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特許異議申立

2024-700975

作業機の油圧システム

審判番号
2024-700975
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-131401
登録番号
7530340
請求日
2024年10月07日
審決日
2026年02月09日
公報発行日
2026年05月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社クボタ
  • 【権利者代理人】安田岡本弁理士法人
  • 【異議申立人】IPセイル 合同会社
審判長/審判官
  • 審判長 石井 孝明
  • 審判官 小川 恭司
  • 審判官 山田 由希子
分類
P1652.113-YAA(F15B) / P1652.121-YAA(F15B) / P1652.537-YAA(F15B) / P1652.854-YAA(F15B) / P1652.855-YAA(F15B) / P1652.856-YAA(F15B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7530340号発明「作業機の油圧システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7530340号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~17〕について訂正することを認める。 特許第7530340号の請求項1、4、5、10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯の概略 特許第7530340号の請求項1~17に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年8月11日の出願であり、手続の経緯は、概ね、次のとおりである。 令和 6年 7月30日 特許権の設定登録 令和 6年 8月 7日 特許掲載公報 令和 6年10月 7日 特許異議申立人 IPセイル合同会社 (代表者 鬼頭厘早)(以下「申立人」と いう。)による請求項1、4、5、10 に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 7年 5月30日付け 取消理由通知書 令和 7年 7月31日 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 令和 7年 8月20日付け 手続補正指令書 令和 7年 9月19日 特許権者による手続補正書の提出 以下、令和7年7月31日に提出され、令和7年9月19日に補正された訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。 なお、令和7年10月6日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に対して行ったところ、特許異議申立人から何ら応答がなかった。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の請求は、特許第7530340号の特許請求の範囲を、令和7年7月31日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する」と記載されているのを、「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更し、」と訂正する。 (請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項4~13、15~17についても同様に訂正する。) (イ)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、請求項14に記載の「前記制御装置は、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する」との発明特定事項を追加するように訂正する。 (請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項4~13、15~17についても同様に訂正する。) (ウ)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する」と記載されているのを、「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する」と訂正する。 (請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~17についても同様に訂正する。) (エ)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項14に「請求項1~13のいずれか1項に」と記載されているのを、「請求項2又は3に」と訂正する。 (請求項14を引用する請求項15~17についても同様に訂正する。) (オ)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項14に「に作業機の油圧システム。」と記載されているのを、「に記載の作業機の油圧システム。」と訂正する。 (請求項14を引用する請求項15~17についても同様に訂正する。) (カ)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項15に「請求項14に記載の作業機の油圧システム。」と記載されているのを、「請求項1又は14に記載の作業機の油圧システム。」と訂正する。 (請求項15を引用する請求項16、17についても同様に訂正する。) (キ)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項16に「請求項14又は15に記載の作業機の油圧システム。」と記載されているのを、「請求項1、14、及び15のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。」と訂正する。 (ク)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項17に「請求項14又は15に記載の作業機の油圧システム。」と記載されているのを、「請求項1、14及び15のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。」と訂正する。 2 本件訂正の適否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1に係る本件訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記開度変更部の開度」との不明瞭な記載を明確にする訂正であるため、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、特許請求の範囲の請求項1に「前記流量補償弁の開度を変更する開度変更部」と記載され、明細書の【0047】に「制御装置25は、第1測定装置82により測定されたエンジン回転数(実回転数)に応じて、電磁弁81に制御信号(電流信号)を出力して、電磁弁81の開度を制御する。この電磁弁81の開度に応じて、開度変更部76に作用するパイロット圧(第2圧力PA)が変更されて、開度変更部76により流量補償弁72の開度が変更される。そして、流量補償弁72の開度の変更に応じて、流量補償弁72から斜板可変部73に作用する作動油の圧力が変更され、斜板可変部73により第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更され、第2油圧ポンプP2が吐出する作動油の流量が変更される。これにより、第1油路70に作用するPLS信号圧と第2油路71に作用するPPS信号圧との差圧(圧力差)であるLS差圧が変更される。」と記載されている。 これらの記載から、本件特許明細書等には、「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する」ことが記載されていると認められる。 