特許異議申立
2025-700480
保持部材
- 審判番号
- 2025-700480
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-021940
- 登録番号
- 7577558
- 請求日
- 2025年04月28日
- 審決日
- 2025年06月25日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本特殊陶業株式会社
- 【権利者代理人】田邊 淳也
- 【異議申立人】佐藤 義光
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 今井 聖和
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1652.121-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7577558号発明「保持部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7577558号の請求項1、5及び6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7577558号の請求項1、5及び6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年(2021年)2月15日の出願であって、令和6年10月25日にその特許権の設定登録がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和7年4月28日に特許異議申立人 佐藤 義光(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7577558号の請求項1、5及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明5」及び「本件発明6」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、5及び6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外周が円形状または略円形状の対象物を保持する保持面を備える保持部と、
前記保持部に対し前記保持面側とは反対側に配置され、前記対象物を冷却する冷媒を流す流路を備える冷却部と、
を有する保持部材において、
前記保持面側から前記保持部材を見たときに、
前記保持部は、
当該保持部の外周が略円形状に形成されており、
前記保持部の外周の一部に、前記保持部の外周により形成される仮想円よりも径方向の内側に形成される部分であって、前記対象物の周方向の位置合わせを行うための位置合わせ部を備え、
前記位置合わせ部と前記流路とが重なるように配置されていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つの保持部材において、
前記保持面側から前記保持部材を見たときに、
前記位置合わせ部は、直線状に形成されていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つの保持部材において、
前記保持面側から前記保持部材を見たときに、
前記位置合わせ部の全てが前記流路と重なるように配置されていること、
を特徴とする保持部材。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2006-261541号公報
甲第2号証(甲2):特開平9-289201号公報
甲第3号証(甲3):特開2020-96181号公報
甲第4号証(甲4):特開平9-17770号公報
甲第5号証(甲5):特開2008-172214号公報
甲第6号証(甲6):特開平7-130830号公報
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由(進歩性欠如)は、概略、本件発明は、甲1~甲6に記載された発明あるいは事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである、というものであり、より具体的には以下のとおりである。
(1) 甲1を主引用例とする進歩性欠如
本件発明1、5及び6は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 甲6を主引用例とする進歩性欠如
本件発明1、5及び6は、甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1の記載及び甲1から認定できる事項
甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【0005】
一般に、ウエハを載置する基板載置台には、熱伝導性に優れたAlなどの金属材料が用いられる。このため、特許文献1のように2系統の冷媒流路を設け、基板載置台内で温度格差を持たせようとしても熱の移動が生じてしまい、温度の制御性や、応答性が悪く、意図するような温度格差を生じさせることは困難であった。つまり、せっかく2系統の冷媒流路を設けても、二つの領域の境界が不明確であり、また、双方からの熱の移動によって素早い温度調節も困難であることから、基板載置台の温度分布を高精度に制御することは出来ない。その結果として、ウエハ面内温度の均一化、さらには処理の均一化も十分に実現できないという課題があった。
従って、本発明の目的は、基板載置台による温度制御を高精度なものとし、ウエハ面内における処理の均一化を図ることである。」
「【0026】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して下側から、円柱状の第1のサセプタ板13、第2のサセプタ板14、第3のサセプタ板15が積層され、さらにその上に第4のサセプタ板16が積層されている。これら第1~第4のサセプタ板13,14,15,16は例えばアルミニウムからなり、一体に接合されて基板載置台17を形成しており、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。また、基板載置台17は下部電極としても機能する。
