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特許異議申立

2025-701086

保持装置

審判番号
2025-701086
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-129159
登録番号
7682232
請求日
2025年11月19日
審決日
2026年02月16日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本特殊陶業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人暁合同特許事務所
  • 【異議申立人】野村 修
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 今井 聖和
分類
P1651.113-Y (H10P) / P1651.121-Y (H10P) / P1651.537-Y (H10P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項
データ出所
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事件の表示

特許第7682232号発明「保持装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7682232号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7682232号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和5年8月8日に出願され、令和7年5月15日にその特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年11月19日に特許異議申立人 野村修(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。(申立人により提出された特許異議申立書を以下「申立書」という。) 第2 本件発明 特許第7682232号の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、主成分としてセラミックスを含有する板状部材と、前記板状部材の内部に配置され、導電材料を主成分として含有しつつ前記セラミックスを副成分として含有する電極層とを有する保持基板を備える保持装置であって、 前記板状部材は、前記電極層の前記第1表面側に配置され、前記主成分の含有率が99質量%以上である第1誘電層と、前記電極層の前記第2表面側に配置され、前記主成分の含有率が99質量%以上である第2誘電層とを含み、 前記電極層の前記第1表面側における表面のフラクタル次元Dが1.18以上である保持装置。 【請求項2】 厚み方向に沿った前記電極層の切断面のうち、前記電極層の中心側に設定された観察範囲に対する前記セラミックスの面積比率が30%以下である請求項1に記載の保持装置。 【請求項3】 厚み方向に沿った前記電極層の切断面において、前記セラミックスが、前記第1誘電層と前記第2誘電層とを繋ぐような形で存在していない請求項1又は請求項2に記載の保持装置。 【請求項4】 前記板状部材を平面視した状態において、前記第1表面に対する前記電極層の面積比率が80%以上である請求項1又は請求項2に記載の保持装置。」 第3 申立理由の概要 申立人は、次の甲第1号証、甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」、「甲2」という。)を証拠方法とし、以下の申立理由1~3により、本件特許を取り消すべきものである旨申し立てた。 甲1: 特開2020-4748号公報 甲2: 特開2013-77702号公報 1 申立理由1(新規性欠如) 本件発明1~4は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~4に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性欠如) 本件発明1~4は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~4に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 3 申立理由3(明確性要件違反) 本件発明1、2、4は、特許法第36条第6項第2号を満たしていないから、本件の請求項1、2、4に係る特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。 第4 申立理由の検討 1 甲1発明、甲2発明 (1) 甲1発明 ア 甲1の記載 甲1には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために、当審において付加した。) 「【発明を実施するための形態】 【0015】 A.実施形態: A-1.静電チャック100の構成: 図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。 【0016】 静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス部材10およびベース部材20を備える。セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面(以下、「セラミックス側接合面S2」という)とベース部材20の上面(以下、「ベース側接合面S3」という)とが上記配列方向に対向するように配置されている。