そうすると、訂正事項1に係る本件訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項を追加するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項1に係る本件訂正は、本件訂正前の請求項1における制御装置の制御について明確にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件 訂正事項1に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項6~9、11~13、15~17についての訂正を含むが、上記アのとおり明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2に係る本件訂正は、「制御装置」に関し、「前記制御装置は、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 本件特許明細書等には、特許請求の範囲の請求項14及び明細書の【0015】に「前記制御装置は、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する」と記載されている。 そうすると、訂正事項2に係る本件訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項を追加するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項2に係る本件訂正は、特許請求の範囲を減縮するための訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件 訂正事項2に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項6~9、11~13、15~17について、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものである。 そこで、独立特許要件について検討する。 本件訂正後の請求項1に係る発明は「前記制御装置は、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する」という構成を備えたものである。申立人は証拠として下記第4の2に示すとおり甲第1号証~甲第4号証を提出しているが、下記第5の2で詳述するとおり、申立人が提出した証拠のいずれにも当該構成は記載も示唆もされておらず、また、当該構成が一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用の範疇にあるというに足る根拠もない。 したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、申立人が提出した証拠に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、当該請求項1を引用する請求項6~9、11~13、15~17に係る発明も、申立人が提出した証拠に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 また、本件訂正後の請求項2に係る発明は「前記油圧制御部に含まれ且つ前記第4油路を経由して前記油圧制御部に作用する前記パイロット油と、前記油圧制御部からの排出油との圧力差であるパイロット差圧を変更する電磁弁」を備えたものであるが、下記第5の3で詳述するとおり、申立人が提出した証拠のいずれにも当該電磁弁を備えることは記載も示唆もされておらず、また、当該電磁弁を備えることが一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用の範疇にあるというに足る根拠もない。 したがって、本件訂正後の請求項2に係る発明は、申立人が提出した証拠に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、当該請求項2を引用する請求項6~9、11~13、15~17に係る発明も、申立人が提出した証拠に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 加えて、他に独立特許要件を満たさない理由も発見しない。 よって、本件訂正後の請求項6~9、11~13、15~17に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3に係る本件訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2における「前記開度変更部の開度」との不明瞭な記載を明確にする訂正であるため、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 上記(1)イで検討した通り、本件特許明細書等には、「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する」ことが記載されていると認められる。 そうすると、訂正事項3に係る本件訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項を追加するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項3に係る本件訂正は、本件訂正前の請求項2における制御装置の制御について明確にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件 訂正事項3に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項2についての訂正であるが、上記アのとおり明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、独立特許要件は課されない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4に係る本件訂正は、訂正事項2に係る訂正により本件訂正後の請求項1には本件訂正前の請求項14に記載されていた構成が追加されたため、本件訂正後の請求項14において引用することができなくなった請求項1及び4~13について、引用対象から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項4に係る本件訂正は、引用する請求項の一部を削除することで特許請求の範囲を減縮する訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 独立特許要件 訂正事項4に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項14~17について、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正をするものである。 そこで、独立特許要件について検討すると、訂正後の請求項14が引用する独立項は請求項2のみであり、請求項15~17が引用する独立項は請求項1又は2であるから、上記(2)エで検討した理由と同様の理由により、本件訂正後の請求項14~17に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5に係る本件訂正は、本件訂正前の請求項14における「に作業機の油圧システム。」との、それ自体記載内容が明らかでない記載を正すものであるため、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項5に係る本件訂正は、記載内容が明らかでない記載を正すものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 独立特許要件 訂正事項5に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項14~17についての訂正であるが、上記アのとおり明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、独立特許要件は課されない。