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特許異議申立

2025-700437

包装材料

審判番号
2025-700437
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-570880
登録番号
7574475
請求日
2025年04月17日
審決日
2025年07月29日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東洋紡株式会社
  • 【異議申立人】山下 瑛樹
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 秋山 誠
  • 審判官 長谷川 一郎
分類
P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7574475号発明「包装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7574475号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7574475号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)12月20日(優先権主張 令和3年12月28日)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月18日にその特許権の設定登録がされ、令和6年10月28日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年4月17日に特許異議申立人山下瑛樹(以下「申立人」という。)により、その請求項1~8に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする延伸フィルムである基材フィルムにガスバリア層が積層されてなる積層基材フィルムを少なくとも1枚と、ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層とを有する包装材料であって、前記ガスバリア層がポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれか一つからなる被覆層であり、前記包装材料からヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を剥離した積層基材フィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から150℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であり、前記包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下であることを特徴とする包装材料。 【請求項2】 前記ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層はポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂を主たる構成成分とするポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。 【請求項3】 前記延伸フィルムである基材フィルムを2枚以上用いることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。 【請求項4】 基材フィルムを構成するポリオレフィン樹脂のうち、植物由来のポリエチレン樹脂を1重量%以上25重量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の包装材料。 【請求項5】 ボイルまたはレトルト用に使用されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の包装材料。 【請求項6】 電子レンジ加熱用に使用されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の包装材料。 【請求項7】 請求項1~4のいずれかに記載の包装材料を用いて構成される包装袋。 【請求項8】 請求項1~4のいずれかに記載の包装材料を使用して被包装物が包装されてなる包装体。」 第3 申立理由の概要 1 申立人による申立理由 申立人は、本件特許異議申立書に添付して、以下に示す甲第1号証~甲第6号証(申立人が提出した甲○号証は以下「甲○」という。)を提出し、本件発明1~8に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 (1)申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、以下の甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性) 本件特許の請求項1、2、5、7及び8に係る発明は、以下の甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、請求項3に係る発明は、以下の甲1に記載された発明及び甲2、4に記載された事項に基いて、請求項4に係る発明は、以下の甲1に記載された発明及び甲2、5に記載された事項に基いて、請求項6に係る発明は、以下の甲1に記載された発明及び甲2、6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(甲2を主引用例とする進歩性) 本件特許の請求項1、2、7及び8に係る発明は、以下の甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、請求項3に係る発明は、以下の甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基いて、請求項4に係る発明は、以下の甲2に記載された発明及び甲3、5に記載された事項に基いて、請求項5に係る発明は、以下の甲2に記載された発明及び甲1、3に記載された事項に基いて、請求項6に係る発明は、以下の甲2に記載された発明及び甲3、6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法一覧 申立人が提出した証拠は以下のとおりである。 