静電チャック100は、さらに、セラミックス部材10のセラミックス側接合面S2とベース部材20のベース側接合面S3との間に配置された接合部30を備える。上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、セラミックス側接合面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、ベース側接合面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。 【0017】 セラミックス部材10は、例えば円形平面の板状部材であり、セラミックスにより形成されている。セラミックス部材10の直径は、例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス部材10の厚さは、例えば1mm~10mm程度である。セラミックス部材10の形成材料について後で詳説する。 【0018】 セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等の高融点の金属材料)により形成された一対のチャック電極40が設けられている。一対のチャック電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス部材10の上面(以下、「吸着面S1」という)に吸着固定される。吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。 【0019】 また、セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が設けられている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによってセラミックス部材10が温められ、セラミックス部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。ヒータ電極50は、例えば、セラミックス部材10の吸着面S1をできるだけ満遍なく温めるため、Z方向視で略同心円状に形成されている。 ・・・(中略)・・・ 【0027】 A-3.各部材の形成材料: 図5は、静電チャック100におけるチャック電極40の周辺部分の特定断面(XZ断面)を示す模式図であり、図6は、静電チャック100におけるヒータ電極50の周辺部分の特定断面(XZ断面)を示す模式図である。図5では、セラミックス部材10における上側(Z軸正方向側)のセラミックス部分11と下側(Z軸負方向側)のセラミックス部分11との間に、チャック電極40が介在しており、図6では、セラミックス部材10における上側のセラミックス部分11と下側のセラミックス部分11との間に、ヒータ電極50が介在している。 【0028】 セラミックス部材10は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)の純度が99.8%以上である。チャック電極40とヒータ電極50とは、それぞれ、上述した導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料であるアルミナを含んでいる。なお、チャック電極40に含まれる導電性材料と、ヒータ電極50に含まれる導電性材料とは、互いに同種の材料でもよいし、互いに異なる種類の材料であるとしてもよい。なお、セラミックス部材10におけるアルミナの純度(例えばwt%)は、例えば、XRD分析(X-Ray DifAnalysisraction Analysis)やXRF分析(X-Ray Fluorescence Analysis)を行う公知の装置を用いて、セラミックス部材10の表面に対する定性分析を行うことによって特定することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0030】 ここで、チャック電極40におけるアルミナの含有率は、上記特定断面において、チャック電極40に相当する部分に含まれる全材料(少なくとも導電性材料とアルミナとを含む)に対するアルミナの含有割合(面積%)である。なお、チャック電極40におけるアルミナの含有率の特定方法について、図5を用いて説明する。まずは、チャック電極40に相当する部分を決定する。すなわち、特定断面において、チャック電極40とセラミックス部材10におけるセラミックス部分11との境界が明確でないことがある。そこで、図5の上段に示すように、特定断面(XZ断面)で、チャック電極40を構成する導電性材料部分(白部分)のうち、最も上(Z軸正方向)側の端から下方向(Z軸負方向)に第1の所定距離D1(例えば2μm)だけ移動した点を通過し、かつ、上下方向に垂直な線を、第1の仮想直線M1とする。また、チャック電極40を構成する導電性材料部分のうち、最も下側の端から上方向に第1の所定距離D1だけ移動した点を通過し、かつ、上下方向に垂直な線を、第2の仮想直線M2とする。そして、特定断面(XZ断面)において、第1の仮想直線M1と第2の仮想直線M2とによって挟まれる領域を、チャック電極40に相当する部分40Aに決定する。次に、決定されたチャック電極40に相当する部分40Aに対して二値化処理を行う。図5の下段には、チャック電極40に相当する部分40Aを二値化処理して生成されたチャック電極40の二値化画像40Bが示されている。 チャック電極40の二値化画像40Bのうち、白部分が導電性材料部分であり、黒部分がアルミナ部分である。チャック電極40の二値化画像40Bの全体の面積(白部分と黒部分との合計面積)に対する黒部分の面積の割合が、チャック電極40におけるアルミナの含有率である。 【0031】 また、ヒータ電極50におけるアルミナの含有率は、上記特定断面において、ヒータ電極50に相当する部分に含まれる全材料(少なくとも導電性材料とアルミナとを含む)に対するアルミナの含有割合(面積%)である。