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6係る本件訂正は、本件訂正前の請求項15が請求項14を介して請求項1を引用していたところ、訂正事項4に係る本件訂正によって本件訂正後の請求項14が請求項1を引用しなくなったため、本件訂正後の請求項15が改めて請求項1を引用するように引用関係を整理するとともに、本件訂正前の請求項15において引用していた請求項の一部を引用対象から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項6に係る本件訂正は、引用する請求項の一部を削除することで特許請求の範囲を減縮する訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 独立特許要件 訂正事項4に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項15~17について、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 そこで、独立特許要件について検討すると、上記(2)エで検討した理由と同様の理由により、本件訂正後の請求項15~17に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7係る本件訂正は、本件訂正前の請求項16は請求項14を介して請求項1を引用していたところ、訂正事項4に係る本件訂正によって本件訂正後の請求項14が請求項1を引用しなくなったため、本件訂正後の請求項16が改めて請求項1を引用するように引用関係を整理するとともに、本件訂正前の請求項16において引用していた請求項の一部を引用対象から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項7に係る本件訂正は、引用する請求項の一部を削除することで特許請求の範囲を減縮する訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 独立特許要件 訂正事項7に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項16について、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 そこで、独立特許要件について検討すると、上記(2)エで検討した理由と同様の理由により、本件訂正後の請求項16に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的 訂正事項8係る本件訂正は、本件訂正前の請求項17は請求項14を介して請求項1を引用していたところ、訂正事項4に係る本件訂正によって本件訂正後の請求項14が請求項1を引用しなくなったため、本件訂正後の請求項17が改めて請求項1を引用するように引用関係を整理するとともに、本件訂正前の請求項17において引用していた請求項の一部を引用対象から削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か 訂正事項8に係る本件訂正は、引用する請求項の一部を削除することで特許請求の範囲を減縮する訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 独立特許要件 訂正事項8に係る本件訂正は、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項17について、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 そこで、独立特許要件について検討すると、上記(2)エで検討した理由と同様の理由により、本件訂正後の請求項17に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。 (9)一群の請求項について 訂正前の請求項4~17は、請求項1を直接的に又は間接的に引用しているものであつて、訂正事項1及び2に係る本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1及び4~17は一群の請求項を構成する。 訂正前の請求項3~17は、請求項2を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項3に係る本件訂正によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、請求項2及び3~17は一群の請求項を構成する。 これらの一群の請求項は共通する請求項4~17を有するから、これらの一群の請求項は組み合わされて、請求項1~17が1つの一群の請求項となる。 そして、本件訂正は、請求項1~17について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。 (10)まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~17〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される次のとおりである。 【請求項1】 原動機と、 油圧アクチュエータと、 前記油圧アクチュエータの作動を制御する制御弁と、 前記原動機の動力により駆動して、前記制御弁を切り換えるためのパイロット油を吐出する第1油圧ポンプと、 前記原動機の動力により駆動して、前記油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する可変容量の第2油圧ポンプと、 前記油圧アクチュエータの作動時の最高負荷圧が作用可能な第1油路と、 前記第2油圧ポンプからの前記作動油の吐出圧が作用可能な第2油路と、 前記第2油圧ポンプを制御して、前記第2油圧ポンプの前記吐出圧と前記最高負荷圧との圧力差であるLS差圧を設定する油圧制御部と、 前記第1油圧ポンプが前記パイロット油を吐出する第3油路と、 前記第3油路から分岐する第4油路と、 前記油圧制御部に含まれ且つ前記第4油路を流れて前記油圧制御部に作用する前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を変更する電磁弁と、 前記電磁弁の作動を制御して前記パイロット圧を調整することにより、前記LS差圧を変更する制御装置と、を備え、 前記第1油圧ポンプは、前記原動機の回転数に応じて吐出流量が変動する定容量の油圧ポンプから成り、 前記油圧制御部は、 前記第2油圧ポンプに備わる斜板の角度を可変する斜板可変部と、 前記第1油路に接続され、前記斜板可変部に前記作動油を供給して前記斜板可変部を作動させる流量補償弁と、 前記第4油路に接続され、前記流量補償弁の開度を変更する開度変更部と、 をさらに含み、 前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更し、 前記制御装置は、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する作業機の油圧システム。 【請求項2】 原動機と、 油圧アクチュエータと、 前記油圧アクチュエータの作動を制御する制御弁と、 前記原動機の動力により駆動して、前記制御弁を切り換えるためのパイロット油を吐出する第1油圧ポンプと、 前記原動機の動力により駆動して、前記油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する可変容量の第2油圧ポンプと、 前記油圧アクチュエータの作動時の最高負荷圧が作用可能な第1油路と、 前記第2油圧ポンプからの前記作動油の吐出圧が作用可能な第2油路と、 前記第2油圧ポンプを制御して、前記第2油圧ポンプの前記吐出圧と前記最高負荷圧との圧力差であるLS差圧を設定する油圧制御部と、 前記第1油圧ポンプが前記パイロット油を吐出する第3油路と、 前記第3油路から分岐する第4油路と、 前記油圧制御部に含まれ且つ前記第4油路を経由して前記油圧制御部に作用する前記パイロット油と、前記油圧制御部からの排出油との圧力差であるパイロット差圧を変更する電磁弁と、 前記電磁弁の作動を制御して、前記パイロット差圧を調整することにより、前記LS差圧を変更する制御装置と、を備え、 前記第1油圧ポンプは、前記原動機の回転数に応じて吐出流量が変動する定容量の油圧ポンプから成り、 前記油圧制御部は、 前記第2油圧ポンプに備わる斜板の角度を可変する斜板可変部と、 前記第1油路に接続され、前記斜板可変部に前記作動油を供給して前記斜板可変部を作動させる流量補償弁と、 前記第4油路に接続され、前記流量補償弁の開度を変更する開度変更部と、 をさらに含み、 前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する作業機の油圧システム。 【請求項3】 前記第4油路は、 前記油圧制御部に前記パイロット油を供給する第1分岐油路と、 前記油圧制御部から排出された前記パイロット油を前記第3油路に戻す第2分岐油路と、 前記第3油路に接続されたバイパス油路と、を含み、 前記電磁弁は、前記バイパス油路に接続され、前記第1分岐油路を流れて前記油圧制御部に作用する前記パイロット油と、前記第2分岐油路を流れて前記第3油路に戻る前記パイロット油との圧力差である前記パイロット差圧を変更する請求項2に記載の作業機の油圧システム。 