の申立てを行った。
2 本件発明
特許第6886691号の請求項1、2の特許に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含有し、
自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが10~99重量%、光重合性開始剤が0.5~20重量%含有されており、
ラジカル重合性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び2-アクリロイルオキシエチルサクシネート以外の(メタ)アクリレート化合物であり、
ラジカル重合性化合物のうちの少なくとも1種は、そのlogSの値が-3.0~3.0であり、かつPSAの値が75~150である、
自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
該ラジカル重合性化合物の少なくとも1種はアクリレートモノマーである請求項1に記載の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。」
3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として特開2015-209390号公報(甲第1号証:以下「引用例」という。)を提出し、請求項1、2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
4 引用例の記載
(1)引用例には、特許請求の範囲において、「【請求項1】
下記(A)(化1)~(化3)で示される化合物のうちの1種以上
[図:0001385214000001.jpg]
[図:0001385214000002.jpg]
[図:0001385214000003.jpg]
及び(B)ラジカル重合開始剤
を含有する光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
上記(A)以外の化合物であって、(C)多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物を含有する請求項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
(C)多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物が多官能のウレタンアクリレート化合物である請求項2に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項4】
多官能のウレタンアクリレート化合物がウレタンアクリレートオリゴマーである請求項3に記載の光硬化性人工爪組成物。」(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)が記載され、
【0006】には、「本発明は光硬化性人工爪組成物において、臭気を低減し、かつ皮膚刺激性が低い組成物を得、被覆後においては、強固な被膜を得て欠けることがなく、使用者自身の爪表面に対してサンディングを行う必要がなく、かつ爪への密着性が高く、その表面にシワが発生することを防止することを課題とする。」と記載されている。
そして、実施例では、表1の組成を有する光硬化性人工爪組成物の例が示され、【0025】には、「表1において、ウレタンアクリレートはウレタンオリゴマーである。」と記載されていることから、当該「ウレタンアクリレート」は、「ウレタンアクリレートオリゴマー」であるといえ、【0029】によると、「リン酸エステルメタクリレートの混合物」が「(化1)で示される化合物」である「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」を含むことが理解でき、「IRGACURE184及びLUCIRIN TPO」は、ともに「(B)ラジカル重合開始剤」である。
「【表1】
[図:0001385214000004.jpg]
」
そうすると、引用例には、「ウレタンアクリレートオリゴマー、メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート、及びラジカル重合開始剤を含有し、
光硬化性人工爪組成物中、ウレタンアクリレートオリゴマーが40.00、40.20、47.80、50.00又は55.00重量%、ラジカル重合開始剤が、1.5、4.3、4.5又は6.0重量%含有されており、
使用者自身の爪表面に適用する光硬化性人工爪組成物。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
5 当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、両発明は、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含有し、
自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが10~99重量%、光重合性開始剤が0.5~20重量%含有されており、
ラジカル重合性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び2-アクリロイルオキシエチルサクシネート以外の(メタ)アクリレート化合物である、
自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。」の点で一致し、両発明は以下の点で相違する。
相違点:本件発明1は「ラジカル重合性化合物のうちの少なくとも1種は、そのlogSの値が-3.0~3.0であり、かつPSAの値が75~150である」のに対し、引用発明は「ラジカル重合性化合物」である「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」の「logS」及び「PSA」が不明である点。
本件明細書【0010】によると、「logS」が「化合物の水への溶解度を示す指数」であり、「PSA」が「極性表面積」であって、前者は「実測値」に基づき、後者は「計算値」であって、両者が官能基だけでなく、その配列の影響を受ける特性値といえる。
一方、本件明細書【0024】には、引用発明の「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」の構造異性体である「メタクリロキシエチルヘキサノエートフォスフェート」について、「logS=―2.60、PSA=129.17」であることが記載されているところ、共に分子内に存在する二つのエステル基のうちの一つの向きが相違しており、当該エステル基の向きが相違する場合に、logSの値が-3.0~3.0、及びPSAの値が75~150の範囲に留まるとする根拠はなく、引用発明に記載の「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」は、そのlogSの値が-3.0~3.0であり、かつPSAの値が75~150である蓋然性が高いということはできない。
さらに、引用例には、「ラジカル重合性化合物」について、logSの値が-3.0~3.0であり、かつPSAの値が75~150の化合物を選択することに関して記載も示唆もなく、引用発明において、当該技術的事項を採用する動機付けはなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
特許異議申立人は、酷似する構造異性体であれば、logSとPSAが同一となる蓋然性が高い旨主張しているが、構造異性体が酷似するとしても、異なる分子構造のlogSとPSAが同一どころか、「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」のlogSの値が-3.0~3.0かつPSAの値が75~150の範囲内となる根拠はないし、引用発明の「メタクリル酸プロパン酸ペンチルフォスフェート」のlogSとPSAの物性値を特許異議申立人は示していない以上、特許異議申立人の主張は採用できない(なお、特許異議申立人は、新規性(特許法第29条第1項第3号)に関し、本件発明1についての申立の理由としていない。)。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して、さらに「ラジカル重合性化合物の少なくとも1種はアクリレートモノマーである」という技術的事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易になし得るものではない。
(3)まとめ
以上より、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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