特許異議申立
2025-700412
BIMパーツ
- 審判番号
- 2025-700412
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-096647
- 登録番号
- 7568427
- 請求日
- 2025年04月14日
- 審決日
- 2025年05月30日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【権利者代理人】芝 哲央
- 【権利者代理人】岩池 満
- 【権利者代理人】星野 寛明
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人iX
- 審判長/審判官
- 審判長 高橋 宣博
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 坂東 大五郎
- 分類
- P1651.113-Y (G06F) / P1651.121-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7568427号発明「BIMパーツ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7568427号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7568427号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年6月3日に出願され、令和6年10月7日にその特許権の設定登録がされ、同年10月16日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和7年4月14日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)TOTO株式会社により特許異議の申立てがされた。
2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明8」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1~8の記載は次のとおりである。
〔本件発明1〕【請求項1】
コンピュータが、BIMパーツが組み込まれたBIMモデルに基づいて建築物の構成要素の3次元形状を表示部に表示する設計支援方法であって、
前記BIMパーツは、前記構成要素の3次元形状データと、前記構成要素の仕様に関する情報及び前記構成要素の設置時に前記構成要素の周囲に必要なクリアランス情報を少なくとも有する属性情報と、を含み、
前記コンピュータが、
前記構成要素の仕様に関する情報をユーザが変更するための入力画面を前記表示部に表示し、
前記構成要素の仕様に関する情報の変更に伴って、前記BIMパーツの前記3次元形状データを変更し、
変更された前記3次元形状データに連動して、前記クリアランス情報を変更し、
変更された前記クリアランス情報を、前記仕様に関する情報が変更された前記構成要素の前記3次元形状と共に前記表示部に表示する、設計支援方法。
〔本件発明2〕【請求項2】
前記3次元形状データは、サニタリーユニットの3次元形状データである、請求項1に記載の設計支援方法。
〔本件発明3〕【請求項3】
前記属性情報は、建築躯体の梁を避けるための情報をさらに含む、請求項1又は2に記載の設計支援方法。
〔本件発明4〕【請求項4】
前記属性情報は、ボルト脚の長さの情報をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の設計支援方法。
〔本件発明5〕【請求項5】
前記属性情報は、窓の開口可能範囲の情報をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の設計支援方法。
〔本件発明6〕【請求項6】
前記属性情報は、ドアの高さ及び幅のうちの少なくとも一方の情報をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の設計支援方法。
〔本件発明7〕【請求項7】
前記属性情報は、天井開口の開口可能範囲の情報をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の設計支援方法。
〔本件発明8〕【請求項8】
BIMパーツが組み込まれたBIMモデルに基づいて建築物の構成要素の3次元形状を表示部に表示するためのプログラムであって、
前記BIMパーツは、前記構成要素の3次元形状データと、前記構成要素の仕様に関する情報及び前記構成要素の設置時に前記構成要素の周囲に必要なクリアランス情報を少なくとも有する属性情報と、を含み、
前記構成要素の仕様に関する情報をユーザが変更するための入力画面を前記表示部に表示させる機能と、
前記構成要素の仕様に関する情報の変更に伴って、前記BIMパーツの前記3次元形状データを変更する機能と、
変更された前記3次元形状データに連動して、前記クリアランス情報を変更する機能と、
変更された前記クリアランス情報を、前記仕様に関する情報が変更された前記構成要素の前記3次元形状と共に前記表示部に表示させる機能と、
をコンピュータに 実現させるためのプログラム。