なお、ヒータ電極50におけるアルミナの含有率の特定方法について、図6を用いて説明する。まずは、ヒータ電極50に相当する部分を決定する。すなわち、特定断面において、ヒータ電極50とセラミックス部材10におけるセラミックス部分11との境界が明確でないことがある。そこで、図6の上段に示すように、特定断面(XZ断面)で、ヒータ電極50を構成する導電性材料部分(白部分)のうち、最も上(Z軸正方向)側の端から下方向(Z軸負方向)に第2の所定距離D2(例えば2μm)だけ移動した点を通過し、かつ、上下方向に垂直な線を、第3の仮想直線M3とする。また、ヒータ電極50を構成する導電性材料部分のうち、最も下側の端から上方向に第2の所定距離D2だけ移動した点を通過し、かつ、上下方向に垂直な線を、第4の仮想直線M4とする。そして、特定断面(XZ断面)において、第3の仮想直線M3と第4の仮想直線M4とによって挟まれる領域を、ヒータ電極50に相当する部分50Aに決定する。次に、決定されたヒータ電極50に相当する部分50Aに対して二値化処理を行う。図6の下段には、ヒータ電極50に相当する部分50Aを二値化処理して生 成されたヒータ電極50の二値化画像50Bが示されている。ヒータ電極50の二値化画像50Bのうち、白部分が導電性材料部分であり、黒部分がアルミナ部分である。ヒータ電極50の二値化画像50Bの全体の面積(白部分と黒部分との合計面積)に対する黒部分の面積の割合が、ヒータ電極50におけるアルミナの含有率である。なお、第2の所定距離D2は、第1の所定距離D1と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0034】 A-4.静電チャック100の製造方法: 次に、本実施形態における静電チャック100の製造方法の一例を説明する。はじめに、セラミックス部材10とベース部材20とを準備する。セラミックス部材10は、例えば以下の方法により作製される。すなわち、アルミナ原料とブチラール樹脂と可塑剤と溶媒とからなるスラリーをキャスティングし、乾燥させてシート化したセラミックスグリーンシートを複数作製する。このとき、スラリーにおけるアルミナ原料の含有率を99.8%以上とすることにより、アルミナの純度が99.8%以上であるセラミックスグリーンシートを作製する。また、チャック電極40やヒータ電極50やその他の配線として、タングステンまたはモリブデンと樹脂と溶剤とからなる金属ペーストを作製する。このとき、チャック電極40用およびヒータ電極50用の金属ペーストには、アルミナ原料を含めつつ、ヒータ電極50用の金属ペーストにおけるアルミナ原料の含有率を、チャック電極40用の金属ペーストにおけるアルミナ原料の含有率に比べて小さくする。そして、セラミックスグリーンシートに対して、チャック電極40用およびヒータ電極50用の金属ペーストの塗布や、スルーホールの形成や配線用の金属ペーストの充填等の必要な加工を行う。次に、それらのセラミックスグリーンシートを積層し、脱脂後、焼成を行うことによってセラミックス部材10を作製する。なお、ベース部材20は、公知の製造方法によって製造可能であるため、ここでは製造方法の詳細な説明を省略する。 ・・・(中略)・・・ 【0036】 A-5.本実施形態の効果: 以上説明したように、本実施形態における静電チャック100では、セラミックス材料(本実施形態ではアルミナ)の純度が99.8%以上のセラミックス部材10にヒータ電極50やチャック電極40が設けられている。このような静電チャック100では、ヒータ電極50やチャック電極40に、導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料(アルミナ)が含まれており、これにより、セラミックス部材10におけるセラミックス部分11とヒータ電極50やチャック電極40との密着性を向上させることができる。」 「【図2】 [図:0001433138000001.jpg] 」 「【図5】 [図:0001433138000002.jpg] 」 「【図6】 [図:0001433138000003.jpg] 」 イ 甲1発明 上記アによると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。) 「ウェハWを静電引力により吸着して保持する装置である静電チャック100(段落0016)であって、 静電チャック100は、セラミックス部材10およびベース部材20を備え、セラミックス部材10とベース部材20とは、セラミックス部材10の下面(以下、「セラミックス側接合面S2」という)とベース部材20の上面(以下、「ベース側接合面S3」という)とが対向するように配置され(段落0016)、 セラミックス部材10は、円形平面の板状部材であり、セラミックスにより形成され(段落0017)、 セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等の高融点の金属材料)により形成された一対のチャック電極40が設けられ、ウェハWがセラミックス部材10の上面(以下、「吸着面S1」という)に吸着固定され(段落0018)、 セラミックス部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が設けられ(段落0019)、 セラミックス部材10は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)の純度(wt%)が99.8%以上であり、チャック電極40とヒータ電極50とは、それぞれ、上述した導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料であるアルミナを含み(段落0028)、 セラミックス部材10は 、セラミックスグリーンシートに対して、チャック電極40用およびヒータ電極50用の金属ペーストの塗布や、スルーホールの形成や配線用の金属ペーストの充填等の必要な加工を行い、次に、それらのセラミックスグリーンシートを積層し、脱脂後、焼成を行うことによって作製される(段落0034)、 静電チャック100。」 (2) 甲2発明 ア 甲2の記載 甲2には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために、当審において付加した。) 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、上記実情に鑑みて、基材との良好な密着性を示しつつ、高精細な配線パターンを形成することができる貼り付け用銅箔を提供することを目的とする。 また、本発明は、該貼り付け用銅箔を用いて得られる積層体およびプリント配線基板を提供することも目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、鋭意検討した結果、貼り付け用銅箔の基材に貼り付ける側の表面が所定の構造を有することによって、上記課題を解決できることを見出した。 即ち、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。 【0008】 (1) 基材に貼り付けるために用いられる貼り付け用銅箔であって、 前記基材に貼り付ける側の表面の表面粗さ(Rz)が0.500μm以下であり、 正方形のボックスの一辺の大きさを1nm~10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、前記銅箔の断面における前記基材に貼り付ける側の表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020~1.400である、貼り付け用銅箔。 ・・・(中略)・・・ 【0017】 銅箔の断面における、銅箔の基材に貼り付ける側の表面の輪郭線(断面輪郭線)はフラクタル状で、正方形のボックスの一辺の大きさを1nm~10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020~1.400である。フラクタル次元が上記範囲内であれば、銅箔が基材に対して優れた密着性を示す。なかでも、基材に対する密着性がより優れる点で、フラクタル次元は1.050~1.400が好ましく、1.100~1.300がより好ましく、1.150~1.250がさらに好ましい。 なお、フラクタル次元が1.020未満および1.400超の場合、銅箔の基材に対する密着性に劣る。 ・・・(中略)・・・ 【0084】 (基材) 銅箔が貼り付けられる基材の種類は特に制限されず、公知の基材を使用することができる。例えば、樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材、紙基材などが挙げられる。なかでも、銅箔との密着性に優れ、プリント配線基板への応用の点から、樹脂基材を使用することが好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0119】 【表1】 [図:0001433138000004.jpg] 」 イ 甲2発明 上記アの段落0006、0008、0084の記載によると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。) 「プリント配線基板において、樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材、紙基材などの基材との良好な密着性を示しつつ、高精細な配線パターンを形成することができる貼り付け用銅箔(段落0006、0084)であって、 前記基材に貼り付ける側の表面の表面粗さ(Rz)が0.500μm以下であり、 正方形のボックスの一辺の大きさを1nm~10nmに設定したボックスカウント法を適用して算出した、前記銅箔の断面における前記基材に貼り付ける側の表面の輪郭線のフラクタル次元が1.020~1.400である(段落0008)、貼り付け用銅箔。」 2 申立理由1(新規性欠如) 本件発明1と甲1発明を対比する。 (1) 保持装置について 本件特許に係る明細書の段落0002には、本件発明1の保持装置について「半導体を製造する際にウェハ(半導体ウェハ)を保持する保持装置」と記載されている。 そして、甲1発明の静電チャック100は、「ウェハWを静電引力により吸着して保持する装置」であるから、保持装置といえる点で本件発明1と共通する。 (2) 保持基板について ア 板状部材について 甲1発明が備えるセラミックス部材10は、「円形平面の板状部材であり、セラミックスにより形成され」るものであるから、「主成分としてセラミックスを含有する板状部材」といえる。 そして、セラミックス部材10の上面である「吸着面S1」は、ウェハWが吸着固定される面であるから、「対象物を保持する第1表面」といえ、また、セラミックス部材10の下面である「セラミックス側接合面S2」は、「第1表面の反対側に配される第2表面」といえる。 そうすると、甲1発明のセラミックス部材10は、本件発明1の「対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、主成分としてセラミックスを含有する板状部材」に相当する。 イ 電極層について 甲1発明のセラミック部材10は、「セラミックスグリーンシートに対して、チャック電極40用およびヒータ電極50用の金属ペーストの塗布や、スルーホールの形成や配線用の金属ペーストの充填等の必要な加工を行い、次に、それらのセラミックスグリーンシートを積層し、脱脂後、焼成を行うことによって作製される」から、甲1発明のチャック電極40とヒータ電極50は、それぞれセラミックスグリーンシート間に層状に作製される「電極層」といえる。 