【0027】
基板載置台17の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。」
「【0029】
基板載置台17の内部には、環状をした内側の冷媒室28と、該内側の冷媒室28を囲むように環状をした外側の冷媒室29と、が設けられている。これらの冷媒室28,29には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管28a,29aを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が供給され、ここでは図示しない配管28b,29bを通じて排出されることにより、冷媒の循環が行なわれる。そして、循環される冷媒の温度によって基板載置台17上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。基板載置台17の内側の冷媒室28と、外側の冷媒室29との間には、空隙部30が円筒状に設けられ、この空隙部30は、バルブ71を介して排気手段としての真空ポンプ72に接続されている。この空隙部30の詳細な構成については後述する。」
「【0059】
ステップS12では、冷媒室28と29に、配管28aと28bを通じて、温度の異なる冷媒をそれぞれ導入する。例えば、プラズマエッチングの処理時に、ウエハWの周辺部の方が加熱しやすい場合には、冷媒室28と冷媒室29に導入する冷媒に温度差を持たせ、基板載置台17の周辺部に設けられた冷媒室29に温度の低い冷媒を導入する。前記したように、真空状態の空隙部30内は断熱層として機能するので、基板載置台17の中央部の領域と周辺部の領域の熱の移動が抑制され、これら二つの領域の温度制御を応答性良く、独立的に行なうことができる。」
「
[図:0001425819000001.jpg]
」
「
[図:0001425819000002.jpg]
」
また、上記【0027】及び上記図3によれば、半導体ウエハWが静電チャック18の上面に吸着保持されていることが見て取れる。
(2) 甲1発明
上記(1)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
「 基板載置台17の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられており、半導体ウエハWが静電チャック18の上面に吸着保持され、
基板載置台17の内部には、環状をした内側の冷媒室28と、該内側の冷媒室28を囲むように環状をした外側の冷媒室29と、が設けられており、これらの冷媒室28,29には、外部に設けられたチラーユニットより配管28a,29aを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が供給され、配管28b,29bを通じて排出されることにより、冷媒の循環が行なわれ、循環される冷媒の温度によって基板載置台17上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる、
基板載置台17及び静電チャック18。」
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「
[図:0001425819000003.jpg]
」
「
[図:0001425819000004.jpg]
」
3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「【0026】
サセプタ1は、基体部を有する。基体部は、本体部11と突出部12と外周突出部14とを有する。基体部は、載置されるウェハWと略平行な方向に延びる。突出部12は、本体部11から略直交する方向に突出する。図2に示すように突出部12は、基体部の外周の領域に位置する。外周突出部14は、突出部12の上面から略直交する方向に突出する。外周突出部14は、サセプタ1に載置されたウェハWが径方向に飛び出すことを防ぐ。
本実施形態中で、サセプタ1がウェハWを載置する方向を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とする。」
「【0030】
図2は、第1実施形態にかかるサセプタ1の平面図である。図2に示すように、サセプタ1は、平面視が略円形であるように構成される。本体部11の第1面11aは、直線部11OFを有する略円形であることが好ましい。また、突出部12の第1面12aは、直線部12OFを有する略円環状であることが好ましい。直線部11OFおよび直線部12OFは、ウェハWのオリエンテーションフラット(以下、オリフラという。)に合わせて設けられる。本体部11の第1面11aは、直線部11OFを有さない構成であってもよい。また、突出部12の第1面12aは、直線部12OFを有さない構成であってもよい。ウェハWがオリフラを有さない場合は、本体部11の第1面11aは略円形でもよく、突出部12の第1面12aは略円環状でもよい。」
「
[図:0001425819000005.jpg]
」
4 甲4について
甲4には、以下の記載がある。
「【0011】
しかし、ウェハWの温度が上述のように制御されている場合、エッチング中のウェハWはプラズマからの輻射熱RP を受けると共に、ウェハWよりも高温に加熱されたプラズマ・チャンバ壁からの輻射熱RC も受ける。ここで、プラズマPからの輻射熱RP の影響は、該プラズマPがウェハWと対面して全面的にこれを照射している以上、全面に均一に及ぶと考えられるが、プラズマ・チャンバ壁からの輻射熱RCの影響は該チャンバ壁からの距離に応じてウェハW上で変化する。すなわち、プラズマ・チャンバ43の内壁面からの輻射熱RC は、ウェハWの中心部よりも周縁部の方に大きな影響を与える。」
5 甲5について
甲5には、以下の記載がある。
「【0029】