3 特許異議申立理由
特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(理由1:新規性)
本件発明1、8は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件請求項1、8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(理由2:進歩性)
本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2014-10676号公報
甲第2号証:特開2017-215677号公報
甲第3号証:特開2013-105382号公報
甲第4号証:特開2016-122284号公報
甲第5号証:特開2018-25028号公報
甲第6号証:特開2000-230336号公報
4 甲号証について
(1)甲第1号証について
ア 記載事項
甲第1号証には次の記載がある。なお、以降の下線は当審において付されたものである。
「【0012】
図2に示すように、第1の実施形態のBIMシステムは、概略的に、昇降機の3次元モデル(すなわち、昇降機のBIMパーツ)等の情報を提供できるサーバ装置200、および、単数または複数のBIMアプリケーション等を搭載した端末装置100、を通信可能に接続して構成される。ここで、図2に示すように、通信には、一例として、ネットワーク300を介した有線・無線通信等の遠隔通信等を含む。また、これらBIMシステムの各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。」
「【0015】
これら記憶部206の各構成要素のうち、パーツ情報データベース206aは、建築物のBIMモデルに組込可能な昇降路スペースモデルに設置される昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段である。本実施形態において、昇降機は、エレベータおよび乗客コンベアを含む概念であり、乗客コンベアは、エスカレータおよび動く歩道を含む。パーツ情報は、利用者が昇降機のBIMパーツを設計する上で必要となるあらゆる情報を含む。パーツ情報としては、例えば、用途、定員、積載量、動作速度、色、機種等といった昇降機の仕様、昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース、寸法、各種付属設備、可動領域、昇降機を構成する必要部材の部材強度、価格、寸法、質量、色、素材、固有振動数といった構造情報の他、納期、在庫状況、据付時間、仕上げ材、耐用年数、メーカ情報、品番型番などが挙げられるが、これに限定されない。本実施形態において、昇降機の可動領域は、昇降機が昇降路内で可動する領域を意味する。例えば、昇降機がエレベータの場合、昇降機の可動領域は、メインロープで接続された乗りかごとカウンタウェイトとが上下方向に可動する最大領域を示す幅、奥行、高さにより規定された領域である。
【0016】
より具体的には、本実施形態において、パーツ情報は、BIMパーツの動作を解析する際に用いられるBIMパーツの動作パラメータを含む。動作パラメータは、昇降機の動作速度、動作パターン、可動領域等を規定するパラメータである。パーツ情報は、各BIMパーツのサイズ情報を含む。BIMパーツとしては、例えば、本実施形態のように、昇降機がエレベータの場合には、乗りかご、カウンタウェイト、メインロープ、巻上機、ガイドレール、乗り場ホール関連品、機械室、制御盤、電源設備、各種配管・配線等が挙げられる。例えば、昇降機がエスカレータの場合には、BIMパーツとしては、トラス、踏段、踏段チェーン、移動手摺、乗降板、欄干、駆動装置、機械室、制御盤、電源設備、各種配管・配線等が挙げられる。パーツ情報は、BIMパーツを変更する際に用いられる設定パラメータを含む。設定パラメータは、BIMパーツのサイズ、色、材質等を規定するパラメータを含む。なお、BIMパーツは、典型的なBIMモデルと同様に、このBIMパーツ自体に対象の昇降機に関連するパーツ情報等の属性情報を含んでいる。」
「【0018】
このうち、作成条件受信部202aは、端末装置100から送信される作成条件を受信する作成条件受信手段である。ここで、作成条件は、利用者が所望する昇降機の仕様を示す条件である。本実施形態において、作成条件は、建築物のBIMモデルに組込可能な昇降路スペースモデルに設置される昇降機のBIMパーツを作成するための条件を指定する。作成条件にはこの他、希望の価格、納期等を含んでもよい。また、作成条件は、利用者により端末装置100において入力部118を介して入力されたものであってもよいし、予め作成条件が記憶された外部記憶装置(図示せず)から読み込まれたものであってもよい。」
「【0030】
