特許異議申立
2025-700484
販売処理システム
- 審判番号
- 2025-700484
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-122067
- 登録番号
- 7575820
- 請求日
- 2025年04月30日
- 審決日
- 2026年03月10日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社寺岡精工
- 【権利者代理人】宮崎 恭
- 【異議申立人】IPセイル 合同会社
- 審判長/審判官
- 審判長 富澤 哲生
- 審判官 梅本 章子
- 審判官 坂庭 剛史
- 分類
- P1651.121-YAA(G07G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7575820号発明「販売処理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7575820号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5、7について訂正することを認める。
特許第7575820号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7575820号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年9月7日を出願日とする特許出願の一部を、令和5年7月26日に新たな特許出願としたものであり、令和6年10月22日に特許権の設定登録がされ、同月30日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年4月30日に特許異議申立人 IPセイル合同会社(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、その手続の経緯は、概ね次のとおりである。
令和7年 7月22日付け 取消理由通知書
令和7年 9月11日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
令和7年11月21日付け 訂正拒絶理由通知書
令和7年12月16日 意見書及び手続補正書(特許権者)
令和8年 1月 6日付け 訂正請求があった旨の通知
令和8年 2月12日 意見書(申立人)
令和7年12月16日提出の手続補正書は、令和7年9月11日提出の訂正請求書及びこれに添付した訂正特許請求の範囲を補正するものであって、当該手続補正書による補正は、訂正事項1に係るものであるが、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合する。
以下では、令和7年12月16日提出の手続補正書によって補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5に「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録する商品登録手段」と記載されているのを、「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段と、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に「前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録するステップ」と記載されているのを、「前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与え、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録するステップ」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1は、訂正前の請求項5に記載されている「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録する商品登録手段」について、「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段と、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段」と訂正することで、「商品を登録する」ための構成を具体的に特定し、さらに限定するものである。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項7に記載されている「前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録するステップ」について、「前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与え、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録するステップ」と訂正することで、「商品を登録するステップ」の構成を具体的に特定し、さらに限定するものである。
したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)訂正事項1及び2が本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。願書に添付した明細書については、以下「本件特許明細書」という。)に記載した事項の範囲内のものであるか否かについては、次のとおりである。
ア 本件特許明細書の【0084】、【0087】、【0157】、【0158】、【0160】によれば、本件特許明細書等には、携帯端末20の店舗特定手段202は、店舗を特定する処理を実行すること、及び、店舗が特定されることによって、上位装置10は、携帯端末20に対して当該店舗の商品マスタへのアクセス許可を与えることが記載されている。
また、本件特許明細書の【0092】、【0103】、【0157】、【0158】、【0164】によれば、本件特許明細書等には、携帯端末20の商品登録手段205は、顧客等による読取操作で読み取った商品に添付されたコード情報から取得された商品識別情報に紐付けられた商品情報を商品マスタから取得し、登録商品情報として登録することが記載されている。
そうすると、本件特許明細書等には、「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段と、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段」が記載されているといえ、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
イ 本件特許明細書の【0084】、【0087】、【0160】によれば、本件特許明細書等には、携帯端末20は、ステップS201において、店舗を特定する処理を実行すること、及び、店舗が特定されることによって、上位装置10は、携帯端末20に対して当該店舗の商品マスタへのアクセス許可を与えることが記載されている。
