特許異議申立
2024-700382
セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
- 審判番号
- 2024-700382
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-114188
- 登録番号
- 7367810
- 請求日
- 2024年04月22日
- 審決日
- 2025年07月08日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】山口 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1652.121-YAA(B32B) / P1652.113-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7367810号発明「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7367810号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7367810号の請求項1、2、4、6及び7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7367810号の請求項1~7に係る特許についての出願(特願2022-114188号)は、平成29年6月1日に出願した特願2017-109168号の一部を令和4年7月15日に新たな特許出願としたものであって、令和5年10月16日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月24日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年 4月22日 :特許異議申立人山口幸子(以下「申立人」という。)による請求項1、2、4、6及び7に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和6年 9月 9日付け:取消理由通知書
令和6年10月31日 :特許権者による意見書の提出
令和7年 1月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 4月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 5月22日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 請求項1~7に係る訂正について
(1)本件訂正の内容
本件訂正のうち、請求項1~7に係る訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
ア 訂正事項1
(ア)訂正事項1-1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記離型層が1分子内の官能基数が4つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、」を、
「前記離型層が1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4、6及び7も同様に訂正する)。
(イ)訂正事項1-2
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下である、
ことを特徴とするセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」を、
「前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力が2.0mN/mm2以下である、
ことを特徴とするセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのガラスビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール 6.5質量部
(積水化学工業社製 エスレック(登録商標)BM-S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minでに剥離した。剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4、6及び7も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
本件訂正前の請求項3に記載された
「離型剤が、側鎖にシリコーン成分とアクリレート基を有するアクリル系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」を、
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が4つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
離型剤が、側鎖にシリコーン成分とアクリレート基を有するアクリル系化合物であることを特徴とする、セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
本件訂正前の請求項5に記載された
「ポリエステルフィルムが、少なくとも2層以上からなる積層フィルムであって、前記積層フィルムの離型層が積層された側の表面層Aには、実質的に粒子が含有されておらず、
積層フィルムの表面層Aとは反対側の表面層Bが粒子を含有し、前記粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、合計の粒子の含有量が表面層Bの総質量に対して5000~15000ppmであることを特徴とする請求項4に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」を、
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が4つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
離型層の最大山高さ(P)が100nm以下であり、
ポリエステルフィルムが、少なくとも2層以上からなる積層フィルムであって、前記積層フィルムの離型層が積層された側の表面層Aには、実質的に粒子が含有されておらず、
積層フィルムの表面層Aとは反対側の表面層Bが粒子を含有し、前記粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、合計の粒子の含有量が表面層Bの総質量に対して5000~15000ppmであることを特徴とする、セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」に訂正する。
(2) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。
(3) 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
ア 訂正事項1