【請求項4】 前記第4油路は、第1分岐油路と第3分岐油路とを含み、 前記開度変更部は、前記第1分岐油路に接続された第1開度変更部と、前記第3分岐油路に接続された第2開度変更部と、を含み、 前記電磁弁は、1つ以上設けられて、前記第1開度変更部と前記第2開度変更部のうちの少なくともいずれか一方に接続され、 前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記第1開度変更部と前記第2開度変更部のうちの少なくともいずれか一方の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項5】 前記原動機の実際の回転数である実回転数を測定する第1測定装置を備え、 前記制御装置は、前記第1測定装置により測定された前記実回転数に基づいて前記LS差圧を変更する請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項6】 前記原動機の実際の回転数である実回転数を測定する第1測定装置を備え、 前記制御装置は、前記第1測定装置により測定された前記実回転数と所定の目標回転数との差に基づいて前記LS差圧を変更する請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項7】 前記原動機の実際の回転数である実回転数を測定する第1測定装置を備え、 前記制御装置は、前記第1測定装置により測定された前記実回転数が所定の目標回転数より低下したときに前記LS差圧を減少させる請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項8】 前記原動機は、噴射された燃料を燃焼させることで駆動する内燃機関から成り、 前記制御装置は、前記内燃機関に対する燃料の噴射量又は前記内燃機関の負荷率に基づいて前記LS差圧を変更する請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項9】 前記LS差圧の変更を指令する指令部材を備え、 前記制御装置は、前記指令部材により前記LS差圧の変更の指令が発せられたときに、前記LS差圧を大きくなるように変更する請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項10】 前記原動機の回転数を設定可能なアクセル部材を備え、 前記アクセル部材は、前記指令部材として兼用され、 前記制御装置は、前記アクセル部材の操作状態に基づいて、前記原動機の回転数の設定値を判断し、前記LS差圧を変更する請求項9に記載の作業機の油圧システム。 【請求項11】 前記アクセル部材は、第1アクセル部材と第2アクセル部材と、を含み、 前記制御装置は、前記第1アクセル部材の操作量と前記第2アクセル部材の操作量のうち、小さい方の操作量に基づいて前記LS差圧を変更する請求項10に記載の作業機の油圧システム。 【請求項12】 前記制御装置は、前記第1アクセル部材の操作量と前記第2アクセル部材の操作量のうち、大きい方の操作量に基づいて、前記原動機の回転数の設定値を判断し、当該設定値に応じて前記原動機の駆動を制御する請求項11に記載の作業機の油圧システム。 【請求項13】 作業機に設けられた流路を流れる前記作動油、冷却水、又は前記原動機のオイルのうち、少なくとも一方の流体の温度を測定する第2測定装置を備え、 前記制御装置は、前記第2測定装置により測定された前記流体の温度に基づいて前記LS差圧を変更する請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項14】 前記制御装置は、 前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、 前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する請求項2又は3に記載の作業機の油圧システム。 【請求項15】 前記制御装置は、前記オートアイドル制御を実行していないときに、前記原動機の回転数に応じて前記LS差圧を変更する請求項1又は14に記載の作業機の油圧システム。 【請求項16】 前記制御装置は、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の最高回転数に応じた所定の圧力を前記LS差圧として設定する請求項1、14、及び15のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 【請求項17】 前記原動機の回転数を設定可能なアクセル部材を備え、 前記制御装置は、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記アクセル部材により設定された前記回転数に応じた所定の圧力を前記LS差圧として設定する請求項1、14及び15のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。 第4 取消理由の概要 1 概要 本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。 (1)請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)請求項1、5、10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証から甲第4号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立人の証拠方法 申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。 甲第1号証:特開平8-49264号公報 甲第2号証:特許第2840957号公報 甲第3号証:特開2003-113804号公報 甲第4号証:特許第5603115号公報 以下、証拠番号に従い「甲1」「甲2」などという。 第5 当審合議体の判断 1 各甲号証について (1)甲1について ア 甲1には次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は産業用車両の油圧制御装置に係り、特に可変容量ポンプの吐出流量を制御するための吐出流量調節器の構造を単純化させるとともに、油圧作動器の微細操作性(fine operability)を向上させた掘削機の油圧制御装置に関する。」 「【0011】図1はこの発明の実施例に従う掘削機の油圧制御装置が示されている。同図に示したように、前記油圧制御装置は高圧の作動油を吐出す可変容量ポンプ10と低圧のパイロット油を生成する補助ポンプ12とを備え、これらポンプ10,12は図示していない原動機によって駆動される。可変容量ポンプ10には作動油の吐出量を変化させるための斜板14が付設されており、この斜板14の傾転角は後述する吐出流量調節器によって調節されるようになる。作動油の吐出量は斜板12の傾転角が大きいほど増加し、傾転角が小さいほど減少する。 【0012】可変容量ポンプ10において吐出された作動油はメイン供給ライン16に沿って油圧作動器18に供給される。油圧作動器18は第1および第2の圧力室18a,18bを有するものであり、その代表的な例として、旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダおよびバケットシリンダなどをあげられるが、これに限定されるものではない。かかる油圧作動器18から排出される作動油は貯油槽20に収集された後、再び可変容量ポンプ10および補助ポンプ12に送られる。前記油圧作動器18の動きを制御するには流れ制御バルブ22が用いられる。 【0013】前記流れ制御バルブ22は第1の作動位置、第2の作動位置および中立位置との間でシフトされ得るスプール22aを有し、このスプール22aの位置は補助ポンプ12において生成されたパイロット油によって制御される。スプール22aが第1の作動位置にあるときは、メイン供給ライン16内の作動油が油圧作動器18の第1の圧力室18a内に導入されると共に、第2の圧力室18b内の作動油は貯油槽20に排出される。スプール22aが第2の作動位置にあるときには、メイン供給ライン16内の作動油が油圧作動器18の第2の圧力室18b内に導入される一方、第1の圧力室18a内の作動油は貯油槽20に排出される。さらに、スプール22aが中立位置にある場合にはいずれの圧力室18a,18bにも作動油が供給されない。 【0014】前記流れ制御バルブ22の両端には第1および第2のパイロット圧力室22b,22cがそれぞれ設けられている。第1のパイロット圧力室22bは第1の制御ライン24およびパイロット油供給ライン26を通じて補助ポンプ12と選択的に連通し、第2のパイロット圧力室22cは第2の制御ライン28およびパイロット油供給ライン26を通じて補助ポンプ12と選択的に連通する。前記パイロット油供給ライン26と前記それぞれの制御ライン24,28との間にはジョイスティック30が配設されている。