また、本件特許明細書の【0092】、【0103】、【0164】によれば、本件特許明細書等には、携帯端末20は、ステップS205において、顧客等による読取操作で読み取った商品に添付されたコード情報から取得された商品識別情報に紐付けられた商品情報を商品マスタから取得し、登録商品情報として登録することが記載されている。
そうすると、本件特許明細書等には、「前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与え、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録するステップ」が記載されているといえ、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
ウ したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合している。
(3)訂正事項1及び2は、上記(1)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合している。
3 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1~7を対象とするものであるから、訂正事項1及び2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5、7について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
店舗の顧客が使用する携帯端末であって、
現在の位置を特定する位置特定手段と、
登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定する店舗特定手段と、
前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録する商品登録手段と、
報知手段と、
を備え、
前記報知手段は、前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する、
携帯端末。
【請求項2】
前記位置に基づいて検出された近隣の店舗の位置を示す地図を表示する表示手段をさらに備え、
前記店舗特定手段は、二以上の店舗が前記所定の店舗の候補となる場合、前記表示手段により表示された地図上の店舗のうち顧客の操作により選択された店舗を前記所定の店舗として特定する、
請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
精算手段を更に有し、
前記精算手段は、前記位置が第1の領域の中である場合に、登録された商品の精算を、現金を用いない電子的な決済により行う処理を有効化させる、
請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
精算手段を更に有し、
前記精算手段は、登録された商品の精算を、現金を用いない電子的な決済により行う処理を顧客が選択した場合、顧客に対して、精算装置での操作が必要でない旨報知する、
請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項5】
店舗の顧客が使用する携帯端末を含む販売管理システムであって、
前記携帯端末の現在の位置を特定する位置特定手段と、
登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定する店舗特定手段と、
前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段と、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段と、
報知手段と、
を備え、
前記報知手段は、前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する、
販売管理システム。
【請求項6】
店舗の顧客が使用する携帯端末を制御するプログラムであって、
前記携帯端末のコンピュータに、
現在の位置を特定するステップと、
登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定するステップと、
前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録するステップと、
報知するステップと、
を実行させ、
前記報知するステップは、前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する、
プログラム。
【請求項7】
店舗の顧客が使用する携帯端末を含む販売管理システムが実行する情報処理方法であって、
前記携帯端末の現在の位置を特定するステップと、
登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定するステップと、
前記店舗を特定するステップによって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与え、前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録するステップと、
報知するステップと、
を有し、
前記報知するステップは、前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する、
情報処理方法。」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。
請求項1、5~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された事項に基づいて、請求項2~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により取り消すべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開2006-4264号公報
甲第2号証:特開2016-40668号公報
甲第3号証:月刊コンビニ、2018年5月号、p.6-13
甲第3号証の1:月刊コンビニ、2018年5月号、表紙、p.80、裏表紙
甲第4号証:特開2018-73167号公報
甲第5号証:特開2017-199234号公報
甲第6号証:特開2014-48677号公報
甲第7号証:米国特許出願公開第2016/0171543号明細書
(以下「甲第1号証」~「甲第7号証」をそれぞれ「甲1」~「甲7」という。)
第5 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項5、7に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献1:特開2006-4264号公報(甲1)
引用文献2:特開2014-48677号公報(甲6)
第6 各甲号証等の記載