[0033]したがって周囲の熱負荷ΔQは周囲部9に局在して維持され、基板テーブル1の中心部12への影響は制限される。絶縁ピース11に加えて、別の分離ピースが、図2に図示したような、基板テーブル1の中心から測定された異なる半径距離に存在することもある。ここでは、中心部12から空隙4を熱的に分離する第1絶縁体縁部11が図示されている。第2絶縁体縁部13(例えば、環状)が、テーブルの中心部にさらに近づいた所に示され、基板支持層14によって覆われている。この第2縁部13は、基板テーブル1の周囲部9内に設けることができる周囲ダクト15に従う。これは、図3~5を参照してさらに説明されることになる。縁部ヒータ16がある場合があり、基板テーブル1の周囲部9に熱エネルギーを供給するために、例えば電気配線によって形成される。好ましくは、絶縁体11および/または13は、ガラス様材料、空気、真空、フォームガラスおよび/またはポリマーで形成される。一実施形態では、代替的、または追加的に、この絶縁体は、周囲部9を中心部12から機械的に分離するために相対的に低い剛性を有する材料から形成される。これは、周囲部9の機械的な変形が基板テーブル1の中心部12に伝達されるのを実質的に防ぎ、したがって基板3がリソグラフィプロセスで処理される場合に、よりよい結像品質を達成できるので、さらに基板テーブル1の中心部12の機械的安定性を高める。」
6 甲6について
甲6には、以下の記載がある。
「【0013】本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ウエハを極低温から高温までの広範囲で効率良く温度制御することができ、かつウエハ全面に均一に高周波を印加することができる載置台を備えた半導体製造装置を提供することを目的としている。」
「【0018】
【実施例】以下、本発明に係る半導体製造装置の実施例を図面に基づいて説明する。図1は第1の発明の半導体製造装置の一例の要部断面図であり、載置台を示したものである。図示したようにこの載置台10は、温度制御槽20と、温度制御槽20の上部に配置された静電チャック11とで構成されている。温度制御槽20は例えば円板状をなし、内部に中空室21を有している。
【0019】また温度制御槽20は、その上部周縁から内向きにフランジ20aが延設されており、フランジ20aを除いて温度制御槽20の上面は開口している。なお、フランジ20aの上面には凹部20bが設けられており、凹部20b内には後述する如く静電チャック11との密着度を高めるためのガスケット25が嵌め込まれている。また温度制御槽20には、上記中空室21に連通する状態で冷媒の導入管22と排出管23とが接続されており、冷媒が導入管22、中空室21及び排出管23を通って循環するようになっている。」
「【0021】図1では、例えば高周波印加用の電極14をヒータ13及び静電吸着用の平板電極12より広範囲に設けた場合を示している。したがって、この実施例においてはこれら電極14、ヒータ13及び平板電極12の積層体全体を被覆する絶縁体15によって、静電チャック11は例えば大小の円板を連設した形状に形成されている。」
「【0025】上記の如く構成された載置台10においては、載置台10の上面にウエハSを載置して直流電源16より平板電極12に電圧を印加すると、それにより生じる電位差によって絶縁体15に誘電分極現象が起こる。そして、平板電極12上と異符号の電荷が絶縁体15の上面に励起され、ウエハSとの間で静電気力が生じてウエハSが吸着保持される。」
「【0028】 また、静電チャック11はその下面が温度制御槽20の上面の開口26を塞ぐ状態で配置されるので、中空室21内を冷媒を循環させると、静電チャック11の下面にその冷媒が直接接触する。つまり、静電チャック11自体が直接冷却されることとなるので、静電吸着されたウエハSと冷媒との熱交換が速やかに行われ、ウエハSは所定の温度に極めて効率良く冷却される。さらにウエハSの冷却効率が向上することから、高周波印加用の電極14に高周波電圧を印加してプラズマを発生させた際のウエハSの温度上昇も最小限にとどめられる。」
「
[図:0001425819000006.jpg]
」
第5 当審の判断
1 甲1を主引用例とする進歩性欠如
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「静電チャック18」は、その「上面」に「半導体ウエハWを静電力で吸着保持する」ものであるから、「保持部」であるといえる。
また、甲1発明の「半導体ウエハW」は、「静電チャック18」が「静電力で吸着保持する」対象物であるといえる。
そして、甲1発明の「静電チャック18」の「上面」は、「半導体ウエハWを静電力で吸着保持する」保持面であるといえる。
そうすると、甲1発明の「静電チャック18」は、本件発明1の「外周が円形状または略円形状の対象物を保持する保持面を備える保持部」と、「対象物を保持する保持面を備える保持部」で共通する。
(イ) 甲1発明の「基板載置台17」は、その「上面」に「静電チャック18」が設けられるものであるから、「静電チャック18」に対し「静電チャック18」の「上面」側とは反対側に配置されているといえる。
また、甲1発明の「冷媒室28,29」は、「所定温度の冷媒、例えば冷却水が供給され」、「配管28b,29bを通じて排出されることにより、冷媒の循環が行なわれ」るものであるから、冷媒を流す流路であるといえる。
そして、甲1発明の「基板載置台17」は、その「内部」に、「環状をした内側の冷媒室28と、該内側の冷媒室28を囲むように環状をした外側の冷媒室29と、が設けられており」、「循環される冷媒の温度によって基板載置台17上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる」ものであるから、半導体ウエハWを冷却する冷媒を流す流路を備える冷却部であるといえる。
そうすると、甲1発明の「基板載置台17」は、本件発明1の「前記保持部に対し前記保持面側とは反対側に配置され、前記対象物を冷却する冷媒を流す流路を備える冷却部」に相当する。
(ウ) 甲1発明の「静電チャック18」は、その「上面」に「半導体ウエハWを静電力で吸着保持する」ものであり、「基板載置台17」は、その「上面」に「静電チャック18」が設けられるものであるから、甲1発明の「静電チャック18」及び「基板載置台17」は、本件発明1の「保持部」と「冷却部」を有する「保持部材」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「 対象物を保持する保持面を備える保持部と、
前記保持部に対し前記保持面側とは反対側に配置され、前記対象物を冷却する冷媒を流す流路を備える冷却部と、
を有する保持部材」
[相違点]
[相違点1]