(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1の「離型層」に含まれる「ウレタンアクリレート」の「1分子内の官能基数」が「4つ以上」であったものを、「9つ以上」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1-1の、「離型層」に含まれる「ウレタンアクリレート」の「1分子内の官能基数」については、本件特許の明細書の【0031】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1-1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1の「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」について、「下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力が2.0mN/mm2以下である」こととし、「下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価」については、「(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのガラスビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール 6.5質量部
(積水化学工業社製 エスレック(登録商標)BM-S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minでに剥離した。剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1-2の、「セラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力」については、本件特許の明細書の【0066】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1-2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の記載が、本件訂正前の請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項1の記載を引用しないものとし独立請求項とする訂正であり、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項5の記載が、本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項4の記載を引用するものであったものを、請求項1の記載を引用する請求項4の記載を引用しないものとし独立請求項とする訂正であり、訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正のうち訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5~第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
2 明細書に係る訂正について
(1)本件訂正の内容
本件訂正のうち、明細書に係る訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
ア 訂正事項4
(ア)訂正事項4-1
本件訂正前の【0078】に記載された
「実施例2~6」を、
「実施例2~4、参考例1~2」に訂正する。
(イ)訂正事項4-2
本件訂正前の【0079】の2箇所に記載された
「実施例1~6」を、
「実施例1~4、参考例1~2」に訂正する。
(ウ)訂正事項4-3
本件訂正前の【0083】に記載された
「実施例13」を、
「参考例3」に訂正する。
(エ)訂正事項4-4
本件訂正前の【0084】に記載された
「実施例14」を、
「参考例4」に訂正する。
(オ)訂正事項4-5
本件訂正前の【0085】に記載された
「実施例15」を、
「参考例5」に訂正する。
(カ)訂正事項4-6
本件訂正前の【0093】の【表1】に記載された
「実施例5」、「実施例6」、「実施例13」、「実施例14」及び「実施例15」を、それぞれ、
「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例4」及び「参考例5」に訂正する。
イ 訂正事項5
本件訂正前の【0009】に記載された
「1.ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が4つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなることを特徴とするセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」を、
「1.ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力が2.0mN/mm2以下である、
ことを特徴とするセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのガラスビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール 6.5質量部
(積水化学工業社製 エスレック(登録商標)BM-S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minでに剥離した。剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。」に訂正する。
ウ 訂正事項6
本件訂正前の【0009】に記載された
「3. 離型剤が、側鎖にシリコーン成分とアクリレート基を有するアクリル系化合物であることを特徴とする上記第1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」を、
「3. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が4つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
離型剤が、側鎖にシリコーン成分とアクリレート基を有するアクリル系化合物であることを特徴とする、セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」に訂正する。
エ 訂正事項7
本件訂正前の【0009】に記載された
「5. 積層フィルムの表面層Aとは反対側の表面層Bが粒子を含有し、前記粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、合計の粒子の含有量が表面層Bの総質量に対して5000~15000ppmであることを特徴とする上記第4に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」を、
「5. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が4つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
離型層の最大山高さ(P)が100nm以下であり、
ポリエステルフィルムが、少なくとも2層以上からなる積層フィルムであって、前記積層フィルムの離型層が積層された側の表面層Aには、実質的に粒子が含有されておらず、
積層フィルムの表面層Aとは反対側の表面層Bが粒子を含有し、前記粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、合計の粒子の含有量が表面層Bの総質量に対して5000~15000ppmであることを特徴とする、セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」に訂正する。
