特許異議申立
2021-701144
光硬化性人工爪組成物
- 審判番号
- 2021-701144
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-101070
- 登録番号
- 6886695
- 請求日
- 2021年12月03日
- 審決日
- 2022年09月26日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社サクラクレパス
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】安藤 達也
- 【権利者代理人】長谷部 善太郎
- 【異議申立人】落合 克弘
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 野田 定文
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6886695号発明「光硬化性人工爪組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6886695号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~3]について訂正することを認める。
特許第6886695号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6886695号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年5月22日に出願され、令和3年5月19日にその特許権の設定登録がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月3日に特許異議申立人 落合 克弘(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において、令和4年4月28日付けで取消理由が通知された。特許権者は、その指定期間内である同年6月29日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、同年8月1日付けで特許法第120条の5第5項の規定に基づく通知書が通知され、その訂正の請求に対して、申立人は、同年8月30日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年6月29日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、当該訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、以下の訂正を求めるものである。
本件訂正前の請求項1に係る「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部が、重量平均分子量が3000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、」との記載を、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部が、重量平均分子量が3000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、
重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、」(下線は訂正による変更箇所を示す。)に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 本件訂正は、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部」が、更に特定の重量平均分子量、平均アクリル当量及びアクリロイル基に基づく官能基数である「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」を含むことを限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「なかでも、また重量平均分子量が3000以上でアクリル当量が2000以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、アクリロイル基に基づく官能基数が2~4のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有させるか、もしくは、このオリゴマーに加えて、さらに重量平均分子量が3000以上で平均アクリル当量が2000以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを併用することがより好ましい。」(下線は当審において付与)と記載され、実施例1~7及び9~13には、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」に該当するオリゴマーA(「ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3500、アクリロイル基に基づく官能基数6、平均アクリル当量:3500/6=583」)を含有する光硬化性人工爪組成物の具体例が記載されている。
よって、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部」が、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む」ことは、本件特許明細書等に記載されているから、本件訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものといえる。また、上記(1)のとおり、本件訂正は、本件訂正前の「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部」について減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3) 一群の請求項について
訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用しているものであって、請求項1についての本件訂正によって連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、多官能チオール及び光重合開始剤を含有し、
該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー全体の平均アクリル当量が400~2000であり、
かつ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部が、重量平均分子量が3000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、
重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系モノマーが2-ヒドロキシエチルメタクリレート又は(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートである請求項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が2~6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第4号証を提出して、以下の申立ての理由を主張している。
申立ての理由(進歩性)