そして、甲1発明のチャック電極40とヒータ電極50は、セラミックス部材10の内部に設けられるから、「板状部材の内部に配置され」る、「電極層」といえる。 また、甲1発明のチャック電極40とヒータ電極50は、「上述した導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料であるアルミナを含」むから、「導電材料を主成分として含有しつつ前記セラミックスを副成分として含有する」といえる。 そうすると、甲1発明のチャック電極40とヒータ電極50は、本件発明1の「前記板状部材の内部に配置され、導電材料を主成分として含有しつつ前記セラミックスを副成分として含有する電極層」に相当する。 ウ 以上によると、甲1発明のセラミックス部材10、及び、チャック電極40とヒータ電極50は、「対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、主成分としてセラミックスを含有する板状部材と、前記板状部材の内部に配置され、導電材料を主成分として含有しつつ前記セラミックスを副成分として含有する電極層とを有する保持基板」に相当する。 (3) 第1誘電層、第2誘電層 甲1発明のセラミック部材10は、「セラミックスグリーンシートを積層し、脱脂後、焼成を行うことによって作製される」から、甲1発明のセラミックス部材10のチャック電極40より上の吸着面S1側の部分、及び、セラミックス部材10のヒータ電極50より下のセラミックス側接合面S2側の部分は、それぞれ、積層されるセラミックスグリーンシートに対応する層状のものといえ、また、セラミック部材が誘電体として機能することは技術常識である。 そうすると、甲1発明のセラミックス部材10のチャック電極40より上の吸着面S1側の部分は、「前記電極層の前記第1表面側に配置され」る「第1誘電層」といえ、また、セラミックス部材10のヒータ電極50より下のセラミックス側接合面S2側の部分は、「前記電極層の前記第2表面側に配置され」る「第2誘電層」といえる。 甲1発明のセラミック部材10は、チャック電極40より上の吸着面S1側の部分、及び、ヒータ電極50より下のセラミックス側接合面S2側の部分を含めて、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)の純度(wt%)が99.8%以上のセラミックスにより形成されているから、いずれの部分についても「主成分の含有率が99質量%以上である」といえる。 したがって、甲1発明のセラミックス部材10は、「前記電極層の前記第1表面側に配置され、前記主成分の含有率が99質量%以上である第1誘電層と、前記電極層の前記第2表面側に配置され、前記主成分の含有率が99質量%以上である第2誘電層とを含み」といえる点で本件発明1の板状部材と一致する。 (4) 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致し、相違する。 ア 一致点 対象物を保持する第1表面、及び前記第1表面の反対側に配される第2表面を含み、主成分としてセラミックスを含有する板状部材と、前記板状部材の内部に配置され、導電材料を主成分として含有しつつ前記セラミックスを副成分として含有する電極層とを有する保持基板を備える保持装置であって、 前記板状部材は、前記電極層の前記第1表面側に配置され、前記主成分の含有率が99質量%以上である第1誘電層と、前記電極層の前記第2表面側に配置され、前記主成分の含有率が99質量%以上である第2誘電層とを含む、 保持装置。 イ 相違点 本件発明1が「前記電極層の前記第1表面側における表面のフラクタル次元Dが1.18以上である」ことを特定しているのに対し、甲1発明がこのような特定をしていない点。(以下「相違点」という。) (5) 小括 以上のとおり、本件発明1と甲1発明とは相違点で相違するから、本件発明1は甲1発明とはいえず、本件発明1は、特許法第29条第1項第3項に該当しない。 また、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~4についても同様である。 したがって、申立理由1(新規性欠如)は理由がない。 (6) 申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、申立書12~14ページの「(4-1-3)ア.(エ)」において、甲1の図5、図6について、チャック電極40とヒータ電極50のそれぞれの断面において、吸着面S1側における表面を含む矩形の領域を下記の図5A、図6Aに示されるように設定し、フラクタル次元Dを本件特許明細書の段落0074等に記載されている手順により算出し、チャック電極40についてのフラクタル次元Dが1.647であり、ヒータ電極50についてのフラクタル次元Dが1.528であるから、甲1発明は「前記電極層の前記第1表面側における表面のフラクタル次元Dが1.18以上である」点で、本件発明1と一致すると主張する。 [図:0001433138000005.jpg] [図:0001433138000006.jpg] イ しかしながら、一般に、特許出願の願書に添付される図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であって、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、当該図面に表示された寸法については、必ずしも厳密な正確さが要求されるものではないから、特許掲載公報である甲1の図面についても、表示された寸法が厳密とはいえない。 また、甲1の段落0027、0030、0031の記載によると、同図5、6は、それぞれチャック電極40とヒータ電極50におけるアルミナの含有率の特定方法を模式図を用いて説明するものであって、チャック電極40やヒータ電極50の表面の形状や、表面の形状から算出されるパラメータを説明するものでもない。 