このジョイスティック30は運転者によって操作され、前記パイロット油供給ライン26内のパイロット油を前記第1のパイロット圧力室22b、第2のパイロット圧力室22cまたは貯油槽20に給配するようになる。パイロット油が前記第1のパイロット圧力室22bに供給されると前記流れ制御バルブ22のスプール22aは第1の作動位置、すなわち図1において最右側に移動して作動油が油圧作動器18の第1の圧力室18aに導入されるようにする。さらに、パイロット油が前記第2のパイロット圧力室22cに供給されると前記流れ制御バルブ22のスプール22aは第2の作動位置、すなわち図において最左側に移動して作動油が油圧作動器18の第2の圧力室18bに導入されるようにする。ジョイスティック30が中立位置にあるときには、パイロット油はいずれのパイロット圧力室22b,22cにも供給されず貯油槽20に排出される。 【0015】流れ制御バルブ22を経て油圧作動器18に供給される作動油の圧力は圧力補償器32によって調節されるようになる。この圧力補償器32はロードセンシングライン34内の圧力の大きさに応じて第1ないし第3の作動位置の間でシフトされ得るスプール32aを備えている。ロードセンシングライン34内の圧力が油圧作動器18に作用する負荷圧力より大きいときには、スプール32aの第1の位置、すなわち最左側に移動して作動油がメイン供給ライン16から油圧作動器18に供給されないようにする。反面、ロードセンシングライン34内の圧力が油圧作動器18に作用する負荷圧力と同一であるときには、スプール32aは第2の位置、すなわち中間位置に移動して作動油がメイン供給ライン16から油圧作動器18に供給されることを許容する。これと異なり、ロードセンシングライン34内の圧力が油圧作動器18に作用する負荷圧力より小さい場合には、スプール32aは第3の位置、すなわち最右側に移動して油圧作動器18の負荷圧力がロードセンシングライン34に伝達される。ロードセンシングライン34内の圧力は油圧作動器18の負荷圧力によって決まる。 【0016】前記可変容量ポンプ10の斜板14の傾転角を変化させて作動油の吐出量を制御するには吐出流量調節手段が用いられる。この吐出流量調節手段はサーボシリンダ36と方向切換バルブ38と吐出流量制限バルブ40とロードセンシングバルブ42とで構成され、これらそれぞれの要素は共通の軸線に沿って直列に配列されている。」 「【0021】前記シャトルピストン42aは、前記負荷圧力作用室42bに加わる負荷圧力と前記ポンプ圧力作用室42cに加わる吐出圧力間の差圧が予め設定された基準値より小さいときには前記方向切換バルブ38から離れる方向に移動し、これによって前記方向切換バルブ38のスプール38aが第2の位置にシフトされて作動油の吐出量を増加させるようになる。逆に、前記差圧が基準値より大きいときには、前記シャトルピストン42aは方向切換バルブ38に近くなる方向に移動し、これによって前記方向切換バルブ38のスプール38aが第1の位置にシフトされて作動油の吐出量を減少させるようになる。 【0022】さらに、前記ロードセンシングバルブ42は可変圧力のパイロット油を導入するための可変パイロット圧作用室42dを備えることもできる。この可変パイロット圧作用室42dには補助ポンプ12において生成されたパイロット油が分岐ライン46および電磁比例制御減圧バルブ48を経て供給される。電磁比例制御減圧バルブ48はソレノイドバルブであり、電流が供給されるときにのみ流路を開放するようになる。また、電磁比例制御減圧バルブ48の開口面積は電流の強さによって異なる。言い換えると、強い電流が供給されるときには、電磁比例制御減圧バルブ48の開口面積が広くなって多くの量のパイロット油がロードセンシングバルブ42の可変パイロット圧作用室42dに導入され、弱い電流が供給されるときには、電磁比例制御減圧バルブ48の開口面積が狭くなって少ない量のパイロット油がロードセンシングバルブ42の可変パイロット圧作用室42dに導入される。要するに、前記電磁比例制御減圧バルブ48は電流の強さの関数として作動して前記ロードセンシングバルブ42のシャトルピストン42aに推力を加えるようになる。 【0023】前記電磁比例制御減圧バルブ48は電子制御手段によって制御され、この電子制御手段は、第1あるいは第2の制御ライン24,28を通じて前記流れ制御バルブ16に供給されるパイロット油の圧力を検出する圧力センサ50と、前記電磁比例制御減圧バルブ48の動作モードを選択するモード選択スイッチ52と、検出されたパイロット圧力および選択されたモードに応じて前記電磁比例制御減圧バルブ48に電流が供給されるようにするマイクロプロセッサ54とで構成される。前記圧力センサ50はシャトルバルブ56を介して前記制御ライン24,28のうちいずれか一つと選択的に連結されるようになる。前記電磁比例制御減圧バルブ48には、圧力センサ50によって検出されたパイロット圧力に反比例する電流が供給される。しかしながら、パイロット圧力が急激に増加する場合、電流はパイロット圧力によって決まった目標値に急激に減少せず時間経過に伴って漸次減少して目標値に到達する。モード選択スイッチ52は運転者によって選択されるモードに応じて最低電流値を制限するようになる。電磁比例制御減圧バルブ48を通過してロードセンシングバルブ42のパイロット圧作用室42d内に導入されるパイロット油の圧力は前記した電流の減少率に比例して減少するようになる。その結果、ロードセンシングバルブ42のシャトルピストン42aが方向切換バルブ38から離れる速度を遅延させて、作動油の吐出量がジョイスティック30の操作に従って急増することを防止できる。」 「【0026】上記においても説明したように、ロードセンシングバルブ42の負荷圧力作用室40bには負荷圧力P1 が作用し、それのポンプ圧力作用室40cにはポンプ圧力P2 が作用する。従って、シャトルピストン42aを図1において右側に押す力は前記負荷圧力P1とポンプ圧力P2との間の差圧ΔPの大きさに比例して大きくなる。シャトルピストン42aに作用する右側方向への推力がフィードバックスプリング44の抵抗力を克服できる程度に大きくなると、方向切換バルブ38のスプール38aは第1の位置に移動される。これによって、作動油がサーボシリンダ36の第1のサーボチャンバ36c内に導入されてサーボピストン36aおよびピストンロッド36bを左側に押して斜板14の傾転角を小さくすることにより可変容量ポンプ10の吐出量を減少させる。 【0027】このように、サーボシリンダ36のピストンロッド36bが左側に移動するに従って、フィードバックスプリング44に加わる力が増加するので、方向切換バルブ38のスプール38aは再び第2の位置、すなわち左側に移動してサーボシリンダ36の第1のサーボ圧力室36cに作動油が導入されることを遮断するようになる。斜板14の傾転角が小さいほどフィードバックスプリング44の圧縮は増加されるので、かかる圧縮力に対抗して方向切換バルブ38のスプール38aを中立位置に保持するためには、ロードセンシングバルブ42のシャトルピストン42aに作用する右側方向への推力も前記圧縮力に比例して大きくならないといけない。これは、可変容量ポンプ10の吐出量Qが小さいほどロードセンシングバルブ42に作用する差圧ΔPが大きくならないといけないということを意味する。図2において、実線カーブは可変容量ポンプ10の吐出量Qとロードセンシングバルブに作用する差圧ΔPとの関係を図解的に示している。」 「 図1 [図:0001435164000001.jpg] 図2 [図:0001435164000002.jpg] 」 イ 図1から、分岐ライン46はパイロット油供給ライン26から枝分かれしていること、補助ポンプ12は定容量形のポンプであることが看取される。 ウ 可変容量ポンプ10の吐出圧力に対して負荷圧力が小さく余裕がある場合には、可変容量ポンプ10のポンプ圧力P2と負荷圧力P1との差圧ΔPが大きくなり、負荷圧力が大きくて余裕がない場合には差圧ΔPが小さくなることは技術常識であるから、差圧ΔPが予め設定された基準値より小さいときには作動油の吐出量を増加させるようにし、逆に、前記差圧が基準値より大きいときには、作動油の吐出量を減少させるようにする(【0021】参照)と、差圧ΔPは予め設定された基準値に収束することになる。したがって、【0016】【0021】【0026】の記載から、吐出流量調整手段は、可変容量ポンプ10を制御して、可変容量ポンプ10のポンプ圧力P2と負荷圧力P1との差圧ΔPが予め設定された基準値となるようにしていると理解される。 エ 【0022】【0023】及び図2から、電子制御手段によって、電磁比例制御減圧バルブ48に供給される入力電流Iを制御して、ロードセンシングバルブ42に導入されるパイロット油の量を調整することにより、差圧ΔPが変更されていることがわかる。 