(2)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項4~7は、一群の請求項〔1~7〕に関係する訂正である。
(3)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否、明細書の訂正に係る請求項について
ア 訂正事項4について
訂正事項1に係る本件訂正後の請求項1の記載と明細書との記載との関係について検討すると、【0093】【表1】の記載により、実施例5及び6は、請求項1の「前記離型層が1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてな」ることに該当せず、実施例13~15は、請求項1の「セラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力が2.0mN/mm2以下である」ことに該当しないことから、訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正後の請求項1の記載と明細書との記載との整合を図るために、本件訂正前の「実施例5」、「実施例6」、「実施例13」、「実施例14」及び「実施例15」を、それぞれ「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例4」及び「参考例5」と訂正するものであり、訂正事項5は明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項5~7について
訂正事項5~7は、本件訂正前の【0009】の記載を、訂正事項1~3に係る訂正後の請求項1、3、5の記載との整合を図るために、訂正後の請求項1、3、5の記載のとおりに訂正するものであり、訂正事項5~7は明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5~7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5~7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正のうち訂正事項4~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5~第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~7に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、本件発明1、2、4、6及び7(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1、2、4、6及び7を「本件発明」と総称することもある。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下であり、
下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力が2.0mN/mm2以下である、
ことを特徴とするセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのガラスビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール 6.5質量部
(積水化学工業社製 エスレック(登録商標)BM-S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minで剥離した。剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。
【請求項2】
離型剤が、ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」
「【請求項4】
離型層の最大山高さ(P)が100nm以下である、
請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」
「【請求項6】
請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法であって、成型されたセラミックグリーンシートが0.2μm~1.0μmの厚みを有することを特徴とするセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用することを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2、4、6及び7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由(進歩性)
本件の請求項1、2、4、6及び7に係る発明は、以下の甲1に記載の発明、甲3記載事項、甲5記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:国際公開第2013/145864号(申立人が提出した甲第1号証)
甲3:特開2010-17932号公報(同甲第3号証)
甲5:特開2019-59050号公報(同甲第5号証)
甲4:特開2014-177094号公報(同甲第4号証、周知技術を示す文献)
引用文献1:特開2016-150978号公報(申立人が申立書の23頁に記載した文献)
引用文献2:特開2017-65017号公報(当審が引用する引用文献、周知技術を示す文献)
(引用文献1及び2を以下「引1」及び「引2」という。)
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した取消理由(進歩性)によっては、本件発明1、2、4、6及び7に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)甲号証の記載、引用発明及び周知技術について
ア 甲1
(ア)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)
「[0001] 本発明は、セラミックグリーンシートを製造する工程で使用する剥離フィルムに関するものである。」
「[0004] 近年、電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板の小型化および多層化が進み、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。
・・・」
「[0020] 以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム(以下、単に「剥離フィルム」という場合がある。)1は、基材11と、基材11の第1の面(図1では上面)の上に積層された剥離剤層12とを備えて構成される。
[0021] 本実施形態に係る剥離フィルム1において、セラミックスラリーが成形される面である剥離剤層12の表面(図1では上面;基材11とは反対側の面)における算術平均粗さ(Ra)は8nm以下であり、かつ最大突起高さ(Rp)は50nm以下である。本明細書における算術平均粗さ(Ra)および最大突起高さ(Rp)は、JIS B0601-1994に準拠して測定(試験例では、ミツトヨ社製の表面粗さ測定機SV3000S4(触針式)を使用して測定)した値とする。