甲1:特開2000-233478号公報 甲2:国際公開第2020/137792号 甲3:特開2000-52501号公報 甲4:国際公開第2021/020400号 甲5:特開2021-169194号公報 甲6:特開2015-120550号公報 第4 当審の判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 1 甲号証の記載及び引用発明 (1) 甲1に記載された事項・発明 ア 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与し、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。 「【請求項1】フィルムの機械軸方向および該機械軸方向と直交する方向における、150℃の熱収縮率がいずれも5%以下である二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、該フィルムの少なくとも片面上に積層された高分子ガスバリア層とからなることを特徴とする積層フィルム。」 「【0043】本発明の積層フィルムにおいて、前記OPPフィルムに積層される高分子ガスバリア層は、公知のものが特に制限なく使用できる。例えば、水溶性高分子層、・・・等が挙げられる。」 「【0046】上記水溶性高分子は、常温で水に完全に溶解もしくは微分散可能な高分子であり、具体的に例示すると、ポリビニルアルコールおよびその誘導体;・・・等が挙げられる。」 「【0066】以上、高分子ガスバリア層が複合ポリマー層である場合について、その形成方法を説明したが、水溶性高分子層の形成方法も、公知の方法によって制限なく実施される。一般には、前記水溶性高分子を前記溶媒に溶解せしめたコート液を調製し、これを前記コート方法に準じてコートする方法が一般的である。」 「【0120】(7)酸素バリア性 JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(mocon社製;OX-TRAN100)を用いて測定した。測定条件は、25℃、0%RH、80%RHおよび90%RHの雰囲気下で行った。」 「【0130】実施例1 表1に示す樹脂Aを、Tダイ押出機を用いて280℃で加熱溶融下シート状に押出し、チルロール上で冷却固化した後、加熱ロール延伸機によりシート温度151℃で4.4倍に縦延伸し、続いてテンター横延伸機により158℃で10.5倍に横延伸した後、雰囲気温度175℃で10秒間熱処理しながら、TD方向に8%の弛緩処理を行い、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。・・・次いで、テトラエトキシシラン30重量部、エタノール20重量部、2N塩酸1重量部、水4重量部を混合し、室温で1時間攪拌した。次いで、γ-グリシドキシトリメトキシシラン3重量部、ソアノール20L(日本合成化学社製エチレン-ビニルアルコール水/IPA溶液)40重量部、N,N-ジメチルベンジルアミン0.15重量部を加えて攪拌し、コート液Aとした。上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、上記コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、表3に示した条件で乾燥硬化した。・・・」 「【0133】 【表1】 [図:0001425811000001.jpg] 」 「【0136】実施例4 表1に示す樹脂Aを、Tダイ押出機を用いて280℃で加熱溶融下シート状に押出し、チルロール上で冷却固化した後、加熱ロール延伸機によりシート温度148℃で4.4倍に縦延伸し、続いてテンター横延伸機により163℃で9.5倍に横延伸した後、雰囲気温度168℃で10秒間熱処理しながら、TD方向に8%の弛緩処理を行い、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。その後、フィルムの片面にフレームプラズマ処理(処理強度;6.8kcal/m2)を行い、20μmの表面処理基材フィルムを得た。・・・次いで、得られた表面処理基材フィルムの表面処理面に、実施例1で得られたコート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、120℃で2分間乾燥硬化した。得られた積層フィルムの評価結果を表5に示した。」 「【0138】実施例7 実施例4で得られた積層フィルムの複合ポリマー層面に、バーコーターを用いてアンカーコート剤(東洋モートン社製TM329/CAT-8B 100重量部/100重量部を、酢酸エチル溶剤にて、不揮発分が10重量%となるよう調整)を、乾燥重量で2g/m2となるようにコートした後、80℃で乾燥させた。さらに、上記アンカーコート層上に40μmの無延伸LLDPEフィルムをドライラミネートして、積層フィルムを得た。評価結果を表5に示した。 【0139】実施例8 40μmの無延伸LLDPEフィルムの代わりに、25μmのシーラントCPP(融点140℃、エチレン含量3モル%、1-ブテン含量1モル%のプロピレン-エチレン-1-ブテン三元ランダム共重合体フィルム)を使用すること以外は、実施例7と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表5に示した。」 「【0143】 【表5】 [図:0001425811000002.jpg] 」 「【0176】 【発明の効果】本発明の積層フィルムは、特定の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムの少なくとも片面に、特定の組成物がゾル-ゲル法により重縮合して得られた複合ポリマー層を積層することにより、酸素バリア性や酸素バリア性の湿度依存性が良好であることのみならず、コート加工やシーラントラミネート後の熱シール加工後の外観・仕上がりに関しても優れた積層フィルムである。従って、本発明の積層フィルムは、ガスバリアフィルムとして好適であるだけでなく、広く食品包装用フィルムとして有用である。」 イ 甲1に記載されていると認められる事項 (ア) 上記アより、フィルムの機械軸方向および該機械軸方向と直交する方向における、150℃の熱収縮率がいずれも5%以下である二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、該フィルムの少なくとも片面上に積層された高分子ガスバリア層とからなる積層フィルムにおける、高分子ガスバリア層が、水溶性高分子層の場合、水溶性高分子を溶媒に溶解せしめたコート液を調製し、これをコート方法に準じてコートして形成するから、実施例4の「コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし」たコート層は、高分子ガスバリア層といえる。 (イ) 上記アの表5より、実施例8の積層フィルムをJIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(mocon社製;OX-TRAN100)を用いて、測定条件として、25℃、80%RHの雰囲気下で測定した酸素バリア性は、3cc/m2-day-atm(すなわち、1cc/m2-day-atmは、9.87ml/m2・d・Mpaだから、29.61ml/m2・d・Mpa)である。 