「対象物」について、本件発明1は、「外周が円形状または略円形状」であるのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
[相違点2]
「保持部」について、本件発明1は、「前記保持面側から前記保持部材を見たときに」、「当該保持部の外周が略円形状に形成されており」、「前記保持部の外周の一部に、前記保持部の外周により形成される仮想円よりも径方向の内側に形成される部分であって、前記対象物の周方向の位置合わせを行うための位置合わせ部」を備えるものであって、「保持部材」は「前記位置合わせ部と前記流路とが重なるように配置されている」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
イ 判断
(ア) 検討
事案に鑑みて、相違点2について検討する。
甲1発明の「静電チャック18」は、相違点2に係る構成のうち、そもそも「前記対象物の周方向の位置合わせを行うための位置合わせ部」を備えるものではない。
そうすると、「静電チャック18」が上記「位置合わせ部」を備えないのであるから、本件発明1の「保持部材」に相当する、甲1発明の「静電チャック18」及び「基板載置台17」において、さらに「前記位置合わせ部と前記流路とが重なるように配置されている」ように構成しようとする動機付けはない。
また、甲2~甲6に記載された事項は、上記第4の2~6のとおりであるところ、いずれの記載事項も、相違点2の構成を開示するものではない。
したがって、甲1発明に、甲2~甲6に記載された事項を組み合わせる動機付けはないし、たとえ組み合わせることができたとしても、本件発明1の構成に至ることはなく、他に相違点2に係る構成が周知技術であったということもできないから、甲1発明において、相違点2の構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
そして、本件発明1は、相違点2の構成を採用することによって、本件明細書の段落【0007】に記載されているように、位置合わせ部の直下、すなわち、位置合わせ部と重なるように冷却部の流路を配置することにより、「保持部の位置合わせ部において、冷却部の流路を流れる冷媒により対象物の抜熱が促進されるので、対象物の冷却性能を上げることができる。したがって、対象物が加熱されたときに、対象物において位置合わせ部に対応する部分が、他の部分と比べて温度が高い部分(すなわち、ホットスポット)となることを抑制できる。ゆえに、対象物が加熱されたときでも、対象物の全体の均熱性を確保できる。」という顕著な効果を奏するものである。
以上によれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲6に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ) 異議申立人の主張について
これに対し、異議申立人は、甲1発明の「静電チャック18」のような部材(保持部)の外周の一部に、「所謂「オリフラ」等と称される位置合わせ部を設けること」は、本件特許の出願時における周知技術であり、甲1発明に当該周知技術を適用し、静電チャック18の外周の一部にオリフラを設けた場合には、「オリフラの直下には、当然に上記の冷媒室29が重なるように配置される」ことになる、すなわち、上記相違点2に係る構成が、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張する(特許異議申立書13頁11行~同頁20行)。
しかしながら、仮に異議申立人の主張するように、「位置合わせ部」を設けることが本件特許の出願時において周知技術であったとしても、上記(ア)のとおり、甲1発明は、そもそも「前記対象物の周方向の位置合わせを行うための位置合わせ部」を備えるものではなく、備えなければならない必然性もない。
また、異議申立人は、甲1発明に周知技術を適用し、静電チャック18の外周の一部にオリフラを設けた場合には、「オリフラの直下には、当然に上記の冷媒室29が重なるように配置される」ことになると主張するが、甲1発明において、仮にオリフラ(位置合わせ部)を設けたとしても、必ずしも冷媒室29(流路)と重なるように配置される構成となるかは不明であり、そのような構成とすることの動機付けがないことも上記(ア)のとおりである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(2) 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明1を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)アの[相違点2]を有するところ、本件発明1が上記(1)イのとおり、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲6に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明5及び6も甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲2~甲6に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 甲6を主引用例とする進歩性欠如
(1) 本件発明1について
上記1(1)イ(ア)のとおり、甲6には、本件発明1に係る上記[相違点]の[相違点2]の構成は開示されていないし、甲1~甲5をみても、当該構成は開示されていない。
したがって、本件発明1は、甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明5及び6について
上記(1)のとおり、本件発明1が、甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、上記1(2)と同様、本件発明5及び6も、甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1~甲5に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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