[0022] 剥離剤層12の表面の算術平均粗さ(Ra)および最大突起高さ(Rp)を上記のような範囲とすることで、剥離剤層12の表面を十分に高平滑なものにすることができ、例えば厚さ1μm未満の薄膜セラミックグリーンシートを当該剥離剤層12の表面に成形したときにも、薄膜セラミックグリーンシートにはピンホールや厚みむら等の欠陥が発生しにくく、良好なシート成形性が示される。この優れた効果は、特許文献1のように剥離剤層12の最大高さ(Rmax)を規定するだけでは得られない。」
「[0036] 剥離剤層12は、所望の剥離性を有するとともに、上記基材11の第1の面に積層されたときに、当該剥離剤層12の表面における算術平均粗さ(Ra)および最大突起高さ(Rp)を前述した範囲にすることができるものであり、活性エネルギー線硬化性成分およびシリコーン系成分を含む剥離剤組成物(以下「剥離剤組成物C」という。)を硬化させることによって得られるものである。かかる剥離剤組成物Cによれば、主として活性エネルギー線硬化性成分の硬化物によって、基材11の第1の面に存在する突起相互間の凹部分を効果的に埋めて、得られる剥離剤層12の表面を高平滑化することができ、また、シリコーン系成分またはその硬化物によって、剥離剤層12の表面に適度な剥離性を付与することができる。従来より、特定の樹脂フィルム、特にポリエステル系フィルムにおいては、表面の易滑性や機械的強度を付与するために、充填材の添加が必須であり、そのため、充填材に起因した表面の粗大突起の面積占有率を低く制限することが困難であった。これに対し、上記のように活性エネルギー線硬化性成分の硬化物によって剥離剤層12の表面を高平滑化することにより、剥離剤層12の表面の粗大突起の面積占有率を低く制限することが容易となる。
[0037] 活性エネルギー線硬化性成分は、本発明の効果を妨げることなく、活性エネルギー線の照射によって硬化する成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。この活性エネルギー線硬化性成分は、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。剥離剤層12の主成分が(メタ)アクリル酸エステル系成分の硬化物であると、当該剥離剤層12において、セラミックスラリーのはじきが発生し難くなる。
[0038] (メタ)アクリル酸エステルとしては、多官能の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に、三官能以上の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらには、三官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。三官能以上であることで、剥離剤組成物Cの硬化性が優れたものとなり、また、得られる剥離剤層12の表面の剥離性がより優れたものとなる。
[0039] 多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0040] 多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエーテルアクリレート系オリゴマー、ポリブタジエンアクリレート系オリゴマー、シリコーンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。」
「[0047] シリコーン系成分は、本発明の効果を妨げることなく、剥離剤層12の表面に所望の剥離性を付与することができるものであれば特に制限されず、ポリオルガノシロキサン、好ましくは反応性官能基を有するポリオルガノシロキサン、特に好ましくは反応性官能基を有するポリジメチルシロキサンが使用される。・・・」
「[0064] 〔実施例1〕
基材として、表裏同粗度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ31μm)を用意した。・・・
[0065] 一方、活性エネルギー線硬化性成分であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村工業社製,A-DPH,固形分100質量%)99.0質量部と、シリコーン系成分であるポリエーテル変性アクリロイル基含有ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー社製,BYK-3500,固形分100質量%)1.0質量部と、光重合開始剤である2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製,IRGACURE907)5.0質量部とからなる剥離剤組成物Cを、イソプロピルアルコールおよびメチルエチルケトンの混合液(混合質量率3:1)にて希釈して、これを剥離剤溶液(固形分20質量%)とした。この剥離剤溶液を、バーコーターにより上記基材の一方の面(第1の面)に剥離剤層の硬化後の厚さが0.97μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた。その後、紫外線を照射(積算光量:250mJ/cm2)し、剥離剤組成物Cを硬化させて剥離剤層を形成し、これを剥離フィルムとした。・・・」
「[0088]
[表1]
[図:0001427933000001.jpg]
[0089] 表1から明らかなように、実施例で得られた剥離フィルムは、剥離剤層表面による欠陥も、基材裏面による欠陥もなく、また、セラミックグリーンシートの剥離性も優れていた。」
「請求の範囲
[請求項1] 基材と、前記基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムであって、
前記剥離剤層は、活性エネルギー線硬化性成分およびシリコーン系成分を含む剥離剤組成物の硬化物であり、
前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面における算術平均粗さ(Ra)が8nm以下であり、かつ最大突起高さ(Rp)が50nm以下である
ことを特徴とするセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。」
「[図1]
[図:0001427933000002.jpg]
」
(イ)引用発明
上記(ア)より、甲1には、特に[0064]~[0065]、[0088]~[0089]の実施例1として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである基材11の一方の面(第1の面)に剥離剤層12が積層された剥離フィルムであって、剥離剤層表面の算術平均粗さ(Ra)が3nmであり、前記剥離剤層12が活性エネルギー線硬化性成分であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村工業社製,A-DPH,固形分100質量%)99.0質量部と、シリコーン系成分であるポリエーテル変性アクリロイル基含有ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー社製,BYK-3500,固形分100質量%)1.0質量部と、光重合開始剤である2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製,IRGACURE907)5.0質量部とからなる剥離剤組成物Cを、イソプロピルアルコールおよびメチルエチルケトンの混合液(混合質量率3:1)にて希釈した剥離剤溶液(固形分20質量%)を塗布し硬化されてなる、
セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム1。」
イ 甲3
(ア)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型層を有する離型フィルムであって、