1 甲1(引用文献1)の記載、甲1発明
(1)甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審付与。以下同様。)。
「【0022】
図1~図7は、本発明の第1の実施例である。図1は、携帯情報端末1を用いた電子決済システムの概略ブロック図である。携帯情報端末1は、携帯情報端末全体の制御を行う制御部10と、入力手段の一例としてのキーパッド20と、表示手段の一例としてのディスプレイ30とを備えて構成することができる。
【0023】
制御部10は、それぞれ後述するように、通信制御部110と、店舗情報記憶部120と、位置情報取得部130と、決済制御部140と、ユーザ情報記憶部150と、支払い可否判定部160と、日付取得部170と、支払済額記憶部180と、カード情報記憶部190とを備えて構成することができる。」
「【0026】
位置情報取得部130は、携帯情報端末1の現在位置情報をGPS基地局4から取得するものである。GPS基地局4に限らず、衛星軌道を周回するGPS衛星から電波を受信する構成でもよい。また、GPSに加えて、例えば、ジャイロセンサ等を用いた自律的な位置特定機能を備えることもできる。」
「【0030】
支払い可否判定部160は、その電子決済を許可するか否かを判定し、その判定結果を決済制御部140に通知するものである。支払い可否判定部160は、例えば、位置情報判定部161と支払額判定部162とを備えて構成することができる。位置情報判定部161は、エンドユーザが買い物を行う場合に、ユーザの現在位置(携帯情報端末1の現在位置)が、店舗情報記憶部120に登録されている店舗の位置に一致するか否かを判定するためのものである。支払額判定部162は、レジ端末2から受信した支払額(請求額)が、その店舗に関連付けられている利用制限額の範囲内に収まっているか否かを判定するためのものである。」
「【0050】
図6は、電子決済の概略処理を示すフローチャートである。まず、ユーザは、携帯情報端末1に実装された電子決済用アプリケーションプログラムを起動させる。これにより、図4の処理が開始する。
【0051】
ユーザは、決済方法選択画面で、クレジットカードによる決済を選択することができる(S110)。クレジットカード決済しか選択の余地が無い場合、このS110は省略することができる。
【0052】
次に、買い物の支払額を入力する(S111)。支払額の入力方法(取得方法)としては、種々のものを採用できる。例えば、一つの方法として、ユーザがキーパッド20を介して金額を手動入力することができる。他の一つの方法として、レジ端末2から支払額を携帯情報端末1に送信することもできる。さらに別の一つの方法として、買い物かごの中に収容された商品自身から商品代金に関する情報を取得することもできる。商品名や商品コード及び商品代金等の商品情報を予め記憶する無線タグを商品に設け、外部からの要求に応じて、または自発的に無線タグから携帯情報端末1に商品情報を送信することにより、購入した商品の総額を携帯情報端末1内で算出することもできる。いずれの方法を採用してもよい。
【0053】
次に、位置情報取得部130によって、GPS基地局4から携帯情報端末1の現在位置情報を測定する(S112)。そして、携帯情報端末1は、レジ端末2とデータ通信を行うことにより、レジ端末2からその店舗の名称データを取得する(S113)。
【0054】
携帯情報端末1(正確には、電子決済用アプリケーションプログラム)は、現在位置情報及び店舗名称が店舗情報記憶部120に記憶されているか否かを判定し、位置情報と店舗名称の両方がテーブルT1に登録されている場合は、その店舗で電子決済可能であると判定する(S114:YES)。そして、携帯情報端末1は、その店舗の利用制限額をテーブルT1から読出し(S115)、また、テーブルT2から支払済額を取得する。」
「【0065】
図9は、決済が不成立の場合の様子を示す画面例である。図6中のS128で表示される画面に相当する。ここで、決済が不成立の場合の情報は、例えば、決済履歴の一部として、携帯情報端末1内に保存することができる。これにより、決済履歴に基づいて、電子決済条件の設定者(保護者)は、エンドユーザの購買行動を事後に確認し、分析することができる。また、第三者による不正な利用の痕跡を発見することもできる。」
「【0077】
図13は、第3の実施例である。この実施例では、店舗情報記憶部120に登録されている店舗内に携帯情報端末1(ユーザ)が位置する場合に、その店舗での買い物利用制限額を自動的に算出してディスプレイ30に表示する例である。
【0078】
携帯情報端末1は、GPSアンテナ51を介してGPS基地局4と随時交信することにより、所定の間隔で現在位置情報を取得している(S301)。携帯情報端末1は、現在位置情報と登録済の店舗の位置情報とが適合するか否かを判定する(S302)。もし、それぞれの位置情報が適合しない場合は(S302:NO)、再びS401に戻り、現在位置情報を取得し続ける。
【0079】
携帯情報端末1の位置情報が登録済の店舗の位置情報に適合した場合(S302:YES)、携帯情報端末1は、その店舗での利用制限額を店舗情報記憶部120から取得する(S303)。また、携帯情報端末1は、その店舗での支払済を支払済額記憶部180から取得する(S304)。
【0080】
次に、携帯情報端末1は、その店舗での利用制限額と支払済額とを比較し(S305)、支払済額が利用制限額に達していない場合(S305:YES)、利用制限額と支払済額との差を算出し(S306)、計算結果をディスプレイ30に表示させる(S307)。つまり、その店舗で利用可能な金額がディスプレイ30に表示される。一方、携帯情報端末1は、利用制限額が既に支払済額に達している場合(S305:NO)、その店舗での買い物は許可されない旨をディスプレイ30に表示させる(S308)。
【0081】
これにより、ユーザは、その店舗での買い物が可能か否かを決済時まで待つ必要はなく、店舗に入った時点で、その店舗での買い物が可能か否か、幾らまで購入可能かを把握することができ、使い勝手が向上する。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で構成の追加や削除、変更等を行うことができる。例えば、図示のフローチャートは、発明の理解及び実施を損なわないように、処理の流れを端的に示したものに過ぎないから、当業者であれば、ステップの入れ替えや削除、変更等を容易に行うことができる。」
(2)上記(1)の記載から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「携帯情報端末1を用いた電子決済システムであり、
携帯情報端末1は、制御部10を備え、制御部10は、位置情報取得部130と支払い可否判定部160を備え、
位置情報取得部130は、携帯情報端末1の現在位置情報をGPS基地局4から取得するものであり、
支払い可否判定部160は、位置情報判定部161を備え、位置情報判定部161は、エンドユーザが買い物を行う場合に、携帯情報端末1の現在位置が、店舗情報記憶部120に登録されている店舗の位置に一致するか否かを判定するためのものであり、