これら記憶部106の各構成要素のうち、昇降路スペースモデルデータベース106aは、昇降路を模した昇降路スペースモデルを記憶する昇降路スペースモデル記憶手段である。本実施形態において、昇降路スペースモデルとは、建築物のBIMモデルに組込可能な3次元形状モデルである。また、昇降路スペースモデルは、当該昇降路スペースモデルに昇降機のBIMパーツを設置可能なように構成されている。ここで、昇降路スペースモデルは、昇降機を建築物に設置するのに必要な昇降路スペースを規定した昇降路スペース情報を、当該昇降路スペースモデルの属性情報として有する。昇降路スペース情報は、BIMモデル内の昇降機の設置予定領域の寸法に対応するサイズ情報であり、例えば昇降機がエレベータの場合、昇降路の間口、奥行、昇降行程を規定する情報である。なお、本実施形態において、昇降路スペースモデルは、制御部102により、予め建築物のBIMモデルから昇降路スペース情報が取得され、取得された昇降路スペース情報に対応する3次元形状モデルが作成されて、昇降路スペースモデルデータベース106aに格納されるものとする。また、本実施形態において、昇降路スペースモデルの昇降路領域とは、昇降路スペース情報により示される昇降路スペースモデルの最外面で囲われた領域を意味する。」
「【0122】
[第3の実施形態におけるBIMシステムの処理]
次に、このように構成された第3の実施形態におけるBIMシステムの処理の一例について、以下に図16を参照して詳細に説明する。図16は、第3の実施形態におけるBIM装置400の処理の一例を示すフローチャートである。
【0123】
図16に示すように、作成条件設定部402aは、利用者により入力される作成条件を設定する(ステップSE-1)。
【0124】
そして、昇降機モデリング部402bは、ステップSE-1にて作成条件設定部402aの処理により設定された作成条件に対応するBIMパーツを、パーツ情報データベース406aに記憶されたパーツ情報を用いて作成する(ステップSE-2)。
【0125】
そして、操作画面表示部402cは、ステップSE-2にて昇降機モデリング部402bの処理により作成されたBIMパーツを、図4に示すような昇降路スペースモデルに設置させる利用者の設置操作を検出する操作画面を、表示部414に表示させる(ステップSE-3)。
【0126】
そして、干渉判定部402dは、ステップSE-3にて操作画面表示部402cの処理により表示された操作画面を介して、設置操作が検出されたか否かを判定する(ステップSE-4)。
【0127】
そして、干渉判定部402dは、ステップSE-4にて設置操作が検出されたと判定した場合(ステップSE-4:Yes)、図4に示すような昇降路スペースモデルの昇降路領域の寸法と、図5に示すようなBIMパーツの可動領域の寸法に基づいて、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉するか否かを判定する(ステップSE-5)。一方、干渉判定部402dは、ステップSE-4にて設置操作が検出されなかったと判定した場合(ステップSE-4:No)、ステップSE-3の処理へ戻る。
【0128】
そして、非干渉領域抽出部402eは、図6に示すように、ステップSE-5にて干渉判定部402dの処理により昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しないと判定された場合(ステップSE-5:No)、昇降路スペースモデルの昇降路領域の寸法からBIMパーツの可動領域の寸法を差し引いた差分領域を、図7に示すように、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しない非干渉領域として抽出する(ステップSE-6)。
【0129】
そして、画面生成部402fは、BIMパーツが設置された昇降路スペースモデル内に、ステップSE-6にて非干渉領域抽出部402eの処理により抽出された非干渉領域を含むレイアウト画面を生成する(ステップSE-7)。
【0130】
そして、画面表示部402gは、ステップSE-7にて画面生成部402fの処理により生成されたレイアウト画面を表示部414に表示させる(ステップSE-8)。ステップSE-8において、表示態様変更部402hは、画面表示部402gの処理により表示されるレイアウト画面に含まれる非干渉領域の表示態様を昇降機の可動領域の表示態様と異ならせてもよい。この場合、表示態様変更部402hは、例えば、入力部418を介して入力された利用者の設定条件にしたがって、レイアウト画面上に表示された非干渉領域の色を変化させたり、非干渉領域を強調表示させたり、非干渉領域を点滅表示させることで、非干渉領域の表示態様を変更させる。
【0131】
ステップSE-5の処理に戻り、図16の処理の説明を続ける。干渉判定部402dは、図8に示すように、昇降路スペースモデルが属性情報として有する昇降路スペース情報が示す昇降路領域の寸法が、BIMパーツが属性情報として有する昇降機の可動領域の寸法よりも小さい場合(図8の干渉領域を参照)は、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉すると判定する(ステップSE-5:Yes)。この場合、ステップSE-1の処理へ移行し、作成条件設定部402aは、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しない範囲を規定する情報を含む作成条件を設定する(ステップSE-1)。そして、変更部402kは、再度設定された作成条件にしたがって、昇降機のBIMパーツをパーツ情報データベース406aに記憶されたパーツ情報を用いて変更する(ステップSE-2)。そして、その後の処理(ステップSE-3~SE-8)により、図9に示すような、変更されたBIMパーツが設置された昇降路スペースモデル内に非干渉領域を含むレイアウト画面が表示される。