ウ 甲1に記載された発明 上記ア及びイより、特に【請求項1】、【0130】、【0133】の表1、【0136】、【0138】、【0139】の実施例8、【0143】の表5に着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「プロピレン単独重合体である樹脂Aを、Tダイ押出機を用いて280℃で加熱溶融下シート状に押出し、チルロール上で冷却固化した後、加熱ロール延伸機によりシート温度148℃で4.4倍に縦延伸し、続いてテンター横延伸機により163℃で9.5倍に横延伸した後、雰囲気温度168℃で10秒間熱処理しながら、TD方向に8%の弛緩処理を行い、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得て、当該フィルムの片面にフレームプラズマ処理を行い、20μmの表面処理基材フィルムを得て、得られた表面処理基材フィルムの表面処理面に、テトラエトキシシラン30重量部、エタノール20重量部、2N塩酸1重量部、水4重量部を混合し、室温で1時間攪拌し、次いで、γ-グリシドキシトリメトキシシラン3重量部、ソアノール20L(日本合成化学社製エチレン-ビニルアルコール水/IPA溶液)40重量部、N,N-ジメチルベンジルアミン0.15重量部を加えて攪拌して得られたコート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートして高分子ガスバリア層を形成し、乾燥硬化して得られたフィルムの複合ポリマー層面に、バーコーターを用いてアンカーコート剤をコートした後、乾燥させ、さらに、上記アンカーコート層上に25μmのシーラントCPPをドライラミネートして得られた、 食品包装用フィルムとして有用である積層フィルムであって、 25℃、80%RHの雰囲気下で測定した酸素バリア性は、29.61ml/m2・d・Mpaである、食品包装用フィルムとして有用である積層フィルム。」 (2) 甲2に記載された事項 甲2には、次の事項が記載されている。 「[0016] 以下、さらに詳しく本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムについて説明する。 本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる。なお、「主成分」とは、ポリプロピレン樹脂がポリプロピレン樹脂組成物中に占める割合が90質量%以上であることを意味し、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。」 「[0026] ・・・本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述したポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる未延伸シートを作製し、二軸延伸することによって得ることが好ましい。・・・」 「[0045]・・・本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向である。・・・ [0046](TMA加熱伸び) 本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの熱機械分析装置で測定される長手方向の150℃以下での最大伸び量の上限は1.5mmであり、好ましくは1.45mmであり、より好ましくは1.4mmであり、さらに好ましくは1.35mmであり、特に好ましくは1.3mmである。上記範囲であると、ロールでの加熱加工や印刷時の変形が小さく、加工性が向上することがある。長手方向の150℃以下での最大伸び量の下限は、好ましくは0.5mmであり、より好ましくは0.6mmであり、さらに好ましくは0.7mmであり、特に好ましくは0.75mであり、最も好ましくは0.8mmである。上記範囲であると、現実的な製造が容易となることがある。 幅方向の150℃以下での最大伸び量の上限は0.1mmであり、好ましくは0.09mmであり、より好ましくは0.08mmであり、さらに好ましくは0.075mmであり、特に好ましくは0.07mmである。幅方向の150℃以下での最大伸び量の下限は、好ましくは0.005mmであり、より好ましくは0.01mmであり、さらに好ましくは0.015mmであり、特に好ましくは0.018mmであり、最も好ましくは0.2mmである。上記範囲であると、上記範囲であると、変形が小さく外観が向上することがある。」 「[0068]・・・ 食品を包装する袋を形成するには、製袋済みの袋に内容物を充填し、加熱してフィルムを溶融して融着して密封する。また、食品を充填しながら製袋する際にも同様に行う場合が多い。通常は基材フィルムにポリエチレンやポリプロピレンなどからなるシーラントフィルムを積層し、このシーラントフィルム面同士を融着させる。」 「[0070]・・・ また、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステルからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルをシーラントフィルムとして貼り合せて、ヒートシール性を付与したラミネート体としても使用することができる。さらにガスバリア性や耐熱性を高めたいときはアルミ箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として設けることができる。・・・」 「[0071](産業上の利用可能性) 本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは上記の様な従来にはない優れた特性を有するため、包装袋に好ましく使用することができ、・・・」 「[0078](7)熱機械分析(TMA) 島津製作所製熱機械分析装置TMA-60を用い、幅4mmのフィルムサンプルを、チャック間10mmでセットし、測定荷重40gで、30℃から180℃まで20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定した。」 イ 甲2に記載されていると認められる事項 甲2の[0078]において熱機械分析装置TMA-60を用い、幅4mmのフィルムサンプルを、チャック間10mmでセットし、測定荷重40g、すなわち、荷重1gfは約0.0098Nであるから、約0.392Nで、30℃から180℃まで20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定したことが示されている。 