ユーザは、携帯情報端末1に実装された電子決済用アプリケーションプログラムを起動させ、
買い物の支払額を入力し、支払額の入力方法として、商品名や商品コード及び商品代金等の商品情報を予め記憶する無線タグを商品に設け、外部からの要求に応じて、または自発的に無線タグから携帯情報端末1に商品情報を送信することにより、購入した商品の総額を携帯情報端末1内で算出することもでき、
次に、位置情報取得部130によって、携帯情報端末1の現在位置情報を測定し、そして、携帯情報端末1は、レジ端末2からその店舗の名称データを取得し、
携帯情報端末1は、現在位置情報及び店舗名称が店舗情報記憶部120に記憶されているか否かを判定し、位置情報と店舗名称の両方がテーブルT1に登録されている場合は、その店舗で電子決済可能であると判定し、その店舗の利用制限額をテーブルT1から読出し、また、テーブルT2から支払済額を取得する、
電子決済システム。」
2 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。
「【0055】
自社システムサーバー10の商品情報送信手段は、店舗識別情報送信手段から送信された店舗識別情報群より選択された店舗識別情報を個人端末2から受信する。商品情報送信手段は、個人端末2から受信した店舗識別情報に関連付けられた商品情報を、記憶手段に予め記憶された複数の商品情報の中から抽出し、その抽出された商品情報からなる商品情報群を個人端末2に送信する(S404)。
商品情報群を受信した個人端末2を携帯する個人は、受信した商品情報群から購入を所望する商品の商品情報を選択することができる。
なお、商品情報群は、単数の商品情報からなるものでもよいし、複数の商品情報からなるものでもよい。」
3 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
「ローソンは、18年春にも都内の数店舗で、深夜の午前0時から5時までレジを無人化する実験を開始する。お客様に会計をしてもらうために鍵になるのが、スマホおよびスマホアプリだ。実験を行う店舗では、お客様はスマホアプリをかざして入店し、店内では商品のバーコードを自ら読み取り、アプリに表示される購入商品の一覧を確認してからスマホ決済を行う。」(8頁1~2段目)
「老舗百貨店のMacy' s(メイシーズ)」が無料で配布しているアプリには、「店内モード」と呼ばれる機能が搭載されており、アプリを起動したままMacy' sの店舗に入店すると、その店舗専用にカスタマイズされた店内モードに自動的に切り替わるようになっている。その店舗のフロアマップが表示され、今行われているキャンペーンなど情報がアプリを通じて提供される。商品のバーコードをスキャンすればセールス価格の有無や購入者のレビュー、在庫状況までスマホ画面に表示される。」(11頁2~3段目)
4 甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
「【0018】
図2に示すように、購入支援サーバ201は、購入支援サイト210を用意しており、スマートフォン202からのアクセスを受け付ける。
【0019】
購入支援サイト210には、ログインモジュール211、買い物かごモジュール212、精算依頼受付モジュール213、配達依頼受付モジュール214、アラート判定モジュール215、未精算品報知モジュール216およびユーザ情報217が含まれる。これらのモジュールは、ソフトウェアモジュールであり、購入支援サーバ201の記憶部に記憶されて、CPUによって実行されることにより、それぞれの機能を実現する。
【0020】
ユーザ210は、スマートフォン202を用いて購入支援サーバ201にアクセスしつつ、購入予定の商品203そのもの、または商品の棚札204から、商品識別情報を取得する。
【0021】
まず、ユーザがログインモジュール211を介して購入支援サイト210にログインすると、買い物かごモジュール212が実行される。
【0022】
買い物かごモジュール212は、来店したユーザ210が店内を回って、購入予定として指定した商品の識別情報を受信し、ユーザ情報217に用意された仮想買い物かごに蓄積する。同じ商品については、商品数の入力を受け付けることができる。」
「【0025】
アラート判定モジュール215は、未精算品が買い物かごに残っている状態で、ユーザが店外に退出したか否か、または退出しそうであるか否か、あるいは所定時間が経過したか否かを判定する。ユーザが店外に退出したか否か、退出しそうか否かについては、ユーザが所持しているスマートフォン202の位置情報に基づいて判断する。具体的にはGPS(Global Positioning System)などの位置検出技術を用いて、ユーザが、出入り口から店の外に出たのか、または、出ようとしているのかを判定する。GPS以外にも、BLE(Bluethooth Low Energy)などの規格を利用したビーコン、Wifiなど、店舗に設けられた電波発信器との距離によってユーザの位置を検出してもよい。
【0026】
未精算品報知モジュール216は、アラート判定モジュール215で、未精算品が買い物かごに残っている状態で、ユーザが店外に退出した場合、退出しそうな場合、あるいは所定時間が経過した場合に、精算を促すメッセージをユーザに報知する。このとき、「精算が行なわれた場合には、ユーザに対してインセンティブを与える」旨のメッセージを同時に報知する。」
5 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。
「【0049】
図6は、第1の実施形態に係る監視サーバ40の構成の一例を示す図である。図6に示すように、監視サーバ40は、制御部41を備える。制御部41は、CPUやSoC、ROM、RAM等のコンピュータ構成を有する。」
「【0052】
また、制御部41は、図6に示すように、画像取得部411、特徴抽出部412、登録処理部413、追跡処理部414、不正検出部415及び報知処理部416等の機能部を備える。これらの機能部は、記憶部42に記憶されたプログラムの実行によりソフトウェア的に、或いは制御部41が備える専用プロセッサ等によりハードウェア的に実現される。」
「【0062】
例えば、第1チェック欄と第3チェック欄とがチェック済で、且つ第2チェック欄が未チェックの場合、商品の登録を済ませた客が、会計をしないまま商品を店外に持ち出そうとしている可能性がある。そこで、不正検出部415は、追跡テーブルT1に登録されたチェック情報の状態が、登録領域A11から会計領域A12を飛ばして出口領域A13に到達したことを示す場合、不正行為の可能性ありとして検出する。」
「【0064】
報知処理部416は、不正検出部415の検出結果に応じて報知を行う機能部である。より詳細には、報知処理部416は、不正検出部415が不正行為の可能性があることを検出したことを条件に、店員への報知を行う。報知方法は特に問わず、種々の方法を採用することが可能である。例えば、報知処理部416は、登録装置10の各々に、不正行為の発生を報知するメッセージや、該当する客の撮像画像(特徴情報)等を含んだ報知情報を送信してもよい。また、ネットワークN1に接続された携帯型の通信装置を各店員が所持する場合、報知処理部416は、その通信装置宛に報知情報を送信してもよい。また、出口領域A13等に警報ブザーや警報灯等の報知装置が設けられている場合、それらの報知装置を動作させることで報知を行ってもよい。」