したがって、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「原動機と、 油圧作動器18と、 前記油圧作動器18の動きを制御する流れ制御バルブ22と、 前記原動機によって駆動され、前記流れ制御バルブ22を制御するためのパイロット油を生成する補助ポンプ12と、 前記原動機によって駆動され、前記油圧作動器18に供給される作動油を吐出する可変容量ポンプ10と、 前記油圧作動器18の負荷圧力P1が伝達されるロードセンシングライン34と、 前記可変容量ポンプ10において吐出された前記作動油が供給されるメイン供給ライン16と、 前記可変容量ポンプ10を制御して、前記可変容量ポンプ10のポンプ圧力P2と前記負荷圧力P1との差圧ΔPが予め設定された基準値となるようにする、サーボシリンダ36と方向切換バルブ38と吐出流量制限バルブ40とロードセンシングバルブ42とで構成される吐出流量調整手段と、 前記補助ポンプ12から前記パイロット油が供給されるパイロット油供給ライン26と、 前記パイロット油供給ライン26から枝分かれしている分岐ライン46と、 前記分岐ライン46を経て前記吐出流量調整手段における前記ロードセンシングバルブ42に導入されるパイロット油の量を多くしたり少なくしたりする電磁比例制御減圧バルブ48と、 前記電磁比例制御減圧バルブ48を制御して前記ロードセンシングバルブ42に導入されるパイロット油の量を調整することにより、前記差圧ΔPが変更される電子制御手段と、を備え、 前記補助ポンプ12は、定容量形のポンプであり、 前記吐出流量調整手段は、 前記可変容量ポンプ10の斜板14の傾斜角を変更するサーボシリンダ36と、 前記ロードセンシングライン34及び前記分岐ライン46に接続され、前記サーボシリンダ36に前記作動油を導入して前記サーボシリンダ36に斜板14の傾斜角を変更させるロードセンシングバルブ42と吐出流量制限バルブ40と方向変換バルブ38と、 を含み 前記電子制御手段は、前記電磁比例制御減圧バルブ48を制御して、前記サーボシリンダ36を作動させて可変容量ポンプ10の斜板14の傾斜角を変更することで、前記差圧ΔPが変更される 掘削機の油圧制御装置。」 (2)甲2について 甲2には次の記載がある。 「【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、クローズドセンタ・ロードセンシングシステムにおけるポンプの吐出容積の可変回路に係わり、特には、パワーショベル等の建設機械に用いる1ポンプシステムに適用する好適なポンプの吐出容積の可変回路の改良に関寸る。」(2カラム6~12行) 「第3図は第2実施例の全体構成図を示し、上記第1実施例と同一要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。バネ15にはレギュレータ16が連接され、第2ポンプ17からの油圧を圧力比例弁31を介して受け、バネ15の取付け長さを圧力に比例して漸変させ、これによりバネ15の付勢力を変えている。圧力比例弁31は図示しない運転席近傍に設けた切換スイッチからの指令信号32により作動する。尚、指令信号32はエンジン33に配設した回転センサ34の回転に応じて変動するようにしてある。 上記第2実施例の作動を説明する。例えば、パワーショベルの旋回のように、ポンプ2の最大吐出量に対しそもそも要求流量の少ないものをさらに旋回等の回転を遅くしたいときは、エンジン33の回転速度を図示しないアクセルペダル等からの信号によって下げると共に、切換スイッチを作動させて回転センサ34からの指令信号32によって圧力比例弁31を切り換える。指令信号32は第4図のごとくエンジン33の回転速度の変動に応じて変動させている。圧力比例弁31は指令信号32に応じて第5図のごとく圧力Ppiを変え、この圧力Ppiの変動によってレギュレータ16を介してバルブ13のバネ15の取付け長さを圧力Ppiによって漸変させ、これにより、第6図のごとくバルブ13のバネ15の付勢力(即ち差圧△p)を変えている。 この差圧△pによって、第7図のごとくポンプ2の吐出容量(又はアクチュエータへの吐出流量)はエンジン33の回転速度の変動に応じて同様に変動する。 尚、上記第2実施例では、エンジン33の変動に対し、指令信号32を1次比例させているが、通常のコントローラを用いて、2次、3次及び他の連続した変動としても良い。」(7カラム49行~8カラム27行) 「 第3図 [図:0001435164000003.jpg] 」 (3)甲3について 甲3には次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、油圧ショベルに用いられるLS制御方式の油圧駆動装置に係わり、特に、油圧ポンプの吐出圧が複数のアクチュエータの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御しかつ複数の流量制御弁の前後差圧を制御する圧力補償弁のそれぞれの目標補償差圧を油圧ポンプの吐出圧と複数のアクチュエータの最高負荷圧との差圧により設定すると共に、ロードセンシング制御の目標差圧をエンジン回転数に依存する可変値として設定する油圧ショベルの油圧駆動装置に関する。」 「【0022】図1において、本実施の形態に係わる油圧駆動装置は、エンジン1と、このエンジン1により駆動されるメインポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ2及び固定容量型のパイロットポンプ30と、メインの油圧ポンプ2から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3cと、油圧ポンプ2の供給油路5に接続され、油圧ポンプ2からアクチュエータ3a,3b,3cに供給される圧油の流量と方向をそれぞれ制御する複数の流量制御弁(メインスプール)4a,4b,4c及び油圧ポンプ2の吐出圧と複数のアクチュエータ3a,3b,3cの最高負荷圧との差圧(LS差圧)を絶対圧として出力する差圧減圧弁11を含むコントロールバルブ4と、油圧ポンプ2の傾転(容量)を制御するポンプ傾転制御機構12と、エンジン回転数に依存する圧力を絶対圧として出力する差圧減圧弁51を含むエンジン回転数検出回路13とを備えている。 【0023】本実施の形態に係わる油圧駆動装置は例えば油圧ショベルに搭載されるものであり、アクチュエータ3a,3b,3cは例えばそれぞれ油圧ショベルの旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダである。油圧ショベルは下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に上下方向に回動可能に装備されたブーム、アーム、バケットからなるフロント作業機構を有し、旋回モータ3aは上部旋回体を旋回駆動し、ブームシリンダ3b及びアームシリンダ3cはそれぞれブーム及びアームを上下方向に回動駆動する。 【0024】複数の流量制御弁4a,4b,4cは、それぞれ、クローズドセンタ型の複数の流量制御弁6a,6b,6cと、これら複数の流量制御弁6a,6b,6cのメータイン絞り部61,62の前後差圧を同じ値に制御する複数の圧力補償弁7a,7b,7cとで構成されている。 【0025】流量制御弁6a,6b,6cはそれぞれ図示しない操作レバーの操作により切り換え操作され、その操作レバーの操作量に応じてメータイン絞り部61又は62の開口面積が決まる。 【0026】複数の圧力補償弁7a,7b,7cは、それぞれ、流量制御弁6a,6b,6cのメータイン絞り部61,62の上流に設置された前置きタイプ(ビフォアオリフィスタイプ)であり、圧力補償弁7aは1対の対向する受圧部70a,70bと開方向作動の受圧部70cとを有し、受圧部70a,70bに流量制御弁6aの上流側及び下流側の圧力がそれぞれ導かれ、受圧部70cに差圧減圧弁51の出力圧が導かれ、その出力圧を目標補償差圧として流量制御弁6aの前後差圧を制御する。圧力補償弁7bは、1対の対向する受圧部71a,71bと開方向作動の受圧部71cとを有し、受圧部71a,71bに流量制御弁6bの上流側及び下流側の圧力がそれぞれ導かれ、受圧部71cに差圧減圧弁11の出力圧が導かれ、その出力圧を目標補償差圧として流量制御弁6bの前後差圧を制御する。圧力補償弁7cも圧力補償弁7bと同様であり、1対の対向する受圧部72a,72bと開方向作動の受圧部72cとを有し、受圧部72a,72bに流量制御弁6cの上流側及び下流側の圧力がそれぞれ導かれ、受圧部72cに差圧減圧弁11の出力圧が導かれ、その出力圧を目標補償差圧として流量制御弁6cの前後差圧を制御する。