また、熱機械分析装置(TMA)で測定される150℃以下での最大伸び量は、長手方向(MD方向)で0.5~1.5mmであり、幅方向(TD方向)で0.005~0.1mmである([0006]、[0046]参照)から、「チャック間10mm」に対して、その最大伸び率は、長手方向(MD方向)で5~15%、幅方向(TD方向)で0.05~1.0%であることが示されている。 ウ 甲2記載事項 上記ア及びイを総合すると、甲2には、「熱機械分析装置(TMA)により二軸配向ポリプロピレンフィルムの試料幅4mm、引張荷重約0.392N、30℃から180℃まで20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定し、測定される150℃以下での伸び率が、長手方向(MD方向)で5~15%、幅方向(TD方向)で0.05~1.0%であること。」(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。 エ 甲2に記載された発明 上記ア及びイを総合すると、甲2には、「二軸配向ポリプロピレンフィルムである基材フィルムにポリエチレンやポリプロピレンなどからなるシーラントフィルムを積層し、 前記二軸配向ポリプロピレンフィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.392N、30℃から180℃まで、20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定し、測定される150℃以下での伸び率が、長手方向(MD方向)で5~15%、幅方向(TD方向)で0.05~1.0%である、 包装袋に使用することができるラミネート体。」(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 (3) 甲3に記載された事項 ア 甲3の記載 甲3には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は食品包装用フィルムなどの包装用フィルムとして好適な酸素ガスバリヤー性を有する積層体およびその製造方法に関する。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、炭素数が4以下のα-オレフィン単位を3~19モル%含有する水溶性PVA系重合体からなる層(A)およびポリオレフィン、ポリエステルあるいはポリアミドからなる層(B)を有することを特徴とする積層体を見出し、本発明を完成させるに至った。・・・」 「【0012】本発明の積層体は、下記に示す特定の方法で測定した酸素透過量を有するものが好ましい。酸素透過量の測定は、本発明のフィルム用コーティング剤を製膜して得られたフィルムを空気中で熱処理・・・し、20℃、85%RHで調湿した後、フィルムの酸素透過量を測定し、それをフィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量である。また、既に積層体の形態になっている場合には、該積層体の酸素透過量を測定し、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量である。・・・フィルム用コーティング剤からなるフィルムの酸素ガスバリヤーに比較して、基材フィルムの酸素ガスバリヤー性は非常に低いことから、積層体の酸素ガスバリヤー性はフィルム用コーティング剤からなるフィルムの酸素ガスバリヤー性により実質的に決まる。・・・以下、特に断りのない限り、酸素透過量とは、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量を意味する。上記の方法で測定された酸素透過量は15cc/m2・day・atm以下であるような酸素ガスバリヤー性を有するものが好ましく、好ましくは10cc/m2・day・atm以下であり、さらに好ましくは5cc/m2・day・atm以下である。・・・」 「【0026】実施例1~20、比較例1 イソプロピルアルコールを7%(但し、実施例2、3、18、19はイソプロピルアルコールの含有量は0%[つまり水のみ]、実施例4、5、6、7、17はイソプロピルアルコールの含有量が20%)含有する水中に、表1に示すPVAを攪拌しながら徐々に投入し、均一に分散させた後、約95℃に加熱して完全に溶解させた。濾過をした後、冷却して、濃度20%(但し、実施例16および17の場合には濃度5%)のPVA水溶液を調製した。グラビアコーターを用いて、表2に示す厚み15μmの基材フィルムの表面に、上記で得られたPVA溶液を50℃でコーティングし、120℃で乾燥した後、表2に示す温度で120秒間の熱処理を空気中で行った。PVAコーティング層の厚みは2.0μmであった。PVAコーティングフィルム(基材とPVAとの積層体)の酸素透過量を表2に示す。」 「【0029】 【表2】 [図:0001425811000003.jpg] 」 イ 甲3に記載されていると認められる事項 甲3の【0029】の表2には、実施例1~17、20において、基材フィルムとして「OPP」(二軸延伸ポリプロピレン)が示されており、その酸素透過量は、実施例1が最も多い5.1cc/m2・day・atm、すなわち、1cc/m2・day・atmは9.87ml/m2・day・MPaであるから、約50ml/m2・d・MPaであり、実施例14が最も少ない1cc/m2・day・atm、すなわち、9.87ml/m2・d・MPaである。 ウ 甲3記載事項 上記ア及びイを総合すると、甲3には、「二軸延伸ポリプロピレンフィルムである基材フィルムに、PVA(ポリビニルアルコール樹脂)をコーティングすることによって、20℃、85%RHで調湿したフィルムの酸素透過量を測定し、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量は約50ml/m2・d・MPa以下である。」(以下「甲3記載事項」という。)ことが記載されている。 2 申立理由1及び申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性)について (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1発明の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」、「高分子ガスバリア層」は、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする延伸フィルムである基材フィルム」、「ガスバリア層」に相当する。 甲1発明の「食品包装用フィルムとして有用である積層フィルム」は、本件発明1の「包装材料」に相当する。 