6 甲6(引用文献2)
甲6には、次の事項が記載されている。
「【0025】
図1に示す本実施の形態例に係る受注システム100は、レストラン等の飲食店に設置され、オーダー受注装置3と各テーブルのR/W2等から構成され、来店した顧客が持参した携帯端末装置1からのセルフオーダーを可能にするものである。」
「【0030】
また、オーダー受注装置3は、図1に示すように、機能構成として、通信確立部31、メニュー表示制御部32、受注部33、精算処理部34、第1通信部30、第2通信部36、及びプリンター部35を備えている。通信確立部31は、携帯端末装置1との間で無線LAN(ここでは、Wi-Fi(登録商標))による通信を確立する処理を実行する部分である。また、メニュー表示制御部32は、携帯端末装置1に、顧客のオーダーを受けるメニュー画面を表示させる処理を行う部分である。また、受注部33は、上記メニュー画面を備えると共に、携帯端末装置1からの当該画面に対するオーダーを受信して受注処理を実行する部分である。精算処理部34は、上記受信したオーダーに基づいて精算処理を実行する部分である。また、プリンター部35は、上述した印刷機能を担う部分であり、上記オーダーを受信した際には、オーダー内容を印刷した伝票を出力する。また、精算時にはレシートやクーポンを印刷出力する。なお、通信確立部31、メニュー表示制御部32、受注部33、及び精算処理部34は、それぞれ、これらの各部分が行う処理を記述したプログラム(受注プログラム等)と、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、上記RAM等によって構成される。また、第1通信部30は、上記R/W2を介して携帯端末装置1と通信を行う部分であり、第2通信部36は、携帯端末装置1と無線LANで通信を行う部分である。」
「【0042】
また、第2通信部36では、後述する精算要求を受信するまでの間、上記確立した無線LAN通信における携帯端末装置1との間の電波強度を、随時、チェック(判定)する(図2のステップS7)。当該チェックの結果、電波強度の値が予め定められた第一の所定値以上である場合、もしくは、所定期間以上第一の所定値より低い第二の所定値以下である場合には(図2のステップS7のYes)、報知部(図示せず)が、店員に対する報知処理を実行する(図2のステップS8)。具体的には、音、や光の発生、オーダー受注装置3のモニターへの表示等で、携帯端末装置1とオーダー受注装置3との位置関係が特別な状態であることを知らせる。
【0043】
上記電波強度の値が第一の所定値以上であることの検知は、携帯端末装置1がオーダー受注装置3、すなわち、レジの位置に近づいたことを検知するものであり、それが検知された場合には、顧客がレジ付近にいることが推定され、顧客が精算をするために移動している可能性があるので、それに対応すべく、上記報知がなされる。
【0044】
また、上記電波強度の値が所定期間以上第二の所定値以下であるこのとの検知は、携帯端末装置1がオーダー受注装置3から遠く離れたことを検知するものであり、それが検知された場合には、顧客が店外に出たことが推察され、顧客が精算をせずに帰った虞があるので、上記報知がなされる。
【0045】
第2通信部36では、後述する精算要求を受信するまでの間、上記電波強度のチェック行う。」
7 甲7
甲7には、次の事項が記載されている。
「[0017] Said mobile device receives all sales information from all the stores in a range of said shopper's physical position and displays an area map with all the stores heighted that have sales offers (FIG. 3-3) on its screen.
[0018] Said shopper requests sales information from a store by touching said store's location on said onsite map and the request is forwarded to said website(s), said mobile device receives entire available sales discounts offers posted by said store from said website(s), and displays said commercial images on its screen (FIG.3-4).」
(当審訳:
[0017] 前記モバイルデバイスは、前記買い物客の物理的位置の範囲内にある企ての店舗から全ての販売情報を受信し、前記モバイルデバイスの画面に、販売オファーのある全ての店舗を表示したエリアマップを表示する(図3-3)。
[0018] 買い物客は、店舗の所在地をタッチすることで店舗から販売情報を要求し、その要求はウェブサイトに転送され、モバイルデバイスは、ウェブサイトから店舗が掲載した利用可能な販売割引オファーをすべて受信し、前記モバイルデバイスの画面にコマーシャル画像を表示する(図3-4)。)
8 参考資料1
令和8年2月12日に申立人が提出した意見書において提示された特開2017-126371号公報(以下「参考資料1」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0087】
一方、店舗のPOS端末2(または図示しないストアサーバ)は、消費者の携帯端末8から商品コードを受信すると(ステップS83のYes)、携帯端末8が存在する位置を示す位置データ(緯度、経度など)が店舗位置データファイル23cに記憶された店舗の店舗位置データの範囲内である場合に限り(ステップS84のYes)、商品マスタファイル(図示せず)から商品コードに対応する商品データ(単価、商品名など)を取得して商品販売データを生成し、生成した商品販売データを会員コードおよび位置データに対応付けて商品販売データファイル23bに記憶していく(ステップS85:商品販売データ記憶部25)。この商品販売データは、消費者が購入しようとしている商品のデータであり、未決済のデータとして記憶される。」
9 参考資料2
同じく令和8年2月12日に申立人が提出した意見書において提示された特許第5819681号公報(以下「参考資料2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0042】