該離型フィルムが、ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含む水系塗布液を塗布した後、少なくとも1方向に延伸することにより得られるものであり、
該離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)が1~7nmである、
離型フィルム。」
「【0001】
本発明は離型フィルムに関する。特に、離型層表面が平滑であり、セラミックグリーンシートの作製に好適な離型フィルムに関する。」
「【0007】
本発明の目的は、上記従来の技術の問題点に鑑み、表面が平滑な離型層を有し、剥離性が良好な、薄層セラミックグリーンシートの作製に好適な離型フィルムを提供することにある。」
「【0037】
離型層表面に微小な凹凸が存在し、SRa1が、7nmを以下である場合、薄膜セラミックグリーンシート成型においてピンホール発生などが少なく好適である。また、SRa1は、小さい程好ましいが、フィルムの厚みむら、離型剤の塗布むら、測定時のフィルムのうねり等を考慮すると、1nmが下限である。」
(イ)甲3記載事項
上記(ア)より、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」)が記載されていると認める。
「離型層表面の三次元中心面平均表面粗さ(SRa1)が7nm以下であり、薄膜セラミックグリーンシート成型においてピンホール発生が少なくなり、表面が平滑な離型層を有する、離型フィルム。」
ウ 甲5
(ア)甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
「【0073】
(離型剤1の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、製品名:A-DPH、分子量:578、アクリロイル基数:6、固形分濃度:100重量%)94.9重量部、光ラジカル重合開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907、固形分濃度:100重量%)5重量部、表面張力調整剤(ビックケミージャパン社製、BYK-3550、シリコーン変性アクリル樹脂、固形分濃度:55重量%)0.2重量部を混合し、MEK/トルエン/IPA=1/1/1の溶媒で希釈して、20%の離型剤1を調製した。」
(イ)甲5記載事項
上記(ア)より、甲5には、以下の事項(以下「甲5記載事項」)が記載されていると認める。
「光ラジカル重合開始剤であるBASF社製のイルガキュア(登録商標)907の固形分濃度は100重量%である。」
エ 周知技術
(ア)甲4の記載
a 甲4の記載事項
「【0003】
グリーンシート製造用剥離フィルムは、一般に基材と剥離剤層とから構成される。グリーンシートは、このようなグリーンシート製造用剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダー樹脂とを有機溶媒に分散、溶解させたセラミックスラリーを塗工して乾燥することで製造される。また、製造されたグリーンシートは、グリーンシート製造用剥離フィルムから剥離して、セラミックコンデンサーの製造に用いられる。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<<グリーンシート製造用剥離フィルム>>
本発明のグリーンシート製造用剥離フィルムは、グリーンシートの製造に用いられるものである。そして、製造されたグリーンシートは、例えば、セラミックコンデンサー等の製造に用いられる。
・・・
【0022】
なお、本明細書において、グリーンシート製造用剥離フィルムを用いてグリーンシートを製造する場合には、グリーンシートは、例えば、剥離剤層13の外表面131上に溶解したセラミックスラリーを塗工することで形成される。」
「【0117】
[1]グリーンシート製造用剥離フィルムの作製
(実施例1)
まず、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:38μm、第1の面の算術平均粗さRa2:42nm、第1の面の最大突起高さRp2:619nm、第2の面の算術平均粗さRa3:42nm、第2の面の最大突起高さRp3:619nm]を用意した。
【0118】
次に、活性エネルギー線硬化型化合物としてのウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする紫外線硬化型化合物[荒川化学工業社製、商品名「ビームセット575CB」、固形分100質量%、質量平均分子量470、光重合開始剤含有]100質量部と、トルエンと、メチルエチルケトンとを混合して固形分20質量%の平滑化層形成用組成物を得た。
【0119】
得られた平滑化層形成用組成物を、マイヤーバー#4で、80℃で1分間乾燥させ、基材の第1の面に塗布し、塗布層を得た。
【0120】
次に、塗布層に、紫外線照射装置で、紫外線を照射(波長:365nm、照射量:200mJ/cm2)することにより、平滑化層(厚み1.3μm)を形成した。
【0121】
さらに、剥離剤としての付加反応型シリコーン系化合物と架橋剤の混合物[信越化学工業株式会社製、商品名「シリコーンKSー847H」、固形分30質量%]100質量部をトルエンで希釈し、これに白金触媒[信越化学工業株式会社製、商品名「PLー50T」]2質量部を添加し、混合することにより得られた固形分1.5質量%の剥離剤層形成用組成物を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるように前記平滑化層の基材と反対の面に均一に塗布した。その後、130℃で1分間乾燥させて剥離剤層を形成して、グリーンシート製造用剥離フィルムを作製した。」
b 引1の記載事項
「【0105】
(3)その他のメタ(アクリレート)化合物
EB3700(2官能ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート、重量平均分子量500;ダイセル・オルネクス社製EBECRYL3700)
575CB(6官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量1000;荒川化学工業社製ビームセット575CB)」
c 甲4に記載されていると認められる事項
上記a及びbより、甲4には、「その外表面に形成したグリーンシートを剥離するグリーンシート製造用剥離フィルムに備える塗布層が、紫外線硬化型化合物を含むものであり、紫外線硬化型化合物としては、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーである、荒川化学工業社製、商品名「ビームセット575CB」を用いること。」が記載されている。
(イ)引2の記載
a 引2の記載事項
「【0001】
本発明は転写箔に関し、より詳細には、転写性が良好であるとともに、被転写体表面に十分なハードコート性能および耐可塑剤性能を付与することができる転写箔に関する。
・・・
【0003】
転写箔は、基材上に転写可能な保護層などを含んでなる転写層を設けた構成を有するものであり、ICカードなどの被転写体の表面に、転写層を転写することにより、被転写体表面に、ハードコート性能を付与できるものである。・・・」
「【0018】
<転写箔>
本発明による転写箔を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による転写箔の断面模式図を示したものである。本発明による転写箔1は、図1に示すように、基材10と、基材10上に離型層20と、保護層30と、を少なくとも備えている。・・・」