甲1発明の「コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、乾燥硬化して得られたフィルム」は、コート液Aがコート層厚みが3μmとなるように積層されているから、本件発明1の「積層されてなる積層基材フィルム」に相当する。 また、甲1発明の「コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、乾燥硬化して得られたフィルム」は1枚といえるから、本件発明1の「積層基材フィルムを少なくとも1枚」備える構成を有するといえる。 甲1発明の「テトラエトキシシラン30重量部、エタノール20重量部、2N塩酸1重量部、水4重量部を混合し、室温で1時間攪拌し、次いで、γ-グリシドキシトリメトキシシラン3重量部、ソアノール20L(日本合成化学社製エチレン-ビニルアルコール水/IPA溶液)40重量部、N,N-ジメチルベンジルアミン0.15重量部を加えて攪拌して得られたコート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートして高分子ガスバリア層」は、樹脂を含むコート層であるから、本件発明1の「ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれか一つからなる被覆層」と「樹脂からなる被覆層」の限りで一致する。 甲1発明の「25μmのシーラントCPPをドライラミネート」された層は、ヒートシール性ポリオレフィン樹脂を含むから、本件発明1の「ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層とを有する」構成を備えるといえる。 以上のことから、本件発明1と、甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点1] 「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする延伸フィルムである基材フィルムにガスバリア層が積層されてなる積層基材フィルムを少なくとも1枚と、ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層とを有する包装材料であって、 前記ガスバリア層が樹脂からなる被覆層である、包装材料。」 [相違点1-1] 本件発明1は「包装材料からヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を剥離した積層基材フィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から150℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であり、前記包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」に対し、甲1発明は、「25℃、80%RHの雰囲気下で測定した酸素バリア性は、29.61ml/m2・d・Mpaである、食品包装用フィルムとして有用である積層フィルム」であり、加熱伸び率が不明である点。 イ 判断 相違点1-1について検討する。 甲1には、積層フィルムから25μmのシーラントCPPを剥離したフィルムについて、加熱伸び率及び積層フィルムの23℃×65%RH環境下における酸素透過度は記載されていない。 甲2記載事項においても、「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする延伸フィルムである基材フィルムにガスバリア層が積層されてなる積層基材フィルムを少なくとも1枚と、ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層とを有する包装材料」から「ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を剥離した積層基材フィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から150℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であ」る構成はなく、また、当該事項が周知技術であるともいえない。 また、甲1発明において、「ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を剥離した積層基材フィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から150℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であ」る構成とする動機付けはない。 そして、本件発明1において、当該構成を備えることにより、「130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であることが必要である。これにより、包装体として使用する際に必要な耐熱性を確保することができる。例えば、130℃以上の高温でヒートシールする際の仕上がり性もが良好となり、シール強度も安定することや、95℃のボイルはもちろんのこと、130℃のハイレトルト等の過酷な湿熱処理を行った際の寸法変化や外観変化が少なく仕上がりのよい包装体とすることができる。」(【0096】)という効果を奏するものである。 そうすると、甲1発明において、甲2記載事項を参酌しても前記相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 さらに、甲2~6をみても、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2記載事項や甲2~6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第14、25~27ページ等において、次のとおり主張する。 (ア) 主張1 甲1の実施例7,8で得られた積層フィルムの評価として、表5には、25℃、80%RHの雰囲気下での酸素バリア性(酸素透過率)は、いずれも3cc/m2・day・atmと記載されており、単位換算すると、30ml/m2・d・MPaである。これらのことから、酸素透過係数の温度依存性、湿度依存性(申立人が提出した参考資料1(ガスバリア講座<基礎講座>の7.酸素透過係数の温度依存性、三菱ケミカル株式会社)や参考資料2(ガスバリア講座<基礎講座>の8.酸素透過係数の温度依存性、三菱ケミカル株式会社)参照)を考慮しても、23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下であることが記載されているといえる。 (イ) 主張2 甲1発明は、本件特許発明1の発明特定事項C(「前記包装材料からヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を剥離した積層基材フィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から150℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であり」)を明示的に特定しない点で相違する。そこで、かかる相違点について検討してみるに、本件特許明細書の段落【0024】~【0031】には、「熱機械分析装置により測定した基材フィルムの130℃での加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも10%以下」とする条件として、以下の条件が記載されている。 ・メルトフローレート(MFR):0.5~20g/l0分 ・加熱溶融温度:200~280℃ ・MD方向の延伸温度:120~165℃(上限はフィルム融点-7℃) ・MD方向の延伸倍率:3.0~8.0倍 ・TD方向の延伸温度:155~175℃(好ましい下限は150℃、好ましい上限は160℃) ・TD方向の延伸倍率:4.0~20.0倍(好ましい上限は、15倍) ・延伸後の熱固定温度(熱弛緩処理):168℃以上 ・リラックス率(弛緩率):2%以上 これらの条件は、甲1の段落【0024】、【0035】、【0038】、【0039】、【0041】に記載された条件と範囲が重複し、甲1の実施例7,8(実施例4)における二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る際の条件が、本件特許明細書に記載された上記条件を満たしている。 そして、本件特許明細書の段落【0097】には、「本発明において、包装材料から剥離した基材フィルムの加熱伸び率を前記の範囲内とするためには、130℃での加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも10%以下である基材フィルムを使用することが好ましい。」と記載されている。 してみれば、甲1において、少なくとも実施例7,8は、本件特許発明1の発明特定事項Cを満たしている蓋然性が高い。そうであれば、本件特許発明1は、甲1発明と同一の発明である。 また、本件特許明細書の段落【0027】には、「本発明では、熱機械分析装置により測定した前記基材フィルムの130℃での加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも10%以下であることが好ましい。これにより、後述するガスバリア層の加工工程やラミネート加工工程において、フィルムに張力がかかった状態での熱負荷による基材変形を低減できる。」と記載されており、同【0097】には、「本発明において、包装材料から剥離した基材フィルムの加熱伸び率を前記の範囲内とするためには、130℃での加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも10%以下である基材フィルムを使用することが好ましい。」と記載されている。 そして、甲2には、「熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から180℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも10%以下(又は6%以下)」とすることで、「フィルムに張力がかかった状態での熱負荷による基材変形を低減できる」ことが記載されているといえる。 これらのことから、甲1発明において、本件特許発明1の発明特定事項Cとすることは、甲2を適宜参酌することにより、当業者が容易に想到することができる。よって、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ) 主張1についての検討 上記主張1について検討するに、甲1の実施例7、8の積層フィルムの評価として、酸素バリア性(酸素透過率)は、25℃、80%RHの雰囲気下でのものであり、本件発明1の「23℃×65%RH環境下における」ものとは異なる。申立人が提出した参考資料1や参考資料2を参酌しても、参考資料1、2に記載の高分子材料は、甲1に記載の積層フィルムの素材と同一とはいえず、甲1には、「包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」構成が記載されているとはいえない。 以上のとおり、申立人の上記主張1は採用できない。 (エ) 主張2についての検討 上記主張2について検討するに、本件特許明細書の段落【0024】~【0031】に記載の各パラメータは、その数値範囲に包含される「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする」「基材フィルム」であれば、その材質がどのようなものであっても、「熱機械分析装置により」「測定した130℃における加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも6%以下」となることを示しているとはいえない。すなわち、基材フィルムについて、【0022】~【0024】に記載されるように様々なものが例示されており、「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする」基材フィルムであっても、その材質が異なれば、物性値が異なり同様の加工条件で加工しても「熱機械分析装置により」「測定した基材フィルムの130℃における加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも6%以下」となるは必ずしも特定できないといえる。 そうすると、甲1の【0024】、【0035】、【0038】、【0039】、【0041】に記載された条件と範囲が重複し、甲1の実施例7、8(実施例4)における二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る際の条件が、本件特許明細書に記載された上記条件を満たしているとしても、甲1発明の基材フィルムは、本件特許明細書に記載の実施例における基材フィルムと同一ではなく、「熱機械分析装置により」「測定した基材フィルムの130℃における加熱伸び率が、MD方向、TD方向のいずれも6%以下であ」るとはいえない。 しかも、例えば本件特許明細書の【0158】の表5Aの「比較例1」を参酌すると、基材フィルムの基材の素材である「OPP2」は、【0128】、【0126】の表4、【0124】の表2、【0123】の表1によると、ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とするものである。そして、【0128】に記載の各パラメータは、【0024】~【0026】に記載の各パラメータの数値範囲に包含される値であるが、【0158】の表5Aの比較例1の基材の伸び率(%)のMDは、「11.0」であり、6%以下ではないことが示されている。 