顧客は飲食店に入店し、席に案内された後、テーブルなどに設置された読取装置3に自らの携帯端末4を接触または近接させる(S100)。これによって、携帯端末4に記憶された顧客識別情報が読取装置3で読み取られ(S110)、顧客識別情報、読取装置識別情報、来店日時情報(読取装置3に携帯端末4を接触または近接させた日時情報)などが、携帯端末4または読取装置3から管理サーバ2に送られ、管理サーバ2の来店情報取得部20でこれを取得する(S120)。たとえば顧客識別情報が「12345」であり、読取装置識別情報が「A1234」であり、来店日時が「2011年8月2日19時20分」である場合には、それらが携帯端末4または読取装置3から管理サーバ2に送られ、それを管理サーバ2の来店情報取得部20で取得することとなる。」
「【0045】
そして顧客は携帯端末4のアプリケーションソフトウェアで所定の操作を行うことで、商品情報の表示要求(メニューの表示要求)を行うと、その要求を管理サーバ2で受け取り、注文処理部22は、商品情報記憶部21に記憶した商品情報を抽出して携帯端末4に送る。そして携帯端末4では、管理サーバ2から受け取った商品情報をメニュー形式で表示をする(S130)。図7に商品情報が表示された携帯端末4の一例を模式的に示す。
【0046】
そして顧客は、携帯端末4で表示された商品情報から、注文したい商品を逐次選択し、注文を行う。すなわち注文したい商品とその個数を選択し、たとえば「注文確定」のボタンを押下することで、それらが顧客識別情報とともに、携帯端末4から管理サーバ2に送られる。たとえば、顧客が「刺身三点盛り」、「鶏の唐揚げ」、「シーザーサラダ」をそれぞれ一個ずつ、「ビール」を4杯選択した場合、「注文確定」のボタンを押下することで、顧客識別情報「12345」、それぞれの商品識別情報とともに、注文情報として携帯端末4から管理サーバ2に送られる。
【0047】
管理サーバ2の注文処理部22ではそれらの情報を受け付け(S140)、注文情報記憶部24に記憶させる。・・・(後略)」
第7 取消理由についての当審の判断
1 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「携帯情報端末1」は、本件発明5の「携帯端末」に相当する。
また、甲1発明の「携帯情報端末1」は、「店舗」で「ユーザ」が「電子決済」を行う際に用いるから、「店舗」の顧客が使用するものといえる。
そして、甲1発明の「電子決済システム」は、「ユーザ」が購入する商品の電子決済を行うシステムであるから、販売管理システムといえる。
したがって、甲1発明の「携帯情報端末1を用いた電子決済システム」は、本件発明5の「店舗の顧客が使用する携帯端末を含む販売管理システム」に相当する。
イ 甲1発明の「位置情報取得部130」は、本件発明5の「位置特定手段」に相当する。
そして、甲1発明の「位置情報取得部130」は、「携帯情報端末1の現在位置情報」を取得するものであるから、「携帯情報端末1」の「現在位置」を特定するものといえる。
したがって、甲1発明の「位置情報取得部130」は、本件発明5の「前記携帯端末の現在の位置を特定する位置特定手段」に相当する。
ウ 甲1発明の「携帯情報端末1」において、「支払額を入力」する方法として、「商品に設け」られた「無線タグ」から「送信」された、「商品名や商品コード及び商品代金等の商品情報」を取得することは、「携帯情報端末1」を「商品に設け」られた「無線タグ」に近付ける等の操作に基づいて行われることが明らかであるから、「携帯情報端末1」の操作に基づいて購入する「商品」を登録することであるといえる。
エ 甲1発明の「携帯情報端末1」は、「現在位置情報及び店舗名称が店舗情報記憶部120に記憶されているか否かを判定し、位置情報と店舗名称の両方がテーブルT1に登録されている場合は、その店舗で電子決済可能であると判定」するから、「電子決済」を行う所定の「店舗」を、「携帯情報端末1」の「現在位置情報」に基づいて特定するといえるものである。
ここで、甲1発明の「電子決済」を行うことは、商品の精算を行うことであるといえるから、上記ウを踏まえると、登録された「商品」の「精算」を行うことであるといえる。
また、甲1発明の「携帯情報端末1」は、登録された「商品」の「精算」を行う所定の「店舗」を、「携帯情報端末1」の「現在位置情報」に基づいて特定する手段を有することは明らかであり、その手段は「店舗特定手段」といえる。
したがって、甲1発明の当該手段は、本件発明5の「登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定する店舗特定手段」に相当する。
オ 上記ウを踏まえると、甲1発明の「携帯情報端末1」は、購入する「商品」を登録する手段を有することは明らかであり、その手段は「商品登録手段」といえる。
したがって、甲1発明の当該手段と、本件発明5の「前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段」とは、「携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段」である点で共通する。
カ したがって、本件発明5と甲1発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「店舗の顧客が使用する携帯端末を含む販売管理システムであって、
前記携帯端末の現在の位置を特定する位置特定手段と、
登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定する店舗特定手段と、
携帯端末の操作に基づいて購入する商品を登録する商品登録手段と、
を備える、
販売管理システム。」
(相違点)
(相違点1)
本件発明5では「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段」を備えるのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
(相違点2)
本件発明5では、「商品登録手段」が「購入する商品を登録する」のは、「前記商品マスタヘのアクセス許可を与えた携帯端末の操作に基づいて」であるのに対し、甲1発明では、「携帯情報端末1」の操作に基づいたものであるものの、「携帯情報端末1」が「商品マスタヘのアクセス許可を与えた」ものであることは特定されていない点。
(相違点3)
本件発明5では「前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する」「報知手段」を備えるのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑みて、まず相違点1について検討する。
相違点1に係る「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に前記携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段」との構成は、甲2~甲7、参考資料1及び参考資料2のいずれにも記載されておらず、本件特許の出願前に周知であったとも認められない。