【0132】
なお、図16に示した基本処理を実行後、利用者が非干渉領域内に追加のBIMパーツを設置する場合に実行される位置選定処理については、第2の実施形態において図14に示した処理と基本的に同様であるため説明を省略する。」
「【図16】
[図:0001424630000001.jpg]
」
イ 甲1発明
上記アから、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
〔甲1発明〕
BIM装置400の処理の方法であって、(【0122】)
作成条件設定部402aが、利用者により入力される作成条件を設定し、(【0123】)
ここで、作成条件は、利用者が所望する昇降機の仕様を示す条件であり、(【0018】)
昇降機モデリング部402bが、作成条件設定部402aの処理により設定された作成条件に対応するBIMパーツを、パーツ情報データベース406aに記憶されたパーツ情報を用いて作成し、(【0124】)
ここで、 昇降機のBIMパーツは、昇降機の3次元モデルであり、(【0012】)
昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報としては、用途、定員、積載量、動作速度、色、機種等といった昇降機の仕様、昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペースなどが挙げられ、BIMパーツを変更する際に用いられる設定パラメータを含み、設定パラメータは、BIMパーツのサイズ、色、材質等を規定するパラメータを含み、BIMパーツ自体に対象の昇降機に関連するパーツ情報等の属性情報を含んでおり、(【0015】、【0016】)
操作画面表示部402cが、昇降機モデリング部402bの処理により作成されたBIMパーツを、昇降路スペースモデルに設置させる利用者の設置操作を検出する操作画面を、表示部414に表示させ、(【0125】)
ここで、昇降路スペースモデルとは、建築物のBIMモデルに組込可能な3次元形状モデルであり、昇降機を建築物に設置するのに必要な昇降路スペースを規定した昇降路スペース情報を、当該昇降路スペースモデルの属性情報として有し、(【0030】)
干渉判定部402dが、操作画面表示部402cの処理により表示された操作画面を介して、設置操作が検出されたと判定した場合、昇降路スペースモデルの昇降路領域の寸法と、BIMパーツの可動領域の寸法に基づいて、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉するか否かを判定し、昇降路スペースモデルが属性情報として有する昇降路スペース情報が示す昇降路領域の寸法が、BIMパーツが属性情報として有する昇降機の可動領域の寸法よりも小さい場合は、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉すると判定し(【0126】、【0127】、【0131】)
この場合、作成条件設定部402aが、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しない範囲を規定する情報を含む作成条件を設定し、(【0131】)
変更部402kが、再度設定された作成条件にしたがって、昇降機のBIMパーツをパーツ情報データベース406aに記憶されたパーツ情報を用いて変更し、(【0131】)
非干渉領域抽出部402eが、干渉判定部402dの処理により昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しないと判定された場合、昇降路スペースモデルの昇降路領域の寸法から前記変更されたBIMパーツの可動領域の寸法を差し引いた差分領域を、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しない非干渉領域として抽出し、(【0128】)
画面生成部402fが、前記変更されたBIMパーツが設置された昇降路スペースモデル内に、非干渉領域抽出部402eの処理により抽出された非干渉領域を含むレイアウト画面を生成し、(【0129】)
画面表示部402gが、画面生成部402fの処理により生成されたレイアウト画面を表示部414に表示させ、(【0130】)
利用者が非干渉領域内に追加のBIMパーツを設置する(【0132】)
方法。
(2)甲第2号証に記載された技術
ア 記載事項
甲第2号証には次の記載がある。
「【0016】
パーツ情報データベース206aは、BIMモデルに組込可能なBIMパーツ(昇降機BIMパーツ)を作成するためのパーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段である。本実施形態において、昇降機は、エレベータおよび乗客コンベアを含む概念であり、乗客コンベアは、エスカレータおよび動く歩道を含む。ここで、パーツ情報は、利用者が昇降機を設計する上で必要となるあらゆる情報を含む。パーツ情報としては、例えば、用途、定員、積載量、動作速度、色、機種等といった昇降機の仕様、昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース、寸法、各種付属設備に関する情報、昇降機を構成する必要部材の部材強度、価格、寸法、質量、色、素材、固有振動数といった情報の他、納期、在庫状況、据付時間、仕上げ材、耐用年数、メーカ情報、品番型番などが挙げられるが、上記に限定されない。