複数の流量制御弁6a,6b,6cには、それぞれ、アクチュエータ3a,3b,3cの駆動時にそれらの負荷圧を取り出す負荷ポート60a,60b,…が設けられ、これら負荷ポート60a,60b,…に取り出された負荷圧のうちの最高の圧力が負荷ライン8a,8b,8c、8d及びシャトル弁9a,9bを介して信号ライン10に検出される。 【0027】差圧減圧弁11は、出力圧を増やす側に位置する受圧部11aと出力圧を減らす側に位置する受圧部11b,11cを有し、受圧部11aに油圧ポンプ2の吐出圧が導かれ、受圧部11b,11cにそれぞれ信号ライン10に検出された最高負荷圧と自己の出力圧が導かれ、これらの圧力のバランスで油圧ポンプ2の吐出圧と最高負荷圧との差圧(LS差圧)を絶対圧として出力する。 【0028】差圧減圧弁11の出力ポートは信号ライン21,22を介してポンプ傾転制御機構12に設けられたLS制御弁12bの受圧部12dに接続され、差圧減圧弁11の出力圧が受圧部12dに導かれる。また、差圧減圧弁11の出力ポートは、信号ライン21,24を介して圧力補償弁7bの受圧部71cに接続され、信号ライン21,25を介して圧力補償弁7cの受圧部72cに接続され、差圧減圧弁11の出力圧が上記のように目標補償差圧として受圧部71c,72cに導かれる。 【0029】ポンプ傾転制御機構12は、油圧ポンプ2の吐出圧が高くなると油圧ポンプ2の傾転を減らす馬力制御傾転アクチュエータ12aと、油圧ポンプ2の吐出圧が複数のアクチュエータ3a,3b,3cの最高負荷圧より目標差圧だけ高くなるようロードセンシング制御するLS制御弁12b及びLS制御傾転アクチュエータ12cとを備えている。 【0030】LS制御弁12bは、アクチュエータ12cを増圧し油圧ポンプ2の傾転を減らす側に位置する受圧部12dと、アクチュエータ12cを減圧し油圧ポンプ2の傾転を増やす側に位置する受圧部12eとを有し、受圧部12dには差圧減圧弁11の出力圧(油圧ポンプ2の吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3cの最高負荷圧との差圧)が導かれ、受圧部12eにはエンジン回転数検出回路13の差圧減圧弁51の出力圧がロードセンシング制御の目標差圧(目標LS差圧)として導かれている。」 「 図1 [図:0001435164000004.jpg] 」 (4)甲4について 甲4には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、作業車両の油圧回路の技術に関し、より詳細には、可変容量型の油圧ポンプ及び作業用油圧アクチュエータを具備する作業車両の油圧回路の技術に関する。」 「【0078】 アクセル開度検出手段82は、エンジン9のアクセル開度Snを検出するものである。アクセル開度検出手段82は、角度センサーから構成され、アクセルレバー8aに設けられる。なお、アクセル開度検出手段82を、本実施形態においては、角度センサーから構成しているが、これは特に限定するものではなく、アクセルレバー8aの操作量、すなわちアクセル開度Snを検出することができるものであればよい。 【0079】 図6に示すように、制御手段83は、第一流量調節手段50によって第一油圧ポンプ47の斜板角度R1を制御し、第二流量調節手段70によって第二油圧ポンプ68の斜板角度R2を制御するものである。制御手段83は、アクセル開度Snと目標回転数Nsとの関係を示す目標回転数マップ、実回転数Nと目標回転数Nsとの偏差に基づいて第一電磁比例減圧弁53及び第二電磁比例減圧弁73の制御を行うための種々のプログラムが格納される。また、制御手段83は、これらのプログラム等に従って所定の演算を行うことができ、当該演算の結果等を記憶することができる。目標回転数Nsは、あるアクセル開度Snに対して、エンジン9の出力が最大となる回転数に基づいて設定される回転数である。」 「 図4 [図:0001435164000005.jpg] 」 「 図6 [図:0001435164000006.jpg] 」 2 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、後者の「原動機」は前者の「原動機」に相当し、以下同様に、「油圧作動器18」は「油圧アクチュエータ」に、「動き」は「作動」に、「流れ制御バルブ22」は「制御弁」に、「前記原動機によって駆動され、前記流れ制御バルブ22を制御するためのパイロット油を生成する」という事項は「前記原動機の動力により駆動して、前記制御弁を切り換えるためのパイロット油を吐出する」という事項に、「補助ポンプ12」は「第1油圧ポンプ」に、「前記原動機によって駆動され、前記油圧作動器18に供給される作動油を吐出する」という事項は「前記原動機の動力により駆動して、前記油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する」という事項に、「可変容量ポンプ10」は「可変容量の第2油圧ポンプ」に、「前記油圧作動器18の負荷圧力が伝達される」という事項は「前記油圧アクチュエータの作動時の最高負荷圧が作用可能な」という事項に、「ロードセンシングライン34」は「第1油路」に、「前記可変容量ポンプ10において吐出された前記作動油が供給される」という事項は「前記第2油圧ポンプからの前記作動油の吐出圧が作用可能な」という事項に、「メイン供給ライン16」は「第2油路」に、「前記可変容量ポンプ10を制御して、前記可変容量ポンプ10のポンプ圧力P2と前記負荷圧力P1との差圧ΔPが予め設定された基準値となるようにする」という事項は「前記第2油圧ポンプを制御して、前記第2油圧ポンプの前記吐出圧と前記最高負荷圧との圧力差であるLS差圧を設定する」という事項に、「サーボシリンダ36と方向切換バルブ38と吐出流量制限バルブ40とロードセンシングバルブ42とで構成される吐出流量調整手段」は「油圧制御部」に、「前記補助ポンプ12から前記パイロット油が供給される」という事項は「前記第1油圧ポンプが前記パイロット油を吐出する」という事項に、「パイロット油供給ライン26」は「第3油路」に、「枝分かれしている」という事項は「分岐する」という事項に、「分岐ライン46」は「第4油路」に、「前記分岐ライン46を経て前記吐出流量調整手段における前記ロードセンシングバルブに導入されるパイロット油の量を多くしたり少なくしたりする」という事項は「前記第4油路を流れて前記油圧制御部に作用する前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を変更する」という事項に、「電磁比例制御減圧バルブ48」は「電磁弁」に、「前記電磁比例制御減圧バルブ48を制御して前記ロードセンシングバルブ42に導入されるパイロット油の量を調整することにより、前記差圧ΔPが変更される」という事項は「前記電磁弁の作動を制御して前記パイロット圧を調整することにより、前記LS差圧を変更する」という事項に、「電子制御手段」は「制御装置」に、それぞれ相当する。 補助ポンプ12は、原動機によって駆動されパイロット油を生成しているから、油圧ポンプに他ならず、また、定容量型ポンプの吐出流量は回転数に応じて変動することは技術常識であるから、後者の「前記補助ポンプ12は、定容量形のポンプであり」という事項は前者の「前記第1油圧ポンプは、前記原動機の回転数に応じて吐出流量が変動する定容量の油圧ポンプから成り」という事項に相当する。 後者の「前記可変容量ポンプ10の斜板14の傾斜角を変更する」という事項は前者の「前記第2油圧ポンプに備わる斜板の角度を可変する」という事項に相当し、以下同様に、「サーボシリンダ36」は「斜板可変部」に、「前記ロードセンシングライン34及び前記分岐ライン46に接続され、前記サーボシリンダ36に前記作動油を導入して前記サーボシリンダ36に斜板14の傾斜角を変更させるロードセンシングバルブ42と吐出流量制限バルブ40と方向変換バルブ38」は「前記第1油路に接続され、前記斜板可変部に前記作動油を供給して前記斜板可変部を作動させる流量補償弁と、前記第4油路に接続され、前記流量補償弁の開度を変更する開度変更部」に、「含み」という事項は「さらに含み」という事項に、「前記電磁比例制御減圧バルブ48を制御して、前記サーボシリンダ36を作動させて可変容量ポンプ10の斜板14の傾斜角を変更することで、前記差圧ΔPが変更される」という事項は「前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する」という事項に、「掘削機の油圧制御装置。」は「作業機の油圧システム。」