この点に関し、甲2、甲3、参考資料1及び参考資料2には、それぞれ上記第6の2、3、8及び9に示した事項が記載されているものの、以下のア~エのとおり、いずれにも上記構成は記載されておらず、甲1発明にいずれの記載事項を組み合わせても、相違点1に係る構成には至らない。
ア 甲2(上記第6の2)には、自社システムサーバー10の商品情報送信手段が、記憶手段から抽出した店舗の商品情報からなる商品情報群を、個人端末2に送信することが記載されていると認められ、記憶手段は本件発明5の「商品マスタ」に相当するといえる。しかしながら、商品情報送信手段は、記憶手段から抽出した商品情報群を個人端末2に送信する手段とはいえるものの、個人端末2に対して記憶手段へのアクセス許可を与える手段とはいえない。
イ 甲3(上記第6の3)には、店舗でスマホアプリをかざして入店した後、スマホアプリに表示される内容として、購入商品の一覧や、今行われているキャンペーンなどの情報や、セールス価格の有無や購入者のレビュー、在庫状況が表示されることが記載されていると認められるものの、スマホに対して店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与える手段が、甲3に記載されているとはいえない。
ウ 参考資料1(上記第6の8)には、ストアサーバが、携帯端末8から商品コードを受信すると、商品マスタファイルから商品コードに対応する商品データを取得することが記載されていると認められる。しかしながら、ストアサーバは、商品マスタファイルから、携帯端末8から受信した商品コードに対応する商品データを取得する手段とはいえるものの、携帯端末8に対して商品マスタファイルへのアクセス許可を与える手段とはいえない。
エ 参考資料2(上記第6の9)には、管理サーバ2の注文処理部22が、商品情報記憶部21に記憶した商品情報を抽出して携帯端末4に送り、携帯端末4がメニュー形式で表示することが記載されていると認められ、商品情報記憶部21は本件発明5の「商品マスタ」に相当するといえる。しかしながら、注文処理部22は、商品情報記憶部21の商品情報を携帯端末4に送信する手段とはいえるものの、携帯端末4に対して商品情報記憶部21へのアクセス許可を与える手段とはいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明及び甲2~甲7、参考資料1及び2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、令和8年2月12日提出の意見書において、甲2、甲3、参考資料1及び参考資料2を挙げた上で、本件発明5の訂正事項1に係る発明特定事項について、店舗が特定された後に携帯端末に対して当該店舗の商品マスタヘのアクセス許可を与えるように構成することは当業者が容易に想到し得たことであり、当該発明特定事項は、顧客の携帯端末を利用して店舗で買い物を行う技術分野において周知の技術事項にすぎない旨主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、甲2、甲3、参考資料1及び参考資料2には、それぞれ上記第6の2、3、8及び9に示した事項が記載されているものの、いずれの証拠にも相違点1に係る構成は記載されておらず、本件特許の出願前に周知であったとも認められない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
2 本件発明7について
本件発明7は、本件発明5に対応する「情報処理方法」の発明であって、相違点1に対応する発明特定事項を含むものであるから、本件発明5と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2~甲7、参考資料1及び参考資料2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 小括
以上から、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、請求項5、7に係る特許を取り消すことはできない。
第8 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
1 申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった申立理由の概要は、次のとおりである。
請求項1、6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、請求項2~4に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 甲号証の記載
(1)甲1の記載、甲1発明A
ア 甲1に記載された事項は、上記第6の1(1)で述べたとおりである。そして、甲1には、次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。
「電子決済システムに用いられる携帯情報端末1であって、
携帯情報端末1は、制御部10を備え、制御部10は、位置情報取得部130と支払い可否判定部160を備え、
位置情報取得部130は、携帯情報端末1の現在位置情報をGPS基地局4から取得するものであり、
支払い可否判定部160は、位置情報判定部161を備え、位置情報判定部161は、エンドユーザが買い物を行う場合に、携帯情報端末1の現在位置が、店舗情報記憶部120に登録されている店舗の位置に一致するか否かを判定するためのものであり、
ユーザは、携帯情報端末1に実装された電子決済用アプリケーションプログラムを起動させ、
買い物の支払額を入力し、支払額の入力方法として、商品名や商品コード及び商品代金等の商品情報を予め記憶する無線タグを商品に設け、外部からの要求に応じて、または自発的に無線タグから携帯情報端末1に商品情報を送信することにより、購入した商品の総額を携帯情報端末1内で算出することもでき、
次に、位置情報取得部130によって、携帯情報端末1の現在位置情報を測定し、そして、携帯情報端末1は、レジ端末2からその店舗の名称データを取得し、
携帯情報端末1は、現在位置情報及び店舗名称が店舗情報記憶部120に記憶されているか否かを判定し、位置情報と店舗名称の両方がテーブルT1に登録されている場合は、その店舗で電子決済可能であると判定し、その店舗の利用制限額をテーブルT1から読出し、また、テーブルT2から支払済額を取得する、
携帯情報端末1。」
(2)甲2~甲7
甲2~甲7に記載された事項は、上記第6の2~7で述べたとおりである。
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明Aを対比する。
(ア)甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、本件発明1の「携帯端末」に相当する。
また、甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、「店舗」で「ユーザ」が「電子決済」を行う際に用いるから、「店舗」の顧客が使用するものといえる。