「【0024】
<離型層>
次に、本発明による転写箔が備える離型層について説明する。基材上に設けられる離型層は、これらの層上に設けられる転写層を、転写箔から剥離して被転写体へ転写させるための層であり、活性光線硬化樹脂と、熱硬化樹脂と、を含んでなる。なお、転写層を転写箔から剥離する際、離型層は基材側に留まる。」
「【0026】
離型層を形成する活性光線硬化樹脂は、重合成分として、ウレタン(メタ)アクリレート、特には、多官能性のウレタン(メタ)アクリレートを含んでなることが好ましい。離型層が、多官能性のウレタン(メタ)アクリレートを含んでなることにより、耐溶剤性を向上させることができる。多官能ウレタン(メタ)アクリレートの官能基数は、5以上、15以下が好ましく、6以上、15以下がさらに好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、離型層の固形分総量に対し、10質量%以上、90質量%以下含有されていることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以上、85質量%以下である。なお、官能基とは、例えば、ビニル基などの不飽和二重結合を有する基が挙げられる。」
「【0040】
<保護層>
次に、保護層について説明する。保護層は、被転写体表面の保護を担うものであり、活性光線硬化樹脂を含んでなる。」
b 引2に記載されていると認められる事項
上記aより、引2には、「基材、離型層及び活性光線硬化樹脂を含む保護層を備える転写箔における離型層が、活性光線硬化樹脂を含むものであり、活性光線硬化樹脂としては、官能基数5以上15以下のウレタン(メタ)アクリレートを含んでなることが好ましいこと。」が記載されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)について
a 上記(ア)cにおける「グリーンシート製造用剥離フィルム」は、この「グリーンシート製造用剥離フィルム」に積層形成した「グリーンシート」が剥離する層といえる。
b 上記(イ)bにおける「保護層」は、「保護層などを含んでなる転写層を設けた構成を有するものであり、ICカードなどの被転写体の表面に、転写層を転写することにより、被転写体表面に、ハードコート性能を付与できる」(【0003】)もので、「転写層を転写箔から剥離する際、離型層は基材側に留まる」(【0024】)ものであり、「離型層」から剥離される層といえる。すなわち、「離型層」は、この「離型層」に積層形成した「保護層」が剥離する層といえる。
(エ)周知技術
上記(ア)~(ウ)より、以下の技術事項は周知の技術(以下「周知技術」という。)であると認める。
「積層形成した層が剥離する層が、活性光線硬化樹脂を含むものであり、活性光線硬化樹脂としては、多官能基数のウレタン(メタ)アクリレートを含むこと。」
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである基材11」、「剥離剤層12」及び「剥離フィルム」は、それぞれ本件発明1の「ポリエステルフィルム」、「離型層」及び「離型フィルム」に相当し、引用発明の「ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである基材11の一方の面(第1の面)に剥離剤層12が積層された剥離フィルムであ」ることは、本件発明1の「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであ」ることに相当する。
引用発明の「剥離剤層表面」及び「セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム1」は、それぞれ本件発明1の「離型層表面」及び「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」に相当する。
以上より、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」
<相違点1>
離型層について、本件発明1が「離型層表面の領域表面粗さ(Sa)が7nm以下であ」るのに対し、引用発明では、「剥離剤層表面の算術平均粗さ(Ra)が3nmであ」る点。
<相違点2>
離型層について、本件発明1が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、前記離型剤が離型層全体の固形分に対して0.5質量%以上、10質量%以下である」ものであるのに対し、引用発明では、「活性エネルギー線硬化性成分であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村工業社製,A-DPH,固形分100質量%)99.0質量部と、シリコーン系成分であるポリエーテル変性アクリロイル基含有ポリジメチルシロキサン(ビッグケミー社製,BYK-3500,固形分100質量%)1.0質量部と、光重合開始剤である2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製,IRGACURE907)5.0質量部とからなる剥離剤組成物Cを、イソプロピルアルコールおよびメチルエチルケトンの混合液(混合質量率3:1)にて希釈した剥離剤溶液(固形分20質量%)を塗布し硬化されてなる」ものである点。
<相違点3>
本件発明1が、「下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価による剥離力が2.0mN/mm2以下であ」り、「下記のセラミックグリーンシートの剥離性評価」とは、「(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのガラスビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール 6.5質量部
(積水化学工業社製 エスレック(登録商標)BM-S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minでに剥離した。剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。」であるのに対して、引用発明では、剥離力について規定していない点。
イ 判断
事案に鑑み<相違点2>より検討する。
<相違点2>について
甲1の[0037]には、「活性エネルギー線硬化性成分は、本発明の効果を妨げることなく、活性エネルギー線の照射によって硬化する成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。」と、[0038]には、「(メタ)アクリル酸エステルとしては、多官能の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、」と、[0039]には、「多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、・・・ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、・・・等が挙げられ、」と、[0040]には、「多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、・・・、ウレタンアクリレート系オリゴマー、・・・等が挙げられる。」とそれぞれ記載されている。[0037]~[0040]の上記記載より、活性エネルギー線硬化性成分として使用される多官能の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーとして、「ウレタンアクリレート系オリゴマー」が、他の物質とともに例示されており、当該記載より、「活性エネルギー線硬化性成分」として、「ウレタンアクリレート系オリゴマーである多官能(メタ)アクリレートオリゴマー」を選択することが記載されている。また、[0038]の「(メタ)アクリル酸エステルとしては、・・・特に、三官能以上の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、・・・三官能以上であることで、剥離剤組成物Cの硬化性が優れたものとなり、また、得られる剥離剤層12の表面の剥離性がより優れたものとなる。」という記載からは「三官能基以上」により「硬化性が優れたもの」となることが示され、官能基数の下限値を示すとともに官能基数を多くすることを志向しているといえる。