請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前日本国内又は外国において、頒布された甲第1及び2号証に記載の発明並びに甲第3及び4号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2014-5260号公報
甲第2号証:特表2013-508514号公報
甲第3号証:“UV硬化型ウレタンアクリレート 紫光”及び“中・硬質タイプ 紫光”三菱ケミカル株式会社、[2021年12月3日印刷日]、インターネット
<https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/coating-mat/product/1205777_9228.html,
https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/coating-mat/tech/1205786_9232.html>
甲第4号証:特開2011-177964号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
なお、甲3は、令和4年2月1日提出の手続補正書(方式)によりURLを確認した。確認できる印刷日は上記手続補正書(方式)の提出と同日であったが、甲3は少なくとも特許異議申立書の提出日である令和3年(2021年)12月3には印刷されていることは明らかであるから、特許異議申立書の提出日を印刷日とした。
2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審において令和4年4月28日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(新規性)請求項1~3に係る発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用例1(特開2014-5260号公報:甲1)
第5 当審における判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した理由及び申立人の申立て理由によって、本件請求項1~3に係る特許は取り消されるべきではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
1 取消理由(特許法第29条第1項第3号:新規性)について
(1) 引用例1(甲1)の記載事項
(1a) 「【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含む人工爪原料組成物。
(A)1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物
(C)光重合開始剤」(下線は、当審において付与。以下同様)
(1b) 「【0030】
[成分(A)]
本発明の前記成分(A)において、1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する前記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合し得る化合物であれば特に制限はない。前記ラジカル重合性化合物は、光重合可能な化合物を含むことが好ましいが、熱重合可能な化合物を含んでいても良い。例えば、前記成分(A)が光重合可能な化合物を含み、前記成分(C)の光重合開始剤により重合開始可能であっても良い。また、例えば、前記成分(A)が熱重合可能な化合物を含む場合、本発明の人工爪原料組成物が、さらに熱重合開始剤を含んでいても良い。前記成分(A)としては、例えば、公知の単官能モノマー、多官能モノマー、および、ラジカル重合性の不飽和結合を1個以上保有するオリゴマー等が挙げられる。
【0031】
前記単官能モノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、・・・なお、本発明において、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味し、(メタ)アクリレートは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、(メタ)アクリロイロキシは、「アクリロイロキシおよび/またはメタクリロイロキシ」を意味する。」
(1c) 「【0034】
また、ラジカル重合性の不飽和結合を1個以上保有するオリゴマーとしては、上記のポリエーテル骨格を有するポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーがあげられる。また、その他に、(メタ)アクリロイル基を1個以上結合させたウレタン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが光重合硬化樹脂の主たる成分として数多く市販されている。前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、EBECRYL 230、EBECRYL 270、EBECRYL 4858、EBECRYL 8201、EBECRYL 8402(いずれも、ダイセル・サイテック社の商品名)、オレスター RA1573、オレスター RA1574(いずれも、三井化学社の商品名)、UV-3200B,UV-7000B、UV-7550B、UV-7630B(いずれも、日本合成化学社の商品名)、CN964、CN981、CN996(いずれも、SARTOMER社の商品名)、AH-600、AT-600、UA-306H(いずれも、共栄社化学社の商品名)、UA-4200(新中村化学社の商品名)、アロニックス M-1200(東亞合成社の商品名)、ニューフロンティア R-1304(第一工業製薬社の商品名)等がある。またポリエステル骨格を有するポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーも数多く市販されており、例えばアロニックスM-6200、アロニックスM-7100、アロニックスM-8560(いずれも、東亞合成社の商品名)、オレスター RA1050(三井化学社の商品名)等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。」
(1d) 「【実施例】
【0048】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0049】
以下の実施例および比較例で使用した化学品は、以下のとおりである。
(A)ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物
A1:ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量5000)
A2:ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量3500)
A3:ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量1100)
A4:ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量2100)
A5:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
A6:イソボルニルアクリレート
A7:ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量3000)
(B)多官能チオール化合物
B1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