したがって、甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、本件発明1の「店舗の顧客が使用する携帯端末」に相当する。
(イ)甲1発明Aの「携帯情報端末1」が備える「位置情報取得部130」は、本件発明1の「位置特定手段」に相当する。
そして、甲1発明Aの「位置情報取得部130」は、「携帯情報端末1の現在位置情報」を取得するものであるから、「現在位置」を特定するものといえる。
したがって、甲1発明Aの「位置情報取得部130」は、本件発明1の「現在の位置を特定する位置特定手段」に相当する。
(ウ)甲1発明Aの「携帯情報端末1」において、「支払額を入力」する方法として、「商品に設け」られた「無線タグ」から「送信」された、「商品名や商品コード及び商品代金等の商品情報」を取得することは、「商品」を登録することであるといえる。
(エ)甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、「現在位置情報及び店舗名称が店舗情報記憶部120に記憶されているか否かを判定し、位置情報と店舗名称の両方がテーブルT1に登録されている場合は、その店舗で電子決済可能であると判定」するから、「電子決済」を行う所定の「店舗」を、「携帯情報端末1」の「現在位置情報」に基づいて特定するといえるものである。
ここで、甲1発明Aの「電子決済」を行うことは、商品の精算を行うことであるといえるから、上記(ウ)を踏まえると、登録された「商品」の「精算」を行うことであるといえる。
また、甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、登録された「商品」の「精算」を行う所定の「店舗」を、「携帯情報端末1」の「現在位置情報」に基づいて特定する手段を有することは明らかであり、その手段は「店舗特定手段」といえる。
したがって、甲1発明Aの当該手段は、本件発明1の「登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定する店舗特定手段」に相当する。
(オ)上記(ウ)を踏まえると、甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、「購入する商品」を登録する手段を有することは明らかであり、その手段は「商品登録手段」といえる。
また、甲1発明の「携帯情報端末1」は、上記(ウ)の「商品」を登録する処理の後に、上記(エ)の登録された「商品」の「精算」を行う「店舗」を、「携帯情報端末1」の「現在位置情報」に基づいて特定する処理を行うものである。
したがって、甲1発明Aの当該手段と、本件発明1の「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に商品を登録する商品登録手段」とは、「商品を登録する商品登録手段」である点で共通する。
(カ)したがって、本件発明1と甲1発明Aの間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「店舗の顧客が使用する携帯端末であって、
現在の位置を特定する位置特定手段と、
登録された商品の精算を行う所定の店舗を前記位置に基づいて特定する店舗特定手段と、
商品を登録する商品登録手段と、
を備える、
携帯端末。」
(相違点)
(相違点4)
本件発明1では、「商品登録手段」が「商品を登録する」のは、「前記店舗特定手段によって前記所定の店舗が特定された後に」であるのに対し、甲1発明Aでは、所定の「店舗」を特定する前である点。
(相違点5)
本件発明1の「携帯端末」は、「前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する」「報知手段」を備えるのに対し、甲1発明Aの「携帯情報端末1」は、そのように特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑みて、まず相違点5について検討する。
相違点5に係る、「携帯端末」が、「携帯端末の現在の位置が所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する」「報知手段」を備えるとの構成は、甲2~甲7のいずれにも記載されておらず、本件特許の出願日前における周知技術であったともいえない。
この点に関し、甲4~甲6には、それぞれ上記第6の4~6に示した事項が記載されているものの、以下の(ア)~(ウ)のとおり、いずれの証拠にも上記構成は記載されておらず、甲1発明Aにいずれの記載事項を組み合わせても、相違点5に係る構成には至らない。
(ア)甲4(上記第6の4)には、購入支援サーバ201の未精算品報知モジュール216が、未精算品が買い物かごに残っている状態で、ユーザが店外に退出した場合、精算を促すメッセージをユーザに報知することが記載されていると認められるものの、ユーザが保持するスマートフォン202が、「顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する報知手段」を備えるものではない。
(イ)甲5(上記第6の5)には、監視サーバ40の報知処理部416が、商品の登録を済ませた客が会計をしないまま商品を店外に持ち出そうとしている不正行為の可能性がある場合に、不正行為の発生を報知するメッセージや、該当する客の撮像画像等を含んだ報知情報を送信して店員への報知を行うことが記載されていると認められるものの、客の携帯端末が、「店員に報知する報知手段」を備えるものではない。
(ウ)甲6(上記第6の6)には、オーダー受注装置3の第2通信部36による電波強度のチェックの結果、顧客が店外に出たことが推察され、顧客が精算をせずに帰った虞がある場合、報知部が店員に対する報知処理を実行することが記載されていると認められるものの、顧客の携帯端末装置1が、「店員に報知する報知手段」を備えるものではない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書(27頁)において、甲4~甲6には相違点2(当審注:上記ア(カ)で示した相違点5に対応。)が記載されている旨主張するが、上記イのとおり、甲4~甲6のいずれにも、「携帯端末」が、「前記位置が前記所定の店舗の外であって、登録された商品の精算が終了していない場合、前記顧客の情報、前記位置が前記所定の店舗の外である旨及び前記位置のうち少なくともいずれか一つを店員に報知する」「報知手段」を備えることは記載されていない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明2~4、6について
本件発明2~4は、本件発明1を減縮した発明であり、また、本件発明6は、本件発明1に対応する「プログラム」の発明であり、いずれも、相違点5に係る(対応する)発明特定事項を含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上から、上記1の申立理由によっては、請求項1~4、6に係る特許を取り消すことはできない。
第9 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700484