さらに、甲2には、「熱機械分析装置(TMA)により二軸配向ポリプロピレンフィルムの試料幅4mm、引張荷重約0.392N、30℃から180℃まで20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定し、測定される150℃以下での伸び率が、長手方向(MD方向)で5~15%、幅方向(TD方向)で0.05~1.0%であること。」という甲2記載事項が示されているが、甲1発明の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」と甲2に記載の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム」は同一の素材ではなく、甲1発明において甲2記載事項を参酌して、前記相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 以上のとおり、申立人の上記主張2は採用できない。 エ 小括 以上によれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2記載事項や甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2、5について 本件発明2、5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものである。 そして、本件発明1が、甲1発明及び甲2~5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、5も、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2記載事項や甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明3、4、6~8について 本件発明3、4、6~8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものである。 そして、本件発明1が、甲1発明及び甲2~5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3、4、6~8も、甲1発明及び甲2記載事項や甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 申立理由1及び申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性)についてのまとめ したがって、本件発明1、2、5は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2記載事項や甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明3、4、6~8は、甲1発明及び甲2記載事項や甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立理由3(甲2を主引用例とする進歩性)について (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲2発明の「二軸配向ポリプロピレンフィルム」は、ポリプロピレンフィルムがポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分であり、延伸フィルムといえるから、本件発明1の「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする延伸フィルム」に相当する。 甲2発明の「基材フィルム」は、本件発明1の「基材フィルム」に相当する。 甲2発明の「ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるシーラントフィルム」は、本件発明1の「ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層」に相当する。 甲2発明の「包装袋に使用することができるラミネート体」は、本件発明1の「包装材料」に相当する。 以上のことから、本件発明1と、甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点2] 「ポリオレフィン系樹脂を主たる構成成分とする延伸フィルムである基材フィルムと、ヒートシール性ポリオレフィン樹脂層とを有する包装材料。」 [相違点2-1] 包装材料について、本件発明1が「基材フィルムにガスバリア層が積層されてなる積層基材フィルムを少なくとも1枚」有し、「前記ガスバリア層がポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれか一つからなる被覆層であ」り、「包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」のに対し、甲2発明は、そのような特定がされていない点。 [相違点2-2] 本件発明1が「前記包装材料からヒートシール性ポリオレフィン樹脂層を剥離した積層基材フィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.39N、昇温速度20℃/分で30℃から150℃の測定温度範囲で測定した130℃における加熱伸び率がMD方向、TD方向のいずれも6%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「二軸配向ポリプロピレンフィルムが、熱機械分析装置により試料幅4mm、引張荷重0.392N、30℃から180℃まで、20℃/分で昇温し、150℃までの最大伸び量を測定し、測定される150℃以下での伸び率が、長手方向(MD方向)で5~15%、幅方向(TD方向)で0.05~1.0%である」点。 イ 判断 相違点2-1について検討する。 甲2には、[0070]に「・・・ガスバリア性・・・を高めたいときはアルミ箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として設けることができる。・・・」と記載されている。 甲3には、「二軸延伸ポリプロピレンフィルムである基材フィルムに、PVA(ポリビニルアルコール樹脂)をコーティングすることによって、20℃、85%RHで調湿したフィルムの酸素透過量を測定し、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量は約50ml/m2・d・MPa以下である」という甲3記載事項が示されている。 