【0017】
より具体的には、本実施形態において、パーツ情報は、例えば、端末装置100の制御部102によりBIMモデルにBIMパーツを組み込む際等に参照されるサイズ(寸法)情報を含む。ここで、BIMパーツのサイズ情報は、BIMパーツを構成する各ユニット、構成部品のサイズ情報も含む。BIMパーツを構成する各ユニットとしては、例えば、昇降機がエレベータである場合には、昇降路、乗りかご、カウンタウェイト、メインロープ、巻上機、ガイドレール、乗り場ホール関連品、機械室、制御盤、電源設備、各種配線配管等が挙げられる。また、BIMパーツを構成する各ユニットとしては、例えば、昇降機がエスカレータである場合には、トラス、踏段、踏段チェーン、移動手摺、乗降板、欄干、駆動装置、機械室、制御盤、電源設備、各種配線配管等が挙げられる。また、パーツ情報は、例えば、端末装置100の制御部102によりBIMパーツを変更する際に用いられる設定パラメータを含む。ここで、設定パラメータは、BIMパーツを構成する各ユニットのサイズ、色、材質、上記各種配線配管等を規定するパラメータを含む。なお、BIMパーツは、典型的なBIMモデルと同様に、このBIMパーツ自体に対象の昇降機に関連するパーツ情報等の情報を含んでいる。」
「【0019】
作成条件受信部202aは、端末装置100から送信される作成条件を受信する作成条件受信手段である。ここで、作成条件は、利用者が所望する昇降機の仕様等を示す条件である。つまり、作成条件は、BIMモデルに組込可能な昇降機BIMパーツを作成するための条件である。作成条件は、例えば、昇降機の機種、色、素材、希望の価格、納期、利用者の嗜好性等のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。また、作成条件は、利用者により端末装置100において入力部118を介して入力されたものであってもよいし、予め作成条件が記憶された外部記憶装置(図示せず)から読み込まれたものであってもよい。」
「【0021】
図1に戻って、昇降機モデリング部202bは、利用者が画面上で確認しながら選択可能なように、作成条件を満たす複数のBIMパーツを作成してもよい。昇降機モデリング部202bは、例えば、作成条件受信部202aにより受信された作成条件に基づいた後述のBIMモデルの構造情報等に基づいて、建築物の概要、規模、設置位置、電源設備容量等から当該建築物に設置可能なBIMパーツを単数あるいは複数作成する。また、昇降機モデリング部202bは、作成条件受信部202aにより受信された作成条件に基づいた昇降機の納期、価格、あるいは、嗜好性に応じてBIMパーツを自動的に最適化して作成するようにしてもよい。例えば、昇降機モデリング部202bは、利用者によって昇降機の設置に際し納期優先の選択がなされている場合には、設置可能なBIMパーツのうち納期が早いものから順に自動で複数作成するようにしてもよい。同様に、昇降機モデリング部202bは、利用者によって価格優先の選択がなされている場合には、設置可能な複数のBIMパーツのうち価格が安いものから順に自動で複数作成するようにしてもよい。昇降機モデリング部202bは、利用者によって利用者の嗜好性が設定されている場合には、設置可能な複数のBIMパーツのうち嗜好性にあったものから順に自動で複数作成するようにしてもよい。ここで、昇降機モデリング部202bは、作成したBIMパーツを記憶部206に格納して、BIMパーツデータベース(図示せず)を構築してもよい。」
「【0061】
図10に示すように、本実施形態では、建築物のレイアウト、仕様の変更があった場合
(ステップS11)、昇降機のレイアウト、仕様の変更があった場合(ステップS12)、設備のレイアウト、仕様の変更があった場合(ステップS13)、各担当者がそれらの変更をBIMシステム(端末装置100、サーバ装置200)へ登録する(ステップS14)。
【0062】
次に、当該変更が統合BIMモデルに反映される(ステップS15)。具体的には、端末装置100の統合モデリング部102cは、統合BIMモデルの作成に使用された建築物BIMモデル、設備BIMモデル、昇降機BIMパーツの少なくともいずれかが更新されたとき、統合BIMモデルデータベース106bの統合BIMモデルを更新する。
【0063】
次に、更新された統合BIMモデルを昇降機監視盤モニタに出力する(ステップS16)。具体的には、端末装置100の送信制御部102eは、更新された統合BIMモデルの3次元レイアウト画面を作成し、管理施設端末装置500に送信して表示させる。こうして、昇降機監視盤のモニタ表示の変更が完了する(ステップS17)。このように、本実施形態では、当該表示変更に、時間も手間もほとんどかからない。つまり、当該表示変更のためだけの作業がほとんどない。」
「【図1】
[図:0001424630000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001424630000003.jpg]