B2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)
B3:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)
B4:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
(B’)単官能チオール化合物
B5:2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート
(C)光重合開始剤
C1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
C2:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン
C3:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
【0050】
実施例1
<人工爪原料組成物の調製>
(A1)50質量部のウレタンアクリレートオリゴマー(分子量5000)、(A3)12質量部のウレタンアクリレートオリゴマー(分子量1100)、(A5)14質量部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、(A6)14質量部のイソボルニルアクリレート、(B1)4質量部のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、(C1)3質量部の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(C2)3質量部の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンを容量500mlのフラスコに仕込み、フラスコ全体をアルミホイルで包んで光がフラスコ内に入るのを遮断した後、30℃で8時間、撹拌混合し、均一で透明な液体である人工爪原料組成物を得た。得られた人工爪原料組成物は、遮光性のプラスチック容器に格納し、48時間室温で静置し脱泡してから、光照射による人工爪原料組成物の硬化試験に供した。
【0051】
<光照射による人工爪原料組成物の硬化>
前記のとおり調製した人工爪組成物を光硬化させて人工爪を形成し、接着性および除去性を評価した。UVによる人工爪原料組成物の硬化には、光源として、市販のジェルネイル専用UVランプ(36W、ビューティーネイラー製)を用い、UVを2分間照射した。可視光線による人工爪原料組成物の硬化には、光源として、市販のジェルネイル専用LEDランプ1(4.7W、ジャパンネイル製)を用い、可視光を1分間照射した。
【0052】
実施例2~13、比較例1~4
実施例1の各成分に代えて表1に示した各成分を用いる以外は、実施例1と同様の方法で人工爪原料組成物を製造し、同様に光照射による人工爪原料組成物の硬化試験に供した。なお、表1の数値は、質量部を表す。前記質量部は、各実施例または比較例における全成分の合計質量を100質量部として計算した数値である。
【0053】
【表1】
[図:0001392034000001.jpg]
【0054】
[評価判定]
接着性
人工爪の形成(光硬化)から14日後、人工爪の損傷の程度と人工爪の自爪から剥がれた度合いを目視して評価判定した。
○:損傷もほとんどなく、自爪に密着したままである。
△:損傷している部分や自爪からわずかに剥がれている部分がある。
×:損傷が激しく、自爪から剥がれている部分が多い。
除去性
光硬化してから14日後に、ファイル(爪用やすり)で傷付けた人工爪上にアセトンを含んだコットンを置き、アルミホイルで包んでアセトンの揮発を防ぐ。10分後にアルミホイルをほどいて、コットンを取り除き、膨潤した人工爪を除去するときの難易度を評価判定した。
○:人工爪を自爪から除去できる。
△:人工爪の一部が自爪から除去できない。
×:アセトンでは人工爪を自爪から除去できない。
-:人工爪の損傷が激しく、除去する必要がない。
【0055】
上記評価判定の結果を、下記表2に示す。
【表2】
[図:0001392034000002.jpg]
」
(1e) 「【0057】
実施例14
<人工爪原料組成物の調製>
(A4)78質量部のウレタンアクリレートオリゴマー(分子量2100)、(A5)7質量部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、(A6)7質量部のイソボルニルアクリレート、(B1)4質量部のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、(C1)2質量部の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(C2)2質量部の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンを容量500mlのフラスコに仕込み、フラスコ全体をアルミホイルで包んで光がフラスコ内に入るのを遮断した後、30℃で8時間、撹拌混合し、均一で透明な液体である人工爪原料組成物を得た。得られた人工爪原料組成物は、遮光性のプラスチック容器に格納し、48時間室温で静置し脱泡してから、光照射による人工爪原料組成物の硬化試験に供した。
【0058】
<光照射による人工爪原料組成物の硬化>
前記のとおり調製した人工爪組成物を光硬化させて人工爪を形成し、接着性および除去性を評価した。UVによる人工爪原料組成物の硬化には、光源として、市販のジェルネイル専用UVランプ(36W、ビューティーネイラー製)を用い、UVを2分間照射した。可視光線による人工爪原料組成物の硬化には、光源として、市販のジェルネイル専用LEDランプ(40W、ビューティーネイラー製)を用い、可視光を30秒間照射した。
【0059】
実施例14~28、比較例5~7
実施例14の各成分に代えて表3に示した各成分を用いる以外は、実施例14と同様の方法で人工爪原料組成物を製造し、同様に光照射による人工爪原料組成物の硬化試験に供した。なお、表3の数値は、質量部を表す。前記質量部は、各実施例または比較例における全成分の合計質量を100質量部として計算した数値である。また、実施例15と実施例13、実施例20と実施例7、実施例27と実施例2、比較例7と比較例3は、それぞれ同じ人工爪原料組成物(組成および調製方法が同一)である。
【0060】
比較例8~9
さらに市販のジェルネイル製品について上記実施例、比較例と同様の方法で光硬化して評価試験を行なった。
【0061】
【表3】
[図:0001392034000003.jpg]
」
(2) 引用例1に記載された発明
上記摘記(1a)~(1c)によると、引用例1には、「(A)1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物、(B)1分子内に2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物及び(C)光重合開始剤を含有する人工爪原料組成物」が記載され((1a))、当該ラジカル重合性化合物として、「単官能モノマー・・・および、ラジカル重合性の不飽和結合を1個以上保有するオリゴマーであるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」が挙げられ((1b))、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」の市販例として、「EBECRYL 230、EBECRYL 270、EBECRYL 4858、EBECRYL 8201、EBECRYL 8402(いずれも、ダイセル・サイテック社の商品名)、オレスター RA1573、オレスター RA1574(いずれも、三井化学社の商品名)、UV-3200B,UV-7000B、UV-7550B、UV-7630B(いずれも、日本合成化学社の商品名)、CN964、CN981、CN996(いずれも、SARTOMER社の商品名)、AH-600、AT-600、UA-306H(いずれも、共栄社化学社の商品名)、UA-4200(新中村化学社の商品名)、アロニックス M-1200(東亞合成社の商品名)、ニューフロンティア R-1304(第一工業製薬社の商品名)」が示されている((1c))。