に、それぞれ相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは次の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 原動機と、 油圧アクチュエータと、 前記油圧アクチュエータの作動を制御する制御弁と、 前記原動機の動力により駆動して、前記制御弁を切り換えるためのパイロット油を吐出する第1油圧ポンプと、 前記原動機の動力により駆動して、前記油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する可変容量の第2油圧ポンプと、 前記油圧アクチュエータの作動時の最高負荷圧が作用可能な第1油路と、 前記第2油圧ポンプからの前記作動油の吐出圧が作用可能な第2油路と、 前記第2油圧ポンプを制御して、前記第2油圧ポンプの前記吐出圧と前記最高負荷圧との圧力差であるLS差圧を設定する油圧制御部と、 前記第1油圧ポンプが前記パイロット油を吐出する第3油路と、 前記第3油路から分岐する第4油路と、 前記第4油路を流れて前記油圧制御部に作用する前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を変更する電磁弁と、 前記電磁弁の作動を制御して前記パイロット圧を調整することにより、前記LS差圧を変更する制御装置と、を備え 、 前記第1油圧ポンプは、前記原動機の回転数に応じて吐出流量が変動する定容量の油圧ポンプから成り、 前記油圧制御部は、 前記第2油圧ポンプに備わる斜板の角度を可変する斜板可変部と、 前記第1油路に接続され、前記斜板可変部に前記作動油を供給して前記斜板可変部を作動させる流量補償弁と、 前記第4油路に接続され、前記流量補償弁の開度を変更する開度変更部と、 をさらに含み、 前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更する 作業機の油圧システム。 <相違点1> 本件発明1では、電磁弁が「前記油圧制御部に含まれ」ているのに対し、甲1発明では、電磁比例制御減圧バルブ48が吐出流量調整手段には含まれていない点。 <相違点2> 本件発明1では、「前記制御装置は、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行可能であり、前記オートアイドル制御を実行しているときに、前記原動機の回転数が変化しても、前記原動機の回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力を前記LS差圧として設定する」ものであるのに対し、甲1発明では、オートアイドル制御を行っているか明らかではない点。 事案に鑑み、相違点2から検討する。 甲2~甲4の記載事項は上記1(2)~(4)に摘記したとおりであり、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲2~甲4のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、当該構成が一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用の範疇にあるというに足る根拠もない。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではない。 また、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明5及び10について 本件発明5及び10は本件発明1又は2を直接的又は間接的に引用するものであるところ、本件発明1を引用する本件発明5及び10は、上記2と同様の理由により、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2~甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 本件発明2を引用する本件発明5及び10について検討する。 まず、本件発明2と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記2の対比を踏まえれば、相違点1に加えて次の相違点3で相違し、その余の点で一致する。 <相違点3> 本件発明2は「前記第4油路を経由して前記油圧制御部に作用する前記パイロット油と、前記油圧制御部からの排出油との圧力差であるパイロット差圧を変更する電磁弁」を備えているのに対し、甲1発明は「電磁比例制御減圧バルブ48」を備えているものの、パイロット油と排出油との圧力差であるパイロット差圧を変更する弁ではない点。 そして、甲2~甲4の記載事項は上記1(2)~(4)に摘記したとおりであり、相違点3に係る本件発明2の構成は、甲2~甲4のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、当該構成が一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用の範疇にあるというに足る根拠もない。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明ではない。また、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、本件発明2を引用する本件発明5及び10も、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2~甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 以上のことから、本件発明5及び10は甲1発明ではない。また、本件発明5及び10は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、概ね、次のとおりである。 (1)本件発明4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1~甲4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ・請求項1における「油圧制御部」と「制御装置」との関係が不明確であるため本件発明1、4、5、10は明確ではない点。 2 当審合議体の判断 (1)本件発明4の進歩性について 本件発明1又は2を引用する本件発明4は、上記第5の2又は上記第5の3と同様の理由により、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2~甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)明確性について 請求項1には「油圧制御部」について次の記載がある。 ア 「前記第2油圧ポンプを制御して、前記第2油圧ポンプの前記吐出圧と前記最高負荷圧との圧力差であるLS差圧を設定する油圧制御部」 イ 「前記油圧制御部に含まれ且つ前記第4油路を流れて前記油圧制御部に作用する前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を変更する電磁弁」 ウ 「前記油圧制御部は、前記第2油圧ポンプに備わる斜板の角度を可変する斜板可変部と、前記第1油路に接続され、前記斜板可変部に前記作動油を供給して前記斜板可変部を作動させる流量補償弁と、前記第4油路に接続され、前記流量補償弁の開度を変更する開度変更部と、をさらに含み」 また、請求項1には「制御装置」について次の記載がある。 エ 「前記電磁弁の作動を制御して前記パイロット圧を調整することにより、前記LS差圧を変更する制御装置」 オ 「前記制御装置は、前記電磁弁の作動を制御して、前記開度変更部により前記流量補償弁の開度を変更することにより、前記LS差圧を変更し」 これらのことから、「油圧制御部」は電磁弁、開度変更部、流量補償弁、斜板可変部を含み、開度変更部によって流量補償弁の開度が変更されると、斜板可変部が作動し、第2油圧ポンプに備わる斜板の角度を可変することでLS差圧を設定するものであり、「制御装置」は「油圧制御部」に含まれている電磁弁の作動を制御して、開度変更部により流量補償弁の開度を変更するものであると理解される。また、この理解は、「油圧制御部」がLS差圧を設定し、「制御装置」が(「油圧制御部」に含まれる電磁弁の作動を制御することを介して結果的に)LS差圧を変更することとも整合する。 したがって、「油圧制御部」と「制御装置」との関係は明確であり、本件発明1、4、5、10は明確である。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1、4、5、10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1、4、5、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700975

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