しかしながら、本件発明1は「前記離型層」が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を含むことにより、「離型層の架橋密度が向上し、弾性率が高くなるため、セラミックグリーンシートを剥離するときに離型層の変形が少なくなるため好ましい」(【0031】)ものであり、このことによって、発明の解決しようとする課題である「離型フィルムの厚みを薄くしてもカールの発生がなく、剥離性、走行性が良好」(【0008】)であるセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得ることができるものであるところ、甲1には、「弾性率」を高くすること及び、「セラミックグリーンシートを剥離するときに離型層の変形が少なくなる」ことについては記載されておらず、仮にウレタンアクリレートを採用したとしても、「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を含むこととすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、甲3及び甲5にも、「前記離型層」が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を含むことについて記載されておらず、甲4、引用文献1及び引用文献2による周知技術から導出されるものでもない。
そして、本件発明1は、「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてな」る離型層を採用することにより、引用発明とは別異の格別な効果を奏するものである。
エ 申立人の主張について
申立人は令和7年5月22日意見書にて、「令和6年4月22日付け特許異議申立書に添付の甲第7号証(特開2016-127091号公報)では、実施例において「10官能のウレタンアクリレート(U-10PA、根上工業社製)」を使用して離型層が形成されている(甲第7号証の段落0036)。そのため、「官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を用いて離型層を備えるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得ることは周知技術である。」(意見書第8頁第16行~同第21行)とし、特許権者の上記<相違点2>に対する主張が失当である旨主張する。しかしながら、官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートを用いて離型層を備えるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得ることが周知技術であったとしても、上記ウにおいて説示したとおり、甲1には、「弾性率」を高くすること及び、「セラミックグリーンシートを剥離するときに離型層の変形が少なくなる」ことについては記載されておらず、「弾性率」を高くすることを指向し、「前記離型層」が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」をあえて含むような設計変更を行うことは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、申立人の上記主張は採用することはできない。
ウ 小括
以上により、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、甲3記載事項、甲5記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2、4、6及び7について
本件発明2、4、6及び7は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記(2)に示したことと同様に、引用発明、甲3記載事項、甲5記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
以上により、本件の請求項1、2、4、6及び7に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要について
取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(甲1を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1、2、4、6及び7に係る発明は甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、6及び7に係る発明は、甲2に記載された発明並びに甲1、3及び4に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:国際公開第2013/145864号(上記「甲1」)
甲2:特開2002-200721号公報(申立人が提出した甲第2号証)
甲3:特開2010-17932号公報(上記「甲3」)
甲4:特開2014-177094号公報(上記「甲4」)
2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審の判断
(1)引用文献の記載
ア 甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、離形性が付与された紫外線硬化樹脂層を有することを特徴とする離形フィルム。」
「【0002】
【従来の技術】ポリエステル離形フィルムは、紙に比べ非常に表面が平坦であり、またゴミを発生しないことから電子・電気分野の工程材料として用いられている。特に粘着剤離形、樹脂皮膜あるいはセラミックシートの成型用キャリアーシート、シリコーンの撥水性を利用した防汚染フィルムなど幅広い用途に使用されている。」
「【0010】本発明の紫外線硬化樹脂層を生産性良く形成する紫外線硬化性樹脂として、ウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、ポリエステルーアクリレート化合物、不飽和ポリエステル化合物、およびポリアクリルアクリレート化合物などの紫外線硬化性化合物を挙げることができる。」