しかしながら、甲2には、ガスバリア性を高めたいときに、二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを設けることが記載されているにすぎず、甲2発明において「基材フィルムにガスバリア層が積層されてなる積層基材フィルムを少なくとも1枚」有し、「前記ガスバリア層がポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれか一つからなる被覆層であ」り、「包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」構成とする動機付けはない。また、当該技術的事項が周知技術であるとも認められない。 さらに、甲3記載事項は、基材フィルムにPVAをコーティングすること、また、20℃、85%RHで調湿したフィルムの酸素透過量を測定し、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量は約50ml/m2・d・MPa以下であることが示されているにすぎない。 そうすると、甲2発明において、甲3記載事項を参酌しても前記相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 さらに、甲3~6をみても、上記相違点2-1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲3記載事項や甲3~6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第28~29ページ等において、次のとおり主張する。 (ア)甲2発明は、本件特許発明1の発明特定事項D(「前記包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下であることを特徴とする包装材料。」)を明示的に特定しない点で相違する。そこで、かかる相違点について検討してみるに、甲第3号証には、「二軸延伸ポリプロピレンフィルムである基材フィルムに、PVA(ポリビニルアルコール樹脂)をコーティングすることによって、23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下のガスバリア性を発現できる」ということが記載されている。 してみれば、甲2発明において、本件特許発明1の発明特定事項Dとすることは、甲第3号証を適宜参酌することにより、当業者が容易に想到することができる。よって、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)上記(ア)について検討するに、甲2には、[0005]に「本発明の課題は、・・・フィルムの剛性と150℃もの高温での耐熱性に優れる二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。詳しくは、包装袋としたときの袋形状を保持しやすく、しかもヒートシールしたときにシール部及びその周りにシワが少ない二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することにある。」と記載され、ガスバリア性について、[0070]に「・・・ガスバリア性・・・を高めたいときはアルミ箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として設けることができる。・・・」と記載されているにすぎない。 そうすると、甲2発明において、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを基材フィルムに積層して、「包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」構成とする動機付けはないこと、甲3記載事項は、基材フィルムにPVAをコーティングすること、また、20℃、85%RHで調湿したフィルムの酸素透過量を測定し、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量は約50ml/m2・d・MPa以下であることが示されているにすぎず、甲2発明において、アルミ箔やポリ塩化ビニリデン、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールからなる未延伸シート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを二軸配向ポリプロピレンフィルムとシーラントフィルムの間に中間層として設け、「包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえないことは、上記イで検討したとおりである。 さらに甲3記載事項は、基材フィルムにPVAをコーティングすること、また、20℃、85%RHで調湿したフィルムの酸素透過量を測定し、フィルム用コーティング剤の厚みを20μmに換算した酸素透過量は約50ml/m2・d・MPa以下であることが示されているが、申立人が提出した参考資料1や参考資料2を参酌しても、参考資料1、2に記載の高分子材料は、甲3に記載のものと必ずしも同一とはいえず、甲3には、「包装材料の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が60ml/m2・d・MPa以下である」構成が記載されているとはいえない。 以上のとおり、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上によれば、本件発明1は、甲2発明及び甲3記載事項や甲4~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2~5、7、8について 本件発明2~5、7、8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものである。 そして、本件発明1が、甲2発明及び甲3記載事項や甲4~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~5、7、8も、甲2発明及び甲3記載事項や甲4~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由3(甲2を主引用例とする進歩性)についてのまとめ したがって、本件発明1~5、7、8は、甲2発明及び甲3記載事項や甲4~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~8についての特許は、上記のいずれの特許異議の申立ての理由及び証拠によっても取り消すことはできない。 また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700437

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