」
イ 記載技術
上記アから、甲第2号証には次の技術が記載されているといえる。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。
BIMモデルに組込可能なBIMパーツ(昇降機BIMパーツ)を作成するためのパーツ情報としては、例えば、用途、定員、積載量、動作速度、色、機種等といった昇降機の仕様、昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペースなどが挙げられ、例えば、端末装置の制御部によりBIMパーツを変更する際に用いられる設定パラメータを含み、設定パラメータは、BIMパーツを構成する各ユニットのサイズ、色、材質、上記各種配線配管等を規定するパラメータを含み、BIMパーツ自体に対象の昇降機に関連するパーツ情報等の情報を含んでおり、(【0016】、【0017】)
利用者が所望する昇降機の仕様等を示す条件であり、例えば、昇降機の機種、色、素材、希望の価格、納期、利用者の嗜好性等のうちの少なくとも1つを含んでいる作成条件が、利用者により端末装置において入力部を介して入力され、(【0019】)
作成条件を満たす複数のBIMパーツを利用者が画面上で確認しながら選択可能であり、(【0021】)
昇降機等のレイアウト、仕様の変更があった場合、各担当者が変更をBIMシステムへ登録し、当該変更が統合BIMモデルに反映され、統合BIMモデルを更新し、更新された統合BIMモデルの3次元レイアウト画面を作成して表示させる(【0061】~【0063】)
技術。
(3)甲第3号証に記載された技術
甲第3号証(【0072】、【0105】)には、建築物の部材として浴室ユニットが記載されている。
(4)甲第4号証に記載された技術
甲第4号証(【0042】、【0045】、【0050】、【0053】)には、梁の位置の情報を扱うことが記載されている。
(5)甲第5号証に記載された技術
甲第5号証(【0020】、【0030】、【0031】、【0041】)には、ボルト脚の長さの情報を扱うことや、窓や扉を考慮してユニットバスを設置することが記載されている。
(6)甲第6号証に記載された技術
甲第6号証(【0015】、【0016】、【0021】)には、天井点検口を有するユニットバスが記載されている。
5 当審の判断
(1)理由1(新規性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「BIM装置400」は、本件発明1の「コンピュータ」に相当する。
甲1発明の「利用者」は、本件発明1の「ユーザ」に相当する。
甲1発明の「昇降路スペースモデル」は、建築物のBIMモデルに組込可能な3次元形状モデルであり、BIMモデル(の一部)といえるものである。
甲1発明の「BIMパーツが設置された昇降路スペースモデル」は、本件発明1の「BIMパーツが組み込まれたBIMモデル」に相当する。
甲1発明の「昇降機」は、本件発明1の「建築物の構成要素」に相当する。
甲1発明の「昇降機のBIMパーツ」は、3次元モデルであり、表示が3次元形状でなされることは当然である。
甲1発明のBIM装置400(コンピュータ)は、昇降路スペースモデルの昇降路領域の寸法から、BIMパーツの可動領域の寸法を差し引いた差分領域を非干渉領域として抽出し、BIMパーツが設置された昇降路スペースモデル内に非干渉領域を含むレイアウト画面を表示部に表示させるものであり、当該非干渉領域が付された昇降機のBIMパーツの画面は、昇降路スペースモデル(BIMパーツが組み込まれたBIMモデル)等に基づいて生成されているから、甲1発明は「コンピュータが、」「BIMパーツが組み込まれたBIMモデルに基づいて建築物の構成要素の3次元形状を表示部に表示する」「方法」といえる。
そして、甲1発明は、非干渉領域を表示することで、利用者が非干渉領域内に追加のBIMパーツを設置する設計を行うことができるから、「設計支援方法」といえる。
甲1発明の「昇降機のBIMパーツを作成するためのパーツ情報」は、BIMパーツ自体に属性情報として含まれるから、本件発明1のBIMパーツに含まれる「属性情報」に相当する。そして、甲1発明の「パーツ情報」(属性情報)として挙げられる「用途、定員、積載量、動作速度、色、機種等といった昇降機の仕様」及び「昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース」は、本件発明1の「前記構成要素の仕様に関する情報」及び「前記構成要素の設置時に前記構成要素の周囲に必要なクリアランス情報」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の昇降機のBIMパーツは、3次元モデルであるから、昇降機(構成要素)の3次元形状データを当然備えている。
甲1発明のBIM装置400(コンピュータ)は、干渉判定部402dが、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉すると判定した場合に、作成条件設定部402aが、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しない範囲を規定する情報を含む作成条件(昇降機(の仕様))を設定するものであり、構成要素の仕様に関する情報を変更するものといえるが、当該設定(変更)は利用者(ユーザ)により行われるものではないから、甲1発明には当該設定(変更)のための入力画面は存在しない。