そうすると、甲1の図5、6の記載のみから、甲1発明のチャック電極40とヒータ電極50のそれぞれの断面における、吸着面S1側における表面を含む領域のフラクタル次元Dといった具体的な定量的事項を認定することは妥当でない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 3 申立理由2(進歩性欠如) (1) 相違点についての判断 本件発明1と甲1発明とを対比した場合の一致点、相違点は上記2(4)のとおりである。 そして、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の構成を採用することは、甲1及び甲2にも、記載も示唆もされていないから、相違点は当業者が容易に想到し得たものではない。 そうすると、本件発明1は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 また、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~4についても同様である。 したがって、申立理由2(進歩性欠如)は理由がない。 (2) 申立人の主張について ア 申立人は申立書17~18ページの「(4-2-3)ア.」で、甲2に「他の部材に張り付けられる金属の表面のフラクタル次元を1.18以上の値(1.244)とし、これにより当該部材に対する密着性を向上させること」が記載されていることに鑑みれば、本件発明1は甲1発明と、甲2に記載された発明とに基づいて当業者が容易になし得たものであって、「金属の表面と他の部材との間の密着性を向上させるために、金属の表面のフラクタル次元を調整し所定値としておく」という、本件発明1の技術思想のうち本質的な部分は、甲2に記載された公知事項であることに鑑みれば、甲1発明における電極層の表面のフラクタル次元を、密着性を確保し得る最適な値となるように適宜調整したはずであり、その値を「1.18以上」とすることも容易に想到したはずであると主張する。 イ しかしながら、甲1の段落0036の記載によると、「セラミックス部材10におけるセラミックス部分11とヒータ電極50やチャック電極40との密着性を向上させる」との課題は、甲1発明において、ヒータ電極50やチャック電極40に、導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料(アルミナ)を含ませることによって解決されたものであるから、甲1発明において、さらに他の手段によって「セラミックス部材10におけるセラミックス部分11とヒータ電極50やチャック電極40との密着性を向上させる」ように構成する必要性はない。 加えて、甲1発明のチャック電極40とヒータ電極50とは、導電性材料に加えて、セラミックス部材10を構成するセラミックス材料であるアルミナを含むものであるから単に「金属」とはいえず、また、セラミックスグリーンシートに対して金属ペーストを塗布し、焼成して作製されるチャック電極40とヒータ電極50の、セラミックス部材10に対する甲1発明の密着態様と、甲2発明の、プリント配線基板において高精細な配線パターンを形成するための貼り付け用銅箔の、樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材、紙基材などの基材に対する密着態様とは共通しない。 そうすると、甲1発明では、そもそも、さらに他の手段によって「セラミックス部材10におけるセラミックス部分11とヒータ電極50やチャック電極40との密着性を向上させる」ように構成する必要性はないし、甲1発明において、そのチャック電極40とヒータ電極50をセラミックス部材10に密着させる技術として、前提となる密着態様が異なる甲2発明を採用する動機付けがあるともいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 4 申立理由3(明確性要件違反) (1) 申立人の主張 申立人は、申立書19ページの「(4-3)」において、本件発明1は、厚み方向に沿った電極層の切断面において、セラミックスが第2誘電層と第2誘電層とを繋ぐ形で存在しているような構成を含むものと理解されるところ、そのような構成においては、断面において、電極層の第1表面側における表面と、電極層の第2表面側における表面と、が連続して繋がることとなるため、これら2つの表面の境界を特定することができなくなり、その結果、本件発明1の「前記電極層の前記第1表面側における表面」の範囲が特定することができず、当該表面のフラクタル次元Dを算出することができないから、本件発明1は明確でないと主張する。 (2) 当審の判断 本件発明1が、申立人が主張するように、厚み方向に沿った電極層の切断面において、セラミックスが第2誘電層と第2誘電層とを繋ぐ形で存在しているような構成を含むものとしても、断面において、電極層の第1表面側における表面を特定することができなくなる理由はないから、本件発明1の「前記電極層の前記第1表面側における表面」の範囲も特定できる。 また、仮に、「前記電極層の前記第1表面側における表面」の範囲が特定することができないのであれば、そのような保持装置は、本件発明1の技術的範囲に含まれないことは明らかである。 そうすると、本件発明1は明確であり、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2、4についても同様に明確である。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701086

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