さらに、上記摘記(1d)及び(1e)によると、実施例1~7及び20~28には、(A)ウレタンアクリレートオリゴマー並びに単官能モノマーである(A5)2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は(A6)イソボルニルアクリレート、(B)多官能チオール化合物、並びに(C)光重合開始剤を含有する人工爪原料組成物において、当該ウレタンアクリレートオリゴマーが、分子量が3000である(A7)単体(実施例21~24)、又は、分子量が5000である(A1)、分子量が3500である(A2)、分子量が1100である(A3)、分子量が2100である(A4)及び分子量が3000である(A7)のうちの2種の組合せであって、(A1)、(A2)又は(A7)を少なくとも1種含む高分子混合体(質量比に基づくと、平均分子量は3550(実施例7及び20)、4245(実施例1、2及び27)、4250(実施例6)、4277(実施例3~5)、4480(実施例26)又は4675(実施例25)である。)である具体例が記載されている。
そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1」という。)。
「(A)ウレタンアクリレートオリゴマー並びに(A5)2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又は(A6)イソボルニルアクリレート、(B)多官能チオール化合物、並びに(C)光重合開始剤を含有し、
ウレタンアクリレートオリゴマーの全て又は一部が、分子量が5000である(A1)、分子量が3500である(A2)、分子量が1100である(A3)、分子量が2100である(A4)、又は分子量が3000である(A7)を含み、平均分子量が3000、3550、4245、4250、4277、4480又は4675であるウレタンアクリレートオリゴマーである、
人工爪原料組成物。」
(3) 本件発明1について
ア 発明の対比
引用発明1に記載の「ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「(B)多官能チオール化合物」は、それぞれ、本件発明1の「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」及び「多官能チオール」に相当する。また、(A5)2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び(A6)イソボルニルアクリレートは、「(メタ)アクリル系モノマー」であり、引用発明1の組成物は、「光重合開始剤」を含有するから、「光硬化性」といえ、引用発明1の「人工爪原料組成物」は、「人工爪組成物」である。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、多官能チオール及び光重合開始剤を含有する、
光硬化性人工爪組成物。」
の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。
相違点1:本件発明1の「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」は、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー全体の平均アクリル当量が400~2000であり、かつ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部が、重量平均分子量が3000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」であるのに対し、引用発明1の「ウレタンアクリレートオリゴマー」は、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部が、分子量が5000である(A1)、分子量が3500である(A2)、分子量が1100である(A3)、分子量が2100である(A4)、分子量が3000である(A7)を含み、平均分子量が3000、3550、4245、4250、4277、4480又は4675であるウレタンアクリレートオリゴマー」であり、「ウレタンアクリレートオリゴマー全体の平均アクリル当量が不明」である点
相違点2:本件発明1は、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの全て又は一部」が「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む」のに対して、引用発明1は、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む」かどうか不明である点
イ 相違点の検討
まず、相違点2について検討する。
引用発明1の「ウレタンアクリレートオリゴマー」のアクリロイル基に基づく官能基数については、引用例1及び本件特許明細書等には明示的に記載されていない。また、引用例1に一般記載(摘記(1c))として例示されている多数の市販品は、いずれも官能基数2~6の「ウレタンアクリレートオリゴマー」であるものと認められる(甲3、特開2011-177964号公報(甲4)の【0061】、特開2013-203873号公報の【0038】、特開2002-12651号公報の【0008】、特開2018-140629号公報の【0072】等を参照)ものの、これらの市販品が、官能基数6であり、かつ重量平均分子量が3000以上である「ウレタンアクリレートオリゴマー」とまではいえない。
そうすると、引用例1には、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」を含む光硬化性人工爪組成物が記載されているとはいえず、相違点2は、両発明の実質的な相違点であるといえる。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は引用例1に記載された発明とはいえない。
(4) 本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1を引用し、(メタ)アクリル系モノマーを更に特定し、本件発明3は、本件発明1を直接的又は間接的に引用し、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーについて、別途限定を付加したものである。
そうすると、本件発明2及び3についても、上記(3)と同様の理由により、引用例1に記載された発明とはいえない。
(5) 申立人の意見について
申立人は、令和4年8月30日提出の意見書において、「オリゴマーAを含まない実施例8と、オリゴマーAを含む実施例1、2、4、5、6、9、10、12および13は、表に記載の未硬化樹脂および屈曲性の点において同等の特性を有する。そのため、訂正後の請求項に係る発明の通りオリゴマーAを必須成分としたところで、発明の効果に大差は無く、実施例1~7、9~13は引用例1に開示されているに等しい」と主張する。