したがって、前記コンピュータが、本件発明1では「構成要素の仕様に関する情報をユーザが変更するための入力画面を前記表示部に表示」するのに対し、甲1発明では当該処理を行うことが特定されていない点(以下「相違点1」という。)で、両者は相違する。
甲1発明のBIM装置400(コンピュータ)は、変更部402kが、再度設定された作成条件にしたがって、昇降機のBIMパーツをパーツ情報データベース406aに記憶されたパーツ情報を用いて変更するものであり、上記BIMパーツの変更に伴い、パーツ情報に含まれる前記3次元形状データ及び「昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース」(前記クリアランス情報)も変更されると解される。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記構成要素の仕様に関する情報の変更に伴って、前記BIMパーツの前記3次元形状データを変更し、」「変更された前記3次元形状データに連動して、前記クリアランス情報を変更」する点で一致する。
甲1発明のBIM装置400(コンピュータ)は、前記変更されたBIMパーツが設置された昇降路スペースモデル内に、非干渉領域抽出部402eの処理により抽出された非干渉領域を含むレイアウト画面を表示部414に表示させるものである。
当該非干渉領域は、昇降路スペースモデルの昇降路領域の寸法から前記変更されたBIMパーツの可動領域の寸法を差し引いた差分領域を、昇降路領域と昇降機の可動領域とが干渉しない非干渉領域として抽出するものであり、非干渉領域の抽出にパーツ情報(属性情報)における「昇降機を建築物に設置する際に必要とされるスペース」(前記クリアランス情報)は用いられていないから、端末装置100の表示部114に表示される非干渉領域は、前記属性情報におけるクリアランス情報に対応するものではない。
本件発明1と甲1発明は、「変更された情報を、前記仕様に関する情報が変更された前記構成要素の前記3次元形状と共に前記表示部に表示する」点で共通し、前記表示される変更された情報が、本件発明1では前記属性情報におけるクリアランス情報であるのに対し、甲1発明では非干渉領域の情報である点(以下「相違点2」という。)で両者は相違する。
以上から、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
コンピュータが、BIMパーツが組み込まれたBIMモデルに基づいて建築物の構成要素の3次元形状を表示部に表示する設計支援方法であって、
前記BIMパーツは、前記構成要素の3次元形状データと、前記構成要素の仕様に関する情報及び前記構成要素の設置時に前記構成要素の周囲に必要なクリアランス情報を少なくとも有する属性情報と、を含み、
前記コンピュータが、
前記構成要素の仕様に関する情報の変更に伴って、前記BIMパーツの前記3次元形状データを変更し、
変更された前記3次元形状データに連動して、前記クリアランス情報を変更し、
変更された情報を、前記仕様に関する情報が変更された前記構成要素の前記3次元形状と共に前記表示部に表示する、設計支援方法。
〔相違点1〕
前記コンピュータが、本件発明1では「構成要素の仕様に関する情報をユーザが変更するための入力画面を前記表示部に表示」するのに対し、甲1発明では当該処理を行うことが特定されていない点
〔相違点2〕
前記表示される変更された情報が、本件発明1では前記属性情報におけるクリアランス情報であるのに対し、甲1発明では非干渉領域の情報である点。
したがって、本件発明1は、甲1発明との間に相違点を有するから、甲第1号証に記載された発明ではない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記アと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は、上記(1)アに示したとおりである。
まず、上記相違点2について検討する。
BIMに係る技術において、属性情報における変更されたクリアランス情報を表示することは、甲第2号証~甲第6号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、当業者に周知のことでもないから、甲1発明において、属性情報における変更されたクリアランス情報を表示することにより相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された技術から当業者が容易に想到しうることではない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記アと同様の理由により、当業者が甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由(理由1、2)によっては、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700412