「【0024】[実施例1]固有粘度が0.60のポリエチレンテレフタレートを押し出し機にて溶融し、20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押し出して、まず未延伸フィルムを得た。次にこの未延伸フィルムを、機械方向に3.5倍延伸したのち、引き続き105℃にて横方向に3.9倍延伸し、さらに210℃で熱処理し、厚み38μmのポリエステルフィルムを得た。このポリエステルフィルムの片面に、紫外線硬化樹脂100部に対し離形樹脂10部を添加した樹脂層2μmを設けた。ここで、紫外線硬化樹脂としては旭電化工業(株)社製KR567、離形性樹脂としては東レーダウコーニング社製BY16ー839を用いた。こうして得られた離形フィルムは、表1にその結果を示すように、いずれの評価特性も良好なものであった。」
イ 甲2発明
上記アより、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離形性が付与された紫外線硬化樹脂層を有することを特徴とする離形フィルムであって、前記紫外線硬化樹脂層の紫外線硬化樹脂としてウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、ポリエステルーアクリレート化合物、不飽和ポリエステル化合物、およびポリアクリルアクリレート化合物が例示され、前記紫外線硬化樹脂に離型樹脂を添加し硬化させてなり、
前記紫外線硬化樹脂100部に対し前記離形樹脂10部である、
セラミックシートの成型用キャリアーシートとして使用される離型フィルム。」
(2)申立理由1(甲1を引用例とする新規性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、上記第4の2(3)アで示したとおり、本件発明1と引用発明とは、<相違点1>、<相違点2>及び<相違点3>で相違する。
ここで、上記第4の2(3)イでの検討のとおり、<相違点2>は実質的な相違点である。したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明ではない。
イ 本件発明2、4、6及び7について
本件発明2、4、6及び7は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記アに示したことと同様に、本件発明2、4、6及び7は、引用発明ではない。
(3)申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「紫外線硬化樹脂層」は「離形性が付与され」ているものであるから、甲2発明の「紫外線硬化樹脂層」は、本件発明1の「離型層」に相当する。そうすると、甲2発明の「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離形性が付与された紫外線硬化樹脂層を有することを特徴とする離形フィルム」は、本件発明1の「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルム」に相当する。
本件発明1の「ウレタンアクリレート」は紫外線硬化樹脂であり、甲2発明の「離型樹脂」は、本件発明1の「離型剤」に相当するから、甲2発明の「前記紫外線硬化樹脂層の紫外線硬化樹脂としてウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、ポリエステルーアクリレート化合物、不飽和ポリエステル化合物、およびポリアクリルアクリレート化合物が例示され、前記紫外線硬化樹脂に離型樹脂を添加し硬化させてな」ることは、本件発明1の「前記離型層が1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレートと離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてな」ることと、「前記離型層が紫外線硬化樹脂と離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてな」る限りにおいて一致する。
甲2発明の「セラミックシートの成型用キャリアーシートとして使用される離型フィルム」は、本件発明1の「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、前記離型層が紫外線硬化樹脂と離型剤を少なくとも含む塗膜が硬化されてなる、
セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」
で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
離型層について、本件発明1が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を含むのに対し、甲2発明は、「紫外線硬化樹脂としてウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、ポリエステルーアクリレート化合物、不飽和ポリエステル化合物、およびポリアクリルアクリレート化合物が例示され」ているものであり、「1分子内の官能基数」は規定していない点。
(イ)判断
上記<相違点4>について検討する。
本件発明1は、「前記離型層」が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を含むことにより、「離型層の架橋密度が向上し、弾性率が高くなるため、セラミックグリーンシートを剥離するときに離型層の変形が少なくなるため好ましい」(【0031】)ものであり、このことによって、発明の解決しようとする課題である「離型フィルムの厚みを薄くしてもカールの発生がなく、剥離性、走行性が良好」(【0008】)であるセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得ることができるものである。
一方で甲2発明は、「離形性を有するポリエステルフィルムの表面に傷がつき難くシリコーンの脱落も起こさない、耐擦傷のある離形フィルムを提供する」(【0004】)ものであり、離型層の架橋密度を向上させ弾性率を高くすることを指向しているものではない。そうすると、「紫外線硬化樹脂としてウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、ポリエステルーアクリレート化合物、不飽和ポリエステル化合物、およびポリアクリルアクリレート化合物が例示され」ているものにおいて、「ウレタンアクリレート」を選択し、「1分子内の官能基数が9つ以上」とすることは、当業者が容易に想到し得ない。
また、甲1、甲3及び甲4にも、「前記離型層」が「1分子内の官能基数が9つ以上のウレタンアクリレート」を含むことについて記載されていない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明並びに甲1、3及び4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、6及び7について
本件発明2、6及び7は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2、6及び7は、甲2発明並びに甲1、3及び4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
以上により、本件の請求項1、2、4、6及び7に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件の請求項1、2、6及び7に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1、2、4、6及び7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、2、4、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700382