しかしながら、引用例1には、光硬化性人工爪組成物において、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」を含むことについて記載も示唆もないのであるから、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」であるオリゴマーAの有無による光硬化性人工爪組成物の効果に差があるかどうかにかかわらず、本件発明が引用例1に記載された発明とはいえないことは、上記(3)で述べたとおりである。
よって申立人の主張は採用できない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(特許法第29条第2項:進歩性)について
1 各甲号証の記載事項
(1) 甲1(引用例1)の記載事項
前記第5 1(1)参照
(2) 甲2の記載事項
(2a) 「【請求項5】
前記ポリマーポリオールおよび前記(メタ)アクリレートが予備反応して、(メタ)アクリレート不飽和およびヒドロキシル基の両方を有するポリマーを形成する、請求項1に記載の組成物。」
(2b) 「【0001】
本発明は、コーティング組成物に関する。詳細には、本発明は、ポリマーポリオール、(メタ)アクリレート、および0.1重量%未満の光開始剤を含む、溶媒ベースの組成物と、それを、自動車補修用途のコーティング系の修復に使用するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
わずかな損傷で手入れを必要とする自動車修復の分野では、パネル全体を塗り替えるのではなく、修復領域を小さく保つことがしばしば望ましい。わずかな損傷は、スポット修復とも呼ばれる非常に小規模な自動車補修の技法の助けを借りて、好ましくは修理される。
【0003】
スポット修復は、例えば、損傷部位のクリーニングおよびサンディングを行い、任意選択で損傷部位に充填材組成物を充填し、その後、充填材を乾燥しまたは硬化し、任意選択でサンディングおよびクリーニングを行い、ベースコートおよびクリアコート組成物を付着させ、その後、スポットブレンダー組成物を付着させ、ならびに付着させた組成物を硬化することを含む。そのような修復で使用される、改善されたスポットブレンダー組成物が、求められている。」
(2c) 「【0016】
その他の実施形態では、ポリマーポリオールはポリウレタンポリオールであってもよい。」
(2d) 「【0044】
ある実施形態において、組成物のポリマーポリオールおよび(メタ)アクリレートは、組成物のその他の材料を添加する前に予備反応させてもよい。例えば、ポリマーポリオールと(メタ)アクリレートとを予備反応させて、(メタ)アクリレート不飽和とヒドロキシル基との両方を有するポリマーを形成させてもよい。そのようなポリマーは、800から1200の(メタ)アクリレート当量と、500から1000のヒドロキシル当量とを有する。」
(2e) 「【0047】
・・・任意選択で、ポリチオールを含む第3の成分を、使用してもよい。」(「・・・」は記載の省略を表す。)
(3) 甲3の記載事項
(3a) 「
[図:0001392034000004.jpg]
」(中・硬質タイプ 紫光、物性表)
(4) 甲4の記載事項
(4a) 「【0061】
【表1-2】
[図:0001392034000005.jpg]
」
(2)本件発明1について
前記5 1(2)で述べたとおり、引用例1(甲1)には、引用発明1が記載され、本件発明1と引用発明1とは、前記第5 1(3)アで述べた点で一致し、相違点1及び2で相違する。
そこで、まず相違点2に係る構成の容易想到性について検討する。
上記摘記(2a)、(2c)及び(2d)によると、甲2には、「ポリマーポリオール」、「(メタ)アクリレート」、「ポリウレタンポリオール」及び「ポリチオール」に関する「組成物」について、(メタ)アクリレート不飽和とヒドロキシル基との両方を有するポリマーが、800から1200の(メタ)アクリレート当量と、500から1000のヒドロキシル当量とを有することが記載されている。
しかしながら、甲2には、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」については、記載も示唆もない。しかも、上記摘記(2b)によると、甲2に記載の組成物は、専ら自動車補修用途のコーティング系の修復に使用するための組成物であって、半永久的な接着が必要とされるところ、上記摘記(1d)に記載されているように、引用発明1は硬化後の除去性が必要である人工爪原料組成物であって、半永久的な接着を目的とする甲2に関する技術的事項の適用には、両者の技術分野が相違するという事情だけでなく、阻害要因が存在するものといえる。
そうすると、引用発明1において、甲2に記載の技術的事項を採用する動機付けはないし、仮に甲2に記載の技術的事項を適用したとしても、本件発明1の相違点2に係る構成に想到することはできない。
また、上記摘記(3a)及び(4a)によると、甲3及び4には、オリゴマーの官能基数が2又は3である「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」の市販品の特性が記載されているにすぎず、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」については記載も示唆もない。
よって、相違点2については、甲1発明及び甲1~4の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得ないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3及び4に記載された事項を参照し、かつ、引用例1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到するものではない。
(3) 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、引用発明1とは、相違点1及び2の相違点を有する。そして、上記(2)と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲3及び4に記載された事項を参照し、かつ、引用例1及び甲2に記載された発明に基いても、当業者が容易に想到するものではない。
(4)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、「甲2号証に直接的に爪や人工爪の用途が記載されていないものの、当業者であれば(メタ)アクリレート当量の範囲にするために部重量平均分子量と官能基数を設定することは当業者であれば設計事項である」旨の主張をしている。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、甲2には、「重量平均分子量が3000以上、平均アクリル当量が2000以下、アクリロイル基に基づく官能基数が6のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」について記載も示唆もなく、しかも、引用発明1に対して、甲2の記載事項を適用することには阻害要因が存在する。それゆえ、引用発明1において、甲2に記載の技術的事項を適用する動機付けはないし、仮に甲2に記載の技術的事項を採用したとしても、本件発明1の相違点2に係る構成に想到することはできない。
よって、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由並びに証拠によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701144